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2017/12/11

『理想の介護を求めて』 前書きと目次

Risoukaigoweb


理想の介護を求めて
~地域と介護を結ぶエフビー介護サービスの挑戦~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-393-1
初版発行:2014年2月28日




 はじめに


認知症の介護問題をいち早く取り上げた、有吉佐和子氏の長編小説『恍惚の人』(新潮社)が出版されたのは、昭和四十七(一九七二)年のこと。まだ痴ち呆ほう症と呼ばれていたころだが、社会的にも大きな反響を呼び、当時一四〇万部を売り上げる大ベストセラーとなり、翌昭和四十八年には森繁久彌氏が主演で映画化(監督:豊田四郎氏)もされている。

嫁を中心に自宅で介護に忙殺される家族の姿が描かれているが、多くの人が当時はまだどこか他人事で、介護問題が自分の身に降りかかってくるとは思わず、まして自分が介護される側になるなどとは思っていなかったのではないだろうか。

あれから四十年。当時は若手だった二十代、三十代も続々と高齢者の仲間入りをし、総務省の発表によると、六十五歳以上の高齢者人口は、平成二十四年には過去最高の三〇七九万人に達している。これは総人口の二四・一%にのぼり、国民の四人に一人が高齢者という超高齢社会を迎えているのである。

しかも六十五歳以上の高齢者のうち、認知症の人は推計で一五%いるといわれており、平成二十四年時点で約四六二万人にのぼることが厚生労働省研究班の調査で明らかになった。認知症は生活習慣病などと違って予防がむずかしく、誰もがなりうる病気であり、これといった特効薬も開発されていない。それだけに認知症介護はもはや他人事ではなく、国民の誰もが無関心ではいられない重要なテーマとなっているのである。

こうした超高齢社会や大介護時代を見据え、社会全体で高齢者の暮らしを支えようと、わが国では平成十二年に介護保険制度がスタートした。それにともない、さまざまな業種から多くの企業が介護分野に参入し、全国各地に有料老人ホームをはじめとする高齢者介護施設が次々に建てられてきた。認知症高齢者らが、少人数で共同生活をするグループホームという形態もその一つで、認知症の増加とともに急速に増えている。

平成二十五年十一月に全国公開された映画『ペコロスの母に会いに行く』(監督:森﨑東氏、出演:岩松了氏、赤木春恵氏ほか)は、長崎在住の漫画家、ペコロスこと岡野雄一氏のコミックエッセイを映画化したもので、グループホームで暮らす認知症の母と、その母に会いに行く息子の日常が愛情を込めて描かれている。

『恍惚の人』の時代に比べると、認知症に対する世間の人々の認識も随分変わってきており、介護保険制度により、いまではさまざまな介護サービスを利用できるようになった。

とはいえ、増えつづける高齢者や認知症患者に対し、介護施設の数も介護を担う人材もまだまだ不足しており、社会の仕組みとして決して十分な介護体制が整備されているとはいえないのが実情だ。

認知症も含め、要支援・要介護に認定されている六十五歳以上の高齢者は、平成二十四年四月現在で五三三万人(厚生労働省「介護保険事業状況報告」)にものぼる。政府は高齢者ができるだけ住み慣れた地域で暮らせるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援サービスを一体的に提供する「地域包括ケアシステム」の構築を推進しており、平成二十四年四月施行の介護保険法改正もその実現を念頭に置いた内容となっている。

たとえば、在宅介護を支える二十四時間対応の定期巡回・随時対応サービスや複合型サービスの創設などがあげられる。国の介護政策は医療政策と同様、いまや病院や施設中心の介護から自宅を中心とした住み慣れた地域での在宅介護へとシフトしつつあるようだ。

こうした状況下、長寿日本一の長野県を中心に、群馬、栃木、新潟、埼玉の五県において、介護サービス事業と福祉用具事業を二本柱に、多岐にわたる介護関連事業を展開し、着実に業績を伸ばしているのが、本書で紹介するエフビー介護サービス株式会社(本社:長野県佐久市、代表取締役社長:栁澤秀樹氏)である。

