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2019/05/13

『合格にいちばん近い予備校 東京アカデミー』 前書きと目次

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合格にいちばん近い予備校 東京アカデミー
~合格の決め手は『生講義』
 圧倒的な合格実績を誇るオンリーワンの就職予備校~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-455-6
初版発行:2019年5月18日




はじめに

景気の回復基調と深刻な人手不足を背景に、2018年4月の有効求人倍率は1.59倍、正社員の有効求人倍率も1.09倍と高水準を維持し、大学生の就職戦線においても近年は学生優位の超売り手市場が続いている。

これまでも企業は、景気がよいときは攻めの経営で採用枠を増やし、景気が悪くなると採用枠を絞るため、学生の就職は、景気に連動して明暗が繰り返されてきた。バブル経済の崩壊やリーマンショックの影響により景気が低迷した時期には、多くの企業が採用を控えたため学生の就職活動は苦戦を強いられ、「就職氷河期」とも言われたものだ。

せっかく大学を卒業しても、そのときの景気が悪ければ、希望する企業への就職は難しくなる。そのうえ、たとえどこかに就職できたとしても、その後の社会状況によっては企業の倒産やリストラという憂き目にもあいかねない。日本はバブル経済の崩壊後、景気低迷期が長らく続き、その間の就職環境はずっと、そのような不安定な状態にあった。

その結果、若者の持つ就職への意識は安定重視に向かった。安定職種の代表格である公務員や教員の人気が高まると同時に、確かな技術や知識に裏打ちされた資格の重要性が見直され、若者に限らず、さまざまな資格取得をめざす人々が急増した。資格取得をサポートする専門学校や予備校には受講生が殺到し、資格取得ブームが到来したのだ。

ひと口に「資格」といっても、国家資格、公的資格、民間資格の3種類があり、その内容も多岐にわたる。特定の職に就くためには取得が必須の資格もあれば、必須ではないが持っていれば就職に有利な資格もある。そうした資格を企業へアピールするための「武器」ととらえ、多くの学生が採用内定を求め、厳しい就職戦線へと挑んだ。

資格を武器に、よりよい企業への就職をめざす者がいる一方で、取得した資格を活かして自ら開業することをめざす者たちもいる。かつて、「高度経済成長期」と言われた1950年代後半から1970年代前半にかけて、弁護士や司法書士、公認会計士、税理士、不動産鑑定士、社会保険労務士などといった専門職の資格を取得して、それを武器に独立開業をめざすための、資格取得ブームが起きたことがある。会社勤めと違い、独立開業すれば定年もないし、資格があれば一生食いっぱぐれることもないと思われていた。

しかし現実には、資格を取得したからといって必ずしも食べていけるとは限らない。顧客がいなければ、苦労して取得した資格も宝の持ちぐされになってしまう。つまり、「職を得るため」という観点では、資格ならどんなものでも役に立つというわけではなく、職につながりやすい資格と、そうではない資格があるのだ。

たとえば、看護師をはじめとする医療系の資格などは、公共性が高いうえに、超高齢社会にあってはますます必要とされるものであるため、「安定した就職」に結びつきやすい。

しかし「安定性」という点では、やはり公務員や教員といった公益性や公共性の高い仕事に勝るものはないだろう。それを反映してか、空前の売り手市場と言われる昨今の就職戦線においても、公務員の人気には根強いものがある。少子化によりひとりっ子が増えていることもあって、最近の若者は地元志向が強まっており、とりわけ地方公務員の人気が高まっている。

また、AI(人工知能)の進化により、多くの仕事が機械に奪われ、職業によっては10年後、20年後には消えてなくなるのではないかと言われているものもある。その点でも、公務員や教員、看護師などといった公共性・公益性の高い仕事はなくなる可能性が低く、安定性は折り紙つきだと言えるだろう。

そうした状況下において、教員を含む公務員系の採用試験や看護師を中心とした医療・福祉系の国家試験などの受験対策専門予備校として屈指の合格実績を誇るのが、本書で紹介する株式会社東京アカデミー(本社:大阪市、理事長兼代表取締役社長:佐川泰宏氏)である。

東京アカデミーの創業は1967年と、すでに半世紀以上の歴史を有する。現理事長である佐川泰宏氏の父の先代理事長が、東京、大阪、名古屋の3カ所で、司法試験、司法書士、不動産鑑定士、社会保険労務士、宅地建物取引主任者(現・宅地建物取引士)の資格試験対策講座を開講したのが始まりだ。その後、公認会計士、税理士、中小企業診断士、簿記、行政書士など、講座の種類を増やしていった。

しかし、前述のように当時は資格取得ブームの時期であり、同業他社の参入が相次いで、資格試験対策のための専門学校や予備校が、全国各地に続々と開設されていった。そのため1980年代のなかばには、こうした資格取得の市場はすでに飽和状態になっていた。

そうした風潮をいち早く感じとった先代理事長は、高校生を対象とした試験対策を開拓しようと、1985年に、高校卒業程度の公務員採用試験と看護学校受験のための対策講座をスタートさせた。これを機に東京アカデミーは、資格試験対策予備校から、公共性・公益性が高く社会貢献につながる仕事に就く人をサポートするための就職試験対策予備校へと、徐々に事業の中身が切り替わっていった。

「『受講生からいただいた受講料は必ず還元しなさい。親切にしなさい』というのが先代理事長の教えでした。受講料の還元とは、受講生を各種試験に合格させることにほかなりません。そして『合格者をたくさん輩出して地域社会に貢献してもらうことで、弊社も同時に社会貢献していく』という先代の教えは、いまでも弊社の基本的理念として、脈々と受け継がれています」

と、現理事長の佐川泰宏氏は語る。

1988年に先代理事長から経営を引き継いだ佐川氏は、この理念のもとで全国展開に踏み切り、現在は北海道から鹿児島まで全国32都市に校舎を擁するまでに拡大させている。その間、公務員試験対策講座を拡張するべく、高校卒業程度だけでなく、大学卒業程度の公務員試験対策講座や教員採用試験対策講座も創設した。地方公務員や教員の試験は自治体によって出題傾向が異なるため、全国32都市に展開する校舎以外にも43拠点で各種の試験対策講座を開講し、地元に特化した情報をもとに、公務員や教員をめざす人たちの採用試験合格を全面的に支援している。

一方、医療系の講座も、受講生を看護医療系学校入学へと導くだけでなく、1996年からは同業他社に先駆けて看護師国家試験対策講座を開講し、入学から国家試験合格、さらには就職までをトータルでサポートできる体制を整えた。いまでは看護師国家試験対策に強い予備校として定評を得ており、全国32校の東京アカデミーのほか、多くの看護医療系大学や専門学校、高等学校にも講師を派遣して、看護師国家試験対策の学校内講座を実施している。

東京アカデミーでは現在、国家公務員、地方公務員、教員の採用試験、看護医療系学校の入学試験、看護師、管理栄養士、社会福祉士、介護福祉士、ケアマネジャーなどの資格試験の、それぞれの対策のための通学講座および通信講座、学内講座、模擬試験を企画・運営しており、受講生の総数は年間約27万人に達するという。

これほど多くの人たちから東京アカデミーが選ばれる最大の理由は、なんといっても合格実績の高さにある。ちなみに2018年度の合格者数は、大卒程度公務員が6226名、高卒程度公務員が3816名、教員採用が6010名、看護師国家試験が2万3606名であり、特に看護師国家試験においては、合格者の実に5人に2人以上が東京アカデミーの講座の受講生だという。

このように高い合格実績をあげられるのは、「三位一体で最高の結果を」をスローガンに、講師、受講生、教務スタッフの3者が力を合わせて「合格」というひとつの目標に向かって突き進んでいるからだ。

また、合格実績のほかに、生講義の実施や、きめ細かな受講生のフォロー、オリジナルテキストなどの質の高さも、東京アカデミーが選ばれる理由としてあげられる。
昨今はDVDやインターネットを活用した講義を行う予備校も増えているようだが、東京アカデミーでは100%生講義にこだわっている。

「生講義へのこだわりが、弊社が運営する講座の特徴のひとつであり、大きな強みにもなっています。双方向のコミュニケーションを大事にする生講義であれば、受講生の理解度に合わせて講義の速度を臨機応変に変えたり、その場で質疑応答ができたりもしますからね。受講生が理解度をどんどん深めていけるという点で、生講義に勝るものはありませんし、直近の時事ニュースも瞬時に講義に盛り込めます。これが合格者の増加にもつながっているのだと思います」

と、佐川氏は絶対的な自信を見せる。

また、東京アカデミーは試験情報の分析力が優れており、カリキュラムも最新の試験傾向を意識して戦略的に組まれているため、学習の成果がむだなく合格に結びつくというメリットもある。公務員試験、教員採用試験、看護師国家試験など、それぞれの試験対策の中身については本編で詳述するが、東京アカデミーは、それらの試験対策予備校のパイオニアであり、リーディングカンパニーでもあると言えるのだ。

本書は、公務員系と医療・福祉系を軸に、公共性や公益性の高い仕事に就くための各種試験対策を徹底サポートする東京アカデミーについて、そこで実践される指導と、それに付随するさまざまな事業活動を紹介しつつ、同業他社の追随を許さない圧倒的な強さの秘密に迫るものである。人生の基盤となる「仕事」のあり方に思いを致す多くの若者や社会人にとって、社会貢献度の高い職業に就くことの意義や、そのための予備校の役割を理解するうえで、本書がなんらかの指針となれば幸いである。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

2019年4月  鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 資格取得から就職サポートへ
~変わりつつある専門予備校の役割~

早く仕事に就くことを軽んじてきた戦後の日本
憂慮すべきは若者の学力低下
社会の要請に応え実学重視の大学も
大学の就職予備校化
バブル崩壊で再来した「資格の時代」
若者の就職意識は安定重視の方向へ
職業選択のキーワードは「3つのライ」
就職は安定志向に加え地元志向が強まる
地方公務員が地方創生のキーマンに
教員志願者減を背景に年齢制限の引き上げも
超高齢社会でニーズが高まる医療・福祉の仕事
「早く、安く、確実に合格」をめざす専門予備校


第2章 圧倒的な合格率で選ばれる東京アカデミー

公務員資格と看護師資格を中心に多様な講座を運営
100%生講義へのこだわり
講師の見極めは、合格に導けるか否か
講師、受講生、教務スタッフの三位一体で合格をめざす
高い合格率へと導く緻密な試験傾向分析
出題傾向に合わせたオリジナルテキスト
受験生に大人気の試験対策教材
受験者数ナンバーワンを誇る各種模擬試験
就職試験で必須の人物(面接)試験対策
何回でも制限なしで受けられる模擬面接


第3章 全国の自治体を網羅する公務員・教員採用試験対策

公務員試験の競争率は低下傾向
地方公務員では人物本位の採用試験も
現場を知るための「官庁・自治体説明会」を開催
目的意識の確立に力を注ぐ
受講生14名でスタートした教員採用試験対策講座
非正規教員の受験者が多い教員採用試験
自治体別の試験傾向に沿ったカリキュラム
試験の内容は受験者の負担を軽くする傾向に
徹底した市場調査で他社との差別化を図る
得意を伸ばす試験テクニック
講師に求められる「ティーチャー」と「トレーナー」の役割
最終合格までを徹底サポート
新学習指導要領にもいち早く対応


第4章 高い信頼と実績を誇る看護師国家試験対策

看護師国家試験対策は学校内講座からスタート
学校別合格率の公表が「神風」となってニーズが急増
本試験の翌日に「解答速報会」を実施
受講生動員の国家試験問題復元プロジェクトを結成
看護師国家試験では毎年1割が落とされる
基礎の基礎を身につけるDランク講座
受験生の70%が正解した問題のみを集めた『でた!でた問』
国家試験の試験地で前日講習「ザ・ファイナル」を開催
多くの看護師を輩出することで看護界に貢献
必修問題の採点除外措置の是非
新設ラッシュが続く看護系大学


第5章 人づくりから国づくりを支える東京アカデミー

企業理念を表す「感」「益」「献」
4項目からなる事業モットーを明示
学科を横断した総合的な視点を持つ
会社組織で受講生一人ひとりをサポート
社員教育や働き方改革にも力を注ぐ
さまざまなかたちでの教育サービスを提供
外国人看護師の輩出にも寄与
社員人材の育成
昭和、平成、令和と、時代に順応した予備校の創造をめざして

《東京アカデミー アクセスMAP》


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2018/11/09

『明日の農業に挑戦』 前書きと目次

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明日の農業に挑戦
~高崎健康福祉大学で学ぶ農業の未来~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-447-1
初版発行:2018年11月15日




はじめに

1970年代、日本は奇跡的な経済成長を見せたが、その陰で農業は弱体化していった。食料自給率は下がり、第1次産業への就労者数も目に見えて減少し、気がつけば、いまや日本の農業を支えているのは大半が高齢者で、後継者がいないという状態になっている。「食」と「農」は国民の生存そのものと直結しているだけに、事態は深刻である。

そこで政府は、2013年から「攻めの農林水産業」を旗印に掲げ、農林水産業を成長産業にするとともに、地域産業の活性化にもつなげていこうと動きだしている。日本の農山漁村が長年にわたって培ってきた潜在力を活かし、世界の食の市場に打って出ようというのである。

政府のこうした動きがどれほどの功を奏するかは不確定だが、私たちが農業に対する見方を変えるべき時期に来ていることは確かだろう。農業を単体のフレームで見るのではなく、農業を基軸に「食」「環境」「健康」を一体のものとしてトータルにとらえる必要がある。

その際に幅広い視点と新たな行動を生むきっかけを与えるのが、アカデミズムとの連携だろう。あるエコノミストは、国境を超えた地域連携とアカデミズムの連携が、農業の活力を生むキーワードだと指摘している。

