国民は150人の命を救えるか!

2017/10/12

『国民は150人の命を救えるか!』前書きと目次

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国民は150人の命を救えるか!
~建設職人に光を 明るく楽しい建設産業を創る一足場職人の55年の軌跡を追って~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-382-5
初版発行:2013年5月11日
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はじめに

「一五〇人の命を助けてください」

切実なる叫びというのが強く伝わってくる文言だ。

平成二十四(二〇一二)年十一月八日に開催された「全国仮設安全大会」で採択された決議(書)の冒頭にこの言葉が記されている。同大会はストップ・ザ・墜落事故を目標に掲げ、「全国仮設安全事業協同組合」(後述)により開催された総決起集会である。建設現場で墜落する死亡事故者は年間一五〇人を数えるが、この事実は一般的には知られていない。

街のあちこちでシートがかけられ、今日も建設工事が進んでいる。日常、見慣れた光景だから誰もさほど気にはとめない。工事現場の横を通る際は、少し注意を払う程度である。

しかし時折、物が落ちてきたり柱が倒れて通行人が巻き込まれる死傷事故が起きると、報道で大きく取り上げられる。すると、人々は顕在化した危険に眉をひそめる。だが、多くの場合、無事故・安全第一の看板が掲げられる建設現場は、危険であることは理解していても、それほど事故が頻発するとは考えない。

しかし、シートの内側は、別の世界だった……。

詳細は本文で述べるが、最初に掲載したように、「平成二十三年における死亡災害発生状況」によると、建設業の死亡災害発生は四九四人となっており、これは全産業の死亡者数一〇二四人の実に四八・二%を占めている。いかに建設業が危険な状態で仕事をしているか、この数字からも明らかだろう。しかし一般的には、それほどの数の年間死亡者がいるとは知られていない。また、死亡には至らないまでも、四日以上の休業を余儀なくされる職人の数は、年間約二万人にも上るのだという。

「死亡で多いのが墜落事故です。統計に出てくるのは労災保険がベースの数字ですが、実際のところはもっと多いのが現実です。建設業は一一次にもおよぶ重層下請け構造となっており、すべて完全に掌握されているわけではありません」

この事実を語るのは、「全国仮設安全事業協同組合(略称:アクセス)」(本部:東京都中央区)の理事長・小野辰雄氏だ。

小野氏が造船工だった職人時代、二度の墜落事故を体験し、安全な足場の必要性を痛感する。そして昭和四十三(一九六八)年、日本で初めて安全足場機材を製造・販売・レンタルする日綜産業株式会社(本社:東京都中央区)を設立、代表取締役に就任している。つまり、同社は足場業のパイオニア的存在なのだ。

「創業して四十年以上になりますが、当社が納入した工事現場で足場に起因して墜落死した職人は一人もおりません」と小野氏は胸を張る。このように、墜落労働災害はゼロにできるのだ。「災害ゼロ」の具体的な手立ては、「手すり先行工法による二段手すりと幅木」(ハード)を設置し、確実な「足場などの安全点検」(ソフト)を実施することである。

現実に、アクセスおよび日綜産業では、このハードとソフトの取り組みにより、災害ゼロを実現している。どの建設現場でも同じようにまねをすれば、事故は撲滅できる。そのためには、安全足場の設置および安全点検を法制化する必要がある。

なおアクセスでは、この一月に「墜落労働災害撲滅に関する賢人会議」を経て、以下の三つを目的として訴求している。

建設産業に明るい未来を!!
建設職人にステータスと誇りを!!
若者が喜んで入職する建設産業界へ!!

