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2017年6月

2017/06/22

『どうする!医療改革』 前書きと目次

Iryoukaikakuweb


どうする!医療改革
 ~日本の再生医療へのシナリオ~


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著者:松村博史・鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-406-8
初版発行:2015年4月21日
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  はじめに


 平成二十六(二〇一四)年師走。安倍政権の経済政策「アベノミクス」の可否を問う衆院選は与党が大勝し、第三次安倍晋三内閣がスタートした。

 今回の総選挙では経済政策にばかり目が向けられ、社会保障政策は大きな争点になりえなかったが、超高齢社会を迎えたいま、医療や介護、年金など、社会保障関連の改革は待ったなしの状況だ。とにもかくにも、社会保障に充てる財源が圧倒的に不足している。

 解散前に、政府は消費税率一〇%への引き上げを一年半先送りし、平成二十九年四月から実施するとの考えを示し、選挙でこれが容認されたかたちとなり、社会保障の財源確保は、いちだんと厳しい状況に追い込まれている。

 消費税率が五%だったのを八%へ、そして一〇%へと段階的に引き上げられることは、民主党政権時代に「社会保障・税の一体改革」関連法案として、自民党・公明党と三党合意のもと可決され、増税分は社会保障の財源に充てられるはずだった。しかし、八%に引き上げられた税収分の使い道もはっきりと示されていないのが実情で、国民の増税への抵抗感が根強いことは、平成二十六年の世相を表す漢字が「税」であったことからも見てとれる。

 とはいえ、わが国の財政は火の車であることは明らかだ。財政赤字はふくらむ一方で、財務省の発表によると、国債と借入金、政府短期証券を合計した、いわゆる国の借金は平成二十六年九月末で一〇三八兆九一五〇億円となり、国民一人あたりに換算すると八〇〇万円を超えている。一般会計予算の約四分の一は債務の返済に向けられ、近い将来、ギリシャのように財政破綻するのではないかと不安視する声も聞かれる。消費税率が一〇%に引き上げられたところで、こうした状況を抜本的に改善するには至らないのである。

 社会保障関連のなかでも、とりわけ医療費の財源不足は深刻で、すでに医療財政は破綻寸前の状況といわれるようになって久しい。わが国の国民皆保険制度は世界的に誇れるすばらしい制度であることは、誰もが認めるところだろう。だが、制度発足から五十年以上が経過し、当時と時代背景も大きく異なってきている。

 世界に類を見ない高齢化の進展により国民医療費は毎年一兆円規模で増え続け、平成二十五年度の国民医療費は四〇兆円を突破するとみられている。政府は後期高齢者医療制度の保険料軽減特例措置の見直しなどの改革を進めようとしているが、国民皆保険制度の存続は、もはや小手先の改革では、にっちもさっちもいかないところまで追い込まれているのではないだろうか。

 こうした財源問題にとどまらず、国民皆保険制度そのものが制度疲労を起こしており、根本的な仕切り直しが必要ではないかと訴えるのが、日本で最大規模の歯科医療グループを形成する医療法人徳真会グループ(本部:新潟市)の理事長・松村博史氏だ。

 医療財政が逼迫するなか、歯科の診療報酬は低いレベルに抑えられたままで、歯科医療の現場は総じて厳しい状況に置かれている。加えて昨今は歯科医師過剰問題も取り沙汰されているが、松村氏はそのこと自体はまったく問題にしていない。グローバル化が進み、医療も歯科医療も世界的に大競争時代を迎えている状況下では、競争があって当然であり、競争があってこそいい技術や診療も生まれると考えているからだ。

 そうしたことよりももっと広い視点に立ち、日本の医療の将来を考えたとき、松村氏が危惧しているのは、現行の医療制度自体が危機的状況にあることだ。

 松村氏が指摘する日本の医療制度の課題は大別して三つある。一つはいうまでもなく医療財源の問題だ。二つ目はそれにともない、国民皆保険制度が制度疲労を起こしているということ。そして三つ目が、医療従事者の教育の歪みだ。これらの課題を解決していくには、国が行う改革、医療機関側の経営努力、国民(患者)の理解と協力という三つの側面から考えていく必要がある。

 医療に関する問題は超高齢社会を迎えた日本にとっては、解決すべき最重要テーマのひとつといえるだろう。その一方で、安倍政権下では医療を成長戦略の中核の一つに据え、産業としての医療への期待も高まっている。

 このように、医療はいろいろな意味合いで国民の大きな関心事であるだけに、私がパーソナリティを務めるラジオ番組『こんにちは! 鶴蒔靖夫です』では、足かけ二年余りにわたって松村氏に定期的にご出演を願い、「日本の医療」をテーマにシリーズ対談を行ってきた。対談で松村氏が考える医療制度改革への率直な提言や、すでに世界を舞台に先駆的な歯科医療事業を展開する徳真会グループの取り組みについて語ってもらった。

 本書は、ラジオでのシリーズ対談をベースに加筆・再編し、一冊にまとめあげたものである。医療および歯科医療にかかわる方々はもとより、これからの時代を生きるすべての人たちにとって、日本の医療のあるべき姿を考えるうえで、なんらかの参考になれば幸いである。

  平成二十七年一月  鶴蒔靖夫


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 はじめに


第1章 国民皆保険制度の仕切り直しと財源確保が急務

危機に瀕している日本の国民皆保険制度
道州制導入も視野に地方分権型医療のしくみづくりを
消費税、法人税、所得税、資産税オール二〇%への提言
「負担なくして給付なし」を肝に銘じるべき
基礎医療とオプション医療を明確に分ける
医療制度改革を進めるうえでは規制緩和も大きな課題
健康IDカードによる情報の共有化で無駄を削減
国への依存度を下げ、医療機関自らが経営努力を
安定経営には資本と経営、現場の分離も有効
国民(患者)一人ひとりに求められる自立の概念
社会保障を一元化し、医療費の窓口負担を一律に


第2章 真の医療人を育てる教育への提言

民度の低下は人間教育、道徳教育を怠ったツケ
医療従事者に不適性なら他分野に移行できるしくみに
人間力を磨かなければいい医療人は育たない
患者の理解・協力を得にくい臨床参加型教育の現状
歯学部学生のレベル低下で国家試験不合格者が大量発生
国家試験に適性、診断力、技術力の判定も取り入れるべき
国際人の育成はグローバルな環境づくりから
医療マネジメントのスペシャリスト養成機関の必要性
人材育成は企業や医療機関に課せられた責務
医療人に求められる四つのスキルを再教育
多彩な分野のリーダーから生き方を学ぶ「一燈塾」


第3章 「多極化・多角化・世界が舞台」をキーワードに ――徳真会グループが実践する歯科医療改革――

前例のない歯科医療の組織づくりに挑む
歯科医療の現場と経営を分離しチーム医療を実現
現場ではチームプレイの精度を高める努力を
国家への依存度を下げつつ医療の質と効率を高める努力
「医療もサービス業」という視点をもつ
大規模施設によっても生じるスケールメリット
海外展開による医療を通じた社会貢献
歯科技工分野でグローバル・ネットワークを構築
組織として、人としての「自立と創造誓言」
歯科医療界から世界的起業家表彰の日本代表に選出された意義


第4章 時代を先取りする歯科医療プロジェクト

多角化も視野に入れた日本最大規模の郊外型歯科医療施設
診療・技工・研究部門を統合した先端歯科医療研究所
「医療は人なり」を実現させるためのアカデミー
仙台・長町駅前に地方都市型新モデルを創造
東京・青山に誕生する都市型モデルの集大成となる施設
歯科医療分野で日本初のJCI認証取得をめざす
〝隣戦略〟で新たな井戸を掘り進める
〝医道塾〟を開催して医療人としての再教育を
ミャンマーにラボを設立し雇用創出による国際貢献を
学校法人とタイアップして歯科衛生士育成の取り組みも


第5章 日本の医療の成長産業化実現に向けて

アベノミクスでは医療を成長産業として位置づけ
大きく立ち遅れている日本のメディカルツーリズム
医療機関の競い合いより、本当の勝負は時代との競争
TPPへの参加で公正で自由な競争が行える環境へ
どうなる? TPP参加による混合診療解禁の行方
国境の概念を取り払い、医療従事者の人的交流を促進
少子高齢化時代に求められる歯科医療の役割
官民あげて日本の医療の未来を切り開く

 あとがきにかえて


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『アビストの挑戦』 前書きと目次

Abistweb


アビストの挑戦
 ~日本モノづくりを支える設計技術者集団~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-407-5
初版発行:2015年4月21日
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 はじめに

近年、製造業を中心に派遣社員の雇用はすでに定着し、雇用形態は完全に変わったといっていいだろう。アウトソーシングなくして現場は動かなくなっている。

終身雇用・年功序列の日本型経営はもはや消滅し、少子高齢社会となり労働人口がますます低下するなかで、若い人の働き方、働く意識にも大きな変化がみられる。派遣業務を肯定する声も多く、かつてのようなマイナーな姿勢に様変わりがみられる昨今だ。

詳細は本文に譲るが、ひと口に派遣といっても、一般労働者派遣、特定労働者派遣の二通りがある。通常、前者の派遣労働者は、製造業などで不足する人員の補充や製造現場での人手として雇われるケースが一般的だ。仕事としては時期、需要などにより流動性の高い分野である。それに対し後者の特定労働者派遣は技術者中心の派遣であり、専門特化した技術を有する技術者が派遣労働者として、メーカーの要請により常駐型または受託型請負で仕事を任される、いわばアウトソーシングの性質をもったものだ。

本書で紹介する「株式会社アビスト」(本社・東京都中野区、代表取締役社長・進勝博氏)は、特定労働者派遣の会社であり、その特徴は「モノづくりの開発パートナー」として設計・開発に特化した技術者集団という点にある。おそらくいま、日本において設計・開発の専門技術者集団として事業展開するトップクラスだろう。社員の実に九三%が設計技術者という気鋭のプロフェッショナル集団である。なお、設計技術者の九一%が機械系であり、残りが情報系となる。

製造分野のアウトソーシングで、これだけの設計技術者を擁しているのは、類似業者のなかでも例をみないユニークな会社である。

自動車、電気機器、一般機械などのデザイン設計・製品開発に注力。その他、情報システムの設計・開発も手がけるが、自動車関連で七割近い売上構成比を示す。

得意分野はランプ、アウトボディ(外装)、内装など、自動車を特徴づけるデザイン部分の設計。三万部品からなるといわれる自動車製造において、アビストが得意とする3D‐CAD技術は不可欠であり、アビストならではの訴求力がこの企業のユニークさを浮き彫りにする。

平成二十五年十二月には、東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)に上場。さらに二十六年九月、東京証券取引所市場第二部へ市場変更している。そして二十七年三月にはいよいよ東証一部へと、一気に駆け上がった。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだ。

このところ自動車業界は、トヨタの水素自動車、米国ベンチャーの3Dプリントによる自動車製造など話題にこと欠かないが、アビストでは将来を見据え、すでに3D出力事業にも着手、3D‐CAD設計+3D造型の新しい地平を模索している。

ハイテク機器を駆使する設計プロ集団ながら、アビストは経営課題「信頼の和の六輪づくり」(詳細は本文参照)を標榜、アナログともいえる人材教育・育成に力を入れている。

この点について進氏は、次のように話している。

「機械設計は、誰がやっても同じ結果をはじき出します。大事なのはデザイン〝思想〟であり、開発〝思考〟という独創的な創造性にあるのです。また、クライアントとの信頼関係で仕事が成り立つわけですから、あくまで〝人〟が主体なのです」

アビストは平成二十五年三月、新しい分野への挑戦として水素水事業のメーカー「株式会社アビストH&F」(代表取締役社長・進顕氏)を設立し、未来志向の水素水で事業分野の拡張を図っている。この発想・展開のユニークさが、アビストという企業の特徴を現している。

本文の執筆にあたり、水素水研究の権威である日本医科大学教授の太田成男先生にご助言いただいたことを、この場を借りて御礼申し上げる。

なお、本文中は一部敬称を略させていただいたこと、あらかじめお断わりしておく。

  平成二十七年 三月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第一章 日本の製造業を支えるアウトソーシング ―日本の雇用・就業形態が変わった

不況とグローバル化で雇用は変化
労働市場の構造変化と需給の調整 
派遣雇用の現状と改正法案の行方 
必要なのは人手ではなく人材 
雇用の流動化は必要不可欠な要素 
製造業を支えるアウトソーシング 
引く手あまたの技術系派遣労働者 
プロフェッショナルに徹すべき 


第二章 モノづくりの設計技術者集団「アビスト」 ―3D‐CADを駆使するプロ集団の素顔

モノづくりの開発パートナー 
信頼関係を積み重ね信用を得る 
3D‐CADで自動車の設計に携わる 
自動車産業に向く最適なツール 
3Dプリンターで自動車を製造? 
3D技術で変貌した自動車の生産 


第三章 コア領域への特化と人材育成が強み ―プロフェッショナルな設計技術者集団の条件

パートナーとしての協働が重要 
信条と事業の目的を明文化する 
負荷を撥ね返す健康で元気な人 
人の言葉を聞く耳が素直・誠実 
仕事の苦労から学ぶ忍耐・辛抱 
信頼×信頼=信用で強靭な組織 
プラス思考タイプが長続きする 
三年間の忍耐・辛抱が示す意味 
自動車づくりのコア領域に特化 
人材強化が組織のキーポイント 
技術者の成長をバックアップ 


第四章 次の時代を開拓するアビストH&Fの「浸みわたる水素水」

なぜ、いま水素水なのか
おいしくて身体にいい水を求めて 
「浸みわたる水素水」誕生前夜 
水素水についての理解を深める 
正しい水素水を消費者に届ける 
「浸みわたる水素水」の訴求点 
水素水事業について思うところ 
オートメーション化で品質管理 
世界をターゲットにできる商材 


第五章 アビストの経営理念とビジネス哲学「信頼の和の六輪づくり」に迫る

基本となる「経営十ヶ条」精神 
常に「創業の精神」に立ち返る 
自修自得・自律自省の求道 
空手で鍛えた精神と肉体の賜物 
普通なら現役引退の年齢に 
常識にとらわれない柔軟な思考法 
全体適正のためのチームワーク 
時代は変わっても原資は〝人〟 


第六章 日本のモノづくりとアビストの未来

設計をアウトソースする近未来 
グローバルと国内回帰との関係 
常に試行錯誤するのが成長の糧 
責任感が組織の力を高める要素 
コラボレーション的な連携強化 
ますます信頼の和(輪)づくり 


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『ジェロントロジー』 前書きと目次

Jerontoweb


ジェロントロジー
 ~未来の自分はいまの自分からつくられる~


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著者:山野正義
定価:本体1500円+税
ISBN978-4-87218-408-2
初版発行:2015年5月15日
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  はじめに

高齢者が多数となる社会とは、どのようなものなのか。
また、そうした社会を生きるうえで、私たちはどのような考え方をもち、どのような生き方をすべきか。

これらをすべての世代に共通するテーマとして捉え、研究する「ジェロントロジー」という学問を、前著『生き方の革命』(IN通信社)で日本の読者に紹介したのは平成二十四年のことである。団塊の世代がいよいよ六十五歳の高齢世代に入るという節目の年であり、山野学苑でジェロントロジーの講座がスタートした年であった。

あれから三年が経ち、平成二十六年の敬老の日に発表されたデータでは、六十五歳以上の人口は約三三〇〇万人。これは、日本の総人口の約二六%にあたる。いずれも過去最高の更新である。

ジェロントロジーとは、一九七〇年代から発展した学問で、日本語でいえば老年学や加齢学にあたる。その定義は「生涯にわたる人間の発展と加齢の研究。老化にかかわる諸問題について、医学・心理学・経済学など多くの学問分野の連携によって解決を探究する学際的な学問」とされ、豊かで幸せな高齢社会の実現を命題にしている。

現在、世界一六七か国の大学やシンクタンクで研究活動が推進されているジェロントロジーは、世界一の高齢社会である日本にとってこそ最も必要なものと思われるが、閉塞的な大学の構造が学部の壁を越えた学問を敬遠してきたのか、日本にはずっと〝輸入〟されないままだった。

そうしたなかにあって、その態勢に風穴を開けるべく先端的な教育活動を行っているのが学校法人「山野学苑」だ。世界最高レベルともいわれるアメリカ・南カリフォルニア大学デイビス校ジェロントロジー学部の講座を、オンラインシステムを用いて配信するという画期的な手法を用いたことで注目されている。インターネットを使える環境にあれば、学生はいつでもどこでも世界最先端の研究成果を受講できるのである。
 
山野学苑と南カリフォルニア大学(USC)が提携したのは平成二十年のことだ。

幸せな高齢社会をめざすには美容の力が必要不可欠であるという認識のもと、私たちはお互いのもてる知恵と技能を最大限に分かち合うことを約束し、日本人に向けた教育プログラムの共同開発に取り組んだのである。

人は誰でも美しくなることを願っている。美しくなる権利をもっている。そして美しくあろうとするのは、生きる歓びの表現にほかならない─これは山野学苑の創始者・山野愛子がいつも語っていた言葉である。

山野愛子は美道の理念である「美道五大原則=髪・顔・装い・精神美・健康美」を打ち立て、内面の美と外面の美を高い次元で一致させる重要さを生涯訴え続けた。そこには、美しさの解放によってすべての人々が幸せにあれという、願いと愛が込められている。

この人々への貢献と人間尊重というスピリチュアルな追究が、今日、ジェロントロジーとコスメトロジーを結びつける原点になっていることはいうまでもない。

急速に進む高齢化は、社会のしくみや法制度はもちろん、地域社会のコミュニティ、医療体制、家族関係、住環境……、あらゆる構造を変えていく。ライフスタイルもファッションも、生きる目的すら変わっていく。

そうした、これまで誰も体験したことがない社会で、どのような〝老後〟を送ることになるのか。

今、老後について考えるとき、頭をよぎるのは年金や介護への不安、認知症、老老介護、孤独死などといったネガティブな単語ばかりかもしれない。

しかし、総務省の「統計からみた我が国の高齢者(六十五歳以上)―「敬老の日」にちなんで―」(平成二十六年)によると、高齢者の就業者数は一〇年連続で増加し、平成二十五年には六三六万人と過去最多、就業者総数に占める割合は一〇・一%と過去最高となった。高齢者から現役世代への知恵、知識の伝授は重要であり、何より医療・介護費抑制にもつながることから、〝元気高齢者〟であること自体が大きな社会貢献にもなっているのだ。

とはいえ、人生八〇年時代の長い〝老後〟がどんな日々になるかは、ひとえに若いころからの準備や考え方にかかっている。そして、よりよい老後を迎え、人生を生き切るために、ジェロントロジーは間違いなく役に立つものだと確信している。

USCのある教授は、こんな表現で伝えている。

「私たちは年齢と呼ばれる時間の冒険旅行をしています。高齢者はあなたと同じ旅路のずっと先にいるだけのことなのです」

あらゆる学問を総合したジェロントロジーは、人間とは何か、生きるとは何かという、永遠のテーマを探究する学問でもある。

この本では、そうしたジェロントロジーの基本をおさえながら、講義の内容についてもわかりやすく簡略に紹介したい。

またもし、私自身の発言のなかで、あなたの生き方、考え方のヒントになるものがあれば、どんどん吸収していただければ幸いである。

高齢者のいちばんの持ち物は経験に裏打ちされた知恵であると、ジェロントロジーの研究者は指摘している。本書を読んでいただいたみなさん一人ひとりの経験に裏打ちされた知恵を、次の世代の人たちに伝えていくことは、人生の先達としての義務でもあると思う。

そしてそれは、より豊かな老後を送るうえで間違いなく必要なことだと、私は本書を執筆していて実感した。

この本を通して、一人でも多くの人にジェロントロジーを学びたいと思っていただければ、これほど嬉しいことはない。それが明るい高齢社会の未来を創る一歩になると信じているからだ。

  平成二十七年三月  山野正義


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はじめに


第1章・これからの高齢社会と高齢者像

老いを学ぶことは、人間そのものを学ぶこと 
日本にとって最も必要な学問 
生活のあらゆる面にかかわるジェロントロジー 
コスメトロジーとの融合で始まる新しい学問 
テーマは「生きるほどに美しく」 
「高齢者」の固定観念を変えていく 
山野愛子はジェロントロジーがめざす高齢者像だった 
福祉におもてなしの心をとりこんだ美容福祉 
リタイア後の人生を豊かなものにするために 
あなたはどんな老人になりたいですか 


第2章・日本のジェロントロジー普及に向けて (ジェロントロジー入門)

オンラインシステムで学ぶジェロントロジー 
いつでも・どこでも・何度でも 
世界の英知を結集したレッスン 
理解の度合いを確かめるきめ細かな工夫 
USCがジェロントロジーに取り組んだ理由 
学部の壁を取り払った東京大学 
山野学苑だからこそ可能なこと 
〈カテゴリーⅠ/身体編〉―――――
〝正常な老化〟とは? 
老化による一般的な変化 
運動が老化を予防する 
〈カテゴリーⅡ/精神編〉―――――
鬱病とストレス 
誰もが発症しうる認知症 
高齢者とのコミュニケーション 
〈カテゴリーIII/社会編〉―――――
介護がもたらす家族への影響 
高齢化で変わる家族のありよう 
高齢者の暮らしをサポートするテクノロジー 
ジェロントロジーを特に勧めたい職業 8


第3章・美容の力が高齢社会を豊かにする

美容福祉の真髄、生きるほどに美しく 
ジェロントロジーとコスメトロジーを結びつけた「美道五大原則」 
ジェロントロジー委員会の立ち上げ 
美容福祉がめざしてきたもの 
社会的にも認知された美容福祉 
幅広い社会貢献のできる美容福祉師 
すべての美容師に必要不可欠なジェロントロジー 
基本は人とのつながりを求める人間の心 
外見が変わると心が変わる 
第三者を意識することは生きがいの基本 
東京大学とQOLに関する共同研究 
癌患者の〝生きる〟を支える美容 
忘れてしまった健康な部分に光をあてる 
美道は人々を幸せにする 


第4章・美容福祉が担う地方創生とジェロントロジー

身のまわりからのパラダイムシフト 
美容師を地域コミュニティづくりの切り札に 
本物のコンシェルジュになるための再教育構想 
美容室とコミュニティセンターの一体化が地域活性化のカギ 
地方創生でピンチをチャンスに 
孤立は個人の問題ではなく地域全体の問題 
高齢者は地域を守る主役 
国への提案、地方創生の成功へのカギ 
健康づくり大学との連携 
高齢者にやさしい街づくりが地方創生を牽引 
〝お互いさま〟の精神とノーマライゼーション 


第5章・老いてなお輝くアクティブエイジング

ジェロントロジーの体現者・一〇三歳の日野原重明先生 
サクセスフルエイジングからアクティブエイジングへ 
生きがいがアクティブエイジングを引き出す 
健康年齢の延長が重要 
人の心は発達し続ける 
成人後も成長する脳細胞 
知恵が与えられるということ 
ドキドキワクワクのときめきが大事 
老いてなお輝くために 
自叙伝を書くということ 
「老年的超越」長寿の幸福感 
注目されるブルーゾーン 


最終章・死を見据え、生き切る人生を

未来を意識した選択を 
必要なのは死との折り合いをつけていくこと 
尊厳に満ちた最期を迎えるために 
本当の終活とは 
気づきを経験した受講生たち 
高齢化対策に哲学を 
一〇〇年後の高齢社会とは 
自分自身の第三の人生 
すべての人に生き切る人生を 


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『薬局新時代 薬樹の決断』 前書きと目次

Yakujuweb


薬局新時代 薬樹の決断
 ~「まちの皆さま」の健康を支えるために~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-409-9
初版発行:2015年6月22日
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 はじめに

医師の処方せんを扱う調剤薬局が一般的になり、医薬分業率が七〇%近くに達している現在。

最近は「医薬分業は国民のためになっているか」という再点検の声が、医療関係者だけでなく行政サイドからも起こり、メディアでもとりあげられるようになってきた。

先日、テレビ東京の経済情報番組「ワールドビジネスサテライト」(WBS)でも、「医薬分業は誰のため~患者負担をどう軽減するか」というタイトルで、医薬分業に関する特集が放映された(平成二十七年三月十七日)。患者目線で医薬分業をもう一度考えてみるべきという提言が盛り込まれた内容で、院内処方に戻した医療関係者や患者が主な発言者となっていた。調剤薬局には厳しい印象があったが、そのなかで薬局の新しい役割を打ち出す実例として紹介されたのが、「訪問薬樹薬局瀬谷」の薬剤師の活動である。

訪問の薬剤師は、在宅治療の患者をケアするチーム医療のメンバーの一員である。在宅治療のがん患者の家にあがり、「お薬はうまく飲めていますか?」と同じ目線で確認。上あごを切断したという女性患者が「大丈夫」という表情でうなずくと、症状を見ながら一つひとつの薬の説明に入る。患者の家族は「月に一回訪問される薬剤師さんには、いろいろ勉強させてもらってありがたい」と、安心した様子で語っていた。

番組のコメンテーターである大和総研チーフエコノミスト・熊谷亮丸氏は、調剤室から飛び出した新しい薬局の手ごたえを感じたのだろう。「やる気のある、ああいう薬局が伸びていくような、そんな世の中にしなければいけないですね。付加価値のあることが必要だと思います」と感想を述べた。

本書でとりあげるのは、この訪問薬局を運営する「薬樹株式会社」。新しい理念と提案を掲げ、地域社会と共に歩む二十一世紀型の薬局である。

薬樹の代表取締役社長・小森雄太氏は、

「薬を売ることより健康を守ることが、本来、薬局の果たす役割です。実績を積み上げて、頼りになる存在として地域に根ざしていく必要があると思います」

とコメントした。

小森氏は本書の中心人物で、医療人としての自覚を強く持ち、かつ経営者としても次世代を見すえた発想力と行動力を堅持。薬局のあるべき姿を追求し、成長力ある事業を次々と展開している人物である。

番組のテーマは、医薬分業における患者の自己負担の実態に関してであったが、在宅医療の現実と支援の様子が強く印象に残るものとなった。

薬樹株式会社は、首都圏を中心に一都五県に調剤薬局を約一五〇店舗展開している企業である。

調剤薬局は現在、全国に約五万五〇〇〇店ほどもあり、その数はコンビニエンスストアを上回っている。全国展開している企業もあり、調剤市場は六兆円超えという一大マーケットとなっている。

そのあまたある薬局のなかでも異彩を放っているのが「薬樹株式会社」であることは、ずいぶん前から意識していた。

昭和三十九年生まれ、経営者としては若い五〇歳の小森氏は、創業者である父親の侃氏から受け継いだ薬樹株式会社に独創性と近代性による改革を遂行し、新しい薬局をめざして挑戦を続けている渦中にある。

ダイナミックな動きのなかで、現在のスタンスを最も簡潔に表していると思われるメッセージはこれである。

「薬樹は、あえて全国展開はせず『地域に根ざした薬局』をめざしています。単に処方せんに従ってお薬を提供するだけでなく、一歩進んで地域の皆さまの健康なライフスタイルの実現をサポートしていきます」

ここには、これからの超高齢社会にとって重要な、三つのコンセプトが提示されている。①地域密着、②処方せんがなくても気軽に入れる薬局、③地域のヘルスケアの中心的役割、の三点だ。

そのコンセプトを具現化すべく打ち出したのが、薬局であることの原点とも言える「健康ナビゲーター」宣言(健ナビ宣言)である。

平成二十一年から出店を開始した「健ナビ薬局」の特色は、管理栄養士が店の顔となり、食生活や生活習慣の改善の指導にあたること。薬剤師と管理栄養士の連携によって、一人ひとりに合った健康プランを提供し、地域の健康度アップに貢献しようというものである。六年目を迎えた現在は「健ナビ薬樹薬局」として各地域に定着し、管理栄養士のアドバイスを受けるため、わざわざ電車に乗って訪れる客も少なくないという。「かかりつけ薬局」として地域の予防・未病の拠点に育っていこうとしている。

健康ナビゲーターの役割でもうひとつの柱となっているのが、テレビ番組でも扱った在宅医療である。薬剤師による在宅医療は、始まって間もない分野と言ってよく、手がけている薬局はまだ少数である。薬樹は平成二十二年から訪問健ナビ薬局として先陣を切るかたちでスタートし、現在「訪問薬樹薬局」として首都圏に三店舗を展開している。

注目すべきは、ターミナルケアを中心に居宅をまわるという業態である。残された日々を自宅で過ごす患者と向き合い、「最後の薬剤師」として触れ合う体験は、医療人としても人間としても大きな影響を受ける。本文中には訪問薬樹薬局の立ち上げからかかわってきた薬剤師の証言を掲載したが、生と死の最前線で訪問医師や家族、患者の間で交わされるやりとりは、重たい感動を伝えるものである。

つながりを持った人々の一生を丸ごと看ようという小森氏の思いは、地域に根ざした医療人の覚悟と言えよう。

薬樹の理念(薬樹では「〝進〟理念」と言う)は、

「まちの皆さまと共に、健康な毎日をつくり笑顔とありがとうの輪を広げる」

である。小森氏の魅力は、こうした「深さ」と同時に「広さ」をいかんなく発揮しているところにある。

健康へのこだわりは、突き詰めると個人の健康だけにとどまらないとして、小森氏が生み出したのは「健康な人、健康な社会、健康な地球」のすべてを包括した「健康さんじゅうまる」という概念であった。

「地域社会や自然環境という広がりのなかでとらえ、これらすべてが満たされていることが真に健康な状態」と小森氏は提言する。

「健康な社会」「健康な地球」をめざして、薬樹グループではそれぞれ特色のある取り組みが行われているが、代表的なものは、地域の障がい者が働く「特例子会社・薬樹ウィル株式会社」であろう。そこで働く障がい者たちの存在を通して社員たちがやさしさを取り戻していくという話は、現代社会に貴重な示唆を与えると思う。

また、「健康な地球」をめざして立ち上げたNPO法人「Liko‐net」と「スロースタイル薬樹薬局Liko」は、商品を購入することで地域や地球への貢献ができるという新しいライフスタイルを提唱している。東京の麻布十番にある「スロースタイル薬樹薬局Liko」では、地球にやさしい商品の販売と共にエコ関連のイベントも頻繁に行われ、地域の人たちにとって自然との共生を再考する大事な場所になっているという。

そうした「深さ」と「広さ」に加え、「新しさへの挑戦」も忘れてはならない要素である。

三菱商事との業務・資本提携を皮切りに推し進められている、異業種・異業態とのアライアンス。サプライチェーンの全体最適化をめざして開発・導入した業務サポートシステム「PRESUS(プレサス)」は、日本初の薬局版POSシステムとして話題を呼んだ。システム導入にいたる経緯はまことにドラマチックであるが、小森氏もスタッフも、よくこれほどの困難に合いながらも撤退しなかったものだと感心させられる。変わることへの恐怖に立ち向かい、それを乗り越える様子は、ぜひ本文を読んでもらいたい。

小森氏の話を聞きながら幾度も浮かんできたのは、「まちの小さな薬局から、新しい風が吹いている」という印象であった。地域医療に携わる薬局は、社会インフラの一環を担っているという強い自覚。薬局の職域として、日本の社会保障制度を守る責務があるという深い認識。

外に向かって挑戦を続ける薬樹は、新しい薬局のかたちを見せると同時に、新しい社会に向けた啓発と連帯の種を振りまいていることを実感する。

本書は、薬樹株式会社の事業活動を紹介すると同時に、小森氏の理念、足跡に関しても詳しく語っている。親子二代にわたる型破りな人間ドラマを存分に味わってもらいたい。

同時に、医薬品関連の事業に携わっている人のみならず、過渡期を迎える医薬分業を窓口にして超高齢社会のあり方を考えていく、貴重な指南の書となるであろう。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

  平成二十七年五月  鶴蒔 靖夫


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はじめに


第1章 超高齢社会に求められる薬局・薬剤師の役割

社会保障にとって最大のヤマ場「二〇二五年問題」
地域かかりつけ推進改定と受けとめる 
医薬分業、日本の歴史はまだ四〇年 
薬局の店舗数はコンビニエンスストアよりも多い 
医療提供施設のひとつとして位置づけられる 
調剤医療費の増加と批判 
医薬分業のそもそもの目的とは 
門前薬局型ビジネスモデルの終焉 
六年制の薬剤師の時代に 
地域包括ケアシステムにおける薬剤師の役割 
薬局にしかできないことを追究 


第2章 地域のかかりつけ薬局に ~次世代型薬局・健康ナビゲーター

まちの健康ナビゲーター、健ナビ薬樹薬局 
管理栄養士常駐の画期的スタイル 
「クスリ屋」から「健康支援」へ 
産みの苦しみを経て誕生した「健康ナビゲーター」 
五年間は学びの時期、毎年二割の成長
手本も何もないところから始まって 
『健康ごはん』出版、管理栄養士の奮闘は続く 
地域の健康をサポート、薬不要になるのを喜ぶ薬局 
調剤業務に特化した薬樹薬局、健ナビ薬局との連携 
在宅医療に薬剤師が加わりはじめた 
最も困難なターミナルケアから始めよう 
二四時間、三六五日態勢の在宅医療 
チーム医療に携わる一員として、命と向き合う薬剤師 
その人らしい逝き方を支える使命 ― 訪問薬剤師第一号・永瀬航の話 
訪問栄養士の役割とユニークな見守り 
東日本大震災の試練を通して薬剤師と管理栄養士が認め合う 
原点回帰 ― 地域のかかりつけ薬局として 


第3章 薬樹の理念 ~さんじゅうまる・エコ活動・オハナ

全一四七店舗のリニューアル、新生薬樹に込められたもの 
「健康さんじゅうまる」とは 
「健康さんじゅうまる」のもとで取り組むさまざまな事業 
すべての人と家族であり仲間である「オハナ」 
「クレド」に掲げられていること 


第4章 革新的システム実現による次世代型薬局の姿

国民を驚かせた「くすりの福太郎」事件 
オペレーションシステム「PRESUS」の効果と特徴 
在庫確認と発注作業は職人技の世界だった 
早い時期から取り組んできた業務効率化、PRESUSに変えることに全員が反対 
混乱を乗り越え、もう元には戻れない 
PRESUS導入後のメリット 
PRESUSを広めるのは私企業の利益を超えた社会正義ゆえ 


第5章 小森父子、二つの異なる個性が飛翔の力を生んだ

薬剤師のいない薬局、誕生 
ドクターと連携、新しい調剤薬局スタート 
社名は「薬樹」に決定、命名者へのお礼はクロスの万年筆 
「八・九・一〇」の符号 
ケンカあり家出あり、自立心が生んだ反抗の少年時代 
推薦で日大薬学科へ 
大学院では死に直面し、MR時代は人間の普遍的欲望を知る 
三〇歳を機に武田薬品を退職し薬樹へ 
異様で不思議な会社だった薬樹 
貸し剥がしにあい、綱渡りの日々 
「やらない」と決めたこと 
放浪の日々、今日はどこへ行こうかと 
二度目の「八・九・一〇」 
広さと深さ 


最終章 人を育て地域を守り健やかな社会をつくる薬樹

日本の医療問題を解決するキーパーソンとして 
未病・予防への働きかけ 
異業種との連携 
変えるべきことと守るべきこと 
障がい者も地域を構成する一員として迎えて 
志を同じくする人財にきてほしい。チームづくりの第一歩は「共感」 
近未来の薬局はドラスチックに変化する 
まるごと一生お世話をするのが地域の薬局の責務 


◦コラム◦
《顧客の懐深くまでかかわっていく》 神奈川事業部 事業部長 吉田圭吾  
《一人前になるためのお膳立てをするのが自分の役割》 東京事業部 事業部長 町田剛  
《自らのキャリアをデザインし実行できるスペシャリストの育成を》 常務取締役 吉澤靖博  
《元祖・健ナビ、健康さんじゅうまる》 NPO法人Liko‐net理事長 照井敬子  
《PRESUS導入奮闘物語》 情報本部 本部長 兼 営業推進本部 本部長 金指伴哉  


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『大学からの地方創生』 前書きと目次

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大学からの地方創生
 ~挑戦し続ける大学が地方を元気にする~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-410-5
初版発行:2015年7月10日
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 はじめに

「地方が元気になれば、日本が元気になる」

政府はこうしたかけ声とともに、これまでも地域活性化のためのさまざまな施策を打ち出してきた。しかし、東京を中心とした大都市圏への人口流入は依然として続く一方で、地方では少子高齢化による深刻な人口減少問題に直面するところが多く、格差はなかなか縮まらない。

そうした状況下、安倍晋三内閣では、地方の人口減少問題に本腰を入れて対処するべく、「地方創生」を重点政策のひとつに掲げている。若者にとって魅力ある町づくり、人づくり、仕事づくりを推進することで、地方が成長する活力を取り戻し、人口減少を食い止めようというのがねらいだ。

政府は地方創生の一環として、地方の大学の活性化をも企図している。地方の大学への進学者を増やし、地元への就職を促すことで、人口減少に歯止めをかけようというわけだ。そのためにも、国公立・私立を問わず、地方の大学には、地域再生・活性化の核としての役割が期待されているのである。

しかしながら、現実問題として、地方の私立大学のなかには、少子化による18歳人口の減少により、学生の確保に苦慮し、経営が不安定となっているところも少なくない。日本私立学校振興・共済事業団が行った平成26(2014)年度の調査によると、全私立大学603校中、実に46%の大学が定員割れしているという厳しい状況だ。

ましてや大学関係者は、目前に迫った「2018年問題」に危機感を募らせている。いまは横ばい状態にある18歳人口が、この年からふたたび減少に向かい始めるのだ。そのため、大学間の志願者獲得競争がいちだんと熾烈をきわめることは想像に難くない。定員割れの大学がこれまで以上に続出し、経営破綻に追い込まれるところも出てくるだろう。大学の淘汰・再編が本格化し、小規模の私立大学は相当数が消滅の危機にさらされるのではないかと指摘する声もある。

地方大学の行く末に暗雲が立ち込めるなか、

「地方再生の核となる大学を潰すようなことがあってはならないと思うのです。それに、学校は持続してこそ社会的に意義を有するものであり、永続性の確立は私学経営者の使命です」

と言い切るのが、本書で紹介する高崎健康福祉大学の理事長兼学長・須藤賢一氏である。

地元(群馬県)では「健大」と呼ばれ、親しまれている同大学の前身は、群馬女子短期大学。それが平成13年に開学して、いまや医療・福祉・教育分野の総合大学となり、15年という節目を迎えている。

須藤氏が、群馬女子短期大学の創設者である叔母の須藤いま子氏の遺志を継いで理事長に就任したのは、平成10年のこと。このころにはすでに少子化が進みつつあり、短期大学のままでは生き残れないとの考えから、四年制大学を立ち上げることにした。その際、少子高齢化の将来を見すえ、時代のニーズに応えるべく「福祉や医療を学べる大学をつくろう」と決意したのだという。

「人類の健康と福祉に貢献する」を建学の理念とする同大学は、設立当初の1学部3学科体制から、いまでは人間発達学部、健康福祉学部、保健医療学部、薬学部の4学部7学科体制へと教育範囲を広げた。学生数は、大学院も含めると約2400人にのぼる。

地方にありながら同大学がとりわけ注目に値するのは、なんといっても受験志願者数の多さにある。医療系の専門学部では毎年、志願倍率4~6倍を誇るほどの人気ぶりで、全学部平均でも3倍を超えている。

人気の要因は、教育内容を医療、福祉、教育の分野に特化し、それぞれの分野におけるスペシャリストを育成している点が、まず挙げられるだろう。さらに、一学年の定員を学科ごとに40~100名に抑えた少人数制によるきめ細かな指導や、最新の施設・設備の充実ぶりにも定評がある。

また、平成26年10月には、大学に隣接する敷地に「高崎健康福祉大学附属クリニック(健大クリニック)」を開設している。整形外科とリハビリテーション科からスタートし、平成27年4月には内科を開設。また、同時に「訪問看護ステーション」「女性・妊産婦ケアステーション」も新たにオープンした。

同大学は「地域に開かれた大学」「地域に貢献できる大学」をめざしており、また理事長の須藤氏は「21世紀は健康の世紀になる」と考えていたため、大学設立当初から、いずれはクリニックを開設したいという思いが強くあった。学部の範囲も広がり、看護師、薬剤師、理学療法士、管理栄養士、社会福祉士などコ・メディカル人材を養成するようになったいま、いよいよ機が熟したということだろう。

実は、私は以前にも、地方にあって特色ある教育を展開する同大学の人気の秘密に迫ろうと、須藤氏へのインタビューなどをもとに『夢のその先に』(IN通信社刊/平成20年発行)と題する書を上梓している。

