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2019年11月

2019/11/28

『生きる力を支える医療』 前書きと目次

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生きる力を支える医療
~歯科からはじまる医療革命~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-368-9
初版発行:2012年6月8日 初版発行




はじめに

東日本大震災から一年が経過した。しかし、東北の被災地はいまだ復興の途についたばかりであり、これからが本格的復興に向けて、日本の底力が試されるときである。

今回の震災では命の尊さとともに、「生きる力」について改めて考えさせられた人も多いのでないだろうか。震災直後には一人でも多くの命を救うため、国内各地はもとより、海外からも医療支援チームが続々と被災地入りした。そうした一般の医療チームの陰に隠れ、その活躍ぶりが意外に知られていないのが歯科医療チームの存在である。

災害発生時にまず歯科医師に求められる重要な任務が身元確認作業だ。東日本大震災による死者・行方不明者は約一万九〇〇〇名にのぼるが、日本歯科医師会によると、震災翌月の四月時点で一一〇〇名を超える全国の歯科医師が身元確認派遣に登録。早速、被災地や警察庁の要請を受けて被災各県に派遣され、身元確認作業にあたった。

歯科医療界の震災復興支援活動は、震災直後の身元確認作業から、その後は本来の役割である歯科医療や避難所で生活する人たちの口腔ケアなど、歯科保健活動が重要な仕事となっていった。

そこで、全国各地の歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士の歯科医療チームが現地入りするとともに、歯科医療機器メーカーからは緊急支援物資として歯科器材、薬剤、歯ブラシ、口腔清掃材、義歯洗浄剤などが提供され、歯科医療界と歯科医療産業界が一体となって復興支援活動に取り組んだ。

日本歯科医師会でも会長・大久保満男氏を中心に、いち早く災害対策本部を立ち上げ、被災地を訪れて状況把握に努め、政府に対し、仮設歯科診療所の設置を要望した。というのも、ほとんどの歯科診療所が全壊・流出した地域も多く、そうした地域の歯科医療確保のために、国による設置を求めたのである。

政府も歯科医療の重要性を認識し、その案件は第一次補正予算に盛り込まれ、二一カ所の仮設歯科診療所が設置された。

また、避難所や仮設住宅には介護する人がいなければ自分では外に出られない高齢者も大勢いた。避難所のなかには当初、水道がなかなか復旧せず水不足が続いていた地域も少なくなく、そのために口腔ケアが行き届かないことで誤嚥性肺炎を引き起こす危険性も高い状況にあった。

それに加え、高齢者のなかには、入れ歯をなくしたり、入れ歯が合わなくなって、ものが食べられずに困っている人も多かった。そこで巡回診療用に二〇台以上の車が用意され、歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士たちがチームを組んで避難所や仮設住宅を訪問し、訪問歯科診療を行っている。

一般医療が「命を支える医療」とすれば、歯科医療は「生きる力を支える医療」といわれる。生きることは食べつづけることであり、口や歯は人間が日々生きていくためのエネルギーを取り込んだり、人とコミュケーションをとるために会話をするうえで非常に重要な役割を果たしており、それらを支えるのが歯科医療というわけだ。

被災地ではこれからもまだまだ長い戦いが続くだろうが、被災者の復興に向けた生きる力を支えつづけていくためにも、歯科医療界、歯科医療産業界が果たすべき役割はますます大きくなっていくものと思われる。

もちろん、口や歯の健康にかかわる歯科医療の重要性は被災者に限ったことではない。口腔の健康は生活の質(QOL)の向上に直結するもので、歯科疾患による歯の喪失は、食べる、話すといった機能が損なわれるだけでなく、糖尿病、動脈硬化、肺炎など全身疾患とも関連することがさまざまな研究データから明らかになっている。

平成元(一九八九)年からは、当時の厚生省と日本歯科医師会により、「八十歳になっても二〇本、自分の歯を保とう」という「八〇二〇運動」が提唱され、国民運動として展開されてきた。一生、自分の歯で健康的な食生活が楽しめるよう、子どものころからのデンタルケアの重要性を打ち出したものだ。

