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2017/06/19

『WASHハウスの挑戦』 前書きと目次

435_washhouse


WASHハウスの挑戦
 ~コインランドリーのデファクトスタンダードへの道~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-435-8
初版発行:2017年6月30日
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 はじめに

昨今、郊外を中心に、コインランドリーの看板をよく目にするようになった。しかも、従来の「暗い」「汚い」「怖い」といった3Kのイメージとは打って変わり、明るく、清潔そうで、全体的に大型の店舗が増えてきている。利用者も、かつては学生や独身者が中心だったが、いまでは主婦層へとシフトし、従来とは異なるかたちでブームを迎えつつあるようだ。

わが国に初めてコインランドリーが登場したのは1960年代なかばのことだ。銭湯などに隣接して設置されるケースが多く、学生などの洗濯機を持たない層を中心に需要が伸び、急速に普及した。

1980年代には、女性の社会進出や共働き世帯の増加により「家事時間をできるだけ短縮したい」人が増え、そうした人たちのあいだで「まとめ洗い」のためのコインランドリー需要が広がった。

そして2000年前後からは、花粉症をはじめとするアレルギー疾患対策として「外に洗濯物を干したくない」という層が増えたことから、乾燥機が使えるコインランドリーが注目され始めた。さらに近年は、PM2・5(微小粒子状物質)などの影響もあって、利用率が高まってきている。

その間に、単身者用に設置されていた従来型のコインランドリーに代わって、洗濯機、乾燥機ともに容量の大きい機械を設置し、台数も多い、大型の店舗が増えてきた。

いまでは家に洗濯機があるのはあたりまえで、乾燥機能つきの家庭用洗濯機も珍しくない時代だが、それでもコインランドリーを利用したくなるのは、家庭用にはない便利で優れた機能があるからだろう。

1週間分の洗濯物も一度に洗えるほどの大型洗濯機と乾燥機は、時間を効率的に使いたい人にとっては非常に便利だ。しかも、天候に左右されず、特に雨の日などは、部屋干しによって生じる雑菌を防ぐ意味でも大型乾燥機は強い味方となる。

さらに、健康志向や清潔志向の増進から、布団や毛布、カーテンなどを定期的に洗いたいという声も多く、そうした大きなものも、コインランドリーなら簡単に洗えるうえ、しっかり乾燥させられる。一般的に、シーツや布団カバーは定期的に洗濯しても、布団を洗濯機で洗うという発想は、これまではあまりなかったのではないだろうか。

しかも、最近のコインランドリーでは、布団などを丸ごと洗える大型機だけでなく、手洗いが煩わしいスニーカー専用の洗濯機などもある。いまやコインランドリーの設備は、学生や単身世代を対象としていたころとは比べものにならないほどの大きな進化を遂げているのだ。

厚生労働省の調査によると、コインランドリーの需要が高まるにつれ、店舗数も毎年500店舗を超えるペースで増え、2013年度には1万6693店舗に達している(厚生労働省「 コインオペレーションクリーニング営業施設の衛生実態調査」)。しかし、コインランドリーは個人経営の店舗が多いということもあって、顧客サービスやコンプライアンスに関する意識が低い経営者が存在することも否めず、依然として違法なコインランドリーがまかりとおっているのが実情だ。

これは、コインランドリー業界がまだ未成熟であり、業界を取り巻く法的環境がきちんと整備されていないからにほかならない。現状では、コインランドリーの店舗運営に関して明確な基準というものがなく、業界として早急に解決すべき多くの課題を抱えていることも事実だ。

そんななか、法人としてコインランドリー事業にいち早く参入し、「安心・安全・清潔」を追求した店舗運営のための独自のビジネスモデルを構築して着実な成長を遂げているのが、本書で紹介するWASHハウス株式会社(本社:宮崎県宮崎市、代表取締役社長:児玉康孝氏)である。

WASHハウスでは、コインランドリー事業にフランチャイズ(FC)システムを導入している。現在、九州を中心に、東京以西にFC店舗と直営店舗の合計で計410店舗(2017年3月末現在)を展開しているWASHハウスは、2016年12月期の売上高は31億1800万円で前年同期比52・1%増と、飛躍的な伸びを見せている。

