*人材ビジネス・アウトソーシング

2017/12/11

『製造業の未来をつくるアウトソーシング』 前書きと目次

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製造業の未来をつくるアウトソーシング
~日本のものづくり復活と雇用再生に挑む~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-386-3
初版発行:2013年7月3日




 はじめに

日本はもはや、経済大国ではない。

OECD(国際経済協力開発機構)が平成二十四(二〇一二)年に発表した二〇六〇年の世界経済展望によると、今後、世界経済は新興国主導のかたちで進む一方で、日本は経済小国に転落する可能性が高いと予測。われわれにとっては耳の痛い、厳しい評価を突きつけられてしまった。

実際、テレビや新聞のニュースを見ても、いまの日本には暗い話題が多い。特に経済に直結する雇用の問題においては、ここ数年、気の重くなる話題ばかりである。就職氷河期、内定取り消し、ポスドク問題、ロストジェネレーション、ネットカフェ難民、派遣切り、追い出し部屋、ワーキングプア、無縁社会……。

「『強い日本』をつくるのは、ほかの誰でもありません。私たち自身です」

安倍総理がいくらそう力説しても、いまの若者たちが“強い日本”を実感するのはむずかしいだろう。

高度経済成長期やバブル景気を体験してきた世代にとって、日本が経済小国になるという未来予想図は、正直、受け入れがたいものがある。しかし、当時のような経済成長はとても望めない、というのが日本の現実なのだ。

経済の低迷の影響もあり、近年、日本の雇用事情は大きく変化した。かつての終身雇用制度ではなく、スタッフを外部組織からの供給に頼る企業が増えているのだ。こうした人材確保の方法を“アウトソーシング”という。

アウトソーシングには大別すると、「派遣」と「請負」の二形態がある。

厚生労働省によれば、労働者派遣とは「労働者が人材派遣会社(派遣元)との間で雇用契約を結んだうえで、派遣元が労働者派遣契約を結んでいる会社(派遣先)に労働者を派遣し、労働者は派遣先の指揮命令を受けて働くというもの」である。労働者派遣法において派遣労働者のための細かいルールが定められているが、近年では「派遣切り」「年越し派遣村」といった芳かんばしくないイメージだけが先行している感がある。そのためか、派遣批判、いわゆる“派遣バッシング”を口にする人が非常に多い。

一方、請負とはプロジェクトの一部またはすべてを請負元が受託する形態のことである。たとえば、大手建設会社が受注した住宅の建築を、町の小さな工務店に依頼するようなものだ。

実は、製造業における派遣は長らく法律で禁止されていた。しかし、グローバル化する市場のもと、自動車メーカーや家電メーカーをはじめとする日本の製造業が海外の企業に対抗し勝ち残っていくには、品質はもとより、価格面においても競争力を持たねばならない。そして、そのためには、雇用の圧縮と海外移管への検討が必須となる。つまり、アウトソーシングなくしては、日本企業が価格競争を勝ち抜くことはむずかしいというのが現状なのだ。

そこで平成十六年に製造派遣が解禁されたが、前述のように、派遣労働者の不安定な身分や生活状態が社会問題となり、労働者派遣法の見直しが迫られるようになった。しかし、平成二十四年三月に成立した改正労働者派遣法は、経済環境や労働実態を正しく反映したものとはいえず、本質的な問題解決にはなっていないと指摘されている。

いずれにしろ、日本の雇用現場では企業と労働者の双方とも、以前とは考え方が大きく異なってきていることはたしかである。

企業側にはグローバルな競争のもとでは、人件費削減の必要から、正規雇用の枠を広げることはできないという事情がある。

一方、労働者側にも自由に就業できる雇用形態を希望する人たちが存在することはまた、事実なのである。

しかし、派遣反対派の人たちは、「派遣という業務形態こそが問題であり、本心から派遣を望むものなどいるはずがない」と主張する。彼らは高度経済成長期に形成された「終身雇用の正規社員こそが就業形態のあるべき姿であり、派遣などの非正規社員は就労における“諸悪の根源”である」と信じてやまないのだ。もしかすると、彼らは日本が経済大国であったころの幻影をいまも追い求めているのかもしれない。

だが現在の日本で、企業側に正規社員化を強要するような規制をつくり、社員を正規社員のみに限定したら、立ち行かなくなる企業は少なくなく、結果的に正規社員の雇用を減らすことにつながりかねない。

また、派遣という就業スタイルがなくなれば、就労機会を失ってしまう人も多くいるのではないだろうか。派遣には、「ライフスタイルに合わせて仕事を選べる」「時間に融通を利かせた働き方が可能」「さまざまな職場を経験することができる」などのメリットがある。子育てや介護など、家庭の事情を抱えている人などのなかには、正規社員よりも派遣のほうが魅力的と感じている人は少なくない。場合によっては、派遣でなくては働けない、というケースさえあるのだ。

そうした労使双方の要望に応えているのが、アウトソーシングという就業・雇用形態なのである。

そのアウトソーシング業界で、生産現場への請負と派遣で業績を伸ばしているのが、本書で紹介する株式会社アウトソーシング(本社:東京都千代田区、代表取締役会長兼社長:土井春彦氏)である。