実際、高齢になって歯がたくさん残っている人ほど元気で、認知症にもなりにくいというデータもあり、仮に歯がなくなっても、しっかりした義歯が入っていれば、健康悪化の度合いは低くなる。

だが、日本人の場合、一般的には歯が痛いなど、なんらかの異常を感じはじめてから歯科を受診しようとする人が多く、欧米に比べ、予防に対する意識が低いことも否めない。これは、日本の医療保険制度が治療重視のかたちをとってきたことが、大きく影響していると考えられる。

こうした事態を考慮し、政府は平成二十三年八月に「歯科口腔保健の推進に関する法律(歯科口腔保健法)」を制定・施行している。この法律では口腔の健康が国民の健康を維持するうえで極めて大きな要因になっているという事実を示すとともに、口腔の健康は日々の予防活動によって実現することが明記された。

まして日本は世界に冠たる長寿国である。いくつになっても健康で自立した生活を営める健康長寿社会の実現に向けて、歯科医療の果たすべき役割はいちだんと増してくる。

小さいころからの歯磨き習慣の定着などにより、むかしに比べ、むし歯の患者数は激減したが、代わって増えてきたのが歯周疾患患者だ。それにともない、歯科診療の形態は局所的な治療にとどまらず、口腔機能の改善、維持・向上をはかるため、予防を中心とした疾病管理へとシフトしつつある。そうした診療形態の変化に即した新たな歯科医療技術を確立するためには、新規医療機器・材料の開発が不可欠になってくる。

日本の歯科医療技術は、いまや世界的にみても高い水準にあるが、医療技術の高度化は歯科医師の技術だけで実現されるものではなく、歯科医療機器や歯科材料の改良・開発なしには考えられない。事実、これまでも、日本のものづくりの技術から生み出されるすぐれた歯科医療製品の数々が、歯科医療の発展に大きく貢献してきたのである。

とりわけ歯科医療技術と歯科材料工業は唇歯輔車(言葉の意味の詳細は本文にて)の関係にあるといわれるように、わが国の歯科医療技術は歯科材料の発展とともに育まれ、その歴史はおよそ九十年前にまでさかのぼる。

当時、歯科材料は外国からの輸入に依存していたのだが、国産の歯科材料としてセメント材料の独自開発・製品化を成功させたのが、株式会社ジーシー(本社:東京都文京区、代表取締役社長:中尾眞氏)である。

創業は大正十(一九二一)年。一般の人への社名浸透度は低いものの、歯科医療総合メーカーとして長年、わが国の歯科医療産業を牽引してきた同社は、世界の大手メーカーとも肩を並べ、現在では世界一〇〇カ国以上で約六〇〇種類の製品が販売されている。ジーシーの歩みは日本の歯科医療機器産業の歴史と歩を同じくするといっても過言ではない。

同社には創業者の一人で、現社長の祖父にあたる中尾清氏が提唱した「施無畏」の精神、すなわち、相手の立場に立って考え、行動するという教えが社是として脈々と受け継がれ、相手の身になった真のものづくりが実践されている。

歯科医療製品を通じて、世界中の人々に「生きる力を支える医療」を提供するとともに、健康長寿社会の実現に貢献する企業グループでありつづけたいというのが同社の基本的な考えだ。

歯科材料分野では国内ナンバーワンであり、国内シェアの約三割を占めているが、非上場の方針は一貫して揺らぐことはない。企業として利益を確保するのは、あくまでも歯科医療製品の研究・開発を続けていくためであり、歯科医療の発展を使命と考えるからだ。同社では社員をはじめ、歯科医療従事者をなかまと呼んでいる。それは、「会社は投資家が動かすのではなく、なかまが動かすもの」というスタンスで、創業以来、貫いている。

