« 『合格にいちばん近い予備校 東京アカデミー』 前書きと目次 | トップページ | 『ACNグループの挑戦』 前書きと目次 »

2019/06/03

『菓子と笑顔を機械でつなぐ 菓子づくりのオンリーワン企業』 前書きと目次

456_kashizukuri

菓子と笑顔を機械でつなぐ
菓子づくりのオンリーワン企業

~菓子づくりの常識を変えるマスダックのあくなき挑戦~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-456-3
初版発行:2019年6月9日




はじめに

世界における日本の人気はますます熱気を帯びてきている。2018年に3000万人を超えた訪日外国人数は、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて今後さらに上昇していくことは間違いない。

日本での滞在を楽しむ外国人が購入する日本みやげのうち、高い人気を集めているのが日本の菓子だ。「質が高くておいしいし、種類も豊富で、しかも安い」と、日本の菓子は非常に評判がよい。鉄道の主要駅やショッピングセンター、観光地のみやげもの店などには、大きなバッグや段ボール箱いっぱいに菓子を買いこむ外国人旅行者がたくさん訪れ、どの顔にも楽しそうな笑顔がはじけている。そうした表情を見ていると、「菓子は、国境を超えて人を幸せにする」と実感する。

日本の菓子を欲しているのは訪日外国人だけではない。国内での人気も非常に高く、2013年以降、確実な上昇カーブを描いており、2017年の市場規模は3兆3898億円に達している(小売金額推定値。全日本菓子協会「平成29年 菓子生産数量・金額 推定結果」)。最近は世界市場への進出も活発で、「ポッキー」(ヨーロッパでは「MIKADO(ミカド)」と呼ばれている)や「コアラのマーチ」などを筆頭に、海外での売れ行きも上々のようだ。

ところで、こうした菓子は、誰が、どのようにして、つくっているのだろうか。菓子職人やパティシエの手によるこだわりの和洋菓子は別として、一般に市販されている菓子の多くは工場でつくられているであろうことは想像できる。

最近では工場見学をテーマにしたテレビ番組が人気があり、なかでも食品工場を扱ったものはおおむね評判がよいという。たしかに、ふだんよく食べている食品が、原料の段階からさまざまな工程を経て、最終的におなじみのかたちになって製造ラインから次々と流れ出てくる様子を見るのは、それがテレビ画面であっても、なぜか興奮してしまう。

ひと口に「菓子」と言っても、味はもちろん、食感、かたち、大きさなど、その内容は多種多様だ。当然、材料から完成品にいたるまでの製造工程も、食品製造のなかでも突出して複雑で、かつ、多岐にわたっている。

そのうえ、菓子には、自家消費用のものだけでなく、贈答品としての性格を持つものもある。そうしたものは包装にも個性があり、折り紙細工のようになっていたり、一つひとつが紐で結ばれていたりなど、包み方もさまざまで、見た目も美しく工夫され、包装を開けるのがためらわれるほどのものもある。

このように、中身も包装も精緻で精工な菓子が、いまでは職人の手を借りずとも、機械でつくれるというのだから、人間が積みあげてきた技術には感嘆するしかない。
この、多種多様な菓子をつくる製菓機械の製造を手がけるのが、本書で紹介する、日本を代表する総合和洋菓子製造機械メーカーの株式会社マスダック(本社:埼玉県所沢市)だ。

「デパートの地下で売られている和洋菓子の6割くらいは、当社の機械によってつくられています」

と、代表取締役社長の増田文治氏が語るように、マスダックに対する菓子業界からの信頼は厚く、得意先からは「マスダックに頼めば、できないものはない」と言われているほどだ。実際、その守備範囲は幅広い。どら焼き、まんじゅう、カステラ、カップケーキ、ロールケーキ、シュークリームなどの柔らかいものから、クッキー、サブレ、パイ菓子などの歯ごたえを楽しめるものまで、実にさまざまなタイプの菓子をつくる機械や製造ラインの開発、設計、製造、メンテナンスを、マスダックは一手に引き受けている。いまでは、マスダックなしでは日本の菓子業界は成り立たないと言っても過言ではないほどだ。

つまり、マスダックは、3兆円を超える日本の菓子市場を縁の下で支える存在とも言えるのだ。

マスダックは1957年に、増田氏の父である増田文彦氏が、前身である新日本機械工業株式会社(2007年にマスダックに社名変更)を創立したことからスタートした。文彦氏が友人に頼まれて開発した機械でつくったまんじゅうを実演販売したところ、まんじゅうを頬張った瞬間にみなが笑顔になり、その笑顔を見ているうちに、「お菓子を食べる幸せを、ひとりでも多くの人に味わってもらいたい」という気持ちがふつふつと湧いてきたことが、創立のきっかけだったという。