同社は平成二十五年三月十二日付で、東証二部上場から一年と一日という最短期間で東証一部銘柄に指定されることになった、いまもっとも勢いのあるアウトソーサーである。

平成九年に設立された同社は、創業以来、十五年間、製造現場への請負と製造派遣の両事業で着実に業績を伸ばし、平成二十四年十二月期の連結売上高は四二〇億円、平成二十五年十二月期は五〇〇億円を見込むまでに成長した。

同社の請負・派遣先は実に幅広い。電気・電子機器、輸送機器(自動車)、化学・薬品、食品、金属など、製造業全般にわたっている。それだけに各製造現場で働くスタッフには、高度な生産技術が求められる。

また、このように幅広い業種で事業を展開することで同社は、特定の業種の需要動向に左右されない体制を整えるとともに、高い流動性を確保している。

こうした同社スタッフの高度な技術力と流動性の高さこそ、ほかの生産アウトソーシング企業との差別化をはかる最大の要因なのである。

同社の代表取締役会長兼社長・土井春彦氏はいう。

「各メーカーが求める技術力を養成するため、それぞれのメーカーで定年退職した技術者を採用したり、定年を間近に控えた技術者を転籍というかたちで迎え入れたりするなどして、キャリアアップ・キャリアパス制度の担い手となってもらっています」

そんな同社が掲げる経営理念は、「変革する経済環境に対して英知と創意工夫を結集し、生産の効率向上に寄与することにより、ものづくり日本の発展と明るく豊かな社会の実現に貢献します」というものである。生産性の効率を上げるには技術力の向上が不可欠である。その点では、生産現場に特化し新たな価値を創造しつづけている同社は、ものづくり日本の復活に不可欠の存在といえる。

同社にはもう一つ強みがある。それは日本メーカーの海外工場でのニーズにも迅速かつ的確に応えることができるという点である。

産業空洞化が叫ばれ、日本企業の生産拠点の海外移転が相次ぐ昨今、そうした企業側のニーズに敏感に応えていかなければならないということであろう。

それらの事情を踏まえて、土井氏は将来の展望をこう語っている。

「新興国の台頭や新興市場への進出にともない、各メーカーの生産体制の比重が海外に移っています。当然、当社でもタイやベトナムを中心とした東南アジア諸国での事業によりいっそうの力を注ぎ、近い将来には海外での事業で、国内の売上高の二倍の業績をあげようと考えています」

本書は、日本経済の根幹ともいえる製造業の現状と雇用を取り巻く諸問題に光をあてつつ、生産アウトソーシング事業で快進撃を続ける「アウトソーシング社」の事業活動を紹介するとともに、創業者である土井春彦氏の経営理念、ビジネス哲学に迫るものである。

これは、現在、製造業にかかわる人はもとより、日本のものづくりの将来に思いを巡らせる多くの一般読者にとっても、貴重な指針の書となるに違いない。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。


平成二十五年五月   鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 日本のものづくりを支えるアウトソーシング

市場のグローバル化で雇用事情が変化
若年失業率の増加と即戦力を求める企業
「派遣=社会悪」という概念は大きな誤解である
実情にそぐわない労働者派遣法の改正
派遣から請負へとシフトする製造業
生産アウトソーシング業界が抱える問題
日本のものづくりを支えるために


第2章 生産アウトソーシングに特化し躍進する「アウトソーシング」

新たな価値を創出し、社会に貢献
製造現場へ特化し、雇用の流動化を実現
二つのサービス体制――① 製造系
二つのサービス体制――② 技術系
M&Aの積極的な推進で多様な技術を保有
東南アジアでの事業展開でメーカーの海外進出に呼応
「生産アウトソーシングNo.1」に邁進


第3章 経営資源の最適化を実現するビジネスモデルを構築

ニーズの変化に即応するソリューションを提供
労働者供給型アウトソーシングの限界
経営資源の融合が相乗効果を発揮する「プロフィット・シェアリング・モデル」
PEOで達成する顧客・スタッフとの「WIN‐WIN‐WIN」
メーカーの管理業務を引き受け、人と企業の架け橋に
メーカーの「固定費削減」と「技術の継承」を実現
アウトソーシング社のビジネスモデルを業界の基本モデルに


第4章 製造業の未来をつくる人づくり

「人」に重点を置いた教育制度
新人研修――マネジメント研修からヒューマン研修まで
リーダーを育成する充実のキャリアアップスキーム
階層別研修で各種検定試験によるスキルアップを応援
有能技術者を転籍させ、座学・実習の指導係として採用
社員のメンタル面もフォローできる体制づくり
真のパートナーとなるために、メーカー以上の努力を続ける


第5章 創業者・土井春彦の経営理念とビジネス哲学

人材サービス一筋に歩んだ半生
人材ビジネスの先駆企業に入社
二十八歳で独立、その後、アウトソーシング社設立へ
コンプライアンスの確立で他社との差別化をはかる
「メーカーが抱える課題にニーズあり」が信念
業界を正義あるものにし、認知度を高めるために
強いものづくり日本の復活に貢献


第6章 人と企業の未来を見つめる「アウトソーシング」の未来戦略

日本市場が縮小していくなか、いかにものづくりを守っていくか
量産部門以外の道筋も探りながら、シェア拡大を狙う
さらなる展開をめざす海外事業
雇用規制や政策にも対応していけるアウトソーシングのかたち
繁閑サイクルの異なる分野に力を傾注
長期雇用を実現するために、期間工の正規社員登用も
積極的な成長戦略で業界No.1へ


