*製造・メーカー

2018/07/10

『LED革命』前書きと目次

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LED革命
~LEDのリーディングカンパニー「遠藤照明」の挑戦~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-374-0
初版発行:2012年8月17日




 はじめに


文明は明かりとともに歩んできた。

はじめに人は火という道具を手に入れた。火は、人に暖を取らせ、獣から身を守り、食べものに火を通し、そして照明となった。火の使用により、人類は初めて文明を持つ余裕を持てたといえよう。暗闇でただ眠るしかなかった人に、火の明かりは光源として文明を育はぐくむチャンスを与えたのだ。

火の揺らめきはやがて松たい明まつからロウソクへと代わり、ガス灯、白熱電球、蛍光灯、ハロゲン灯など、新たな光源へと進化の幅を広げていった。そしてここにきて、これまでの照明の歴史とはまったく次元を異にする新たな光源を人類は手に入れることになった。それがLEDである。

LEDのメリットは何よりも消費電力が圧倒的に少ないことがあげられる。ざっくりいって、白熱電球照明の八〇%以上の消費電力を節減できる。環境や資源問題が喫緊の課題とされている現在、救世主ともいえる光源だ。

LEDの真価はほかにもある。輝度・演色性など、光のクオリティがこれまでのどの光源よりも高いのだ。さらにはデジタル環境に対応しやすく、自由自在に光をアレンジできることも照明デザインをするうえでははかりしれないメリットである。

LEDの登場により、照明の世界はドラマチックに変容した。いままさしく、照明の革命といえるような大イノベーションが進行しているのである。

そのLEDへのイノベーションの火付け役となり、日本の業務用LED照明市場でトップクラスのシェアを有するのが、本書で取り上げる株式会社遠藤照明(本社:大阪府大阪市、代表取締役:遠藤良三氏)である。

遠藤照明が専業照明メーカーとして、これまで手がけた商業施設の名をあげると、誰もが知っている大手百貨店から大型商業施設、スーパー、飲食店など、枚挙にいとまがない。おそらくほとんどの人がすでに、遠藤照明のLEDがつくり出す光の空間でショッピングやグルメを楽しんだ経験があるのではないだろうか。

「高付加価値空間」をつくり出すプロ集団という事業テーマを掲げる遠藤照明が手がけた空間は、これまでにない高い付加価値が生まれ、空間全体を彩ることは当然ながら、環境負荷が少なく、さらに電力料金が大きく下がるというのだ。いまや環境を意識する企業活動は、地球市民として当然の責務の一つといえる。さらに景気低迷・消費不況により収益率が低下している商業施設にとって、電力料金の削減は実質的に利益率の向上と同じ意味を持つ。次々と新たに生まれる空間の多くで、遠藤照明のLED照明が採用されるのも当然である。

遠藤照明の創設は昭和四十二(一九六七)年。遠藤良三氏が個人で立ち上げた、会社というより個人の製作所からのスタートで、それがすべての出発点だった。遠藤氏は、安定した大手銀行の正社員という恵まれた場を惜しげもなくかなぐり捨てると、「金がない」「人がない」「ルートがない」のないないづくしをものともせず、たった一人で会社を立ち上げたのだ。

そこから、非住居空間照明におけるトップシェアを占める企業にまで遠藤照明を育て上げてきた遠藤氏の歩みは、まるで小説のように起伏に富んでいる。私が遠藤照明をテーマに筆を起こしたのは、いまドラスティックに進行しているLED照明へのイノベーションを紹介したかったと同時に、遠藤氏の強い独立精神と、信じた道を強きょう靭じんな意志力で突き進んでいく生き方を、ともすれば、軟弱な生き方に傾きがちな最近の多くの人に知ってもらいたいという思いが大きかったからだ。

遠藤氏の豪胆かつ先見性豊かな経営力は、この三年ほどの動きに特に顕著だ。

たった一人で起業し、非住居空間照明に集中するという戦略でしだいに頭角を現すようになった遠藤照明は、平成二年には大阪証券取引所(新二部)に上場を果たす。照明専業メーカーとしては初の株式上場である。その後も順調に発展を遂げ、ピーク時には総売上高一八七億円にまで達していた。