当時は、3学部5学科を擁する大学のほかに、群馬女子短期大学から改称改組した短期大学部が併設されていたが、短期大学部は平成24年に四年制に改編され、人間発達学部子ども教育学科となった。ほかにも学部・学科の改編が行われ、看護学部は保健医療学部と名称を改め、看護学科のほかに新たに理学療法学科が加わり、チーム医療に必要なさまざまな知識を学べる環境が整えられた。

そして大学設立15周年を前に、念願のクリニックの開設にこぎつけたというわけだ。

このクリニックは、同大学の学生・教職員の健康管理センターや学生の実習施設として機能するだけでなく、地域住民が利用できる医療施設としての役割も担っており、まさに「地域貢献」を具現化したものとなった。同時に、クリニックの開設は大学自体の付加価値を高めることにもなりそうだ。

同大学では、このほかにも「地域に開かれた大学」として、地域住民の一般参加を目的とした医療・福祉・教育分野の公開講座の開催、学生のボランティアや市民活動への参加、子ども・家族支援センターの設置など、地域密着型の活動を積極的に行っている。これらの点も、地域の人たちに「健大」として親しまれ、県内外の若者たちから支持を集める要因として挙げられるだろう。

もうひとつ、同大学を特徴づけているのがキャリアサポートの充実ぶりだ。

「きめ細かな指導で学生たちの持つ可能性を育てています」

と須藤氏が自負するだけあり、看護師、理学療法士、管理栄養士など、国家資格の合格率は98%前後と、全国平均を大きく上回る高い率を毎年維持している。また、教職や保育者をめざす学生には、各学科の教員および教職支援センターが一丸となって、学生一人ひとりに対し、採用試験合格に向けての徹底した支援を行う。

さらに、学生たちの就職活動を全面的にバックアップするのがキャリアサポートセンターだ。就職率は毎年90%を上回り、なおかつ学生たちの80%近くが、大学で学んだ医療・福祉・教育等の専門分野を活かした仕事に就いているという。

こうした国家試験合格率や就職率の高さが、受験生やその保護者からの評価につながっていることは言うまでもない。

超少子高齢社会を迎えつつある日本では、今後も医療や福祉分野の専門知識や技術を有する人材のニーズは高まる一方だ。理事長として学校経営を委ねられた須藤氏は、改革を推し進めるにあたり、その点にいち早く着目。医療・福祉のスペシャリストの育成や、地方創生の核となるべく地域密着を前面に押し出した特色ある教育を展開してきた。

また、平成27年4月22日に放送されたNHK「クローズアップ現代」では、「どう育てる? グローバル人材」と題された特集のなかで、同大学の薬草園での取り組みが紹介された。

東アジアで注目を集める漢方薬。同大学で行っている生薬の研究を、ベトナムの薬科大学とパートナーを組み、この分野でのグローバル化を図ろうという試みだ。成長の見込まれる特定分野に絞り、グローバルな人材を育てていく計画だ。

そうした独自性を打ち出したことが功を奏して、四年制大学としての歴史はまだ浅いにもかかわらず、「新設、地方、小規模」という一般にはマイナスととらえられがちなイメージをことごとく払拭した。少子化の波が押し寄せ、多くの大学が受験志願者獲得に苦戦を強いられるなか、同大学の健闘ぶりが際立つ。

「大学も、常に動いていることが受験生の注目を集めるための必要条件ではないか、と考えます」

と語る須藤氏は、開学以来、学部・学科の増開設や再編を行うなど、常に攻めの姿勢で進み続けてきたことも成功の要因ではないかととらえている。

平成26年度には、大学院保健医療学研究科看護学専攻修士課程に、助産師を養成する助産学分野を新設。少子高齢社会だからこそ、確かな知識とノウハウを持つ助産師を養成し、即戦力となる人材を育てたいとの考えだ。

また、このところの高崎健康福祉大学高崎高校野球部の甲子園での活躍も、健大の名を全国的に知らしめるのに大きく貢献しているのではないだろうか。いまや甲子園の常連校となりつつある野球部は、平成27年春の甲子園で準々決勝にまで駒を進めた実力を持つ。

須藤氏の胸の内には、さらに大学の新学部開設の構想も描かれているようだが、一方で学園全体としては、既存の附属幼稚園と高校に加え、小学校・中学校の創設も検討中とのことだ。今後も同大学の動きにますます目が離せそうもない。

本書は、大学淘汰の時代が迫り来るなか、独自性を打ち出すことで地方大学経営の可能性を広げた高崎健康福祉大学のさまざまな取り組みを紹介しつつ、理事長兼学長・須藤賢一氏の教育理念と経営哲学に迫るものである。大学進学を志す受験生やその保護者のみならず、教育に携わる人々、そして日本の教育問題に関心を寄せるすべての人にとって、本書がこれからの教育のあり方を考察するうえでの一助となれば、これに勝る喜びはない。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

  平成27年6月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第1章 地域に開かれた「健大クリニック」を開設

大学に隣接した附属クリニックがオープン
整形外科と内科がそろい、いよいよ本格稼働
地域住民の健康寿命延伸に貢献するために
臨床実習の場としてチーム医療の実践を学ぶ
在宅医療への貢献を見すえた訪問看護ステーション
女性にとって心強い、女性・妊産婦ケアステーション
クリニック以外にも地域密着型の活動が目白押し
地域貢献を促進するボランティア・市民活動支援センター


第2章 医療・福祉・教育分野の総合大学、高崎健康福祉大学

建学の理念は「人類の健康と福祉に貢献する」
人間愛を基盤にした全人教育を実践
少人数制によるきめ細やかな教育
チーム医療を担う人材を育てる保健医療学部
看護師育成の需要に応じて定員を100名に増やす
予防医療分野で期待される理学療法
福祉マインドを持った福祉・介護の専門職を育成
医療と情報技術の2領域が学べる医療情報学科
健康と栄養のスペシャリストである管理栄養士を育成
医療や創薬の最前線に立てる力を養う薬学部
保育・教育の高度な専門職を養成する人間発達学部
自分なりの保育観・教育観の確立を
独自のグローバル化策により世界で活躍できる人材を育成


第3章 学生の進路を全力で支援するキャリアサポート体制

安定性を求める若者に根強い資格志向
全国平均を大きく上回る国家試験の合格率
教員が一丸となって国家試験合格を徹底サポート
全員受験・全員合格をめざして
安易に妥協することなく弛まぬ努力が実を結ぶ
教職、保育職をめざす学生のための「教職支援センター」
就職活動を丁寧にバックアップする「キャリアサポートセンター」
医療現場の人材不足に対し、高まる地方大学への期待
地域貢献への評価が高い就職率を後押し
卒後教育を視野にリカレント教育にも注力


第4章 「地方創生」と地方大学に求められる役割

人口減少克服のために政府が掲げる「地方創生」
地方創生に向けて意識変革が求められる地方大学
地方の中小私立大学支援への特別補助も
受験生の支持を集める魅力ある大学づくり
将来なりたい職業を意識した大学選びの傾向も
いよいよ現実味を帯びてきた「2018年問題」
学生の関心を引きつけられるかが生き残りのカギ
必要に迫られる大学教育改革


第5章 理事長・須藤賢一の教育理念と経営哲学

「森林総合研究所」で好きな研究に打ち込む
研究者から教育者へ、第2の人生がスタート
女子短大から共学の四年制大学への転換
経営者に求められる「分析力」「決断力」「実行力」
学園の永続性を図り、教職員の生活を守る
生来の人徳と人を引きつける力
大学の使命は教育と研究の両輪にあり
「自利利他」の精神を教育理念に掲げる
社会と向き合い、地域に貢献できる大学として
弛まぬ改革で進化し続ける


第6章 高崎健康福祉大学が描く未来図

コ・メディカル養成のさらなる学部学科増設の可能性
発展性が期待される人間発達学部のこれから
食糧危機に備えて農学部新設の構想も
地域住民の「well‐being」をサポートするために
地域の薬学ネットワークで課題解決に取り組む
小・中学校の新設で一貫教育体制の確立も視野に
高大連携事業の推進で選ばれる大学へ
地域での評価を確たるものにするために


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2017/06/21

『ハートフル エンジニアリング』 前書きと目次

Heartweb


ハートフル エンジニアリング
 ~北海道から世界を見すえるアベールジャパンの挑戦~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-411-2
初版発行:2015年8月12日
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 はじめに

戦後の日本経済を支え、日本を世界でも有数の経済大国へと押し上げる原動力ともなった、いわゆる日本型経営の代名詞とも言える「終身雇用制」は、バブル経済崩壊後の「失われた20年」と経済のグローバル化の進展により、終わりを告げた。

それに伴い、急速に市場を拡大してきたのが、人材アウトソーシング・ビジネスだ。厚生労働省がまとめている「労働者派遣事業報告書の集計結果」によると、2013年度の人材派遣市場の規模は、約5兆1000億円にのぼる。

こうした時代背景のもと、技術者のアウトソーシング企業として着実に業績を伸ばしているのが、本書で紹介する株式会社アベールジャパン(本社:北海道札幌市、代表取締役:市原敏雄氏)である。

特定分野に専門特化している企業が多い技術者アウトソーシング業界にあって、同社の事業領域の広さは際立っている。同社社長・市原敏雄氏は、その狙いを、

「幅広い分野を総合的に手がけているため、仮にひとつの業界で受注が減っても、他の分野でカバーできることが強みになる」

と語る。

この狙いが正しかったことは、各種ソフトウェア/ハードウェアの設計・開発から、ネットワーク、通信、建築、土木、電気・電子関連の計測、制御、FA(ファクトリー・オートメーション)、メカトロニクス、プラント、宇宙開発と多岐にわたる分野で、同社の高い技術力を持った技術者が重用され、東証一部・二部上場の大手企業を中心に数多くのビッグプロジェクトに参加している、という実績に表れている。

この結果、同社は創業以来、年平均20%増のペースで売上高を伸ばし、2013年度の売上高は32億円にまで拡大。2015年現在では、全国12カ所に拠点を持ち、社員数約600名を数えるまでになっている。

その高い技術力を生み出す原動力となっているのが、待遇面をはじめとする、技術者が働きやすい環境をつくるための各種サポート体制だ。

アベールジャパンの派遣技術者は、すべて同社の社員である。社員という安定した立場のまま、派遣先で「やりたい仕事」ができるのだ。

さらには、各種手当、高い給与水準、全国各地の拠点に備えられた独身寮といった目に見える部分だけでなく、採用から派遣先の決定、アフターフォローまでを1人の営業担当者がきめ細かくサポートしてくれるので、安心して仕事に専念できるという、目に見えない部分の環境も整っている。

また、同社には定年もなく、未経験者やブランクのあった技術者も受け入れているため、20代~60代まで幅広い年代層の人材が活躍の場を得ているという。人材の育成にも力を入れ、採用後には、業務に必要な国家資格を取得するための勉強会や、ヒューマンスキル向上のための教育を徹底させている。こうした職場環境の良さから、社員の定着率も高い。

同社を率いる市原氏も、もともとは東京出身の技術者であった。父親が金属プレス加工の会社を経営していた影響で、少年時代から機械に関心を持ち、高校を卒業後は小型トランスメーカー、水処理プラント関連企業などで技術者としてのキャリアを積んだ。

しかし、その後に入社した総合エンジニアリング会社で「営業をやってほしい」との誘いを受けたことが大きな転機となった。

市原氏の、技術者の立場を理解したうえでの営業活動は着実に成果をあげ、やがて北海道での事業展開を任されるまでになった。

そして2003年、「もともと会社経営にロマンを感じていた」という市原氏は54歳で起業。景気が低迷するなかでの逆風吹き荒れる経営環境だったが、営業マン時代に培った人脈を活かし、事業は順調に発展していった。

創業以来、同社が掲げている経営理念は「誠実・貢献・創造・挑戦」である。社名の「AVAIL(役に立つ)」は、こうした経営理念に基づいて名付けられた。

また、市原氏の第一の経営哲学は「現場主義」ということにある。

「何かあったら、全国を飛びまわり、自分の目で見て確認する。現場を忘れた経営は崩壊する」

と、市原氏は断言する。

2013年に創業10周年を迎えた同社は、さらなる飛躍をめざし、開発センターを拡充。海外展開にも意欲を見せ、ベトナムやタイなどの東南アジアを中心に拠点を設ける計画もある。

市原氏は、

「培った技術を途上国のインフラ整備に活かしたい。今後は、農・医薬バイオ分野にも進出し、裾野を広げたい」

と、抱負を語る。

その一方で、技術者出身の市原氏の夢でもある、自社でのモノづくりにも今後、力を入れていきたいという。

本書は、技術者のアウトソーシング事業で成長を遂げたアベールジャパンの事業活動を紹介するとともに、同社社長・市原敏雄氏の経営理念、ビジネス哲学に迫るものである。

戦後の日本が飛躍的な経済成長を遂げるその裏で、多くの名もなき技術者たちの活躍があったことは間違いないだろう。

いま、日本は、長く続いた景気低迷から、ようやく抜け出しつつある。そして、日本経済が真に復活をするためには、技術者の力が不可欠と言える。

それだけに、本書は、技術職にかかわる人のみならず、日本の産業の将来に思いを巡らせる多くの一般読者にとっても、貴重な指針の書となるだろう。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

  2015年7月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第1章 日本の産業を支える技術者アウトソーシング

アベノミクスで雇用は改善されたのか
グローバル化と不況で変化した雇用事情
雇用の流動化は必要不可欠
5兆円を超える規模となった人材派遣市場
引く手あまたの技術系派遣労働者
懸念される労働者派遣法改正案の影響


第2章 総合エンジニアリング企業・アベールジャパン

技術者による技術者のための会社
多岐にわたる産業に技術者をアウトソーシング
右肩上がりで前年比売上高平均120%成長を達成
創業わずか11年で全国展開を達成
大手ビッグプロジェクトに技術者を派遣
オリジナルのモノづくりへのこだわり


第3章 幅広い技術と知識を融合し社会に貢献 ― アベールジャパンの事業内容

経営理念は「誠実、貢献、創造、挑戦」
派遣先で重責を担う技術者の存在
派遣先と技術者をつなぐ営業の役割
「採用は購買」― トップクラスの技術者確保に力を注ぐ
RFID入退室管理システムに代表される自社開発
異業種の技術融合で創造力を生む


第4章 人が財産―技術者が本領を発揮できる企業

めざすはハートフルな総合エンジニアリング企業
技術者が働きやすい環境をつくる各種サポート体制
ブランク不問、生涯現役も可能
国家資格取得のための勉強会を実施
ヒューマンスキル向上のための教育にも注力
技術者のあるべき姿・ありたい姿を追い求めて
高い社員定着率が物語る信頼


第5章 創業社長・市原敏雄の経営の原点

父の仕事を通して培った技術への関心
技術者としての経験を積んだサラリーマン時代
転機となった営業職への抜擢
54歳、不況のなかでの「遅咲き」起業
第一の経営哲学は「現場主義」
儲かるしくみをつくるのが経営者の仕事


第6章 アベールジャパンが描く未来展望

ますます存在価値を高める技術者のアウトソーシング
常に危機感を持ち、変化の予兆を察知する
海外での事業展開や農業・医薬バイオ分野への進出も視野に
新しい環境で新しい挑戦を続けることが経営の本質
人材力と技術力で社会貢献を果たす
新たな10年に向けて挑み続ける日々


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『グランヴァンの挑戦』 前書きと目次

Granvanweb


グランヴァンの挑戦
 ~投資用マンション市場に逆発想で挑む~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-412-9
初版発行:2015年9月11日
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 はじめに

厚生労働省の発表によると、2014年における日本人の平均寿命は男性80・50歳、女性86・83歳である。ついに男性の平均寿命も80歳を越え、わが国は世界で最も長寿の国となった。戦後、日本の長寿化は著しく、この70年で男女とも30歳以上、平均寿命が延びた。つまり、昔では考えられないほど、現代の日本人の「老後」というものは、おそろしく長くなっているのだ。

長生きができるというのは、幸福なことには違いない。しかし、その幸福は、健康な心と体、それに人間らしい生活が送れるだけの経済力があってこそ、成り立つものである。

長い老後の生活費を支えるのが、厚生年金や国民年金といった年金制度である。日本で年金法が制定されたのは、厚生年金(当初は「労働者年金」)が1942年、国民年金が1959年で、それ以後は国民皆年金制度が原則となっており、日本の年金カバー率は先進諸国のなかでもフランスに次いで高い。

だからといって、日本の高齢者たちの老後が安泰かといえば、決してそうではない。なぜなら周知のように、すでに日本の公的年金制度は、いまや崩壊の瀬戸際にあると言っても過言ではないからだ。

年金制度が創設された当時の日本経済は、成長軌道に乗り、人口も増加傾向にあった。そのため「年金制度に加入すれば、老後の暮らしは安泰」と考えられたものだった。しかし、それから50年以上もの歳月が流れ、日本の経済状況や年金制度をとりまく環境は激変した。年々進行していく少子高齢化によって、この制度を支える基盤自体が揺らいでいるのだ。すでに若い人のなかには「年金はあてにできない」と考え、自己防衛を意識している人も多い。

その一方で、退職後の生活のための蓄えがまったくないという人も多い。フィデリティ退職・投資教育研究所が2014年に勤労者3万人を対象に行った調査によると、退職後の生活準備額が0円という人が全体の44・8%もいたという。しかも、退職まであと10年足らずの、まさに真剣に老後の生活設計を考えなくてはいけないはずの50代でさえ、男性32・1%、女性で28・6%の人が、老後のための蓄えが皆無だと答えているのだ。

定年後も人間らしい暮らしを営むためには、一定の生活資金が必要なのは言うまでもない。にもかかわらず、その資金を用意できないとなれば、退職後に待っているのは「貧困」である。最近では、そんな貧困にあえぐ高齢者を「老後難民」、あるいは「下流老人」などと言うそうだ。退職してから20年以上も続くであろうシニアライフを老後難民として生きたくなければ、まさに自己防衛するしかないのが現実だ。年金に頼るだけでは心もとないとなれば、退職前に手を打っておくしかない。

事前に十分な貯蓄をして、それを切り崩しながら生活をする、あるいは定年後もパートやアルバイトとして働くという方法もあるだろう。しかし、十分蓄えたつもりでも、思った以上に医療費がかかったりして資金が底をついてしまうというおそれもある。また、定年後に働き口を見つけるのはたやすいことではなく、そもそも体力や健康に不安があったら働くことすら難しくなってしまう。

そしてもうひとつ、年金以外の定年後に収入を得る方法として、「投資」という選択肢もある。投資の対象には、大別すると「金融資産」と「実物資産」の2つがある。金融資産とは預金、株式、投資信託、債券、外貨預金などで、実物資産とは不動産や金などにあたる。預金は、特別な知識やスキルを必要としない手軽な投資ではあるが、世界的に低金利が続いている現代においては、残念ながらまったく頼りにならない。とはいえ、他の投資手段は知識とスキルを必要とするうえに、リスク自体も大きい。そうした諸事情を勘案すると、最も確実性が高く、現実的なのは、不動産投資ということになるだろう。

アベノミクス効果が徐々に浸透し、景気は上昇傾向を示し、それに伴ってインフレも進み始めている。インフレが進行する際に、最も資産価値が上昇しやすいもの、それは不動産である。特に、少ない資金で始められ、家賃収入をローンの返済にあてられるワンルームマンション投資は、高齢者だけでなく現役世代にとっても魅力的だ。

本書で紹介するのは、そうした投資用のワンルームマンションの販売と管理で着実に業績を伸ばし続けているグランヴァン株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役:松平博雄)である。

2015年3月現在、同社の管理戸数は約2600戸。顧客数はオーナー約1500人、入居者約2600人、合計約4100人にのぼる。ちなみに、新規購入者の8割以上が既存オーナーの紹介だという。これは、同社に対する顧客の信頼の高さの証であると言えるだろう。

このように同社が顧客の信頼を勝ち得た秘訣のひとつは、顧客第一主義を貫き、社員に徹底して「気働き」の意識を持たせていることにある。

「気働きというのは、気配りよりも一歩進んだものです。社員各自が能動的に気を利かせて、顧客のために仕事をすることが大切なのです」

と、同社社長・松平博雄氏は語る。そんな同社が掲げる経営理念は次の3つだ。

①グランヴァンは企業活動を通して社会に貢献し、人間尊重とお客様第一主義に基づき、お客様の未来の幸せづくりを目指します。
②グランヴァンは当社で働く人の生活を向上させる為に存在します。
③グランヴァンは当社で働く人が精神的・技術的な能力を高める為に存在します。

投資用マンションの販売と管理からスタートした同社の事業は、オーナーや入居者の数が増えるにしたがって、オーナーの生命保険の見直しや給与所得の損益通算による節税、また相続税対策の相談など、多様化していったという。

さらに、オーナー・入居者のみを対象とした優待サービスを行う「グランヴァンクラブオフ」制度など、同社ならではのサービスも充実している。その内容は、人気テーマパークやホテル、レストラン、パッケージツアーなどの各種プランを用意しているほか、マンション近隣の商店街の飲食店、美容院、ネイルサロン、映画館などと提携することで、顧客にとってうれしいサービスを提供するというものである。これは同社の「地域密着主義」を具現化した施策のひとつでもある。

本書は、投資用ワンルームマンションの販売・管理によって顧客の資産運用を図り、将来の生活設計を確かなものにするビジネスを展開しているグランヴァン株式会社の事業活動を紹介するとともに、同社社長の松平氏の今日までの歩みをたどり、その経営理念と人生哲学に迫るものである。これは、老後の生活設計の確立のために有効かつ安全な投資を考えている方のみならず、便利で快適なマンションで都市生活を楽しみたいと考えている方にとっても、貴重な指針の書となるに違いない。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

  2015年7月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第1章 将来の生活は自分で守る時代

約9割が老後の生活に不安を抱いている日本
年金自己防衛時代の到来
金融資産と実物資産のどちらを選ぶか
景気回復で上昇し始めた不動産価格
人気を集めるワンルームマンション投資
史上最低の長期金利はマンション経営の絶好機
ワンルームマンション投資のメリット・デメリット
マンション投資で実績を示すグランヴァン


第2章 オーナー・入居者・地域社会に貢献するグランヴァン

開発・仕入れから販売・管理までを一括で手がける
グランヴァン設立の経緯
時代に逆行するかのように賃貸管理業務を開始
未来の幸せのトータルライフプランナーとして
オーナーから高く評価された「顧客第一主義」の経営方針
「3つのC」を基本コンセプトにしたグランヴァンシリーズ
新規購入の8割以上が既存オーナーの紹介
管理戸数約2600戸、顧客総数4100人の実績
オーナー・入居者・地域とともに発展


第3章 グランヴァンが提案するマンション経営の魅力

時代とともに変化してきたワンルームマンション
外国資本の参入に踊らされる不動産業界
一癖ある業界で正攻法を貫くグランヴァン
淘汰の時代を迎えた不動産販売業界
魅力あるマンション経営、ただし悪徳業者にはご注意を
グランヴァンがめざす「感動のアフターサービス」
オーナー・入居者を対象に独自の福利厚生サービスを提供
リスクを最小限に減らす家賃保証(サブリース)システム
顧客に高い評価を得た東日本大震災時の対応
次第に広がるオーナーどうしの輪


第4章 松平博雄のめざす企業ビジョン

松平の魂が宿る経営理念
元演歌歌手という異色の経歴
不動産の世界に入って能力を発揮
「正々堂々のビジネス」を標榜
座右の銘は「君子は易きに居りて以て命を俟つ」
「日々周囲への感謝」を自らの心がけとする
社員を大切にすることで企業の質も高まる
社員に浸透する、「気配り」よりも「気働き」の精神


第5章 顧客の声が企業を成長させる

顧客の本音を聞き出すためのさまざまな工夫
《17年前の担当者が、いまもいてくれる安心感》―金融系IT企業 執行役員 宮田隆司(51歳)
《変動の少なさがワンルームマンション投資の魅力》―建設会社勤務 竹下均(52歳)
「妻の反対」に誠意を持って対応するグランヴァン
グランヴァンに寄せられるオーナー&入居者の声


第6章 グランヴァンが描く未来展望

効率性よりも重視すべき、顧客の心をつかむものとは?
社員の精神・技術の向上に全社をあげて取り組む
社員の5割以上が宅建士資格を取得
多数の有資格者を擁する充実の人員体制
自己研鑽ができるプロ意識の高い会社に
社員にとって魅力的な会社になるために必要なこと
付加価値の創造が生むグランヴァンの戦略
オンリーワンをめざして、さらなる差別化を推進


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『不運は神様からのおくりもの』 前書きと目次

Takanoweb


不運は神様からのおくりもの
 ~美の伝道者「たかの友梨」ができるまで~


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著者:たかの友梨
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-413-6
初版発行:2015年10月6日
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はじめに―「たかの友梨」37年の歩みの集大成として、夢と共に生きて

東京・新大久保のビルの一室に「たかの友梨ビューティクリニック」がオープンしたのは、昭和53(1978)年のことでした。

当時は「エステティックってなに?」と、会う人ごとに聞かれた時代です。

それからの37年間は、「エステ」という未墾の地を肥沃な大地に変えるための、試練の日々でした。

前を歩いて手本を示してくれる人が誰もいないなかで、わたしを支え、勇気を与えてくれたのは、「夢をかなえる」という思いだけでした。

わたしはいつも、視界の先に夢を描き、それに向かって一途に歩みつづけてきました。美容の中心地・青山に店を開く夢、高層ビルに入居する夢、世界中のエステを自分のものにする夢……。

自分を信じ、あきらめず、精魂込めて〝いま〟をクリアすることで、それらの夢は、一つひとつ実現していきました。

人生のいちばん最初の夢は、〝養母〟のようにきれいになること。

養母は男運が悪く、わたしは少女時代、親戚の家を転々とする日々を送りました。そして中学を出ると、養母の勧めで、理容師という、思ってもみない職に就くことになったのです。

働き詰めの日々のなかで、孤独なわたしを支えてくれたのは、「日本一の理容師になる」「いつかきっと成功する」という夢でした。

さまざまな試練は、わたし自身の内に隠れていた可能性を引き出し、わたしはパワーと情熱をもった女性になりました。

もし、わたしに、ほかの人にはない力が備わっているとしたら、それは「夢を見る力」ではないかと思います。

もうひとつ、わたしは厚くて大きい手を、生まれつき授けられました。

わたしのマッサージを受けた人は、手のひらが肌にすいつくような極上の気持ちよさを味わうといいます。「まるでエステティックをするために生まれてきた手」と、いわれたこともあります。

現在、エステティックは、女性にとってたいへん身近なものになりました。「たかの友梨ビューティクリニック」は全国に100店舗以上に広がり、そこで働くエステティシャンは、たくさんの女性に美しさと幸せを与えつづけています。

平成25年には、長年の夢であった美容の総合学校「学校法人たかの友梨美容専門学校」を開設するにいたりました。エステ界でも画期的な出来事と注目を集めたこの学校の設立は、まるで夢のほうからわたしに近づいてきてくれたような、不思議な出会いの賜物でした。

これから、この学校から巣立っていく優秀な美の職人たちが、日本の内外で力強く羽ばたいてくれることを期待しています。

60代半ばを超えたいま、わたしには、まだ大きな夢が残っています。それは「たかの友梨」のブランドを、100年先、200年先も輝く存在にさせることです。

「たかの友梨」という名前が、時代を超えて多くの人に元気と勇気を与えることができたなら、こんなうれしいことはありません。そのために、美容総合学校の開設とともに、「たかの友梨」独自のコスメの開発にも力を入れ、ヒトとモノの両面から、夢の実現に向けて歩を進めていくつもりです。

わたしは、夢と共に生きてきました。

あなたも、どうぞ夢をかなえるために、もてる力を尽くしてください。

あなたの夢をかなえることは、あなたを取り巻く周囲を変え、未来を変えることにつながります。

この本は、60年余の人生を歩んだわたしの集大成として編んだものです。エステのパイオニアとして、女性起業家として、そして出自の不運にめげずに成功を果たしたひとりの女性のライフヒストリーとして、わたしのすべてを投入しました。

エステに関心のある方はもちろん、人生はこれからという若い方、成功を夢見る方、美しさの神髄を探ろうという方……、どんな関心からお読みになってもかまいません。この本のなかから、前向きで自分らしい人生を切り拓くためのヒントが見つかったなら、とてもうれしく思います。

人生もまた起承転結と申します。起こして認められ、転じて結ぶ。わたしはちょうど「転」の時期にあると思っています。いままで育ててきたブランドを基盤に、新しい分野に転じ、輝く結びに向かうとき―。人生は、これからなのですから。

 平成27年8月  たかの友梨


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はじめに―「たかの友梨」37年の歩みの集大成として、夢と共に生きて 


序 章 たかの友梨美容専門学校

トータルビューティを実現できる人材を育てる新時代の学校 
美と癒しの永遠のテーマに取り組む学舎 


第1章 出生のハンディキャップを努力のバネにして

不運だったけれど、不幸とは思わない 
自分ではどうすることもできない定め 
美しい養母はあこがれの人、だが不幸な結婚が運命を狂わせる 
義父の虐待、借金で一家離散に 
踏切をくぐりかけた八千代、弟の死に冷たい言葉をかける実母 
実母から教えてもらった、女神の前髪をつかむコツ 
炊事、洗濯、薪集め、イモ掘り……、祖母の家ではすべての仕事をまかされた 
「働かざる者食うべからず」祖母の金銭哲学には真理があった 
結婚式の花嫁姿にうっとりと 
家ではひとりぼっちの孤独な日々 
衝撃の事実、母だと思っていた女性は養母だった 
進学は許さない、理容師になりなさい 
下働きの日々 
努力は決して自分を裏切らない、日本一になるため東京へ 


第2章 美しさに目覚め、「たかの友梨」誕生へ

人生二毛作、昼は理容店、夜は居酒屋 
ニキビに悩まされた暗い日々 
ビューティアドバイザーになり美に目覚める 
新しい世界の新しい価値観 
すべてのお金をなげうち、パリへ! 
パリで出合った「引き算の美学」 
美しくなることは病んだ心も癒すこと 
自ら開発した美顔器「ヴィッキー」が大ヒット、「たかの友梨」の誕生 
悶々とした気持ちを超えた先に見つけた自分らしさ 
「たかの友梨ビューティクリニック」1号店オープン 
どん底から大繁盛へ 


第3章 新時代のエステティックのための歩み

日本のシャンゼリゼ通り、青山に新店舗オープン 
あなたのやることならお金を出しましょう 
多店舗展開の明と暗 
教育へのこだわり 
成功の証、新宿センタービルに入る 
家庭も完ぺきをめざしたが 
地獄の特訓で自分を知る 
業界に一大インパクトを与えた松田聖子のCM 
エステ・デ・ミロード事件 


第4章 美とエステティックの神髄を求めて

「エステとはなにか」を追究する旅 
厳選された世界のエステを体験できるサロンに 
心と体はつながっていて、小宇宙であることを教えてくれたアーユルヴェーダ 
門外不出、幻のトリートメント「ロミロミ」の感動 
美=健康とリラクゼーション、エステティシャンはカウンセラー 
脱毛からの撤退、心と体を癒すセラピストとして 
代替医療としてのエステティックの可能性 
「たかの友梨ビューティクリニック」から変わるエステの概念 


最終章 永遠の「たかの友梨」ブランド

ISO9001取得、スーパーブランド認定も 
「たかの友梨エステファクト」満を持してのコスメ登場 
美と健康のリゾートホテル「桜庵河口湖ホテル」 
女性にとっていちばん大事なことは「自立」 
自立する女性に必須の技術と経済を提供 
「たかの友梨」のもとに集まる人々とよい関係を 
お金は人のために使うもの、成功した意味を教えてくれる貢献活動 
東日本大震災で実感した女たちの生きる力
他人と過去は変えられない、でも自分と未来は変えられる 
結婚はおまけと考えて 
美しくなりポジティブな人生に向かう「シンデレラコンテスト」 
37年を経て、長年のお客さまと共に 
未来に輝く「たかの友梨」をめざして 
人々に夢を与えつづける「たかの友梨」として 

追記 


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『二松學舍大学の挑戦』 前書きと目次

Nishougakushaweb


二松學舍大学の挑戦
 ~時代を超えて受け継がれる建学の精神~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-414-3
初版発行:2015年10月15日
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 はじめに

「山は樹を以て茂り、国は人を以て盛なり」

吉田松陰の言葉である。

この言葉が語るように、経済、文化、歴史……、すべては人の営み、そしてその結果であり、国の隆興を支えるのは、何にもまして「人」なのだ。人づくり・教育とは、国づくりと同義語だと言って過言ではない。私はそう考えている。

この、国家最大の命題とも言える人づくりにおいて、重い責を担ってきたのが〝最高学府〟である大学だ。

世界的にも熱心な教育熱を誇る日本。大学は、その熱い期待に応える教育の仕上げの場である。有用な人材を育成することで、日本の繁栄を実現し、その繁栄を支えてきた役割は極めて大きい。現在、日本の世界における高いプレゼンス(存在感)は、日本の教育、とりわけ大学教育の成果だと認めることに異論はないと思う。

だが、その大学が現在、大きな壁に直面している。言うまでもないが、最大の要因は、少子化の波が押し寄せてきたことだ。

もっとも、ここ十数年は、大学はむしろ増え続けている。少子化の波を上回って高まる大学進学率が、追い風になってきたからだ。だが、その限界が、ついに視野に入ってきた。

とりわけ危機感を強めているのが私立大学、なかでも地方の大学や中小規模の私立大学だ。現在、すでに40%近くの私立大学が赤字に転じ、経営的に存続できるかどうかの分岐点に立っているのである。

しのび寄る危機を察知した大学は、懸命にそれぞれ策を講じようとしているが、その方向性が似通っていて、金太郎飴のように似た大学ばかりが目についたり、何をめざしているのかわからず、ただ混乱ぶりを露呈するばかりの大学も少なくないのが実情だ。厳しい生き残り競争に打ち勝っていくためには、各大学が旗幟を鮮明にして、それぞれ独自の存在感を発揮していかなければならないはずなのだが、それができている大学は多くない。

そうしたなかで、私が現在、強い関心を抱いているのが、本書でとりあげる二松學舍大学である。

二松學舍大学は、一般的に言えば危機にさらされているはずの、中小規模私立大学だ。だが、逆にそれを強みとして、教育の原点をしっかりと踏まえながら、加速度的に変わっていく社会のニーズに対応しているのだ。そして現在、最も求められている、知力にあふれ、自己判断力や行動力を備えた学生を育成して、ユニークな存在感を放っている。

「国漢の二松學舍」という評判を耳にしたことがある人は、少なくないはずだ。二松學舍大学は、創立140年になろうとする長い歴史を通じて、一貫して、日本人の人間力の基盤となってきた道徳観、倫理観を醸成する「漢学」教育と、すべての学問、いや、社会生活の基盤となる「国語力」の強化に軸足を置く教育を、行ってきた。現在は、この「国漢」を主軸とする文学部に加えて、国際政治経済学部も設置。国語力を基盤に、各学科の高い専門性を加えた、個性ある教育を展開している。

キャンパスは東京の一等地・千代田区九段と千葉県柏市にあり、大学院、附属高校2校(九段・柏)と附属中学1校(柏)も併設している。附属高校(九段)は、何度も甲子園に出場する野球の名門校で、「二松學舍、ここにあり」の英気を日本中にアピールしている。

私が二松學舍大学に強く関心を引かれた最大の理由は、真の国際人を育成するために、「国語力をしっかり身につけること」を基盤に置いていることだ。

情報社会だ、国際化の時代だと言っているが、それらすべての基盤になっているのは、確かな母国語力、日本語力であるはずだ。昨今の若者の日本語の乱れ、日本語力の衰えは、目を覆うものがあるが、国語力の衰退は、やがては日本人のポテンシャルの衰退につながってしまう。まず国語力の強化をという二松學舍大学の指針は、まさに教育の王道を行くものだと私は確信している。
     
国語力重視の原点は、二松學舍大学の創生時にさかのぼる。

二松學舍大学は1877(明治10)年、漢学者の三島中洲によって設立された漢学塾・二松學舍をルーツとする。当時の日本は、欧米をはじめとする先進国の文化が取り入れられ、洋学へ、洋学へとなびく、まさに西洋学が華やかな時代であった。しかし中洲は、西洋文明の進んだ部分を自分たちのものにするには、まず「母国語を正しく理解し、使いこなせること」、さらには「自国の文化をしっかり学び、正しく理解していることが欠かせない」と、国語力と漢学の素養を磨くことの重要性を毅然と説いたのである。

創設時、三島中洲は、二松學舍大学の建学の精神を、

「東洋の精神による人格の陶冶」
「己ヲ修メ人ヲ治メ一世ニ有用ナル人物ヲ養成スル」

と唱えた。この建学の精神のもとに、二松學舍には「絢爛と」と形容したいほどの逸材が集まってきた。明治時代を代表する文豪・夏目漱石、現代書道の父と尊敬を集める書家・比田井天来、憲政の神様と呼ばれた首相・犬養毅、日本の女性運動家の草分け・平塚雷鳥、柔道家・嘉納治五郎……。二松學舍の歴史には、日本の近代史をリードした各界の著名人の名が、綺羅星のごとく並んでいる。

この建学の精神を現代風に言えば、

「日本に根ざした道徳心をもとに、国際化、高度情報化など知識基盤社会が進むなかで、自分で考え、判断し、行動する、各分野で活躍できる人材を育成する」

となるだろう。

「国際競争が激化する時代、競争のベクトルは技術や情報だと考えられがちですが、ベースは知識基盤社会なのです。現在、最も強く求められているのは人間教育。よりよい社会のために、自分は何を知的武器にして、どういう形で貢献していくか。大学は、それを選択し、実際に行動に移せる人材を、育成していかなければならないと思っています」

学校法人二松學舍理事長の水戸英則氏は、力強い口調でこう語る。ひと言で言えば、鋭く感じ、深く思考し、そのうえで自ら判断して、確かに行動できる、人間力の高い人材だ。

「そうした人間を育成する基盤になるのは国語力です。人文科学、社会科学、自然科学など、すべての学問・研究は、多くの書を読み、多様な人と触れ合い、語り合い、さらにはアウトプットすることによって、磨き上げられていくのですね。こうしたプロセスを経て、人間性が陶冶されていくわけです」

二松學舍大学学長の菅原淳子氏も、そう言葉を添える。

二松學舍大学のこの教育方針は、社会にも高い評価を得ており、卒業生の就職状況も好調だという。教員希望者をはじめとして、公務員試験など資格試験のサポートに注力しているほか、一般企業をめざす学生には、インターンシップ体験の奨励や「社長弟子入りプロジェクト」など、学生のモチベーションを高め、企業の理解も深められるキャリアサポートも充実している。

名実ともに国漢の二松學舍の名を引く「東アジア学術総合研究所」を擁していることも、二松學舍大学の存在価値をおおいに高めている。陽明学研究、日本漢文学研究など、ここで行われている活動は、ハンガリー、イギリス、ベトナムなど海外にも広く知られており、「いまや、二松學舍大学の名は、海外でのほうが有名なのかもしれません。日本漢学を学ぶなら二松學舍大学と言われています」(東アジア学術総合研究所所長・髙山節也氏)と言うほどだ。海外留学の推進、海外からの留学生の受け入れにも力を注いでおり、それらの活動をサポートする「国際交流センター」も設置されている。

公開講座と言えば、「『論語』の学校」の開催も、社会的に大きな意義を持っている。江戸の寺子屋では、小さな子どもたちが「子曰く……」と、大きな声を張り上げて『論語』を読んでいたものだ。音読から暗記へと進み、日本人の精神と道徳の根幹となっていった『論語』。「『論語』の学校」は、その『論語』を読み解く力、論語リテラシーを高めることにより、ともすると見失われそうになっている日本人の精神性を、改めて確立しようとの取り組みに挑んでいる。

こうした取り組みと並んで、二松學舍大学が注目されている理由は、目下、真の大学改革を力強く進めていることだ。

理事長の水戸英則氏は、元日銀マン。財務、経済のプロフェッショナルだ。

現在、日本の大学は、大きな岐路に立っている。少子化により、学生数は今後、急激に減っていく。私立大学は、教育機関であると同時に事業体という顔もあり、どんなに高邁な教育理念を掲げても、経営的に破綻してしまえば、教育の場から消えていかなければならないという宿命を持っている。

2011年、理事長に就任した水戸氏は、140年になろうとする二松學舍の歴史をこの先も永く続けていくために、二松學舍大学の経営改革に乗り出し、「N’ 2020 Plan」と呼ぶ将来計画を策定。「教育機関」から「教育サービスを提供する事業体」への変換という目標を掲げ、マーケットイン発想を基盤とした新たな大学への転身をめざしている。

