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2017/12/11

『製造業の未来をつくるアウトソーシング』 前書きと目次

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製造業の未来をつくるアウトソーシング
~日本のものづくり復活と雇用再生に挑む~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-386-3
初版発行:2013年7月3日




 はじめに

日本はもはや、経済大国ではない。

OECD(国際経済協力開発機構)が平成二十四(二〇一二)年に発表した二〇六〇年の世界経済展望によると、今後、世界経済は新興国主導のかたちで進む一方で、日本は経済小国に転落する可能性が高いと予測。われわれにとっては耳の痛い、厳しい評価を突きつけられてしまった。

実際、テレビや新聞のニュースを見ても、いまの日本には暗い話題が多い。特に経済に直結する雇用の問題においては、ここ数年、気の重くなる話題ばかりである。就職氷河期、内定取り消し、ポスドク問題、ロストジェネレーション、ネットカフェ難民、派遣切り、追い出し部屋、ワーキングプア、無縁社会……。

「『強い日本』をつくるのは、ほかの誰でもありません。私たち自身です」

安倍総理がいくらそう力説しても、いまの若者たちが“強い日本”を実感するのはむずかしいだろう。

高度経済成長期やバブル景気を体験してきた世代にとって、日本が経済小国になるという未来予想図は、正直、受け入れがたいものがある。しかし、当時のような経済成長はとても望めない、というのが日本の現実なのだ。

経済の低迷の影響もあり、近年、日本の雇用事情は大きく変化した。かつての終身雇用制度ではなく、スタッフを外部組織からの供給に頼る企業が増えているのだ。こうした人材確保の方法を“アウトソーシング”という。

アウトソーシングには大別すると、「派遣」と「請負」の二形態がある。

厚生労働省によれば、労働者派遣とは「労働者が人材派遣会社(派遣元)との間で雇用契約を結んだうえで、派遣元が労働者派遣契約を結んでいる会社(派遣先)に労働者を派遣し、労働者は派遣先の指揮命令を受けて働くというもの」である。労働者派遣法において派遣労働者のための細かいルールが定められているが、近年では「派遣切り」「年越し派遣村」といった芳かんばしくないイメージだけが先行している感がある。そのためか、派遣批判、いわゆる“派遣バッシング”を口にする人が非常に多い。

一方、請負とはプロジェクトの一部またはすべてを請負元が受託する形態のことである。たとえば、大手建設会社が受注した住宅の建築を、町の小さな工務店に依頼するようなものだ。

実は、製造業における派遣は長らく法律で禁止されていた。しかし、グローバル化する市場のもと、自動車メーカーや家電メーカーをはじめとする日本の製造業が海外の企業に対抗し勝ち残っていくには、品質はもとより、価格面においても競争力を持たねばならない。そして、そのためには、雇用の圧縮と海外移管への検討が必須となる。つまり、アウトソーシングなくしては、日本企業が価格競争を勝ち抜くことはむずかしいというのが現状なのだ。

そこで平成十六年に製造派遣が解禁されたが、前述のように、派遣労働者の不安定な身分や生活状態が社会問題となり、労働者派遣法の見直しが迫られるようになった。しかし、平成二十四年三月に成立した改正労働者派遣法は、経済環境や労働実態を正しく反映したものとはいえず、本質的な問題解決にはなっていないと指摘されている。

いずれにしろ、日本の雇用現場では企業と労働者の双方とも、以前とは考え方が大きく異なってきていることはたしかである。

企業側にはグローバルな競争のもとでは、人件費削減の必要から、正規雇用の枠を広げることはできないという事情がある。

一方、労働者側にも自由に就業できる雇用形態を希望する人たちが存在することはまた、事実なのである。

しかし、派遣反対派の人たちは、「派遣という業務形態こそが問題であり、本心から派遣を望むものなどいるはずがない」と主張する。彼らは高度経済成長期に形成された「終身雇用の正規社員こそが就業形態のあるべき姿であり、派遣などの非正規社員は就労における“諸悪の根源”である」と信じてやまないのだ。もしかすると、彼らは日本が経済大国であったころの幻影をいまも追い求めているのかもしれない。

だが現在の日本で、企業側に正規社員化を強要するような規制をつくり、社員を正規社員のみに限定したら、立ち行かなくなる企業は少なくなく、結果的に正規社員の雇用を減らすことにつながりかねない。

また、派遣という就業スタイルがなくなれば、就労機会を失ってしまう人も多くいるのではないだろうか。派遣には、「ライフスタイルに合わせて仕事を選べる」「時間に融通を利かせた働き方が可能」「さまざまな職場を経験することができる」などのメリットがある。子育てや介護など、家庭の事情を抱えている人などのなかには、正規社員よりも派遣のほうが魅力的と感じている人は少なくない。場合によっては、派遣でなくては働けない、というケースさえあるのだ。

そうした労使双方の要望に応えているのが、アウトソーシングという就業・雇用形態なのである。

そのアウトソーシング業界で、生産現場への請負と派遣で業績を伸ばしているのが、本書で紹介する株式会社アウトソーシング(本社:東京都千代田区、代表取締役会長兼社長:土井春彦氏)である。