それまでも、クッキーやビスケットを大量に焼く機械は、輸入品が主ではあったが、日本にもないわけではなかった。だが、製造工程が繊細で複雑なまんじゅうや桜餅の製造は、機械化は不可能だろうと思われていた。しかし、根っからの機械好きで、機械づくりに関しては天才的な閃きと、その閃きを実現する技術を持っていた文彦氏は、「不可能」と思われていた機械の開発に寝食も忘れて取り組んで、前述のまんじゅう製造機をみごとに完成させ、世間をあっと言わせたのだ。

そして文彦氏は新日本機械工業を設立し、今度は自動どら焼機の開発に着手した。手づくり感を残したどら焼きの製造を機械化するまでの奮闘には感動的なものがあるので、ぜひ本編で堪能していただきたい。

この自動どら焼機は、最初の開発から60年が経った現在も、日本はもとより、世界各地で開催される食品製造機械の展示会には欠かせない、マスダックを代表する製品となっている。もちろん、当初の機械に比べると、めざましい進化を遂げており、その実演を見た来場者は、みな驚嘆するという。

マスダック創業者である文彦氏の製菓機械開発の精神は、「はじめに菓子ありき」という言葉に集約されている。開発を進めるにあたっては、「どんなお菓子をつくるか」「どんなおいしさを実現するのか」をなによりも大事にし、菓子の味と品質にとことんこだわって、取り組んできた。

その尽きることなき菓子への思いから、やがてマスダックは、製菓機械をつくるだけでなく、菓子そのものをつくる事業も手がけるようになった。現在では、東京みやげとして大人気の菓子「東京ばな奈『見ぃつけたっ』」をOEMで製造しているほか、マスダックがアイディアを出し、その後、菓子メーカーと協働でさらに完成度を高めて発売した銘菓も数多くある。

現在のマスダックは、製菓機械の製造事業、製菓機械のメンテナンス事業、菓子製造事業が三位一体となった事業構造により安定的な経営基盤を確立した、優良企業との定評を確立している。製菓機械市場は複雑に込み入っているため、単純に市場シェアを割り出すことは難しいが、自動どら焼機については世界シェアの95%をマスダックの機械が占めているというから仰天する。他の製菓機械についても、国内シェアは相当に高いとみて間違いないはずだ。

また、マスダックは世界市場への進出にも積極的で、現在ではヨーロッパをはじめ、中国、東南アジアなど、世界36カ国に販路を広げている。2004年にオランダで設立した現地法人はその後、マスダックインターナショナルへと発展を遂げ、営業活動は言うまでもなく、製菓機械の現地製造拠点として、マスダックのグローバル戦略における貴重な役割を果たしている。

こうした国内外での躍進ぶりが高く評価され、2014年にマスダックは、経済産業省が選定する「グローバルニッチトップ企業100選」に選ばれた。これは、産業構造の変化にともなってニーズが高まっているニッチ分野において高い世界シェアを有する中堅・中小企業を、各ジャンルから横断的に100社選出し、国として強化を図っていこうという、日本の新世界戦略にもとづいたものである。そのグローバルニッチトップ企業に選定されたことを契機に、マスダックではこれまで以上に海外戦略に攻勢をかけようと、決意も新たに奮闘している。

奮闘といえば、現・代表取締役社長の増田文治氏は、製パン機械および製菓機械の事業者で構成される協同組合日本製パン製菓機械工業会の理事長を務めるなど、名実ともに日本の製菓機械業界をリードする存在となっている。たとえば中国市場攻略についても、増田氏はマスダックと他の製菓機械事業者との協調および連携を呼びかけ、日本の製菓機械事業全体の将来を考慮した体制を整えて市場に攻め込むという戦略を構築している。そこには、単にビジネス展開を広げ、業界のさらなる繁栄を願うこと以上に、「世界の人々に安全でおいしいお菓子を食べてもらい、幸せな人生を送ってもらいたい」という増田氏の熱い思いが満ちている。

