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2017/12/11

『ベストケアの挑戦』 前書きと目次

Bestcareweb


ベストケアの挑戦
~利用者の真の欲求をかなえるリハビリ型介護サービス~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-403-7
初版発行:2014年12月5日




 はじめに


幼子が日に日に成長する姿というものは、親でなくとも目を細めたくなるものだ。昨日まで歩けなかった赤ん坊が、今日はよちよちと歩き出し、ついこの間まで自分で着替えることができなかった子どもが、いまでは一人できちんと着替えることができるようになる。日ごとにできることが多くなり、理解できることが増えていくのが子どもの成長というものだ。

そんな幼子とは対照的に、人は老いていくと、いままであたり前のようにできていたことが、次第にできなくなっていく。若いころは、何キロ歩いても平気だった足腰の丈夫な人でも、老いれば足もとがおぼつかなくなる。記憶力に自信のあった人でさえ、物忘れが増えていく。それが“老い”というものの現実だ。どんなに憂いても、生きていくかぎり、われわれは“老い”を避けることはできない。それは、かつて存分に青春を謳おう歌かしてきた団塊の世代も例外ではない。彼らのもとにも“老い”は着実に忍び寄っているのだ。

だが、われわれには“老い”を回避することはできないが、その歩みを遅らせることはできる。そのカギを握るのが「リハビリ」である。リハビリというと、ケガによる骨折や脊せき髄ずい損傷、あるいは脳卒中などの疾患により生じた機能障害を回復させるためのものを思い浮かべる場合が多いだろう。

しかし、それだけではない。老化にともなう諸機能の低下においても、リハビリは大きな効果を期待できるのだ。若いころと同じとはいかないまでも、正しいリハビリは、心身の老いのスピードを遅らせてくれる。高齢者の暮らしの質を維持するうえで、とても有効な手段なのだ。

たとえば、「背中を掻く」という、若いころなら難なくこなせた行為でも、高齢者の多くは腕が回らなくなり、自分ではできなくなってくる。考えてみていただきたい。背中がかゆくなっても、自分で掻くことができないという現実が生む、はかりしれないストレスの大きさを。かゆみを覚えるたびに、人の手を借りなければならないとなれば、それは日常的に介護する側にも、大きな負担を強いることにもなってしまう。そんな状態は、本人にとってもつらいはずだ。

しかし、リハビリによって、孫の手を使い、自分で背中を掻くことができるようになれば、介護をされる側もする側も、ずっと楽になるだろう。

背中を自分で掻く──。些さ細さいなことではあるが、それが可能になるだけで、暮らしの質は大きく向上できる。そういった意味で、介護におけるリハビリの重要性を、私たちはもっと認識する必要があるはずだ。

総務省の発表によると、わが国の高齢者人口は過去最高の三一八六万人に達した(平成二十五〈二〇一三〉年九月十五日現在推計)。これは総人口の二五・〇%にあたり、国民の四人に一人が高齢者ということになる。すでに四七都道府県すべてにおいて六十五歳以上の老年人口が〇~十四歳の年少人口を上回っている。まさに日本は、世界でも類を見ない、超高齢社会となったのである。

人はいくつになっても、健康で自立した生活を送りたいと願うものだ。しかし、年齢を重ねるにつれ、有病率は高まり、身体機能も衰えてくる。実際、七十五歳以上の後期高齢者になると、介護を必要とする割合はぐんと高まる。人の手を借りずに生活を送ることが、次第にむずかしくなるのは、どうあがいても否めない。つまり、超高齢社会がますます進む今後の日本社会では、介護におけるリハビリの重要性が、いっそう高まるのは間違いないということだ。

現在のような超高齢社会の到来を見据え、平成十二年に介護保険制度がスタートし、早十四年が経つ。その間に、高齢化は想定を上回るスピードで進み、要支援・要介護認定者は当初の二・五倍以上にあたる五六四万人(平成二十五年四月末現在)に増加し、介護費用も三・六兆円から九・四兆円にまでふくれ上がった。