同社代表取締役社長・中尾眞氏は、平成二十三年六月まで六年間にわたり、日本歯科商工協会会長を務めていたが、その間、平成十九年には、臨床分野の日本歯科医師会の会長・大久保満男氏、学術分野の日本歯科医学会の会長・江藤一洋氏らとともに臨学産の三者協議を進め、歯科医療界としては初めての「歯科医療機器産業ビジョン」をまとめ、政府に提言。これは現政権の新成長戦略にも盛り込まれている。

世界最速で超高齢社会へ突き進んでいる日本は、健康長寿社会を実現するためにも、生きる力を支える歯科医療を充実させ、世界にその範を示していく必要がある。

本書では、わが国の歯科医療の現状と課題を検証しつつ、世界的に高齢化が進むなか、多様化・高度化する歯科医療へのニーズに応え、地球市民のQOLの向上をはかるために、歯科医療産業の果たす役割について、ジーシーの活動を例に考察したい。

本書をご一読いただき、健康長寿社会の実現に向けて、一人でも多くの方が生きる力を支える歯科医療の重要性を認識し、最先端の歯科医療技術、ならびに歯科医療機器・材料の開発に理解・関心を示してくだされば、これに勝る喜びはない。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。


平成二十四年四月  鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 生涯にわたり「生きる力」を支える歯科医療

健康寿命延伸のカギを握る口と歯の健康
目標値を上回る「八〇二〇運動」の成果
先進国ほどむし歯は減少傾向に
むし歯は補綴治療から予防の時代へ
世界的な広がりを見せるMIの概念
むし歯に代わって増加してきた歯周病
歯科疾患と全身疾患とのかかわり
欧米諸国に比べて低い歯科受診率
歯科医師は本当に供給過剰か?
歯科医療の新たな可能性を探る
口腔衛生に目を向けはじめた国の施策
生涯を通じた口腔ケアを推進
臨学産の連携で策定された歯科医療機器産業ビジョン


第2章 品質力を誇る日本の歯科医療製品

歯科医療分野でも高評価の日本のものづくり
ユーザーの声を反映した新製品開発
WHOとの共同研究で開発途上国の歯科医療に貢献
MIコンセプトにもとづく研究開発
画期的なボンディング材を開発
ユーザーの利便性を追求した機能包材
歯科医療製品の国際競争力を強化
「絶対品質」をテーマにした生産拠点
世界のものづくりをリードする人づくりにも注力
高品質な製品づくりを支える品質経営


第3章 歯科医療情報の発信とサービスの提供

歯科医療関係者が集うコミュニケーションの場が誕生
歯科医療従事者と歯科材料製造者は唇歯輔車の関係
歯科医療のグローバル化に向け国際歯科シンポジウムを開催
臨床テクニックが学べる各種セミナーを開催
歯科医療の未来を担う人材育成をサポート
医療のMRに着眼したDR構想
「創る人」「売る人」「使う人」の相互関係
教育サポートでディーラーとの連携を強化
生活者への口腔保健の啓発活動を展開


第4章 日本の歯科材料の進化と歯科医療の発展とともに

歯科材料の国産化時代の幕開け
変革の時代を迎えた昭和初期の歯科医療界
歯科材料の輸入品全盛時代の終焉
戦争という激動の時代を乗り越えて
戦後の混乱から新生日本へ
歯科材料業界の復興に向けて
世界品質に向けての第一歩を踏み出す
歯科医療界の転機となったアメリカ歯科使節団の来日
歯科材料に初のJIS制定
歯科医療の近代化への布石
歯科医療のグローバル化に向けて
世界市場に向けたオリジナル製品の開発
ユーザーの潜在ニーズを掘り起こし予防歯科分野に進出
世界戦略を見据えて社名変更


第5章 健康長寿社会の実現に向けて

二十一世紀は健康の世紀
生涯にわたる「かかりつけ歯科医」のすすめ
高齢化で高まる在宅歯科医療の重要性
在宅用歯科医療機器への開発ニーズ
診断・予防の充実による新時代の歯科医療
インプラント、CAD/CAMへの挑戦が課題
日本の強みである再生医療技術を応用した製品開発
アジアを基盤に日本の歯科医療のさらなる発展を