本書では、日本の菓子製造に革新をもたらし続けるマスダックの60年以上に及ぶ歴史をたどりながら、創業者である増田文彦氏の技術開発力および、文彦氏から受け継いだマスダックを世界企業へと躍進させている増田文治氏の経営手腕を、詳しく紹介したいと思っている。グローバルニッチトップ企業として躍進するマスダックの姿から、読者が日本経済の将来に新たな可能性を確信し、一人ひとりがそれぞれの立場で世界市場における日本の存在感を高めていこうと意欲を奮い起こすきっかけになれば、著者としてこれ以上の喜びはない。

なお、マスダックの創業者であり、1999年に代表取締役社長の座を退いてからは名誉会長としてマスダックおよび日本の製菓機械業界を見守ってきた増田文彦氏は、本書執筆中の2019年3月11日に永眠された。93歳だった。ここに謹んで増田文彦氏のご冥福をお祈りする。

また、本文中の敬称は略させていただくことを、あらかじめお断りしておく。

2019年4月  鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 世界に挑む製パン製菓機械産業

世界を駆けるジャパン・オリジナルの食品機械
今後の伸長が期待される食品機械の輸出
日本の食品機械を世界に発信する
世界的な日本食ブームが食品機械の輸出を牽引する
今後も成長が期待される日本の菓子
菓子は不況にも強い
高いハードルに挑み続ける製パン製菓機械メーカー
「食の安全・安心」に対応したデファクトスタンダード
急がれる先端技術の導入と活用


第2章 製菓機械のエクセレントカンパニー「マスダック」

製菓機械市場を牽引してきたマスダック
「機械製造」と「菓子製造」の2つの事業を展開
小麦粉や卵の季節変動まで考慮して機械化する
機械化の成功で菓子メーカーが大化け
どんな困難も技術力で乗り越えていく
「マスダックに頼めば間違いない」
マスダックは菓子もつくる
いち早く海外市場に進出
海外市場でも機械の品質の高さが高評価
国際的な安心・安全基準をすべてクリア
グローバルニッチトップ企業に認定される
創業社長から国際派社長へのたすきリレー
「経験技術」を中核技術として
社是は「水五訓」


第3章 機械とOEMで菓子市場を支える

最先端技術で「伝統の味」から「新しいおいしさ」まで自在につくる
マスダックの代表的な製菓機械
豊富な知識と経験を持つ、菓子メーカーのベストパートナー
「これぞ東京みやげだ!」という菓子をつくる
世界のファクトリーモデルとなっている「東京ばな奈」工場


第4章 機械づくりの天才・増田文彦の歩み

機械屋、菓子と出合う
自動まんじゅう機の完成
新日本機械工業を設立
マスダックのシンボルである全自動どら焼機を開発
自動サンド機によりサンドパンブームを起こす
ワンウェイで高級菓子をつくる機械を次々と開発
不可能と言われていたシュークリームの専用ラインを実現
菓子の開発・製造事業にも進出
千代紙に包まれた和菓子の機械化に成功
万能製菓機「システムワン」を開発
蒸籠と同様に蒸しあがる蒸し機を開発
「マスダック」ブランドの誕生
増田文彦、勲四等瑞宝章を受章


第5章 改革、そして更なる飛躍へ
― 第2創業期を迎えたマスダック ―

増田文治、社長に就任
アメリカの製パン研究所「AIB」で学ぶ
欧米の菓子市場事情を熟知
茨の道からのスタートだった社長としての第一歩
涙とともに行ったリストラの3年後、奇跡的な復興を遂げる
マスダックヨーロッパを設立して海外事業を積極化
日本の和洋菓子のノウハウを海外に広げていく
マスダックを貫く「おもてなしの精神」
社名をマスダックに変更し、同時に新食品工場を完成
受賞ラッシュが証明するマスダック製菓機のスーパー品質
東日本大震災で菓子の力を実感
創業60周年を迎え、新しいコーポレートスローガンを策定


第6章 グローバル企業への飛翔

機械事業と食品事業、双方の製造拠点を再整備
「マスダック」のもとに各会社を統合
グローバル企業を視野に世界水準の人材構成を実現する
充実した研修制度で有能な人材を育成していく
研修の最大の目的はマスダックの将来像を共有すること
グローバル企業へと、さらに進化を進めていく
2030年のマスダック像


IN通信社の本 セミオフィシャルサイトへ行く




« 『合格にいちばん近い予備校 東京アカデミー』 前書きと目次 | トップページ | 『ACNグループの挑戦』 前書きと目次 »

**鶴蒔靖夫」カテゴリの記事

*製造・メーカー」カテゴリの記事

菓子と笑顔を機械でつなぐ 菓子づくりのオンリーワン企業」カテゴリの記事

カテゴリー

無料ブログはココログ