創業社長である栁澤秀樹氏がそれまで勤務していたフランスベッド販売株式会社を退職し、フランスベッドの販売代理店として、前身のエフビー信州を設立したのは昭和六十二年、三十八歳のときだった。事業は順調に拡大したが、母親の認知症介護にかかわったことがきっかけで、介護保険が施行された平成十二年に介護事業に参入している。

当初は前職での経験を生かした福祉用具レンタル事業を基盤に、居宅介護支援事業、訪問介護事業からスタート。平成十四年にエフビー介護サービスに商号を変更し、介護サービス事業を本格化させる一方で、グループ法人として社会福祉法人佐久平福祉会を設立し、栁澤氏は理事長に就任している。

エフビー介護サービスでは、その後、介護タクシー、介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、グループホーム、デイサービス、ショートステイ、小規模多機能型居宅介護など、地域のニーズに応えるかたちで積極的に事業領域を拡大。平成二十五年八月からは訪問看護にも乗り出し、訪問リハビリにも対応できる体制を整えている。

佐久平福祉会としては介護老人保健施設、グループホーム、特別養護老人ホームの運営などを手がけ、営利法人と社会福祉法人を合わせたグループの事業所は六〇カ所を超え、利用者数は約二万名に達している。

経営理念の柱に「地域密着、二十四時間三六五日、すぐやる、必ずやる、できるまでやる、すべては利用者様のために」を掲げる同グループは、介護に関する多種多様なサービスを提供。訪問入浴介護以外はそろっているといっても過言ではない。こうした介護サービスをトータルで提供できることが同グループの強みであり、地元・長野県においては、在宅介護と施設介護を有機的に結合させることで切れ目のない支援を行えるよう、ワンストップサービスの確立をめざす。

「われわれが常に心がけているのは、利用者様目線のサービスの提供です。どうすれば利用者様に喜んでいただけるか。自分の親だったらどうしてほしいかといったことも、一つの判断の目安になるでしょう。そして、利用者様はもとより、職員、事業にかかわるすべての人たちの満足を追求すべく、新しいサービスの提供を通じて介護改革を実践していきたいと考えます」(栁澤氏)。

そのためにも理念教育を徹底しているが、栁澤氏は職員に対し、何も特別なことを求めているわけではない。あたり前のことをあたり前にやる。これが同グループのサービスの原点なのだという。

同グループでは介護の基本方針として、個別ケア、認知症ケア、看取りケア、地域ケアの四つを大切にしているが、これからは病院ではなく、自宅や施設など住まいでの看取りが増えていくことが確実視されているだけに、看取りケアの充実には特に力を注ぐ。

超高齢社会を迎え、介護事業でもう一つの重要なポイントが、先にもふれた認知症対応だ。自分の親が認知症になったとき、施設に入れることに後ろめたさを覚える人も少なくないだろう。しかし、グループホームをはじめ、プロの手にケアを委ねることで、認知症になっても楽しく和やかに生活していくことができるのなら、本人にとっても家族にとってもいいことではないだろうか。

また、高齢者が住み慣れた地域で安心して最期まで暮らせるよう、在宅介護を前提とした見守りと支援の仕組みを構築することが重要との考えから、地域包括ケアの中核の一つに位置づけられている小規模多機能型居宅介護事業も強化していく考えだ。

昨今は家族の介護のために仕事を辞めざるをえない“介護離職者”が増えているというが、「通い」「宿泊」「訪問」の三つの機能を備えた小規模多機能型居宅介護事業所は、介護する家族にとっても仕事との両立をサポートする存在となっているようだ。

介護保険制度の施行とともに介護事業に携わって十四年。エフビー介護サービスの利用者第一の経営姿勢と地域密着型のさまざまな取り組みは地元を中心に高く評価され、各施設は常に定員を満たしている状況で、これまで閉鎖に追い込まれた事業所は一カ所もない。利用者満足をとことん追求すれば、利益はあとからついてくるとしながらも、いまでは年間売上高約五〇億円、職員数約一〇〇〇名を数える法人グループに成長している。

今後も介護難民を少しでも減らし、一人でも多くの笑顔にふれるため、介護施設を増やし、訪問介護、訪問看護など在宅ケアのさらなる充実をめざすと同時に、介護職員の雇用を増やすことで社会に貢献していきたいとしている。