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2017/06/22

『アビストの挑戦』 前書きと目次

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アビストの挑戦
 ~日本モノづくりを支える設計技術者集団~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-407-5
初版発行:2015年4月21日
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 はじめに

近年、製造業を中心に派遣社員の雇用はすでに定着し、雇用形態は完全に変わったといっていいだろう。アウトソーシングなくして現場は動かなくなっている。

終身雇用・年功序列の日本型経営はもはや消滅し、少子高齢社会となり労働人口がますます低下するなかで、若い人の働き方、働く意識にも大きな変化がみられる。派遣業務を肯定する声も多く、かつてのようなマイナーな姿勢に様変わりがみられる昨今だ。

詳細は本文に譲るが、ひと口に派遣といっても、一般労働者派遣、特定労働者派遣の二通りがある。通常、前者の派遣労働者は、製造業などで不足する人員の補充や製造現場での人手として雇われるケースが一般的だ。仕事としては時期、需要などにより流動性の高い分野である。それに対し後者の特定労働者派遣は技術者中心の派遣であり、専門特化した技術を有する技術者が派遣労働者として、メーカーの要請により常駐型または受託型請負で仕事を任される、いわばアウトソーシングの性質をもったものだ。

本書で紹介する「株式会社アビスト」(本社・東京都中野区、代表取締役社長・進勝博氏)は、特定労働者派遣の会社であり、その特徴は「モノづくりの開発パートナー」として設計・開発に特化した技術者集団という点にある。おそらくいま、日本において設計・開発の専門技術者集団として事業展開するトップクラスだろう。社員の実に九三%が設計技術者という気鋭のプロフェッショナル集団である。なお、設計技術者の九一%が機械系であり、残りが情報系となる。

製造分野のアウトソーシングで、これだけの設計技術者を擁しているのは、類似業者のなかでも例をみないユニークな会社である。

自動車、電気機器、一般機械などのデザイン設計・製品開発に注力。その他、情報システムの設計・開発も手がけるが、自動車関連で七割近い売上構成比を示す。

得意分野はランプ、アウトボディ(外装)、内装など、自動車を特徴づけるデザイン部分の設計。三万部品からなるといわれる自動車製造において、アビストが得意とする3D‐CAD技術は不可欠であり、アビストならではの訴求力がこの企業のユニークさを浮き彫りにする。

平成二十五年十二月には、東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)に上場。さらに二十六年九月、東京証券取引所市場第二部へ市場変更している。そして二十七年三月にはいよいよ東証一部へと、一気に駆け上がった。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだ。

このところ自動車業界は、トヨタの水素自動車、米国ベンチャーの3Dプリントによる自動車製造など話題にこと欠かないが、アビストでは将来を見据え、すでに3D出力事業にも着手、3D‐CAD設計+3D造型の新しい地平を模索している。

ハイテク機器を駆使する設計プロ集団ながら、アビストは経営課題「信頼の和の六輪づくり」(詳細は本文参照)を標榜、アナログともいえる人材教育・育成に力を入れている。

この点について進氏は、次のように話している。

「機械設計は、誰がやっても同じ結果をはじき出します。大事なのはデザイン〝思想〟であり、開発〝思考〟という独創的な創造性にあるのです。また、クライアントとの信頼関係で仕事が成り立つわけですから、あくまで〝人〟が主体なのです」

アビストは平成二十五年三月、新しい分野への挑戦として水素水事業のメーカー「株式会社アビストH&F」(代表取締役社長・進顕氏)を設立し、未来志向の水素水で事業分野の拡張を図っている。この発想・展開のユニークさが、アビストという企業の特徴を現している。

本文の執筆にあたり、水素水研究の権威である日本医科大学教授の太田成男先生にご助言いただいたことを、この場を借りて御礼申し上げる。

なお、本文中は一部敬称を略させていただいたこと、あらかじめお断わりしておく。

  平成二十七年 三月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第一章 日本の製造業を支えるアウトソーシング ―日本の雇用・就業形態が変わった

不況とグローバル化で雇用は変化
労働市場の構造変化と需給の調整 
派遣雇用の現状と改正法案の行方 
必要なのは人手ではなく人材 
雇用の流動化は必要不可欠な要素 
製造業を支えるアウトソーシング 
引く手あまたの技術系派遣労働者 
プロフェッショナルに徹すべき 


第二章 モノづくりの設計技術者集団「アビスト」 ―3D‐CADを駆使するプロ集団の素顔

モノづくりの開発パートナー 
信頼関係を積み重ね信用を得る 
3D‐CADで自動車の設計に携わる 
自動車産業に向く最適なツール 
3Dプリンターで自動車を製造? 
3D技術で変貌した自動車の生産 


第三章 コア領域への特化と人材育成が強み ―プロフェッショナルな設計技術者集団の条件

パートナーとしての協働が重要 
信条と事業の目的を明文化する 
負荷を撥ね返す健康で元気な人 
人の言葉を聞く耳が素直・誠実 
仕事の苦労から学ぶ忍耐・辛抱 
信頼×信頼=信用で強靭な組織 
プラス思考タイプが長続きする 
三年間の忍耐・辛抱が示す意味 
自動車づくりのコア領域に特化 
人材強化が組織のキーポイント 
技術者の成長をバックアップ 