こうしたなかで、群馬県高崎市にある高崎健康福祉大学(理事長兼学長・須藤賢一氏)が2019年4月に、新たに「農学部」を開設するという吉報が届いた。

高崎健康福祉大学は、「人類の健康と福祉に貢献する」ことを建学の思想に掲げて2001年に開学した4年制大学で、教育、福祉、健康に関する分野の4学部7学科と大学院で編成されている。その特徴は「人を支えるスペシャリスト」を育成していることで、小学校教諭、看護師、社会福祉士、薬剤師、理学療法士、管理栄養士、保健師などをめざす多くの若者が集まってくる。国家試験合格率はどれも全国平均をはるかに超えており、2018年の合格率は、診療情報管理士、管理栄養士、看護師、保健師で100%を達成した。また、就職率も99%以上という高さを誇っている。

高崎健康福祉大学の前身である群馬女子短期大学は、須藤氏の伯母にあたる、須藤いま子氏によって創設された。生涯を女子教育に捧げたいま子氏は、人間性を豊かにし、高めていくことを、教育の最大の目的とした。それを象徴するのが、いま子氏が訴え続けた「自利利他」の精神だ。「人の喜びを自分の喜びとする」というこの教えは現理事長の須藤氏に受け継がれ、いまも学生たちを導いていく「健大精神」として位置づけられている。

須藤氏は、時代の先を読む直観力の持ち主である。伝統ある群馬女子短期大学を、形態も教育内容もまったく違う高崎健康福祉大学に変革したのも、21世紀の社会を見越しての英断だった。21世紀は誰もが健康と福祉を求める時代になるから、大学は、そのための人材を養成する役割を果たさなければならないと、考えたのである。

それ以後も学部・学科の再編など、常に攻めの姿勢で進み続けてきた須藤氏が、ここにいたって「農学部」の開設を決めたのは、時代の足音をとらえたと同時に、これまでの教育事業の集大成という意味も込められているのだろう。

農学研究科出身の須藤氏にとって、自分の手で「農学部」をつくることは、長年にわたって抱き続けてきた夢のひとつだった。衰退し続ける日本の農業を復活させ、新たな産業として日本を支える力にすること、そして、農業の魅力を発信し、農業イノベーションを創出できる人材を養成することは、いずれも喫緊の課題である。「農学部」の開設は、そうした課題の解消に向けた、大きな挑戦と言える。

須藤氏は、文部科学省に提出した「高崎健康福祉大学農学部設置の趣旨等」で、「農学部」設置の目的を次のように記している。

「本学が農学部を設置して、人間の健康に最も関わりあいが深く、かつ人類の生存に不可欠である安心・安全な食料の生産、その加工や保存技術、および流通などに関わる人材の育成、およびその研究開発を行うことは、本学の建学の理念にもとづく教育研究のさらなる展開となる」

学科には「生命科学」「作物園芸システム」「フードサイエンス」「アグリビジネス」の4つのコースを準備し、生命のしくみの理解から、種蒔き、収穫、農産物の加工、販売、経営戦略にいたるまでを包括的かつ先進的に組み込んだ。そのカリキュラムを詳細に見ていくと、いままでにない農学部をつくるという須藤氏の強い意欲が見てとれる。ICTの先端技術を活用し新たな農業を創出することを目標にしており、それを成すために、学部長には農業イノベーションの重鎮である東京大学名誉教授の大政謙次氏を招聘した。

「農業の魅力を高める人材の養成と、新たな農学を発信する研究開発を、クルマの両輪として動かしていく」

と、須藤氏は抱負を語る。

農学部設置となった高崎健康福祉大学が理想とするのは、これまでの国家資格取得の実学分野と、社会の変革につながる研究開発分野の、高いレベルでの一体化である。それが高崎健康福祉大学のブランドとなり、「なくてはならぬ大学」としての永続性をもつことにつながるだろう。

さらに、高崎健康福祉大学農学部は、群馬県初の農学部として、地元の農業関係者から寄せられる期待も大きい。

本書は、群馬県内のみならず、日本全国の農業従業者や農業関連事業者の要望に応えて開設された高崎健康福祉大学農学部がめざす、農学教育および研究への取り組みを詳しく紹介するとともに、これからの農学教育のあるべき姿を示すものである。これは、農学を志し、将来の日本の農業を担うことに情熱を燃やす若い世代はもとより、現在、農業の近代化や企業化に取り組んでいる経営者や農業従事者、さらには日本の「食」と「農」に関心を寄せる多くの一般読者にとっても、貴重な指南の書となることだろう。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。


2018年10月  鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 日本の農業を取り巻く現状

新しい農業のあり方は全人類の普遍的なテーマ
日本の農業が抱えるさまざまな課題
「攻めの農業」への大転換
注目と期待の6次産業化
次代を切り開く切り札「スマート農業」
耕作放棄地がもたらす問題
企業参入による大きな変化
チャレンジする人を後押しする「農業次世代人材投資資金」
農業に注目する若者たち
流通面でも抜本的改革を
減反廃止で米はどう変わるか
農学部は将来に必要な学部


第2章 新時代の農学部が誕生

「農学部」という名称にこだわる
長年の夢だった「農学部」設置
農業の多様性を体現する4つの専門コース
農学は時代の潮流をつくる学問へ
古代文明から始まる農学は総合科学として発展
地域と地球をつなげるグローカルな視点をもつ
群馬県の農産物のブランド力を上げることがミッション
群馬産農産物のブランド化をめざす
大学と行政が連携し、魅力ある地域をともにめざす
農業イノベーションの創出をめざす、まったく新しい「農学部」
アグリビジネスで新時代の農業ビジネスを創出
地域や他学部との連携で得られる幅広い視野
他学部、地域、幼稚園との連携で多様な研究が可能に
すでに28もの組織からインターンシップの受け入れを了承
研究機関としての存在感を発揮する


第3章 日本人の心性をつくった「農」の歴史

狩猟文化からとつぜん農耕文化に進んだ日本
江戸時代の新田開発がもたらした光と影
農具の発達が国家レベルの大工事も完成させた
米からパンへの素早い転換、そして米余りに
いま見直される里山の役割
教育も一貫している農業先進国オランダ
農業と教育、福祉の連携


第4章 健康、福祉、地域に貢献する高崎健康福祉大学

就職率99%以上を誇るスペシャリスト養成大学
創設者・須藤いま子から受け継ぐ人間教育の魂
「自利利他」の精神からすべてが始まる
人間としての土台を築くための共通教養科目
少人数制と多彩な教授陣できめ細かな指導を行う
あらゆる悩みを受けとめる「アドバイザー制」
キャリアサポート体制も充実
世界の現場を体験し国際的な視野を持つ
地域に貢献し地域創生の拠点に
大学内にある「訪問看護ステーション」
研究と教育の場を地域に開放


第5章 大学の未来、農業の未来

私立大学淘汰時代の幕開け
時代を先取りし、時代の追い風を受けた15年
創設者・須藤いま子への尊敬と葛藤が鍛えた経営者としての闘魂
スポーツの伝統がオリンピック金メダリストを生む
附属幼稚園、高校との連携が生む健大ファミリー
農業の海外戦略に向けて
日本式農業のノウハウを海外に伝える若者の拠点に
農業が本質的に持つ成長性
大学の永続性に不可欠なブランド化
いままでにない「農学部」が21世紀型の研究者を生み、世界をリードする


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2018/02/06

『21世紀は「音楽と福祉」の時代』 前書きと目次

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21世紀は「音楽と福祉」の時代
~自由・創造・自立の精神で未来を切り開く国立音楽院~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-378-8
初版発行:2012年11月21日




 はじめに

厚生労働省が発表した「平成二十三(二〇一一)年簡易生命表」によると、日本人の平均寿命は女性が八十五・九〇歳、男性が七十九・四四歳となり、男女とも前年を下まわった。これは東日本大震災で多くの人が亡くなったことが影響したとみられている。

その結果、女性は二十七年ぶりに世界一の座を明けわたし世界第二位に、男性も前年の第四位から第八位に順位を下げたものの、依然として世界有数の長寿国であることに変わりはなく、平均寿命は今後も延びつづけると推測される。ちなみに男女とも第一位は香港である。

また、内閣府発表の『平成二十四年版高齢社会白書』によると、六十五歳以上の高齢者人口は過去最高の二九七五万人に達し、総人口に占める割合(高齢化率)は二三・三%と、ほぼ四人に一人が高齢者という、世界に類をみない超高齢社会を迎えつつある。

ひと口に高齢者といっても元気度は千差万別で、要介護者が増える一方で、肉体的にも精神的にもまだまだ元気はつらつとしていて、実年齢より随分若く見える人もいる。仕事をリタイアしたことで生じた時間を有効活用し、音楽やダンスなどの趣味を楽しみながら、第二の人生を謳おう歌かしている人たちも少なくない。

そんなシニアたちに人気の趣味として、常に上位にランキングされているものの一つに、気軽に音楽が楽しめるカラオケがあげられる。ひところに比べ、若者たちの間ではカラオケ離れが進んでいるとの声も聞かれるが、中高年には依然として根強い人気がある。カラオケ店側も高齢社会にあってはシニア層を取り込むことが不可欠とみて、シニア割引や平日割引など、あの手この手のサービスを実施し、いまや街のカラオケ店では平日の昼間は大勢のシニア客でにぎわい、歌好きな仲間が集うコミュニケーションスペースにもなっているようだ。

懐メロなどを中心に、リズムに乗って声高らかに気持ちよさそうに歌いあげるシニアたち。大きな声を出すことはストレスの発散になるばかりか、手や顔を動かすことで脳を刺激し、脳の血流や神経細胞が活性化されれば、アンチエイジング効果も期待できる。

また、青春時代の懐かしい曲を歌ったり聴いたりすることで、若いころの自分の姿がよみがえり、生きる活力や希望が生まれるきっかけにもなるという。

だが、高齢者のなかには歌は好きでもカラオケの速いテンポについていくのがむずかしいという人もいるだろう。そこで、最近はシニア層を対象にカラオケに代わって生の伴奏で歌ったり、ソロやアンサンブルの演奏を気軽に楽しめるサロンも登場した。

本書で紹介する国くに立たち音楽院(本校:東京都世田谷区、理事長:新納重臣氏)とNPO法人ラポールミュージックセラピーサービスが、「音楽と福祉」をテーマとする活動の一環として新たに取り組みはじめた「シニアサロン」である。

「音楽は人の心を癒いやす天からの贈りもの。音楽を奏で歌いながら、楽しく元気に幸せをお届けしたい」

これが国立音楽院が考える福祉の心であり、昭和六十(一九八五)年の創立以来、同音楽院では「音楽と福祉」をテーマに好きな音楽を仕事に生かしながら福祉分野で活躍する人材を多数輩出してきた。

また、同音楽院が時代にさきがけて展開してきた「幼児リトミック」は、音楽やリズム遊びをとおしてこどもの心を育てるプログラムで、いまや全国約四五〇カ所の教室で実施され、講師として多くの卒業生が指導にあたっている。

この幼児リトミックのノウハウを応用して、高齢者向けの音楽療法として独自に開発したのが「若返りリトミック」だ。音楽の力を活用して頭・心・身体の若返りをはかり、できるだけ健康寿命を延ばすことを目的としたプログラムで、介護予防や高齢者のQOL(生活の質)の向上に有用な療法として、有料老人ホームやデイケアサービス、病院などで導入され、好評を博している。

同じくリトミックから派生した「シニアサロン」は、中高年世代を対象に希望と元気を生み出すメソッドとして開発され、音楽療法というより、健康増進のために音楽を楽しみながら幸せな気分に浸れる場を提供しようというものだ。音楽好きな仲間が集い、生伴奏に合わせて歌ったり体操したり、「笑いヨガ」で爽快な気分を味わったり……。カラオケと違って生伴奏の場合はみんなが歌いやすいよう、演奏者が即興でテンポを決められるので、誰もが気持ちよく歌えるというわけだ。

シニアサロンは国立音楽院の在校生や卒業生にとっても、好きな音楽を生かして活躍できる格好の場となり、若返りリトミック指導員のほか、生の伴奏や演奏が不可欠なため、ピアノ、ギター、ヴァイオリン、フルート、クラリネット、サックスなど、得意な楽器による音楽プレイヤーへの道も開かれている。

高齢化が進行するなか、こうした「音楽と福祉」に携わる人材へのニーズは、今後、いっそう高まるものと思われる。

「二十一世紀は心の豊かさが求められる時代であり、いまや赤ん坊からお年寄りまで、多くの人たちに心身の安らぎ、あるいは希望や元気をもたらす音楽の力が必要とされています。好きな音楽を通じて心を通わせ、喜びや幸せをお届けする。音楽を志す学生たちが理想とする、そんな働き方も決して夢ではないのです」

こう語るのは、国立音楽院の理事長・新納重臣氏である。

だが残念なことに、大好きな音楽を一生の仕事にしたくても、実際に音楽で食べていくのはむずかしそうだからと、自分の夢をいとも簡単にあきらめてしまう人が多いのが実情ではないだろうか。

たしかに、音楽大学を卒業してもプロの演奏家になれるのはほんのひと握りにすぎない。ほとんどの卒業生は自宅でピアノ教室を開いたり、音楽教師になるなど、限られた選択肢しかなく、音楽とはまったく関係のない仕事に就かざるえないケースがほとんどといってよい。

その点、国立音楽院では創立当初から「好きな音楽を一生の仕事に生かす」ことを基本理念として掲げ、学生一人ひとりの音楽への情熱を仕事につなげるべく、夢の実現を全面的にバックアップしてきた。即興演奏の能力をマスターすることに重点が置かれているのも、音楽のプロとして“現場で使える”人材を育てるためだ。

「音楽を学んでも仕事がないという世間の認識や考えは間違っています。音楽に携わる仕事はいくらでもあるはずです」

新納氏がこう語るように、国立音楽院では、リトミック本科や音楽療法学科など、「音楽と福祉」の仕事に就くための学科にとどまらず、楽器製作やリペア、ピアノ調律、音響デザイン、作曲アレンジなど、いずれも仕事に直結した多彩なカリキュラムが用意されている。

もちろん、シンガーソングライター科やジャズミュージシャン科、ロックプレイヤー科など、プロのミュージシャンをめざす人のための学科も充実しており、講師陣には各分野で活躍する現役のプロが顔をそろえる。