「N’ 2020 Plan」は、教育現場の改革は言うまでもなく、大学経営の健全化に必要な、強力なガバナンスの確立などを力強く推進している。そうした努力の成果は顕著で、学校法人二松學舍は、格付投資情報センター(R&I)の財務格付で「A-(シングルAマイナス)」という高い評価を得ている。

現在、日本の大学のあり方をめぐり、国政でも盛んな議論が行われている。だが、ターゲットにあげられる大学は、東大・京大・阪大などの有名国立校や、慶應、早稲田、上智など、いわゆる一流大学に終始しがちだ。

しかし、社会はピラミッド構造になっている。最も厚く、重層な部分は、中間層が支えているのだ。二松學舍大学などの私立大学は、社会を支える中間層労働力の源となる人材を輩出するという、国にとっては実質的に最も重要な役割を果たしている。真の大学改革は、中間層大学こそが真摯に取り組まなければならない課題であるはずだ。

「N’ 2020 Plan」は、その意味でも、国の大学改革路線に一石を投じる貴重な指針となっている。

本書では、原点回帰を基盤に、王道を堂々と進みながら、変革にも果敢に挑む二松學舍大学のあり方を、さまざまな角度から詳しく紹介していきたい。

本書が、大学選択を前に、大学で何を学び、それをその後の人生にどうつなげ、どう結実させていくかを悩んでいる受験生や、その保護者たちが、確かな答えを見いだす一助となればと、願ってやまない。

また、本書から、日本の教育の今後のあり方を考える手がかりを、1つでも2つでも読み取っていただければ、著者として、これ以上の冥利はない。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

  2015年9月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第1章 変革を迫られる日本の大学

日本の成長戦略の一翼を担う大学教育
驚くほど低い日本の大学の世界評価
喫緊の課題とされる大学の国際競争力強化
分厚い中間層の人材育成を担う中・小規模大学の役割を再評価
危機感迫る、日本の大学を取り巻く環境
大学生バブルで乱立した大学
大学淘汰の時代に突入
いっそう熾烈化する大学間の競争
入試の多様化と学生の質の低下
囁かれる2018年問題
ミッションを問われる私立大学
大学本来の使命に立ち返り、改革を進める二松學舍大学
温故知新の精神を現代に根付かせていく


第2章 真の国際人育成をめざす二松學舍大学の教育

Ⅰ 国漢の二松學舍大学から人間性育成の二松學舍大学へ
 皇居を臨む、大学教育の理想の場に建つ学び舎
 まず、国語力をしっかり体得。日本人としての知識基盤を確立する
 コミュニケーション力に優れた人材を養育する
 国語力強化教育を実施
 漢学の素養で人間力を涵養していく
 英語による授業など、グローバル教育も意欲的に展開
 世界各地区の7校と協定を結び、積極的な国際交流を展開
 二松學舍大学の国際交流、3つの強み
 カスタムメイドの教育を実現する多様な授業内容
 マン・ツー・マンのフォロー体制
 女子力を磨く二松學舍大学
 学びの機会均等を実現する各種奨学金制度を完備

Ⅱ 企業に、教員に、公務員に。全方位に広がる卒業後の進路
 1年次からキャリア教育を必修に。「仕事と人生」を熟考させる
 学生と採用側企業、双方の期待に応えるキャリアサポート
 ユニークな「社長弟子入りプロジェクト」
 大手企業から堅実な中堅企業まで、多岐にわたる就職実績
 教員をめざすなら二松學舍・教職支援センターの設置
 懇切丁寧な教職サポート
 ほかにも取得可能な資格を積極的に支援
 公務員試験も徹底的にサポート

Ⅲ 東洋文化と国際社会を結ぶ、現在、最も求められる教育内容
 文学部、国際政治経済学部の2学部で実施される人間教育
 二松學舍大学の総合的な価値を高める2学部の強い連携
 自ら発信し、表現する力を培う文学部教育
 国内最大級の規模を誇る10の専攻を持つ国文学科・中国文学科
 国際的視野を養い、国際人としてのスキルを磨く国際政治経済学部教育
 世界を視野に、複合的な視点で政治・経済・法律を学ぶ3専攻
 高度な学問研究を実現できる大学院
 世界の漢文研究の中軸・東アジア学術総合研究所
 「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」に採択される
 附属高等学校、附属柏高等学校、附属柏中学校
 広く一般に向けた「『論語』の学校」
 文学賞受賞など、多彩な輝きを放つOB・OGたち


第3章 脈々と息づく、138年の歴史と伝統

Ⅰ 漢学塾の開塾から大正・昭和の戦前まで
 日本近世・近代史を牽引する人物を輩出してきた二松學舍
 学祖・三島中洲と「二松學舍」
 二松學舍大学に学んだ明治・大正・昭和の偉人たち
 経済的基盤を固める
 中洲没し、山田準が後継者に
 専門学校の設立
 昭和初期~太平洋戦争終戦までの二松學舍

Ⅱ 戦後の復興から二松學舍大学拡充までの歩み
 戦後復興期の二松學舍
 二松學舍の飛躍・発展期を実現した浦野匡彦
 吉田茂元総理大臣、二松學舍舎長に推戴
 大学院の設置

Ⅲ 創立100年までの二松學舍大学の歩み
 福田赳夫元総理大臣、二松學舍維持会長に推戴
 附属高等学校、甲子園出場へ
 時代は平成へ。二松學舍の新たな歴史
 創立130年以降、二松學舍、未来へ始動


第4章 未来への改革「N’2020 Plan」

10年後、20年後を見すえた長期ビジョン「N’ 2020 Plan」
日銀マンから教育者へ
「N’ 2020 Plan」の誕生まで
転機に立つ大学教育と経営
大学危機の認識を促す『今、なぜ「大学改革」か?』
大学は、「教育機関」から「教育サービスを提供する事業者」へ
「N’ 2020 Plan」の構成
「N’ 2020 Plan」の達成に向けた取り組み
さらなる成果拡充のために


第5章 「二松學舍ブランド」の引き上げで理想の大学づくりをめざす

知の宝「古典」を生かし、日本再生に貢献する人材を輩出する
二松學舍「建学の精神」に込められた、真に有用な人材育成への思い
真の「国際人」を育てていく
二松學舍大学ならではのブランド価値を磨いていく
社会的ニーズとのマッチングを図り、実社会が求める人材を輩出する
父母らの期待に応え、「親が選びたくなる大学」へと進化する
学費負担を少しでも軽減したい。二松学舎サービスの真の狙い
二松學舍から世界へ情報発信するアンテナユニバーシティ
視野には新学部の創設も
「温故知新」から「温故創新」へ


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『心で寄り添う“終の住処”』 前書きと目次

Tsuinoweb


「先生方」への感謝と尊敬
心で寄り添う“終の住処”
 ~高品質の住まいとサービスで最高の顧客満足を~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-415-0
初版発行:2015年11月2日
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 はじめに

日本が超高齢社会に突入したのは、2007年のことだ。全人口に占める65歳以上の人の割合、いわゆる高齢化率が21・5%になったことが、危機感を持って伝えられた。そして2014年10月1日現在、高齢化率は約26%と過去最高を記録した。

国は、世界に類を見ないスピードで進む高齢化に懸命に対応しようとしているが、次々出現する問題に、なかなか追いついていけないのが現状である。

高齢化とともに進む少子化により、家族の形態が変わるなか、老老介護や一人暮らしの世帯は増えていき、孤独死の報道にも「他人ごととは思えない」という声が聞こえてくる。

特別養護老人ホームに入所できない高齢者は、全国で52万人以上にのぼると言われている。つまり、待機高齢者の数は、昨今問題視されている待機児童の数より、10倍以上も多いのだ。

老後をどこですごすのか。高齢社会の最大の課題は、「終の住処」をどうするかということにある。家族で支えきれない高齢者の受け皿づくりは、官民をあげて早急に取り組まなければならない課題である。

そこで近年、クローズアップされているのが、「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」である。

サ高住とは、安否確認や生活相談などのサービスが付いている、高齢者向け賃貸住宅のこと。対象は60歳以上の単身・夫婦世帯で、高齢者の居住の安定を確保することを目的としている。国土交通省と厚生労働省が共同管轄するという異例の連携で、2011年4月から制度が施行された。

最大の特徴は、建物賃貸借契約を結ぶことで入居できることにあり、入居者は、ワンルームマンションと同じ感覚で暮らすことができる。建物はバリアフリー構造を有し、いざというときのために介護・医療機関とのつなぎの環境が確保されている。料金は年金で賄える範囲が前提となっており、要介護や入院になっても追い出されることはない。施設によっては看取りも行う。

政府は、このサ高住を高齢者住宅の切り札として、10年後には60万戸に増やすという壮大な目標を掲げ、工事費の1割相当分の助成金に加えて、さまざまな助成措置や税の軽減措置を総動員し、民間に推奨している。その効果は絶大で、医療・介護だけでなく、さまざまな業種が参入し、2015年2月時点の登録戸数は17万2000戸にも及んでいるという。

一種のブームとも言える状況だが、立地や設備、サービス面などに、事業者ごとのばらつきも見られ、「玉石混交」との声もあがっている。また、国土交通省と厚生労働省の間での齟齬もあり、ハードとソフト両面に及ぶ総合的な対策が望まれている。

こうしたなか、良質のサ高住を提供し、躍進している会社から、詳しい話を聞く機会を得た。それが、本書で紹介する株式会社三英堂商事である。

2014年7月、栃木県下野市にサ高住第1号の「家族の家ひまわり石橋」をオープンして以降、栃木県と埼玉県内に7軒のサ高住を新設。近い将来には約49カ所の開設が視野に入っているという。

サ高住「家族の家ひまわり」の主な特徴は、以下のとおりだ。

①リーズナブルな料金体系―石橋の場合、家賃・共益費・生活支援サービス・食費を含んで月額税別12万1000円。周囲のサ高住と比較して1万円近く安い。
②ほかのどこにもない独創的な空間―共有スペースを広めにとって、「小さな街づくり」をコンセプトに、笑顔と楽しさのあふれる空間を提供。
③建物内部には、居宅、訪問、通所の介護事業所を併設。デイサービスも隣接している。医療機関とも提携。
④きめ細かく行き届いたスタッフのケア―スタッフは入居者を「○○先生」と呼び、人生の大先輩として感謝と尊敬の念を持って、きめ細かなケアを行っている。

「これからはサ高住の時代です。高齢者対策だけでなく、雇用を生み出し、地域活性化にもつながるものですので、全力を尽くして取り組んでいかなければならないと思っています」

こう力強く語るのは、三英堂商事の創業者であり代表取締役社長の上村岩男氏である。

上村氏の経営方針である顧客本位の施設運営によって、サ高住「家族の家ひまわり」は、入居者の家族や地域から大きな信頼を寄せられている。

三英堂商事は、介護業界では異質の経歴を持つ会社である。そもそもは1977年、不動産業として上村氏によって設立され、企業の独身寮の管理運営という分野で急成長を遂げた。不動産業で成功を収めたのち、1998年に介護事業に参入。以後は、介護付き有料老人ホーム「家族の家ひまわり」やグループホーム「気手来手くんの家」の運営を軸に事業を進め、首都圏に合わせて23カ所の施設を開設した(2015年9月現在)。

不動産事業と介護事業は、一見かけ離れたもののように思えるが、実はその底辺部分のハードとソフトが精巧につながることで従来よりも一段上の施設・サービスを提供することが可能となる点で、共通するものがある。独身寮という特殊な建物が高齢者施設にふさわしい特質を持っていることに、いち早く着目した上村氏は、自ら介護事業に飛び込むことで、施設運営に新たな可能性を証明していくことになった。

その経営戦略の要点は、上村氏が築きあげた俺流、いわゆる「自前運営」にある。サ高住設立にふさわしい土地の情報収集から始まって、土地活用のマスタープラン、建築施行会社の紹介、入居者募集、賃貸借契約という、不動産業に関わる段取りに加え、居宅介護支援事業所の開設、職員の採用、研修、給食の提供など、入口の部分から施設運営開始までの工程が自前で行われるのである。これによって、設備面でも介護面でも質の高いサービスが、リーズナブルな料金で提供されることになった。

そして近年、有料老人ホーム(特定施設)からサ高住の拡充へと経営の軸足を移行したのは、高齢社会の切迫した要求に応えていくためだという。

「遊休地にサ高住を建設し、それによって、高齢化が進む日本と地域社会に、ともに貢献しようということです」

上村氏が推進するサ高住は、遊休不動産を持つ土地オーナーに建物を建設してもらい、それを20年以上という長期にわたって借り受けて運営する方式をとっている。これにより、利用者が負担する料金をぎりぎりまで抑えるとともに、土地オーナーの収益性や経営面も安定するというメリットをもたらすことに成功した。

オーナーを説得する際、上村氏は、土地活用は人のために役立つ事業に貢献してこそ価値があると伝えるという。

「介護事業の業績というものは、必ずしも売り上げや利益率のみをさすのではないでしょう。最も大切なことは、入居者やご家族にどれだけ満足していただけるかで決まるのです。私たちがめざすのは、その人らしく楽しい日々を送ってもらうこと。利用者への感謝と尊敬を忘れず、真心のお手伝いを貫いていった結果が、市場に受け入れられるのだと思います。介護はどこまでも、人に始まり、人に終わるものです。そうした『人』の事業を支援し、社会に貢献するものであることを、オーナー様にも理解していただきたいのです」

活動の根底にあるのは「感謝と尊敬」「真心のお手伝い」「家族の絆の架け橋」「社会参加と共生」「未来の価値の創造」「無上意のサービス」そして「進化への対応」の7つの理念だ。この7つの理念の実現を通して、三英堂商事はさらなる社会貢献をめざしている。

サ高住は、日本の超高齢社会における切り札であり、救済でもあろう。時代はサ高住を求めている。

その波を受け、三英堂商事の数年先の目標は、サ高住による全国展開と、100億円企業への挑戦である。その目標が果たされた暁には、日本の「終の住処」の光景も、ずいぶんと変わっているのではないだろうか。

本書は、独自のビジネススタイルで高齢者に安心・安全な「終の住処」を提供している三英堂商事のこれまでの企業活動を紹介するとともに、これからの将来に向かっての代表取締役社長・上村岩男氏の経営理念や人生哲学を伝えるものである。

情熱と気迫で「無い無い尽くし」のゼロからすべてを築いていった上村氏の半生は、人生とは未知と希望で満ちていることを示し、若者や読者に勇気を与えるに違いない。

また、全国の高齢者とその家族、土地オーナーはもとより、超高齢社会に生きるすべての読者にとっても、貴重な指針の書ともなるはずだ。

なお、本文中の敬称の一部は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

  2015年9月  鶴蒔靖夫


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  はじめに


第1章 いまこそ求められる安心・安全な「終の住処」

首都圏に介護難民が急増
単身・夫婦のみ世帯の終の住処として登場した「サ高住」
サ高住で高齢社会を支える三英堂商事
国土交通省が力を入れた高齢者のための「住居」
利用権契約と賃貸借契約、厚生労働省は囲い込みを警戒
年金で賄える料金、人が住むことを目的とした建物
主な高齢者向けの施設・住居
安らかな老後には準備と計画が必要
介護移住、全国初の計画を実現させた杉並区の英断
サ高住は人間の尊厳を守る受け皿


第2章 三英堂商事ならではの「サ高住」事業を展開

安心して入居できる料金設定
対象、併設施設、別途料金
他の施設より割安な価格設定を打ち出す
施設の中で繰り広げられる、懐かしく温かな街の光景
健康、笑顔、明るさで満たされた施設
長い旅をすごした人のため、食事は施設でつくる
すべて手づくり、行政の検査官も驚きを隠さない
プロの機能訓練指導員による機能回復と認知症予防に対応
高齢者は尊敬すべき先達
トータル管理システム「気手来手くん」のパワフルな機能
コスト削減と、いっそうのサービスの充実が図られる必須アイテム
不動産事業の強みを生かし、最初から最後まで自前で
長期借り上げで土地オーナーにも大きなメリット
不動産と介護の運営ノウハウを活用


第3章 三英堂商事の7つの理念と人材育成

7つの理念を通して社会に貢献
三英堂商事の道しるべ、7つの理念
介護事業の醍醐味を生み出す「感謝と尊敬」
マニュアル化できないサービスこそ真のサービス
「無上意のサービス」とは
「たかが理念、されど理念」が内包する深い世界
すべてを受け入れ、機能回復に最善を尽くす
介護職員の深刻な不足
介護報酬引き下げのダメージ
ネガティブな先入観を払拭すること
地方に眠っている人材を発掘し、雇用の場をつくる
ライフスタイルの多様性に応じた働き方の実現
「人財」育成のために
礼儀、挨拶を徹底して仕込む新人教育
将来への先行投資、専門学校へ通う社員に補助金提供
介護事業の業績は、利益率だけでは測れない


第4章 新しい街づくりを推進するサ高住の役割と課題

サ高住整備の現状と課題
地域コミュニティの先導的役割としてのサ高住
『三丁目の夕日』のようなご近所づきあい
地域密着をめざさないと生きていけない
有料老人ホームとしての稼働と監視
アメリカCCRCに見る「終の住処」のあり方
日本版CCRCとサ高住の新たな役割


第5章 上村岩男の歩みと人生哲学

いつもゼロからスタートする男
破けた靴に段ボールをあてがって
おたふく風邪で命拾い
集中のあまり上下別々のスーツで出勤
最大の危機、明日手形を落とさなければ……
大自然に囲まれて育った少年時代
人生初の挫折、開拓者魂に触れた札幌時代
鶏口となるも牛後となるなかれ
独身寮需要の推移から見えるもの
バブル崩壊、事業を根幹から見直すときがきた
有料老人ホーム第1号「ナースィングホームひまわり船橋」誕生
たった1人の利用者のために
寮という建物が持つ奥深さを再利用すること
5度の本社移転のすえ、現在の渋谷クロスタワーに


最終章 三英堂商事が描く未来

快進撃を続ける三英堂商事
九州で地盤を固め、全国展開へ
不動産業の参入で市場は健全に
土地オーナーにもうひと言
「気手来手くん」開発―ITとの融合で介護の現場は変化する
365日、経営のことを考える
経営者は孤独、心を強くしてくれる言葉
100億円企業への挑戦


《施設取材レポート》
  家族の家ひまわり石橋(サービス付き高齢者向け住宅)
  家族の家ひまわり宇都宮豊郷台(サービス付き高齢者向け住宅)
  家族の家ひまわり与野(介護付き有料老人ホーム)
  気手来手くんの家連光寺(グループホーム)


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『クレアスライフの挑戦』 前書きと目次

Clearthweb


クレアスライフの挑戦
 ~顧客満足度No.1のワンルームマンション投資をめざす~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-416-7
初版発行:2015年12月11日
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 はじめに

和食や日本のポップカルチャー人気に煽られ、近年、世界各地で日本ブームが巻き起こり、日本を訪れる外国人も年々増加する一方だ。

日本政府観光局によると、2014年の訪日外国人客数は1341万人で過去最高を記録したが、2015年は1~8月の累計が前年同期比49・1%増の1287万5000人となり、前年度の年間数字にほぼ匹敵。年間では前年を大幅に上回る、1800万人を超えるペースで推移している。政府は、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年までに訪日外国人客を年間2000万人にすることを目標としていたが、前倒しでの達成が早くも射程圏内に入ってきた。

日本への注目度の高さは、観光だけにとどまらない。とりわけ、東京オリンピック・パラリンピックに向けて再開発が急ピッチで進む東京の不動産市場には、国内外の投資家から熱い視線が注がれている。

マンションは都心を中心に価格が上昇しているとはいえ、海外投資家にとって日本の不動産は、香港やシンガポール、ニューヨーク、ロンドンなど世界の主要都市に比べると、まだまだ割安感がある。そこに円安も手伝って、ポートフォリオのひとつとして日本の不動産への投資が活発化しているのである。都心の高額物件を、中国や台湾、香港などアジア系の投資家が爆買いしているとの声も聞かれる。

その背景には、東京オリンピック・パラリンピックに伴う値上がりへの期待もあるだろうが、海外投資家が都心の物件に注目する理由は、それだけではない。日本の中心である東京都心の物件は、もともと資産としての価値が高く、海外投資家にとって、それを保有することは一種のステータスシンボルにもなっている。したがって、東京の不動産市場に海外投資家が群がるのは、東京オリンピック・パラリンピックまでの一過性の現象だとは思えない。不動産投資に精通した海外投資家ほど、その国の中心地である都心の物件にこそ資産としての価値があることを、経験から知っており、投資の対象を都心に絞り込んでいるのだ。

また、世界の主要都市のなかでも、東京は食べ物のおいしさに抜群の定評があり、街もきれいで治安もよいことから、移住先としても人気が高い。将来は自分が住むことも念頭におきながら東京都心のマンションを購入し、長期保有を目的に運用を図る海外投資家も少なくないという。

このように、海外の不動産にまで手広く投資する外国人富裕層の投資熱に比べ、日本人は不動産投資にそれほど積極的ではなく、投資をするのは、かつてはほんのひと握りの富裕層や投資家に限られていた。というより、日本では諸外国に比べ、そもそも投資という考え方そのものが広く国民のあいだに根づいていないのだ。アメリカやイギリスをはじめアジア諸国でも、学校教育のなかで投資について学ぶようになっているのに対し、日本の学校教育では、そうした場がない。それゆえ、一部の投資家を除き、多くの日本人は、投資に対する正しい知識を持たず、一種のギャンブルのようにとらえる向きさえあり、警戒感があったことも否めない。

しかしながら、昨今は低金利が続いていることに加え、少子高齢化の進展により年金制度の基盤が揺らぎ、老後の不安が増している。そのため、年金にプラスして不労収入を得る方法として、日本人のあいだでも投資への関心が、にわかに高まってきている。

より豊かなセカンドライフを送ろうと思ったら、もはや年金だけでは心もとないことは明らかだ。それに、ひと昔前に比べると、日本人の寿命は大幅に延び、いわゆる「老後」の時間が長くなっている。そのため、早いうちから将来に備えようとの自己防衛意識が働くのではないかと考えられる。

投資の対象は、預金、株式、投資信託、債券などの「金融資産」と、不動産や金などの「実物資産」に大別される。

ここにきて日本の景気もようやく上向き傾向にあるものの、それに伴いインフレも進行し始めており、国の借金が1000兆円を超えていることを考えたら、この先も増税は免れない。そうした状況下、最も資産価値が上昇しやすく、相続税対策をはじめ税制面から考えてもメリットが大きいのが、不動産投資と言えるのではないだろうか。とりわけワンルームマンション投資は、少ない資金で始められ、家賃でローンを返済できるばかりか、ローン返済終了後は家賃収入がそのまま私的年金代わりになることから、シニア世代はもとより、一般サラリーマンやOLなど現役世代のあいだでも、近年、人気が高まっている。

本書で紹介するのは、そうした投資用ワンルームマンションのリーディングカンパニーとして、都心立地に特化したワンルームマンション「コンシェリア」ブランドを展開し着実に業績を伸ばし続けている、株式会社クレアスライフ(本社:東京都港区、代表取締役社長:尾池雄二氏)である。これまでに販売した物件は357棟、戸数は1万8440戸(2015年10月末時点)にのぼる。

競争相手が多い業界における同社の強みを、社長の尾池雄二氏は次のように分析する。

「都心の好立地に加え、高品質な建物へのこだわりにより、商品力で圧倒的な差別化を図っている点でしょうか。さらに、マンション経営においては管理が非常に重要になってきますから、グループ会社により賃貸管理から建物管理まで一貫したサービスを提供できる体制であることも、強みになっていると思います」

投資用ワンルームマンションの販売といえば、かつては電話による営業が一般的なスタイルだった。だが、同社では他社に先駆けて不動産投資セミナーを各地で開催し、いまではセミナー活動が主流になってきている。ただし、セミナーはあくまでも勉強の場であって、セールスの場ではない。これをきっかけに興味を持った人が、個別相談会に参加するという流れだ。セミナーでは社長の尾池氏も講師を務めるが、最近は、事前に自分なりに投資について勉強し、ある程度の知識を持ってセミナーに参加する人が多く、関心の高さがうかがえるという。

同社では、マーケット拡大のため、近年はインバウンド事業にも乗り出し、国内だけでなく、シンガポール、台湾、香港、マレーシアでも積極的に不動産投資セミナーを開催するなど、グローバル化を推し進めている。尾池氏によると、それらの国や地域では、投資家の意欲は日本よりかなり先行しているが、マンション経営に欠かせない管理については日本のほうがはるかに進んでいるため、セミナーの反響は大きく、手応えも上々とのことだ。

また、「トウキョウ・ライフ・コンシェルジュ 都心でくらす、都心をもつ。」をコーポレートスローガンに掲げる同社では、単にマンションを販売するだけでなく、「お客様の幸せな暮らしを導くコンシェルジュ」として、顧客の資産形成を全面的に支援している。そのため、研修などを通じて、顧客のポートフォリオ全体に対して適切なアドバイスができる人材の育成にも力を注ぐほか、顧客に対しても、購入後のフォローアップのためのセミナーや懇親会を開催するなど、コミュニケーションを密にすることで、顧客が安心して管理を任せられる環境づくりを心がけているという。

同社では、新たな試みとして、より多くの人に不動産投資を身近に感じてもらえるよう、資金面でのハードルを下げ、1口50万円から始められる「一口家主iAsset」という商品の販売をスタートした。さらに、セカンダリーマンション市場にも着目し、既存の物件をリノベーションし、さらに付加価値をつけて再生させた「コンシェリアR」シリーズという新商品を打ち出すなど、次々と新しいことに挑戦し、進化を続けている。

めざすは「業界内でお客様満足度ナンバーワン企業」になること。現在、グループ全体で従業員数は200名を優に超えているが、オーナー、居住者双方の満足度を追求すべく、常に顧客に寄り添い、全面的にサービスに努めようと、社内の意思統一を徹底させているのである。

「すべてのお客様にご満足いただくコンシェルジュでありたいと願うからには、生半可な気持ちではなく、社員一人ひとりに相応の覚悟がいると思うのです。それを支えるために、従業員の満足度でもナンバーワン企業をめざしています。自分たちの満足度が高くなければ、お客様によいサービスを提供できませんからね」

と、尾池氏は語る。

日本は諸外国に比べ、残念ながら不動産業界に対する社会的評価がけっして高いとは言えないのが現状だ。そのため尾池氏としては、今後も不動産投資の魅力を積極的に発信するとともに、同社が率先して不動産業界のイメージを向上させ、誇りの持てる業界に変えていきたいとの想いがある。

本書は、投資用ワンルームマンションの企画、開発、分譲から賃貸管理、建物管理までを一貫して行うことで不動産投資のマーケット拡大をめざす、クレアスライフグループの事業活動を紹介するとともに、その企業理念、経営理念に迫るものである。豊かな老後のための有効かつ安心・安全な投資を考えている方のみならず、便利で快適な都心型マンションライフを楽しみたいと考えている方々にとっても、本書がなんらかの指針となれば幸いである。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

2015年10月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第1章 より豊かなセカンドライフへの確かな備え

自分の老後は自分で守る時代に
どっちを選ぶ!? 金融資産と実物資産
資産運用の土台となる不動産投資
幅広い世代に人気上昇中のワンルームマンション投資
東京都心のマンション市場に内外の投資家が熱い視線
マンションの資産価値を高める3要素
不動産投資は信頼できるパートナー選びから


第2章 トウキョウ・ライフ・コンシェルジュ ~クレアスライフグループの事業概要~

ワンルームマンション業界のリーディングカンパニー
企業理念は「トウキョウ・ライフ・コンシェルジュ」
他社に先駆けてのセミナー活動で学びの場を提供
脈々と受け継がれてきたパイオニア精神
アフターフォローとしてオーナー向けセミナーや感謝祭を開催
好立地、高品質へのこだわりから生まれる商品力への自信
グループの総合力でマンション経営をサポート
2万1000戸を超える管理実績のクレアスコミュニティー
独自のサービスや新規事業も好調なクレアスレント


第3章 クレアスライフが提案するマンション経営

多様化するワンルームマンション投資へのニーズ
失敗しないマンション選びのポイント
営業担当が語るマンション経営の魅力
顧客のポートフォリオ全体に対するアドバイスを
顧客一人ひとりに向きあうパートナーとして
クレアスライフの社風とも言える顧客との距離の近さ
「トウキョウ・ライフ・コンシェルジュ」がめざすもの
オーナー向け会員サイト「クレアスサポート倶楽部」


第4章 快適な暮らしを追求する「コンシェリア」マンションシリーズ

都心にふさわしいワンランク上のクオリティを実現
普遍的な美しさと機能性を追求したデザイン
地震に強い、確かな基本構造
建物の寿命を延ばす耐久性とメンテナンス
居住者の健康、プライバシーにも配慮
安心・安全な暮らしのためのセキュリティの追求
任せて安心の維持管理&サービス体制


第5章 顧客満足度ナンバーワン企業をめざす ~クレアスライフの経営理念と人材育成~

顧客満足度+従業員満足度を追求する
子ども時代に芽生えた働くことへの貪欲さ
未成熟な業界だからこそ自ら変えられるおもしろさ
営業時代のいちばんの自慢は「お客様」
新入社員がセミナーでプランナーデビュー
就業時間内に行われる充実のフォローアップ研修
組織を重視し、営業経験者は採用しない方針
品良く、力強く、王道を行く会社へ
自らの行動をもって人の上に立つ者の範を示す
雇用の創出がいちばんの社会貢献


第6章 クレアスライフが描く不動産投資の近未来図

セカンダリー市場に着目した再生型マンション「R」シリーズ
ペット共生型マンション「with」シリーズ
マーケット拡大をめざし、インバウンド事業に注力
管理事業のインバウンド計画も進行中
世界の不動産を自由に買えるマーケットの構築を
堅実かつ新しいかたちの資産運用「一口家主iAsset」
業界を変えるためにも変革のスピードを加速
明るさを増す都心の不動産マーケット


【オーナーの声】
住んでみての満足感が投資用物件の購入につながった … 経営コンサルタント業 茂木秀彦(34歳)
営業担当への信頼感がさらなる投資に向かわせる … 外食チェーン店経営 松岡誠(56歳)
節税・保険を目的に好立地のワンルームマンションに投資 … 総合商社勤務 T・I(38歳)


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『感謝な心』 前書きと目次

Kanshaweb


感謝な心 Kansha na kokoro
 ~医療と福祉の垣根を超えた高齢者ケアの理想を追求~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-417-4
初版発行:2016年1月15日
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 はじめに

「日本は高齢社会の現状を哲学的に変えていく必要があります」

こう指摘したのは、アメリカの老年学の教授であった。

日本が高齢化社会を迎えたのは1970年のことである。それからの約40年で世界一の高齢社会に上り詰め、いまや国民の4人に1人が高齢者である。高齢化のスピードは予想を超えたもので、家族のありようも、ライフスタイルも、経済活動も、大きな渦に巻き込まれるように、めまぐるしく変遷していった。

団塊の世代が75歳以上になる2025年が迫りつつあるが、それに対応する明確なグランドデザインはまだ描かれていない。介護移住や地方創生など、さまざまな案が立ち上がっては沈んでいる。圧倒的な財源不足のもとでの対症療法のみに追われる状況で、国にも個人にも「哲学」を生み出す余裕はないのかもしれない。

哲学とは、人の心に判断の基準を与え、未来の道標を示すものだ。それが希薄ないま、多くの老人が残りの人生に不安やおびえを抱きながら孤独に生きている。そして市民の大半は、そんな老人たちに無関心のままである。それぞれの心をつなげる共通のものが見つからないままなのだ。

介護保険制度が施行されて15年。国も個人も総がかりで、この先の社会のあり方を、覚悟を持って考えなければならないときがきている。

高齢者が幸せでない国は、国民全員も幸せになれない国である。誰もが自分の問題として取り組み、高齢者とともに未来を拓くつもりで動くことが必要ではないだろうか。

しかし、人々はなかなか動こうとしない。

そうした模索を続けるなかで、天宣会グループ理事長の西浦天宣氏と、仕事を通じて知己を得ることとなった。

天宣会グループは、千葉県東葛地区を中心にリハビリ総合病院、介護老人保健施設、特別養護老人ホームなどを運営している、医療法人社団および社会福祉法人の複合組織である。

西浦氏との出会いはなかなか強烈だった。最初に会ったときから「これは違う」とのインパクトがあった。強い理念の持ち主であることが、ほとんどすぐに確信できた。

はたして西浦氏は、介護老人保健施設(老健施設)の概念を日本で初めて提唱した人物だった。赤字病院の再建に奮戦するなかで、「人生の最後の日々を安らかに豊かにすごせる理想の施設を」という夢をふくらませた。そして独立後、ゼロの地点からほとんど独力で老健施設をつくりあげて、グループ化も果たした。

「口先だけの達人ならごまんといる。私がどんな人間で、どんなことを考えているかを知りたかったら、私のつくった施設を見てほしい」

余計なことは説明せず、そう促した西浦氏の要請を受け、私は天宣会の代表的な病院と施設をいくつか見てまわった。そして大きな感動を得ることになった。

圧倒的な規模の壁画や天井画、緑深い遊歩道、細やかな気配りが行き届いた飾りや小物など、高齢者施設とは思えぬクリエイティブな空間演出が展開されていたのである。しかも、部屋ごとに違う壁紙、どの部屋からも緑が見える構造など、細部にいたるまで徹底して利用者に配慮したつくりとなっていたのだ。

館内にあるもの、館外を構成するもの、すべての要素が連動し、癒やしと生きる喜びを利用者に与えていた。こんな施設が日本にあるとは驚きだった。しかも、その建物の構造から小物にいたるまで、すべて西浦氏の指示によるものだという。

施設内では、医療と介護の間の垣根は取り払われて、職員はみな平等にチームの一員としてリハビリやケアに取り組んでいた。西浦氏は職員に明言する。

「天宣会は人を助ける組織である。人を助けるためなら上司も飛び越えてかまわない」と。

アメイジングなつくりの施設も、職員へのメッセージも、すべては利用者優先の信念から生まれたものだ。

そうしたことのすべての基本になっているのが、「感謝な心」という、西浦氏がつくった独自の理念である。

「感謝な心」は、初めて聞く者には、只者ではない雰囲気が漂う謎の言葉だ。そこには、ひとりの人として向きあい、緊張感を持ちながら深い交流を続ける極意が秘められていた。

「感謝な心」は、「あなたと私」という対等な関係のなかで本当のやさしさを培い、その心を与えあっていくものであるという。だとしたら、それは世界中の人にも通じる理念ではないだろうか。

天宣会のような創造的な施設が増えていけば、日本の超高齢社会の光景も変わっていくことだろう。そうなってほしいという希望も込めて、この本を書くことにした。

といっても、天宣会の紹介でもないし宣伝でもない。西浦氏の話のなかから私自身が刺激され、学びにもなった部分を抽出し、また参考として、高齢社会の現状と課題を探っていこうというものだ。

ここから何を感じ取るかは、読者の感性と判断に委ねたい。この本をきっかけに、高齢社会のなかで自分にできることを考えてもらえれば、うれしいかぎりだ。

そして首都圏に住む人は、時間が許せば、天宣会の施設を一度覗いてもらいたいとも思う。このアーティスティックでヒューマンな施設を眺めて何かを感じ、それが起点になって自分の「哲学」が構築される可能性もゼロではない。

この本が、よりよい高齢社会をつくるために少しでも役に立てたら幸いである。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

  2015年12月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第1章 病院らしくない病院、施設らしくない施設が訴えるもの

心を打った「感謝な心」
医療や福祉に関連する多様なサービスを手がける
施設の雰囲気は「文化度」を伝える
アートを意識した「北柏リハビリ総合病院」「北柏ナーシングケアセンター」
圧巻の天井画と癒やしの庭
自然を活かしつつ、独特の手づくり感のある庭
神社とマリア像
スタッフからの発言―外出時には家族も参加
個室と4人部屋が併設―特別養護老人ホーム「流山こまぎ安心館」
受診者本位の動線を採用している「柏健診クリニック」
老健第1号「梅郷ナーシングセンター」
いちばん質の高い食事
「家庭的」と「手づくり感」に天宣会の精神が込められている
建物そのものがイズムでできている


第2章 「感謝な心」の背景にあるものを探る

高齢者の医療・福祉の仕事は究極のサービス業
ずっと以前からあった高齢者虐待問題
現場レベルでもできることを
介護職に必要なものは理念、確固たる哲学
「感謝な心」が伝えるパワフルな理念
「利害関係」に含まれている深い意味
感謝の気持ちを分かちあう
「感謝な心」が生む「ここに来てよかった」という言葉
トイレに貼られている「おかげさまで」
「人間と人間」として接してほしい
信念にもとづいた長期にわたるやさしさこそ


第3章 介護とは創造的な仕事

2025年には介護職員が38万人不足する
低い報酬、国の責任
福祉には、そろばんははじかれない?
実は離職率は低い?
人材マネジメントの基礎「自分で考え、自分で行動する」
人を助けるとはどういうことか。職業的使命が打ち出す徹底したモラリスト精神
横のつながりを重視し、個として立つところにイノベーションは生まれる
お正月には餅を提供、逆転の発想のサービス
「かきくけこ」の精神をいつも念頭に
茶髪でもオーケー、みなが平等のチャレンジ精神
介護は楽しい、働く人も幸せでなければならない
キャリアアップ、現職員の80%が介護福祉士の有資格者


第4章 医療・福祉と経営(介護ビジネス)

厳しい変革の時代を迎える医療界
医療機関の倒産数
名医は必ずしも名経営者にあらず
医療機関は民間企業のノウハウを参照すべし
アメリカには20年もの遅れをとっている病院経営
病院経営は一般企業参加の時代に入った
患者本位を実現するなら、よい経営をすべき
病院再建の奮闘で身につけた経営感覚
医療現場と経営マネジメントの分離方式を直観で決断


第5章 介護保険と老健の存在意義

介護保険制度施行から15年
最初から破綻していた介護保険制度
老人の悲惨さを救おうと発案した日本版ナーシングホーム
医療と福祉の壁を取り払い、社会のニーズに応える老健
介護保険制度が促した第二の特養化
責任を持って出せる人しか出さない
在宅強化型への転換が生き残る道か?
社会福祉法人という存在の特異さ
社会福祉法人に改革を
社会福祉法人のM&A
老健のターミナルケア
ターミナルケアへの思いは篤い
老健の新しい存在意義とは
老健は地域の人にとって頼りになる存在


最終章 高齢社会という未知の領域に挑む

福祉立国スウェーデンの厳しい現実
医療・介護は成長産業となりうるか
介護の労働力が大幅に増えていく
介護職に外国人労働者を受け入れるということ
国に依存せずに行動していく
在宅介護は難しい
ちぐはぐな社会保障政策が「縮み」を起こす
チャレンジャーは常に時代の半歩先を行く
情熱こそが人を動かす
オリジナルで勝負する


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『“匠”のアウトソーシング』 前書きと目次

Takumiweb


“匠”のアウトソーシング
 ~モノづくりの技術者集団・オーエスピーの挑戦~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-418-1
初版発行:2016年1月15日
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 はじめに

戦後最長となる95日間の会期延長のすえ、集団的自衛権の行使容認などを柱とした安全保障関連法が2015年9月19日に成立した。憲法違反や説明不足を指摘する声があるなかでの採決だったこともあり、普段なら国会中継に見向きもしない人までもが、今回の超ロングラン国会に注目していた。

おおかたの予想どおり、最終盤の攻防は大荒れとなった。怒号が飛び交い、与野党の議員が激しく揉め、つかみあいの乱闘をする様子が、ニュース番組などで繰り返し流された。言論の府とは名ばかりの国会の惨状に、法案の賛成、反対にかかわらず、多くの国民があきれ果てたのも無理からぬことだろう。

しかし、その3カ月前にも、とある法案の改正をめぐって国会が大荒れになったことを覚えているだろうか。その法案というのが、企業が派遣労働者を受け入れる期間の制限を事実上撤廃するなどの改正案を盛り込んだ「労働者派遣法改正案」である。

安保法案の場合なら、すべての国民の将来に大きく影響する事案だけに、採決をめぐって国会が大荒れになるのは理解しやすいかもしれない。だが、派遣労働者という一部の労働者の待遇に関する法案の改正で、なぜここまで国会で揉めるのか、ピンとこないという方もいるかもしれない。