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2019/11/12

『新たなる大学像を求めて』 前書きと目次

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新たなる大学像を求めて
~共愛学園前橋国際大学はなぜ注目されるのか~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-461-7
初版発行:2019年11月16日 初版発行




はじめに

私が若いころは中学校を卒業すると同時に就職して家計を支える者も多く、「高校を出たら大学に進学する」ということは、いまのようにあたりまえではなかった。高校時代を思い返してみても、進学する者はクラスのなかでもほんの一握りだったように思う。

それもそのはずで、私が高校3年生だった1956年の大学進学率は全体で7.8%にすぎず、男女の内訳を見てみると、男性は13.1%とかろうじて1割を超えているものの、女性はたったの2.3%だった。それに対し2018年度の大学進学率は全体で53.3%だ。男女別では、男性が56.3%、女性が50.1%となっており、男女ともに、2人に1人は大学に進学していることがわかる(文部科学省「文部統計要覧」「文部科学統計要覧」)

こうした状況の背景には、高等教育をめぐる環境の変化がある。

日本では、1973年に209万1983人を記録して以降、出生数の減少傾向が続き、2018年には91万8397人(推計値)と、1973年の半分以下にまで減っている(厚生労働省「人口動態統計」)。それにもかかわらず大学の数は増え続け、1973年には405校だった学校数が2019年には786校(文部科学省「学校基本調査」)と、およそ2倍近くにまで増加しているのだ。

そうしたこともあり、2007年春には入学志願者総数が入学定員総数を下まわり、大学や学部を選ばなければ理論上はすべての受験生が大学に入れるようになる「大学全入時代」が到来するのではないかと、教育関係者のあいだで言われたこともあった。

実際には景気回復の影響もあり、2007年以降も入学志願者総数が入学定員総数を上まわり、「大学全入時代」の到来は見送られたが、その一方で大学を取り巻く現実は、もっと厳しいものになっている。大都市圏の有名大学に入学志願者が集中する一方で、地方の大学や知名度の低い大学は学生を集めることができず、定員割れとなる大学が増えているのだ。なかには経営危機に瀕している大学や、すでに閉鎖に追い込まれた大学も出てきた。

こうした状況を打開するために、文部科学省は2016年以降、定員超過抑制策を段階的に強化してきた。だが、大都市圏にある有名大学の入試は熾烈さを増す一方で、地方にある定員割れの大学とのあいだで二極化がますます進む結果となってしまった。

ただし、地方の大学のなかにも、入学志願者が押し寄せ、定員を満たしているところもある。そうした大学に共通しているのは、偏差値だけではみることができない価値を生み、受験生や地元企業から高く評価されていることだ。

本書で紹介する学校法人共愛学園(本部:群馬県前橋市)は、大学、高等学校、中学校、小学校、こども園、さらには学童クラブまでをも含む、群馬県初の総合学園である。なかでも共愛学園前橋国際大学は、そうした高い評価を得ている大学のひとつとして、そのユニークな取り組みが教育業界からおおいに注目を浴びている。

1999年に開設された共愛学園前橋国際大学は、地方にある小規模な私立大学ながらも受験者数は年々増加傾向にあり、『大学ランキング』(朝日新聞出版)の「学長からの評価ランキング:教育面で注目」部門第5位に2018年版から3年続けて入るなど、躍進著しい大学として知られている。学部は国際社会学部 国際社会学科のみで、「国際社会の在り方について見識と洞察力を持ち、国際化に伴う地域社会の諸課題に対処することのできる人材の養成」を目的にしている。

「いまの社会がどのような人材を求めているか、そのために学生たちにどのような力をつけさせる必要があるかを真剣に考えて、教育プログラムを推進しています」

と、共愛学園前橋国際大学学長の大森昭生氏は語る。その結果として同学は、文部科学省の採択プロジェクト事業であるスーパーグローバル大学創成支援事業の「経済社会の発展を牽引するグローバル人材育成支援(GGJ)」「地(知)の拠点整備事業(COC)」「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」「大学教育再生加速プログラム(AP)」に選定されている。