しかも、それらの授業は学科の垣根を越えて、自由に科目が選択できるオープンシラバス制を採用。興味や関心があれば、とことん学べる環境がそろっているのである。

入学に際して試験はなく、年齢や経歴、能力も一切問われない。「好きな音楽を仕事にしたい」という人にとっては、自由にのびのびと学べる、理想的な環境といってもいいだろう。

本書は、「音楽と福祉」を融合させたユニークな事業を展開しつつ、仕事としての音楽の可能性を広げる国立音楽院のさまざまな取り組みや、現場で活躍する卒業生の姿を紹介するとともに、創設者である新納氏の教育理念、音楽哲学に迫るものである。

「自分にとって好きでやりたいことこそ、天命として与えられた『天性』なのです。自分の未来は自分のものであり、天命を素直に受け入れる自分であってほしい」と新納氏は語る。

音楽を愛し、音楽の仕事を志す人たちにとって、本書が自らの進む道を考えるうえでの一助となれば、これに勝る喜びはない。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

平成二十四年十月   鶴蒔靖夫




 はじめに


第1章 音楽が持つ力と仕事としての可能性

音楽は人の心を癒す天からの贈りもの
先哲の言葉が示唆する音楽療法の原点
モンテッソーリ教育法との出合い
ギリシャ語の「リトミック」の語感に共鳴
幼児教育に音楽を取り入れた幼児リトミック
アメリカではじまった近代音楽療法
長寿社会でニーズが高まる音楽療法
喜びや感動、元気を与えるのが福祉の真髄
音楽と福祉を結びつけた「忘己利他」の精神


第2章 実践的「幼児リトミック」のパイオニア

音楽を使って豊かな感性や情操を育む
こどもたち一人ひとりの個性を伸ばす指導を
楽譜ではなく、こどもの顔を見ながら音を奏でる
現場実習に徹した授業で仕事につなげる
教育には終わりがないことを実感
仕事に直結する幼児教育関連の資格
親子のコミュニケーションが最高の笑顔を生む
音楽はこどもの豊かな心を育む“魔法”


第3章 心の時代の到来で注目される音楽療法

独自の資格認定で音楽療法士を養成
医療現場でのさらなる普及が望まれる臨床音楽療法
集団作業療法の一環として行われる集団セッション
高齢者のセッションでは大人の空間づくりを意識
音楽療法ならではの隙間のアプローチ
不登校だった少女が就労にこぎつけた例も
音楽療法士は“音楽”をきちんと使えることが基本
介護予防を目的とした「若返りリトミック」
現場での実習経験を経て認定試験にチャレンジ
一時間のプログラムを楽しんでもらうことが大切
一生続けられる仕事にめぐり合う
音楽を通じて福祉の増進に寄与するNPO法人を設立


第4章 音楽の可能性を広げる多彩なカリキュラム

好きな音楽を仕事に生かす
学科を超えて自由に選択できるオープンシラバス
学ぶ人にとってどれだけ付加価値がつけられるか
音楽のプロに求められるのは経験よりも感性
即興演奏を学ぶことで仕事領域が広がる
音楽とともに学べるアートセラピー
名演奏を陰で支える音づくりのプロたち
感動を与える音楽にものづくりで貢献する
演奏もできる管楽器リペアマンを養成
KMA楽器リペア製作工房を運営
音や映像に感性を生かす音響デザイン
プロの作曲家、プレイヤーへの道
二年制修了後は研究科やイギリス留学も


第5章 創設者・新納重臣の半生と音楽への思い

音楽を愛した少年時代
進駐軍のPXで働きながら音楽漬けの日々
生の音楽の素晴らしさにふれる
もって生まれた営業の才に目覚める
ピアノの販売でもトップ営業マンに
発想のヒントは足元に転がっている
音楽教育への足がかりとなった音楽ホーム教室
音楽教育とともに時流をとらえた事業を展開


第6章 心の時代、ますます求められる音楽の力

中高年向けのシニアサロンを開設
気分爽快、笑いに勝る良薬なし!
“稼げる”プレイヤーをめざす
美と健康を意識したリトミックヨガセラピー
インターンシップ制度の導入
日本のリトミックの先駆者としてバンダイとコラボ
“ひらめき”が音楽教育を進化させる


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2017/12/12

『すべては学生のために』 前書きと目次

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すべては学生のために
~神奈川工科大学51年目からの挑戦~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-388-7
初版発行:2013年10月25日




 はじめに


大学改革は待ったなし!

平成二十四(二〇一二)年六月、文部科学省は「社会の変革のエンジンとなる大学づくり」をめざす「大学改革実行プラン」を公表、“大学機能の再構築”と“大学ガバナンスの充実・強化”を打ち出すとともに、ただちに実行することを明言した。そのプランを説明する文章のなかに、同省の本気度を示す言葉が次のように挿入されている。

「現下の日本の状況下においては、大学改革は待ったなしの状況であり、実行が求められています」

急速な社会変化が続くなか、大学教育の意味も役割も大きく変化している。現在、大学に期待されているのは「象ぞう牙げの塔」としての学術教育ではなく、活力ある社会を創造するための教育である。つまり、主体的に考え、行動する能力を培う人材育成にあるといってよいだろう。

その実現のために、何をどのように教え、根幹となる大学運営をどう進めていくべきか――現在、各大学は試行錯誤を続けている渦中にある。

十八歳人口の減少にともない、定員を確保できない私立大学が増加するなか、生き残りの命運を左右するポイントは、学生というマーケットを意識した経営体へと変容することである。教育を最大のサービスとして学生に提供し、総合的な学生支援をするなかで人づくりを行うという事業こそ、イノベーションの創出とともに、国民や社会が大学に期待していることではないか。その推進のためには大学ガバナンスの強化がどうしても必要となる。

いま、大学は戦後最大の転換期を迎えていることは間違いない事実である。

「大学改革」が声高に叫ばれているなか、学生支援体制の構築への取り組み、大学ガバナンスの強化など、先陣を切った改革を続けているのが本書で紹介する「神奈川工科大学」である。

神奈川工科大学は神奈川県厚木市にキャンパスを構え、今年でちょうど創立五十周年の節目を迎える。工学部、創造工学部、情報学部、応用バイオ科学部の四学部一一学科と留学生別科、大学院が設置され、約五〇〇〇人の学生を擁する、多彩な内容を持った理工系大学だ。

キャンパスに足を踏み入れた人は、広々とした開放感のなかに、理工系独特の緊張感があることに気がつくに違いない。また、「KAIT工房」と呼ばれる近未来的なガラス張りの建物のなかで行われている機械加工や木工作業などの情景を目にすると、日本のものづくりの精神はこうしてたくましく継承されているのだということを改めて実感する。

「創造性に富んだ技術者を育て、科学技術立国に寄与する」を建学の精神として謳うたっている神奈川工科大学は、その精神にのっとり、数多くのすぐれた技術者を社会に輩出しつづけてきた。大学の教育方針、学生指導、運営のあり方等々、どれを見てもこの大学にしかない流儀というのが貫かれている同大学は、以前から個人的にも注目していた大学であったが、今回、詳しく話を聞いていくと、新しい大学像の「ロールモデル」となるべき要素をいくつも持っていることがよくわかった。
その特質をあげてみよう。

①徹底した学生本位主義の追究

神奈川工科大学の最大の教育理念は「学生本位主義」の追究にある。学生一人ひとりがいまどのような状態にあり、何を望み、どんな適性を有しているか──それらをすべて検証し、その学生が持っている能力を伸ばすために、あらゆる支援を行うことを基本姿勢としている。またその実現のためには、マンツーマン方式による基礎・基本教育や各種相談システムなど、さまざまな工夫が施されており、学生一人ひとりが自分なりの力を身につけることを可能にしている。これにより学生たちの多くは、早いうちから自らが進むべき方向性を見つけ出している。キャンパス内での教育環境だけではなく、経済的支援、安全確保、食と住など、生活環境の隅々までその配慮が行き届いた体制は見事というほかない。“すべては学生のために”をモットーにした周到さが、彼らに自信と活力をつけ、役割意識を持った社会人に成長させている。

②キャリア教育と高い就職率

神奈川工科大学は、「就職に強い」との評価を受けている。平均九〇%以上の就職率は、全国私立大学でも有数のものであり、かつ、卒業後三年以内の離職率は全国平均の三割以下の約一〇%という数値は注目に値する。これは実社会で役立つ能力の開発に力を注ぎつづけた成果といえる。キャリア教育の充実度の高さは、この大学の“特技”といってもよいだろう。企業と連携するプログラムは多彩にそろえられ、その専門性だけでなく、グローバル化には欠かせないコミュニケーション能力の向上もキャリア教育の一環として取り入れている。学生の個性や特性を見極めながら四年間をかけてじっくり育て上げていくシステムは、長年の蓄積があればこそだ。就職サポート体制も万全のものがあり、最後まであきらめさせない手厚い支援が展開されている。

③継承される人づくりの原点

神奈川工科大学を創設したのは、大洋漁業株式会社(現マルハニチロホールディングス)の社長だった中部謙吉氏である。昭和三十八年、高等教育を望む若者に勉学の場を与えようと私財を投じて同大学の前身である「幾いく徳とく工業高等専門学校」を開校したのだが、大学の創始者が企業人であったことの意味は大きい。以来、同校では「自ら考え、行動する」を根幹に、人づくりの教育が形成されてきた。まさに、いま、第一に求められる人間像である。そのアイデンティティを継承している神奈川工科大学の教育課程は「何を教えるか」より「何を学べたか」に主眼が置かれて構築されている。プログラムは改善のたびに研ぎ澄まされ、今般「ユニットプログラム」という独自の教育プログラムを実践。技術力と人間力を同時に鍛えるという内容で、人間的魅力の発掘と向上が大いに期待されている。

④画期的な大学のガバナンス、強いリーダーシップを持つ理事会

現在の理事長は、創設者・中部謙吉氏の孫にあたる中部謙一郎氏である。

中部氏はまさにイノベーターとして登場し、硬直しかけた大学に「経営」の発想を持ち込み、抜本的な改革を次々と断行していった。強力な経営陣を構築することこそ経営の革新として、教員が主体という理事会の慣習を打ち破り、企業出身者主体へと転換。メンバー一一名中八名が企業出身者という、ほかの大学では類を見ない基盤整備を成し遂げた。その画期的な大学ガバナンスによって、学部学科の編成、カリキュラム、教育環境は魅力ある商品として打ち出され、教育施設も短期間で八割以上が改装・新築し充実をはかった。同時に、コストダウン、人員削減などむずかしい組織的な改革にも時間をかけて取り組み、未来につなげるかたちをつくり上げていったのである。

厳しい環境のなか、先駆的なアイデアが次々と実現されるのは、理事会の強いリーダーシップと徹底した話し合いがあってこそである。

「私は民間企業の経営と思って大学の経営にあたっています」と中部氏は語る。

「知の経営体」としてのそのあり方が、学生本位主義をさらに磨き上げる原動力となっていることを実感する。論理的に考え、果敢に行動する新世紀の骨太の理工系人間がここから生まれ、日本を活気づけていくことだろう。

ほかにも、地域社会との密接な連携、卒業生への支援など、神奈川工科大学ならではの特徴がいくつもあるのだが、詳しくは本書でたしかめてほしい。

二十一世紀の新しい大学像が求められるいま、この神奈川工科大学のありようは、大学改革の一つのモデルとなり得ると確信する。

本書は、神奈川工科大学の教育理念や取り組みを紹介するとともに、大学改革のあり方にも多くの示唆が含まれているものである。これから大学進学を志す若者だけでなく、日本の教育と「ものづくり日本」の将来に関心を寄せる一般読者にとっても貴重な指針の書となるであろう。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

平成二十五年九月   鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 理工系大学が支える科学技術立国日本の未来

ものづくり日本の危機
的中したペリー提督の予言
ものづくり日本を取り戻す決め手は人づくりのための教育
神奈川工科大学が持つ大きな意義
その教育方針と理念
日本の発展を支える人材を輩出した工学部
若手技術者の能力の低下と理科離れの現実
中高校の理科・技術教育改善への取り組み
大学に期待される教育とは


第2章 技術立国を担う人材育成――神奈川工科大学の概要――

明確な教育目的と目標の背後にあるもの
可能性を伸ばす学びの四学部一一学科
社会に出る基礎力を身につける「新教育体系」
「新教育体系」の中核「ユニットプログラム」
自分自身を知り、適職を選択させるキャリア教育
学びの基礎を厚くする産学交流プログラム
留学・国際交流の飛躍に期待
日本の最先端が集結する施設の数々
地域・企業・大学がつながるスマートハウス研究センター
新教育体系のもう一つの柱、教員の質を上げる
私立大学の厳しい状況
成長と理念の浸透の基盤は理事会の体制にあり
学校株式会社で徹底したサービスを
財務面はオープンに
大学の価値とは


第3章 すべては学生のために

大人しく真面目な学生
学力に合った習熟度別授業とマンツーマン方式の補習で学力向上を
高い専門性と自主性を持つ人材を鍛えるスーパーサイエンス特別専攻
万全の就職サポートシステム
もう一つの就職支援が示す学生本位主義の真髄
一人ひとりを磨き上げる研究室
保護者との緊密な連携
さまざまな奨学金制度で学生生活を強くバックアップ
教員採用試験、資格取得を大いに援助
モバイル学生証で出欠確認や安否情報も
安心安全は学生本位を支える影の力
“リケジョ”歓迎、女子専用フロア
充実の食と住
文武両道、スポーツにも力を入れる
チームワークを学ぶ多彩なクラブ活動
活発な地域貢献活動
「KAIT未来塾」と出前講義
開かれた大学、愛される大学に
チャレンジを応援する「夢の実現プロジェクト」


第4章 五十年の歩み

創設者・中部謙吉の思いを込めた学校
謙吉の波乱の人生
日本をつくるのは技術を持った若者たち
国立並みの学費、寄付は取らない
高専から四年制大学に
学者肌の二代目理事長
「神奈川工科大学」へと名称変更
三十周年を記念して
現状を変えなければ明日はない
おじいちゃんの大学をつぶしてなるものか
一大事業、一〇〇億円プロジェクト
二十年におよぶ闘い