実は、派遣労働者という存在は、日本の産業界の行くすえを大きく左右するほど重要なものなのだ。いまや、日本におけるすべてのビジネスにおいて、人材確保の手段としてアウトソーシングの活用は、必要不可欠なものとなっている。特に、これまで世界に誇ってきた「日本のモノづくり」という分野においては、派遣労働者という存在なくしては成り立たないところまできている。

つまり、労働者派遣法改正案を「派遣として働いている人以外には関係ない法案」だと思っている人がいるとすれば、それは大きな間違いだということだ。この法案が産業界に与える多大な影響は、日本のすべての国民の生活を左右するかもしれないのだ。国会で激しい意見交換が行われたのも、無理からぬことである。

矢野経済研究所の「人材ビジネス市場に関する調査結果 2015」によると、2014年度の人材派遣業の市場規模は、前年度比105・0%の3兆7701億円にのぼるという。この成長の原因は、派遣に関する規制緩和がたびたび実施されたことによるところが大きい。とりわけ、2003年に製造業の派遣が解禁されたことが強く作用している。

ゼネコンや大手メーカーが、いちから技術者を育成するのは容易なことではない。気が遠くなるような時間とコストがかかるものだ。そのため、日本の製造業の人材育成を支える大きな力として、アウトソーシング産業は著しい成長を遂げてきた。

リーマンショックに端を発した不況のあおりを受け、2009年以降は人材派遣業も市場縮小傾向にあった。しかし、その後の景気回復とともに、人材ビジネス市場はふたたび活気を取り戻した。現在では、通信インフラの整備や医療革新などをはじめとするさまざまな分野で、専門技術者のアウトソーシングが活用されている。今後、さらなる需要増加が見込まれるのは間違いないだろう。

こうしたなか、特色ある人材派遣業として注目を集めているのが、本書で紹介する株式会社オーエスピー(本社:神奈川県横浜市、代表取締役:石垣健一氏)である。

同社の大きな特徴は、設計・開発から製造・生産にいたるまで、製造業メーカーの仕事に特化している点である。主な取引先も、世界に名だたる大手自動車メーカーやデジタル家電メーカーなどが数多く名を連ね、その顧客からの信頼も非常に厚い。それは、同社がアウトソーシング事業、人材紹介業、派遣事業、コンサルティング事業において、あらゆる業務の効率化を推進するスペシャリスト集団であるからだ。

同社の社長・石垣健一氏は、こう語る。

「人材アウトソーシングビジネスは、新たな時代に入りました。いまや、事業の継続や発展には、変化への対応力が必要な時代なのです」

同社は、顧客のあらゆるニーズに応えるべく、その時々の需要に合わせた事業形態を提案し、顧客の業務の効率化を推進するとともに、人事的な不安要素の軽減に役立つ、事業内容や規模に応じた人員の供給を行っている。

そんな同社では、技術職スタッフを全員、正社員として直接雇用し、安心して長く働くことができる環境を整備している。そればかりか、技術だけではなく、人間力、コミュニケーション能力にも磨きをかけられるよう、人材育成に注力し、働く人間たちのスキルアップを図っているのだ。

「将来的には、人材を派遣している企業の仕事を当社で受託・請負することも、視野に入れています」

そう石垣氏が語るように、現在、同社では、社内で請負仕事ができる組織を構築している最中だという。

また、人材サービスだけではなく、顧客が抱えている「コスト削減」や「CSR(企業の社会的責任)」「環境対策」といった幅広い分野における難しい課題においても、それを解決に導く総合的なソリューションを提案するほか、従来のノウハウを生かした要素技術を組み合わせた最適化設計による受託開発も行っている。

一方で「環境経営」を実践している同社では、2008年から従業員参加型の社会貢献活動の一環として、プルタブ・アルミ缶回収による車椅子寄贈活動や、産業用バッテリーの再生事業にも取り組んでいる。さらには「会社で取り組むエコな未来」をテーマに、合成界面活性剤をいっさい使用していない多機能洗浄・美容顔料「ナノソイ・コロイド」や「ナノ・イオミス」を原料とした、エコな商品・サービスも提供している。

石垣健一氏が人材派遣業界に入ったのは約30年前のこと。当時、まだあまりスポットを浴びていなかった人材業界に可能性とおもしろさを感じ、人材派遣会社に就職した。その読みは的中し、入社した会社は大きく成長を遂げたが、規模の拡大に伴い、石垣氏は別事業の経営を任命されてしまう。しかし、あくまでも人材ビジネスにこだわりたい石垣氏は、その話を断り、起業することを決意し、2003年にオーエスピーを設立した。

それから12年を経て、いまや同社は、社員数1100名、売上高は60億円規模にまで成長した。だが、石垣氏は、さらなる高みをめざしている。

「この会社を、スタッフ数や売り上げの規模だけを誇る会社にするつもりはありません。きめ細かなサービスと人材の質の高さこそが当社の特色だと、胸を張って言えるような会社にしたいと考えています」

今後は同社の得意分野に関連した新たな事業への進出も計画中で、そのためのM&Aにも注力している。また、アジアでの新しい領域の事業も準備中だという。同社がさらなる飛躍を見せてくれるのは間違いなさそうだ。

本書は、技術者アウトソーシングで着実な成長を遂げているオーエスピーの事業活動を紹介するとともに、同社社長・石垣健一氏の経営理念、ビジネス哲学に迫るものである。アウトソーシングビジネスに関わる人のみならず、日本のモノづくりの将来を思う多くの読者にとっても、貴重な指針の書となれば幸いである。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

 2015年12月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第1章 日本のモノづくりを支えるアウトソーシング

日本における人材サービス業界の歩み
いまや雇用の流動化は必要不可欠
一大市場となった人材サービス産業
引く手あまたの技術系派遣労働者
製造ラインから技術開発まで外部委託
2015年労働者派遣法改正で変わる派遣の現場
改正法案の施行が急がれた理由
労働者派遣法改正で雇用は守られるのか
人材サービス業界の現状と今後の方向性


第2章 技術者アウトソーシングで躍進

製造業・技術職に特化した人材派遣ビジネスを展開
取引先は大手自動車・家電メーカー
量より質を重視した企業方針を徹底
プロエンジニアチーム「匠」の実力
「質のオーエスピー」を支える顧客目線の開発力
設計・開発から製造・生産工程までアウトソーシング
顧客企業から信頼されるパートナーとして


第3章 頼れるビジネスパートナー

顧客企業との揺るぎないパートナーシップを構築
難易度が高い派遣から請負への移行を実現
オーエスピースタッフが活躍する請負現場を訪問
設計・開発などのコアな部分にも関与
  現場で働くスタッフの声① 小笠原 敬(製造スタッフ 33歳 男性 入社10年)
  現場で働くスタッフの声② 相馬 和貴(製造スタッフ 28歳 男性 入社4カ月)
スタッフを守る姿勢が「質の向上」につながっていく


第4章 国際ビジネスや環境経営にも貢献

複合企業をめざし、新規事業にも挑戦
国際ビジネスのための外国語サービス
産業用バッテリーもリサイクルの時代に突入
AEDの普及を図り、救える命を救えるように
健康や自然に配慮した製品の企画・販売事業にも挑戦
プルタブ・アルミ缶回収による車椅子寄贈活動
スポーツ交流を通じて地域活動にも積極的に参加
野球チーム「OSP ALWAYS」を結成
世界を相手に勝負するOSPレーシングチーム


第5章 創業社長・石垣健一の経営理念とビジネス哲学

人材ビジネスに可能性を見いだし、人材派遣の世界へ
仲間や支援者に支えられて独立
「質のオーエスピー」を実現するために人材教育に注力
「技術力と人間力」の両面で人を育てる
正社員だからこそ、長期的視野に立った教育も可能に
誠実さを何よりも大切にする石垣の経営哲学
未曾有の大災害を乗り越えて成長したオーエスピー
短所を責めずに長所を伸ばす石垣のマネジメント手腕


第6章 オーエスピーが描く未来図

事業部制を廃止し、新たなステージへ
建設系分野は子会社化して事業を伸ばす
効果をあげるM&Aへの取り組み
高い専門性を持つ会社のM&Aがもたらしたもの
アジアでの新たな事業展開を見すえて
女性社員の比率増で企業力アップを図る
夢と志を持って働ける企業であり続けるために


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2017/06/20

『エコスタイルの挑戦』 前書きと目次

Ecoweb


エコスタイルの挑戦
 ~2030年までまだまだ必要、太陽光発電投資~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-419-8
初版発行:2016年2月12日
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 はじめに

地球温暖化に一向に歯止めがかからない。世界各地で異常気象による災害が頻発し、日本でもここ数年、大雨による洪水や浸水、土砂くずれなど、大きな被害が相次いでいる。地球温暖化対策は、もはや待ったなしの危機的状況に追い込まれているのである。

そうしたなか、2015年11月末からフランス・パリで国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)が開催され、日本からは安倍晋三首相が出席し、途上国をも含めた新たな地球温暖化対策の国際合意をめざすことになった。

国際社会が温暖化への危機感を共有したのは1992年にまでさかのぼる。国連地球サミットで「気候変動枠組み条約」が採択されたのが始まりで、この条約のもと、1997年に京都で開催されたCOP3では、先進国に二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガス排出量の削減を初めて義務づけた「京都議定書」が採択されている。

議定書では、2008~2012年の5年間で、1990年に比べて先進国全体で5%の削減をめざすことになり、アメリカが離脱する事態にはなったものの、結果的に参加国・地域の削減率の平均は22・6%と、目標を大幅に上回ることができた。しかし、削減義務のない中国やインドなどの新興国が大きな経済成長を遂げ、CO2の排出量を増やしたこともあって、世界全体の排出量は減るどころか、逆に5割も増え、京都議定書は残念ながら期待どおりの成果を出せなかった。

このまま温暖化が進めば、さらに深刻な影響が出ることは必至で、COP21では、先進国だけでなく途上国を含むすべての国々が協調して取り組むという、新たな温暖化対策の実効的な枠組み「パリ協定」が採択された。パリ協定では「産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑える」ことを国際目標として掲げている。ちなみに日本は、COP21に先立ち、2030年度までに温室効果ガスの削減量を2013年度比で26%とする目標を国連に提出している。

これまで国際間の地球温暖化対策に、はかばかしい成果が見られなかったとはいえ、世界のエネルギー市場では、CO2を排出しない風力や太陽光、水力などの再生可能エネルギーが、新たな電力供給源として年々比重を増してきていることは間違いない。京都議定書が採択された1997年当時、世界の風力発電は760万キロワットだったのが、中国、アメリカ、ヨーロッパを中心に導入が進み、2014年には3億7000万キロワットと、いまや原子力発電と肩を並べるほどになっている。太陽光発電にいたっては、当時は世界的に見てもほぼゼロだったのが、いまではおよそ1億8000万キロワットにまで急速な広がりを見せているのである。

日本でも再生可能エネルギーの普及を促そうと、2009年11月に家庭や事業所等における太陽光発電の余剰電力買取制度が始まり、さらに2012年7月からは、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスのいずれかで発電した電気を電力会社が一定価格で買い取ることを国が約束した、固定価格買取制度(FIT)がスタートした。

再生可能エネルギーによる発電事業は、環境に貢献できるだけでなく、FITを利用することで長期にわたって安定した収益を期待できるとあって、制度発足以来、高利回りの魅力的な投資としても注目を集めるようになった。とりわけ、設置が容易な太陽光に人気が集中。企業が売電目的で設置するメガソーラーや、個人投資家による小規模発電設備が一気に増え、太陽光発電ブームが巻き起こっている。

そうした状況下、太陽光発電システムの販売・施工を全国規模で展開し、急成長を遂げているのが、本書で紹介する株式会社エコスタイル(東京本社:千代田区、大阪本社:大阪市、代表取締役社長:木下公貴氏)である。

2004年に設立された同社は、当初はオール電化商品の販売を手がけていたものの、経営不振に陥り、倒産寸前の状況に追い込まれた。そこで2008年11月に、経理畑出身の木下公貴氏が創業者に代わって社長に就任し、まさに「金なし・コネなし」の背水の陣で再スタートを切ることになった。

そして翌2009年、住宅用太陽光発電の補助金制度や余剰電力買取制度の開始に伴い、木下氏は「子どもたちの未来のためにも環境問題は大きなテーマであり、ここが大きな節目になる」と一大決心をし、太陽光発電ビジネスへの転換を図った。しかし、テレフォンアポインターを使った電話営業では、なかなか成果に結びつかない。そこで思いきってウェブサイトによる集客方法に切り替えたことが功を奏し、問い合わせが増え始めた。

その後も電話勧誘や訪問販売はいっさい行わず、ウェブサイトの検索連動型広告や新聞広告、セミナーの開催などに絞って情報提供し、関心を持った人からの問い合わせや相談に応じるという営業スタイルに徹した。その姿勢は今日も変わっていない。

2012年に、10キロワット以上の再生可能エネルギーによる発電に対し全量の固定価格買取制度(FIT)が始まったのを機に、同社は住宅用から産業用へと軸足を移し、再生可能エネルギー投資に関心を持つ投資家に向けて、投資効率に優れた50キロワット未満の産業用低圧システムに特化した太陽光発電の投資スキームを開発。同時に自社施工体制を増強し、50キロワット未満の産業用低圧システムから50キロワット以上の高圧システムまで、多種多様な太陽光発電システムの施工を手がけるようになった。

こうした自社責任施工と大量現金仕入れ、ウェブサイト中心の集客による営業コストの削減により、高品質かつ国内最安レベルの価格を実現するとともに、業界最長レベルの20年施工補償を行うなど、「あんしん価格・あんしん施工・あんしん保証」の3本柱を確立し、青森から鹿児島まで全国規模で太陽光発電システムの施工実績を重ねてきた。その数はすでに5000件を優に上回る。これは、多くの顧客から支持を集めていることの証と言えるだろう。

「子どもたちのため、次世代のために、環境を守る義務と責任を遂行するという使命のもと、われわれは、プロの視点で『これなら買いたい』と思う製品とサービスを、われわれが買いたい価格でご提供するしくみづくりに努めてきました」と、木下氏は語る。

また、同社では、より多くの人に再生可能エネルギー発電事業への参画を促し、固定価格買取制度のメリットを享受してもらいたいとの思いから、金融商品取引業者の登録を受け、2015年1月から新たにファンド事業を立ち上げた。

通常、太陽光発電事業を始めるには、まとまった資金が必要だが、ファンドを利用すれば1口50万円からの小口出資が可能となる。出資金を用いて太陽光発電システムを設置し、発電されたエネルギーを売却する事業に投資するというものだ。毎年の元本償還と発電事業による利益の分配で、長期的に安定した収益が期待できるうえ、なにより環境にやさしい再生可能エネルギーの普及に貢献することになる。

FITがスタートして以来、太陽光を中心に再生可能エネルギーの導入が進みつつあるといっても、世界的に見れば、日本はまだまだ遅れていると言わざるをえない。2014年度の日本の発電電力量に占める再生エネルギーの割合は、従来の水力を除くと3%程度にとどまる。経済産業省が策定した2030年度の電源構成では、水力を含む再生可能エネルギーを22~24%とし、うち太陽光は7%にまで増やそうとしている。世界に向けて約束した温室効果ガス排出量2013年度比26%削減を達成するためにも、さらなる再生可能エネルギーの普及が望まれる。

2016年度からは電力小売りの全面自由化が始まるが、エコスタイルではこれに伴い、再生可能エネルギーによる電力の供給事業にも本格的に乗りだす。地域住民が資金を出しあい、ファンドスキームで太陽光、地熱、小水力など地域の特性を活かした再生可能エネルギーの発電所をつくり、そこでできた電力を地域で利用する、いわゆる電力の「自給自足プロジェクト」を推進していく考えだ。

「電力事業が生み出す利益を地域のなかで循環させるしくみを構築することにより、地域経済を活性化させ、ひいては地方創生につなげたいのです。そのためにも、地域の電力インフラを根本から変える必要があるのではないでしょうか」と、木下氏は新電力事業への意気込みを語る。

本書では、子どもたちの未来のために、再生可能エネルギーの普及を促進し、地域電力インフラのイノベーションにも取り組むエコスタイルの事業活動を紹介するとともに、同社の企業理念・経営理念に迫るものである。すでに太陽光発電事業に携わっている方のみならず、地球環境の未来を考え、再生可能エネルギー発電事業への参画を検討している方々にとって、本書がなんらかの指針となれば幸いである。

なお、本文中の敬称は一部略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

  2015年12月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第1章 本格的な再生可能エネルギーの時代が到来

どうなる? 今後の原子力発電所再稼働のゆくえ
原子力発電を2割超とする2030年度の電源構成
地球温暖化対策に不可欠な再生可能エネルギー
FITの導入により「太陽光ブーム」が到来
太陽光の電源構成比7%実現に向けての課題
FIT後の再生可能エネルギー自立化を見すえて
太陽光導入にブレーキ? 出力制御の新ルール
将来の基幹電源への期待が高まる太陽光発電
実用化が待たれる、電気をためる新技術
電力小売りの全面自由化が再生可能エネルギーの普及を後押し


第2章 太陽光発電事業で躍進するエコスタイル

ウェブサイトでの集客が功を奏し、順調に売り上げを伸ばす
50キロワット未満の産業用低圧太陽光発電に注力
太陽光発電投資の魅力をウェブサイト以外でも積極的に発信
まだまだある太陽光発電投資のメリット
国内最安レベルの「あんしん価格」を実現
販売から施工まで自社責任による一貫体制
充実のアフターフォロー体制で顧客に「あんしん」を
再生可能エネルギー事業への門戸を広げ、ファンド事業にも乗りだす


第3章 あんしん太陽光発電エコの輪

投資への不安を取り除き、顧客の満足を追求
顧客の要望に即したシステム設計や見積もりを提案
投資を目的とした土地付太陽光発電の人気が上昇
基礎・設置・電気の工程すべてを自社で責任施工
施工の要は土台をつくる基礎工事
ノウハウを積み上げ社内の共有財産として活かす
施工するうえで大切なのは周囲への気遣い
業界内でも抜きん出た充実の「あんしん保証」
自社施工部門による任せて「あんしん」のメンテナンス


第4章 顧客の声がエコスタイルの成長を後押し

顧客アンケートで約94%が「満足」と回答
 太陽光発電からの収入で早期退職後は趣味を満喫 ―― 福岡県 ユーチューバー T・Yさん
 定年後に備え、アパート経営に太陽光発電をプラス ―― 千葉県 大学職員 S・Mさん
 充実した保証と豊富な施工実績が業者選びの決め手に ―― 埼玉県 不動産業経営 Sさん
 CO2削減のため、遊休地活用で太陽光発電を開始 ―― 茨城県 会社員 石黒昭さん
「エコの輪」に寄せられる顧客の声


第5章 木下公貴のめざす企業ビジョンと人生哲学

倒産寸前、「金なし・コネなし」からの再スタート
どんなに苦しくても無借金経営を貫く
見よう見まねで自らウェブサイトを作成
薄利多売の営業戦略で「いままでの5倍働こう!」
社会に必要とされる会社であるために
仲間との信用の絆が会社成長の礎となる
いったん決めたことは必ずやりきる


第6章 エコスタイルが描く再生可能エネルギーの未来図

再生可能エネルギーによる電力の自給自足を実現
地域の財産である「自然の恵み」を利用する
将来的には100メガワットの電源確保をめざす
ガスと電力のセット販売を検討
ゼロ・エネルギー住宅を提案
金融技術を駆使して再生可能エネルギーのさらなる普及を
株式上場に向けて経営基盤を強化


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『小さな泡が世界の生活を変える』 前書きと目次

Finebubbleweb


小さな泡が世界の生活(くらし)を変える
 ~日本発の新技術 マイクロバブルトルネード、サイエンスの挑戦~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-420-4
初版発行:2016年4月28日
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はじめに

「ご無沙汰いたしました」
「いやぁ、14年ぶりだ。14年ぶり!」

本書の主役・青山恭明氏との再会は、こう言い交わしながらの感激の握手で始まった。

その数日前のことだ。私は毎朝、各種の新聞・雑誌、各業界の業界紙・誌に目を通すことを日課にしている。そのなかのひとつ『リフォーム産業新聞』に「青山恭明」の名を見いだした。記事によると、青山氏は現在、株式会社サイエンス(本社・大阪市淀川区西中島)の会長になっており、「マイクロバブルトルネード」という画期的な製品を開発し、その普及に目覚ましい実績をあげているという。

「ああ、元気で、いまも水に特化したビジネスをやっているんだなぁ」

突然、自分でも信じられないくらいの喜びが湧き上がってきた。

実は14年前、私は、当時、青山氏が手がけていた水まわり事業をテーマに、1冊の本を上梓したことがある。その本は、かなりの好評を得た。

その後、そのビジネスは、時代を先取りしすぎていたことと、日本の行政の奇妙な縛りのために、方向転換を余儀なくされたが、その青山氏が、現在も水をテーマにしたビジネスで辣腕をふるっているというのだ。

「会いたい。いま、すぐにでも……」

次の瞬間、私の手は電話に伸びていた。

こうして彼との再会が実現し、話を聞くうちに、これはどうしても「本にまとめ、世に強くアピールしなければいけない。そのくらい重要で、エキサイティングなテーマだ」と確信した。青山氏は、これまでの入浴の概念をまったく変えてしまう、画期的な製品を開発していたのである。

*  *  *  *  *

「お風呂に入る」と言えば、みながみな、湯船でお湯に浸かったあと、体をごしごしと洗うことまでを含めてイメージするはずだ。

「体の隅々までよく洗うのよ」

子どものころ、母親にそう声をかけられた記憶は、誰にもきっとあるだろう。そのくらい、「お風呂に入る」とは、「体をこすって洗い、体を清めること」を意味している。

ところが、青山氏が現在、メイン商品として扱っている「マイクロバブルトルネード」は、入浴につきものだった「体を洗う」という作業を、不要にしてしまうというのである。

そう言われても、どういうことなのかと首をひねるかもしれない。だが、「マイクロバブルトルネード」のしくみを知れば、浴室はもはや「体を洗う場」ではなく「リラックスの場」となり、精神的なゆとりや楽しみを味わう場、美を実現するエステの場に進化していることを、理解できるはずだ。

「マイクロバブルトルネード」とは、ひと言で言えば、極めて細かく小さい泡を発生させる装置のことだ。

最近、各方面で大きな話題になっているファインバブル※技術。水の気泡を極限まで細かくすると、気泡は水の表面に上がってこなくなり、水の中に長くとどまって、やがて消えていく。この間に気泡が、優れた吸着作用で目に見えない小さな浮遊物まで吸着し、優れた洗浄効果を発揮する。半導体の製造工程などでファインバブルが使われているのは、この効果に着目してのことだ。ほかにも、魚や野菜などの生育を促進したり、鮮度をこれまでの数倍、いや数十倍に保つなど、さまざまな効果を持つことが、どんどん明らかになってきている。

※気泡の直径が100マイクロメートル以下のものを総じて「ファインバブル」と言う。「ファインバブル」には、気泡の直径が1~100マイクロメートルの「マイクロバブル」と、直径が1マイクロメートル以下の「ウルトラファインバブル」がある。(国際標準化機構「ファインバブル技術に関する専門委員会」による定義。ISO/TC281。2016年3月時点)

青山氏は、この工業用ファインバブル技術にヒントを得て、「この気泡の発生装置を小型化して、人の体を洗うことに使えないだろうか」と発想した。いわば、人間のクリーニングマシーンの開発である。それから開発努力を重ね、ついに自動入浴装置とでも言うべき革命的装置「マイクロバブルトルネード」の開発に成功したのである。

「マイクロバブルトルネード」がつくりだすのは直径が約3マイクロメートル(0・003ミリ)のマイクロバブル。これは毛穴のサイズよりも小さいので、これを発生させた湯に浸かっていると、超微細な泡が毛穴の中にまで入りこみ、毛穴の奥に付着した汚れまで浮き上がらせ、引き出してくれる。つまり、「マイクロバブルトルネード」を設置すれば、「バスタブに浸かっているだけで体がきれいになる」のだ。毛穴の奥に潜む汚れや、余剰な分泌物、老廃物をきれいに取り除くことから、加齢臭などの悩みも解決できるし、美容業界でも近年、「毛穴(ポアーズ)の汚れを取る」ことは大きな関心事になっている。

また、保温性も高まるので、入浴後、いつまでも体がポカポカして冷めないという、温泉のような効果も楽しめる。日本の女性には冷え性が多い。冷え性は万病の元とも言われ、つらい思いをしている人も少なくない。「マイクロバブルトルネード」は、そういう人たちにとっても光明となるだろう。

ちなみに「マイクロバブルトルネード」は、一般社団法人ファインバブル産業会(FBIA)が定めたファインバブル製品の登録制度規格の、認証登録第1号という栄誉にも輝いている。

また、サイエンスでは、同じく超微細な泡を応用した製品「ナノシャワー」も開発している。「ナノシャワー」には、洗浄・温浴効果に加えて、保水性能があることが、第三者機関の実験により科学的に検証されている。

青山氏の水に対する情熱は、これだけでは収まらない。飲料水はもちろん、調理や風呂に使う水など、家庭内で使うすべての水をクリーンで美と健康によい水に変えるセントラル浄活水装置「ウォーターシステム」も扱っている。「ウォーターシステム」を使うと、家中の水が安心・安全なおいしい水に変わる。しかも、ミネラルウォーターに比べて格段のコストダウンも図れるのだ。

サイエンスは「生活に関わる水ビジネス」を展開する企業として2007年8月に創業。青山氏を取締役会長に、水上康洋氏を代表取締役社長に据え、現在は「ウォーターシステム」「マイクロバブルトルネード」「ナノシャワー」の3つの技術を、新たな時代の水技術として提案。いまでは大手ハウスメーカーまでもが標準仕様として積極的に採用するようになっている。さらに、ベイシェラトンなどのホテルや、老人介護施設、エステサロンなどへの導入も、加速度的に増えている。

その結果、サイエンスは急成長を遂げ、創業以来、毎年、増収増益というめざましい成長カーブを描いている。

2015年には、注文住宅事業にも駒を進めている。サイエンスが提唱する住宅は、健康・快適・美容・安心・安全の「5つ」を満たす、その名も「5つ星の家」。もちろん、「ウォーターシステム」「マイクロバブルトルネード」「ナノシャワー」は標準装備だ。

*  *  *  *  *

本書では、青山氏が展開している「マイクロバブルトルネード」を核に、革新的な3つの技術について詳しく紹介するとともに、熱血経営者・青山恭明氏の素顔も紹介したいと思っている。

現在56歳の青山氏は、自ら「水商売一本やりですわ」と大笑する。その言葉どおり、これまで一貫して、生活水に関わる事業を展開してきた。その歩みはけっして平坦なものではなく、ときには窮地に追いこまれたこともあったようだ。

だが、青山氏には不思議な「何か」がついているのだ。青山氏自身は、実家が寺だということから「仏縁」「仏の加護」と言っているが、いわゆる「人徳」と言ったほうがわかりやすいだろう。

青山氏は、とにかく熱い。そのうえ人情家で、どんな場合も人としての誠を尽くす。その人柄は、そのまま強力な求心力となって、いろいろな人が「青山氏のためならば」と一肌脱ぐ。すると青山氏は、それを上回るような誠意を尽くす。その循環で、青山氏の人生は螺旋階段を進むように、一見、上がり下がりしていると見えながら、確実にステップアップしてきているのである。

事実、14年ぶりに再会した青山氏からは、一段も二段も階段を上がった、人としての大きな成長、成熟が感じられた。

たとえば、14年前の青山氏は「起業した以上、1日も早く上場企業になりたい」というのが口癖で、その言動からは「隠しきれない野心」が感じられたものだ。むろん、起業家として、そうした意欲や野心を持つことは、けっして悪いことではない。

ところが今回会ってみると、そうした野心は影を潜め、「本当に人のため、社会のためになる製品を広め、1人でも多くの人の健康、美、幸福のためにお役に立ちたい」という真剣な思いが、ひたひたと伝わってきたのである。それが心底、本音であることは、400人以上の経営者を取材し、執筆してきた私には、よくわかる。

14年前の青山氏にあった、人としての大きさ、力強さに加えて、現在の青山氏には、人間的な深さ、包容力、力強さに勝るしなやかさがある。そして何よりも、まるで太陽のような、とてつもない明るさ、やさしさ、温かさが感じられるのだ。

こういう心境に至った経営者は、理屈では説明しきれないパワーを得る。時代が背中を押し、社会が応援してくれる。

本書では、青山氏の経営理念、人生哲学に加えて、そうした青山氏の人となりにも筆を伸ばしていく。したがって、経営書としてだけでなく、「人生を、どう生きたらいいのか」という、誰もが持つ悩みの解決を示す書としても読んでいただけると自負している。そうした意味から、本書を人生の成長の書として、愛読書の1冊に加えていただければ、著者としてこれ以上の喜びはない。

なお、本文中の一部の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断わりしておく。

 2016年3月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第1章 入浴革命が始まった!

「すごい」「すご~い!」という声があがる不思議なお風呂
入浴の常識が180度変わる!
小さな泡の驚異の効果
毛穴の奥深いところの汚れまで取れる洗浄効果
なぜ洗わなくても毛穴の奥の汚れが取れるのか
肌を傷める原因になる「こすり洗い」はもう不要
肌荒れ、敏感肌、アトピー肌の方にも喜ばれた
もう「お父さん、臭いから嫌い!」と言わせない
毎日が温泉気分、体の芯から温まる温浴効果
「冷え」と「健康」
心を癒やすゆらぎ効果、やさしい水流効果も満喫できる
九州大学名誉教授との共同研究・ジェット入浴の心身への効果
音や振動にうるさいマンションでも設置可能
第二の入浴革命「ナノシャワー」
科学的に証明された「ナノシャワー」の洗浄力
肌がしっとり潤う保湿性能と温浴作用
シャワーであればこその洗浄力
いま使っているシャワーが、そのまま「ナノシャワー」になる
地球視点で開発された、驚異の節水効果


第2章 夢の入浴装置「マイクロバブルトルネード」が誕生するまで

マイクロバブルのニュースを見ていて、ひらめいた
「必ず夢のお風呂を実現する」という固い決意
「ひらめき」がかたちになるまで
泡の技術者・平江との運命的な出会い
「マイクロバブルトルネード」開発の裏側
夢の入浴の進化版「マイクロバブルトルネード」
他のメーカーが追随できない技術
「どの浴槽にも取り付けられる」が第二のブレイクポイントに
「ナノシャワー」の誕生まで
平江、サイエンスへ入社
「マイクロバブルトルネード」の市場展開
美容院、エステサロン、介護施設……、広がる導入先
全国に支店網を展開。代理店支援・教育のために本社も拡充
売り上げを大きく牽引したテレビCМ
「マイクロバブルトルネード」入浴を満喫―利用者からの喜びの声


第3章 家中の水をすべて浄活水化・水を変える「ウォーターシステム」

水が変わると、生活すべてが変わる
子どもの塩素系アトピーから、生涯を生活水改善に捧げると決意
脱塩素シャワーを開発したが……
水道水に含まれている塩素は、ある意味「必要悪」
残留塩素はこれだけ体に悪い
シャワーでは、より多くの残留塩素に体がさらされる
だったら、家中の水を浄活水化してしまおう
サイエンスの浄活水器「ウォーターシステム」はここが違う
「ウォーターシステム」の水は天然水よりも天然水?
「たからの水」と「LUIC PROJECT」
カートリッジ1本でペットボトル2500万円分の水を浄化
水が変わると、暮らしが変わる


第4章 一騎当千のプロ集団・サイエンスを支える精鋭部隊

創業10年、目を見張る躍進を続けるサイエンス
陣頭指揮をとる青山の熱いキャラクター
タカラレーベン・島田社長への恩義
さらに強まるタカラレーベンとサイエンスの絆
ビジネスに欠かせない最高の女房役
青山のおかげで人間改革ができた
違うと思ったときは、はっきり言うからこそ、長く続いてきた
たくましく育ちつつある若き侍たち
安定+不完全燃焼より、未完成+完全燃焼を選んだ山形
心底から生きがいを感じる生き方を
代理店契約の4カ月後にはサイエンスの社員になっていた
部下をつぶす「クラッシャー」からの卒業
名古屋支店をとりしきる責任者へ
心技体の向上を教えこむ研修合宿
「します、やります、できます」サイエンス
社員の家族もサイエンスの一員
高校時代の初恋を貫く
20歳で身につけた営業の5原則
アメリカ留学で起業精神を学ぶ
白血病で死線をさまよった次女の侑加さん
感謝、感謝の般若心経
新しい生活提案の場「5つ星の生活」
新プロジェクトを担う新スタッフたち
「5つ星祭り」で地元に溶けこむ
創業10年、毎年増収増益の記録を更新中


第5章 ファインバブルの可能性とサイエンスの未来

ファインバブル産業会認証登録制度第1号
厳しい審査基準をクリアした認証登録の意義
マイクロバブルはミラクルバブル
ファインバブルの効果と青山のひらめき
ファインバブルの用途は無限大?
世界の市場規模は12兆円超、日本はそのトップランナー
日本主導で国際標準化を推進
国主導の超ビッグプロジェクトが動きだす可能性も
25年後のサイエンスを描いた『プロジェクトX』
国内外に20社のグループ企業に成長する


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『人生100年時代 いつまでも自分らしく暮らしたい』 前書きと目次

100nenweb


人生100年時代
いつまでも自分らしく暮らしたい

 ~老後の住まい第3の選択「シニア向け分譲マンション」~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-421-1
初版発行:2016年7月21日
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 はじめに

人生100年時代の到来と言われている。

厚生労働省は2015年9月に、100歳以上の高齢者数は6万1568人であると発表した。調査が始まった1963年には153人であったから、単純計算すると、半世紀で400倍も増えたことになる。特に、この1~2年の伸びは急速で、「医療の進歩や健康意識の高まりが背景にある」と厚生労働省は見ている。

雑誌などで「元気な100歳」の姿を見ることも多くなった。100歳で毎日ボウリングを楽しみ160点のスコアも出す元会社経営者、101歳で和菓子屋の店頭に立ち接客をする女性、101歳で携帯電話を自由に操り体操を欠かさない男性など、元気にはつらつと日々をすごしている人が増えてきている。

こんな時代がくるとは、30年ほど前には誰が想像しただろうか。「日本人は、いまや生物として別の種になった」と指摘する歴史人類学者もいるほどだ。

比類ない長寿を手に入れた日本だが、一方では、老後の生活設計を描ききれないことからくる不安も大きくなっている。ある生命保険会社の調査によると、65歳までの4人に1人は、長生きを願う気持ちはないと回答。また、長生き願望のある人も含めた約9割が、長生きに不安を感じているという。不安の三大理由は「お金」「病気・入院」「介護」である。

私たちは、この「人生100年時代」をどう迎え、どのようにすごしたらよいのだろうか。

人跡未踏の地に突然立たされているような状態で、誰もが願うのが、最後まで自分のことは自分でしたい、ということだ。理想の姿は「元気でぽっくり」だろう。

そこで現在、注目を集めているのが、元気ですごせる「健康寿命」を延ばすことである。これには国も自治体も、本腰を入れて対策に取り組んでいる。

国は、平均寿命と健康寿命との10年近くある差を縮めることを喫緊の課題として、「『国民の健康寿命が延伸する社会』に向けた予防・健康管理に関する取組の推進」を提唱。自治体でも、ストレッチ講座など、さまざまな試みを展開している。

なかでも神奈川県は、「人生100歳時代とロボット革命」と銘打って、ITを活用した健康増進をはかるというダイナミックな構想を進行中だ。「病気を治す」医療から「健康な状態を長く保つ」医療へ変えることをめざすと同時に、新たな市場の創出につなげようとの意気込みが感じられる。

「老い」は誰も避けて通ることはできないが、医学的な見解では、老化と寿命を決める要因の75%は環境的なものであるという。これは、生活様式や食生活がいかに重要かを示している。ならば、健康寿命を長くできるかどうかも、7割以上は本人次第ということだろう。この先、さまざまな対策や試みが打ち出されるなかで、心身ともに元気なうちから「自立した100歳」をめざして自分の環境や生活様式を改善する努力が、さらに求められていくに違いない。

そうしたなか、健康寿命の延伸を最大の目的として、新たな市場を開拓しようとしているデベロッパーを知ることになった。それが首都圏におけるシニア向け分譲マンションのパイオニア、ダイヤモンド地所株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役:外所行則氏)である。

シニア向け分譲マンションとは、通常の分譲マンションに高齢者が住むためのサービスと共用施設を付与した商品である。一般の分譲マンションにはない、高齢者向けの設備や共用施設、コミュニティ、日常生活・健康・安全を支えるサービスやサポートが付帯している。

有料老人ホームなどの「施設」とは異なり、居住者は「住宅」としての所有権を持ち、資産性を有することが最大の特徴だ。

入居の対象者は「自立したアクティブシニア」で、入居後は、安心・安全のサポートを受けながら、自由な暮らしと同世代との交流を満喫できる。

実は、日本の高齢者住宅は、要介護者を対象とした施設系が大半で、元気な人向けの本格的な住宅は極めて少ないのが現状だ。本文で詳しく述べるが、特別養護老人ホームを筆頭に10種類以上ある高齢者住宅の多くは、要介護者や社会的弱者のケアを目的にしている。

シニア向け分譲マンションの立ち位置は、それらとは真逆である。元気な高齢者を受け入れ、その状態を長く維持することが目標なのだ。ひと言で言えば、できるかぎり要介護にならないようにする終の住処だ。

そのために提供するサービスは、ハード面、ソフト面ともに、徹底した利用者本位が貫かれている。24時間の見守り体制や看護師常勤といったシステム面はもちろん、どんな依頼にも対応するコンシェルジュや、一人ひとりの状態に通じるスタッフを配置するなど、居住者が困ったときにはいつでも人の手が差し伸べられるきめ細かさが、隅々にまでいきわたっている。もちろん、医療や介護の体制に関しても、充分な準備が施されている。

外所氏は、自らが開発したシニア向け分譲マンション(ダイヤモンド地所では「中高齢者専用マンション」と呼んでいる)のことを「元気を維持するための箱」と表現した。

古くなり、維持や日常生活における負担が多くなった持ち家を離れ、このマンションに移り住んで新たな刺激や生き甲斐を見つけた居住者たちのアクティブな日々は、高齢者に新しい選択肢が生まれたことを実感させる。

というのも、65歳以上のいわゆる「高齢者」のなかで要介護者は意外に少なく、80%以上は介護の必要のない自立者として生活しているのが実態なのである。にもかかわらず、その人たちにふさわしい住まいが、これまでほとんど検討されてこなかった。

元気な高齢者は、立派な「社会的資源」である。その人たちに、さらにアクティブになってもらい、なんらかのかたちで社会に貢献してもらうことは、社会全体の活性化にもつながるに違いない。そうなるための元気を維持するしくみが、シニア向け分譲マンションには詰め込まれている。

シニア向け分譲マンションは、まだ物件が少なく、多くの人にその実態が知られていない。私自身も、これまで知る機会もなかったため、あまり関心が向かないままだった。しかし、取材を重ねるなかで、それはまことにもったいないと思うようになり、私自身が、その特性を紹介するレポーター役を買って出ることにした。健康寿命の延伸を推進するための創意工夫と、その実践のあり方を人々に知ってもらうことは、「人生100年時代」を生きる道標のひとつを示すことになるはずである。

本書を読むことで、豊かな老後を創造するヒントをひとつでも見つけることにつながれば、これ以上の喜びはない。

なお、本文中の一部の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

 2016年6月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第1章 超高齢社会に突入した日本

予測を超えたスピードで進む高齢化
超高齢社会が促す変化とは
統計から見る高齢者の姿
健康寿命の延伸は、政府から個人まで総力をあげて取り組む課題
学際的な「高齢社会総合研究機構」を東京大学が創立
老後の家計簿、目減りする年金
「下流老人」が意味するもの
お金がある人もない人も、半数以上が幸せ
幸福度の決め手は人間関係
アクティブな楽しみと介護の日々から生まれる新しいライフスタイル
介護保険制度破綻の危機説をめぐって
介護職員の不足
意外な現実、要介護者は高齢者の2割に満たない
高齢者にやさしい街づくりが地域活性化を促す
元気な人たちにふさわしい住まいとは
シニア向け分譲マンション登場


第2章 高齢者の住宅事情

主な高齢者向けの住居・施設
公的施設の代表、介護保険施設
福祉型の施設と住居
さまざまな特徴を持った民間運営の施設と住居
「サ高住」は高齢者住宅の切り札となるか?
いまの住まいへの不満・不安とは
私自身の住まい事情
日本は高齢者用住宅が極端に少ない
85歳以上でも6割の人が健康状態「ふつう」以上
健康でいきいきした老後をサポートするシニア向け分譲マンション
有料老人ホームは「利用権」、シニア向け分譲マンションは「所有権」
「施設」と「住居」はまったく違う