栁澤氏は常々「介護スタッフは利用者様を守り、われわれ経営陣には職員を守る責務がある」といっているが、職員を大事にする姿勢は業界他社に比べ、離職者が少ないことにも表れている。

本書は、利用者本位の介護保険サービスを提供することで急成長を遂げてきたエフビー介護サービスグループの事業活動、ならびに創業社長・栁澤秀樹氏の経営理念と介護哲学に迫るものである。

老いは誰にも必ず訪れる。そして、いずれは介護が必要となるかもしれない。人生の最後まで自分らしく生きるためにも、自分はどんな介護を受けたいか。

大介護時代にあっては、国民一人ひとりが真剣に考えておく必要があるのかもしれない。

本書をご一読いただき、介護を必要とする高齢者やそのご家族、あるいは介護業界に携わる方々が、理想の介護サービスのあり方を考えるうえでの一助となれば、これに勝る喜びはない。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

平成二十五年十二月   鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 超高齢社会と大介護時代に突入した日本

世界に類を見ない速さで進む日本の高齢化
利用者本位のサービスを謳った介護保険制度
厳しい局面に立たされている介護保険財政
地域包括ケアの推進で見直される「互助」の役割
看取りも含め、高齢者介護は在宅中心に
入りたくてもなかなか入れない特別養護老人ホーム
終の住処を施設に求める高齢者も
在宅重視を反映したサービス付き高齢者住宅
介護業界にとって最大の課題は人材不足
東南アジアからの助っ人が頼みの綱?
介護は日本の成長産業になりうるか?


第2章 地域密着のトータル介護サービスを提供 ――エフビー介護サービスグループの事業概要――

長寿日本一の長野県で地域密着型の事業を展開
介護サービス事業と福祉用具事業を二本柱に
地域でのワンストップサービスの確立を
二十四時間三六五日、一貫専任制対応の福祉用具事業
地域に開かれた施設運営をめざす
介護事業では認知症対応と看取りがポイント
地域包括ケアの中核の一つと位置づけられている小規模多機能型居宅介護
介護職の教育訓練・人材養成事業にも着手


第3章 高齢者の自立した生活を支える在宅介護

在宅介護サービスがすべての事業のベースに
一人でどんな状況にも的確な判断力をもって対応
ヘルパーに求められる「気づきの介護」
長く勤めるメンバーの存在こそが何よりの財産
在宅での看取りでは訪問看護と連携
一人ひとりの気持ちに寄り添いながらケアプランを作成
頼りにされていると実感できたときの喜びはひとしお
社内外の多職種との緊密な連携体制を構築
在宅での生活を支援する各種介護サービス
社長の英断で開始した小規模多機能型居宅介護
利用者の生活圏内にある地域密着型サービス
日常生活の自立を助ける福祉用具事業
終わりの見えない介護に相談員としてどうかかわれるか


第4章 高齢者の安心・安全な暮らしを支える入居型施設

安心とやすらぎの介護付き有料老人ホーム
低料金を実現した住宅型有料老人ホーム
地域特性を考慮した施設づくり
入居者一人ひとりに寄り添いながら看取りまで
認知症の方の生活を支援するグループホーム
自宅にいるのと変わらない生活空間に
楽しい日々を演出する多彩なアクティビティ
行事は利用者と職員が一緒になって楽しむ
特別養護老人ホームに対する従来のイメージを払拭
安らかな旅立ちを迎えられるよう多職種と連携
スタッフ全員に理念の浸透をはかる


第5章 創業社長・栁澤秀樹の経営理念と介護哲学

農業後継者となる道を断念し営業職へ
フランスベッド時代に培われたマネジメント力
全員がゼロから手探りでのスタート
「すべては利用者様のために」
接遇こそがサービス業の原点
介護では人間性が何より重視される
理想のリーダーに求められる徳や人間性
中間管理職の人心把握がマネジメントの要
「一つ叱って三つ褒める」を実践
東日本大震災では職員を復興ボランティアに派遣
介護事業は一にも二にも人材がすべて


第6章 エフビー介護サービスが描く未来像

海外事業を経営の「第三の柱」に
中国の富裕層が日式介護に熱い視線
海外進出により介護人材の逆輸入も
フードサービス事業などの新領域を開拓
介護改革でさらなる社会貢献を
一人でも多くの笑顔に出会うために

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