第四章 次の時代を開拓するアビストH&Fの「浸みわたる水素水」

なぜ、いま水素水なのか
おいしくて身体にいい水を求めて 
「浸みわたる水素水」誕生前夜 
水素水についての理解を深める 
正しい水素水を消費者に届ける 
「浸みわたる水素水」の訴求点 
水素水事業について思うところ 
オートメーション化で品質管理 
世界をターゲットにできる商材 


第五章 アビストの経営理念とビジネス哲学「信頼の和の六輪づくり」に迫る

基本となる「経営十ヶ条」精神 
常に「創業の精神」に立ち返る 
自修自得・自律自省の求道 
空手で鍛えた精神と肉体の賜物 
普通なら現役引退の年齢に 
常識にとらわれない柔軟な思考法 
全体適正のためのチームワーク 
時代は変わっても原資は〝人〟 


第六章 日本のモノづくりとアビストの未来

設計をアウトソースする近未来 
グローバルと国内回帰との関係 
常に試行錯誤するのが成長の糧 
責任感が組織の力を高める要素 
コラボレーション的な連携強化 
ますます信頼の和(輪)づくり 


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2017/06/21

『ハートフル エンジニアリング』 前書きと目次

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ハートフル エンジニアリング
 ~北海道から世界を見すえるアベールジャパンの挑戦~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-411-2
初版発行:2015年8月12日
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 はじめに

戦後の日本経済を支え、日本を世界でも有数の経済大国へと押し上げる原動力ともなった、いわゆる日本型経営の代名詞とも言える「終身雇用制」は、バブル経済崩壊後の「失われた20年」と経済のグローバル化の進展により、終わりを告げた。

それに伴い、急速に市場を拡大してきたのが、人材アウトソーシング・ビジネスだ。厚生労働省がまとめている「労働者派遣事業報告書の集計結果」によると、2013年度の人材派遣市場の規模は、約5兆1000億円にのぼる。

こうした時代背景のもと、技術者のアウトソーシング企業として着実に業績を伸ばしているのが、本書で紹介する株式会社アベールジャパン(本社:北海道札幌市、代表取締役:市原敏雄氏)である。

特定分野に専門特化している企業が多い技術者アウトソーシング業界にあって、同社の事業領域の広さは際立っている。同社社長・市原敏雄氏は、その狙いを、

「幅広い分野を総合的に手がけているため、仮にひとつの業界で受注が減っても、他の分野でカバーできることが強みになる」

と語る。

この狙いが正しかったことは、各種ソフトウェア/ハードウェアの設計・開発から、ネットワーク、通信、建築、土木、電気・電子関連の計測、制御、FA(ファクトリー・オートメーション)、メカトロニクス、プラント、宇宙開発と多岐にわたる分野で、同社の高い技術力を持った技術者が重用され、東証一部・二部上場の大手企業を中心に数多くのビッグプロジェクトに参加している、という実績に表れている。

この結果、同社は創業以来、年平均20%増のペースで売上高を伸ばし、2013年度の売上高は32億円にまで拡大。2015年現在では、全国12カ所に拠点を持ち、社員数約600名を数えるまでになっている。

その高い技術力を生み出す原動力となっているのが、待遇面をはじめとする、技術者が働きやすい環境をつくるための各種サポート体制だ。

アベールジャパンの派遣技術者は、すべて同社の社員である。社員という安定した立場のまま、派遣先で「やりたい仕事」ができるのだ。

さらには、各種手当、高い給与水準、全国各地の拠点に備えられた独身寮といった目に見える部分だけでなく、採用から派遣先の決定、アフターフォローまでを1人の営業担当者がきめ細かくサポートしてくれるので、安心して仕事に専念できるという、目に見えない部分の環境も整っている。

また、同社には定年もなく、未経験者やブランクのあった技術者も受け入れているため、20代~60代まで幅広い年代層の人材が活躍の場を得ているという。人材の育成にも力を入れ、採用後には、業務に必要な国家資格を取得するための勉強会や、ヒューマンスキル向上のための教育を徹底させている。こうした職場環境の良さから、社員の定着率も高い。

同社を率いる市原氏も、もともとは東京出身の技術者であった。父親が金属プレス加工の会社を経営していた影響で、少年時代から機械に関心を持ち、高校を卒業後は小型トランスメーカー、水処理プラント関連企業などで技術者としてのキャリアを積んだ。

しかし、その後に入社した総合エンジニアリング会社で「営業をやってほしい」との誘いを受けたことが大きな転機となった。

市原氏の、技術者の立場を理解したうえでの営業活動は着実に成果をあげ、やがて北海道での事業展開を任されるまでになった。

そして2003年、「もともと会社経営にロマンを感じていた」という市原氏は54歳で起業。景気が低迷するなかでの逆風吹き荒れる経営環境だったが、営業マン時代に培った人脈を活かし、事業は順調に発展していった。