第5章 基礎固めから飛翔の時代へ

創立五十周年記念事業その①――第二次キャンパス再開発にふさわしい新施設
創立五十周年記念事業その②――記念の年にふさわしい「学生チャレンジ」を!
創立五十周年記念事業その③――記念シンポジウムを開催
先進技術研究所の建設とロボット産業特区の指定
迫る二〇一八年問題
いまは大学改革の好機
大学としての存在感を高めるために
力を合わせて船を漕ぐ
学びの国際化、五年後の大目標
学生本位主義に徹した改革は先延ばしせず
高いサービス精神、中継ぎ意識
学生たちへのメッセージ
タフな精神、七転び八起き
卒業生が財産、新たな五十年に向けて

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『地球サイズの人づくり』 前書きと目次

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地球サイズの人づくり
~子どもたちの未来を見すえる教育運動~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-402-0
初版発行:2014年11月19日




 はじめに


少子化が進むなか、日本の教育のあり方が改めて問われようとしている。

二十世紀後半、学校教育の現場では受験戦争の激化を背景に知識偏重型の「詰め込み教育」がエスカレートする一方で、いじめや校内暴力、不登校などの問題が浮上。その反省から平成十四(二〇〇二)年度以降、文部科学省の学習指導要領においては「ゆとり教育」が打ち出された。だが、その反動で今度は日本の子どもたちの学力低下が指摘され、「ゆとり教育」は早くも見直しを迫られることになった。

このように、国が指し示す教育の方向性が揺らいでいるうちに、世界ではグローバル化が一段と進み、日本においても「グローバルな人材」の育成がより強く求められるようになってきた。

そうしたなかでいま、必要とされるのは他者とのコミュニケーション能力や自分自身の考えをきちんと伝えられる表現力、さらには困難にも屈しない強い心を持った子どもたちを育成することだ。そこで平成二十三年度以降、小・中・高校で順次導入がはじまった新しい学習指導要領では、「詰め込み教育」でも「ゆとり教育」でもなく、子どもたちの「生きる力」をいっそう育はぐくむことが理念として盛り込まれた。

目まぐるしく変化する、これからの社会を生きていくためには、単に知識や技能を習得するだけでなく、それらを活用して自ら考え、判断し、生活のなかで直面するさまざまな課題を解決していく力が求められる。そうした力とともに、豊かな人間性、たくましく生きるための健康や体力、すなわち知・徳・体のバランスのとれた力が「生きる力」というわけだ。

少子化、グローバル化の進展は、塾をはじめとする民間教育にも変化をもたらしている。親が子どもの将来を考え、できるだけいい教育を受けさせたいという思いは、いつの時代も変わらないだろう。ただ、教育の中身について、学力一辺倒だった保護者の意識に変化が見えはじめ、総合的な人間力を鍛えてやりたいと望む親が増えてきているという。

グローバル社会を生きていくためには、自らの力で困難に立ち向かい、それを乗り越えていく強さが求められる。どんなに厳しい状況に置かれようと、前向きに生きていく力、それを身につけさせることこそが、大人の役割だといえるのではないだろうか。

そうしたなか、昭和五十一(一九七六)年の創業当初から、すでに「生きる力」を育む教育を実践し、卓越した指導力で注目を集めているのが、本書で紹介する株式会社ティエラコム(通称「ティエラ」、本社:兵庫県神戸市、代表取締役社長:増澤空むなし氏)である。

同社は一斉集団型、個別型、映像授業型の教育事業を展開。それらの教育事業を核とし、合宿教育をはじめ多角的な学びの体験を提供するGE(Global Edutainment)事業、塾経営の総合支援システムを提供するASP(Application Service Provider)事業の三つを手がけている。

前身は、株式会社「能力開発センター」(通称「能開」)で、塾名としていまも継続しているが、これは学力アップや志望校合格のみに的が絞られた学習塾(いわゆる進学塾)とはひと味もふた味も違う。

「私は『学習塾』という言葉自体、好きではありません。本来、学習の指導と教育とは異なるものなのに、どうも混同されてしまう節があります。学習指導が教科学習を中心に知識の習得と理解をはかるものだとすれば、そこでは必ずしも人間性は問われないのです。一方、人間的な成長にかかわってくるのが教育です。あいさつをするとか、目上の人に敬意を払う、相手を思いやるといったことは、教科の学習とは直接関係ありません。でも、そうした人間としての基本動作が身についていなければ、どんなに学力レベルが高くても、社会に出て通用しないでしょう。私が提供したいのは『学習の指導』ではなく、あくまでも『教育』なのです」

こう語る増澤氏は、学力の養成にとどまらず、人間の「生き地じ」を鍛える教育の実践こそが同社の使命であると考え、こだわりつづけてきた。

「教えない教育」「魚を与えるな、釣り方を教えよ」「負の体験」などのユニークな指導方針は、単に偏差値が高い子ではなく、「困難にたじろがない ひとりで勉強できる子」を育てることを目的とし、これを教育理念として掲げている。

子どもを鍛え、強くするティエラの教育は、ゼミ・講習会・合宿・オープン模試の四つの柱で実践されるが、なかでも特長的なのが、多彩なコースが設定された合宿だ。いまの子どもたちの多くは、親の庇ひ護ごのもと、何不自由ない生活を送っている。そんな子どもたちも、やがて大きくなって、世間の荒波にもまれるときがくるだろう。生きていくということは決して楽なものではなく、世の中には理不尽なことも多い。それを乗り越える力をつけさせるため、「合宿教育」では、親元を離れ、あえて行動が制限される不自由な空間のなかで、みんなと一緒に生活することを強いてきた。

「子どものいうがままを受け入れて楽をさせてしまうのではなく、大人はその前に立ちはだかる壁、インヒビター(抑制者)とならなければいけないと思うのです。合宿生活を体験することで、子どもたちには困難を乗り越える力、人間関係能力、リーダーシップなどを身につけ、人と人をつなぐ架か橋きょう力りょくを持った人間に育ってほしいですね」

と、教育への熱い思いを語る増澤氏は、創業当初から、既存の塾の概念にとらわれることなく、どこにもない民間教育機関でありつづけようと、ユニークな教育プログラムを次々に開発・実践し、それが多くの子どもや保護者に支持されてきた。そして現在では、生徒数も二万名を擁し、一五〇教室を展開するまでに至った。

創業二十周年となる平成七年に、社名を能力開発センターから、スペイン語で“地球”や“大地”を意味する「ティエラ」に、平成十二年には「ティエラコム」に改称。その名が示すとおり同社では教育事業を核に、国際交流、環境保護活動などへとフィールドを広げ、「地球サイズの人づくり」をめざす。

実は、私は以前に一度、当時、塾業界の風雲児といわれていた増澤氏の思想や生き方に迫ろうと、『ティエラの挑戦』(IN通信社刊/平成八年発行)と題する書を上梓している。

あれから二十年近い歳月が流れ、その間、東進衛星予備校(株式会社ナガセ)のフランチャイジーとして大学受験市場に参入するなど、事業を着実に拡大させながらも、自立心旺盛な人材の育成、地球貢献活動など、増澤氏の教育への思いや経営姿勢にまったくぶれはない。そして、今後も「地球サイズの人づくり」をめざすと意欲を見せる。

本書は、躍進を続ける株式会社ティエラコムの事業活動を各事業部の統括責任者へのインタビューを交えながら紹介するとともに、創業社長・増澤空氏の企業哲学、教育理念ならびに経営理念や人材育成についても改めて検証するものである。教育に携わる方のみならず、未来を担う子どもたちのよりよい成長を願う方々にとって、本書がこれからの民間教育のあり方を考えるうえでの一助となれば、これに勝る喜びはない。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

平成二十六年十月   鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 地球の未来、子どもたちの未来

「地球貢献」を企業哲学に
卒業生は語る


第2章 いま日本の教育に求められるもの

教育再生が最重要政策の一つに
システム疲労を起こしつつある義務教育
税金で運営される公教育での指導の限界
大人は子どもの前に立ちはだかる壁であれ
民間教育も含めた教育再生を考える
ゆとり教育はなぜ失敗したか
勉強でもスポーツでも何かに打ち込む姿は美しい
気になる大学入試改革の行方
学力を高める「学習」と人間力を高める「教育」


第3章 人間の「生地」を鍛える「教育運動体」

「困難にたじろがない ひとりで勉強できる子に」
ティエラの原点、「土日ゼミ」の大胆な方法
厳しいけれど愉たのしい「勉強道場」
保護者の「ウォンツ」を掘り起こす
自立学習をうながす「教えない教育」
一斉集団型は全国に五八教室、約八〇〇〇名の会員
個別型にチームコーチングを導入し、会員数二五〇〇名
一人ひとりにベストなプログラムを
子どもたちが明るくがんばる「集中豪雨型学習」
全国レベルで実力を知る「EXオープン模試」
大学以後までも視野に入れた「小中高一貫教育」
躍進するティエラの東進衛星予備校
映像メディアとICT、ライブの三つを融合


第4章 体験を通して「生きる力」を育む合宿教育 ――子どもとともに取り組む環境保護活動――

「合宿」はティエラの教育の原点
コンピテンスを養う「班活動」のドラマ
「食育」にも配慮する合宿中の献立
自然のなかで見せる子どもたちの意外な顔
合宿のフィールドは国内各地から世界へ
国際交流部を発足させ海外進学をサポート
ジュニアサミットキャンプ復活を望む声も
教室で鍛えられた子どもをワンランクアップのための舞台へ
ベトナムに「マングローブ子ども親善大使」を派遣
植林にも寄付される「ティエラがんばりポイント」
クール・ティエラ運動に子どもたちも協力
東日本大震災被災地に「復興の種」をまく


第5章 全スタッフに浸透する増澤イズム ――創業四十周年を迎えるティエラコムの軌跡――

映画漬けだった少年時代
シナリオライターを経て教育の世界へ
わずかな資金を元手に能力開発センターを創業
「城下町と日曜ゼミ」――姫路を皮切りに西日本の「城下町」へ教室拡大
心の師、教育者・斎藤喜博との出会い
大英断によるカリヨンハウス建設
魅せられた二人が語る「教育者&経営者」増澤
社名を地球・大地を意味する「ティエラ」に改称
「過去はすべて善である」
ICT化をいち早く進めたことで息を吹き返す
高校部門を東進衛星予備校に一気に切り替え
「ビットキャンパス」を社外に向けて提供するASP事業
山本塾との合併により地元兵庫の基盤を強化
教務改革を断行し、さらなる飛躍をめざす


第6章 次代を担う人材育成と学習塾のミッション

平成二十六年八月三十一日金沢「担任助手研修」
教育事業の成功は“人材”がすべて
「キオクに残したい二〇一四夏のキロク」
「担任助手」に対する思い
「循環型教育」という構図
学習塾の自立性とは
地球サイズの人づくり 学習塾のミッション

感謝のことば

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2017/08/31

『夢を叶える予備校』前書きと目次

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夢を叶える予備校
~躾、環境づくりから始まる第一志望合格への道~

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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-436-5
初版発行:2017年9月13日
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はじめに

グローバル化や技術革新の進展がこれまでにない社会の到来を予測させるなかで、喫緊の課題とされているのが教育の改革である。

従来の教育で重視されてきた「知識・技能」に加え、思考力や判断力、そして高いコミュニケーション能力などを身につけなければ、多様な価値観を持つ国や人々がそれぞれの立場を尊重しつつ自らの考えをぶつけあう国際舞台から取り残されることは、必至だと言えよう。

そうしたなかで政府は、2020年度から大学入試の抜本的な改革を実施することを打ち出した。

これまでも、大学入試の改革は社会の変動につながり、少なくない影響を与えてきた。共通一次試験、大学入試センター試験が定着させた偏差値偏重社会を経て、実学業を重視し、豊かな人間性を育むことを明確に打ち出した今回の入試改革が、どのような社会を導くのか、いまから高い関心が寄せられている。

国によるこうした入試改革の遙か以前から、大学入試のための勉強を通じて豊かな人間性を育てることを理念においていた大学受験予備校がある。それが本書で紹介する「学校法人村上学園 高松高等予備校」(香川県高松市。以下、高松高等予備校と記す)である。

高松という地方都市に根を張る高松高等予備校は、西日本の予備校の雄として圧倒的な存在感を示している。その非常に高い合格実績により、全国各地から毎年1000人以上の受験生が集まるというから驚きだ。

彼らを引きつけているのは、なんといっても第一志望校への合格率の高さである。その大半は国公立大学や有名私立大学に合格している。近年、人気が高まっている国公立大学医学部医学科への合格率もきわめて高く、2017年度は129名が合格を果たした。

第一志望校の合格を達成するために、高松高等予備校ではありとあらゆる工夫がなされている。学力別に分けたクラスは、すべてが少人数制である。徹底した個別指導により、センター試験の点数が前年の300点台から700点台にまで1年間で急上昇するという奇跡のような話も実際に起きている。

各クラスには専任教師による担任がおかれ、学習から生活習慣に至るまで、きめ細かな指導が年間を通して行われる。その熱心さは、「全身全霊」という言葉がふさわしい。授業の運びはわかりやすく、かつ、わかるまで何度でも教えていく。

「ここには、サラリーマン的教師はひとりもいません」

こう言うのは、本書の主人公である理事長の村上良一氏だ。この村上氏こそが、地方の一予備校にすぎなかった高松高等予備校を、全国にその名が知られる存在にまで押し上げた人物である。

村上氏によれば、浪人生とは現役時代に勉強をしなかった者たちである。きちんと勉強をした者は現役で志望校に受かっている。

高松高等予備校では、浪人生の大半は、机に向かう習慣もできていない「高校4年生」ととらえ、毎日の授業と寮での自習時間を組み合わせた徹底した学習管理システムを構築して、勉強に集中できる最高の環境をつくりあげている。「高校生」である以上、遅刻は厳禁、無断欠席はご法度であり、実際、生徒たちの授業への出席率は98%に達している。