だが、その歩みは決して順風満帆ではない。平成二十年にはリーマンショックが襲いかかり、遠藤照明の業績は一気に二十年前の水準まで落ち込んでしまう。その後、日本経済は円高、少子高齢化の進行などにより、いまだに低調から抜け出せてはいない。

このとき、遠藤氏はすぐさま「今後、経営資源の投下はLED分野に集中する」と大胆な決断を下した。いずれはLEDが照明の主流になると予感されたものの、当時、LEDが国内照明市場に占める割合はわずか三・四%にすぎなかったのだ。

この決断は見事な結果を導いた。平成二十二年三月期は一三一億円だった遠藤照明の売り上げは、翌平成二十三年三月期には一八九億円と急伸。平成二十四年三月期では二六八億円(実績)、平成二十五年三月期では三五三億円(予測)とさらに勢いよく伸びつづけているというから、痛快極まりない。すでにその売り上げの八〇%はLEDによるものだという。

いうまでもなく、LEDについても世界的な厳しい競争が繰り広げられている。もし、遠藤照明の決断がなければ、日本のLED事業は世界のLED化への潮流にも後おくれをとっただろうといわれている。遠藤氏は社団法人日本照明器具工業会の常任理事の要職にもあるが、率先してLED化を促進したことにより、日本の照明器具産業を大きく牽引する功績も果たしたことになろう。

現在、世界の照明市場は一〇兆円規模と巨大なものになろうとしている。しかも、加速度的に急成長も続けている。その主流は間違いなくLEDが占めるはずだ。

「そうした経済環境に的確に対応するために、アジア諸国はもちろん、欧米にもショールームを開設して海外事業を本格化させ、世界のリーディングカンパニーになることをめざしています」

遠藤氏はこう語る。

事実、これまで遠藤照明では、照明市場の世界的拡大を先取りし、二十三年前にタイに工場を設立。その後、中国にも生産拠点を設けている。その結果、圧倒的な価格競争力を持つなど、世界戦略への布陣固めにも抜かりはない。

本書では、LEDによる非住居空間照明を経営の主軸に据えて、照明新時代を牽引していく遠藤照明の活動を紹介するとともに、創業社長・遠藤良三氏の経営理念、行動哲学にも迫りたいと思っている。

このところ、ポテンシャル低下が懸念される日本経済だが、日本にはこんな元気な企業があることをぜひ、知っていただきたい。こうした企業ががんばっている、それが日本の底力だといえないだろうか。

遠藤照明のパワフルな活動を知れば、日本の未来に新たな活路は開けるという確信が湧いてくるはずだ。また、遠藤氏の生き方は、勇気ある決断、迷うことない行動力こそが難局を切り開いていくのだというメッセージを放ち、多くの人に貴重な示唆を与えるものだと信じている。

なお、本文内の敬称を略させていただくことを、あらかじめお断りしておく。


平成二十四年六月   鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 LEDが開く新しい光の時代

照明革命の幕が切って落とされた!
非住居空間照明はLEDがあたり前という時代がはじまった
次世代の照明・LED
誰もが驚いたオールLED照明の提案
売り場を二分しての大実験
売り上げを押し上げるLED照明効果
オフィス空間照明にも理想の光
伝統と先進イメージを融合させる
高付加価値空間創造企業としての遠藤照明
非住居空間×LEDに特化し、オンリーワン企業に
LEDなら大手に勝てる!
照明を知り尽くしている照明のプロ集団


第2章 文明から文化へ――照明の歴史

光が人をつくった
光の正体は電磁波
火からロウソクへ――明かりが果たした役割
歴史を変えた白熱電球
青白く光り、消費電力が少なく、電球の寿命が長い蛍光灯
非住居空間を彩る照明・ハロゲン灯:HIDランプ
本格的なLED時代の幕開け
LED研究の夜明け
光の三原色と青色発光ダイオード
白色発光ダイオードの開発
照明意識の変化とLED使用の急増
東日本大震災でLED普及はさらに加速
環境負荷の圧縮、省エネ照明とLED
非住居空間照明におけるLED化を牽引
クライアントは育ての親
エネルギー消費とデザイン性の高さを併せ持つLED照明