WASHハウスの最大の特徴は、IoT(Internet of Things。さまざまなものをインターネットに接続し、情報交換をすることで相互に制御するしくみ)を活用した独自の店舗管理システムにある。

そのシステムとは、管理カメラで店舗を24時間管理し、洗濯機や乾燥機などの機械に万一トラブルが生じた場合は本社から遠隔操作で対応できるというものだ。音声システムを導入した24時間対応のコールセンターも設置してあり、トラブルがあった場合にはオペレーターが利用者に音声で対応している。

「無人店舗でありながら、店舗にスタッフがいるかのごとく、お客様に対しリアルタイムのサポートができる状況を、すべての店舗に提供しています」

と、同社社長の児玉康孝氏は胸を張る。

無人店舗とはいえ、各店舗には2名程度の清掃スタッフが在籍し、店舗内の清掃のほか、乾燥機のフィルター清掃や洗濯機の消毒などを毎日行う。また、売上管理や清掃スタッフの労務管理、在庫管理などは、IoTを活用した一括集中管理システムですべてが行えるようになっている。

WASHハウスがコインランドリー事業で躍進を遂げてきたもうひとつの要因は、フランチャイズ(FC)展開の成功にある。

自己資金による出店は減価償却費が大きくなりやすいとの判断から、WASHハウスではFCという業態を選択している。

しかし、従来のFCシステムには、本部と加盟店の対立など、さまざまな問題が指摘されていた。そこでWASHハウスでは、まったく新しいFCシステムを構築したのである。

それは、店舗の運営管理やマーケティング、広告宣伝など、すべての業務を、加盟店のオーナーに代わって本社が一括して行うというもので、出店する場所も、マーケティングにもとづき、確実な売り上げが見込める場所を本社が選定する。つまり、いわゆるFC事業というよりも、アパートやマンション経営などの不動産投資に近いかたちに、コインランドリーのFC事業を置き換えたというわけだ。

「オーナー様には最初の出店費用をお支払いいただくだけで、あとは何もしなくても毎月の売り上げがオーナー様に入るというしくみです。おかげさまで、売上不振による閉店はこれまで1店もなく、訴訟もゼロです」

と、児玉氏は絶対的な自信をのぞかせる。

それもそのはずで、店舗運営の一括集中管理システムや新しいFCのしくみなど、WASHハウス独自のシステムの構築には、児玉氏自身が他業種で培ってきた経験が活かされているからだ。

WASHハウスの創業社長である児玉康孝氏は、大学を卒業後、東京の証券会社や大手ファストフード企業を経て、30歳で宮崎に帰郷し、地元の不動産会社に勤務した。その後、2001年11月に36歳で、WASHハウスの前身である株式会社ケーディーエムを設立している。それまでに転職を重ねたのは、もともと独立志向が強かった児玉氏は「いずれは起業したい」と考えており、そのために、それぞれの会社で金融やマーケティング、店舗運営、不動産について学びたかったからだ。

当初は不動産仲介業として起業したが、「少子高齢化、人口減少時代を迎えても成長が望める」として、コインランドリー事業の将来性に着目した。大手企業がまだ参入していなかったことをビジネスチャンスととらえた児玉氏は、迷わずこの事業への転身を決意し、2002年12月には早くも宮崎市に2店舗を同時オープンして、コインランドリー事業をスタートさせた。

2005年に現在のWASHハウスへと社名を変更し、宮崎、福岡、大分、熊本など九州一円から中国地方へと出店エリアを拡大。近年は、大阪や東京への進出も果たしている。

WASHハウスの店舗は、どこも赤と白を基調としたデザインで統一され、すべての店舗が同じシステムを使って運営されているため、サービスの質も均一になっている。WASHハウスは、単なるコインランドリー事業者ではなく、実はシステムを使ってサービスを提供する会社なのだ。

事業開始から15年。児玉氏は当初から、「100店舗を損益分岐の目安とし、300店舗を超えるあたりから非常に効率よく店舗を管理できるようになり、上場も視野に入ってくる」というストーリーを描いていた。実際、100店舗を超えたあたりから事業は軌道に乗り、近年は、売上高、経常利益ともに、大幅な伸びを見せているばかりか、2016年11月にはコインランドリー業界で初めて、東証マザーズと福証Q‐Boardへの上場を果たしている。