《一人暮らしも不安なく―Sさん(70代)》 


第3章 シニア向け分譲マンションでの暮らしを検証

「ダイヤモンドライフ森の里」を端的な事例として
居住者の平均年齢は74歳
里山の風情を残す洗練された研究都市
高い付加価値を持つ共用施設
全員の楽しみ、天然温泉大浴場
食の楽しみは生きる楽しみ、ダイニング&レストラン
ペットと健康寿命の関係は深い
居室は広く、安全・安心の機能も充実
優れた利便性と地域交流
近くには自然豊かな公園があり、リゾート地も近い
24時間常駐の有人管理、コンシェルジュによるきめ細かいサービス
看護師も24時間常勤体制、気軽に利用できる「健康管理室」
協力医療機関や訪問介護との連携
3つの安心が保証されるシニア向け分譲マンション
居住者の傾向

《いちばん大事なのは人と人との関わり―Yさんご夫妻(夫70代・妻70代)》 


第4章 シニア向け分譲マンションの特殊性

元気なうちに準備と計画を
シニア向け分譲マンションの歴史
シニア向け分譲マンションとの出合い
首都圏のシニア向け分譲マンションの半数はダイヤモンド地所が携わったもの
奥が深く、容易には手を出せない事業
お任せではなく自主性を重んじる人にこそふさわしい
売るより運営
オーダーメイドの対応
手探りと試行錯誤で開発した唯一無二のソフト
「死ぬまでのおつきあい」に見る福祉の心
場合によっては退去してもらうことも
介護がしやすいマンションでQOL(生活の質)は維持される
自宅マンションでの看取りも行う

《安心・安全・自由を満喫―Kさんご夫妻(夫80代・妻70代)》 


第5章 元気な高齢者の新しい選択肢

高齢者自身が「住みたい」と思える場を提供したい
新たなコミュニティを生むシニア向け分譲マンション
アクティブの基本は社会とつながっていること
生涯現役、人のために役に立つことが元気の源
65歳は高齢者か
シニア向け分譲マンション事業に関する課題
契約までの長いおつきあい
シニア向け分譲マンションのスタンダードをつくる
中古市場への挑戦
日本版CCRCは広がるか?
幸せな老後の創造が、のちの人たちへの貢献につながる
安心を伝える雰囲気
元気を維持するための箱、ミドル層のための住まい
お金より夢を追う


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『保育士がたりない!』 前書きと目次

Hoikuweb


保育士がたりない!
 ~待機児童問題が突きつけた日本の現実~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-422-8
初版発行:2016年8月19日
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 はじめに

「保育園落ちた日本死ね!!!」

これは、2016年2月15日に投稿された、ある匿名ブログのタイトルである。なんとも物騒な文言だが、追いつめられた投稿者による、怒りと不満に満ちたその内容は、すぐさまインターネット上で大きな話題となった。

このブログは同年2月29日の衆議院予算委員会でもとりあげられたが、ブログの投稿者が匿名であったことから、一部の議員から、その信憑性を疑問視する声があがり、また、杉並区議が「便所の落書き」と一蹴したことなどにより、国民の猛反発を招くことになった。特に同じ立場におかれた女性たちの怒りはすさまじく、「保育園落ちたの私だ」と書いたプラカードを掲げた女性たちが国会前でデモを起こす騒ぎにまで発展した。

こうした一連の出来事からも、いまの日本で保育園に子どもを通わせるということが、いかにたいへんかがうかがえる。

けっきょく、この騒動を受けて安倍首相は、参議院本会議で、待機児童問題の解消に向けた保育士不足の対策として、保育士の待遇改善の具体策を近々示す方針を明らかにした。たった1人の匿名ブロガーの声が国を動かす結果となったのだ。

いま、世界に類を見ないほどのスピードで高齢化が進みつつある日本は、2つの大きな問題を抱えている。「少子化」と「労働力不足」である。

その2つの問題を解決に導く鍵となるのは、「働くお母さん」という存在である。しかし、子どもを産んでも保育園に預けることができず、職場復帰も望めない女性が多くいるというのが日本の現状だ。

日本では、女性の社会進出が、先進諸国と比べて大幅に遅れていることをご存じだろうか。

世界経済フォーラムの「グローバル・ジェンダー・ギャップレポート2015」で、男女格差をはかる「ジェンダー・ギャップ指数」が発表された。これは、政治への参加度合いや、職場への進出、教育など、さまざまな分野の項目をもとに男女平等の度合いを指数化し、総合順位を決めたものだが、それによると、調査対象145カ国のうち、日本は101位だった。また、日本は国際労働機関(ILO)などの国際機関からも、雇用慣行における男女の格差是正が遅れていることを、たびたび指摘されてきた。

つまり、われわれが考える以上に、この国は、依然として「男女平等」と言える社会からはほど遠く、世界レベルで考えても「働く女性にとって非常に厳しい国」であるということだ。

もちろん、日本政府も、ただ手をこまぬいているわけではない。

2014年10月、政府は女性の活躍を後押しするために「すべての女性が輝く政策パッケージ」を決定した。これは、女性が働きやすい環境づくりや子育て環境の改善を柱に、子育て、介護、働き方など6分野38施策で構成されたものである。遅きに失した感もあるが、政府にはぜひ、これらの施策の実現に全力で取り組んでもらいたいと思う。

女性の社会進出を促進するためには、女性を支えるインフラの整備が欠かせない。その手立てのひとつが、2015年4月にスタートした「子ども・子育て支援新制度」である。新制度の大きな柱となっているのは「認定こども園」の普及だ。いまや社会問題となっている待機児童を減らし、子育てに時間をとられている母親たちの社会進出をはかるのが狙いである。

しかし、ここにひとつのジレンマが生じる。女性が社会進出を果たし、仕事を持つようになると、どうしても出生数の減少が否めないということである。それでは、「労働力不足」問題はプラスに転じたとしても、「少子化」問題は深刻さに拍車がかかりかねない。

これまでの出生の実態を見てみよう。女性1人あたりの生涯出生数の平均を示す「合計特殊出生率」は、1940年代後半の第1次ベビーブーム期には4・3人を超えていたが、1950年に3・65人となって以降は急激に減っている。その後は、第2次ベビーブームを含め、ほぼ2・1人台で推移していたが、1975年に2・0人を下回ってからは、ふたたび低下傾向を示すようになり、2005年には過去最低である1・26人まで落ち込んだ。2013年には1・43人と微増したものの、いまだ低水準にとどまっている。

前述のとおり、「少子化」と「労働力不足」という2つの問題は、まさに国の将来を左右するものだ。それを解決するためにも、「女性の社会進出」と「出生数の増加」は、ともに必ず解決しなければいけない事案であり、政府はもとより、国民全体が創意工夫を凝らして克服せねばならないテーマである。

この「女性の社会進出」と「子育て支援」という二律背反の難しい課題に、正面から取り組んでいる民間企業は多くある。本書を執筆するにあたって取材協力をいただいた「アスカグループ」も、その一例だ。

アスカグループは、保育士を中心とした人材派遣・人材紹介事業を手がける株式会社アスカ(本社:群馬県高崎市、代表取締役会長:加藤秀明氏)を核としたグループ企業で、創業は1994年12月。アスカグループが保有する保育求人サイト「保育情報どっとこむ」に登録している保育士を、全国各地の保育所の要望に応じて派遣・紹介する、保育士専門の人材会社である。保育士のあいだでは、口コミなどを通じて、アスカグループの存在は広く知られている。

実際、「保育情報どっとこむ」への登録者数は4万人を超え、取引先保育所数は延べ4000カ所と、日本一の派遣・紹介実績を誇る。また、全国13カ所に支店を展開しており、毎月500人から600人の新規登録があるため、アスカグループが擁する保育士の規模は増大し続けているという。

アスカグループの企業理念は「社会貢献」である。

「人材ビジネスを通して世の中の役に立ち、そしてスタッフと社員の家族を大切にして、多くの人々に頼られるようになることが使命です」

と、アスカグループの創業者であり代表取締役会長の加藤秀明氏は語る。

加藤氏は、こう続けた。アスカグループが命題として掲げてきたのは、「保育士と保育所の期待に誠実に応えること」であると。

「保育士さんが願っているのは『よい職場で、よい賃金で働く』ということ。一方で保育所は『子どもの面倒見がよく、優れた保育士』を求めています。その双方の要望と期待に真摯に応えてきたことが、競争の激しい人材派遣業界で成長し続けることができた理由だと自負しています」

保育の現場に貢献するアスカグループは、同時に、女性の社会進出を推進させる試みも自社で実践している。アスカグループで働くスタッフの大半は女性であり、子どもを抱える「お母さん」も多い。本文でくわしく紹介するが、アスカグループは、女性たちが子育てをしながら働き、正当に評価されるしくみを、すでに確立しているのである。

また、そのしくみもさることながら、子育てと仕事を両立させようと奮闘する女性スタッフのたいへんさやがんばりを、経営陣が理解し、その力になろうとする姿勢を見せていることも、すばらしいと思う。

それに、このような取り組みを続ける企業があるということは、保育関係者だけでなく、育児休業から仕事へ復帰しようと考える女性にとっても、また、その女性たちの力を必要としている企業にとっても、なによりも心強いものに違いない。

本書は、日本の働く女性がおかれている現状や、保育現場の厳しい現実にスポットを当てながら、今後、われわれがめざすべき社会とはどんなものなのかについて述べていくものである。

子育て環境の充実は、いまや国をあげて取り組むべき課題である。それだけに、よりよい条件と環境のもとで保育所に就業することを希望する保育士や、優れた保育士を求める保育所・保育園の経営者のみならず、多くの一般読者にとっても、この国の未来を考えるうえで貴重な指針の書となるであろう。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

 2016年7月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第1章 追いつめられる保育士たち

慢性的な保育士不足に悩む保育所
全職種平均より9万円も低い保育士の給与
国をあげて「潜在保育士」の職場復帰に注力
保育士と保育所のミスマッチの原因は
想像以上に苛酷な保育現場~追いつめられる保育士たち
エスカレートする保護者たちの要求


第2章 保育の現場から ― 国会に現場の声は届くのか ―

~高崎市保育協議会会長 狩野章に聞く~
 保育士の「数」と「質」をともに上げて『選ばれる園』をめざせ
~群馬県甘楽郡甘楽町町長 茂原荘一に聞く~
 子どもは町の宝、地域が、国が育てる覚悟を持とう
~現役保育士 篠村まどかに聞く~
 「フルタイムでも派遣」という働き方を選ぶ理由
~現役保育士 河藤洋子に聞く~
 経験の少ない潜在保育士が見つけた仕事のやりがい
国会に現場の声は届くのか
保育士を「生涯の仕事」にしてもらうには


第3章 子育て環境の整備に向けたさまざまな取り組み

「子ども・子育て支援新制度」から1年、いまだ解消されない待機児童問題
公表されたデータからは見えない「隠れ待機児童」
小規模保育所の定員拡大で待機児童問題を改善せよ
働く女性が利用しやすい企業内保育を増やせ
問題解決に向けた各自治体の取り組み
人口移動と切り離せない待機児童問題


第4章 女性が輝く社会の実現に向けて

日本がめざすべき「女性が輝く社会」とは
「結婚か、仕事か」「子育てか、仕事か」と二者択一を迫られる日本女性たち
女性の力は「我が国最大の潜在力」
求められるのは女性のライフステージに応じた支援
活躍推進に向けた全国的なムーブメントの創出
女性支援に不可欠な、子どもの保育・教育現場の充実


第5章 女性の社会進出を推進する企業

女性を支える仕事だからこそ、女性が働きやすい職場に
ウーマンパワーが支えるアスカグループ
女性だからこそ可能なスタッフとの絶妙な関係
産休・育休を取りやすい職場環境
パートでも管理職になれるキャリアアップシステム
ほかにもいろいろある、女性が働きやすい企業
「育休は取ってあたりまえ」を社会に浸透させよう


第6章 「お母さん」が大切にされない国に未来はない

女性の活用こそが日本の生き残る道
急がれる学童保育の充実
子どもの犠牲の上に成り立つ社会でいいのか
企業経営者は意識改革をすべし
ワークシェアリングの推進で子育てと仕事の両立を
「誰もが暮らしやすい国」の実現に向けて


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『いま、ふたたび維新に挑む』 前書きと目次

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いま、ふたたび維新に挑む
 ~日本の心と文化を世界へ~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-423-5
初版発行:2016年8月31日
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 はじめに

日本全国、観光名所に限らず、街中どこでも外国人の姿を数多く目にするようになった。それもそのはず、日本を訪れる外国人観光客の数は年々増加し、2010年には約861万人だったのが、2015年には約1974万人と、わずか5年で2倍以上にふくれあがっているのだ。

政府は、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年までに訪日外国人観光客数を年間2000万人にすることを目標としていたが、前倒しでの目標達成が確実な情勢となったことで、2020年の目標値を4000万人にまで引き上げ、さらに2030年には6000万人を目標にして、観光立国をめざそうとしている。

テレビでも、外国人が「日本大好き」「日本はすばらしい」などと日本を絶賛する類の番組が頻繁に放映されているが、外国人が日本に関心を寄せる背景には、若者に人気のアニメやゲーム、音楽などのポップカルチャーだけでなく、長い歴史のなかで育まれてきた日本の伝統文化に対する憧れもあるようだ。神社仏閣などの建造物、日本画や浮世絵、仏教彫刻などの美術品、熟練の職人技が光る伝統工芸品、歌舞伎や能、狂言などの伝統芸能、和食や和服(着物)など日本古来の生活文化、さらには桜や紅葉をはじめとする四季折々の自然を愛でる精神風土などが、彼らを魅了している。

インターネットの普及により、いまでは日本人より日本文化に詳しい外国人も珍しくない。むしろ日本人のほうが、自国の伝統文化に無関心な人が多いようにも見受けられる。

日本文化の象徴的な存在とも言える「着物」についても例外ではない。ライフスタイルの変化などにより、日本人のあいだで着物離れが叫ばれるようになってひさしいが、そうしたなかでいつのまにか、着物は成人式や卒業式、結婚式といった「ハレの日」の特別な装いとして位置づけられるようになってしまった。

2000年代以降、若い女性を中心に浴衣ブームが起こり、花火大会や夏祭りでの浴衣姿は、すっかり定着した感がある。しかし、日常生活で着物を着る人は、ひとむかし前に比べて少なくなっている。着物の小売市場は、1980年代初頭のピーク時には1兆8000億円に達していたのが、いまでは6分の1にまで規模が縮小し、近年は2900億円前後で推移している。

その着物が、近年、日本文化への関心の高まりとともに、「KIMONO」として、海外で注目を浴びているという。

もっとも、着物の美しさが世界の人々を魅了するのは、いまに始まったことではない。これまでも「女性のエレガントな装い」として、多くの外国人の関心をひきつけてきた。オランダの19世紀後期印象派の画家・ゴッホは、浮世絵の影響を受けて着物姿の花魁を描いているし、19世紀から20世紀にかけて活躍したフランス印象派の画家・モネも、着物をまとって踊る金髪女性の姿を描いている。

外国人にとって「KIMONO」は、むかしもいまも非常にエキゾチックで魅力的に映るらしく、京都や金沢などでは、古都の風情漂う街並みを着物姿で散策したりするための旅行者向けのレンタル着物が、外国人観光客にも大人気のようだ。真に美しいものは時代や地域を超えて多くの人に支持される、ということではないだろうか。

日本に向けられる、世界からのそうした憧憬の眼差しを、経済、とりわけ内需拡大へつなげようという動きが活発になっている。その代表が、経済産業省が推進する「クールジャパン政策」である。

日本の魅力を付加価値に変えようという、さまざまな取り組みのなかで注目されるのが、「きもので日本の魅力を向上する」をテーマに経済産業省繊維課が設置した「和装振興研究会」の活動だ。有識者、若手経営者、ユーザーから構成されるこの研究会には、芥川賞作家でお笑いタレント、そして着物好きでも知られる又吉直樹氏なども委員に名を連ねていた。

和装振興研究会では、着物市場が衰退するなか、着物産業のビジネスのあり方や、着物を有効に活用して日本や地域の魅力向上につなげていくための方策について、2015年1月より5回にわたって議論・検討を重ね、同年6月にその報告書を発表している。詳しくは本編でふれるが、同報告書では近年、国内において「和モノ」に興味を持つ「和女子」と呼ばれる若い女性が増えつつあリ、着物は日本や地域の魅力を最大限に向上させる可能性を秘めているのではないかと指摘している。そうであれば、着物市場は今後、ふたたび勢いを取り戻し、拡大していくことも期待される。

このように国内外で着物への注目度が高まるなかで、着物の流通改革を旗印に市場の拡大に尽力し、着物の小売市場が衰退するなかで右肩上がりに業績を伸ばしているのが、本書で紹介する株式会社一蔵(埼玉本社:埼玉県さいたま市、東京本社:東京都千代田区、代表取締役社長:河端義彦氏)である。

一蔵の創業は、1991年にさかのぼる。当時の着物業界では「委託取引」が一般的で、小売店は、製造元から複数の問屋を介して商品を仕入れ、売れ残った商品は製造元に返す、という流通のしくみが常識としてまかり通っていた。つまり、在庫リスクと資金負担を製造元だけが負うしくみだ。

「これでは製造元を弱体化させ、商品の価格を不当に高騰させるだけではないだろうか」と危惧する河端氏を突き動かしたのは、「このままでは業界がだめになる、ひいては和文化が廃れてしまう。なんとかしなければ……」という熱い想いだった。そこで、当時、取締役を務めていた着物の大手製造・販売会社を辞め、4人の仲間と新会社を立ち上げたのである。

一蔵という社名は、明治維新の立役者、大久保利通公の青年時代の名前「大久保一蔵」にちなんで名づけられた。

「清廉潔白、私欲はなく、熱き志と類まれなる知性によって近代日本の礎となる改革を次々と行った大久保一蔵のような、『維新の人』であり続けたい。社名には、そんな想いが込められているのです」

と、河端氏は語る。

一蔵を設立した河端氏が真っ先に取り組んだのは、商品仕入れの方法を改革することだった。問屋から「委託」で仕入れるという業界の慣習を打ち破り、自らリスクを負って製造元から商品を「買う」という方法を導入したのだ。製造元との「直接取引」「現金買取・返品なし」という画期的なビジネスモデルを確立させることで、多くの製造元と信頼関係を構築し、リーズナブルな価格での仕入れと販売を実現して、顧客、製造元、一蔵の三者に利益をもたらす「三方よし」のしくみをつくりあげたのである。

現在、一蔵は全国のオフィスビルやショッピングセンターに計64店舗(2016年6月末現在)を展開し、着物の販売・レンタルや、着方教室などの開催をするほか、着物を着て楽しめる多彩なイベントの企画などを行っている。また、成人式用の振袖を購入した顧客には、利便性を追求して、成人式の前撮り写真撮影や、成人式当日の着付け・メイクなどを一括して行う、ワンストップサービスも提供している。

「日本文化をもっと身近にする」「私たちのおもてなしを世界に広げる」「世の中を楽しく変えていく」を企業理念に掲げ、「感動創造企業」を標榜する一蔵では、核となる和装事業に加え、2000年には人生の「ハレの日」を彩るウェディング事業を新たにスタートさせ、もうひとつの事業の柱に据えている。

ウェディング事業では、さいたま市と名古屋市で、ゲストハウスウェディングスタイルの3つの結婚式場を運営。「本物志向の施設(ハードウェア)」「専門的なサービス(ソフトウェア)の内製化」「徹底したおもてなしサービス」により、多様化する顧客のこだわりに応えることで高い評価を得ている。

創業から25年。こうした施策と全社一丸となっての経営が奏功して、事業は順調に拡大。2016年3月期の売上高は140億円、従業員1350名(契約社員等を含む)を擁する企業に成長した。とりわけ売上の約65%を占める和装事業においては、同社が誇る商品力・販売力・企画力を武器に、少子化により成人数が過去25年間で約4割も減少するなか、振袖を中心に売上高は約8倍に拡大し、快進撃を続けている。

2015年12月には念願だった東証2部への上場も果たし、低迷する着物業界にあって、その成長ぶりが際立つ。しかし、河端氏としては、今回の上場は通過点にすぎず、将来的には1部上場を視野に入れているという。そのためには、今後も新規出店、SPA化、ファッションレンタル事業の立ち上げ・強化を推し進めるなどして、振袖市場におけるシェア30%の獲得をめざしたいとしている。

2016年5月には、次なる維新に向けて、本社管理部門および事業本部管理部門の機能の一部を東京・丸の内に移転。2018年には沖縄県名護市に滞在型リゾートウェディング施設を開業し、ホテル事業にも参入する計画で、インバウンド需要の取りこみにもいっそう注力していく考えだ。そして、「和の文化」「和の心」を未来にしっかりとつなげるだけでなく、広く海外にも普及させていきたいとしている。

本書は、経済産業省が推進する「和装振興」の動きを先取りするかのように、和服の流通改革をはじめとする革新的な取り組みで着物業界に新風を巻き起こし、さらには本格的ゲストハウスウェディングのパイオニアとして新たなウェディングスタイルを追求する一蔵の事業活動を紹介するとともに、その企業理念、経営哲学に迫るものである。

本書が、着物業界やウェディング業界関係者、ならびに、新たにこれらの業界をめざそうとする方のみならず、ひとりでも多くの方にとって、日本ならではの文化の魅力にあらためて関心を寄せる一助となれば、これに勝る喜びはない。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

  2016年7月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第1章 海外からも注目される日本文化と着物市場の現状

日本文化の象徴「KIMONO」に海外から熱い視線
一幅の絵のような着物に日本人の美意識が凝縮
日本人の知恵が詰まった究極の衣装
美への飽くなき欲求が着物を進化させた
生活様式の欧米化で日常着としての着物需要が減少
1・8兆円をピークに減少に転じた着物市場
若い女性を中心に高まる着物への潜在需要
潜在市場を成長させる鍵はリーズナブルな価格にある
着物も「所有」から「使用」の時代へ
着物を楽しみたい層へのアプローチ
経済産業省が「きものの日」の導入を検討


第2章 日本文化を未来へつなぐ、感動創造企業「一蔵」

念願の東証2部への上場を果たす
着物業界の「維新」をめざして
「三方よし」の流通改革
創業時から育てた事業が「和装事業」に発展
「商品力」「販売力」「企画力」を武器に業績を伸ばす
本物志向にこだわるウェディング事業
ウェディング事業における専門的サービスの内製化
和装事業とウェディング事業のシナジーも
日本文化を、そして一蔵のおもてなしを未来へ


第3章 進化し続ける一蔵の和装事業

JTSとオンディーヌの2事業本部体制
「物売りではなく、よきアドバイザーたれ」
楽しいから続けられる着方教室
産直着物をリーズナブルな価格で提供する「銀座いち利」
O2O導入の通販サイト「いち利モール」
3つのブランドで展開する成人式用振袖
若年層向けサイト運営により認知度アップをはかる
オンディーヌの参加型商品開発プロジェクト


第4章 最高のおもてなしを追求するウェディング事業

本格的ゲストハウスウェディングの先駆け
18世紀イギリス・ウェールズの「マナーハウス」を再現
社員も惚れこむ本物感のあるハードウェア
名古屋に誕生した19世紀イギリススタイルの「グラストニア」
和魂洋才を極めた白壁の邸宅「百花籠」
ソフトの内製化により顧客のこだわりに迅速に対応
顧客の要望に「NO」と言うなかれ
顧客の感動、満足感が未来の顧客獲得につながる
平日と閑散月の稼働率を上げることが課題
女性が8割を占め、積極的に提案できる環境


第5章 創業社長・河端義彦の経営理念とビジネス哲学

着物の訪問販売で頭角を現す
仕事を通じて実感した着物流通の不合理
わずか4名の仲間で会社をスタート
熱意が通じて製造元との直接取引が実現
初年度に10億円を売り上げる
教育こそが不良在庫を出さない最良の方法
リピーターを増やすことに重点をおく
ヴァリューチェーンの構築で業績を伸ばす
業界の慣習に抗い、社員に課した厳しい掟
成人式用振袖のレンタル事業に進出
写真撮影やヘアメイクのワンストップサービスも
好調な写真撮影をきっかけにウェディング事業に参入
和装事業の店舗展開により女性の力を積極的に活用
望むのは、新しいものへの好奇心旺盛な人


第6章 次なる「維新」でさらなる高みをめざす

顧客ニーズをダイレクトに反映できるSPAモデルを強化
振袖の自社ブランド開発で差別化をはかる
ブランドイメージ構築に向けファッションレンタル事業開始
市場シェア拡大をめざし「京都きもの学院」をM&A
沖縄に滞在型リゾートウェディング施設を計画
日本のおもてなし文化を世界へ
本社機能の一部を東京・丸の内に移し、新たな幕開け


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『メモリードグループ 100年企業への挑戦』 前書きと目次

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メモリードグループ 100年企業への挑戦
 ~冠婚葬祭業からトータルライフサポート企業へ~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-424-2
初版発行:2016年10月3日
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 はじめに

新しい世紀を迎えて以降、変化のスピードは、ますます激しくなっている。10年前には存在すらしていなかった会社が飛ぶ鳥を落とす勢いで人気企業の仲間入りを果たす一方で、強大なブランド力を誇った会社が見る影もなく凋落するというような、想像を超えた出来事が、国内外ともに立て続けに起きている。

多くのエコノミストは、時代の変化にすばやく対応していかなければ、グローバルな競争社会で生き残ることは難しいと、警鐘を打ち鳴らす。

たしかに、優れた経営者は例外なく、時代の変化に敏感であった。

石川島播磨重工業株式会社(現・株式会社IHI)の社長や株式会社東芝の社長を歴任した土光敏夫氏は、半世紀も前に「これから期待される社員像は『変化に挑戦しうる人』である」と断言している。

日本にコンビニエンスストアを根付かせた鈴木敏文氏の座右の銘は「変化対応」であり、「時代とともにあらゆるものが変わるという考え方を社是にすればいい」とまで言いきっている。

「もう変化対応では追いつかない。変化を先取りして創っていかないと間に合わない」と言いきるのは、株式会社ジャパネットたかたの創業者・髙田明氏である。

彼らはいずれも、既成のものを打ち崩し、未来を世の中に見せていくことで、企業を大きく成長させてきた。

あらゆる変化はイノベーションという挑戦によって生まれ、イノベーションを生み出せない企業は、どんなに強固なブランドがあったとしても「過去の会社」として扱われてしまう。そうした危機感を自らに課し、常に変化の先端に立とうという気概を持つことこそ、現代の経営者に求められる条件と言えるだろう。

こうした気概を強く持ち、常に業界に革新の波を起こしてきた人物のひとりが、日本有数の規模を誇る冠婚葬祭互助会を運営する株式会社メモリードの創業者であり、メモリードグループの代表を務めている本書の主人公・吉田茂視氏だ。

吉田氏は、47年前、まったくのゼロから会社を立ち上げると、長崎を本拠地に、瞬く間に九州および関東の1都6県に商圏エリアを開拓した。その「時代を先取りする目」により、これまでにない婚礼式場や葬祭ホールを登場させることになった。

冠婚葬祭という旧態依然とした業界にCS(顧客満足)の視点を取り入れて、「葬儀革命」という起爆剤を放ったのも吉田氏である。不透明さがまかり通っていた業界に、施設・料金・サービスの透明性を打ち出して、公平明快な「メモリード規準」なるものを打ち立てた。

その後も吉田氏の意欲は衰えることなく、経営の多角化に本腰を入れて取り組み、現在は「婚礼事業」「葬祭事業」「ホテル事業」「レストラン事業」「保険事業」の5つがメモリードグループの事業の柱となっている。

互助会運営を主体とする企業で、これほど積極的に多角化に取り組んでいるところは、ほとんど例を見ない。しかも、どの事業にも、次のような斬新な試みが組み込まれている。

《ホテル事業》
日本を代表する建築家・隈研吾氏とのコラボレーションを実現。なかでも「ガーデンテラス長崎ホテル&リゾート」は、自然との融和に裏打ちされた、際立つ趣向の外観が建築界でも絶賛され、名誉ある「BCS賞」にも輝いた。高いデザイン性とホスピタリティに加え、婚礼、宴会、法要などのニーズに配慮した新しい地域密着型のホテルとして、多くの顧客を集めている。

《レストラン事業》
和食、洋食を問わず、いずれも個性とこだわりを持った店舗を各地でオープン。味、接客、インテリア、どれをとっても一級の品質をそろえ、多くが地元の有名店になっている。
また、長崎の繁華街にオープンしたチョコレート専門店には、多くの人に長崎の魅力を知らせるための仕掛けを組みこんでいる。

《保険事業》
死亡保障に特化した少額短期保険事業が、近年、著しい伸びを見せている。89歳まで加入でき、葬儀の際にすぐに使えるという、互助会業界初の「葬儀保険」は、販売が開始されると、たちまち共感を呼び、現在では4万5000口座を数えるほどに成長している。
今後の目標は、3年後に生命保険事業への移行を果たし、42番目の生命保険会社として全国に口座を広げていくことである。

こうした新事業の数々が、互助会事業本体を支え、グループ全体をさらに強靱にしている。その原動力は、リスクを取っても現状を変えるという、挑戦心の発露である。

「社会の変化、ニーズの変化に対応しなければ、いかに大企業といえど、生き残れません。そして、変わりきったところだけが生き残るのです。そのために経営者は、勇気を持って変えていかなくてはなりません。日々進化することが必要です」

婚姻数の減少と葬儀のコンパクト化という厳しい状況がこれからも続くなか、互助会そのものが危機にさらされるときがこないとはかぎらない。その最大の変化に対応するためにも、常に時代を先取りしていかなければならないのだ。

もうひとつ、現在の事業には、大胆な変革と同時に、守り続けなければならないものがある。

メモリードグループの母体である互助会は、もともとは営利目的ではなく、相互扶助の精神によって世の中に普及し、定着したものだ。互助会が掲げる3つの綱領である「助けあいの精神、日本の古来の慣習の継承、地域への貢献」は、どんなに時代が変わっても、変わらない本質である。

その精神を守り抜き、次世代につなげていくという使命を、メモリードグループは持っている。

時代への挑戦と、伝統の継承。相反するかに見える2つの要素を統合し、発展させるには、どうしたらよいかを、吉田氏は創業以来、考え続けてきた。

その吉田氏にとって、「改革と守り」という両輪を回し続ける要となるのが、「ありがとう」という言葉である。

ふだん何気なく使われている言葉であるが、吉田氏は、このひと言に自らの生き方と会社の理念のすべてを込めている。「ありがとう」の持つ偉大さと奥深さは、本書を支える柱のひとつになっている。

本書は、人口減少のなかで冠婚葬祭業が生き残る道を模索しつつ新規事業にも積極果敢に取り組むメモリードグループの事業活動を紹介するとともに、創業者でもあるグループ代表・吉田茂視氏の経営理念と人生哲学に迫るものである。

これは冠婚葬祭業者のみならず、ホテルや飲食などの事業者、および地域おこしに関わる人々にとっても、貴重な指針となるであろう。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

  2016年8月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第1章 日本人の美点、相互扶助の精神を受け継ぐ「互助会」

自分のことよりも先に、ほかの人のことを考えるのが日本人
欧米は「チャリティ」、日本は「おたがいさま」
労働と儀式を支えあう「結」の伝統
「講」が広げた金融ネットワーク
「結」と「講」を合わせたしくみを持つ「互助会」の誕生
数の減少、伸び率の低さ、取り巻く状況は厳しい
淘汰・再編により、生き残るのは100社に
解約手数料をめぐる裁判騒動
「預かり金」か、「予約金」か
互助会は地方創生の原動力
3・11と互助会
冠婚葬祭互助会のリーディングカンパニー「メモリード」


第2章 顧客本位の葬祭とは何か、末永く寄り添う新たなかたち

「もやい船」で多くの精霊を送るメモリード
数は増えるが規模は大きくならない葬祭業界
葬祭業界への怒りが生んだ「葬儀革命」
女性の力を業界に知らしめた「サービス革命」
ホテルに勝るとも劣らない葬祭ホールの出現「施設革命」
隈との出会いを生んだ「東京メモリードホール」
良質なコストダウンを実践した「料金革命」
料金をめぐる最新事情
増える「家族葬」「直葬」から見える、孤立する社会
葬儀は命のリレーの場
誰でも、どんな相談でも受け入れる「市民葬儀相談センター」
葬儀後のサービスに注力
遺族の心身負担を軽くする「遺品整理」
「祭」を活発にするには、日本の心を取り戻すことが必要

《部門別インタビュー 葬祭部門》
お客様の不安に応え、見えない仕事もこなす質の高い人材を育てる


第3章 保険事業への挑戦・少額短期保険

3つに分けられる葬儀費用のうち、互助会が関与するのは1つだけ
もう香典には頼れないところに登場した画期的な「葬儀保険」
葬儀保険の特徴と商品種類
保険金が大きな助けになった3つの実例
少額短期保険とは
手軽さとスピード感が人気の理由
25年前にオランダで知った葬儀保険
葬儀保険でダントツなのは、真剣に勉強したから
高齢入居者の安心をつくる「アンド・ユー」
日本少額短期保険協会発表の「孤独死の現状レポート」

《部門別インタビュー 保険部門》
保険の原点も助けあいの精神


第4章 慶びの日に最高の輝きを

地域をあげてのイベントだった、かつての婚礼
隈研吾設計の「森の光教会」「シェタカ高崎」は若い男女の憧れの場所に
「ガーデンテラス」シリーズが打ち出す特別な時間と空間
魂に響くセレモニーが行われる建物
婚姻数は減少したが業界の売り上げは伸びている
魅力的な式場が街に輝きを与える
挙式は戦後が生んだ最大の儀式
結婚式の変遷と、メモリードの式場の斬新さ
他の追随を許さぬ衣裳の質と量
地域を元気にする新しい結婚のかたちを試みながら

《部門別インタビュー 婚礼部門》
ここでアルバイトをした学生が、ここを結婚式の式場に選びます


第5章 吉田茂視、「ありがとう」の理念と躍進の軌跡

「ありがとう」の精神が成長の原動力
商売人の祖父と組合委員長の父から受けた深い影響
互助会の重鎮の薫陶を受け、長崎で一から出直す
女性の偉大さを教えてくれた「営業の母」
一世一代の挑戦を受けとめた巨人
草創期を乗り越え、第二ステージに登壇
隈とのマッチングによる唯一無二の建物
「『わたしからあなたへ』一言」が伝える、心を磨く大切さ
「ありがとう」の企業理念に込めたもの


第6章 メモリードグループ、100年企業への道

「冠婚葬祭業」から「トータルライフサポート企業」へ
チョコレート専門店に込められた壮大な夢作戦
長崎を京都や金沢に匹敵する街に
30年間人々を楽しませる「五島コンカナ王国」
「五島ワイナリー」の誕生
拡大するホテル事業
レストラン事業が社内の人材育成と町おこしをうながす
留学生のためのたこ焼き屋
メモリードグループの幅広い事業
おもしろい存在になるのは入社3年後から
小さな店は若手のチャレンジの場
5つの柱を持つ意味は、1つだけの経営では危ないから
42番目の生命保険会社をめざして
感謝とリスペクトの念で地域に寄り添い、100年企業をめざす


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『カーシェアリングの時代がやってきた!』 前書きと目次

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カーシェアリングの時代がやってきた!
 ~「タイムズカープラス」の魅力を徹底検証~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-425-9
初版発行:2016年11月13日
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 はじめに

モノを持たないで「シェア」する。そんなライフスタイルが、若い人たちを中心に、あたりまえのようになりつつある。その背景にあるのが、ソーシャルメディアやスマートフォンの急速な普及により、近年、欧米を中心に世界的な広がりを見せている、「シェアリングエコノミー(共有経済)」と呼ばれる概念だ。

これは、大量生産・大量消費の従来型経済とは異なる、個人や企業などの提供者が所有するモノやサービスを、インターネットを介して利用者が共有したり融通しあったりすることで成り立つ市場経済のしくみであり、その市場規模は、2025年には約3350億ドルに達するとの試算もある。

実際、シェアリングエコノミーの潮流は、巨大なビジネスチャンスを生み出している。代表的な例としては、アメリカで2000年代後半に誕生し、いまや世界を席巻しつつある勢いの民泊マッチングサービス、Airbnb(エアビーアンドビー)や、配車サービスのUber(ウーバー)などがあげられる。

シェアリングエコノミーの潮流は、日本にも押し寄せている。国家戦略特区に指定された東京都大田区では旅行者への民泊が解禁となったほか、ライドシェア(相乗り)が検討されるなど、政府もシェアリングエコノミーを受け入れるための規制緩和やルール整備に乗りだしたことから、2016年は「シェアリングエコノミー元年」とも言われている。

もっとも、シェアリングエコノミーのサービス自体は、いまに始まったことではない。たとえばカーシェアリングは、その走りとも言えるだろう。

カーシェアリングとは、会員のあいだでクルマを共同利用するシステムで、スイスが発祥とされている。1980年代後半からヨーロッパを中心に普及が始まり、その後、北米にも広まった。

なかでも、クルマ社会の典型と言われるアメリカで2000年に設立されたZipcar(ジップカー)は、カーシェアリングのトップ企業として一躍、世界的にも名を馳せるようになった。2013年にはアメリカのレンタカー大手、Avis Budget Group(エイビス・バジェット・グループ)に買収されたが、アメリカはもとより、カナダやヨーロッパなど20の主要都市と300の大学のキャンパスでサービスを展開し、車両台数約2万1000台、会員数は約100万人(2015年12月末時点)を数える。

日本では、1988年に外車専門のカーシェアリングが登場して話題となったが、普及が始まったのは2000年代になってからのことだ。

2002年にオリックス自動車株式会社がカーシェアリングサービスを開始したのに続き、2005年には株式会社マツダレンタカーがカーシェアリング事業に参入。2008年にはカーシェアリング・ジャパン株式会社が設立されるなど、その将来性に着目した企業が相次いでカーシェアリング事業に乗りだした。

しかし、カーシェアリング事業には「人(会員)・クルマ・駐車場」の3つの要素が不可欠だが、とりわけ都市部では駐車場の確保が難しいこともあって、なかなか本格的な普及には至らなかった。

日本でカーシェアリング市場が急激な伸びを見せ始めたのは、全国で時間貸駐車場「タイムズ」を展開する業界最大手のパーク24株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:西川光一氏)が2009年にマツダレンタカーをグループ化して、カーシェアリング事業を本格的にスタートさせてからのことだ。

なお、2011年からパーク24は持ち株会社となり、駐車場事業やカーシェアリング事業はタイムズ24株式会社に継承されている。

パーク24グループの中核事業を担うタイムズ24は、「人と クルマと 街と、」をスローガンに、全国47都道府県に1万5609カ所(2016年8月時点)の時間貸駐車場「タイムズ」を展開している。

また、タイムズ24のカーシェアリングサービス「タイムズカープラス」は、その駐車場をステーションとして活用できることが最大の強みとなっている。サービスを開始してから7年が経過し、2016年8月時点でステーション数は全国45都道府県に8366カ所、車両台数1万5704台、会員数69万1155人を数える規模となった。後発にもかかわらず、圧倒的な強さで業界首位を独走している。

交通エコロジー・モビリティ財団によると、国内のカーシェアリング車両台数は約2万台、会員数は85万人近くまで伸びている(2016年3月時点)が、実にその7割以上を「タイムズカープラス」が占めていることになる。つまり、「タイムズカープラス」の車両台数や会員数の伸びが、国内全体の伸び率にそのまま反映されていると言っても過言ではないだろう。

実は、私は2011年に、人とクルマの新たな関係をめざし、当時は「タイムズプラス」のブランド名で展開していた同社のカーシェアリング事業について検証するべく、『なぜ、いまカーシェアリングなのか』(IN通信社刊)を上梓している。その取材のなかで、社長の西川光一氏が、

「やるからには一番にならないと意味がないし、しかもぶっちぎりで一番にならないと気がすまないのです(笑)」

と、語っていたことを思い出す。

2011年5月時点では、先行していた他社をすでに追い越し、早くも国内のシェアトップに躍り出ていたものの、ステーション数は1783カ所、車両台数は2252台にすぎなかった。その後も年間約2000台~3000台のペースという圧倒的なスピードで車両とステーションを増やし続け、いまでは全国の「タイムズ駐車場」の2カ所に1カ所にはステーションが併設されているまでに拡大している。