第3章 照明環境創造のプロ集団・遠藤照明

Ⅰ.照明事業
 照明テクノロジーの原点――照明技術研究所
 ビジネスを実際に成立させていく――営業本部
 高付加価値空間を提案する――照明計画研究所
 供給体制を万全に――生産本部
 遠藤照明の品質力の要――品質保証部
Ⅱ.海外事業
 グローバル市場で勝ち抜いていく
 すでに世界攻略の拠点を完成
Ⅲ.環境ソリューション事業
 環境が世界の課題になることを視野にイーシームズを創設
 レンタル事業と省エネ
 省エネ照明の普及浸透に大きく貢献
 イーシームズの環境提案・自動監視制御システムECOライナー
 多彩なサービスメニュー
Ⅳ.インテリア家具事業
 照明とコラボするインテリア製品を開発
 付加価値の高い家具に特化
Ⅴ.人材育成
 高付加価値空間をつくり出すプロフェッショナルたち
 「社員憲章」と「エンドーバリュー」
 信賞必罰制で人材を鍛え直す
 打たれてもいいから出る杭になる、そんな人材を育てていく
 戦略的人事配置で一〇〇〇億円企業の人材育成を


第4章 光とともに歩んできた半世紀

ビジネスとは無縁の家に生まれ育つ
安定よりも自分で勝負! の道がいい
五年で捨てた恵まれた銀行員の座
照明との出合いは“甘いささやき”?
たった一人の独立
護衛艦用照明で鍛えられた技術力
ニクソンショックで、新規領域を探す
店舗照明へと照準を決め、遠藤照明を設立
活路はカタログ制作から
カタログがバインダー形式だったわけ
「一度、使ってもらえれば」という自信
「遠藤ならば」の信頼性
「オリジナルに徹する」を貫く
独自の存在感で価格決定権を手にする
明るさから光の演出の時代へ
一〇〇億円企業に成長
タイに本格的な生産拠点を完成
照明専業メーカーとして初の上場
新技術への積極的な挑戦
バブル経済の崩壊の洗礼を受けて
パチンコ店ブームの火付け役
アパレル、百貨店などの空間照明を牽引
失われた二十年
一〇〇%LEDへの転身
電光石火の攻めを展開


第5章 世界のトップランナーに

進化しつづける「LEDZ」
商業施設から新たなる分野へ
世界がLEDに向けて走り出す
世界規模の倍々ゲームがはじまった
世界のトップランナーへ躍進
競合を恐れとしない、これだけの理由
世界市場で「ENDO」ブランドを確立する
光の未来へ・三年後、一〇〇〇億円企業をめざす


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2018/02/28

『オフィス環境革命』 前書きと目次

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オフィス環境革命
~パーティションでビジネスに進化を~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-376-4
初版発行:2012年9月15日




 はじめに

人は働く環境の善し悪しによって、仕事の能率が大きく左右されてしまうものである。

考えてもみてほしい。資料を置く場所にも困るほど狭いデスクがずらりと並び、間仕切りもない――そんな隣の人と肘がふれ合わんばかりの状況で、細かい数字を扱う経理のような仕事に集中できるだろうか。

あるいは、いやがおうでも同僚たちの雑談や騒音が常に耳に飛び込んでくるような環境で、クリエイティブな発想を生み出すことは果たして可能だろうか。

自分の実力を発揮することもかなわず、さまざまな不満や苦痛に耐えなければならない――そんな劣悪な環境で働くオフィスワーカーは、不幸以外の何者でもない。生産性や労働意欲は著しく低下し、いいアイデアも湧いてはこないどころか、そこで働く人たちは、常に大きなストレスにさらされ、心身ともに摩耗してしまう危険すらあるのだ。

いまやオフィス環境がそこで働く人に大きな影響力をおよぼすことは、周知の事実である。しかし、だからといって、すべての企業が実際にオフィス環境の改善措置を講じ、従業員の働く空間の快適さを追求しているかといえば、決してそうではないのが現実だ。

一〇〇の会社があれば、一〇〇通りのワークスタイルがある。当然、それを支えるオフィスにも、一〇〇通りの顔があってしかるべきである。にもかかわらず、かつての日本企業ではどんな職種であろうとも、そのオフィスの姿に大きな違いは見られなかった。