また、共愛学園前橋国際大学は約1000人の学生を擁するが、そのうちの約90%が県内出身者であり、卒業生の地元就職率も70%~80%と、地方創生への貢献度も高い。

共愛学園前橋国際大学の母体である共愛学園の前身は、1888年にキリスト教宣教師たちによって設立された前橋英和女学校である。1988年の創立100周年を機に共愛学園女子短期大学が開設され、この短期大学を母体に1999年に、共学の4年制大学として共愛学園前橋国際大学は誕生した。キリスト教主義にもとづく「共愛=共生」の精神は、開校以来の教育理念となっている。

いまでは「地方大学の鏡」とでも言うべき共愛学園前橋国際大学だが、かつては苦境に立たされていたこともある。設立初年の1999年度こそ入学者が入学定員を上まわったものの、2年目からは早くも定員割れに陥り、2001年度にはFランク寸前にまで評価が落ちてしまったのだ。

そこで、起死回生を図るための対策として2002年から、まずコース制を導入した。単一学部である国際社会学部 国際社会学科を「英語コース」「国際協力・環境コース」「情報・経営コース」「地域・人間文化コース」の4つのコースに分け、「なにを勉強するか」を明確化したのだ。なお、その後に何回かのコース変更が行われ、現在は「英語コース」「国際コース」「情報・経営コース」「心理・人間文化コース」「児童教育コース」の5コースとなっている。

そして、もうひとつの対策として、「資格特待生制度」を導入した。これは、英語検定など大学が指定した資格を有している学生に対し、授業料を全額免除するという大胆な制度である(現在は初年度の授業料のみ)

その一方で組織改革にも取り組み、教職一体となって「人件費抑制規程」を定め、人件費が帰属収入(学校法人の負債とならない収入)の55%を超えた場合、その分を全員一律で給与カットするという画期的なしくみを構築した。

なお、共愛学園前橋国際大学では、具体的な大学運営に、すべての教職員が参画する。こうしたフラットな組織によるガバナンスを実現していることも、団結力を強める大きな要因となっている。

そして2016年には小学校を新設し、共愛学園は総合学園となった。

「世代間の交流が可能になったことで得られるようになった教育効果は計り知れません」

と、総合学園としてのメリットを共愛学園理事長の須田洋一氏は強調する。

本書では、長い歴史のなかで培った「共愛=共生」の精神を現代のニーズにマッチさせ、地域に求められる教育機関のあるべき姿を実現させた共愛学園の、さまざまな取り組みを紹介するとともに、同学園の今日までの歩みをたどりつつ、そこにみえる共愛学園前橋国際大学の教育哲学に迫ろうと思っている。それは、将来の進路に迷う青少年はもとより、教育のあるべき姿に思いをはせる多くの一般読者にとっても、貴重な指針となるはずだ。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。


2019年10月  鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 大学教育に求められる新たな価値とは

世界に取り残されつつある日本の大学
日本の大卒者が即戦力にならない理由
「大学全入時代」の到来で危惧される高等教育の劣化
平成の30年間で4年制大学が大幅増加
人気大学と定員割れ大学の二極化が加速
大学偏差値で採用を決める企業体質
新たな価値を模索する地方大学の試み
「選ばれる大学」となるためには、なにが必要か


第2章 V字回復を実現させた数々の施策

学内改革を成功させ、いまや全国大学ランキング5位
コース分けで学びの方向性を明確化
「資格特待生制度」で授業料全額免除
推薦の評定平均を維持してレベルの低下を防ぐ
全教職員対象の人件費抑制規程
「学生中心主義」を貫いて、めざす方向を共有
「地学一体」でグローカル人材を育成
地域から得られる学びで大きく育つ学生たち
「倒産か再生か」の分かれ道になるもの