加えて、団塊の世代が七十五歳を迎える「二〇二五年問題」だ。現在の後期高齢者の割合は、国民の九人に一人近くであるが、団塊の世代が後期高齢者の仲間入りをすれば、一気にその割合は増え、なんと国民の五人に一人近くになるといわれている。そうなれば、当然、介護費用の増加も懸念され、その額は二〇兆円に達すると見込まれているのだ。このまま費用がふくらみつづけたら、公的介護保険制度は社会情勢にそぐわない、死に体の制度となってしまいかねない。

そこで政府は、介護保険制度の抜本改革に着手する方針を打ち出した。平成二十七年四月には、利用者の負担増や要支援者向けサービスの市町村事業への移管など、これまでにない、大幅な改正が行われる見通しとなっている。

このように、介護を取り巻く環境が大きく変化しつつあるなかで、リハビリ型デイサービスを中心に、独自の高齢者自立支援システムを構築し、着実に業績を伸ばしているのが、本書で紹介するベストケア株式会社(本社:愛媛県松山市、代表取締役社長:山田哲氏)である。理学療法士である同社代表取締役社長・山田哲氏は、病院勤務を経て、介護保険制度が導入されたのを機に、リハビリの考え方を取り入れた、介護サービス事業を手がけるべく、平成十一年七月、三十五歳の若さで独立・起業を果たした人物である。

設立から十五年、デイサービス、ホームヘルプサービス、ショートステイ、福祉用具レンタル、居宅介護支援、シニア向け娯楽施設の運営など、在宅介護支援の深耕に徹しつつ、事業分野と事業エリアを拡大し、ベストケアは現在、八都県に介護サービス事業所を三〇カ所、従業員六五〇名を擁する企業へと成長している。

同社がモットーとするのは「心を大切にする介護」である。ここでいう「心」とは、幸せを求める気持ちだ。この根底にあるのは、利用者が本当に望む幸せのかたちは、それぞれ違うものなのではないか、という考えである。つまり、「介護する側が幸せになりたいと願う利用者の立場に立って考え、一人ひとりのためにそれぞれの幸せを提供できなければ、真の介護サービスは実現できない」という信念が、「心を大切にする介護」という一文に込められているのである。

そして、利用者が幸せになるためには、介護にあたるスタッフも幸せであるべきだとの山田氏の考えから、「利用者を幸せに、職員も幸せに!」を経営理念の第一に掲げている。山田氏は、「介護は単なる作業の提案ではなく、高齢者に感動体験を与え、新しいかたちの価値を提供することである」とも語っている。その思いを具現化したのが、デイサービスにおける「ベストケア・リハビリメソッド(BRM)」と称する、独自の支援プログラムだ。

前述のように、従来はリハビリといえば機能訓練中心の“医療リハビリ”が主体だったが、このメソッドでは、利用者一人ひとりの「こんな生活を送れるようになりたい」という真の欲求を引き出し、それをかなえるための動作練習に重きを置いた“介護リハビリ”という、新しいカテゴリーを構築した。個々の利用者の自立を目標とする、オーダーメイドのリハビリを行うことで、一人ひとり、幸せが実感できる生活へと導いていくというものである。

競合ひしめく介護業界にあって、同社が急成長を遂げてきた要因としては、こうしたリハビリを取り入れた独自のビジネスモデルで、他社との差別化をはかってきたことがあげられるだろう。特に最近では、要介護度を上げないようにするための予防を視野に入れた機能訓練の重要性が認知されてきたため、リハビリに特化した介護サービスというものが、時宜にかなったようだ。

加えて、山田氏は人材採用へのこだわりを強調する。介護事業は介護をする人、される人の人間関係がベースになっていることはいうまでもない。そこで、採用にあたっては、設立当初から一貫して「人に好かれるタイプかどうか」を最も重視してきた。そのこだわりの積み重ねが、明るく、笑顔にあふれた社風を育はぐくみ、ベストケアの大きな強みとして現場に生きているのだという。