黄色の地に黒の文字と赤の数字で「24h Times」と横書きされた看板は、いまでは街の風景として、すっかり定着した感がある。そして最近は、そこに「Times Car PLUS」の看板が加わり、カーシェアの幟がはためいているのを目にすることが多くなった。

カーシェアリング事業は、クルマと駐車場への先行投資が必要となるため、事業を黒字化するまでには、一般的にある程度の年月を要する。

しかしタイムズ24の場合、すでに日本全国に普及している「タイムズ駐車場」が基盤となるので、新たな駐車場コストがかからず、コスト競争力で俄然、優位に立つことができる。2014年10月期の連結決算ではカーシェアリング事業の営業損益が初めて1600万円の黒字となり、翌2015年10月期には12億6000万円へと大きく拡大している。

カーシェアリングの利用が大きく伸びている理由を、西川氏は次のように分析する。

「とりわけ都心部では、若い人たちがクルマを保有することに対して抵抗感を持つようになりました。利用時間とコストを照らしあわせたら、こんなに割が合わないものはないというわけです。

その一方で、クルマは非常に便利な乗り物であることには違いなく、手頃な料金で利用できるのであれば使いたいという、潜在的な需要はあるはずです。加えて、当社の場合は全国にある『タイムズ駐車場』をステーションとして活用できるので、利用者に対し、利便性においても訴求力が高いのではないでしょうか」

若者がクルマを持たないのは経済的な負担が大きいからであって、けっしてクルマが嫌いだとか、必要ではないというわけではなさそうだ。実際、「タイムズカープラス」の会員数は1カ月に約1万人の勢いで順調に増え続けているが、その半分以上が20代、30代の若者たちで占められる。

彼らにしてみれば、どんなに便利なサービスでも、料金が高ければ、やはり躊躇してしまう。その点、「ミヂカ」「オトク」「ベンリ」をコンセプトにサービスの向上をはかる「タイムズカープラス」では、「ベーシック」クラスの利用料金は15分206円という魅力的な設定になっている。料金については、今後も極力抑えていく方針だという。

また、タイムズ24では、利便性のさらなる向上をめざし、カーシェアリングの車両を、新幹線停車駅など鉄道の主要路線の駅前や、空港、港などに配備して、他の交通機関とのスムーズな連携を推し進めている。

つまり、長い距離は鉄道などの公共交通機関を利用し、駅から先の細かな移動はカーシェアリングを利用できるようにするということだ。こういう使い方が、カーシェアリングの効率的な使い方ではないかというわけだ。

そのためにも、公共交通機関で目的地に着いたら、いつでもどこでもカーシェアリングサービスを気軽に利用できる環境を整備していきたいと、西川氏は言う。西川氏としては、将来的にはカーシェアリングを、電車、バス、タクシーに次ぐ第4の公共交通として根付かせたいとの思いもある。

また、「タイムズカープラス」では、個人会員の利用は土日が多く、平日は稼働率が下がる。そこで平日の稼働率を上げるために、法人会員の獲得にも力を注いでいる。会員となった法人からは、営業効率の向上やコストの削減に結びつくとあって、評判は上々のようだ。

今後は、車両台数を毎年3000台ずつ増やし、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年までには3万台くらいを全国に配備したいとしている。

本書では、日本におけるカーシェアリングのNo.1ブランド「タイムズカープラス」のサービス内容と、「快適なクルマ社会の実現」をめざしてクルマ文化の創造と革新に挑み続けるパーク24グループの事業活動を紹介するとともに、様変わりしつつある人とクルマ、そして街との関係についても検証する。ご一読いただき、カーシェアリングの利用をはじめ、価値観が多様化する現代を賢く生きるうえでのヒントとしてお役立ていただければ、これに勝る喜びはない。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

 2016年10月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第1章 世界的な潮流となったシェアリングエコノミー

シェアリングエコノミーとは何か
世界のシェアリングエコノミーをリードする2大企業
若い世代ほどシェアリングサービスの利用に前向き
2016年は日本のシェアリングエコノミー元年に
日本発のシェアリングサービスも続々
サービス業にとってはビジネスを展開しやすい環境に
世界の市場規模は2025年までに3350億ドルに拡大!?
シェアリングエコノミーがもたらす日本への経済効果


第2章 本格的なカーシェアリング時代の到来

スイスで誕生し、欧米を中心に広く普及
なぜ、カーシェアリングなのか
急成長を遂げつつある日本のカーシェアリング市場
利用拡大の背景にある若者のクルマに対する意識変化
カーシェアリング利用のメリット
カーシェアリングの環境負荷低減効果
レンタカーとカーシェアリングの徹底比較
寡占化が進む国内カーシェアリング市場


第3章 カーシェアリングのNo.1ブランド「タイムズカープラス」

「タイムズ」活用を武器に圧倒的なシェアを握る
交通インフラとしての位置づけをめざして
「オトク」な料金体系とパックメニュー
パーク24が誇るITシステム「TONIC」を活用
2次交通としてのニーズに着目
鉄道事業者との連携による「レール&カーシェア」を推進
会員サービスと施設送客サービスの融合
個人会員向けポイントプログラム「TCPプログラム」
顧客の声を具現化した便利な機能
改善を重ね、進化し続けるシステム


第4章 カーシェアリングの賢い活用方法

15分単位だから「チョイ乗り」にうってつけ
公共交通機関との組み合わせ利用が効率的
入会を決める前にチェックしておきたいポイント
「タイムズカープラス」入会から精算までの流れ
ライフスタイルに合わせて使い方はいろいろ
出張先や旅先での利用から緊急時の対応も
マイカーとカーシェアリングの使い分け
7割の企業が業務効率の向上を実感


第5章 快適なクルマ社会の実現をめざすパーク24グループ

企業スローガンは「人と クルマと 街と、」
地域に密着した営業活動を推進
顧客目線に立った駐車場の質へのこだわり
「TPS」を通じた送客にも注力
ビジネスモデルの根幹を成す「TONIC」
拡大するTONICの活用領域
モビリティ事業の一翼を担う「タイムズカーレンタル」
駐車場の保守・管理を担うタイムズサービス
顧客の声を拾い上げる自前のコンタクトセンター
入電率を限りなくゼロに近づける
ロードサービスを提供するタイムズレスキュー


第6章 パーク24グループが描くクルマ社会の近未来図

電車、バス、タクシーに次ぐ第4の公共交通に
レンタカーとカーシェアリングの融合
目的地のネットワーク化
ワンウェイ式カーシェアリングの共同実証実験
自動運転のクルマが街中を走る時代に!?
急増する訪日外国人への対応を強化
新サービス創出に向けたさまざまな取り組み
駐車場マッチングサービス「B‐Times」
IoT時代にはデータを有する企業が勝ち残る
スマートフォンのような感覚でクルマも持ち歩く!?
「人と クルマと 街と、」の具現化をめざして


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『建設業の未来を支える人づくり』 前書きと目次

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建設業の未来を支える人づくり
 ~ワールドコーポレーションの建設業派遣No.1戦略~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-426-6
初版発行:2016年11月19日
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 はじめに

国内の建設投資は、バブル経済の崩壊以降20年にわたり、減少傾向が続いていた。しかし、東日本大震災の復興需要に加え、2020年の東京オリンピック開催に向けてのインフラおよび施設の整備、さらには安倍政権の国土強靱化計画による公共事業投資拡大を背景に、建設市場の需要は次第に回復しつつある。

だが、その一方で深刻化しているのが、建設業界における人材不足だ。長らく続いた建設不況のなかで、建設業各社は雇用を抑制せざるをえなかったため、建設業界における就労者の高齢化が進み、若手技術者が圧倒的に不足するという事態に陥ってしまったのである。

そこに追い打ちをかけるかのように、日本列島は、またもや熊本地震という激甚災害に見舞われた。しかし、瓦礫の撤去や、被災した道路や橋梁の復旧、住宅や各種施設の再建など、九州における復興需要はあるものの、被災したエリアが東日本大震災に比べると狭いことや、技術者の人手不足などの影響もあり、建設業界の動きは鈍い。ましてや個人の住宅ともなると、本震から半年以上が経過した現在も、修繕を含めた自宅再建のめどが立たないばかりか、解体すらいつになるかわからないという被災者も多くいるのが実情だ。

いまや、建設業界における人手不足は、自然災害によって被害を受けた被災者たちを救うことさえままならないほど、深刻なところにまできているのだ。

そんななかで、建設工事の現場を監理・監督する施工管理者を中心に、設計者、CADオペレーターなど、建設業に特化した技術者の派遣サービスを展開し、日本のモノづくりを代表する建設業を人の面から支えていこうというのが、本書でとりあげる株式会社ワールドコーポレーション(本社:東京都千代田区、代表取締役:小林良氏)である。

もともと独立志向が強く、異業種のトップセールスマンから転身を図り、2008年に36歳の若さで同社を設立した代表取締役の小林良氏は、次のように語る。

「起業するからには、人を成長させられるような会社をつくりたいと思っていました。父の助言もあって、施工管理の人材派遣について調べていくうちに、建設業界では若手の優秀な技術者が少ないということを知り、人がいないのなら、いっそ自社で有能な人材をゼロから育てあげればいいと考えるようになったのです」

人材派遣業といえば、さまざまなスキルを持った人材を契約社員として登録し、そのなかから顧客からの要請に応じて適任者を派遣するというのが一般的だが、小林氏は、若い人材を自社の正社員として採用し、自社で教育しようと考えた。そして、理系出身者や経験者中心の採用活動を見直し、より間口を広げて、文系出身者や未経験者の採用にも注力。そうした人材を、どこの建設会社でも即戦力として通用するプロの技術者に育てあげ、派遣するという方法を、とることにしたのである。

そこで同社では、正社員として雇用することで会社への帰属意識を持たせるとともに、大手ゼネコン出身者による研修などの教育を徹底することで、全体的なスキルの底上げを図った。だが、技術の習得以前に大事なのは、「仕事を好きになる努力をすること」だと小林氏は言う。

「人生のなかで仕事は、かなり大きなウェイトを占めます。仕事を好きになれば、持てる能力を存分に発揮でき、まわりからも信頼され、人生が豊かで充実したものになるのではないでしょうか」

会社設立から8年。社員数はすでに800名を数えるが、「心」の部分を含むこうした教育が功を奏し、社員の定着率は90%を超えるという。

ワールドコーポレーションの最大の強みは、なんといっても「若手の技術者を数多く抱えている」ということである。取引先には、大手ゼネコンをはじめ、そうそうたる一流企業が名を連ねる。

人口減少時代を迎え、さまざまな業種で労働力不足が懸念されているが、特に建設業は深刻だ。もともと「3K」などと評され、若者に敬遠されがちな職種であるうえに、長年にわたって雇用を抑制してきたのだから、当然といえば当然だろう。そんななかで建設業におけるアウトソーシングは、今後もますますニーズが高まることは間違いない。

4年後に迫った東京オリンピックのほか、高度経済成長期につくられた建物やインフラの補修、そして災害復興といった要因も重なり、日本列島は建設ラッシュに沸いている。建設業各社にしてみれば、即戦力となる優秀な技術者は、喉から手が出るほど欲しい存在だ。

こうした状況下でワールドコーポレーションがめざすのは、「建設業の未来に欠かすことのできない会社」と位置づけられるような存在になることだという。そのためにも採用と教育にいっそう力を注ぎ、まずは社員1000名体制をめざす。

さらに、現在は東京本社のほか、東北と関西に支店を設けているが、今後は名古屋、広島、札幌、福岡へと、全国に拠点を展開していく計画だという。

また、近い将来には株式上場も視野に入れており、10年後をめどに業界ナンバーワンになることを目標に掲げている。

小林氏は、「ワールドコーポレーションに関わるすべての人々の幸せに貢献したい」と抱負を語る。

本書では、建設業に特化した技術者派遣サービスで急成長を遂げているワールドコーポレーションの事業活動を紹介するとともに、同社代表取締役・小林良氏の経営理念およびビジネス哲学に迫るものである。これは、優秀な技術者を求める建設業界関係者のみならず、技術者として建設業界に自らの将来の夢を託そうとする多くの若者にとっても、貴重な指針の書となるであろう。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

 2016年10月  鶴蒔靖夫


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はじめに

第1章 低迷期を脱し、活況を呈する建設業界

バブル崩壊以降、低迷を続けた、かつての花形産業
強力な追い風となった東京オリンピックの開催
老朽化するインフラの更新・補修が急務に
日本列島で相次ぐ自然災害の甚大な被害
災害からの復興・復旧を担う建設業
安倍政権が進める国土強靱化基本計画


第2章 深刻化する技術者不足

需要があるのに倒産企業が続出する建設業界
雇用抑制が生んだ技術者の高齢化
若者に「3K」と嫌われる建設業界
いま脚光を浴びる「ドボジョ」とは
外国人労働者は人手不足解消の鍵となるか
国も本腰を入れ始めた建設業の人手不足対策
建設業界の要望が生んだ技術者派遣業


第3章 建設業に特化した技術者派遣で急成長 ―ワールドコーポレーションの事業概要―

施工管理者など建設現場での技術者不足に対応
設立以来、増収増益で成長し続ける理由
成長の原動力は、いきいきと働く社員たち
めざすは「建設業界の人事部」
目覚ましい業績を支える受注力
建設業界の多種多様なプロジェクトをサポート


第4章 未経験から本物のプロ技術者を育成

若い人材をゼロから育てあげる
文系出身者&未経験者を歓迎
未経験者をプロに育てる研修プログラム
未経験者採用を可能にしたベテラン勢の存在
次世代の幹部を育てるリーダー研修
社員定着率9割以上を実現したきめ細かなフォロー
大切なのは「仕事を好きになる努力をすること」


第5章 創業社長・小林良の経営理念と人生哲学

エネルギーを持て余していた青春時代
やがて知る、働くことのおもしろさ
36歳の若さで起業
アクセル役とブレーキ役を演じる重鎮2人
心のバランスを支える人生の先達
人との出会いを大切に、本音でつきあえる関係を築く


第6章 ワールドコーポレーションが描く未来

社をあげて建設業界のイメージアップに貢献
若手社員の成長が、成功を呼びこむ
全国展開に向けて進む支店開設計画
いよいよ視野に入ってきた株式上場
ワールドコーポレーションの経営戦略と未来像
業界の圧倒的ナンバーワンをめざして


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『薬剤師新時代の到来』 前書きと目次

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薬剤師新時代の到来
 ~笑顔創造ファーマシー・あけぼの薬局グループの挑戦~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-427-3
初版発行:2016年11月26日
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 はじめに

総務省は毎年「敬老の日」に65歳以上の推定人口を発表する。それによると、2016年9月15日時点の高齢者人口は3461万人で過去最高を更新し、総人口に占める割合は27・3%であるという。

高齢者人口の増加に伴い、医療ニーズ・介護ニーズはさらに高まり、それが国民医療費の増大を招いていることは周知のとおりだ。

医療費削減の命題のもとで近年、そのありようを大きく変えようとしているのが、薬剤師・薬局である。

2016年4月、厚生労働省は「薬局が生まれ変わる!」というキャッチコピーのもと、「かかりつけ薬剤師・薬局」制度を発足させた。一人ひとりの服薬状況を一元的・継続的に把握し、薬のことはもとより健康全般に関して指導・相談を受ける「あなたのための薬剤師」に、自治体からの公認を与えるというものである。詳細は本文で紹介するが、これは、調剤偏重であった薬剤師・薬局の業務を、「医薬分業」における本来の業務に戻すとの意図が込められた、大きな転換と言うことができる。

これには、町の薬局を地域の健康拠点として、健康寿命の延伸や医療費の削減という喫緊の課題に向けた切り札にしていこうとの狙いがある。

いまや、一人ひとりが自分の健康は自分で守っていく時代である。薬局は、最も身近な医療機関として、多くの人に対応する役割を担うことになるだろう。

はたしてこの先、町の薬局は、どのように変わっていくのか。国民のQOL(生活の質)とも直結するその動きを、われわれも注意深く見守っていく必要がある。

そうしたなかで今回「あけぼの薬局グループ」を紹介するのは、たいへんタイムリーだと言える。

あけぼの薬局グループは、首都圏と関西を中心に合計57店舗(2016年3月現在)を構える中堅薬局だ。同グループが展開している調剤薬局の多くは地域密着型の面対応薬局で、以前から近隣住民の「かかりつけ薬剤師・薬局」としての機能を果たしてきた。厚生労働省により「かかりつけ薬剤師・薬局」が制度化されるとわかったときは、顔なじみ患者の多くが「いままでやってきたことと同じだね」という反応を示したという。

あけぼの薬局グループを率いる岡田一平氏は現在43歳。2002年に29歳の若さで「有限会社あけぼの」を立ち上げ、現在は「株式会社あけぼの関西」(本社:大阪市北区)と「株式会社リバーサル」(本社:東京都中央区)の2社をメインに構成されるグループの代表として、組織運営の指揮を執り続けている。

近年、調剤報酬改正の影響などにより調剤薬局業界全体が厳しさを増しているなか、あけぼの薬局グループはM&Aを駆使して次々と出店を進め、地域の医療と健康増進に寄与している。

あけぼの薬局グループでは、「医師、患者、スタッフなど、医療と医薬に関わる人すべてが笑顔になれる」ことをめざした「笑顔創造ファーマシー」を経営理念に掲げる。社員に心からの笑顔がなければ、患者も周囲の人も幸せにすることはできないとして、社員満足を第一に打ち出しているのである。

「顧客満足より社員満足」のスローガンに込められているのは、「人」を大事にするという心意気である。一人ひとりの個性を最大限に伸ばすことを自らの責任として、さまざまな方策で社員のやる気を湧き立たせ、たりない面はみなで補いあって、ともに成長していくのが、あけぼの薬局グループのやり方だ。社員たちが和気藹々と仲良く、そして自由に自分の意見を発する社風は、閉塞感の漂ういまの世の中で際立つ明るさを見せている。

あけぼの薬局グループの薬剤師は、どんどん外に出て、積極的に地域と交わり、在宅医療を開拓している。あけぼの薬局グループでは、現時点で全店舗の8割が在宅医療に携わっているが、いずれは全店舗で行う予定であるという。

在宅医療では、医師とともに患者宅を訪問する「往診同行」がよく行われるが、これは医師からの絶大な信頼があってこそ成り立つ形態だと言える。

「薬剤師が医師の意向を正確に汲み取り、患者さんにしっかり伝えること。そして、医師には診察に専念してもらうこと。それが医薬分業の本筋です」

こう語る岡田氏がめざすのは、医師と協働で薬物治療にあたることのできる薬剤師の育成である。医師から質問され、相談される、「プロの医療人」としての薬剤師こそが、いま求められているのである。

あけぼの薬局グループでは、2020年までに100店舗への拡大をめざしているが、それより早くに目標を達成する可能性は十分ある。そして岡田氏は、淘汰の時代を迎えている調剤薬局業界の再編を演出する中心人物のひとりになることは間違いないだろう。

本書は、あけぼの薬局グループの事業活動の紹介を中軸としながら、今後の医療界における薬局・薬剤師のあり方を明示するものである。それだけでも十分に興味深いテーマではあるのだが、もうひとつ、岡田氏の今日までの歩みについても詳述する。子どものころからお金儲けにずばぬけた才覚を発揮し、長じてからは大手薬局チェーンと伍する地域密着型の調剤薬局チェーンとして独自の地位を確立してきた岡田氏の冒険譚を、じっくり読み進めていただきたい。成長のためのたゆまぬ努力、鮮やかな成功と転落の危機……、どれをとっても、通常の活劇より格段におもしろく、かつ、そこには独特の人生哲学が詰めこまれている。

こうした、ある意味で常識の枠を超えた人間が手がけているのだから、ほかの調剤薬局にはない新しい動きをどんどん見せていくのは当然と言えるだろう。その意味で本書は、薬剤師はもとより、これから人生の門を開けるという若者たちにとっても、なんらかのヒントを得られる書となるのではないだろうか。

なお、岡田氏のスケジュールの都合上、取材は2016年3月に行われたため、岡田氏の話の内容は3月時点のものとなっている。周辺取材に関しては同年4月以降も行ったので、周辺のデータに関してはできるだけ新しいものを使用したつもりだ。

また、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

 2016年9月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第1章 かかりつけ薬剤師制度が導く今後の医療

ついに40兆円超えとなった国民医療費
新たに登場した「かかりつけ薬剤師・薬局」
顧客第一主義で選ばれる薬剤師・薬局
「かかりつけ薬剤師・薬局」創設の3つのビジョン
3つの持つべき機能と2つの強化すべき機能
かかりつけ薬剤師の条件
患者本位から離れていった医薬分業
患者自らの希望と意思で「選ばれる薬局」に
かかりつけ薬剤師の最大の任務はコミュニケーションにある
地域包括ケアシステムにおける薬剤師の役割
薬局にとっての「かかりつけ薬剤師・薬局」制度とは
厚生労働省の描く未来像


第2章 在宅医療に力を注ぎ、医師と信頼関係を結ぶ「あけぼの薬局グループ」

関東と関西の2社でグループを形成
キーワードは「勢い」「在宅」「設備」の3つ
いまだ認知度の低い在宅医療を積極的に開拓
在宅医療に特化した無菌調剤室完備の薬局も
充実の最新設備で安全性とスピードをアップ
患者と接する時間が多くなる
疑問があれば直接医師に聞きにいく
医師の思いを汲み取り、医師からも頼りにされる薬局に
利用者目線が生んだニュースタイルの薬局
面分業で地域と密着、デメリットはエリア運営で補完
地域のプライマリ・ケアに貢献

10年でパート事務員から社長に … 株式会社あけぼの関西 代表取締役 森あかね


第3章 薬剤師の人間力を育てるのは会社の責任

「顧客満足より社員満足」を掲げる心意気
経営理念は「笑顔創造」
6つのSを絶妙のバランスで運営して共有価値の実現につなげる
スタッフどうしの交流と共通した価値観
採用も年収も人柄本位
社員第一が生み出した、働きやすい環境
成長しあう研修で、やる気を高める
新人でも給与には差をつける
これから不可欠なコミュニケーション能力
独立起業を全面支援、すでに11人が独立
独立希望の人は大歓迎
小さな薬局から広がる笑顔

部下の未来をつくっていく … 株式会社リバーサル 執行役員 人事兼経営戦略部 田代雅也


第4章  創業者・岡田一平の成功と挫折、そして逆転への歩み

不安な時代に生まれた、特異な能力を持った少年
ビジネスの基本を学んだ小学校時代の瓶集め
ビジネス成功の秘訣は「コツコツ」にあり
誰にも言えなかった貯金額
MRとしてトップをめざすも、独立の道へ
コツコツ稼いだお金で次々と薬局をオープン
有限会社日本一をめざして
乗っ取り工作にはめられて
絶望からの復帰、神は乗り越えられる試練しか与えない
ゼロからリセット、第二の創業


第5章 薬局再編、激動の時代に

再編・淘汰の時代を迎えた調剤薬局業界
M&Aの大きな波が押し寄せている
「売るなら早く」が現在の状況
デッドストックの問題が深刻
厳しいM&A体験、1年がかりの再建
M&Aが成功するかしないかは人次第
薬局数が半分になるということは
コンビニエンスストアの調剤薬局
門内薬局が与える影響は?


第6章 岡田イズムが導く薬局・薬剤師のあるべき姿

かかりつけ薬剤師・薬局を知らない人が6割も
WHOが打ち出した、薬剤師の8つの役割
医療人としての自覚と責任
医薬分業発展の要は薬剤師にあり
薬剤師の究極の仕事は接客
疑義照会は薬剤師の義務であり、権利でもある
攻めの薬剤師にならなければ未来はない
今後重要視されるセルフメディケーション支援活動
一般市民の意識変化と薬剤師の意識変化
次世代に必要な薬剤師のスキル
薬剤師の未来を変えるリフィル処方せんと日本型CDTM
かかりつけ薬剤師が常駐する健康サポート薬局の広がり
岡田の人間力が調剤薬局業界の未来を創造


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『逆境こそわが人生』 前書きと目次

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逆境こそわが人生
 ~道なき道を行く、ルートイングループ~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-428-0
初版発行:2016年12月11日
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 はじめに

2016年8月21日午後9時45分(日本時間では8月22日午前9時45分)、ブラジル・リオデジャネイロの空に翻っていたオリンピック旗が、リオデジャネイロ市長のエドゥアルド・パエス氏の手から国際オリンピック委員会会長であるトーマス・バッハ氏の手に、そしてバッハ会長から東京都知事の小池百合子氏へと引き継がれた。このフラッグハンドオーバーセレモニーの瞬間に、2020年東京オリンピックのスタートが正式に切られたと言えるだろう。

振り返れば、東京へのオリンピック招致に成功した2013年ごろから、訪日外国人旅行者数は空前の勢いで増加し始めた。

観光庁によると、2012年に約836万人であった訪日外客数は、2015年には約1974万人まで増加し、3年連続で過去最高を更新している。「爆買い」に象徴されるインバウンド需要(日本国内での消費額)は、2012年は1兆846億円だったが、2015年には3兆4771億円と、これも驚異的な伸びを示している。

一方、国内に目を転じると、いまや人口の4人に1人が高齢者だが、その多くは「アクティブシニア」と呼ばれる行動派が主流で、彼らが牽引する国内旅行が絶好調だ。

観光ビジネスは、いまや日本経済の救世主的な存在であると言っても過言ではない位置づけとなっているのだ。

これに伴い、最も強い追い風を受けているのがホテル業界だ。最近では、いわゆる観光シーズン以外の時期でも満室に近い状態が続いているというから、あらためて驚嘆する。日本中でホテルの建築・増床ラッシュが続いており、その勢いは、地方都市、さらにはその周辺にも及んでいる。

この活気づくホテル業界で最もアグレッシブかつダイナミックな動きを見せ、注目を集めているのが、本書でとりあげる「ルートイングループ」である。

ひと口に「ホテル」と言っても、ラグジュアリーホテル、シティホテル、ビジネスホテル、リゾートホテルなど、いくつかのカテゴリーに分類される。ルートインホテルズを展開するルートイングループは、ビジネスホテルの「ホテルルートイン」を主軸に、シティホテル、リゾートホテルなど、コンセプトの異なるカテゴリーを横断的にカバーする、いわば総合ホテル事業者である。しかも、運営するホテル数は269(2016年10月現在)と、圧倒的な規模を誇る。

異なる運営戦略が求められる多様なカテゴリーのホテルを横断的に展開するには、想像をはるかに超える経営手腕が求められる。それを物語るように、これだけ多岐にわたるカテゴリーのホテルを展開し、それぞれに成功を収めている例は、ほかに見ない。

成長力も驚くほどで、年間20店舗ほどのペースで出店し続けているというから目を見張る。さらに近年は海外進出も果たすなど、その勢いはとどまるところを知らないのだ。

ルートイングループは、2015年に創業40周年の節目を迎えた。いわゆる老舗ホテルを別にすれば、ホテル事業で30年という歴史を誇り、しかもいまだ拡大一途の軌跡を描いているホテルグループは、それほど多くはない。

40年前の1975年に、現在、会長兼CEOを務める永山勝利氏が建設業の永山建設を創設した。これが、現在に続くルートイングループの第一歩である。それから8年後の1985年にホテル業に進出し、長野県上田市に「上田ロイヤルホテル」をオープンした。これが「ルートインホテルズ」の出発点となる。

そこから紆余曲折を経ながらも確実に成長を続け、現在、ホテル市場全体で売り上げ4位、収益ではホテル業界ナンバー1に躍り出ている。

「私自身、ここまで大きくなるとは、思ってもいませんでした」

と、当の永山氏自身、こう言って大笑するが、もちろん、ルートイングループも、この40年間、常に順風満帆で右肩上がりの成長曲線を描いてきたわけではない。40年のあいだには、バブル経済の崩壊があり、リーマンショックもありと、経済の大変動も経験している。ときには厳しい局面に立ったこともあったという。

だが、そこからが永山氏の真骨頂だ。経営破綻も覚悟するほどの危機もあったが、その翌年から反撃に転じ、みごとなV字回復を実現してみせたのである。

「本当に転んでしまったら、立ち上がることは難しいでしょう。でも、躓いただけなら、必ず立ち上がることはできますし、ふたたび前進に転じることもできるのです」

あえて説明するまでもないが、経営者にとって「躓き」とは、転ぶ(倒産する)ことは免れたものの、かぎりなく倒産に近い経営の危機に瀕したことを意味している。永山氏の経営者人生には、この「躓き」が何回もあったというのだ。実際、永山氏は、

「毎年のように修羅場を乗り越え、年が明けると、いつも『また、いちからスタートだ』『時は、今だ』と思って、不屈の精神でやってきた」

とも語っている。

何度も、何度でも、立ち上がる。その都度、必ず何かをつかみ、立ち上がるごとに大きく、強くなる。

こうした経験から、永山氏は「七躓八起」という言葉を信条とするようになり、これを企業精神として、グループ全体で共有している。

私と永山氏とのつきあいは、かなり長い。ルートイングループの歩みと永山氏の足跡を『ルートインジャパン 黒ダルマの知恵』(IN通信社刊)にまとめたのが2005年。その、男らしく、肚の据わった経営者ぶりに、すっかり惚れこんでしまい、以来、ルートイングループと永山氏の動きを見つめてきた。

このたび、創立40周年を機に、あらためて永山氏の経営者としての40年間を総括する機会を得たが、ひさしぶりに膝を交えて語りあった永山氏は、12年前とはどこかが大きく変わっていた。12年前の永山氏も、成長発展への意欲がほとばしり出る、ほれぼれとする経営者ぶりだったが、現在の永山氏は、経営者としての旺盛なエネルギーを湛えながら、堂々と、いかにも器の大きさを感じさせる重厚な存在感を漂わせている。

端的に言えば、12年前の永山氏は、ルートイングループやホテル産業の重鎮という位置づけだったが、現在の永山氏は、日本の経済、特にこれからの日本の発展に、なくてはならない存在だというオーラを漂わせるようになっているのである。

その意識の変容は、「ホテルは、なかば公共的事業なのです」と言う永山氏の発言からもうかがえる。

もちろん、以前から、こうした考えは持っていたが、2011年3月11日に突然襲いかかってきた東日本大震災の経験から、「ホテルは半公共的な事業である」という意識を、いっそう強固にしたという。

この未曾有の大惨事では、ルートイングループも被害を免れず、53カ所ものホテルが被災した。だが、活動できる従業員総出で復旧に取り組み、津波により最も被害が大きかった「ホテルルートイン仙台多賀城」でさえ震災の20日後には営業を再開したというから、驚くばかりだ。

同時に、被災して行き場を失い困窮している被災者に、ホテルを一時開放するなど、ルートイングループは、「いち民間企業がここまでするのか」と感心するほどの協力を惜しまなかった。

この経験からホテル事業の公共性をそれまで以上に強く感じるようになった永山氏は、現在では、ホテル進出を地方活性化の起爆剤にしたいと、人口が数万人規模の地方都市でも出店要請があれば快く引き受けるなど、社会的責任を強く意識した事業展開を盛んに行っている。

地方再生目的のホテルは、短期間で見れば、採算をとることはかなり難しい。だが、永山氏は、長期的な視野に立てば活路はあると前向きに考え、地方の再生や再活性化のために、あえて出店を引き受けているという。

現在の永山氏の活動は、社会の活性化や次世代の育成など、より社会性および公共性を帯びたレベルへと質的転換を遂げている。この質的転換は、永山氏自身、「第二創業期」と呼ぶほど革新的なものだ。

ルートイングループが第二創業期に入ってから、ホテル業界では驚異的な上げ潮ムードが続いており、なかには、満室状態を逆手にとって、不当なほど価格をつりあげるホテルもあるそうだ。

だが、永山氏は、こうしたあり方を是としない。ルートイングループは、どんな場合でも通常の価格を設定し、自らに恥じない経営を貫き通しているのである。

本書では、今後の日本経済における柱のひとつとなる観光事業の基盤を支えるホテル事業において躍進を続けるルートイングループの事業活動を紹介するとともに、創業者・永山勝利氏の、経営人としての熟達した人生哲学や、社会貢献にかける熱い信念に迫っていきたいと期している。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

 2016年11月  鶴蒔靖夫


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はじめに


序章 「時は、今」─創業40年を迎えたルートイン

ルートイングループ40年分の想いと感激
七躓八起の精神
「第二の創業期」を迎えて
「時は、今」─常に起点は「いま」にある


第1章 観光立国構想とホテル産業

観光業は21世紀最大の産業
観光産業で日本より豊かになったアジア諸国
岐路に立つ日本経済
観光立国として成功するかどうかが日本の未来を決める
日本を「訪れてみたい国」へ
功を奏してきた日本への観光誘致
こちらも活況が続く国内観光ブーム
都市部から全国へ広がるホテルラッシュ


第2章 進化系ビジネスホテルとルートイングループ

4つのホテルカテゴリーとビジネスホテル
新たに出現したカテゴリー「進化系ビジネスホテル」
プライベートユースがビジネスユースを上まわるようになってきた
ビジネスホテルに泊まれないビジネスパーソンたち
ホテル市場のナンバー1はどこか
進化系ビジネスホテル売り上げ1位のルートイン
チェーン展開でパワーアップ
独自の路線を進むルートイングループ
「ルートインは朝食がおいしい」という定評
驚異的な出店ペースと収益率を可能にする永山流の強気の契約
ワンランク上の「ホテルルートイングランド」をオープン
和テイストの「ホテルルートイン伊勢」
「ホテルの出前」―求められればどこへでも出店
「ビジネスホテル事業者」から「総合ホテル事業者」へ
都市型観光リゾートホテル「ルートイングランティア」
本格的シティホテル「アークホテル」
感動のリゾートホテル「グランヴィリオホテル」


第3章 ルートイングループ40年の歩み

信州・上田が発祥の地
誰も思いつかなかったロードサイドホテルという発想
ビジネスホテルに大浴場を設置
初の県外進出
おおいに話題になった女性だけのホテル
バブル崩壊を乗り越えて、全国展開を加速
ルートインジャパンと社名を改称
社是の決定
首都・東京への進出
男の決断・不見転で買ったサイパンのホテル
相次ぐ試練に襲われた日々
リーマンショックの影響でルートイングループ史上最悪の事態に
新規開店計画を凍結、なお噴出する問題点
多額の借金と「事業再生ADR」申請
危機意識で社員の結束が強化される
社長交代と2025年「500店構想」
東日本大震災の発生とルートイングループ
震災後20日で営業再開
ホテルは半公共の建物だ
復興支援型ホテルという発想の新展開
第二創業期からさらなる飛躍に向けて


第4章 「ルートイン魂」を育てる研修制度

企業は「人」
豊かな発想力があり、夢を語れる人を積極的に採用
軽井沢研修所の存在意義
3年後には、どこに出しても通じる一人前の社会人に
上級者教育はさらに厳しく
毎日の職場がそのまま研修所に
最終目的は豊かな人間性を培うこと


第5章 永山勝利の経営理念と真田魂

義に厚く、人を大切にする「真田精神」を受け継ぐ
どんなに苦しいときもあきらめない
頭ではなく、体で覚えよ
楽な道よりも、あえて苦しい道を選べ
目標がなくなったときが堕落の始まりだ
築城三年、落城一日
「黒だるま」に目を入れる
企業にとって成功はない
必要とされることが最大の喜び
その一瞬は人生でたった一度
時は、今


第6章 店舗数・経営内容・顧客満足度1位をめざして

海外展開を本格化
ベトナムのダナンを中心に海外に50店舗を出店
人材確保の拠点としても期待
アジア全域にルートインを広げていく
国内市場は出店をさらに加速
多様化でより大きなパイを獲得していく
リゾートホテルの拡大・強化
地方振興のためのホテル出店
街興しホテル第1号は「ルートイングランティア羽生」
CSR活動にも注力し、社会的責任を担う企業に
女性がいきいきと長く働き続けることができる企業へ
店舗数・経営内容日本一、顧客満足度日本一をめざして邁進していく
2055年、創立80周年パーティの席上で


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2017/06/19

『WASHハウスの挑戦』 前書きと目次

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WASHハウスの挑戦
 ~コインランドリーのデファクトスタンダードへの道~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-435-8
初版発行:2017年6月30日
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 はじめに

昨今、郊外を中心に、コインランドリーの看板をよく目にするようになった。しかも、従来の「暗い」「汚い」「怖い」といった3Kのイメージとは打って変わり、明るく、清潔そうで、全体的に大型の店舗が増えてきている。利用者も、かつては学生や独身者が中心だったが、いまでは主婦層へとシフトし、従来とは異なるかたちでブームを迎えつつあるようだ。

わが国に初めてコインランドリーが登場したのは1960年代なかばのことだ。銭湯などに隣接して設置されるケースが多く、学生などの洗濯機を持たない層を中心に需要が伸び、急速に普及した。

1980年代には、女性の社会進出や共働き世帯の増加により「家事時間をできるだけ短縮したい」人が増え、そうした人たちのあいだで「まとめ洗い」のためのコインランドリー需要が広がった。

そして2000年前後からは、花粉症をはじめとするアレルギー疾患対策として「外に洗濯物を干したくない」という層が増えたことから、乾燥機が使えるコインランドリーが注目され始めた。さらに近年は、PM2・5(微小粒子状物質)などの影響もあって、利用率が高まってきている。

その間に、単身者用に設置されていた従来型のコインランドリーに代わって、洗濯機、乾燥機ともに容量の大きい機械を設置し、台数も多い、大型の店舗が増えてきた。

いまでは家に洗濯機があるのはあたりまえで、乾燥機能つきの家庭用洗濯機も珍しくない時代だが、それでもコインランドリーを利用したくなるのは、家庭用にはない便利で優れた機能があるからだろう。

1週間分の洗濯物も一度に洗えるほどの大型洗濯機と乾燥機は、時間を効率的に使いたい人にとっては非常に便利だ。しかも、天候に左右されず、特に雨の日などは、部屋干しによって生じる雑菌を防ぐ意味でも大型乾燥機は強い味方となる。

さらに、健康志向や清潔志向の増進から、布団や毛布、カーテンなどを定期的に洗いたいという声も多く、そうした大きなものも、コインランドリーなら簡単に洗えるうえ、しっかり乾燥させられる。一般的に、シーツや布団カバーは定期的に洗濯しても、布団を洗濯機で洗うという発想は、これまではあまりなかったのではないだろうか。

しかも、最近のコインランドリーでは、布団などを丸ごと洗える大型機だけでなく、手洗いが煩わしいスニーカー専用の洗濯機などもある。いまやコインランドリーの設備は、学生や単身世代を対象としていたころとは比べものにならないほどの大きな進化を遂げているのだ。

厚生労働省の調査によると、コインランドリーの需要が高まるにつれ、店舗数も毎年500店舗を超えるペースで増え、2013年度には1万6693店舗に達している(厚生労働省「 コインオペレーションクリーニング営業施設の衛生実態調査」)。しかし、コインランドリーは個人経営の店舗が多いということもあって、顧客サービスやコンプライアンスに関する意識が低い経営者が存在することも否めず、依然として違法なコインランドリーがまかりとおっているのが実情だ。

これは、コインランドリー業界がまだ未成熟であり、業界を取り巻く法的環境がきちんと整備されていないからにほかならない。現状では、コインランドリーの店舗運営に関して明確な基準というものがなく、業界として早急に解決すべき多くの課題を抱えていることも事実だ。

そんななか、法人としてコインランドリー事業にいち早く参入し、「安心・安全・清潔」を追求した店舗運営のための独自のビジネスモデルを構築して着実な成長を遂げているのが、本書で紹介するWASHハウス株式会社(本社:宮崎県宮崎市、代表取締役社長:児玉康孝氏)である。

WASHハウスでは、コインランドリー事業にフランチャイズ(FC)システムを導入している。現在、九州を中心に、東京以西にFC店舗と直営店舗の合計で計410店舗(2017年3月末現在)を展開しているWASHハウスは、2016年12月期の売上高は31億1800万円で前年同期比52・1%増と、飛躍的な伸びを見せている。

WASHハウスの最大の特徴は、IoT(Internet of Things。さまざまなものをインターネットに接続し、情報交換をすることで相互に制御するしくみ)を活用した独自の店舗管理システムにある。

そのシステムとは、管理カメラで店舗を24時間管理し、洗濯機や乾燥機などの機械に万一トラブルが生じた場合は本社から遠隔操作で対応できるというものだ。音声システムを導入した24時間対応のコールセンターも設置してあり、トラブルがあった場合にはオペレーターが利用者に音声で対応している。