「合格の秘訣は、規則正しい生活と勉強への専念です。きちんとした生活習慣ができていれば、自然と合格するのです」

と、村上氏はあくまでも泰然と語る。

その高松高等予備校最大の特徴が、各地からやって来る生徒のための直営寮があるということである。別名「受験道場」あるいは「高予備刑務所」と呼ばれるこの寮では、起床から就寝までの生活すべてが受験勉強を中心にした厳しい管理下で行われる。殊に夕食後に全員が自習室に集まって行う3時間の「必須自習」は、忍耐力と持久力を身につける自分との闘いの時間である。この苦しい時間の積み重ねが、知らぬうちに彼らの精神の幹を太くさせていくのだ。

寮では寮長と寮母が24時間体制で、厳しく、かつ温かく寮生を見守り続ける。食事はすべて手料理で、これが寮生の元気の源になっている。「うどん県」とも呼ばれる香川県の予備校らしく、学校の敷地内には生徒のための安いうどん屋がある。また、生徒が体調をくずしたらいつでも入院可能な医院も設けている。予備校附属の医院があるのは、日本で唯一、高松高等予備校だけである。

村上氏は、生徒を予備校の「お客様」だと思って接している。お客が何を欲しているか、どうすれば喜ぶかを追求することをいちばんの運営方針として、彼らの成長をさまざまな方向から促していくのである。

どんな生徒も磨けば光る。ときには規則を守らずに寮から追い出される生徒もいるが、そんなときは自分の家に住まわせて、合格までの面倒をみる。素直にまじめにやることの大切さに気づいてもらうためだ。

「素直さとまじめさがあれば、人生、怖いものはないのです」

こうして巣立った生徒たちは、自分への甘えを打ち消し、礼儀をわきまえ、努力する大切さを知った人間として、自らの足で人生を歩み始める。共同生活を通して、協働の意味を汲み取っていく。それが人間性の基礎となり、高松高等予備校の卒業生はほかの子よりも社会性があり、辛抱強いなどの評価を受けている。

受験に成功するだけの教育をするのではなく、社会に出たときに立派に通用する人材に育てること。そこに高松高等予備校がめざす人間教育の真髄がある。

人を育てることへの思いの深さは、不登校児支援のための全日制スタイルの通学型通信制高校である「村上学園高等学校」の開校も実現させた。16年がかりの奮闘の成果である。

グローバル時代となり、多様な人々との協働が求められる場面がきても、高松高等予備校の卒業生たちなら、自然体で正面から向きあえるのではないかと期待ができる。

本書は、地方にありながら全国の受験生や保護者から高い支持を集めている高松高等予備校のさまざまな取り組みを紹介しつつ、理事長・村上良一氏の教育理念や人生哲学に迫るものである。ひょんなことから予備校経営に携わることになった村上氏の波乱に富んだ半生は、清濁あわせもつ器の深さや熱気の高さなどを存分に伝える味わい深い物語になっている。

これは、広く教育に携わる人のみならず、日本の若者の健全な成長を願うすべての読者にとって貴重な指針の書となるであろう。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

 2017年8月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第1章 変化する大学進学をめぐる動き

日本特有の大学進学の厳しさとは
2018年問題と教育現場の大変革
「根本は人間を育てるところにある」と言う異色の予備校
激減する浪人生
予備校はこれまでのビジネスモデルが通用しない時代に
親と子の「受験観」の差
大学入試制度の変遷
強まる「文系回帰」の傾向
志願者が多い人気大学の魅力とは
映像授業は予備校の脅威にはならない


第2章 第一志望合格へ導き人間的成長を促す、独自の学習環境づくり

予備校は「勉強しない子」が来るところ
勉強しに来るのではなく、勉強しないから予備校に来る
Ⅰ 厳しい出席管理
 授業に出ることが最低条件、年間平均出席率98%
 「学習状況管理システム」で日々のすべてを保護者と共有
Ⅱ 寮での徹底した生活管理
 「受験道場」と呼ばれる8つの直営寮にかけた信念
 厳しい規則のなかでの生活が、集中力と人格を高めていく
 寮の真髄は自習室にあり。そこでおたがいに競いあう
 寮長と寮母は親代わり
 家族のような運命共同体として
Ⅲ わかるまで教える授業とクラス担任制
 少人数クラスで対話形式の授業を実現
 専任教師がクラス担任をする、かぎりなく高校に近い雰囲気
 熱意と親切心のある教師たち
 生徒のためにある「教え方」と「オリジナルテキスト」
 どこよりも学力が伸びるためのオリジナルテスト
「必勝五箇条」と若さのはじけるスポーツ大会
自宅通学生も自習室の利用で学習リズムを確立
日本初の予備校附属医院
学費と寮費が「すべて込み」で、特待生制度も充実
社会に役立つ人材を。教育の原点は人育て

《ここに来る教師はみんな、教えることが好きなんです》
 高松高等予備校 校長 馬場 康弘


第3章 情報戦を制する高松高等予備校

受験は情報戦
全国の予備校で初めてコンピュータを導入
大学進学研究会の始まりと発展
自前の情報にこだわり続ける『入試のてびき』
入試センター試験ファイナルの実施
センター試験の自己採点結果をどこよりも早く公表
システム完成によって情報の力が飛躍的に伸長
数字で見る1年間のドラマ
2017年の入試変更の動き


第4章 夢と希望を育む「村上学園高等学校」

香川県初の私立学校による通信制高校
社会の一員として活躍できる人間を育てることが目標
公文式学習を導入
「進学コース」の生徒は高松高等予備校が全面的にバックアップ
キャリアアップと生きる力を養う総合学習
さまざまな人とのつながりや地域との交流を体験
通信制高校の増加が示す子どもたちの不安な現状
開校までの16年間の戦い
「村上学園高等学校で勉強できることに誇りを持っています」
本人が気づいていない可能性を引き出し、羽ばたかせる教育を
自分の道を歩み始めた卒業生たちの力強いメッセージ

《村上学園高等学校は全日制スタイルの通信制高校》
 村上学園高等学校 校長 村上 太


第5章 波瀾万丈の半生が生んだ理念と哲学

やんちゃで喧嘩も強かった子ども時代
アイデアひとつで儲けた学生時代
電気店大成功
賭け事をやめるため、縁もゆかりもない仙台へ
3年間だけ手伝う約束で高松に
受験生に「親分」と呼ばれ
「自分の子ども仕様」に寮を改善
補習科を凌駕する予備校を目標に
高松高等予備校の寮をつくった人物
自習室の始まりはブレーカーが落ちたから
行き場のなくなった子を自宅に呼んで受験まで面倒をみる
思えば遠くへ来たものだ

《空気のような存在で、最後まで面倒をみる》
 総寮長 石井 孝明
《食事を通して心と身体を元気にしていくのが役割です》
 寮母 栢木 八重乃


第6章 いつまでも「生徒のための予備校」であり続けるために

思いがけない褒章受章
教育で金儲けはしない
教育とは、その子のためになるようにすること
やりたいことをやらせなさい
教師との一体感がある古き良き時代の学校
東京オリンピックまで現役で


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2017/06/22

『ジェロントロジー』 前書きと目次

Jerontoweb


ジェロントロジー
 ~未来の自分はいまの自分からつくられる~


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著者:山野正義
定価:本体1500円+税
ISBN978-4-87218-408-2
初版発行:2015年5月15日
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  はじめに

高齢者が多数となる社会とは、どのようなものなのか。
また、そうした社会を生きるうえで、私たちはどのような考え方をもち、どのような生き方をすべきか。

これらをすべての世代に共通するテーマとして捉え、研究する「ジェロントロジー」という学問を、前著『生き方の革命』(IN通信社)で日本の読者に紹介したのは平成二十四年のことである。団塊の世代がいよいよ六十五歳の高齢世代に入るという節目の年であり、山野学苑でジェロントロジーの講座がスタートした年であった。

あれから三年が経ち、平成二十六年の敬老の日に発表されたデータでは、六十五歳以上の人口は約三三〇〇万人。これは、日本の総人口の約二六%にあたる。いずれも過去最高の更新である。

ジェロントロジーとは、一九七〇年代から発展した学問で、日本語でいえば老年学や加齢学にあたる。その定義は「生涯にわたる人間の発展と加齢の研究。老化にかかわる諸問題について、医学・心理学・経済学など多くの学問分野の連携によって解決を探究する学際的な学問」とされ、豊かで幸せな高齢社会の実現を命題にしている。

現在、世界一六七か国の大学やシンクタンクで研究活動が推進されているジェロントロジーは、世界一の高齢社会である日本にとってこそ最も必要なものと思われるが、閉塞的な大学の構造が学部の壁を越えた学問を敬遠してきたのか、日本にはずっと〝輸入〟されないままだった。

そうしたなかにあって、その態勢に風穴を開けるべく先端的な教育活動を行っているのが学校法人「山野学苑」だ。世界最高レベルともいわれるアメリカ・南カリフォルニア大学デイビス校ジェロントロジー学部の講座を、オンラインシステムを用いて配信するという画期的な手法を用いたことで注目されている。インターネットを使える環境にあれば、学生はいつでもどこでも世界最先端の研究成果を受講できるのである。
 
山野学苑と南カリフォルニア大学(USC)が提携したのは平成二十年のことだ。

幸せな高齢社会をめざすには美容の力が必要不可欠であるという認識のもと、私たちはお互いのもてる知恵と技能を最大限に分かち合うことを約束し、日本人に向けた教育プログラムの共同開発に取り組んだのである。

人は誰でも美しくなることを願っている。美しくなる権利をもっている。そして美しくあろうとするのは、生きる歓びの表現にほかならない─これは山野学苑の創始者・山野愛子がいつも語っていた言葉である。

山野愛子は美道の理念である「美道五大原則=髪・顔・装い・精神美・健康美」を打ち立て、内面の美と外面の美を高い次元で一致させる重要さを生涯訴え続けた。そこには、美しさの解放によってすべての人々が幸せにあれという、願いと愛が込められている。

この人々への貢献と人間尊重というスピリチュアルな追究が、今日、ジェロントロジーとコスメトロジーを結びつける原点になっていることはいうまでもない。

急速に進む高齢化は、社会のしくみや法制度はもちろん、地域社会のコミュニティ、医療体制、家族関係、住環境……、あらゆる構造を変えていく。ライフスタイルもファッションも、生きる目的すら変わっていく。

そうした、これまで誰も体験したことがない社会で、どのような〝老後〟を送ることになるのか。

今、老後について考えるとき、頭をよぎるのは年金や介護への不安、認知症、老老介護、孤独死などといったネガティブな単語ばかりかもしれない。

しかし、総務省の「統計からみた我が国の高齢者(六十五歳以上)―「敬老の日」にちなんで―」(平成二十六年)によると、高齢者の就業者数は一〇年連続で増加し、平成二十五年には六三六万人と過去最多、就業者総数に占める割合は一〇・一%と過去最高となった。高齢者から現役世代への知恵、知識の伝授は重要であり、何より医療・介護費抑制にもつながることから、〝元気高齢者〟であること自体が大きな社会貢献にもなっているのだ。

とはいえ、人生八〇年時代の長い〝老後〟がどんな日々になるかは、ひとえに若いころからの準備や考え方にかかっている。そして、よりよい老後を迎え、人生を生き切るために、ジェロントロジーは間違いなく役に立つものだと確信している。

USCのある教授は、こんな表現で伝えている。

「私たちは年齢と呼ばれる時間の冒険旅行をしています。高齢者はあなたと同じ旅路のずっと先にいるだけのことなのです」

あらゆる学問を総合したジェロントロジーは、人間とは何か、生きるとは何かという、永遠のテーマを探究する学問でもある。

この本では、そうしたジェロントロジーの基本をおさえながら、講義の内容についてもわかりやすく簡略に紹介したい。

またもし、私自身の発言のなかで、あなたの生き方、考え方のヒントになるものがあれば、どんどん吸収していただければ幸いである。

高齢者のいちばんの持ち物は経験に裏打ちされた知恵であると、ジェロントロジーの研究者は指摘している。本書を読んでいただいたみなさん一人ひとりの経験に裏打ちされた知恵を、次の世代の人たちに伝えていくことは、人生の先達としての義務でもあると思う。

そしてそれは、より豊かな老後を送るうえで間違いなく必要なことだと、私は本書を執筆していて実感した。

この本を通して、一人でも多くの人にジェロントロジーを学びたいと思っていただければ、これほど嬉しいことはない。それが明るい高齢社会の未来を創る一歩になると信じているからだ。

  平成二十七年三月  山野正義


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はじめに


第1章・これからの高齢社会と高齢者像

老いを学ぶことは、人間そのものを学ぶこと 
日本にとって最も必要な学問 
生活のあらゆる面にかかわるジェロントロジー 
コスメトロジーとの融合で始まる新しい学問 
テーマは「生きるほどに美しく」 
「高齢者」の固定観念を変えていく 
山野愛子はジェロントロジーがめざす高齢者像だった 
福祉におもてなしの心をとりこんだ美容福祉 
リタイア後の人生を豊かなものにするために 
あなたはどんな老人になりたいですか 


第2章・日本のジェロントロジー普及に向けて (ジェロントロジー入門)

オンラインシステムで学ぶジェロントロジー 
いつでも・どこでも・何度でも 
世界の英知を結集したレッスン 
理解の度合いを確かめるきめ細かな工夫 
USCがジェロントロジーに取り組んだ理由 
学部の壁を取り払った東京大学 
山野学苑だからこそ可能なこと 
〈カテゴリーⅠ/身体編〉―――――
〝正常な老化〟とは? 
老化による一般的な変化 
運動が老化を予防する 
〈カテゴリーⅡ/精神編〉―――――
鬱病とストレス 
誰もが発症しうる認知症 
高齢者とのコミュニケーション 
〈カテゴリーIII/社会編〉―――――
介護がもたらす家族への影響 
高齢化で変わる家族のありよう 
高齢者の暮らしをサポートするテクノロジー 
ジェロントロジーを特に勧めたい職業 8


第3章・美容の力が高齢社会を豊かにする

美容福祉の真髄、生きるほどに美しく 
ジェロントロジーとコスメトロジーを結びつけた「美道五大原則」 
ジェロントロジー委員会の立ち上げ 
美容福祉がめざしてきたもの 
社会的にも認知された美容福祉 
幅広い社会貢献のできる美容福祉師 
すべての美容師に必要不可欠なジェロントロジー 
基本は人とのつながりを求める人間の心 
外見が変わると心が変わる 
第三者を意識することは生きがいの基本 
東京大学とQOLに関する共同研究 
癌患者の〝生きる〟を支える美容 
忘れてしまった健康な部分に光をあてる 
美道は人々を幸せにする 