創業以来、同社が掲げている経営理念は「誠実・貢献・創造・挑戦」である。社名の「AVAIL(役に立つ)」は、こうした経営理念に基づいて名付けられた。

また、市原氏の第一の経営哲学は「現場主義」ということにある。

「何かあったら、全国を飛びまわり、自分の目で見て確認する。現場を忘れた経営は崩壊する」

と、市原氏は断言する。

2013年に創業10周年を迎えた同社は、さらなる飛躍をめざし、開発センターを拡充。海外展開にも意欲を見せ、ベトナムやタイなどの東南アジアを中心に拠点を設ける計画もある。

市原氏は、

「培った技術を途上国のインフラ整備に活かしたい。今後は、農・医薬バイオ分野にも進出し、裾野を広げたい」

と、抱負を語る。

その一方で、技術者出身の市原氏の夢でもある、自社でのモノづくりにも今後、力を入れていきたいという。

本書は、技術者のアウトソーシング事業で成長を遂げたアベールジャパンの事業活動を紹介するとともに、同社社長・市原敏雄氏の経営理念、ビジネス哲学に迫るものである。

戦後の日本が飛躍的な経済成長を遂げるその裏で、多くの名もなき技術者たちの活躍があったことは間違いないだろう。

いま、日本は、長く続いた景気低迷から、ようやく抜け出しつつある。そして、日本経済が真に復活をするためには、技術者の力が不可欠と言える。

それだけに、本書は、技術職にかかわる人のみならず、日本の産業の将来に思いを巡らせる多くの一般読者にとっても、貴重な指針の書となるだろう。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

  2015年7月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第1章 日本の産業を支える技術者アウトソーシング

アベノミクスで雇用は改善されたのか
グローバル化と不況で変化した雇用事情
雇用の流動化は必要不可欠
5兆円を超える規模となった人材派遣市場
引く手あまたの技術系派遣労働者
懸念される労働者派遣法改正案の影響


第2章 総合エンジニアリング企業・アベールジャパン

技術者による技術者のための会社
多岐にわたる産業に技術者をアウトソーシング
右肩上がりで前年比売上高平均120%成長を達成
創業わずか11年で全国展開を達成
大手ビッグプロジェクトに技術者を派遣
オリジナルのモノづくりへのこだわり


第3章 幅広い技術と知識を融合し社会に貢献 ― アベールジャパンの事業内容

経営理念は「誠実、貢献、創造、挑戦」
派遣先で重責を担う技術者の存在
派遣先と技術者をつなぐ営業の役割
「採用は購買」― トップクラスの技術者確保に力を注ぐ
RFID入退室管理システムに代表される自社開発
異業種の技術融合で創造力を生む


第4章 人が財産―技術者が本領を発揮できる企業

めざすはハートフルな総合エンジニアリング企業
技術者が働きやすい環境をつくる各種サポート体制
ブランク不問、生涯現役も可能
国家資格取得のための勉強会を実施
ヒューマンスキル向上のための教育にも注力
技術者のあるべき姿・ありたい姿を追い求めて
高い社員定着率が物語る信頼


第5章 創業社長・市原敏雄の経営の原点

父の仕事を通して培った技術への関心
技術者としての経験を積んだサラリーマン時代
転機となった営業職への抜擢
54歳、不況のなかでの「遅咲き」起業
第一の経営哲学は「現場主義」
儲かるしくみをつくるのが経営者の仕事


第6章 アベールジャパンが描く未来展望

ますます存在価値を高める技術者のアウトソーシング
常に危機感を持ち、変化の予兆を察知する
海外での事業展開や農業・医薬バイオ分野への進出も視野に
新しい環境で新しい挑戦を続けることが経営の本質
人材力と技術力で社会貢献を果たす
新たな10年に向けて挑み続ける日々


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『“匠”のアウトソーシング』 前書きと目次

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“匠”のアウトソーシング
 ~モノづくりの技術者集団・オーエスピーの挑戦~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-418-1
初版発行:2016年1月15日
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 はじめに

戦後最長となる95日間の会期延長のすえ、集団的自衛権の行使容認などを柱とした安全保障関連法が2015年9月19日に成立した。憲法違反や説明不足を指摘する声があるなかでの採決だったこともあり、普段なら国会中継に見向きもしない人までもが、今回の超ロングラン国会に注目していた。

おおかたの予想どおり、最終盤の攻防は大荒れとなった。怒号が飛び交い、与野党の議員が激しく揉め、つかみあいの乱闘をする様子が、ニュース番組などで繰り返し流された。言論の府とは名ばかりの国会の惨状に、法案の賛成、反対にかかわらず、多くの国民があきれ果てたのも無理からぬことだろう。

しかし、その3カ月前にも、とある法案の改正をめぐって国会が大荒れになったことを覚えているだろうか。その法案というのが、企業が派遣労働者を受け入れる期間の制限を事実上撤廃するなどの改正案を盛り込んだ「労働者派遣法改正案」である。

安保法案の場合なら、すべての国民の将来に大きく影響する事案だけに、採決をめぐって国会が大荒れになるのは理解しやすいかもしれない。だが、派遣労働者という一部の労働者の待遇に関する法案の改正で、なぜここまで国会で揉めるのか、ピンとこないという方もいるかもしれない。

実は、派遣労働者という存在は、日本の産業界の行くすえを大きく左右するほど重要なものなのだ。いまや、日本におけるすべてのビジネスにおいて、人材確保の手段としてアウトソーシングの活用は、必要不可欠なものとなっている。特に、これまで世界に誇ってきた「日本のモノづくり」という分野においては、派遣労働者という存在なくしては成り立たないところまできている。