「無人店舗でありながら、店舗にスタッフがいるかのごとく、お客様に対しリアルタイムのサポートができる状況を、すべての店舗に提供しています」

と、同社社長の児玉康孝氏は胸を張る。

無人店舗とはいえ、各店舗には2名程度の清掃スタッフが在籍し、店舗内の清掃のほか、乾燥機のフィルター清掃や洗濯機の消毒などを毎日行う。また、売上管理や清掃スタッフの労務管理、在庫管理などは、IoTを活用した一括集中管理システムですべてが行えるようになっている。

WASHハウスがコインランドリー事業で躍進を遂げてきたもうひとつの要因は、フランチャイズ(FC)展開の成功にある。

自己資金による出店は減価償却費が大きくなりやすいとの判断から、WASHハウスではFCという業態を選択している。

しかし、従来のFCシステムには、本部と加盟店の対立など、さまざまな問題が指摘されていた。そこでWASHハウスでは、まったく新しいFCシステムを構築したのである。

それは、店舗の運営管理やマーケティング、広告宣伝など、すべての業務を、加盟店のオーナーに代わって本社が一括して行うというもので、出店する場所も、マーケティングにもとづき、確実な売り上げが見込める場所を本社が選定する。つまり、いわゆるFC事業というよりも、アパートやマンション経営などの不動産投資に近いかたちに、コインランドリーのFC事業を置き換えたというわけだ。

「オーナー様には最初の出店費用をお支払いいただくだけで、あとは何もしなくても毎月の売り上げがオーナー様に入るというしくみです。おかげさまで、売上不振による閉店はこれまで1店もなく、訴訟もゼロです」

と、児玉氏は絶対的な自信をのぞかせる。

それもそのはずで、店舗運営の一括集中管理システムや新しいFCのしくみなど、WASHハウス独自のシステムの構築には、児玉氏自身が他業種で培ってきた経験が活かされているからだ。

WASHハウスの創業社長である児玉康孝氏は、大学を卒業後、東京の証券会社や大手ファストフード企業を経て、30歳で宮崎に帰郷し、地元の不動産会社に勤務した。その後、2001年11月に36歳で、WASHハウスの前身である株式会社ケーディーエムを設立している。それまでに転職を重ねたのは、もともと独立志向が強かった児玉氏は「いずれは起業したい」と考えており、そのために、それぞれの会社で金融やマーケティング、店舗運営、不動産について学びたかったからだ。

当初は不動産仲介業として起業したが、「少子高齢化、人口減少時代を迎えても成長が望める」として、コインランドリー事業の将来性に着目した。大手企業がまだ参入していなかったことをビジネスチャンスととらえた児玉氏は、迷わずこの事業への転身を決意し、2002年12月には早くも宮崎市に2店舗を同時オープンして、コインランドリー事業をスタートさせた。

2005年に現在のWASHハウスへと社名を変更し、宮崎、福岡、大分、熊本など九州一円から中国地方へと出店エリアを拡大。近年は、大阪や東京への進出も果たしている。

WASHハウスの店舗は、どこも赤と白を基調としたデザインで統一され、すべての店舗が同じシステムを使って運営されているため、サービスの質も均一になっている。WASHハウスは、単なるコインランドリー事業者ではなく、実はシステムを使ってサービスを提供する会社なのだ。

事業開始から15年。児玉氏は当初から、「100店舗を損益分岐の目安とし、300店舗を超えるあたりから非常に効率よく店舗を管理できるようになり、上場も視野に入ってくる」というストーリーを描いていた。実際、100店舗を超えたあたりから事業は軌道に乗り、近年は、売上高、経常利益ともに、大幅な伸びを見せているばかりか、2016年11月にはコインランドリー業界で初めて、東証マザーズと福証Q‐Boardへの上場を果たしている。

児玉氏は常々「コインランドリー業界のデファクトスタンダードの創造」を口にしてきたが、業界唯一の上場企業として、その思いをいっそう強くしている。

今後、さらなる高みをめざすWASHハウスは、店舗展開も国内にとどまらず、コインランドリーの本場であるアメリカや、東南アジアへ進出する構想もある。

事業の立ち上げ当初から理想としてきたのは「財閥系企業スタイル」であり、将来的には入り口から出口まですべてを自社グループで行うべく、原材料や機械の各店舗への自社供給を可能にする「製造・生産・流通ビジネス」への進化も視野に入れている。

本書は、いまだ問題が山積するコインランドリー業界の現状を踏まえつつ、消費者目線に立った安心・安全・清潔なコインランドリーサービスを追求するWASHハウスの事業活動を紹介するとともに、創業社長・児玉康孝氏の経営理念とビジネス哲学に迫るものである。コインランドリーのオーナーとして事業を検討されている方々や、清潔で快適な生活を望む一般消費者の方々が、現代社会で真に必要とされるコインランドリーのあり方を考えるうえでの一助となれば、これに勝る喜びはない。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

 2017年5月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第1章 成長するコインランドリー業界の光と影

メインユーザーは単身者から主婦層へ
アレルギー対策として需要が高まる
オーナーにとっては人件費削減と現金収入が魅力
法的環境が未整備のため違法営業も野放しに
「洗濯代行サービス」は違法
女性客を意識した店舗デザインや多彩なサービス
既存施設との併設型やジョイント型も
コインランドリー事業にもITやIoTの波
FCといってもオーナーの個人運営が多いのが実情


第2章 コインランドリー事業の常識を変えたWASHハウス

なぜ、コインランドリー事業なのか
まったく新しいFCのしくみを構築
商圏分析にもとづき売り上げがあがる場所に出店
IoT活用の一括集中管理システム
WASHハウスの成長を支える3つの事業
成長の源泉はストック型の収益構造にあり
積極的なメディア戦略が功を奏す
災害時の社会インフラとして地域に貢献
東証マザーズおよび福証Q‐Boardへの株式上場を果たす
宮崎では数少ない上場企業に


第3章 女性目線に立って「安心・安全・清潔」を追求

「暗い」「汚い」「怖い」の3Kイメージを払拭
あえて居心地の悪い空間を演出
トラブルにもリアルタイムで対応
利用者は機械の性能を知っておくことも大事
洗濯の基本性能に関わる質へのこだわり
徹底した衛生管理とメンテナンス
布団を洗う文化の創造をめざす
スニーカー専用洗濯機や、しみ抜きコーナーも


第4章 拡大するWASHハウスのFCネットワーク

トラブルなしのFCシステムで急成長
オーナーにとっては投資に近いFCシステム
実データにもとづいたマーケティング
初進出のエリアは直営店舗でデータ収集
現場の開発力が勝負の鍵を握る
妥協のない開発姿勢がオーナーの支持を集める
コンビニエンスストアを上まわる数の店舗展開も


第5章 創業社長・児玉康孝の経営理念とビジネス哲学

資本主義社会は株と不動産がベース
ストーリーをつくれ
ファストフード店の現場で人を動かすしくみを学ぶ
不動産会社勤務を経て独立、社員4名でスタート
まったくゼロからつくりあげた事業のしくみ
全国コインランドリー管理業協会を設立
100店舗を達成し、創立7年で黒字転換
自分にあえてルールを課す
経営姿勢においても、ぶれないことを徹底
経営者の考え方がツールになる
デファクトスタンダードの創造
理想とするのは財閥系企業スタイル


第6章 WASHハウスが描く未来展望

東証1部への市場変更も視野に
内製化により収益機会の拡大を図る
コインランドリーの無料化に向けて
会社のさらなる発展は人材の確保と育成が鍵
次世代クラウドランドリーシステムの共同開発
生活の根幹に関わる部分へのこだわり
コインランドリー先進国アメリカ
WASHハウスがグローバルブランドに


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『東北の小さな大企業』 前書きと目次

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東北の小さな大企業
 ~圧倒的な技術と品質で世界の医薬品業界に挑む~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-434-1
初版発行:2017年6月19日
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 はじめに

内憂外患。この言葉は、近年の日本にぴったりとあてはまる。

資源は乏しく、人口は多い日本。しかし国民は、優れた製造技術でモノづくりに励み、ほどほどの豊かさを甘受してきた。だが、近年、そうした成功モデルは過去のものとなり、世界における日本の存在感は急勾配で下がってきている。

今後の日本は、どのようにして活路を開いていけばいいのか。

そんな思いにとらわれるときに、ふと脳裏に浮かんでくるのが、日新製薬株式会社と、この企業を率いる代表取締役の大石俊樹氏のことだ。

日新製薬は、山形県天童市に本社をおく、ジェネリック医薬品のメーカーである。売上高は約300億円弱(販売会社の日新薬品株式会社との合算)で、現段階では中堅クラスのメーカーと言うべきだろう。

注目すべきは、その成長力と、そのパワーの源となっている、常に前を見つめて進む大石氏の、ぶれのない強固で誠実な精神性である。

実は私は、2012年にも日新製薬に関する著書を上梓している。当時の日新製薬は、売上高は143億円で、従業員数は700人だった。それが現在では、売上高は約300億円と、わずか5年のあいだに約2倍に成長を遂げ、従業員数も約1000人となっている。

同じ「売上高2倍」でも、売上高143億円を300億円にするのには、10億円を20億円にするのとは比べものにならないほどのパワーが必要だ。大石氏はそれを、まるであらかじめ敷かれていたレールを進んでいくように、淡々と、余裕に満ちた構えで実現してしまったのである。

あらためて説明する必要もないだろうが、ジェネリック医薬品とは、特許切れの医薬品の処方をもとに、飲みやすさなどの使用性を高めて製造された後発医薬品を言う。その最大の特徴は、新薬を世に出す場合と比べて、開発コストが圧倒的に低く、医療関係者に説明するための営業コストもかからないため、コストパフォーマンスが抜群によいことだ。そのため、高齢化の進展とともに医療費が拡大するばかりの先進国では、医療コストの引き下げに貢献する大きな力となり、医療費の高騰により高度な先進医療の恩恵にあずかれない人々にとっては、リーズナブルなコストで医療を受けられるという大きな恵みとなっている。

日新製薬は、このジェネリック医薬品のメーカーとして、ある意味で「日本一」と言われているメーカーである。

ここで疑問を持たれた方もいるだろう。たしかに売上高だけを見れば、日本国内にも日新製薬をしのぐ企業が何社もある。それでも日新製薬が「日本一」だと称されるのは、日新製薬がつくる製品のクオリティの高さと、そのクオリティを生み出すバックグラウンド体制ゆえである。特に製造工程では、大手ジェネリック医薬品メーカーがうなるほどの最先端設備を完備している。

これらは、日新製薬を率いる大石氏が、

「ジェネリック医薬品は、絶対になくてはならない薬だ」

との信念のもとに、ジェネリック医薬品のクオリティアップに徹底的にこだわり、全力を注いできた成果にほかならない。

大石氏は、日新製薬がまだ地方の弱小メーカーにすぎなかったころから、製品の品質向上に惜しみなく力を注ぎ、そのための大胆な先行投資を積極的に行ってきた。次々と最新・最高の性能を持つ機械を導入し、新工場を建設していった、その決断力と勇気には、ただ脱帽するのみである。

たとえば、高出力の光を瞬間的に照射することでボトル内を滅菌する非加熱滅菌法「パルス光滅菌」を、世界で初めて医薬品製造で実現したのは日新製薬である。ほかにも、いくつもの「業界初」と言われる取り組みを実施してきた。

その結果、日新製薬には「日本で初めて」「日本一」という形容が枕詞のように冠せられてきた。最近では、それがさらに一段階上がり、「世界で初めて」「世界一」へと変わってきている。

また、日新製薬では、ジェネリック医薬品だけではなく、新薬メーカーの製造受託事業も展開している。前述のような、ジェネリック医薬品メーカーとしての製薬技術レベルの高さや、製品クオリティに対する高い評価により、受託事業も成長の一途をたどっている。受託企業は国内外50社以上を数え、しかも、そのリストには大手医薬品メーカーの名がずらりと並んでいる。

日新製薬は、いまや日本の医薬品製造市場になくてはならない存在となり、日本の医療を力強く支えていると評しても、けっして過大評価ではないだろう。その傑出した存在感は誰もが認めるところであり、これまで、中小企業研究センター主催の「グッドカンパニー大賞グランプリ」、日刊工業新聞社主催の「優秀経営者顕彰 地域社会貢献者賞」、山形県主催の「山形県産業賞」、公益社団法人発明協会主催の「山形県発明協会会長賞」など、さまざまな賞に輝いている。

「日本一」「世界一」に通じるこの戦略は、企業経営の成功は「先の利」にあるという大石氏の信条から生まれたものだ。

「常に視点を〝先〟に向ける」

大石氏は、これが大事だと言うのである。将来から現在を見れば、進むべき将来に向けて、いまたりないものは何か、何をたせば発展するかが見えてくる。それを他に先んじて導入していけば、「先の利」をおのずと手にすることができる。これが、将来の発展を確かなものにする、ほとんど唯一の道だというわけだ。

日本人にたりないのは、まさにこの精神なのではないだろうか。日本の産業は、ほとんどの分野で世界の第一線レベルにあるのだが、そこから先に出ようとしない。それどころか、後追いを繰り返し、その結果、最先端からおいていかれてしまうことがしばしばある。これが、かつては世界で1、2を争った日本経済の国際競争力を、世界で26位(国際経営開発研究所(IMD)「世界競争力ランキング2016」)にまで引き下げてしまった最大の要因なのではないだろうか。

また、日本が直面している数多くある課題のなかでも、最も深刻なのは、日本人の幸福度の低さではないか、と私は考えている。国連による「世界幸福度ランキング」によれば、日本人が感じている幸福度は世界51位(「世界幸福度報告書2017」)。さすがに考えこまざるをえない状況だ。

そんななかで大石氏は、「働く人の幸福度アップ」にも力を注いでいる。「自分の仕事に誇りを持てること」「人として充実感を持って生きていくこと」「家族や友人などとともに毎日を楽しむ時間を持てること」など、いわゆるワーク・ライフ・バランスの整備に、大石氏は以前から力を注いできた。

雇用に際しての男女平等は言うまでもなく、最近では企業内保育所の設置なども積極的に進め、女性が安心して出産し、育児中も無理なく働き続けられるしくみをつくるなど、次世代型の雇用環境づくりを着々と進めている。

現在、日新製薬の従業員の男女比率は、男性約51%、女性約49%と、ほぼ同等の割合だという。これは、医薬品メーカーとしては希有な数字だ。これまでは、営業職、開発職ともに、どうしても男性偏重にならざるをえないと考えられてきた業界であるからだ。

しかし日新製薬では、実力があれば男女を問わずに責任のあるポストを与えるという姿勢であり、課長相当以上の女性社員も18%超いるという。

こうした取り組みが評価され、2016年には「山形県ワーク・ライフ・バランス優良企業知事表彰」を受賞している。
また、こうした評価はリクルートにも反映され、いまや日新製薬には、東北では人気ナンバーワン企業として、就職希望者が殺到するそうだ。

となれば、必然的に有能な人材を確保できることになり、企業のパワーはさらに高まっていく。

最近では、仕事に追われ、仕事だけに埋没する人生では、人として満足できないという認識が高まってきているが、日新製薬では以前から、仕事だけでなく、個人としての日々が充実し、楽しいものでなければならないと考えてきた。そうした日々が仕事にも張りややる気をもたらし、結果として企業をより輝くものにしていくという好循環を形成していくのである。

地方創生も、現在の日本が抱える重要な課題だ。日新製薬は、奨学制度などを通じて地方の興隆にも大きく貢献しており、山形県子育て推進部から「山形いきいき子育て応援企業」の「優秀(ダイヤモンド)企業」の認定も受けている。

いまや日新製薬は、日本の医薬品市場においてのみではなく、山形県の地方創生の要となる企業としても、かけがえのない存在になっていると言ってよい。

その日新製薬を率いる大石氏にとって、今年(2017年)は、70歳の喜寿を迎える節目の年にあたる。

いまから四十数年前に、当時は従業員32名という小さな製薬会社を経営していた大石家に婿入りしたことを機に、それまで縁のなかった製薬業界に足を踏み入れ、いまでは山形県下でも指折り数えられる超優良企業に日新製薬を育てあげた。その軌跡を振り返るときに大石氏の胸に去来するのは、どんな思いだろうか。

本書では、主にこの5年間の日新製薬の発展の足跡をたどりながら、日新製薬を今日まで引っ張ってきた大石俊樹氏の企業理念や人生哲学に迫り、経営者・大石俊樹と人間・大石俊樹の実像を描き出したいと思っている。冒頭に記したように、それは、混迷のなかにある現在の日本が、より光ある将来へと歩を進めていくうえでの、確かな道標となると思うからだ。

同時に本書は、人として「真に充実し、幸福度の高い人生を生きる」ためには何を大事にすべきかをも指し示す、人生の指針となる書でもあると自負している。

なお、本文中の敬称は略させていただくことを、あらかじめお断りしておく。

 2017年5月  鶴蒔靖夫


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 はじめに


第1章 「先の利」経営の象徴・日新製薬荒谷工場

圧倒的なスケールと先端的な装備
最先端システムを誕生させるまで
最高のクオリティの固形剤を生み出す最高の設備
完全ペーパーレス化を実現
指示待ち人間がいなくなった
連日、システム見学希望者の来訪が絶えない工場
むだなくスムーズ、安全性や効率も抜群の生産ライン
固形剤、特にステロイド剤では国内トップ
「先の利」戦略で日新製薬を倍速で成長させてきた
ステップ・バイ・ステップで企業を成長させていく


第2章 ジェネリック医薬品に吹く追い風

人類の明日の宝・ジェネリック医薬品
欧米ではジェネリック医薬品を使うのはあたりまえ
ジェネリック医薬品使用促進の動き
目標値達成のためのロードマップ
ジェネリック医薬品メーカーの正念場
パテントクリフで医薬品市場のマップが変わる
ジェネリック医薬品メーカーが躍進する時代へ
世界のジェネリック医薬品市場動向
出遅れた日本のジェネリック医薬品メーカー
最後に勝つのは、正しいことをやってきたメーカーだ
医薬品受託製造というもうひとつの市場
委託企業には世界の超大手の名が並ぶ


第3章 「日本一」「世界一」がずらりと並ぶ企業

「大手だから安心」とは言えない時代 ❖ 78
世界で初めて医薬品製造に「パルス光滅菌技術」を採用 ❖ 80
夢で啓示を得たパルス光滅菌の採用 ❖ 82
日新製薬が独自に証明したパルス光滅菌の滅菌効果 ❖ 85
パルス光滅菌研究では世界をリード ❖ 87
クオリティ日本一のポリエチレンボトル注射剤 ❖ 92
想像以上の困難が待っていたポリエチレンボトル製造 ❖ 94
ついにクオリティ世界一の
ポリエチレンボトル入り注射剤の製造に成功 ❖ 97
気体の透過に対応するブリスター包装機を導入 ❖ 100
世界一のフルコンテインメントシステム ❖ 103
品質管理体制でも日本一のクオリティを実現 ❖ 106
社員の20%が品質管理に関する仕事に従事 ❖ 108
競合も太鼓判を押した
ジェネリック医薬品業界トップのソフトとハード ❖ 110
慶応義塾大学先端生命科学研究所との連携 ❖ 112
日新製薬の医薬品は、他より高くても売れる ❖ 114
どこにも負けない競争力 ❖ 117


第4章 大石俊樹の足跡Ⅰ

大石が「真の山形県人」になった日
東京都足立区で始まった俊樹の人生
優秀な頭脳と抜群の運動神経、文武両道の才能に恵まれて
ものごとの本質をつかみ、行間を読み取る能力
悪ガキだが、言うことは常に正論
教会の牧師を論破
学生運動が吹き荒れるなかでの大学生活
選んだ就職先は電気部品の商社
入社早々、長年の経理の「不明」を徹底追及
半導体営業でもめざましい結果を出す
「知恵の営業」で市場開拓
大組織のサラリーマンか、小企業の経営者か
経営者の道を選択。そして「廣川」から「大石」へ


第5章 大石俊樹の足跡Ⅱ

結婚後、すぐに日新製薬に入社
日新製薬の創設
あまりにも大きかったイメージギャップ
気息奄々状態から再生の道へ
潰れる会社を継ぐのも悪くはない
改善に取り組み、わずか1年で赤字を解消
錠剤製造へ進出
大手メーカーのデータの不備を看破
正しいことだけをやっていこう
わずか3年で日新製薬を再生
受託事業と自社製品の2つの車輪が回りだした
大石俊樹、代表取締役社長に就任
日本最先端のレベルの製薬を実現
突然、右腕をもぎ取られる
自社開発のオリジナル路線を進んでいくことを選択
化学者のプライドを貫いてくれ
俺を乗り越えて進んでいってほしい
社会に「なくてはならない会社」になる
「人」にも惜しまず積極投資
鶏が先か、卵が先か
多頭数戦略で市場を切り拓いていく
「生産拠点」と「人」それぞれの拡大路線を突き進む
川越工場の誕生とリスク分散
継続的に投資し、進化し続けていく


第6章 明日の日本を担う企業へ進化

東北で就職人気ナンバーワンの企業
増えてきた地元志向
全国に主要産業の本拠地が広がる欧米型発展をめざす
地方創生へ政府も本腰を入れ始めた
雇用拡大で地方創生に最大の貢献
結婚できる給与水準
徹底的な教育で、従業員の質をさらに高める
従業員一人ひとりが充実した人生を送ってほしい
女性のキャリア形成ができない国・日本
日新製薬の「女性が働きやすい会社指標」
地域ナンバーワン企業を証明する数々の受賞歴
スケールアップする地元への貢献
企業存続のために、次世代へ襷をつなぐ
より高いところから経営を俯瞰し日本経済と日本社会を引っ張っていく
日本のジェネリック医薬品を世界にアピールする


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『大学教育再生への挑戦』 前書きと目次

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大学教育再生への挑戦
 ~震災の地から始まる日本人の心の革命~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-433-4
初版発行:2017年3月30日
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 はじめに

まばゆい輝きに満ちた東北の海。一面に光の粒子を撒き散らしたようなその光景は、実に美しい。

だが、6年前の2011年3月11日、この海は突然、牙をむいて、人々に襲いかかり、計り知れないほどの大きな被害をもたらした。

しかし、人の力はさらに大きいものだったのだ。この甚大な被害に負けることなく、いま、東北は着々と復興の歩みを進めている。

長年、ジャーナリストとして時代を見つめてきた私は、東日本大震災のあと、何度となく現地に足を運んできた。そうしたなかで頻繁に耳に入ってくるのが、「東日本国際大学/いわき短期大学」の名前だった。被災地のひとつである福島県いわき市にある両校の学生たちは、復興のために力強く働く多くの若者たちのなかでも、ひときわ光る意思力と行動力を発揮し、地元をはじめ、多くの人々に勇気と希望を与える大きな存在になっているというのである。

いわき市にある、東日本国際大学/いわき短期大学は、学校法人昌平黌が運営する教育機関だ。ほかにも、東日本国際大学附属昌平中学・高等学校、いわき短期大学附属幼稚園などを擁している。

昌平黌の教育の核にあるのは、儒学の理念である孔子の教えにもとづく「人間主義」だ。儒学を謳う教育機関は、あまり例がない。いや、ここまで徹底して儒学教育を展開しているところは、日本では昌平黌だけかもしれない。その理念のすばらしさに感銘を受けた私は、昌平黌が教育にかけてきた歴史や建学の理念、それにもとづく教育の実際などについて広く知ってほしいと、『心の革命』(小社刊)という書籍を1996年に上梓した。

そうした縁から、震災後の混乱が落ち着いたころを見はからって、昌平黌の理事長である緑川浩司氏に連絡をとったところ、耳に飛びこんできたのは次のような言葉だった。

「あの震災は、わが校にとってはある意味で再生のきっかけとなりました。震災を経験したことで、昌平黌の建学の精神を、よりいっそう進化させることができたのです」

どういうことかとたずねると、こういうことだった。

震災前の東日本国際大学/いわき短期大学は、大学の厳しい生き残り競争にさらされており、ともすれば学生数の確保を優先するあまり、学生たちの人間的な資質を磨くことは後手にまわりがちだった。だが、震災という未曽有の悲劇に遭遇したときに長年受け継いできた儒学の精神が覚醒し、学生や教授陣、大学運営にあたる関係者たちは、誰が言うともなく、被災者を助けることを最優先として活動し始めたのである。

「昌平黌は建学以来、孔子の教えを教育の核においてきました。その精神、具体的に言えば、仁義礼智信(儒学で説く、人が常に守るべき5つの徳。五常、五徳)を基本とした人間教育を徹底しているのですが、その成果が震災時に開花し、被災者支援、さらには復興支援に結実したのです」

と、緑川氏は誇らしげに語った。

あらためて述べるまでもなく、震災は、学舎の倒壊などを含め、昌平黌にも有形・無形の多大な被害をもたらした。特に震災の翌日に発生した東京電力福島第一原子力発電所の爆発事故の余波は大きかった。東日本国際大学/いわき短期大学は、福島第一原子力発電所にいちばん近い大学だったのだ。

といっても、福島第一原子力発電所からは40㎞も離れており、実際には放射性物質が漏洩したことによる危険や影響はほぼなかった。だが、そんな実情とは関係なく風評被害は容赦なく広がっていき、東日本国際大学/いわき短期大学に大きな痛手を与えたのである。

東日本国際大学は、世界に開かれた大学として広く知られる存在で、在学生の約5分の1にあたる129人(このほか、留学生別科生137人在籍。2017年2月現在)が海外からの留学生だ。中国、韓国、タイ、ベトナム、ミャンマーなど、その国籍は十数カ国にのぼる。彼ら自身の不安はもちろんだが、遠く離れた異国に子どもを送り出している彼らの両親などの不安は、いかばかりのものだっただろうか。

昌平黌の関係者は、まず海外からの留学生たち全員を安全圏に移し、一時的に帰国させるという判断を瞬時に行った。そして、各国大使館や領事館など、それに各航空会社と連携して、全員を無事に母国へと帰国させたのだ。

その間、精神的に衝撃を受けている学生たちに対しては、大学関係者が付き添い、メンタルケアも含めて、できるかぎりのサポートを実施した。

そのときの対応がいかに誠心誠意のものだったかを示すかのように、震災で母国に戻った留学生たちの約90%が、その後ふたたび大学に戻ってきたという。

国内の学生たちの行動もすばらしかった。彼らは率先して復興作業や支援活動に加わり、積極的に活動したのである。その様子や姿を見た人々のあいだで「東日本国際大学/いわき短期大学の学生の人間力はすばらしい」という評判が立ち、震災後、両大学の評価は、いやがうえにも高まっていったというのだ。

このときの体験は、昌平黌の関係者にも強い自信を甦らせた。

「私たちが長年行ってきた、『論語』を中心とした人間教育に間違いはなかった、偏差値や成績、ビジネスでも結果や実績ばかりを評価しがちな現代にあって、人間教育の重要性を主軸においた昌平黌の教育は、結果的に時代のニーズを最も先取りするものだった、ということに気づかされたのです」

緑川氏の言葉に力がこもるのも当然だ。

こうした結果から、地域と共存することの重要性をあらためて嚙みしめた昌平黌は、現在、「グローカル」という新しい価値観を世にアピールしている。

グローカルとは「グローバル」と「ローカル」を合わせた造語で、グローバル=国際的な視野や力量を持ちつつ、その視点や力を自らが生きる地盤であるローカル=地域にも活かしていく、という姿勢を言う。

現在、東日本国際大学の学長は、早稲田大学名誉教授で、2011年3月までサイバー大学の初代学長を務めていた、エジプト考古学研究で世界的にその名を知られる吉村作治氏である。エジプト考古学と儒学とは、一見ミスマッチに見えるが、人間性を重んじ、人間としての誠を大事にする姿勢や「人が真摯に生きる」ことの価値は、古今東西、変わらないのだという。

世界的な知名度を持つ吉村氏が学長に就任した効果や、真の人間性を育む儒学教育、さらに、「寺子屋教育」と称し、小規模できめの細かい教育に徹してきた揺るがぬ方向性などが評価され、近年、東日本国際大学の評価はじわじわと高まってきている。それを実証するのが、東日本国際大学、いわき短期大学ともに、就職率100%という信じられない実績を数年にわたって続けていることだ。しかも、卒業生たちの多くは福島県下で就職している。両校は、明日の地域づくりに欠かせない人材の供給源として、貴重な成果をあげているのである。

この事実は、いくつもの課題を抱える地方にとって、大きな励みとなるはずだ。また、両校の取り組みは、地域社会と大学がみごとなWin‐Winの関係を構築するという、明日の日本のための教育機関の理想形のひとつとして、全国的にも注目を集める存在になっている。

震災のダメージからの復活と、そこからさらに飛躍してグローカルという新たな価値軸を確立し、今後の日本の人材育成をリードしていこうとしている昌平黌の奮闘ぶりを、つぶさにうかがった私は、ここに、日本の高等教育が、さらには社会がめざすべき、ひとつの方向性が示されていると感じた。

現在、日本の教育は、大きな壁にぶつかっている。偏差値偏重教育は明らかに頓挫してしまった。大学進学をめざす学生や、子どもを持つ親、いや、日本人全体が、あらためて大学で学ぶことの真意を見つめなおす必要があり、その具体的な答えのひとつが、東日本国際大学/いわき短期大学にはある。そうした意味で、本書は、日本の未来を真摯に考えようとするすべての人に、多くの示唆を与えるだろうと自負している。

なお、本書の執筆にあたっては、学校法人昌平黌理事長の緑川浩司氏、東日本国際大学学長の吉村作治氏、いわき短期大学学長の田久昌次郎氏をはじめ、多くの方々のお力添えを得た。ここに厚く御礼を申しあげる。

また、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

  2017年2月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第1章 「3・11」からの復興 ―「天、我に徳を与える」―

史上かつてない規模の自然災害
学生たちは絶対に守る
留学生は安全な都内へ避難
留学生の一時帰国
さらに続いた緑川らの奮闘
9割の学生が戻ってきた
じわじわ評価が浸透しつつある昌平黌の人間教育
昌平黌の真髄をいかんなく発揮
復興から学んだことを次代に活かす
「義を行い以てその道に達す」


第2章 学校法人昌平黌と孔子の教え ―「義を行い以てその道に達す」―

いまこそ求められている真の人間教育
再認識される「教育=人間力の育成」という考え方
「利は義の和から生じる」と考える儒学の教え
2000年あまりにわたりアジアの人々の法灯となってきた儒学
昌平坂学問所の誕生
儒学の根幹を成す「仁」「義」「礼」「智」「信」
明治以降の「昌平黌」の歩み
学校法人昌平黌の前身である開成夜学校の誕生
学校法人昌平黌へと続く道
学校法人昌平黌の生みの親である田久孝翁という人物
昌平高等学校の移転問題
昌平黌短期大学の創設
新生昌平黌のスタート
山岡荘八が名誉学長に就任
後半生を儒学教育に捧げた山岡荘八
4年制大学を持つ教育機関へと成長
儒学教育を象徴するペンと剣の校章、大成殿の建設
引き継がれた「昌平黌」の理念
巨木、倒れる
緑川、理事長に就任

《人間力育成を心に銘じて》……学校法人昌平黌理事長 緑川浩司


第3章 グローカル人財を育成し、地域と明日の日本に貢献する ―「性相近く、習い相違し」―

東日本国際大学から生まれた進化型人材「グローカル」
世界的なエジプト考古学研究者の吉村作治を学長に迎える
「OPEN MIND」に根ざした人財育成のスキーム
平和経済学を掲げて開校
ICTを基礎に経済・経営を学ぶ「経済経営学部」
実社会で役立つ実践力と即戦力を体得する2つのコース
一人ひとりの「幸せ」を考える「健康福祉学部」
多様な福祉行政やサービスに対応する3つのコース
平成の寺子屋と呼ばれる少人数ゼミと各種資格取得
資格取得を全面的に支援
エクステンションセンターの資格取得講座
2つの特別プログラムでキャリア形成の実現をサポート
海外との架け橋となる国際部の活動
日本から海外への留学生を増やす
充実した奨学金・特待生制度
活発なスポーツ活動による人間力育成
寮や学生マンションで暮らし、健康もサポート
100%を誇る驚異的な就職率
就職支援力120%、キャリアセンターの働き
人財の地元定着や留学生の就職支援のための精力的な活動
中・高一貫教育で高い評価を得ている東日本国際大学附属昌平中学・高等学校

《「中庸」を原点に、真に社会が求める人財育成を進めていく》……東日本国際大学学長 吉村作治


第4章 地域を支える人財を育成する、いわき短期大学 ―「勉学積徳」―

いわき短期大学は学校法人昌平黌の原点
「商経科」から「幼児教育科」を持つ大学へ
福祉専攻コースの誕生と東日本国際大学への移行
心に届く幼児教育のプロフェッショナルを育てる
人としての生活のすべてをカバーする幼児教育
附属幼稚園での教育実習で現場力を培う
「幼稚園教諭」と「保育士」の2つの免許・資格を取得できる
東日本国際大学へ編入する道もある
グローカルな人間力育成を加速する「英語特別講座」
東日本国際大学との積極的な交流も魅力のひとつ
安心の寮生活で学生の暮らしをサポート
地域の高校と連携授業を開催
5年連続就職率100%、圧倒的な地域からの信頼感
「いわき短期大学だから夢をつかめた」と語る卒業生たち

《地域貢献型の人財育成という使命に徹していく》……いわき短期大学学長 田久昌次郎


第5章 昌平黌が描く将来ビジョン ―「義と和の中に未来がある」―

『論語』は未来に向かう人間力の原点
地域貢献の拠点「地域振興戦略研究所」を立ちあげる
昌平黌論語を確立し、発信していく
現代の寺子屋「昌平塾」で学ぶ昌平黌論語
昌平黌のオンリーワン資質、存在意義を磨いていく
偏差値偏重教育を脱し、知力・体力・徳力教育を進めていく
2023年には地方大学のトップになる


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『“本気”になったら「大原」』 前書きと目次

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“本気”になったら「大原」
 ~「資格」から始まるキャリアアップへの道~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-432-7
初版発行:2017年3月7日
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 はじめに

現在、教育に関する議論が盛んに行われている。知識や偏差値に偏重し、生きる力や社会的自立をする力が弱まっているなかで、「教育」が持つ力をもういちど取り戻そうという提言が、あちこちでなされている。

「教育」という営みには本来、子どもや若者を「自立したひとりの人間」に育てあげていくという役割がある。しかし、偏差値が進路を計るものさしとして使われるようになってからは、学力のみに関心が向けられる傾向が強くなってきた。

ひとりの人間が、自立した社会人や職業人となって社会的責任を果たし、他の人々と協力して生きていくためには、確かな学力だけではなく、実社会のなかで生活するための基礎的な力、いわゆる「人間力」を身につけていくことも欠かせない。

人間力とは、「社会を構成し運営するとともに、自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力」と定義される(内閣府「人間力戦略研究会報告書」より)。

この人間力の育成が不十分なために起きている問題が、ニートやひきこもり、フリーターといった、社会に居場所を見つけられない若者の増加である。しかし、その原因を個人的なものととらえてしまうだけでは、なんの解決にもならない。教育、人材育成、雇用など、社会システムの問題としてとらえたうえで対策を打つことが必要なのである。

そのひとつが、国が数年前から力を入れて推進しようとしている、子ども時代からの「キャリア教育・職業教育」の実践である。キャリア教育とは「社会の中で自分の役割を果たしながら、自分らしい生き方を実践していく」ことであり(文部科学省「キャリア教育・職業教育特別部会(第30回) 配付資料」より)、そのために、自立した職業人をめざした教育を持続的に行う道を、国と行政は模索しているのだ。

いまの学校教育は、学力のみが重視されるあまり、社会的自立や職業的自立を育成する方法が定まらない状態が続いている。

たとえば進路指導は、学生が、自分が将来どのような人間になり、どう生きていくことが望ましいかという、長期的展望に立って物事を考えられるように指導する、というのが本来のあり方であるが、現実は、単に学力レベルに応じた安易な進路決定を行うケースが少なくない。そのためか、高校卒業までに職業を意識したことがないと答える大学1年生が3割にのぼっているという。若者たちのこうした「社会的な自立」の希薄さが、ニートやひきこもりなどを生み出す要因になっていることは否めないだろう。

大学教育のあり方も、見なおすべき時にきている。実際、「学校から社会・職業への移行」が円滑に行われるために、学術本位から職業教育重視に転換すべきだという意見が、各方面から発信されている。学力偏重教育の弊害を経験した私たちは、いまこそ教育の力で、社会的役割を果たす自立的な若者を育てていかなければならない。

こうしたなかで今回、学校法人大原学園と縁ができ、その全体像を取材することができたのは、とても意義あることだった。

大原学園といえば、実学系専門教育機関の第一人者として全国各地で教育活動を展開している、専門学校の雄である。グループ関連校も含めて全国の大原学園に通う学生は約2万人、「社会人講座」の受講生は延べ10万人を数える。「資格の大原」「就職の大原」というキャッチコピーは、専門学校に少しでも関心のある人にはなじみがあるだろう。

大原学園が提供している資格講座は、実に多種多様だ。大原学園で学んで資格を取得し、人生のキャリアアップをはかった多くの人材が、全国各地で活躍している。特に税理士の合格者占有率はトップレベルが続き、簿記・会計系では圧倒的な実績を誇っている。

大原学園は、万全の教育体制を整えて、若者たちに門戸を開いているが、そのカリキュラムは、けっしてたやすいものではない。たとえば、高卒生を中心とした「公認会計士・税理士コース」では、学生たちは、入学したとたんに2カ月後に迫る検定試験で日商簿記2級検定に合格することを課せられ、それこそ朝から晩まで簿記漬けの日々を送ることになる。彼らにとっては、おそらく人生で初めての、頭に汗をかく体験だろう。

しかし、それこそが大原学園側の狙いである。学習の楽しさと厳しさの両方が凝縮された時間を実感をもって体験することで、ゆるんだ心身を筋肉質に変えていくのだ。そして2カ月後、検定に合格した彼らは、初めての成功体験に歓喜し、同時に「やればできる」という自信を獲得する。これを教育課程の第一段階として、その後も一段ずつ階段を上がるように学生たちを「自覚ある社会人」に育てあげていくのが、大原学園独自の教育ストーリーなのである。

その最終目標は「幸せな就職」だ。これは、「正社員」「マッチング」「仕事力」の3つの条件をみたした就職のことを言う。

それを実現させるのは、大原学園と各企業との緊密な連携体制である。一社一社のニーズを的確に把握し、一人ひとりの学生の適性と企業のニーズをピンポイントで合致させる、大原学園の工夫と判断からは、職人技という言葉も浮かんでくるほどだ。

学生の内定が決まると、個々の職種に合った訓練を徹底して行い、入社後も本人と会社双方へのフォローを続けることで、次年度の就職活動をさらに有利なものに導いていく。こうしたきめ細かなキャリアサポート体制により、大原学園の就職率は、毎年高い数値が続いている。ちなみに2016年度は98・9%だった。

こうした実績を生み出す核となっているのが「人格育成教育」である。

大原学園は、学生生活のひとこまひとこまを、人格を磨く場面ととらえている。担任の教師が学生一人ひとりの特徴をつかみ、言葉遣いや立ち居振る舞い、身だしなみなど、社会人としての常識を、日々の生活のなかできめ細かく指導し、身につけさせる。

コミュニケーション能力や協調性、自己管理能力など、職業人として欠かせない要素は、イベントやクラブ活動を通して育成していく。特に年に1度開催されるスポーツフェスティバルは、組織の一員として活動することの醍醐味と厳しさの両方を学生が体験できるイベントとなっている。大原学園の職業教育の支柱は、学生たちに何度も脱皮を促す、このような人格育成教育にあるのだ。

こうして2年間鍛えられた学生たちは、知識と技能、そして自覚と責任を持った個人として、社会に出ていくのである。

これは、キャリア教育・職業教育の意味する「社会の中で自分の役割を果たしながら、自分らしい生き方を実践していく」ことそのものではないだろうか。

ニートやひきこもりを経験した者が大原学園で学生生活を送り、その後、実社会へ進んだというケースも多いという。こういう話を聞くと、職業教育とは人材教育にほかならないことを、あらためて認識させられる。若者の持つ可能性を刺激して、自らで自らの人生を築いていこうとする人間に育てる、この教育のあり方こそ、いまの社会が必要としているものだろう。

取材で話を聞いた大原学園の教員たちも、みな「ほんの少しのきっかけさえあれば、学生たちは見違えるように変わっていく」と語ってくれた。

大原学園が誕生したのは1957年。今年(2017年)で創立60周年を迎える。創立者の武市春男氏は、資金も後ろ盾も持たないなか、商業教育復興への使命感を燃やして「大原簿記学校」を開校した。その熱意は周囲の人々の心にも火をつけ、古い建物一戸だった大原簿記学校を、全国展開するまでに成長させていった。武市氏の唱えた「感奮興起」は、現在は校訓となって、その精神は脈々と受け継がれている。