第3章 グローカル人材を育成する独自のカリキュラム

カリキュラムの中核をなす「共愛コア科目」と「12の力」
「真の国際人の育成」をめざす「英語コース」
実体験で国際的知識を磨く「国際コース」
企業、地域、社会の課題解決スキルを身につける「情報・経営コース」
人間とのつながりを学ぶ「心理・人間文化コース」
教育と地域の国際化を学ぶ「児童教育コース」
「ちょっと大変だけど実力がつく大学です」がモットー
即戦力となる人材を育む研修の数々
文部科学省採択プログラムに同時採択
「GGJ」への採択がもたらしたもの
充実した就職支援
就職活動でも役立つ「Kyoai Career Gate + S」


第4章 地域社会とともに歩む総合学園

小学校の開校により群馬県初の総合学園に
幼稚園と保育園を統合し、幼保連携型認定こども園へ
受験に縛られない、ゆとりのある中学校生活
「英語の共愛」で名高い共愛学園高等学校
一貫教育で伝える「共愛」の精神
総合学園ならではの世代間交流による教育効果
地元への恩返しの意味を込めて学童クラブを開所


第5章 「共愛」の理念とともに歩んだ131年

宣教師たちが起ち上げた前橋英和女学校
世の中に先駆けて取り組んだ女子教育
創立100周年で設立した女子短期大学
短期大学を母体に4年制大学を設立
共愛学園と共に歩む理事長・須田洋一の50年
2018年問題を乗り越えた若き学長・大森昭生
現代の「共生の精神」につながる「共愛の理念」


第6章 日本の明日を担うグローカル人材の育成に向けて

地域に必要とされる大学
地域人材の定着・育成をめざす産官学連携の取り組み
地元学生9割、地元就職8割の実績
学生は大学運営のパートナー
次世代のグローカルリーダー育成へ向けて新プロジェクト始動
「共愛・共生」社会の担い手として飛び立つ卒業生
共愛学園前橋国際大学が描く未来像


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2019/11/05

『屋根の革命』 前書きと目次

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屋根の革命
~屋上庭園で、木造住宅に進化を~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-369-6
初版発行:2012年7月8日 初版発行




はじめに

高層マンションが建ち並ぶ現代社会においても、「庭付き一戸建て」は日本人の夢だ。また、平成二十三(二〇一一)年に内閣府が実施した「森林と生活に関する調査」において、「新たに住宅を建てたり買ったりする場合、どんな住宅を選びたいか」という問いに対して、約八割の国民が「木造住宅を選ぶ」と答えている。

しかし、仮に一戸建ての木造住宅を手に入れたとしても、庭付きの夢を実現するのはなかなかむずかしいのが実情だ。特に地価が高い都市部において増えてきた狭小住宅などでは、ほとんどの場合、庭をつくるスペースはないといっていいだろう。

一方、無機質だった鉄筋ビルでも近年、変化が生じてきた。屋上を植物庭園にした「屋上緑化」が盛んになっているのだ。屋上緑化はヒートアイランド現象の緩和、断熱性の向上など、環境への効果とともに、「木や緑」による癒し効果という側面からも評価されている。このように、環境や癒しの側面から、現代人は「木や緑」を住まいやオフィスビルに取り入れることの重要性を感じているということを指摘できるだろう。

とはいえ、一般の木造住宅では、屋上緑化はなかなか浸透してこなかった。既存の木造住宅に屋上緑化を施す場合、勾配屋根を陸屋根にして施工する必要がある。このときの防水工法や施工者の習熟度の問題から、水漏れなどのトラブルが発生するケースがまま見られた。こうなると、施主はもちろん、施工を請け負う工務店もおよび腰にもなる。

そうしたなか、むずかしいと思われていた木造住宅における「屋上緑化」を実現できる技術を確立し、着実に実績を伸ばしている企業がある。それが本書で紹介する株式会社栄住産業(本社:福岡県福岡市、代表取締役:宇都正行氏)である。

