『アビストの挑戦』 前書きと目次
アビストの挑戦
~日本モノづくりを支える設計技術者集団~
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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-407-5
初版発行:2015年4月21日
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はじめに
近年、製造業を中心に派遣社員の雇用はすでに定着し、雇用形態は完全に変わったといっていいだろう。アウトソーシングなくして現場は動かなくなっている。
終身雇用・年功序列の日本型経営はもはや消滅し、少子高齢社会となり労働人口がますます低下するなかで、若い人の働き方、働く意識にも大きな変化がみられる。派遣業務を肯定する声も多く、かつてのようなマイナーな姿勢に様変わりがみられる昨今だ。
詳細は本文に譲るが、ひと口に派遣といっても、一般労働者派遣、特定労働者派遣の二通りがある。通常、前者の派遣労働者は、製造業などで不足する人員の補充や製造現場での人手として雇われるケースが一般的だ。仕事としては時期、需要などにより流動性の高い分野である。それに対し後者の特定労働者派遣は技術者中心の派遣であり、専門特化した技術を有する技術者が派遣労働者として、メーカーの要請により常駐型または受託型請負で仕事を任される、いわばアウトソーシングの性質をもったものだ。
本書で紹介する「株式会社アビスト」(本社・東京都中野区、代表取締役社長・進勝博氏)は、特定労働者派遣の会社であり、その特徴は「モノづくりの開発パートナー」として設計・開発に特化した技術者集団という点にある。おそらくいま、日本において設計・開発の専門技術者集団として事業展開するトップクラスだろう。社員の実に九三%が設計技術者という気鋭のプロフェッショナル集団である。なお、設計技術者の九一%が機械系であり、残りが情報系となる。
製造分野のアウトソーシングで、これだけの設計技術者を擁しているのは、類似業者のなかでも例をみないユニークな会社である。
自動車、電気機器、一般機械などのデザイン設計・製品開発に注力。その他、情報システムの設計・開発も手がけるが、自動車関連で七割近い売上構成比を示す。
得意分野はランプ、アウトボディ(外装)、内装など、自動車を特徴づけるデザイン部分の設計。三万部品からなるといわれる自動車製造において、アビストが得意とする3D‐CAD技術は不可欠であり、アビストならではの訴求力がこの企業のユニークさを浮き彫りにする。
平成二十五年十二月には、東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)に上場。さらに二十六年九月、東京証券取引所市場第二部へ市場変更している。そして二十七年三月にはいよいよ東証一部へと、一気に駆け上がった。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだ。
このところ自動車業界は、トヨタの水素自動車、米国ベンチャーの3Dプリントによる自動車製造など話題にこと欠かないが、アビストでは将来を見据え、すでに3D出力事業にも着手、3D‐CAD設計+3D造型の新しい地平を模索している。
ハイテク機器を駆使する設計プロ集団ながら、アビストは経営課題「信頼の和の六輪づくり」(詳細は本文参照)を標榜、アナログともいえる人材教育・育成に力を入れている。
この点について進氏は、次のように話している。
「機械設計は、誰がやっても同じ結果をはじき出します。大事なのはデザイン〝思想〟であり、開発〝思考〟という独創的な創造性にあるのです。また、クライアントとの信頼関係で仕事が成り立つわけですから、あくまで〝人〟が主体なのです」
アビストは平成二十五年三月、新しい分野への挑戦として水素水事業のメーカー「株式会社アビストH&F」(代表取締役社長・進顕氏)を設立し、未来志向の水素水で事業分野の拡張を図っている。この発想・展開のユニークさが、アビストという企業の特徴を現している。
本文の執筆にあたり、水素水研究の権威である日本医科大学教授の太田成男先生にご助言いただいたことを、この場を借りて御礼申し上げる。
なお、本文中は一部敬称を略させていただいたこと、あらかじめお断わりしておく。
平成二十七年 三月 鶴蒔靖夫
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はじめに
第一章 日本の製造業を支えるアウトソーシング ―日本の雇用・就業形態が変わった
不況とグローバル化で雇用は変化
労働市場の構造変化と需給の調整
派遣雇用の現状と改正法案の行方
必要なのは人手ではなく人材
雇用の流動化は必要不可欠な要素
製造業を支えるアウトソーシング
引く手あまたの技術系派遣労働者
プロフェッショナルに徹すべき
第二章 モノづくりの設計技術者集団「アビスト」 ―3D‐CADを駆使するプロ集団の素顔
モノづくりの開発パートナー
信頼関係を積み重ね信用を得る
3D‐CADで自動車の設計に携わる
自動車産業に向く最適なツール
3Dプリンターで自動車を製造?
3D技術で変貌した自動車の生産
第三章 コア領域への特化と人材育成が強み ―プロフェッショナルな設計技術者集団の条件
パートナーとしての協働が重要
信条と事業の目的を明文化する
負荷を撥ね返す健康で元気な人
人の言葉を聞く耳が素直・誠実
仕事の苦労から学ぶ忍耐・辛抱
信頼×信頼=信用で強靭な組織
プラス思考タイプが長続きする
三年間の忍耐・辛抱が示す意味
自動車づくりのコア領域に特化
人材強化が組織のキーポイント
技術者の成長をバックアップ
第四章 次の時代を開拓するアビストH&Fの「浸みわたる水素水」
なぜ、いま水素水なのか
おいしくて身体にいい水を求めて
「浸みわたる水素水」誕生前夜
水素水についての理解を深める
正しい水素水を消費者に届ける
「浸みわたる水素水」の訴求点
水素水事業について思うところ
オートメーション化で品質管理
世界をターゲットにできる商材
第五章 アビストの経営理念とビジネス哲学「信頼の和の六輪づくり」に迫る
基本となる「経営十ヶ条」精神
常に「創業の精神」に立ち返る
自修自得・自律自省の求道
空手で鍛えた精神と肉体の賜物
普通なら現役引退の年齢に
常識にとらわれない柔軟な思考法
全体適正のためのチームワーク
時代は変わっても原資は〝人〟
第六章 日本のモノづくりとアビストの未来
設計をアウトソースする近未来
グローバルと国内回帰との関係
常に試行錯誤するのが成長の糧
責任感が組織の力を高める要素
コラボレーション的な連携強化
ますます信頼の和(輪)づくり
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