同社は平成二十五年三月十二日付で、東証二部上場から一年と一日という最短期間で東証一部銘柄に指定されることになった、いまもっとも勢いのあるアウトソーサーである。

平成九年に設立された同社は、創業以来、十五年間、製造現場への請負と製造派遣の両事業で着実に業績を伸ばし、平成二十四年十二月期の連結売上高は四二〇億円、平成二十五年十二月期は五〇〇億円を見込むまでに成長した。

同社の請負・派遣先は実に幅広い。電気・電子機器、輸送機器(自動車)、化学・薬品、食品、金属など、製造業全般にわたっている。それだけに各製造現場で働くスタッフには、高度な生産技術が求められる。

また、このように幅広い業種で事業を展開することで同社は、特定の業種の需要動向に左右されない体制を整えるとともに、高い流動性を確保している。

こうした同社スタッフの高度な技術力と流動性の高さこそ、ほかの生産アウトソーシング企業との差別化をはかる最大の要因なのである。

同社の代表取締役会長兼社長・土井春彦氏はいう。

「各メーカーが求める技術力を養成するため、それぞれのメーカーで定年退職した技術者を採用したり、定年を間近に控えた技術者を転籍というかたちで迎え入れたりするなどして、キャリアアップ・キャリアパス制度の担い手となってもらっています」

そんな同社が掲げる経営理念は、「変革する経済環境に対して英知と創意工夫を結集し、生産の効率向上に寄与することにより、ものづくり日本の発展と明るく豊かな社会の実現に貢献します」というものである。生産性の効率を上げるには技術力の向上が不可欠である。その点では、生産現場に特化し新たな価値を創造しつづけている同社は、ものづくり日本の復活に不可欠の存在といえる。

同社にはもう一つ強みがある。それは日本メーカーの海外工場でのニーズにも迅速かつ的確に応えることができるという点である。

産業空洞化が叫ばれ、日本企業の生産拠点の海外移転が相次ぐ昨今、そうした企業側のニーズに敏感に応えていかなければならないということであろう。

それらの事情を踏まえて、土井氏は将来の展望をこう語っている。

「新興国の台頭や新興市場への進出にともない、各メーカーの生産体制の比重が海外に移っています。当然、当社でもタイやベトナムを中心とした東南アジア諸国での事業によりいっそうの力を注ぎ、近い将来には海外での事業で、国内の売上高の二倍の業績をあげようと考えています」

本書は、日本経済の根幹ともいえる製造業の現状と雇用を取り巻く諸問題に光をあてつつ、生産アウトソーシング事業で快進撃を続ける「アウトソーシング社」の事業活動を紹介するとともに、創業者である土井春彦氏の経営理念、ビジネス哲学に迫るものである。

これは、現在、製造業にかかわる人はもとより、日本のものづくりの将来に思いを巡らせる多くの一般読者にとっても、貴重な指針の書となるに違いない。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。


平成二十五年五月   鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 日本のものづくりを支えるアウトソーシング

市場のグローバル化で雇用事情が変化
若年失業率の増加と即戦力を求める企業
「派遣=社会悪」という概念は大きな誤解である
実情にそぐわない労働者派遣法の改正
派遣から請負へとシフトする製造業
生産アウトソーシング業界が抱える問題
日本のものづくりを支えるために


第2章 生産アウトソーシングに特化し躍進する「アウトソーシング」

新たな価値を創出し、社会に貢献
製造現場へ特化し、雇用の流動化を実現
二つのサービス体制――① 製造系
二つのサービス体制――② 技術系
M&Aの積極的な推進で多様な技術を保有
東南アジアでの事業展開でメーカーの海外進出に呼応
「生産アウトソーシングNo.1」に邁進


第3章 経営資源の最適化を実現するビジネスモデルを構築

ニーズの変化に即応するソリューションを提供
労働者供給型アウトソーシングの限界
経営資源の融合が相乗効果を発揮する「プロフィット・シェアリング・モデル」
PEOで達成する顧客・スタッフとの「WIN‐WIN‐WIN」
メーカーの管理業務を引き受け、人と企業の架け橋に
メーカーの「固定費削減」と「技術の継承」を実現
アウトソーシング社のビジネスモデルを業界の基本モデルに


第4章 製造業の未来をつくる人づくり

「人」に重点を置いた教育制度
新人研修――マネジメント研修からヒューマン研修まで
リーダーを育成する充実のキャリアアップスキーム
階層別研修で各種検定試験によるスキルアップを応援
有能技術者を転籍させ、座学・実習の指導係として採用
社員のメンタル面もフォローできる体制づくり
真のパートナーとなるために、メーカー以上の努力を続ける


第5章 創業者・土井春彦の経営理念とビジネス哲学

人材サービス一筋に歩んだ半生
人材ビジネスの先駆企業に入社
二十八歳で独立、その後、アウトソーシング社設立へ
コンプライアンスの確立で他社との差別化をはかる
「メーカーが抱える課題にニーズあり」が信念
業界を正義あるものにし、認知度を高めるために
強いものづくり日本の復活に貢献


第6章 人と企業の未来を見つめる「アウトソーシング」の未来戦略

日本市場が縮小していくなか、いかにものづくりを守っていくか
量産部門以外の道筋も探りながら、シェア拡大を狙う
さらなる展開をめざす海外事業
雇用規制や政策にも対応していけるアウトソーシングのかたち
繁閑サイクルの異なる分野に力を傾注
長期雇用を実現するために、期間工の正規社員登用も
積極的な成長戦略で業界No.1へ


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