いわゆる「オープンオフィス」といわれる大部屋スタイルが圧倒的に多く、オフィスレイアウトも向かい合わせに机を並べて、部署ごとに「島」をつくった「対向島型形態」と呼ばれるものがほとんどであった。それぞれの職場に適した空間の快適さや利便性を追求してきた欧米の企業に比べると、日本企業は「オフィスの質」という面で大きく後れを取っていたことは間違いない。

しかし、そんな紋切り型の日本のオフィスのあり方が、近年になって大きく変わってきた。

そのきっかけとなったのは、昭和五十一年以降、通商産業省(当時)主導の下に進められてきた「ニューオフィス化運動」であろう。オフィス環境を整えることによる生産性の改善や従業員モラル(士気)の向上を目標に掲げたこのムーブメントは、次第に日本の企業に浸透していき、オフィス環境における経営者の問題意識をも変えていった。

オフィスは「物を生まない場所」から「生産する場所」へと認識が大きく変わったのだ。

そればかりではない。

いまやオフィスは単なる「労働する場所」ではなく、「企業の顔」「広告塔」としての役割をも担うようになったのである。

たとえば、平成二十二年にソフトバンクは創業三十周年記念イベント「ソフトバンクオープンDAY」というイベントを開催した。本社オフィスにツイッターの一般ユーザー一〇〇〇組二〇〇〇名が招待され、さまざまな催しが盛大に行われた。特に招待客に社員食堂を開放したことが話題を呼び、マスコミにも大きく取り上げられたので、ご記憶の方も多いと思う。

このイベントなどは、まさしく自社のオフィスを広報の一環として有効に活用した一例といえるだろう。

本書で紹介するコマニー株式会社(本社:石川県小松市、代表取締役社長:塚本幹雄氏)は、もともとは事務用キャビネットの会社として昭和三十六年に設立された会社である。

しかし、同社は将来的に求められるであろう新たなオフィスのあり方を見据え、昭和四十五年以降、パーティション事業にシフトしていき、一九八〇年代には業界のトップメーカーへと成長し、さらに昭和六十年には品質管理のノーベル賞ともいわれるデミング賞実施賞中小企業賞を受賞。一九九〇年代には中国進出も果たすなど、日本のパーティション業界を牽引しながら、いまも躍進しつづけている。

「いい空間には、いいパーティションがある」というブランドポリシーを根幹に、これまでさまざまなパーティションで、日本のオフィス環境を理想的なものに変えてきた。「コマニー」という企業名を知らなくとも、多くの人が気がつかないうちに、同社のパーティションに囲まれて働いているのではないだろうか。

世界と対等に勝負することが求められる現代の日本では、高度な専門知識を持った人々が最大限に力を発揮し、仕事の能率を向上させられるオフィスが必要となる。そのためには、周囲からの過度な干渉を避け、業務に集中できるオフィス形態が望ましい。

その一方で「オフィスでのコミュニケーションが活発な企業では従業員のモラルが高い」といわれていることから、従業員間のコミュニケーションを活性化するための環境づくりも重要だ。

しかし、多くの企業が必要性を認識しながらも、長引く不況や業績の悪化などからオフィス環境の改善に多額の予算を割くことがむずかしいという厳しい現実もある。

そこで注目されるのがパーティションによるオフィス空間のリニューアルである。パーティションを利用したリフォームならば大がかりな工事が無用なため、予算も工期も大幅に短縮でき、なおかつオフィス環境の快適性を大幅に向上させることも可能だからである。

オフィスばかりではない。こうした環境づくりは、あらゆる空間づくりの場面で注目され、工場、病院、介護施設、学校と多岐にわたり、パーティションの活躍の場が広がっている。

コマニーはオフィス空間の快適性を追求するとともに、ユニバーサルデザインや地震対策にも積極的に取り組み、さらには工事の騒音が顧客企業の業務の邪魔にならないよう独自の小音工事を開発するなど、さまざまな側面から商品開発に取り組んできた。また、パーティションを機軸にさまざまな可能性を探り、新たに電子錠の販売に取り組むなど、業務の拡大にも力を入れてきた。

このように、パーティション業界のトップメーカーでありつづけることは、たしかな品質とすぐれた開発力、そして、それを生み出す柔軟な思考を持つ優秀な人材があるからにほかならない。