同社は、昭和五十年に創業、以来三十七年間にわたり、金属屋根防水工法「スカイプロムナード」を中心に事業を展開してきた。これは、金属板で防水面をつくり、専用のジョイント材をはめ込む工法である。金属板の耐久性がそのまま防水層の耐久性となり、固定して継ぎ目をジョイントでつなぐだけなので、施工の手間が大きく軽減できるほか、近隣に迷惑となる騒音も発生しない。また、地震や火事にも強く、健康に悪影響をおよぼす恐れのある化学物質も一切使用していない。さらに同工法に対する自信の裏づけとして、亜鉛メッキ鋼板によるスタンダード工法で十年、ステンレス鋼板によるハイグレード工法で三十年の防水保証を付加したことで、工務店の保証負担も軽減。すでに全国で約二五万棟のバルコニー防水と屋根を手がけてきたが、これまでクレームはほとんどないという。

栄住産業の代表取締役・宇都正行氏は、昭和四十三年に鹿児島経済大学を卒業すると、大学時代に貯めた資金で牛乳販売店を設立した。ところが、事業を拡大するとともに管理のむずかしさにぶつかり、大きな赤字を抱えて廃業に追い込まれる。その後、借金を返済するために、東京の会社に勤めた宇都氏は懸命に働き、わずか一年半ほどで借金を完済すると、鹿児島に戻り、父親の工務店に入社した。

それから間もなくして、友人の紹介で金属防水によるバルコニー工法の存在を知り、「常に人と違うことをしなければ、生き残れない」と感じていた宇都氏は、この工法に専念して事業展開をはかるべく、父親の工務店を飛び出し、昭和五十年に栄住産業を創業する。

その後、鹿児島から福岡に進出。九州一帯で順調にシェアを拡大し、タマホームのバルコニー受注をきっかけに、平成十七年に関西、翌平成十八年には関東に営業所を開設するまでに成長した。しかし、知名度の低さからなかなか注文が取れずに苦戦を余儀なくされるのだった。

そんなある日、東京で分譲戸建て住宅の折込チラシを見て、宇都氏はその狭さと価格に驚かされた。たった二五坪で七八〇〇万円。このとき、「われわれの金属防水技術なら、東京の狭小住宅の屋根に庭を提供できるはずだ」とひらめいた。すでに九州で屋上庭園の施工実績のあった栄住産業は、屋上庭園を前面に打ち出す戦略に切り換えた。

現在、同社の「天空の楽園」をキャッチフレーズに展開した屋上庭園は、ゲリラ豪雨に見舞われても雨漏りしないことが認められ、提携する地場工務店三〇〇〇社に導入されている。

この屋上庭園とならび同社の事業のもう一つの柱となっているのが、「マグソーラーシステム」である。従来の太陽光パネルは、設置のために屋根に穴を開けなければならず、経年劣化にともない、そこから雨漏りするリスクがあった。その点、マグソーラーシステムは屋根に穴を開けずに強力磁石を使用して太陽光パネルを設置していくので、雨漏りのリスクがない。また、勾配屋根、陸屋根の両方に対応できるうえ、大がかりな施工を必要としないため、非常に簡単になった。そうしたさまざまなメリットを受けて、省エネ意識の高まっている現在において、マグソーラーシステムの受注は急増し、同社のもう一つの有力事業にまで成長している。栄住産業ではこの二本柱を軸に、五年後には全国に三五カ所の営業拠点を設け、年商二〇〇億円を当面の目標に掲げている。

そんな同社の経営の基本理念は、「工務店さんのお役立ち」の精神である。提携工務店の発展こそ、自社の発展ととらえ、地場工務店が不得意な領域である情報収集を迅速に行い、素早く発信してサポートしている。そのなかで信頼関係を築きあげ、工務店の悩みを聞きながら、それを解決するために知恵をしぼり、次の開発へとつなげていくのだ。それだけに、宇都氏の工務店に寄せる思いは並々ならぬものがある。

本書は、独自の防水技術で「屋上緑化」を進め、日本の屋根に革命を起こす同社の取り組みを紹介しつつ、創業者・宇都正行氏の経営理念、人生哲学に迫るものである。新設住宅着工戸数の減少にともない、ますます競争の激化が予想される住宅業界において、地場工務店が生き残っていくためのヒントになるはずだ。