第4章・美容福祉が担う地方創生とジェロントロジー

身のまわりからのパラダイムシフト 
美容師を地域コミュニティづくりの切り札に 
本物のコンシェルジュになるための再教育構想 
美容室とコミュニティセンターの一体化が地域活性化のカギ 
地方創生でピンチをチャンスに 
孤立は個人の問題ではなく地域全体の問題 
高齢者は地域を守る主役 
国への提案、地方創生の成功へのカギ 
健康づくり大学との連携 
高齢者にやさしい街づくりが地方創生を牽引 
〝お互いさま〟の精神とノーマライゼーション 


第5章・老いてなお輝くアクティブエイジング

ジェロントロジーの体現者・一〇三歳の日野原重明先生 
サクセスフルエイジングからアクティブエイジングへ 
生きがいがアクティブエイジングを引き出す 
健康年齢の延長が重要 
人の心は発達し続ける 
成人後も成長する脳細胞 
知恵が与えられるということ 
ドキドキワクワクのときめきが大事 
老いてなお輝くために 
自叙伝を書くということ 
「老年的超越」長寿の幸福感 
注目されるブルーゾーン 


最終章・死を見据え、生き切る人生を

未来を意識した選択を 
必要なのは死との折り合いをつけていくこと 
尊厳に満ちた最期を迎えるために 
本当の終活とは 
気づきを経験した受講生たち 
高齢化対策に哲学を 
一〇〇年後の高齢社会とは 
自分自身の第三の人生 
すべての人に生き切る人生を 


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『大学からの地方創生』 前書きと目次

Daigakukaranoweb


大学からの地方創生
 ~挑戦し続ける大学が地方を元気にする~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-410-5
初版発行:2015年7月10日
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 はじめに

「地方が元気になれば、日本が元気になる」

政府はこうしたかけ声とともに、これまでも地域活性化のためのさまざまな施策を打ち出してきた。しかし、東京を中心とした大都市圏への人口流入は依然として続く一方で、地方では少子高齢化による深刻な人口減少問題に直面するところが多く、格差はなかなか縮まらない。

そうした状況下、安倍晋三内閣では、地方の人口減少問題に本腰を入れて対処するべく、「地方創生」を重点政策のひとつに掲げている。若者にとって魅力ある町づくり、人づくり、仕事づくりを推進することで、地方が成長する活力を取り戻し、人口減少を食い止めようというのがねらいだ。

政府は地方創生の一環として、地方の大学の活性化をも企図している。地方の大学への進学者を増やし、地元への就職を促すことで、人口減少に歯止めをかけようというわけだ。そのためにも、国公立・私立を問わず、地方の大学には、地域再生・活性化の核としての役割が期待されているのである。

しかしながら、現実問題として、地方の私立大学のなかには、少子化による18歳人口の減少により、学生の確保に苦慮し、経営が不安定となっているところも少なくない。日本私立学校振興・共済事業団が行った平成26(2014)年度の調査によると、全私立大学603校中、実に46%の大学が定員割れしているという厳しい状況だ。

ましてや大学関係者は、目前に迫った「2018年問題」に危機感を募らせている。いまは横ばい状態にある18歳人口が、この年からふたたび減少に向かい始めるのだ。そのため、大学間の志願者獲得競争がいちだんと熾烈をきわめることは想像に難くない。定員割れの大学がこれまで以上に続出し、経営破綻に追い込まれるところも出てくるだろう。大学の淘汰・再編が本格化し、小規模の私立大学は相当数が消滅の危機にさらされるのではないかと指摘する声もある。

地方大学の行く末に暗雲が立ち込めるなか、

「地方再生の核となる大学を潰すようなことがあってはならないと思うのです。それに、学校は持続してこそ社会的に意義を有するものであり、永続性の確立は私学経営者の使命です」

と言い切るのが、本書で紹介する高崎健康福祉大学の理事長兼学長・須藤賢一氏である。

地元(群馬県)では「健大」と呼ばれ、親しまれている同大学の前身は、群馬女子短期大学。それが平成13年に開学して、いまや医療・福祉・教育分野の総合大学となり、15年という節目を迎えている。

須藤氏が、群馬女子短期大学の創設者である叔母の須藤いま子氏の遺志を継いで理事長に就任したのは、平成10年のこと。このころにはすでに少子化が進みつつあり、短期大学のままでは生き残れないとの考えから、四年制大学を立ち上げることにした。その際、少子高齢化の将来を見すえ、時代のニーズに応えるべく「福祉や医療を学べる大学をつくろう」と決意したのだという。

「人類の健康と福祉に貢献する」を建学の理念とする同大学は、設立当初の1学部3学科体制から、いまでは人間発達学部、健康福祉学部、保健医療学部、薬学部の4学部7学科体制へと教育範囲を広げた。学生数は、大学院も含めると約2400人にのぼる。

地方にありながら同大学がとりわけ注目に値するのは、なんといっても受験志願者数の多さにある。医療系の専門学部では毎年、志願倍率4~6倍を誇るほどの人気ぶりで、全学部平均でも3倍を超えている。

人気の要因は、教育内容を医療、福祉、教育の分野に特化し、それぞれの分野におけるスペシャリストを育成している点が、まず挙げられるだろう。さらに、一学年の定員を学科ごとに40~100名に抑えた少人数制によるきめ細かな指導や、最新の施設・設備の充実ぶりにも定評がある。

また、平成26年10月には、大学に隣接する敷地に「高崎健康福祉大学附属クリニック(健大クリニック)」を開設している。整形外科とリハビリテーション科からスタートし、平成27年4月には内科を開設。また、同時に「訪問看護ステーション」「女性・妊産婦ケアステーション」も新たにオープンした。

同大学は「地域に開かれた大学」「地域に貢献できる大学」をめざしており、また理事長の須藤氏は「21世紀は健康の世紀になる」と考えていたため、大学設立当初から、いずれはクリニックを開設したいという思いが強くあった。学部の範囲も広がり、看護師、薬剤師、理学療法士、管理栄養士、社会福祉士などコ・メディカル人材を養成するようになったいま、いよいよ機が熟したということだろう。

実は、私は以前にも、地方にあって特色ある教育を展開する同大学の人気の秘密に迫ろうと、須藤氏へのインタビューなどをもとに『夢のその先に』(IN通信社刊/平成20年発行)と題する書を上梓している。

当時は、3学部5学科を擁する大学のほかに、群馬女子短期大学から改称改組した短期大学部が併設されていたが、短期大学部は平成24年に四年制に改編され、人間発達学部子ども教育学科となった。ほかにも学部・学科の改編が行われ、看護学部は保健医療学部と名称を改め、看護学科のほかに新たに理学療法学科が加わり、チーム医療に必要なさまざまな知識を学べる環境が整えられた。

そして大学設立15周年を前に、念願のクリニックの開設にこぎつけたというわけだ。

このクリニックは、同大学の学生・教職員の健康管理センターや学生の実習施設として機能するだけでなく、地域住民が利用できる医療施設としての役割も担っており、まさに「地域貢献」を具現化したものとなった。同時に、クリニックの開設は大学自体の付加価値を高めることにもなりそうだ。

同大学では、このほかにも「地域に開かれた大学」として、地域住民の一般参加を目的とした医療・福祉・教育分野の公開講座の開催、学生のボランティアや市民活動への参加、子ども・家族支援センターの設置など、地域密着型の活動を積極的に行っている。これらの点も、地域の人たちに「健大」として親しまれ、県内外の若者たちから支持を集める要因として挙げられるだろう。

もうひとつ、同大学を特徴づけているのがキャリアサポートの充実ぶりだ。

「きめ細かな指導で学生たちの持つ可能性を育てています」

と須藤氏が自負するだけあり、看護師、理学療法士、管理栄養士など、国家資格の合格率は98%前後と、全国平均を大きく上回る高い率を毎年維持している。また、教職や保育者をめざす学生には、各学科の教員および教職支援センターが一丸となって、学生一人ひとりに対し、採用試験合格に向けての徹底した支援を行う。

さらに、学生たちの就職活動を全面的にバックアップするのがキャリアサポートセンターだ。就職率は毎年90%を上回り、なおかつ学生たちの80%近くが、大学で学んだ医療・福祉・教育等の専門分野を活かした仕事に就いているという。

こうした国家試験合格率や就職率の高さが、受験生やその保護者からの評価につながっていることは言うまでもない。

超少子高齢社会を迎えつつある日本では、今後も医療や福祉分野の専門知識や技術を有する人材のニーズは高まる一方だ。理事長として学校経営を委ねられた須藤氏は、改革を推し進めるにあたり、その点にいち早く着目。医療・福祉のスペシャリストの育成や、地方創生の核となるべく地域密着を前面に押し出した特色ある教育を展開してきた。

また、平成27年4月22日に放送されたNHK「クローズアップ現代」では、「どう育てる? グローバル人材」と題された特集のなかで、同大学の薬草園での取り組みが紹介された。

東アジアで注目を集める漢方薬。同大学で行っている生薬の研究を、ベトナムの薬科大学とパートナーを組み、この分野でのグローバル化を図ろうという試みだ。成長の見込まれる特定分野に絞り、グローバルな人材を育てていく計画だ。

そうした独自性を打ち出したことが功を奏して、四年制大学としての歴史はまだ浅いにもかかわらず、「新設、地方、小規模」という一般にはマイナスととらえられがちなイメージをことごとく払拭した。少子化の波が押し寄せ、多くの大学が受験志願者獲得に苦戦を強いられるなか、同大学の健闘ぶりが際立つ。

「大学も、常に動いていることが受験生の注目を集めるための必要条件ではないか、と考えます」

と語る須藤氏は、開学以来、学部・学科の増開設や再編を行うなど、常に攻めの姿勢で進み続けてきたことも成功の要因ではないかととらえている。

平成26年度には、大学院保健医療学研究科看護学専攻修士課程に、助産師を養成する助産学分野を新設。少子高齢社会だからこそ、確かな知識とノウハウを持つ助産師を養成し、即戦力となる人材を育てたいとの考えだ。

また、このところの高崎健康福祉大学高崎高校野球部の甲子園での活躍も、健大の名を全国的に知らしめるのに大きく貢献しているのではないだろうか。いまや甲子園の常連校となりつつある野球部は、平成27年春の甲子園で準々決勝にまで駒を進めた実力を持つ。

須藤氏の胸の内には、さらに大学の新学部開設の構想も描かれているようだが、一方で学園全体としては、既存の附属幼稚園と高校に加え、小学校・中学校の創設も検討中とのことだ。今後も同大学の動きにますます目が離せそうもない。

本書は、大学淘汰の時代が迫り来るなか、独自性を打ち出すことで地方大学経営の可能性を広げた高崎健康福祉大学のさまざまな取り組みを紹介しつつ、理事長兼学長・須藤賢一氏の教育理念と経営哲学に迫るものである。大学進学を志す受験生やその保護者のみならず、教育に携わる人々、そして日本の教育問題に関心を寄せるすべての人にとって、本書がこれからの教育のあり方を考察するうえでの一助となれば、これに勝る喜びはない。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

  平成27年6月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第1章 地域に開かれた「健大クリニック」を開設

大学に隣接した附属クリニックがオープン
整形外科と内科がそろい、いよいよ本格稼働
地域住民の健康寿命延伸に貢献するために
臨床実習の場としてチーム医療の実践を学ぶ
在宅医療への貢献を見すえた訪問看護ステーション
女性にとって心強い、女性・妊産婦ケアステーション
クリニック以外にも地域密着型の活動が目白押し
地域貢献を促進するボランティア・市民活動支援センター


第2章 医療・福祉・教育分野の総合大学、高崎健康福祉大学

建学の理念は「人類の健康と福祉に貢献する」
人間愛を基盤にした全人教育を実践
少人数制によるきめ細やかな教育
チーム医療を担う人材を育てる保健医療学部
看護師育成の需要に応じて定員を100名に増やす
予防医療分野で期待される理学療法
福祉マインドを持った福祉・介護の専門職を育成
医療と情報技術の2領域が学べる医療情報学科
健康と栄養のスペシャリストである管理栄養士を育成
医療や創薬の最前線に立てる力を養う薬学部
保育・教育の高度な専門職を養成する人間発達学部
自分なりの保育観・教育観の確立を
独自のグローバル化策により世界で活躍できる人材を育成


第3章 学生の進路を全力で支援するキャリアサポート体制

安定性を求める若者に根強い資格志向
全国平均を大きく上回る国家試験の合格率
教員が一丸となって国家試験合格を徹底サポート
全員受験・全員合格をめざして
安易に妥協することなく弛まぬ努力が実を結ぶ
教職、保育職をめざす学生のための「教職支援センター」
就職活動を丁寧にバックアップする「キャリアサポートセンター」
医療現場の人材不足に対し、高まる地方大学への期待
地域貢献への評価が高い就職率を後押し
卒後教育を視野にリカレント教育にも注力


第4章 「地方創生」と地方大学に求められる役割

人口減少克服のために政府が掲げる「地方創生」
地方創生に向けて意識変革が求められる地方大学
地方の中小私立大学支援への特別補助も
受験生の支持を集める魅力ある大学づくり
将来なりたい職業を意識した大学選びの傾向も
いよいよ現実味を帯びてきた「2018年問題」
学生の関心を引きつけられるかが生き残りのカギ
必要に迫られる大学教育改革


第5章 理事長・須藤賢一の教育理念と経営哲学

「森林総合研究所」で好きな研究に打ち込む
研究者から教育者へ、第2の人生がスタート
女子短大から共学の四年制大学への転換
経営者に求められる「分析力」「決断力」「実行力」
学園の永続性を図り、教職員の生活を守る
生来の人徳と人を引きつける力
大学の使命は教育と研究の両輪にあり
「自利利他」の精神を教育理念に掲げる
社会と向き合い、地域に貢献できる大学として
弛まぬ改革で進化し続ける