現在の理事長の安部辰志氏は4代目である。ひょんなことから大原学園に受講生として入学してから44年。その後、大原学園の講師へ、さらには大原学園を支える主要なメンバーとなって、さまざまなアイデアで大原学園を改革し、いまの「大原学園」というブランドをつくりあげた功労者のひとりである。2007年に理事長に就任してからは、全国展開を推進し、地域活性化の要としての大原学園の存在感を高めていった。不登校児の救済のために通学型通信制高校を開いた際の奮闘ぶりは、教育の力を信じる安部氏の心意気を伝える物語だと言える。

本書は、教育と人間の熱い物語が展開される一冊である。また、現在変革の渦中にある大学教育に関しても詳しく語った。職業と教育、およびそれを形成する人間の物語に関心のある方に手にとってもらうことを願う次第だ。本書により、職業教育の意義が理解され、ひとりでも多くの若者が未来を築くきっかけとなれば、望外の喜びである。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

  2017年1月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第1章 変わる専門学校の位置と役割

国が示した「教育機関」としての専門学校の重要性
2014年から始まった「職業実践専門課程」
実学の雄・学校法人大原学園
教育施設と位置づけられている非一条校
専門学校とは正式には専修学校専門課程のこと
大学全入時代のなかで
もっと社会的ニーズを見すえた実践的な訓練を
大学は高度職業訓練校に?
幼児期からのキャリア教育が必要に


第2章 最先端の職業教育を展開する独自の教育システム

大原学園の校訓は「感奮興起」
「専門課程」に設置された多彩なコース
「三段階教育法」を経て「幸せな就職」につなげる教育ストーリー
その後の人生も支える、やればできるの「成功体験期」
人間性の育成もめざす「専門学習期・実践期」
専門性学習の総まとめとなる「入社準備期」
最終目標の「幸せな就職」とは
一人ひとりの個性を踏まえた徹底指導
企業からの揺るぎない信頼が続く秘訣とは
大学と専門学校の違い
人気が高い公務員コース
可能性を広げる各種制度
確かなスキルアップを実現する「社会人講座」
資格の持つ意味とは

 《幸せな就職のために─現場、就職部、企業の密な連携/理事 堤敦》


第3章 地方を支える人材を資格と人格の両面で育成

スポーツフェスティバルを通してコミュニケーションの真髄を知る
弱いところを補いあって生きていく
優れた人間性を養うことを目的として行う教育
潜在能力を引き出し、チームワークを身につけるAOCC
世界に通用する人間性を育てるヨーロッパ研修
頭だけでなく行動も言葉も身につけて
ニートやひきこもりの解消に向けて
若者の再生を第三の事業の柱に
国が描くキャリア教育・職業教育とは
さまざまな個性を持った生徒が集まる通信制高等学校
地方の人材育成をめざし、地方都市へ進出
地方に眠る分厚い中間層を掘り起こせ
磨けば光る原石


第4章 大学か大原か─大学の専門学校化

大学における実学を提唱
大学の特徴と大原学園(専門学校)の特徴
G型大学とL型大学
実学の重要性を強く訴える
2019年の開設をめざす「専門職業大学」とは
大学からの講座の依頼
大学と専門学校のクロスオーバー
実務の幅を広く深くさせる、大原大学院大学での学び
「大学より専門学校へ」という現状が語るもの
専門学校と連携する日本語学校も

 《専門学校は社会に出る前の学校として機能する/副理事長 西原申介》


第5章 「感奮興起」─大原学園60年の歩み

専門学校のパイオニア
なんとしても日本に新時代の実学の学校を
10年に及ぶ、どん底の苦闘
経営はどん底だが、教育の中身はますます充実
いつか必ず大原の時代を
念願だった新校舎が完成
熱心な勧誘に負けて大原に
講師陣の充実で「税理士は大原」の名を確かなものに
大原簿記学校の起源と、受け継がれた精神
専修学校専門課程設置の認可を受ける
学校法人大原学園の誕生
3代目理事長の久保富美夫が築いた「授業に厳しい大原」の姿勢
ナンバーワンをめざすなら全国展開を
苦難を超えて大原学園高等学校設立、教育にかける安部の執念


第6章 教育産業の未来に向けて

山形校の開校でひとつの区切りに
ホテル・トラベル分野とアニメ・声優分野の新しい学校も
これからは「大原」の名にこだわらない
オンライン講座の台頭
女性の活躍を応援する画期的オンライン講座
受講生どうしの部活から就職までを完全フォローする大原体制
大原人材強靱化計画
常に時代の半歩先を行く
危機意識が生む変革
大原学園は永遠


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『進化するコインパーキング』 前書きと目次

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進化するコインパーキング
 ~ユーザーファーストで実現する安心・安全・快適な駐車場ネットワーク~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-431-0
初版発行:2017年2月25日
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 はじめに

無人のクルマが公道を走る─。

そんな完全自動運転の世界が現実味を帯びてきた。

近年、世界の自動車メーカーやIT企業などが、自動運転をめぐって熾烈な技術開発競争を繰り広げている。国内の自動車メーカーもこぞって開発を加速させており、政府も、2020年の東京オリンピック・パラリンピックにおける自動走行のクルマによる移動サービスの実現や、高速道路での自動運転の実用化に向けて、取り組みを活発化させている。

自動運転車では、ドライバーはハンドルを握る必要もなく、アクセルやブレーキも踏まなくていい。一般道路での自動運転の実用化には、法整備をはじめ、まだ課題も数多く残されているが、完全自動運転が実現し、人が運転操作を行わなくても安全に目的地へ着けるようになったときには、もはや運転免許は必要なくなり、老若男女、誰もがクルマを利用できるようになるだろう。

昨今、高齢ドライバーによる事故が多発し、75歳以上の高齢者に免許の返納を促す動きがあるが、自動運転車が実用化されれば、免許を返納した高齢者も、便利な移動手段としてクルマを利用できる。

21世紀の産業革命とも言われる自動運転は、利用者に安全や利便性をもたらすだけでなく、社会のあり方や人とクルマの関係そのものを一変させることになるのは間違いない。

ドアツードアの移動が可能なクルマは、本来、いちばん便利な移動手段であるはずだった。しかし都市部では、渋滞に巻きこまれてしまうと時間が読めなくなり、また、駐車する場所も非常に少ないことを考えあわせると、電車などの公共交通機関を利用したほうが確実ということになる。

もし、自動運転システムにより、クルマでの移動を阻害する要因が解決できるとなれば、やはりクルマほど便利なものはないのではないだろうか。

公共交通機関は、近年はエスカレーターやエレベーター、スロープなどの設置が進んでいるが、それでも完全にバリアフリー化されているとは言えず、また、人混みのなかでの移動や乗り換えを余儀なくされることもあり、高齢者や障がい者などにとっては肉体的負担も大きい。そうした点からも、とりわけ日本のような超高齢社会にあっては、自動運転車への期待がますます高まりそうだ。

それに、自動運転車での移動の際は、駐車場は必ずしも目的地の近くである必要はなくなるだろう。

これまでは、クルマを停める場所は一般的に目的地から半径約200メートルの範囲が目安とされていたが、自動運転車なら、自分は目的地で降りて、クルマだけを無人で駐車場に向かわせれば、1キロくらい離れた駐車場でもOKということになる。帰るときには、目的地でクルマを呼び戻せば、駐車場から無人運転で目の前に来るので、そこで乗りこめばいい。

将来的に自動運転車が普及すれば、クルマは純粋に移動手段としてとらえられるようになるだろう。そうなったときには、住宅街の狭い道路でも難なく走れるよう、コンパクト化が進むことも考えられる。

また、クルマを自分で所有せず、必要なときだけカーシェアリングを利用するという人も、これまで以上に増えるのではないだろうか。自動運転車なら、シェアリングステーションまで出かけていかなくても、予約した時間に自宅や自分のいる場所までクルマが自動で運転してきて、利用後も自動運転で戻っていく。

自動運転の実現によりカーシェアリングの市場が拡大すれば、若者のクルマの購入離れにはいちだんと拍車がかかるかもしれない。しかし、便利な移動手段として、高齢者などを中心に、クルマの利用そのものは増えるはずだ。それに伴い、駐車場はますます必要になってくる。

都市部では、現状でも、クルマの数に比べて駐車場の数が絶対的に不足している。ある調査によると、三大都市圏(首都圏・中京圏・関西圏)における目的地での駐車場需要は2300万台近くにのぼるのに対し、供給されている駐車場数は700万台ほどと推定され、3分の1にも満たないのである。

慢性的な駐車場不足を背景に、企業や団体、個人が保有する遊休地を活用したコインパーキングの市場が年々拡大しているのに加え、昨今は、空いている駐車スペースの貸し借りをインターネット上で仲介する、駐車場のシェアリングサービスも登場している。

繁華街や観光地などでは、空いている駐車場を探すのもひと苦労で、ドライバーにとってはそれがストレスになり、クルマでの外出を躊躇する一因にもなっていた。そこに着目したのが駐車場のシェアリングサービスだ。月極駐車場やマンション内の空き駐車場、利用のない休日のオフィスビルの駐車場、個人宅の駐車スペースなど、使われていない駐車スペースを一時的に借りられるサービスで、スマートフォンやパソコンで事前予約できるのが大きな特徴だ。

自動運転が普及すれば、こうした空きスペースの活用が、駐車場需要の受け皿になっていくことも十分考えられる。

自動運転技術の開発により自動車業界が歴史的転換期を迎えつつある一方で、コインパーキングをはじめとする駐車場業界においても、一種の革命が起きつつある。

コインパーキングといえば、これまではロック板の設置により車室(駐車スペース)への出入りを管理するのが一般的だった。

しかし、このロック板がくせもので、クルマのホイールやタイヤを傷つけたり、人がつまずいて転倒するといった事故も少なくない。さらには、停電の際には出庫できないといったトラブルも発生していた。また、運転に自信がなかったり、車庫入れが苦手なドライバーにとっては、ロック板の存在自体が、技術的にも心理的にも負担になる。

こうしたロック板に関する種々の問題を解決するのが、ロック板のないロックレス駐車場だ。そして、そのシステムを他社に先駆けて開発し、製造・販売することで着実に業績を伸ばしているのが、本書で紹介する株式会社アイテック(本社:東京都文京区、代表取締役:一ノ瀬啓介氏)なのである。

アイテックの創業は1994年7月。精密機器メーカーの技術者だった一ノ瀬啓介氏が、45歳のときに、たった1人で起業した。そして、新たな事業として選んだのが、駐車場設備機器開発の受託だった。

1997年9月には前身の株式会社イチノセを設立して法人組織となり、2000年に受託先との契約が切れたのを機に、翌2001年7月には商号をアイテックに変更するとともに、自社ブランド製品の開発に乗りだした。

以来、クルマの入出庫、発券、料金の精算などを効率的に行うためのシステムを次々に開発。ロック板の上げ下げや精算機の料金設定などを遠隔操作できるしくみも導入したが、一ノ瀬氏としては「他社と決定的に違うものをつくりたい」と思っていた。

そんな折、運転免許を取得したばかりの娘が発したひと言が、一ノ瀬氏の心をとらえたのである。

「ロック板があるとクルマが入れにくいし、降りるときもヒールをひっかけてしまう」

その言葉にヒントを得て、さっそく「ロック板のない駐車場システム」の開発に取りかかることにした。

およそ5年の歳月をかけて完成させたロックレス駐車場システムは、常識にとらわれない、まったく新しい発想によるものだった。そのしくみは、駐車場内に車両ナンバーを読み取るカメラを内蔵したポールと監視カメラを設置し、車両の出入りを検知するセンサーをアスファルトに埋設する、そしてクルマが駐車場に入ってきたらカメラが車両ナンバーを読み取り、それをインターネット回線を通してアイテックのデータセンターに記録することで不正出庫を防ぐ、というものだ。

ロック板がないと、料金を精算せずに出庫してしまうケースが増えるのではないかと思いがちで、それが多くの駐車場経営者にとっても懸念材料であるのだが、一ノ瀬氏によると、実はそうではないらしい。

「実際のところ、ロック板のない駐車場のほうが、むしろ不正出庫は少ないのです。高速道路でも、スピードを監視するカメラがあることがわかると、誰でも減速しますよね。あれと同じで、人はカメラの前ではあまり不正はしないものです」

実際、ロック板を設置した駐車場の不正出庫率が1%程度であるのに対し、ロックレス駐車場では0・4%と、大幅に低くなるのだという。

ロック板というものは、要は不正出庫を食い止め、きちんと料金を払ってもらうためのものであって、不正を働く人がいないのであれば、本来は不要なものなのかもしれない。これはつまり、善良な利用者に不便を強いていると言えなくもない。

その点、高感度カメラを設置したロックレス駐車場は、本当に不正を働く人にだけ有効に作用し、善良な利用者はストレスを感じることなく快適に利用できる。利用者のことを第一に考えるのなら、これが本来の駐車場サービスのあり方なのかもしれない。

アイテックのロックレス駐車場システムは、2010年2月の発売以来、たちまち評判を呼び、2016年9月末時点で販売累計は1903現場、1万9450車室に達している。

いまでは他社もロックレス方式を手がけるようになったが、コインパーキングの市場全体では、いまなおロック板方式が圧倒的で、ロックレス方式の専有率は全車室の2~3%にすぎず、まだ端緒についたばかりだ。本格的な普及に向けてはこれからが本番だが、

「一度ロックレス駐車場の快適性を体験していただければ、必ずやファンになっていただけると思います」

と、一ノ瀬氏は自信のほどをのぞかせる。

ロックレス駐車場システムを完成させたあとも、アイテックは利用者にとっての利便性と快適性を追求するべく、技術開発の手を緩めることはない。

各駐車場の対応精算機とデータセンターをインターネット回線でつなぎ、さまざまな情報の収集と管理を行うグローバル・ネットワークシステムを構築。これにより、キャッシュレス決済や利用ポイントごとのサービスの提供が可能になり、精算機に行かなくても車内にいながらにしてスマートフォンで料金精算もできるようになっている。

ロックレス駐車場システムの開発にとどまらず、いち早く駐車場のネットワーク化を進め、データセンターなどのインフラを整備していることがアイテックの強みでもある。今後も、このネットワークを活用し、サービスの差異を出していくことで、さらなる顧客獲得につなげたい考えだ。2017年3月には、コインパーキングで初めての予約システムもリリースされる。

カーシェアリングの普及や自動運転の技術開発など、クルマを取り巻く環境が大きく変わろうとしているが、クルマが人々にとって身近で便利な移動手段であることに変わりはない。

そしてクルマは、動いたからには必ず停める場所が必要であるため、今後もコインパーキングの需要は着実に増えると見込まれる。

本書は、独自の技術でコインパーキングの質の向上に貢献し続けるアイテックの事業活動を紹介するとともに、同社の創業者にして代表取締役である一ノ瀬啓介氏の経営理念と人生哲学に迫るものである。

ご一読いただき、駐車場運営事業者や駐車場の土地オーナーなど、駐車場ビジネスに関わる方々が、利用者に選ばれるコインパーキングのあり方を考えるうえでの一助となれば、これに勝る喜びはない。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

  2017年1月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第1章 コインパーキング市場の現状と課題

全国に広がる24時間制の無人時間貸し駐車場
5兆円とも見込まれるパーキング関連の市場規模
慢性的な不足が続く大都市の駐車場事情
コインパーキングは世界に誇る日本の文化
既存駐車場のコインパーキング化
コインパーキングの主流はロック板方式とゲート方式
コインパーキングにおけるトラブル
施設の第一印象は玄関である駐車場で決まる
利用者に選ばれるのは停めやすい駐車場
ITの活用で駐車場業界にも押し寄せる変革の波


第2章 独自の技術でコインパーキングを革新するアイテック

ロックレス駐車場システムのパイオニアとして
大手駐車場機器メーカーの受託開発からスタート
独自のアイデアと技術で駐車場のIT化を推進
技術力で駐車場利用者をトラブルから救う
開発の基本姿勢はユーザーファースト
ナンバー認証システムによるロックレス駐車場
店舗型駐車場でロックレス駐車場が急増中
QT‐netが提供する多彩なサービス
駐車場事業のA to Z、それ以上を提供


第3章 ネットワークを基盤にしたロックレス駐車場

IT技術を駆使した理想的な駐車場を実現
ロック板に関するトラブルを一気に解消
駐車場運営会社の営業活動にもプラス効果
駐車場納入実績の6割がロックレス
ロックレス駐車場はIT技術の裏付けがあって成り立つ
グローバル・ネットワークシステムを構築
支払い手段の多様化に対応してキャッシュレスを実現
カメラユニットもすべて自社で開発
進化し続けるナンバー認証システム
多様化するQT‐net倶楽部会員向けサービス
業界初のPCIDSS完全準拠の認定取得
駐車場ネットワークで広がる可能性


第4章 創業社長・一ノ瀬啓介の経営理念と人生哲学

機械いじりが好きだった少年時代
大学で電子工学を学び、精工舎に入社
システム部門でネットワークの開発に携わる
「定年のない仕事をしたい」と希望退職に応じる
駐車場設備機器の受託開発から自社ブランドメーカーへ
学究肌で、人を引きつける力の持ち主
自社ブランド第1号を銀行系列の駐車場に納入
納入後のメンテナンスまで責任を持って対応
数値目標ではなく、いかに魅力的な商品をつくるか
人材育成では社員の自発性を尊重
「やればできる」との強い信念が人を動かす
「1%のひらめきと99%の努力」


第5章 アイテックが描く駐車場の未来

コインパーキングの事前予約を実現
ロックレス駐車場の普及でクルマを使った犯罪はなくなる!?
情報の一元化が進み、駐車場の利便性がいちだんと向上
自動運転のクルマが市街地を走る時代に
自動運転で駐車場の利用可能エリアが拡大
一元管理が進む近未来の駐車場


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2017/06/16

『お泊りデイサービスは、なぜ必要なのか』 前書きと目次

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お泊りデイサービスは、なぜ必要なのか
~「樹楽」が提案する、地域に必要とされる介護のカタチ~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-430-3
初版発行:2017年1月21日
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 はじめに

アベノミクスの新3本の矢のひとつに、「安心につながる社会保障」として「介護離職ゼロ」の目標が掲げられている。しかしながら、理想と現実は、あまりにも大きくかけ離れているような気がしてならない。

総務省が5年に1度実施している「就業構造基本調査」の平成24年(2012年)版によると、介護や看護のために離職を余儀なくされている人は年間約10万人にのぼる。やむにやまれぬ事情で、1人で親の介護をすることになって生活が破綻し、介護疲れから精神的に追い詰められて自殺したり、介護者が被介護者を殺害あるいは心中するといった、悲惨な事件もしばしばニュースで報じられる。そうした過酷な介護の現実を前にすると、「介護離職ゼロ」というのは、やはりむなしい響きでしかないように感じる。

政府は、具体的な施策として、介護が必要な高齢者の受け皿として、特別養護老人ホーム(特養)の増設をはじめ、在宅・施設サービスの拡充を図ろうとしているが、特養への入所待機者数は、2014年の時点ですでに全国で52万人を超えているのが実情だ。とりわけ都市部では、数年待ちというのもあたりまえで、それがにわかに解決されるとは思えない。しかも、介護が必要な高齢者は、今後も増え続けるのだ。

介護認定は、要支援1と2、それに要介護1から5までの、全部で7段階に分かれている。特養には、以前は要介護1から入所できたが、2015年の介護保険制度改正で、新規入所については要介護3以上という厳しい条件が設定されることになった。これは、立ち上がりや歩行が自力では難しく、排泄、入浴、着替えなどに介助が必要で、問題行動や理解力の低下なども見られるという、中重度レベルだ。

そうした高齢者を在宅でサポートするには、ヘルパーなどの支援があったとしても、家族の誰かが仕事を辞めて対応せざるをえないケースも出てくるだろう。一人暮らしや老老世帯となれば、要介護1や2であっても、在宅での生活が困難になることもあるはずだ。

介護保険で使えるサービスのなかで、365日24時間サービスが受けられるのは、特養などの施設サービスということになるが、かといって介護問題は、単純に施設を増やせば解決するというものでもない。なぜなら、介護が必要な高齢者本人はもとより、家族も高齢者を施設に入れることには抵抗があり、その多くが、できるだけ住み慣れた地域で暮らし続けたいと望んでいるからだ。

そもそも施設介護を増やすというのは、これまで政府が推進してきた在宅介護の流れと逆行するのではないかとの指摘もある。それに、仮に要介護者全員を施設でのケアに切り替えるとすると、年間約9兆円とも言われる介護保険給付費が倍増するという試算もあり、現在の国の財政状況では、とうてい対応しきれない。

2000年に介護保険制度がスタートして16年が経過したが、その間、高齢者は年々増え続け、総務省の推計によると2016年9月15日現在で3461万人に達している。総人口に占める割合は27・3%となり、実に国民の4人に1人以上が高齢者という超高齢社会を迎えているのである。

それに伴い、要支援・要介護認定者の数も増え続け、2014年度には600万人を超えた。介護保険サービスも、利用者負担を除いた給付費が8兆9005億円にまでふくれあがり、過去最高となった。高齢者の増加は国民医療費を増大させることにもなり、こちらも2014年度には40兆8071億円と過去最高を更新。いまや、わが国の介護保険財政、医療保険財政は、ともに危機に瀕している。

これに追い打ちをかけるのが「2025年問題」だ。2025年には団塊の世代全員が75歳を超え、国民の5人に1人が後期高齢者となる。そうなれば当然、医療や介護の必要性も増すことから、いま以上に財政が逼迫し、現行の社会保障制度の行き詰まりも懸念される。厚生労働省によると、利用者負担を除く介護給付費は、現在の2倍以上の20兆円近くにまで増加すると推計されている。

そこで政府は、介護保険制度の抜本的な改革に着手。介護保険制度は3年ごとに見直しが行われているが、2015年4月には、利用者の負担増や要支援者向けの訪問・通所介護サービスを2017年度までの3年をかけて市区町村事業に移管するなど、これまでにない大幅な改正を実施した。

さらに2018年の改正に向け、介護の必要度が低い要介護1や2の人向けの生活援助についても介護保険サービスからはずして自治体事業へ移行させることや、車椅子や介護ベッドなどの福祉用具レンタル支援などのサービス縮小が検討されてきたが、介護現場の負担を考慮し、生活援助の自治体への移行については、ひとまず見送られる方向となった。

このように介護を取り巻く環境が大きく変わるなか、小規模通所介護(小規模デイサービス)事業を中心に、要介護者の介護と自立のための支援システムを構築し、着実に業績を伸ばしているのが、本書で紹介する株式会社アクロス(本社:大阪府吹田市、代表取締役社長:原田健市氏)である。

なお、2016年4月から、定員18人以下の小規模通所介護は、市区町村が指定を行う介護保険の地域密着型サービスへと移行し、地域密着型通所介護と呼ばれるようになった。地域密着型サービスとは、認知症高齢者や中重度の要介護高齢者が、できるだけ住み慣れた地域での生活を継続できることを目的に、提供されるサービスである。

アクロスが介護事業に進出したのは2009年のことだ。定員10名の地域密着型通所介護、いわゆる小規模デイサービス施設の「樹楽」をフランチャイズで全国展開しており、7年間でその数は100カ所を超えるまでになった。
「樹楽」で注目すべきは、一般民家を利用して、家庭の団らんのような雰囲気をつくり出していることだ。

「人里離れた場所に立つコンクリート造りの施設に、自分の親や祖父母を送り出すのは、家族として忍びがたいものです。それだけに、住み慣れた地域にある一般住宅を利用した施設で、気心の知れたスタッフや近隣の顔見知りの人たちと親しく交わることができるサービスというのは、高齢者本人はもとより、家族にとっても、安心につながるのではないでしょうか」

と、同社社長の原田健市氏は語る。

「樹楽」では、定員10名に対し、法令で定められた人数の2倍以上となる最低4名のスタッフを常時配置し、きめ細かなサービスを提供していることも、特徴のひとつにあげられる。

原田氏がとりわけ強調するのが、「樹楽」では介護を担う家族のニーズに応え、24時間・365日の対応をしていることだ。通所介護は、主に在宅で介護を受けている高齢者が送迎つきで通って、食事や入浴、レクリエーションなどを受けられるサービスをさすが、「樹楽」では、利用者の条件が合えば、そのまま「お泊り」することも可能だ。老老世帯で夫の介護を担っていた妻が病気で入院することになったとか、親戚に不幸があって急遽、家を空けることになったなど、お泊りを利用する理由には、家族の都合や負担軽減など、さまざまなものがある。

こうした「お泊りデイサービス」は介護保険の適用外だが、近年は小規模の通所介護事業所を中心に、このサービスを提供するところが増えている。その背景には介護保険で宿泊できる高齢者施設が慢性的に不足していることがあげられるが、原田氏は、画一的なサービスになりがちな施設介護を増やすことには異を唱える。

お泊りデイサービスについては、東京都や大阪府など、一部の自治体では運営基準が早くから定められていたものの、その多くは介護保険制度外の自主事業ということで、運営方法などは事業者に一任されていた。そのため、利用者の個々のニーズに応じてサービス内容を柔軟に設定する優良事業者がいる一方で、狭いスペースに何人もの高齢者を押し込めて雑魚寝をさせるというような、劣悪な環境で運営する悪質な事業者の存在も明るみに出て、これが社会問題化した。

こうした事態を受けて、厚生労働省は、2015年の介護保険制度改正に伴い、介護報酬の引き下げを行うとともに、通所介護施設での宿泊サービス、すなわちお泊りデイサービスのガイドラインを作成。都道府県等への届け出を義務づけ、人員体制や基準を強化することで最低限の質を担保し、悪質業者の一掃を図ることにしたのである。

結果として、厚生労働省としても、お泊りデイサービスに対し、利用者の一定のニーズがあることは認めているかたちだ。この基準強化により、今後は家族や利用者にとって、なくてはならない介護保険外のサービスとして位置づけられることが期待される。

「日本では2025年から本当の超高齢化時代、大介護時代が始まるのであって、いまはまだ序章にすぎません。人口が減少し、国の財政が緊縮していく状況を考えると、国の介護保険制度だけに頼るのではなく、町会など地方の自治組織のような単位で、介護の必要な方々をケアしていかざるをえなくなるのではないでしょうか。すなわち、たがいに支えあうという『村意識』が必要とされる時代になると思われます。
そうなったときの介護のかたちとしては、地域に密着し、顔見知りどうしが共同で生活するような、小規模なデイサービスがいちばんいいはずです。一般民家を活用し、お泊りも含めて、家族のように接しながら、24時間お世話させていただく。介護サービスの最後の砦として、まさにこれしかないと思うのです」

と、原田氏はお泊りを含む地域密着型通所介護、いわゆる小規模デイサービスの必要性を力強く語る。

「樹楽」の利用者は、平均すると要介護2・7くらいとのことで、医療行為が必要な人や寝たきりの人は断らざるをえないが、認知症の場合は、どんなに重い症状の人でも受け入れる、原則的には「断らない介護」を標榜しているのだという。地域のデイサービスが断ったら施設に入るしかなく、その施設にも入れないとなると行き場を失ってしまう。そうなると、家族の誰かが在宅で世話をする必要に迫られ、介護離職を生じさせることにもなりかねないからだ。

アクロスでは、地域のなかで支えあう介護を実現するためには、将来的には中学校区ごとに1つ、つまり全国に1万2000カ所の、お泊りデイサービスを含む地域密着型通所介護事業所が必要と考え、当面の目標として、2020年までに「樹楽」を、現在の倍の200カ所で展開することをめざしたいとしている。

本書を執筆するにあたり、実際にいくつかの「樹楽」を訪問し、オーナーのみなさんにも取材させていただいたが、それぞれの介護事業への強い信念と熱き情熱とが言葉の端々から感じられた。それに、家庭的な雰囲気のなかで、高齢の利用者たちが穏やかで楽しそうな表情を浮かべていたのが印象的だった。

老いは誰にでも訪れるものであり、いまは介護する側の人も、いずれは介護される側になるかもしれない。そうなったとき、どうすれば住み慣れた地域で安心して最後まで暮らすことができるのか。介護のあり方を国民一人ひとりが真剣に考えておく必要があるのかもしれない。

本書は、一般住宅をベースにした地域密着型通所介護サービスを全国でフランチャイズ展開するアクロスの事業活動、ならびに、フランチャイズに加盟する事業者たちの介護現場を紹介するとともに、アクロス創業社長・原田健市氏の経営理念と介護哲学に迫るものである。

介護を必要とする高齢者や、そのご家族、あるいは介護事業に携わる方々にとって、これからの介護サービスのあり方を考えるうえでの一助となれば、これに勝る喜びはない。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

 2016年12月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第1章 急速に進む高齢化と介護サービスの現状

国民の4人に1人が高齢者という超高齢社会に突入
高齢化の進展に追い打ちをかける「2025年問題」
地域包括ケアシステムの構築に向けて
介護離職や老老介護に見る厳しい現実
入所待ちが50万人以上の特別養護老人ホーム
要介護高齢者の住まいとしての居住系サービス
アベノミクスの新3本の矢が掲げる「介護離職ゼロ」
宿泊を伴う地域密着型サービスの拡充が鍵
お泊りデイサービスの先駆けとも言える「宅老所」
厚生労働省が宿泊サービスのガイドラインを制定


第2章 「誰でも気楽に過ごせるもうひとつの我が家」

24時間・365日対応の小規模デイサービス
個別に柔軟な対応が可能なお泊りデイサービス
個別対応ならではの居心地を提供
施設の判断基準は「自分の家族を預けることができるか」
ニーズがある以上、「断らない介護」を標榜
認知症の特効薬はコミュニケーション
お泊りデイサービスが介護離職の歯止めにも
介護は小規模であるほど満足度が増す


第3章 地域密着型のデイサービス「樹楽」の現場リポート

独自色が鮮明に打ち出された各地の「樹楽」
言葉がやさしく交差する場をつくる
  介護という「インフラ」に参画して地域に貢献
  幸せの原点はコミュニケーションにあり
  お泊りデイサービスでは安全性を最優先
  スタッフの成長をも後押し
  介護事業の王道は、よいサービスを提供すること
常識破りの「喜怒哀楽介護」を実践
  自分から行きたくなるような楽しいデイサービスを
  お客様扱いせず、家族のように接する
  要介護5が半年で要介護1に
  地域密着型サービスへの移行を機に「樹楽 団らんの家 五浦」を開業
地域のなかで必要とされることが生きがいに
  最初は単にビジネスとして介護事業に着目
  介護に懸ける覚悟で事業をリセット
  お泊りデイサービスにこそ、やりがいを感じる


第4章 高齢者介護の新地平を開く「樹楽」のフランチャイズ制度

介護施設らしからぬ光景に感動
超高齢社会を救うお泊りデイサービスの充実
開業には初期投資1000万円+運転資金が必要
営業では「樹楽」のよさや必要性をアピール
感謝される事業であることを伝える
付かず離れずの関係でオーナーをサポート
合理的な手順を踏む開業までの道筋
開業への申請書類の作成を代行
開業後も本部がオーナーやスタッフを手厚く支援
介護事業に求められるコンプライアンスの徹底
現場での万が一の事故に備える
介護事業こそフランチャイズ化すべきとの想いを強める


第5章 アクロスが描く福祉事業の近未来図

いまこそ求められる「村意識」の復活
日常生活動作の向上を図る「フィット&デイ」
「樹楽」を高齢者介護サービスのトータルブランドへ
障がい児を支援する「放課後等デイサービス」
2025年に向け、高まる介護人材ニーズ
家族のように寄り添い、看取るまでが、本当の介護
快適空間の提供により社会に一灯を燈す
株式上場を中止、捲土重来を期す
お泊りデイサービス1万2000カ所体制の実現に向けて


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『医学部受験 富士学院の軌跡と奇跡』 前書きと目次

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医学部受験 富士学院の軌跡と奇跡
 ~選抜制をとらずに生み出す圧倒的な合格力の秘密~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1600円+税
ISBN978-4-87218-429-7
初版発行:2017年1月15日
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 はじめに

2014年12月31日現在における日本の医師数は31万1205人。2年に1度行われている厚生労働省の調査によれば、初めて医師数が30万人を超えた2012年の調査から7937人増え、2・6%増加したことになる。

31万1205人というこの数は、多いのだろうか、それとも少ないのだろうか。

経済協力開発機構(OECD)の「Health Statistics 2015」によると、人口1000人あたりの医師数は、OECD加盟国35カ国の単純平均で3・2人。これに対し日本は、「平成26年医師・歯科医師・薬剤師調査」によると2・4人である。ヨーロッパ先進国はおおむね3人~4人程度であり、ここ数年、医療保険制度の問題が話題となっているアメリカでも2・6人であることを考えると、国際的に見て日本の医師の数は十分とは言えないことは明らかである。

それでいて、日本では過剰診療が指摘されている。1人の患者が医師の診察を受ける回数はOECD加盟国のなかで最多であり、主要国の1・5倍~3倍に及ぶ。これは、日本の医療制度が医療行為ごとに医師の報酬が増える出来高払い制のため、医師が患者に何度も受診するよう促していることが原因ではないかと、OECD側は指摘している。

また、病床数と医師数の対比を見ても、医師不足ははっきりしている。先のOECDの調査をもとに100床あたりの医師数を比較すると、アメリカは85・2人(2012年)、イギリスは100・5人(2013年)、フランスは49・0人(2013年)なのに対し、日本はわずか13・4人(2014年)と、極端に少ない。これでは医療現場において医師不足の声が高まるのは当然だ。

経済大国であり、先進的な医療体制も整っている日本で、なぜ医師不足が生じているのか。その原因のひとつは、いまから34年前の1982年に施行された医療政策にある。

1982年7月、臨時行政調査会は、その答申のなかで「医師については、過剰を招かないよう合理的な医師養成計画を樹立する」と提言し、この答申を受けて政府は、医学部の新設を厳しく規制し、定員の増加も抑制したのだ。

だが、ここにきて、医師不足に起因する地域医療の崩壊が現実のものとなってきたため、政府は政策を転換し、医学部の新設と定員の増加を認めた。その結果、2016年には37年ぶりに、東北医科薬科大学において医学部が新設された。

しかし、定員数が増えたとはいえ、あくまでも微増にすぎず、近年増加する志願者数を考えれば、医学部入試が難関であることには変わりない。

こうした難関を突破するために、独自の教育を実施し、多数の合格者を輩出しているのが、本書で紹介する富士学院(本部:福岡県福岡市博多区、学院長:坂本友寛氏)である。

富士学院の特徴は、次の3つだ。

①生徒一人ひとりと本気で向きあう。
②プロの講師陣と担任講師、担当職員がチームを編成し、連携して指導を行う。
③生徒に元気と勇気を与える生徒面談と面接指導を重視している。

「大手予備校では、大人数に対しての集団授業が行われ、また、最近では全国の校舎をネットワークで結んだ映像授業が話題を集めています。でも、生徒がつまずいている問題は、誰もが同じではありません。ですから富士学院では、生徒一人ひとりの問題に適切かつ丁寧に対応するために、少人数制クラスと個人指導を重視しているのです」

と、学院長の坂本友寛氏は言う。

また、富士学院では、生徒たちが、医師になってからどんな人間になり、どのような医療を施すかを見定めて、教育することをモットーとしている。これは、「人の生命と健康を預かる医師を育成するには、人間教育をおろそかにすることは絶対にできない」という坂本氏の信念によるものだ。

実際、日本の医療は世界的に見て高いレベルを誇っているにもかかわらず、患者の満足度は低いと言われる。その原因は、コミュニケーション能力に欠ける医師が少なからずいるせいではないだろうか。

最近では電子カルテが普及したこともあり、パソコンの画面だけを見て、患者の顔もろくに見ない医師が増えている。私自身、診察時に症状を説明する私の目を見ようともしない医師にあたってしまったことが何度かあるが、やはり気分のよいものではない。

患者にとっては、診察や手術のスキルの高さはもちろん大切だが、自分の生命と健康を預ける相手が人として信頼できるかどうかも医師選びの重要なファクターになることを、日本の医療業界はもっと自覚すべきではないだろうか。富士学院が人間教育に力を入れているのも、「よい医師」には医療的なスキル以外にも欠かせないものがあるということが、わかっているからだろう。

富士学院の創立は1995年。九州に開校した福岡校が第1号である。その後、岡山校、名古屋校、鹿児島校を次々と開設し、2016年には小倉校と、関東エリアにも進出して東京校を開設。全部で6校体制となった。

創立以来、21年のあいだに毎年合格者を増やしながら、これまでに1112人の合格者を輩出。2016年の合格者だけでも160人にのぼる。

富士学院の授業には、「富士ゼミ」「個人指導」「期間限定講習」の3コースがある。

「富士ゼミ」は、高卒生を対象に、年間を通じて受験指導を行うコース。「個人指導」は、生徒と講師が1対1で向きあい、完全なマンツーマンで指導を行うコース。「期間限定講習」は、学校などの長期休みを利用した夏期・冬期の講習と、推薦入試や一般入試の直前対策などを行うコースである。

授業の主な特徴は、次の3つだ。

①21年間で培ってきた多種多様なノウハウの投入。
②医学部受験に精通した精鋭の講師陣を配置。
③豊富な情報量と、その情報を最大限に活かす学習環境の整備。

「医学部受験は年々、難度が上がっています。大学によって出題の傾向や合否の判断基準は異なりますが、場合によっては、たった1問の正誤が合否の分かれ目になることもあるのです。できるだけ早く志望大学を決めて、適切な対策を講じることが肝要です」

と、坂本氏は言う。

さらに言うならば、予備校の選択が医学部合格の成否を分ける大きな要因のひとつとなることも間違いない。

本書は、医学部合格の確度を高めながら、同時に人間教育にも力を入れ、さらには予備校業界の意識刷新にも取り組む富士学院の活動を紹介するとともに、学院長である坂本友寛氏の今日までの歩みをたどり、その教育理念や経営哲学に迫るものである。

いま、医療業界に突きつけられている「医師不足の解消」と「医療格差の是正」という難題は、超高齢社会に突入した日本において喫緊の課題だ。それだけに、本書は医学部入試をめざす受験生およびその家族はもとより、これからの日本の医療のあり方に関心を持つ多くの一般読者にとっても、貴重な指針の書となるはずだ。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

 2016年11月     鶴蒔靖夫


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はじめに


第1章 医師の不足・偏在に悩まされる医療現場

医師も患者も嘆く「医師不足」の現実
他国と比べて際立って多い日本の診療回数
「地域」と「診療科目」、2つの偏在
医師不足に反論を唱える「医師過剰論」
医師会と厚生労働省が医師教育の方針を転換するまで
地方自治体も医師の養成と確保に注力


第2章 医学部受験の現状

37年ぶりに医学部が新設された
定員増後も依然として高い倍率を示す医学部入試
国公立と私立、大学ごとに異なる入試形態
人間力が問われる? 医学部入試に欠かせない面接試験対策
医学部合格は単なるスタート地点にすぎないと心得よ
志望校の選択や予備校選びも合格のための重要戦略


第3章 「成長」「感謝」「信頼」「貢献」を理念に医学部合格をサポート

生徒を食いものにする予備校には行くな!
年々合格者数をアップさせている富士学院
医学部受験を勝ちぬくために大切なポイントとは何か
プロ講師、担任、職員がチームで連携して、合格までバックアップ
変わりゆく医学部受験に対応すべく、面接指導にも注力
理想の学習環境を持つ富士学院とは、どんな予備校なのか


第4章 医学部合格のための万全の指導体制

各コースに共通した富士学院独自の指導方針
高卒生対象の「富士ゼミ」は科目別・学力別の少人数制
いつでも、1科目からでも学べる「個人指導」
医学部受験者の多様なニーズに応える「期間限定講習」
推薦入試にも精通した講師陣で対策も万全
医学部に合格した生徒たちの喜びの声
生徒を支える職員と講師陣の熱い想い


第5章 学院長・坂本友寛の教育理念と経営哲学

前学院長から受け継いだ教育への想い
教育とは「教え、育む」こと
「良医」の育成を学院の指導方針に掲げる
真の人材教育を推進していくことで、予備校業界の意識改革を促進
「生徒の為に出来うることを全力で」をモットーに
富士学院の存在を「公益」ではなく「公共」に


第6章 世界を舞台に活躍する良医の育成をめざして

9年後に迫った「2025年問題」
日本の医学教育はガラパゴス状態から脱却せよ
OB会とともに医療業界全体の発展をサポート
世界で活躍する良医を輩出するために
先陣を切って教育業界にメスを入れろ!
「教え、育む」指導で日本の医療業界の未来を拓く


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