住まいは誰にとっても、もっとも身近なテーマである。それだけに、現在、住宅産業にかかわっている人のみならず、これからの住宅のあり方を考えるすべての読者に本書を手にとってもらいたいと願っている。それが、地場工務店の復活、そして、日本の住宅業界の隆盛につながれば、これほどうれしいことはない。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。


平成二十四年五月  鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 健康志向とエコ需要時代の工務店

国民の八割が「本当は木造住宅に住みたい」
歴史と個性を失ってしまった日本の家
新建材や家具のシックハウス問題
ガンの発生率が低く、長生きする木造住宅
鉄筋から木造へ変化する教育現場
ヒートアイランド現象に有効な屋上緑化
コミュニティ空間の屋上緑化
進化する木造住宅の屋上庭園
意識改革のときを迎えた地場工務店
団塊世代のリフォーム需要はこれから
地場工務店は家の「かかりつけ医」だ
地場工務店の活性化は内需拡大になる

第2章 屋上緑化とは

日本人の住まいの知恵
屋上緑化のメリット
屋上緑化の注意点
防水工法の種類
知名度の高いFRP防水だが、弱点がある
選ばれはじめた金属防水
弱点を克服した金属防水
屋上緑化に適した植栽とは

第3章 木造陸屋根防水工法「スカイプロムナード」の検証

雨や火山灰の多い九州で鍛えられた防水工法
設計者の価値観をひっくり返す「新しい屋根」
「スカイプロムナード」の性能とは?
スカイプロムナードで施工する屋上緑化
スカイプロムナード~屋上緑化までの施工手順
NPO法人日本金属防水工業会の防水保証体制
屋上緑化防水工法の新保険制度「Oh! みどりちゃん」
ドイツの「パッシブハウス」、国内認定第一号に採用される
建築家とのコラボによる、スカイプロムナード導入事例


第4章 磁石式太陽光パネル設置工法「マグソーラーシステム」

クリーンな「再生可能エネルギー」
災害時の停電に強く、売電ができ、補助金も
低コスト、高性能の新型架台の登場で、太陽光発電に追い風
従来工法の問題とは
穴を開けない、雨漏りしない工法へ
品質と保証体制
開発は現場の声を手がかりに
崖に住宅をつくればコストは安くなる
間伐材でつくる木造シェルター
スーツを破いてもタダでは起きない
マグソーラーシステムの開発
「エコハウス&エコビルディングEXPO」の成功
東日本大震災で高まった太陽光発電の需要
膨大な労力と経費をかけ、全メーカー対応型へ
「着脱がラク」というメリットが需要を広げる
個人発電の時代
太陽光発電から不動産業が変わる

第5章 創業者・宇都正行の経営理念と人生哲学

父への劣等感
牛乳販売店を経営するが失敗
東京に出稼ぎ、借金返済
度量の大きな会社で学んだこと
「栄住産業」創業、バルコニーの金属防水へ
火山灰に敗北、改良を重ねて完成
鹿児島から福岡へ進出
「工務店のお役立ち」の原点
たった二五坪で七八〇〇万円!?
バルコニーから屋上緑化への戦略変更
NPO法人「日本金属防水工業会」を設立
屋上緑化への高評価を得る
失敗を恐れるな
中小企業だからこそ、先進的な新しい発想が生まれる

第6章 工務店のお役立ち企業・栄住産業の挑戦

五年後の目標は年商二〇〇億円
屋上庭園の力
新たな技術・商品開発で「工務店さんへのお役立ち」
人材育成とバックアップ体制ですぐれた人材開発を
国による工務店のバックアップ
素材で売るのではなく、夢を売る
住宅を供給する側の意識も変わる
工務店は自らの強みを自覚せよ
バルコニーのない家はいらない時代へ
事業の根幹に使命感を持ちたい
家+庭こそ「家庭」である
工務店の発展こそ、栄住産業の発展である


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