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2017/12/11

『人と技術をつなぐ企業』 前書きと目次

Humantechweb


人と技術をつなぐ企業
~知と情熱で世界に挑むA&D~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-390-0
初版発行:2013年11月28日




 はじめに


「ものづくり日本」

高い技術力、たゆまぬ創意工夫に裏づけられた「メイド・イン・ジャパン」のすぐれた品質は、世界市場で絶大な信頼を得た。だが、近年では台湾や韓国、中国をはじめとした新興国メーカーの台頭により、苦戦を強いられている。その大きな要因となっているのが、長引くデフレと行きすぎた円高である。

こうした状況を打破し、デフレと円高からの脱却、名目GDP三%の経済成長の達成を実現するため、自民党・安倍首相は大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の三つの基本方針、いわゆる「三本の矢」を打ち出した。

これにより、昨年末からは、日本のメーカーを苦しめてきた円高傾向にようやく歯止めがかかり、家電や自動車をはじめ各種産業用製品、日用品業界なども次第に活気づいてきた。

「ものづくり日本」の特徴は、伝統技術と先端技術を巧みに融合させることにある。こうした日本のものづくりの精神と高い技術力、独自の経営戦略によって、創業以来、堅実に成長している企業がある。それが本書で紹介する株式会社エー・アンド・デイ(略称:A&D、本社:東京都豊島区、代表取締役社長:古川陽ひかる氏)である。

同社の設立は昭和五十二(一九七七)年五月。以来、同社は電子計測器の開発、製造、販売を行う計測・計量機器のメーカーとして、一貫して「計る」「測る」「量る」にこだわってきた。

「アナログ技術とデジタル技術の融合をはかり、そのうえで低価格を実現することを経営戦略にしています」と同社社長・古川陽氏はいう。

同社では、アナログとデジタルの変換技術を原点に、計測・制御技術を駆使したツールの提供によって、顧客による新しい価値の創出を支援し、産業の発展と健康な生活に貢献することを使命とすると経営理念に掲げている。

この経営理念にあるように、同社の基幹技術はアナログ・デジタル変換技術である。社名の「A&D」は、まさしくこのアナログ・デジタルに由来しており、「高精度・超高速のアナログ・デジタル変換技術」をコア技術として多種多様な電子計測・計量機器の開発・販売を手がけてきた。

売上高のおよそ一〇%を研究開発費として計上している研究開発型企業である同社では、「“本物”にこだわり、自ら設けた課題に挑み、あきらめずにやり抜くこと」を信条としている。

同社の事業は大きく分けて、①計測・制御・シミュレーションシステム、②電子銃A/D・D/A変換器、③計測機器、④計量機器、⑤医療・健康機器の五つの分野から成り立っている。特に、計量機器のなかで「電子天てん秤びん」では国内市場の六〇%を占めるトップ企業で、デジタル血圧計でも世界第二位と確固たる実績をあげている。

現在、もっとも力を注いでいるのは自動車産業向けの試験・計測システムである。「世界市場での巻き返しをはかる自動車メーカーは、開発スピードを速めるとともに開発コストの削減、さらには環境問題への対応なども迫られています。当社は、自動車メーカーが求める新しいアプローチを製品のかたちで提供しています」と古川氏はその意図を語る。

創業以来、独自技術の研究・開発に邁進してきたA&Dは、取引先はもとより各方面から高い評価を得て、当初一四人の社員ではじめた会社が、いまでは三〇〇〇人を超す規模に成長。売上高もバブル崩壊後に一時低迷したものの、その後は長引く不況にもかかわらず堅実に推移している。「今後も自動車産業をはじめとした各ユーザーと協力しながら、最適なソリューションを追求し、産業界の発展に貢献したい」と古川氏は抱負を述べる。

リーダー不在とされる昨今、古川氏の経営者としての姿勢は、かくあるべき経営者像としてむしろ新鮮に映る。まだまだ日本も捨てたものではない――そう思わせてくれる経営者に出会えたことをうれしく感じる。

本書は、伝統の技術と最先端の技術を独自の思想で融合し、他社の追随を許さない技術の確立によって、日本の、さらには世界の計測・計量市場をリードするA&Dの事業活動を紹介するとともに、創業社長・古川陽氏の経営理念とビジネス哲学に迫るものである。現在、製造業に身を置き、研究・開発に身を置く技術者のみならず、「ものづくり日本」の将来に思いを馳せる多くの一般読者にとっても貴重な指針となるであろう。

なお、本文中の敬称を略させていただいたことをあらかじめお断りしておく。

平成二十五年九月   鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 “ものづくり日本”の復活に向けて

生活はすべて“はかる”にもとづく
ものづくりの基本“はかる”技術
新興国の躍進で停滞する日本経済
技術とマネジメントの両立が必須
欧米をモデルにした戦後の製造業
“技術立国・日本”の光と影
技術力を生かした新分野開拓の道
“ものづくり日本”復活で活路


第2章 多角的に“はかる”を追求する企業

活性化に必須“はかる”技術力
「計る」「測る」「量る」をガイド
時代を超えて成長する伸び代
創業以来“はかる”にこだわる
基幹技術はA/D相互変換の技
職人技とデジタルの融合で低価格を実現
電子天秤市場でシェア六〇%
研究開発型のグローバル企業
電子応用測定器の頂点をめざす


第3章 開発・生産システムの工程を合理化

合理的“ロジック”で組織固め
基盤技術の確立で広がる事業領域
多角化とシナジー効果追求の差
製品企画の原点とは何かを追求
ロケットスタートだった創業期
変換器と電子天秤で基礎を固める
開発・生産システムの合理化
商戦を戦い抜くための力を蓄積
競争ではなく共闘で業界に貢献


第4章 計測システム需要とメディカル分野の伸び代

すべてを関連づけて思索する社風
重要な技術を外に出さずに蓄積
ロードセルへの参入で業容拡大
最初から積極的だった海外進出
国内外の市場の違いと需要喚起
エンジニアリングの眼力と思考
開発の目、営業の目は表裏一体
汎用性でボリュームゾーン変化
伸び代に期待できるメディカルとヘルスケア分野
苦闘、ルビコン川を渡れ?


第5章 創業社長・古川陽の経営理念とビジネス哲学

“犬棒マーケット”論
“運のよさ”の背景にあるもの
逃げない、ぶれない、あきらめない
弱者・強者の戦略の違い明確に
勝負強さ株式上場の“時の運”
“人の和”を尊重しつつ先読み
ロジカルでいて浪花節的な心情
組織はトップ以上にはならない
A&Dがこだわる“本物”とは何か
産業論・技術文化論からの展望


第6章 DSP技術が新しい沃野開拓のツール

技術者の衰退による技術の消滅
トヨタからの打診でDSP事業が本格化
自動車業界向け計測システムDSP
新しい沃野を開拓するDSP
海外企業に飲み込まれない
幹を太らせ枝葉を繁らせる戦略
ホーム・ヘルスケア分野で大手と協業する新戦略
夢は果てしなく――地球と宇宙探査へ
後継者を育成し次代へ継承する――企業風土としての“はっちゃき”精神
近い将来に一〇〇〇億円をめざす?

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