つまり、労働者派遣法改正案を「派遣として働いている人以外には関係ない法案」だと思っている人がいるとすれば、それは大きな間違いだということだ。この法案が産業界に与える多大な影響は、日本のすべての国民の生活を左右するかもしれないのだ。国会で激しい意見交換が行われたのも、無理からぬことである。

矢野経済研究所の「人材ビジネス市場に関する調査結果 2015」によると、2014年度の人材派遣業の市場規模は、前年度比105・0%の3兆7701億円にのぼるという。この成長の原因は、派遣に関する規制緩和がたびたび実施されたことによるところが大きい。とりわけ、2003年に製造業の派遣が解禁されたことが強く作用している。

ゼネコンや大手メーカーが、いちから技術者を育成するのは容易なことではない。気が遠くなるような時間とコストがかかるものだ。そのため、日本の製造業の人材育成を支える大きな力として、アウトソーシング産業は著しい成長を遂げてきた。

リーマンショックに端を発した不況のあおりを受け、2009年以降は人材派遣業も市場縮小傾向にあった。しかし、その後の景気回復とともに、人材ビジネス市場はふたたび活気を取り戻した。現在では、通信インフラの整備や医療革新などをはじめとするさまざまな分野で、専門技術者のアウトソーシングが活用されている。今後、さらなる需要増加が見込まれるのは間違いないだろう。

こうしたなか、特色ある人材派遣業として注目を集めているのが、本書で紹介する株式会社オーエスピー(本社:神奈川県横浜市、代表取締役:石垣健一氏)である。

同社の大きな特徴は、設計・開発から製造・生産にいたるまで、製造業メーカーの仕事に特化している点である。主な取引先も、世界に名だたる大手自動車メーカーやデジタル家電メーカーなどが数多く名を連ね、その顧客からの信頼も非常に厚い。それは、同社がアウトソーシング事業、人材紹介業、派遣事業、コンサルティング事業において、あらゆる業務の効率化を推進するスペシャリスト集団であるからだ。

同社の社長・石垣健一氏は、こう語る。

「人材アウトソーシングビジネスは、新たな時代に入りました。いまや、事業の継続や発展には、変化への対応力が必要な時代なのです」

同社は、顧客のあらゆるニーズに応えるべく、その時々の需要に合わせた事業形態を提案し、顧客の業務の効率化を推進するとともに、人事的な不安要素の軽減に役立つ、事業内容や規模に応じた人員の供給を行っている。

そんな同社では、技術職スタッフを全員、正社員として直接雇用し、安心して長く働くことができる環境を整備している。そればかりか、技術だけではなく、人間力、コミュニケーション能力にも磨きをかけられるよう、人材育成に注力し、働く人間たちのスキルアップを図っているのだ。

「将来的には、人材を派遣している企業の仕事を当社で受託・請負することも、視野に入れています」

そう石垣氏が語るように、現在、同社では、社内で請負仕事ができる組織を構築している最中だという。

また、人材サービスだけではなく、顧客が抱えている「コスト削減」や「CSR(企業の社会的責任)」「環境対策」といった幅広い分野における難しい課題においても、それを解決に導く総合的なソリューションを提案するほか、従来のノウハウを生かした要素技術を組み合わせた最適化設計による受託開発も行っている。

一方で「環境経営」を実践している同社では、2008年から従業員参加型の社会貢献活動の一環として、プルタブ・アルミ缶回収による車椅子寄贈活動や、産業用バッテリーの再生事業にも取り組んでいる。さらには「会社で取り組むエコな未来」をテーマに、合成界面活性剤をいっさい使用していない多機能洗浄・美容顔料「ナノソイ・コロイド」や「ナノ・イオミス」を原料とした、エコな商品・サービスも提供している。

石垣健一氏が人材派遣業界に入ったのは約30年前のこと。当時、まだあまりスポットを浴びていなかった人材業界に可能性とおもしろさを感じ、人材派遣会社に就職した。その読みは的中し、入社した会社は大きく成長を遂げたが、規模の拡大に伴い、石垣氏は別事業の経営を任命されてしまう。しかし、あくまでも人材ビジネスにこだわりたい石垣氏は、その話を断り、起業することを決意し、2003年にオーエスピーを設立した。

それから12年を経て、いまや同社は、社員数1100名、売上高は60億円規模にまで成長した。だが、石垣氏は、さらなる高みをめざしている。

「この会社を、スタッフ数や売り上げの規模だけを誇る会社にするつもりはありません。きめ細かなサービスと人材の質の高さこそが当社の特色だと、胸を張って言えるような会社にしたいと考えています」

今後は同社の得意分野に関連した新たな事業への進出も計画中で、そのためのM&Aにも注力している。また、アジアでの新しい領域の事業も準備中だという。同社がさらなる飛躍を見せてくれるのは間違いなさそうだ。

本書は、技術者アウトソーシングで着実な成長を遂げているオーエスピーの事業活動を紹介するとともに、同社社長・石垣健一氏の経営理念、ビジネス哲学に迫るものである。アウトソーシングビジネスに関わる人のみならず、日本のモノづくりの将来を思う多くの読者にとっても、貴重な指針の書となれば幸いである。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

 2015年12月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第1章 日本のモノづくりを支えるアウトソーシング