今後は、高齢者人口の急増が見込まれる首都圏での展開を加速させていく同社がめざすのは、日本一のサービスを提供することだ。そして、ハイレベルなベストケアのサービスが、日本の介護のスタンダードになることをめざし、高いクオリティの追求と、絶対的な信頼を得ることに尽力していきたいと、山田氏は抱負を語っている。

本書は、利用者の真の欲求をかなえる“介護リハビリ”を中心とした、ベストケアの事業活動を紹介するとともに、同社社長・山田哲氏の経営理念、介護事業にかける熱い思いに迫るものである。

人生の最後まで自分らしく生きるという、ささやかな、しかし実現するのは決して容易ではない願いをかなえるためには、避けることのできない“老い”に正面から向き合わなくてはならない。そして、人生の最終章において、どのような生活を望んでいるのか、私たち一人ひとりが自分自身の胸によく聞いておくべきだろう。そのうえで、理想的な人生のラストステージを実現するのに欠かせない“介護リハビリ”というものに関して、いま一度、真剣に考えておかなくてはならないのではないだろうか。

これは、介護事業に携わる人のみならず、これからの超高齢社会を生きるすべての人にとって、貴重な指針の書となるであろう。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

平成二十六年十月   鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 超高齢社会の進展と、介護サービスの現状

国民の四人に一人が高齢者という超高齢社会に突入
高齢化の急激な進展に追い打ちをかける「二〇二五年問題」
大幅な改正が行われる介護保険制度
介護現場における最大の課題は人材不足
「老老介護」や「介護離職」に見る厳しい現実
高齢者の自立を支援する各種在宅介護サービス
生活の質の向上を目的としたリハビリの重要性


第2章 「心を大切にする介護」を提供するベストケア

在宅介護支援の深耕に徹した六つの事業領域
八都県で三〇カ所の介護サービス事業所を展開
高齢者の自立支援を第一に考えた経営を実践
リハビリに重きを置いた独自のビジネスモデルを構築
介護サービスを通じて高齢者に感動を与える価値を提供
みんながより幸せになれるサービスのあり方を追求
圧倒的なまでに高いクオリティと絶対的な信頼を


第3章 一人ひとりの欲求を満たす「BRM」

継続的な在宅介護に不可欠なレスパイトケア
機能訓練中心の医療リハビリからの脱却
介護リハビリという新カテゴリーへのチャレンジ
マズローの欲求五段階説に着目したリハビリメソッド
BRMの基本的な概念を全社員で共有する
三つのステップと五つのステージで意欲を引き出す
「こんな生活を送りたい」という自己実現をサポート
アフタヌーンサービスでワクワクするような時間を


第4章 利用者との心の絆こそがベストケアの宝物

ベストケアの精神を伝えるショートムービー
張り切りすぎてしまった運動会
第一回BRMコンテスト優勝――「夢は叶う」デイサービスセンター安佐南
「あなたがいるから、ここに来たくなる」という言葉が励みに
歩けるようになりたいという思いを込めた詩に感動
まだまだある、心温まる「ちょっといい話」


第5章 山田哲の経営理念と介護哲学

理学療法士として病院勤務を経て三十五歳で起業
苦境を乗り切らせた事業への熱意
「利用者を幸せに、職員も幸せに!」を経営理念に掲げる
人物重視の採用へのこだわり
人事管理体制の整備とガバナンスの強化を徹底
My CompanyからOur Companyヘ
座右の銘は「濃度の“こい”人生を送る」
独立していくスタッフに贈る「社長の心得」


第6章 ベストケアが描く介護事業の未来像

東京本部を設置し、首都圏での展開を加速
事業規模ではなくサービスの中身で日本一をめざす
団塊の世代の多様な価値観に対応した新サービスを
要介護になる前の介護予防サービスに注力
理想の介護の実現を後進に託す
地域包括ケアの中心的な役割を担う存在として
利用者の人生にかかわることの喜びと責任を胸に

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