第6章 高崎健康福祉大学が描く未来図

コ・メディカル養成のさらなる学部学科増設の可能性
発展性が期待される人間発達学部のこれから
食糧危機に備えて農学部新設の構想も
地域住民の「well‐being」をサポートするために
地域の薬学ネットワークで課題解決に取り組む
小・中学校の新設で一貫教育体制の確立も視野に
高大連携事業の推進で選ばれる大学へ
地域での評価を確たるものにするために


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2017/06/21

『二松學舍大学の挑戦』 前書きと目次

Nishougakushaweb


二松學舍大学の挑戦
 ~時代を超えて受け継がれる建学の精神~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-414-3
初版発行:2015年10月15日
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 はじめに

「山は樹を以て茂り、国は人を以て盛なり」

吉田松陰の言葉である。

この言葉が語るように、経済、文化、歴史……、すべては人の営み、そしてその結果であり、国の隆興を支えるのは、何にもまして「人」なのだ。人づくり・教育とは、国づくりと同義語だと言って過言ではない。私はそう考えている。

この、国家最大の命題とも言える人づくりにおいて、重い責を担ってきたのが〝最高学府〟である大学だ。

世界的にも熱心な教育熱を誇る日本。大学は、その熱い期待に応える教育の仕上げの場である。有用な人材を育成することで、日本の繁栄を実現し、その繁栄を支えてきた役割は極めて大きい。現在、日本の世界における高いプレゼンス(存在感)は、日本の教育、とりわけ大学教育の成果だと認めることに異論はないと思う。

だが、その大学が現在、大きな壁に直面している。言うまでもないが、最大の要因は、少子化の波が押し寄せてきたことだ。

もっとも、ここ十数年は、大学はむしろ増え続けている。少子化の波を上回って高まる大学進学率が、追い風になってきたからだ。だが、その限界が、ついに視野に入ってきた。

とりわけ危機感を強めているのが私立大学、なかでも地方の大学や中小規模の私立大学だ。現在、すでに40%近くの私立大学が赤字に転じ、経営的に存続できるかどうかの分岐点に立っているのである。

しのび寄る危機を察知した大学は、懸命にそれぞれ策を講じようとしているが、その方向性が似通っていて、金太郎飴のように似た大学ばかりが目についたり、何をめざしているのかわからず、ただ混乱ぶりを露呈するばかりの大学も少なくないのが実情だ。厳しい生き残り競争に打ち勝っていくためには、各大学が旗幟を鮮明にして、それぞれ独自の存在感を発揮していかなければならないはずなのだが、それができている大学は多くない。

そうしたなかで、私が現在、強い関心を抱いているのが、本書でとりあげる二松學舍大学である。

二松學舍大学は、一般的に言えば危機にさらされているはずの、中小規模私立大学だ。だが、逆にそれを強みとして、教育の原点をしっかりと踏まえながら、加速度的に変わっていく社会のニーズに対応しているのだ。そして現在、最も求められている、知力にあふれ、自己判断力や行動力を備えた学生を育成して、ユニークな存在感を放っている。

「国漢の二松學舍」という評判を耳にしたことがある人は、少なくないはずだ。二松學舍大学は、創立140年になろうとする長い歴史を通じて、一貫して、日本人の人間力の基盤となってきた道徳観、倫理観を醸成する「漢学」教育と、すべての学問、いや、社会生活の基盤となる「国語力」の強化に軸足を置く教育を、行ってきた。現在は、この「国漢」を主軸とする文学部に加えて、国際政治経済学部も設置。国語力を基盤に、各学科の高い専門性を加えた、個性ある教育を展開している。

キャンパスは東京の一等地・千代田区九段と千葉県柏市にあり、大学院、附属高校2校(九段・柏)と附属中学1校(柏)も併設している。附属高校(九段)は、何度も甲子園に出場する野球の名門校で、「二松學舍、ここにあり」の英気を日本中にアピールしている。

私が二松學舍大学に強く関心を引かれた最大の理由は、真の国際人を育成するために、「国語力をしっかり身につけること」を基盤に置いていることだ。

情報社会だ、国際化の時代だと言っているが、それらすべての基盤になっているのは、確かな母国語力、日本語力であるはずだ。昨今の若者の日本語の乱れ、日本語力の衰えは、目を覆うものがあるが、国語力の衰退は、やがては日本人のポテンシャルの衰退につながってしまう。まず国語力の強化をという二松學舍大学の指針は、まさに教育の王道を行くものだと私は確信している。
     
国語力重視の原点は、二松學舍大学の創生時にさかのぼる。

二松學舍大学は1877(明治10)年、漢学者の三島中洲によって設立された漢学塾・二松學舍をルーツとする。当時の日本は、欧米をはじめとする先進国の文化が取り入れられ、洋学へ、洋学へとなびく、まさに西洋学が華やかな時代であった。しかし中洲は、西洋文明の進んだ部分を自分たちのものにするには、まず「母国語を正しく理解し、使いこなせること」、さらには「自国の文化をしっかり学び、正しく理解していることが欠かせない」と、国語力と漢学の素養を磨くことの重要性を毅然と説いたのである。

創設時、三島中洲は、二松學舍大学の建学の精神を、

「東洋の精神による人格の陶冶」
「己ヲ修メ人ヲ治メ一世ニ有用ナル人物ヲ養成スル」

と唱えた。この建学の精神のもとに、二松學舍には「絢爛と」と形容したいほどの逸材が集まってきた。明治時代を代表する文豪・夏目漱石、現代書道の父と尊敬を集める書家・比田井天来、憲政の神様と呼ばれた首相・犬養毅、日本の女性運動家の草分け・平塚雷鳥、柔道家・嘉納治五郎……。二松學舍の歴史には、日本の近代史をリードした各界の著名人の名が、綺羅星のごとく並んでいる。

この建学の精神を現代風に言えば、

「日本に根ざした道徳心をもとに、国際化、高度情報化など知識基盤社会が進むなかで、自分で考え、判断し、行動する、各分野で活躍できる人材を育成する」

となるだろう。

「国際競争が激化する時代、競争のベクトルは技術や情報だと考えられがちですが、ベースは知識基盤社会なのです。現在、最も強く求められているのは人間教育。よりよい社会のために、自分は何を知的武器にして、どういう形で貢献していくか。大学は、それを選択し、実際に行動に移せる人材を、育成していかなければならないと思っています」

学校法人二松學舍理事長の水戸英則氏は、力強い口調でこう語る。ひと言で言えば、鋭く感じ、深く思考し、そのうえで自ら判断して、確かに行動できる、人間力の高い人材だ。

「そうした人間を育成する基盤になるのは国語力です。人文科学、社会科学、自然科学など、すべての学問・研究は、多くの書を読み、多様な人と触れ合い、語り合い、さらにはアウトプットすることによって、磨き上げられていくのですね。こうしたプロセスを経て、人間性が陶冶されていくわけです」

二松學舍大学学長の菅原淳子氏も、そう言葉を添える。

二松學舍大学のこの教育方針は、社会にも高い評価を得ており、卒業生の就職状況も好調だという。教員希望者をはじめとして、公務員試験など資格試験のサポートに注力しているほか、一般企業をめざす学生には、インターンシップ体験の奨励や「社長弟子入りプロジェクト」など、学生のモチベーションを高め、企業の理解も深められるキャリアサポートも充実している。

名実ともに国漢の二松學舍の名を引く「東アジア学術総合研究所」を擁していることも、二松學舍大学の存在価値をおおいに高めている。陽明学研究、日本漢文学研究など、ここで行われている活動は、ハンガリー、イギリス、ベトナムなど海外にも広く知られており、「いまや、二松學舍大学の名は、海外でのほうが有名なのかもしれません。日本漢学を学ぶなら二松學舍大学と言われています」(東アジア学術総合研究所所長・髙山節也氏)と言うほどだ。海外留学の推進、海外からの留学生の受け入れにも力を注いでおり、それらの活動をサポートする「国際交流センター」も設置されている。

公開講座と言えば、「『論語』の学校」の開催も、社会的に大きな意義を持っている。江戸の寺子屋では、小さな子どもたちが「子曰く……」と、大きな声を張り上げて『論語』を読んでいたものだ。音読から暗記へと進み、日本人の精神と道徳の根幹となっていった『論語』。「『論語』の学校」は、その『論語』を読み解く力、論語リテラシーを高めることにより、ともすると見失われそうになっている日本人の精神性を、改めて確立しようとの取り組みに挑んでいる。

こうした取り組みと並んで、二松學舍大学が注目されている理由は、目下、真の大学改革を力強く進めていることだ。

理事長の水戸英則氏は、元日銀マン。財務、経済のプロフェッショナルだ。

現在、日本の大学は、大きな岐路に立っている。少子化により、学生数は今後、急激に減っていく。私立大学は、教育機関であると同時に事業体という顔もあり、どんなに高邁な教育理念を掲げても、経営的に破綻してしまえば、教育の場から消えていかなければならないという宿命を持っている。

2011年、理事長に就任した水戸氏は、140年になろうとする二松學舍の歴史をこの先も永く続けていくために、二松學舍大学の経営改革に乗り出し、「N’ 2020 Plan」と呼ぶ将来計画を策定。「教育機関」から「教育サービスを提供する事業体」への変換という目標を掲げ、マーケットイン発想を基盤とした新たな大学への転身をめざしている。

「N’ 2020 Plan」は、教育現場の改革は言うまでもなく、大学経営の健全化に必要な、強力なガバナンスの確立などを力強く推進している。そうした努力の成果は顕著で、学校法人二松學舍は、格付投資情報センター(R&I)の財務格付で「A-(シングルAマイナス)」という高い評価を得ている。

現在、日本の大学のあり方をめぐり、国政でも盛んな議論が行われている。だが、ターゲットにあげられる大学は、東大・京大・阪大などの有名国立校や、慶應、早稲田、上智など、いわゆる一流大学に終始しがちだ。

しかし、社会はピラミッド構造になっている。最も厚く、重層な部分は、中間層が支えているのだ。二松學舍大学などの私立大学は、社会を支える中間層労働力の源となる人材を輩出するという、国にとっては実質的に最も重要な役割を果たしている。真の大学改革は、中間層大学こそが真摯に取り組まなければならない課題であるはずだ。

「N’ 2020 Plan」は、その意味でも、国の大学改革路線に一石を投じる貴重な指針となっている。

本書では、原点回帰を基盤に、王道を堂々と進みながら、変革にも果敢に挑む二松學舍大学のあり方を、さまざまな角度から詳しく紹介していきたい。

本書が、大学選択を前に、大学で何を学び、それをその後の人生にどうつなげ、どう結実させていくかを悩んでいる受験生や、その保護者たちが、確かな答えを見いだす一助となればと、願ってやまない。

また、本書から、日本の教育の今後のあり方を考える手がかりを、1つでも2つでも読み取っていただければ、著者として、これ以上の冥利はない。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

  2015年9月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第1章 変革を迫られる日本の大学

日本の成長戦略の一翼を担う大学教育
驚くほど低い日本の大学の世界評価
喫緊の課題とされる大学の国際競争力強化
分厚い中間層の人材育成を担う中・小規模大学の役割を再評価
危機感迫る、日本の大学を取り巻く環境
大学生バブルで乱立した大学
大学淘汰の時代に突入
いっそう熾烈化する大学間の競争
入試の多様化と学生の質の低下
囁かれる2018年問題
ミッションを問われる私立大学
大学本来の使命に立ち返り、改革を進める二松學舍大学
温故知新の精神を現代に根付かせていく


第2章 真の国際人育成をめざす二松學舍大学の教育

Ⅰ 国漢の二松學舍大学から人間性育成の二松學舍大学へ
 皇居を臨む、大学教育の理想の場に建つ学び舎
 まず、国語力をしっかり体得。日本人としての知識基盤を確立する
 コミュニケーション力に優れた人材を養育する
 国語力強化教育を実施
 漢学の素養で人間力を涵養していく
 英語による授業など、グローバル教育も意欲的に展開
 世界各地区の7校と協定を結び、積極的な国際交流を展開
 二松學舍大学の国際交流、3つの強み
 カスタムメイドの教育を実現する多様な授業内容
 マン・ツー・マンのフォロー体制
 女子力を磨く二松學舍大学
 学びの機会均等を実現する各種奨学金制度を完備

Ⅱ 企業に、教員に、公務員に。全方位に広がる卒業後の進路
 1年次からキャリア教育を必修に。「仕事と人生」を熟考させる
 学生と採用側企業、双方の期待に応えるキャリアサポート
 ユニークな「社長弟子入りプロジェクト」
 大手企業から堅実な中堅企業まで、多岐にわたる就職実績
 教員をめざすなら二松學舍・教職支援センターの設置
 懇切丁寧な教職サポート
 ほかにも取得可能な資格を積極的に支援
 公務員試験も徹底的にサポート

Ⅲ 東洋文化と国際社会を結ぶ、現在、最も求められる教育内容
 文学部、国際政治経済学部の2学部で実施される人間教育
 二松學舍大学の総合的な価値を高める2学部の強い連携
 自ら発信し、表現する力を培う文学部教育
 国内最大級の規模を誇る10の専攻を持つ国文学科・中国文学科
 国際的視野を養い、国際人としてのスキルを磨く国際政治経済学部教育
 世界を視野に、複合的な視点で政治・経済・法律を学ぶ3専攻
 高度な学問研究を実現できる大学院
 世界の漢文研究の中軸・東アジア学術総合研究所
 「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」に採択される
 附属高等学校、附属柏高等学校、附属柏中学校
 広く一般に向けた「『論語』の学校」
 文学賞受賞など、多彩な輝きを放つOB・OGたち


第3章 脈々と息づく、138年の歴史と伝統

Ⅰ 漢学塾の開塾から大正・昭和の戦前まで
 日本近世・近代史を牽引する人物を輩出してきた二松學舍
 学祖・三島中洲と「二松學舍」
 二松學舍大学に学んだ明治・大正・昭和の偉人たち
 経済的基盤を固める
 中洲没し、山田準が後継者に
 専門学校の設立
 昭和初期~太平洋戦争終戦までの二松學舍