日本における人材サービス業界の歩み
いまや雇用の流動化は必要不可欠
一大市場となった人材サービス産業
引く手あまたの技術系派遣労働者
製造ラインから技術開発まで外部委託
2015年労働者派遣法改正で変わる派遣の現場
改正法案の施行が急がれた理由
労働者派遣法改正で雇用は守られるのか
人材サービス業界の現状と今後の方向性


第2章 技術者アウトソーシングで躍進

製造業・技術職に特化した人材派遣ビジネスを展開
取引先は大手自動車・家電メーカー
量より質を重視した企業方針を徹底
プロエンジニアチーム「匠」の実力
「質のオーエスピー」を支える顧客目線の開発力
設計・開発から製造・生産工程までアウトソーシング
顧客企業から信頼されるパートナーとして


第3章 頼れるビジネスパートナー

顧客企業との揺るぎないパートナーシップを構築
難易度が高い派遣から請負への移行を実現
オーエスピースタッフが活躍する請負現場を訪問
設計・開発などのコアな部分にも関与
  現場で働くスタッフの声① 小笠原 敬(製造スタッフ 33歳 男性 入社10年)
  現場で働くスタッフの声② 相馬 和貴(製造スタッフ 28歳 男性 入社4カ月)
スタッフを守る姿勢が「質の向上」につながっていく


第4章 国際ビジネスや環境経営にも貢献

複合企業をめざし、新規事業にも挑戦
国際ビジネスのための外国語サービス
産業用バッテリーもリサイクルの時代に突入
AEDの普及を図り、救える命を救えるように
健康や自然に配慮した製品の企画・販売事業にも挑戦
プルタブ・アルミ缶回収による車椅子寄贈活動
スポーツ交流を通じて地域活動にも積極的に参加
野球チーム「OSP ALWAYS」を結成
世界を相手に勝負するOSPレーシングチーム


第5章 創業社長・石垣健一の経営理念とビジネス哲学

人材ビジネスに可能性を見いだし、人材派遣の世界へ
仲間や支援者に支えられて独立
「質のオーエスピー」を実現するために人材教育に注力
「技術力と人間力」の両面で人を育てる
正社員だからこそ、長期的視野に立った教育も可能に
誠実さを何よりも大切にする石垣の経営哲学
未曾有の大災害を乗り越えて成長したオーエスピー
短所を責めずに長所を伸ばす石垣のマネジメント手腕


第6章 オーエスピーが描く未来図

事業部制を廃止し、新たなステージへ
建設系分野は子会社化して事業を伸ばす
効果をあげるM&Aへの取り組み
高い専門性を持つ会社のM&Aがもたらしたもの
アジアでの新たな事業展開を見すえて
女性社員の比率増で企業力アップを図る
夢と志を持って働ける企業であり続けるために


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2017/06/20

『建設業の未来を支える人づくり』 前書きと目次

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建設業の未来を支える人づくり
 ~ワールドコーポレーションの建設業派遣No.1戦略~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-426-6
初版発行:2016年11月19日
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 はじめに

国内の建設投資は、バブル経済の崩壊以降20年にわたり、減少傾向が続いていた。しかし、東日本大震災の復興需要に加え、2020年の東京オリンピック開催に向けてのインフラおよび施設の整備、さらには安倍政権の国土強靱化計画による公共事業投資拡大を背景に、建設市場の需要は次第に回復しつつある。

だが、その一方で深刻化しているのが、建設業界における人材不足だ。長らく続いた建設不況のなかで、建設業各社は雇用を抑制せざるをえなかったため、建設業界における就労者の高齢化が進み、若手技術者が圧倒的に不足するという事態に陥ってしまったのである。

そこに追い打ちをかけるかのように、日本列島は、またもや熊本地震という激甚災害に見舞われた。しかし、瓦礫の撤去や、被災した道路や橋梁の復旧、住宅や各種施設の再建など、九州における復興需要はあるものの、被災したエリアが東日本大震災に比べると狭いことや、技術者の人手不足などの影響もあり、建設業界の動きは鈍い。ましてや個人の住宅ともなると、本震から半年以上が経過した現在も、修繕を含めた自宅再建のめどが立たないばかりか、解体すらいつになるかわからないという被災者も多くいるのが実情だ。

いまや、建設業界における人手不足は、自然災害によって被害を受けた被災者たちを救うことさえままならないほど、深刻なところにまできているのだ。

そんななかで、建設工事の現場を監理・監督する施工管理者を中心に、設計者、CADオペレーターなど、建設業に特化した技術者の派遣サービスを展開し、日本のモノづくりを代表する建設業を人の面から支えていこうというのが、本書でとりあげる株式会社ワールドコーポレーション(本社:東京都千代田区、代表取締役:小林良氏)である。

もともと独立志向が強く、異業種のトップセールスマンから転身を図り、2008年に36歳の若さで同社を設立した代表取締役の小林良氏は、次のように語る。

「起業するからには、人を成長させられるような会社をつくりたいと思っていました。父の助言もあって、施工管理の人材派遣について調べていくうちに、建設業界では若手の優秀な技術者が少ないということを知り、人がいないのなら、いっそ自社で有能な人材をゼロから育てあげればいいと考えるようになったのです」