墜落事故(危険)がなくならなければ、若い人は建設業を敬遠するようになる。実際にその傾向が近年増加している。人の命を粗末にする職場には未来はないのだ。

「人の命はみんな平等です。職人の命を大事にしなければ、建設業界は衰退する一方です。安全で楽しく仕事ができる現場・環境をつくれば、未来の明るい建設産業が創出できます」と、小野氏は熱く語るのだ。

同時に、職人の地位の向上をはかり、ドイツのマイスター制度に倣い、斯界のスペシャリスト、プロフェッショナルの育成にも注力すべきだと話している。

本書は、建設業の発展を支える「縁の下の力持ち」として仮設現場の安全確保に尽力するアクセスの活動を紹介するとともに、同組合の理事長を務める日綜産業社長・小野辰雄氏の経営理念、人生哲学に迫るものである。これは建設業の未来に大きく貢献するものであるだけに、建設業界関係者はもとより、多くの一般読者にとっても貴重な指針の書となるであろう。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

平成二十五年三月   鶴蒔靖夫


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はじめに


第1章 建設現場における労働災害の現状

自ら安全な足場をつくることを決意
事故は迂闊ではすまされない
全産業の死傷事故の三五%を占める建設現場――人の命が軽くあってはならない
建設現場での死亡者の約四〇%が墜落・転落
建設業の労災死亡者数の海外比較
建設現場における労災は弱者へのしわ寄せ
建設現場の墜落事故は人災だ――事故ゼロ実現のために何が必要かを考える
重層下請け構造が生み出した足場作業の安全軽視――経済優先で続発する事故
物理的に落ちない仕組みで無事故を実現
点検、そして点検さらに点検
建設職人の「命の人権」を救うために


第2章 建設作業の安全確立をめざす「アクセス」

墜落防止機材設置義務の法制化――アクセス積年の悲願を実現するために
ストップ・ザ・墜落事故
「点検に勝る安全なし」を体現
「安全なくして経済なし」の論理
建設労働者の三五%が足場作業員
「究極の陰の部分」に光を照射
適材適所が奏効した制度改正
事故ゼロの決め手を認知させる
待ったなし――緊急に手を打つ
働きやすい安心感のある足場の普及に向けて


第3章 「避けられた死」とは ―生涯現役、職人の地位と命を守るのがミッション―

教育で労災ゼロはできない
足場の設置こそ危険回避の前提
知悉するここから先の危険
「避けられた死」があるはずだ
公的に認められた有資格者の証
ドイツのマイスター制度に倣う
SSFを立ち上げ職人大学構想へ
正しいことは誰がやっても同じ――「ものつくり大学」の存在意義を考える
学んで現業に生かすことが大事
職人の地位と命を守ることが使命


第4章 現場の安全・安心文化を訴求 ―ファミリアな団結力で謳歌する日綜人生―

安全・安心文化を顕在化させる
日綜ファミリー結束力の源
チームワークが団結につながる
人と人の接点、和を大切にする
和を以て貴しとなすの真意
五年に一度、社員旅行で結束を強める
3Kマスターと3Kスピリット
一致団結ビクトリーの精神
スローガンは「ユーステージエボリューション」
安全・安心文化を継承する


第5章 「NISSO」の安心エンジニアリング

業界の安全に寄与しているか?
売り放しでは安全は確保できない
技能と技術の違いを明確にする
体験をエンジニアリングに投影
安全エンジニアリングから考察――応用力の育成と涵養についての小野持論
鳶がクイックに動けるために
安心エンジニアリングの浸透前夜
造船工法から導入したアイデア
こんなところでも仮設が大活躍
「われら幸せ建設職人行動たい」――安全のスペシャリストとして行動


第6章 安心して心豊かに暮らせる社会の実現に向けて ―建設現場を支える要は人―

建設業は深刻な人手不足
日本どうした! 自信を持て!
個のリ・エンジニアリング時代
他人に左右されない自前の哲学
経済より人が優先する独自の価値観――楽しさ満載の日綜ファミリー
失敗あり、貢献ありの海外展開
安全足場は原因療法である/「墜落労働災害撲滅に関する賢人会議」①
明るい未来の建設業を創造する/「墜落労働災害撲滅に関する賢人会議」②


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