Ⅱ 戦後の復興から二松學舍大学拡充までの歩み
 戦後復興期の二松學舍
 二松學舍の飛躍・発展期を実現した浦野匡彦
 吉田茂元総理大臣、二松學舍舎長に推戴
 大学院の設置

Ⅲ 創立100年までの二松學舍大学の歩み
 福田赳夫元総理大臣、二松學舍維持会長に推戴
 附属高等学校、甲子園出場へ
 時代は平成へ。二松學舍の新たな歴史
 創立130年以降、二松學舍、未来へ始動


第4章 未来への改革「N’2020 Plan」

10年後、20年後を見すえた長期ビジョン「N’ 2020 Plan」
日銀マンから教育者へ
「N’ 2020 Plan」の誕生まで
転機に立つ大学教育と経営
大学危機の認識を促す『今、なぜ「大学改革」か?』
大学は、「教育機関」から「教育サービスを提供する事業者」へ
「N’ 2020 Plan」の構成
「N’ 2020 Plan」の達成に向けた取り組み
さらなる成果拡充のために


第5章 「二松學舍ブランド」の引き上げで理想の大学づくりをめざす

知の宝「古典」を生かし、日本再生に貢献する人材を輩出する
二松學舍「建学の精神」に込められた、真に有用な人材育成への思い
真の「国際人」を育てていく
二松學舍大学ならではのブランド価値を磨いていく
社会的ニーズとのマッチングを図り、実社会が求める人材を輩出する
父母らの期待に応え、「親が選びたくなる大学」へと進化する
学費負担を少しでも軽減したい。二松学舎サービスの真の狙い
二松學舍から世界へ情報発信するアンテナユニバーシティ
視野には新学部の創設も
「温故知新」から「温故創新」へ


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2017/06/19

『大学教育再生への挑戦』 前書きと目次

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大学教育再生への挑戦
 ~震災の地から始まる日本人の心の革命~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-433-4
初版発行:2017年3月30日
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 はじめに

まばゆい輝きに満ちた東北の海。一面に光の粒子を撒き散らしたようなその光景は、実に美しい。

だが、6年前の2011年3月11日、この海は突然、牙をむいて、人々に襲いかかり、計り知れないほどの大きな被害をもたらした。

しかし、人の力はさらに大きいものだったのだ。この甚大な被害に負けることなく、いま、東北は着々と復興の歩みを進めている。

長年、ジャーナリストとして時代を見つめてきた私は、東日本大震災のあと、何度となく現地に足を運んできた。そうしたなかで頻繁に耳に入ってくるのが、「東日本国際大学/いわき短期大学」の名前だった。被災地のひとつである福島県いわき市にある両校の学生たちは、復興のために力強く働く多くの若者たちのなかでも、ひときわ光る意思力と行動力を発揮し、地元をはじめ、多くの人々に勇気と希望を与える大きな存在になっているというのである。

いわき市にある、東日本国際大学/いわき短期大学は、学校法人昌平黌が運営する教育機関だ。ほかにも、東日本国際大学附属昌平中学・高等学校、いわき短期大学附属幼稚園などを擁している。

昌平黌の教育の核にあるのは、儒学の理念である孔子の教えにもとづく「人間主義」だ。儒学を謳う教育機関は、あまり例がない。いや、ここまで徹底して儒学教育を展開しているところは、日本では昌平黌だけかもしれない。その理念のすばらしさに感銘を受けた私は、昌平黌が教育にかけてきた歴史や建学の理念、それにもとづく教育の実際などについて広く知ってほしいと、『心の革命』(小社刊)という書籍を1996年に上梓した。

そうした縁から、震災後の混乱が落ち着いたころを見はからって、昌平黌の理事長である緑川浩司氏に連絡をとったところ、耳に飛びこんできたのは次のような言葉だった。

「あの震災は、わが校にとってはある意味で再生のきっかけとなりました。震災を経験したことで、昌平黌の建学の精神を、よりいっそう進化させることができたのです」

どういうことかとたずねると、こういうことだった。

震災前の東日本国際大学/いわき短期大学は、大学の厳しい生き残り競争にさらされており、ともすれば学生数の確保を優先するあまり、学生たちの人間的な資質を磨くことは後手にまわりがちだった。だが、震災という未曽有の悲劇に遭遇したときに長年受け継いできた儒学の精神が覚醒し、学生や教授陣、大学運営にあたる関係者たちは、誰が言うともなく、被災者を助けることを最優先として活動し始めたのである。

「昌平黌は建学以来、孔子の教えを教育の核においてきました。その精神、具体的に言えば、仁義礼智信(儒学で説く、人が常に守るべき5つの徳。五常、五徳)を基本とした人間教育を徹底しているのですが、その成果が震災時に開花し、被災者支援、さらには復興支援に結実したのです」

と、緑川氏は誇らしげに語った。

あらためて述べるまでもなく、震災は、学舎の倒壊などを含め、昌平黌にも有形・無形の多大な被害をもたらした。特に震災の翌日に発生した東京電力福島第一原子力発電所の爆発事故の余波は大きかった。東日本国際大学/いわき短期大学は、福島第一原子力発電所にいちばん近い大学だったのだ。

といっても、福島第一原子力発電所からは40㎞も離れており、実際には放射性物質が漏洩したことによる危険や影響はほぼなかった。だが、そんな実情とは関係なく風評被害は容赦なく広がっていき、東日本国際大学/いわき短期大学に大きな痛手を与えたのである。

東日本国際大学は、世界に開かれた大学として広く知られる存在で、在学生の約5分の1にあたる129人(このほか、留学生別科生137人在籍。2017年2月現在)が海外からの留学生だ。中国、韓国、タイ、ベトナム、ミャンマーなど、その国籍は十数カ国にのぼる。彼ら自身の不安はもちろんだが、遠く離れた異国に子どもを送り出している彼らの両親などの不安は、いかばかりのものだっただろうか。

昌平黌の関係者は、まず海外からの留学生たち全員を安全圏に移し、一時的に帰国させるという判断を瞬時に行った。そして、各国大使館や領事館など、それに各航空会社と連携して、全員を無事に母国へと帰国させたのだ。

その間、精神的に衝撃を受けている学生たちに対しては、大学関係者が付き添い、メンタルケアも含めて、できるかぎりのサポートを実施した。

そのときの対応がいかに誠心誠意のものだったかを示すかのように、震災で母国に戻った留学生たちの約90%が、その後ふたたび大学に戻ってきたという。

国内の学生たちの行動もすばらしかった。彼らは率先して復興作業や支援活動に加わり、積極的に活動したのである。その様子や姿を見た人々のあいだで「東日本国際大学/いわき短期大学の学生の人間力はすばらしい」という評判が立ち、震災後、両大学の評価は、いやがうえにも高まっていったというのだ。

このときの体験は、昌平黌の関係者にも強い自信を甦らせた。

「私たちが長年行ってきた、『論語』を中心とした人間教育に間違いはなかった、偏差値や成績、ビジネスでも結果や実績ばかりを評価しがちな現代にあって、人間教育の重要性を主軸においた昌平黌の教育は、結果的に時代のニーズを最も先取りするものだった、ということに気づかされたのです」

緑川氏の言葉に力がこもるのも当然だ。

こうした結果から、地域と共存することの重要性をあらためて嚙みしめた昌平黌は、現在、「グローカル」という新しい価値観を世にアピールしている。

グローカルとは「グローバル」と「ローカル」を合わせた造語で、グローバル=国際的な視野や力量を持ちつつ、その視点や力を自らが生きる地盤であるローカル=地域にも活かしていく、という姿勢を言う。

現在、東日本国際大学の学長は、早稲田大学名誉教授で、2011年3月までサイバー大学の初代学長を務めていた、エジプト考古学研究で世界的にその名を知られる吉村作治氏である。エジプト考古学と儒学とは、一見ミスマッチに見えるが、人間性を重んじ、人間としての誠を大事にする姿勢や「人が真摯に生きる」ことの価値は、古今東西、変わらないのだという。

世界的な知名度を持つ吉村氏が学長に就任した効果や、真の人間性を育む儒学教育、さらに、「寺子屋教育」と称し、小規模できめの細かい教育に徹してきた揺るがぬ方向性などが評価され、近年、東日本国際大学の評価はじわじわと高まってきている。それを実証するのが、東日本国際大学、いわき短期大学ともに、就職率100%という信じられない実績を数年にわたって続けていることだ。しかも、卒業生たちの多くは福島県下で就職している。両校は、明日の地域づくりに欠かせない人材の供給源として、貴重な成果をあげているのである。

この事実は、いくつもの課題を抱える地方にとって、大きな励みとなるはずだ。また、両校の取り組みは、地域社会と大学がみごとなWin‐Winの関係を構築するという、明日の日本のための教育機関の理想形のひとつとして、全国的にも注目を集める存在になっている。

震災のダメージからの復活と、そこからさらに飛躍してグローカルという新たな価値軸を確立し、今後の日本の人材育成をリードしていこうとしている昌平黌の奮闘ぶりを、つぶさにうかがった私は、ここに、日本の高等教育が、さらには社会がめざすべき、ひとつの方向性が示されていると感じた。

現在、日本の教育は、大きな壁にぶつかっている。偏差値偏重教育は明らかに頓挫してしまった。大学進学をめざす学生や、子どもを持つ親、いや、日本人全体が、あらためて大学で学ぶことの真意を見つめなおす必要があり、その具体的な答えのひとつが、東日本国際大学/いわき短期大学にはある。そうした意味で、本書は、日本の未来を真摯に考えようとするすべての人に、多くの示唆を与えるだろうと自負している。

なお、本書の執筆にあたっては、学校法人昌平黌理事長の緑川浩司氏、東日本国際大学学長の吉村作治氏、いわき短期大学学長の田久昌次郎氏をはじめ、多くの方々のお力添えを得た。ここに厚く御礼を申しあげる。

また、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

  2017年2月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第1章 「3・11」からの復興 ―「天、我に徳を与える」―

史上かつてない規模の自然災害
学生たちは絶対に守る
留学生は安全な都内へ避難
留学生の一時帰国
さらに続いた緑川らの奮闘
9割の学生が戻ってきた
じわじわ評価が浸透しつつある昌平黌の人間教育
昌平黌の真髄をいかんなく発揮
復興から学んだことを次代に活かす
「義を行い以てその道に達す」


第2章 学校法人昌平黌と孔子の教え ―「義を行い以てその道に達す」―

いまこそ求められている真の人間教育
再認識される「教育=人間力の育成」という考え方
「利は義の和から生じる」と考える儒学の教え
2000年あまりにわたりアジアの人々の法灯となってきた儒学
昌平坂学問所の誕生
儒学の根幹を成す「仁」「義」「礼」「智」「信」
明治以降の「昌平黌」の歩み
学校法人昌平黌の前身である開成夜学校の誕生
学校法人昌平黌へと続く道
学校法人昌平黌の生みの親である田久孝翁という人物
昌平高等学校の移転問題
昌平黌短期大学の創設
新生昌平黌のスタート
山岡荘八が名誉学長に就任
後半生を儒学教育に捧げた山岡荘八
4年制大学を持つ教育機関へと成長
儒学教育を象徴するペンと剣の校章、大成殿の建設
引き継がれた「昌平黌」の理念
巨木、倒れる
緑川、理事長に就任

《人間力育成を心に銘じて》……学校法人昌平黌理事長 緑川浩司


第3章 グローカル人財を育成し、地域と明日の日本に貢献する ―「性相近く、習い相違し」―

東日本国際大学から生まれた進化型人材「グローカル」
世界的なエジプト考古学研究者の吉村作治を学長に迎える
「OPEN MIND」に根ざした人財育成のスキーム
平和経済学を掲げて開校
ICTを基礎に経済・経営を学ぶ「経済経営学部」
実社会で役立つ実践力と即戦力を体得する2つのコース
一人ひとりの「幸せ」を考える「健康福祉学部」
多様な福祉行政やサービスに対応する3つのコース
平成の寺子屋と呼ばれる少人数ゼミと各種資格取得
資格取得を全面的に支援
エクステンションセンターの資格取得講座
2つの特別プログラムでキャリア形成の実現をサポート
海外との架け橋となる国際部の活動
日本から海外への留学生を増やす
充実した奨学金・特待生制度
活発なスポーツ活動による人間力育成
寮や学生マンションで暮らし、健康もサポート
100%を誇る驚異的な就職率
就職支援力120%、キャリアセンターの働き
人財の地元定着や留学生の就職支援のための精力的な活動
中・高一貫教育で高い評価を得ている東日本国際大学附属昌平中学・高等学校

《「中庸」を原点に、真に社会が求める人財育成を進めていく》……東日本国際大学学長 吉村作治


第4章 地域を支える人財を育成する、いわき短期大学 ―「勉学積徳」―

いわき短期大学は学校法人昌平黌の原点
「商経科」から「幼児教育科」を持つ大学へ
福祉専攻コースの誕生と東日本国際大学への移行
心に届く幼児教育のプロフェッショナルを育てる
人としての生活のすべてをカバーする幼児教育
附属幼稚園での教育実習で現場力を培う
「幼稚園教諭」と「保育士」の2つの免許・資格を取得できる
東日本国際大学へ編入する道もある
グローカルな人間力育成を加速する「英語特別講座」
東日本国際大学との積極的な交流も魅力のひとつ
安心の寮生活で学生の暮らしをサポート
地域の高校と連携授業を開催
5年連続就職率100%、圧倒的な地域からの信頼感
「いわき短期大学だから夢をつかめた」と語る卒業生たち

《地域貢献型の人財育成という使命に徹していく》……いわき短期大学学長 田久昌次郎


第5章 昌平黌が描く将来ビジョン ―「義と和の中に未来がある」―

『論語』は未来に向かう人間力の原点
地域貢献の拠点「地域振興戦略研究所」を立ちあげる
昌平黌論語を確立し、発信していく
現代の寺子屋「昌平塾」で学ぶ昌平黌論語
昌平黌のオンリーワン資質、存在意義を磨いていく
偏差値偏重教育を脱し、知力・体力・徳力教育を進めていく
2023年には地方大学のトップになる


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その他のカテゴリー

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