人材派遣業といえば、さまざまなスキルを持った人材を契約社員として登録し、そのなかから顧客からの要請に応じて適任者を派遣するというのが一般的だが、小林氏は、若い人材を自社の正社員として採用し、自社で教育しようと考えた。そして、理系出身者や経験者中心の採用活動を見直し、より間口を広げて、文系出身者や未経験者の採用にも注力。そうした人材を、どこの建設会社でも即戦力として通用するプロの技術者に育てあげ、派遣するという方法を、とることにしたのである。

そこで同社では、正社員として雇用することで会社への帰属意識を持たせるとともに、大手ゼネコン出身者による研修などの教育を徹底することで、全体的なスキルの底上げを図った。だが、技術の習得以前に大事なのは、「仕事を好きになる努力をすること」だと小林氏は言う。

「人生のなかで仕事は、かなり大きなウェイトを占めます。仕事を好きになれば、持てる能力を存分に発揮でき、まわりからも信頼され、人生が豊かで充実したものになるのではないでしょうか」

会社設立から8年。社員数はすでに800名を数えるが、「心」の部分を含むこうした教育が功を奏し、社員の定着率は90%を超えるという。

ワールドコーポレーションの最大の強みは、なんといっても「若手の技術者を数多く抱えている」ということである。取引先には、大手ゼネコンをはじめ、そうそうたる一流企業が名を連ねる。

人口減少時代を迎え、さまざまな業種で労働力不足が懸念されているが、特に建設業は深刻だ。もともと「3K」などと評され、若者に敬遠されがちな職種であるうえに、長年にわたって雇用を抑制してきたのだから、当然といえば当然だろう。そんななかで建設業におけるアウトソーシングは、今後もますますニーズが高まることは間違いない。

4年後に迫った東京オリンピックのほか、高度経済成長期につくられた建物やインフラの補修、そして災害復興といった要因も重なり、日本列島は建設ラッシュに沸いている。建設業各社にしてみれば、即戦力となる優秀な技術者は、喉から手が出るほど欲しい存在だ。

こうした状況下でワールドコーポレーションがめざすのは、「建設業の未来に欠かすことのできない会社」と位置づけられるような存在になることだという。そのためにも採用と教育にいっそう力を注ぎ、まずは社員1000名体制をめざす。

さらに、現在は東京本社のほか、東北と関西に支店を設けているが、今後は名古屋、広島、札幌、福岡へと、全国に拠点を展開していく計画だという。

また、近い将来には株式上場も視野に入れており、10年後をめどに業界ナンバーワンになることを目標に掲げている。

小林氏は、「ワールドコーポレーションに関わるすべての人々の幸せに貢献したい」と抱負を語る。

本書では、建設業に特化した技術者派遣サービスで急成長を遂げているワールドコーポレーションの事業活動を紹介するとともに、同社代表取締役・小林良氏の経営理念およびビジネス哲学に迫るものである。これは、優秀な技術者を求める建設業界関係者のみならず、技術者として建設業界に自らの将来の夢を託そうとする多くの若者にとっても、貴重な指針の書となるであろう。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

 2016年10月  鶴蒔靖夫


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はじめに

第1章 低迷期を脱し、活況を呈する建設業界

バブル崩壊以降、低迷を続けた、かつての花形産業
強力な追い風となった東京オリンピックの開催
老朽化するインフラの更新・補修が急務に
日本列島で相次ぐ自然災害の甚大な被害
災害からの復興・復旧を担う建設業
安倍政権が進める国土強靱化基本計画


第2章 深刻化する技術者不足

需要があるのに倒産企業が続出する建設業界
雇用抑制が生んだ技術者の高齢化
若者に「3K」と嫌われる建設業界
いま脚光を浴びる「ドボジョ」とは
外国人労働者は人手不足解消の鍵となるか
国も本腰を入れ始めた建設業の人手不足対策
建設業界の要望が生んだ技術者派遣業


第3章 建設業に特化した技術者派遣で急成長 ―ワールドコーポレーションの事業概要―

施工管理者など建設現場での技術者不足に対応
設立以来、増収増益で成長し続ける理由
成長の原動力は、いきいきと働く社員たち
めざすは「建設業界の人事部」
目覚ましい業績を支える受注力
建設業界の多種多様なプロジェクトをサポート


第4章 未経験から本物のプロ技術者を育成

若い人材をゼロから育てあげる
文系出身者&未経験者を歓迎
未経験者をプロに育てる研修プログラム
未経験者採用を可能にしたベテラン勢の存在
次世代の幹部を育てるリーダー研修
社員定着率9割以上を実現したきめ細かなフォロー
大切なのは「仕事を好きになる努力をすること」


第5章 創業社長・小林良の経営理念と人生哲学

エネルギーを持て余していた青春時代
やがて知る、働くことのおもしろさ
36歳の若さで起業
アクセル役とブレーキ役を演じる重鎮2人
心のバランスを支える人生の先達
人との出会いを大切に、本音でつきあえる関係を築く


第6章 ワールドコーポレーションが描く未来

社をあげて建設業界のイメージアップに貢献
若手社員の成長が、成功を呼びこむ
全国展開に向けて進む支店開設計画
いよいよ視野に入ってきた株式上場
ワールドコーポレーションの経営戦略と未来像
業界の圧倒的ナンバーワンをめざして


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