児玉氏は常々「コインランドリー業界のデファクトスタンダードの創造」を口にしてきたが、業界唯一の上場企業として、その思いをいっそう強くしている。

今後、さらなる高みをめざすWASHハウスは、店舗展開も国内にとどまらず、コインランドリーの本場であるアメリカや、東南アジアへ進出する構想もある。

事業の立ち上げ当初から理想としてきたのは「財閥系企業スタイル」であり、将来的には入り口から出口まですべてを自社グループで行うべく、原材料や機械の各店舗への自社供給を可能にする「製造・生産・流通ビジネス」への進化も視野に入れている。

本書は、いまだ問題が山積するコインランドリー業界の現状を踏まえつつ、消費者目線に立った安心・安全・清潔なコインランドリーサービスを追求するWASHハウスの事業活動を紹介するとともに、創業社長・児玉康孝氏の経営理念とビジネス哲学に迫るものである。コインランドリーのオーナーとして事業を検討されている方々や、清潔で快適な生活を望む一般消費者の方々が、現代社会で真に必要とされるコインランドリーのあり方を考えるうえでの一助となれば、これに勝る喜びはない。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

 2017年5月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第1章 成長するコインランドリー業界の光と影

メインユーザーは単身者から主婦層へ
アレルギー対策として需要が高まる
オーナーにとっては人件費削減と現金収入が魅力
法的環境が未整備のため違法営業も野放しに
「洗濯代行サービス」は違法
女性客を意識した店舗デザインや多彩なサービス
既存施設との併設型やジョイント型も
コインランドリー事業にもITやIoTの波
FCといってもオーナーの個人運営が多いのが実情


第2章 コインランドリー事業の常識を変えたWASHハウス

なぜ、コインランドリー事業なのか
まったく新しいFCのしくみを構築
商圏分析にもとづき売り上げがあがる場所に出店
IoT活用の一括集中管理システム
WASHハウスの成長を支える3つの事業
成長の源泉はストック型の収益構造にあり
積極的なメディア戦略が功を奏す
災害時の社会インフラとして地域に貢献
東証マザーズおよび福証Q‐Boardへの株式上場を果たす
宮崎では数少ない上場企業に


第3章 女性目線に立って「安心・安全・清潔」を追求

「暗い」「汚い」「怖い」の3Kイメージを払拭
あえて居心地の悪い空間を演出
トラブルにもリアルタイムで対応
利用者は機械の性能を知っておくことも大事
洗濯の基本性能に関わる質へのこだわり
徹底した衛生管理とメンテナンス
布団を洗う文化の創造をめざす
スニーカー専用洗濯機や、しみ抜きコーナーも


第4章 拡大するWASHハウスのFCネットワーク

トラブルなしのFCシステムで急成長
オーナーにとっては投資に近いFCシステム
実データにもとづいたマーケティング
初進出のエリアは直営店舗でデータ収集
現場の開発力が勝負の鍵を握る
妥協のない開発姿勢がオーナーの支持を集める
コンビニエンスストアを上まわる数の店舗展開も


第5章 創業社長・児玉康孝の経営理念とビジネス哲学

資本主義社会は株と不動産がベース
ストーリーをつくれ
ファストフード店の現場で人を動かすしくみを学ぶ
不動産会社勤務を経て独立、社員4名でスタート
まったくゼロからつくりあげた事業のしくみ
全国コインランドリー管理業協会を設立
100店舗を達成し、創立7年で黒字転換
自分にあえてルールを課す
経営姿勢においても、ぶれないことを徹底
経営者の考え方がツールになる
デファクトスタンダードの創造
理想とするのは財閥系企業スタイル


第6章 WASHハウスが描く未来展望

東証1部への市場変更も視野に
内製化により収益機会の拡大を図る
コインランドリーの無料化に向けて
会社のさらなる発展は人材の確保と育成が鍵
次世代クラウドランドリーシステムの共同開発
生活の根幹に関わる部分へのこだわり
コインランドリー先進国アメリカ
WASHハウスがグローバルブランドに


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