代表取締役社長・塚本幹雄氏は「企業というものは、従業員あってのもの。社会に貢献できる企業であることはもちろんですが、従業員やその家族にとっても魅力的な会社でありたいと考えています。そのうえでパーティションを極め、将来的に売上高五〇〇億円をめざす。そのためにも、日本国内だけではなく、中国や東南アジアにも力を入れていきたいですね」と語る。

本書はパーティションが持つ空間づくりへの可能性と、業界の展望を検証するとともに、業界のトップメーカーとして、他の追随を許さないコマニーと、創業者・塚本信吉氏から現社長・塚本幹雄氏へと受け継がれてきた人生哲学、時代に合わせて研磨されてきた経営理念の真髄に迫るものである。

モノづくりのみならず、人づくりにも心血を注ぐ同社の姿勢は、企業経営者のみならず、現代に生きるすべてのビジネスマンにとって貴重な指針となるであろう。

また、本書をご一読いただくことで一人でも多くの方にオフィス環境の重要性をより深くご理解いただき、一つでも多くのオフィスが快適に生まれ変わる端緒となれば幸いである。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。


平成二十四年七月   鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 時代とともに変化するオフィス環境の推移

文明開化とともに生まれた日本のオフィス
グレー一色だった日本のオフィス
「モノを生まない場所」から「生産する場所」へ
日本のオフィス事情に一石を投じた「ニューオフィス化運動」
コミュニケーションがモラルを高める?
モチベーションを向上させるオフィス環境
オフィス環境を左右するパーティション
微減する日本のパーティション市場


第2章 パーティションのトップ企業「コマニー」

めざすのは「いい空間」の創造
四十年を超えるオフィス空間づくりの実績
オフィス以外でも活躍するコマニーのパーティション
パーティションの可能性を追求する開発力
営業力を向上させた「お客さま貢献サイクル」
クレームから学ぶ クレームを生かす
コマニーの取り組み


第3章 さまざまなシーンで活躍するコマニーのパーティション

企業文化を育むコマニー仕様のオフィス
厳しい条件下で工場に快適な空間をつくる
最先端技術を守るクリーンルーム
クリーンルームの大型化にも対応
人が集う空間をいかに心地よくするか
ユニバーサルデザインへの取り組み
医療・福祉の現場で生きるコマニーの思いやりの心
分煙対策や携帯電話BOXにも
耐震基準震度六強をクリア


第4章 コマニーを支える人的財産

万人が使いやすいドアはどうやって生まれたか
“白くない”ホワイトボードを生んだ柔軟な発想力
コミュニケーションから生まれるアイデアの卵
本音で語れる関係をつくるために
心を高めるコマニーの人材教育システム
HPCシステムがもたらしたものとは
「モノづくり」を支えるのは「人づくり」
徹底した品質管理教育が従業員の意識を変えた
コマニーの強みとは


第5章 パーティションの軌跡とともに歩む

キャビネットからパーティションへ
参入後十年で達成した間仕切り業界売上高第一位
意識改革を狙って取り組んだTQC
CI導入により、ついに「コマニー」時代へ
大きな転機となったデミング賞受賞
名証二部上場――コマニー新時代の幕開け
独立採算制度のスタート
創業者・塚本信吉の人物像
貫き通した「原理原則」の追求
創立五十周年を機に新たに制定された「経営の理念」


第6章 コマニーはパーティションの可能性をどこまで広げるか

めざすは「超」一流企業
パーティションの可能性を広げる“レンタル事業”
新たな柱「電子錠」
施工技術センターの新設
“ゼロ”からはじまった中国進出
現地人材を心でつなぐ
そして東南アジア進出へ
次の百年を見据えたコマニーの未来戦略


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2017/12/11

『人と技術をつなぐ企業』 前書きと目次

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人と技術をつなぐ企業
~知と情熱で世界に挑むA&D~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-390-0
初版発行:2013年11月28日




 はじめに


「ものづくり日本」

高い技術力、たゆまぬ創意工夫に裏づけられた「メイド・イン・ジャパン」のすぐれた品質は、世界市場で絶大な信頼を得た。だが、近年では台湾や韓国、中国をはじめとした新興国メーカーの台頭により、苦戦を強いられている。その大きな要因となっているのが、長引くデフレと行きすぎた円高である。

こうした状況を打破し、デフレと円高からの脱却、名目GDP三%の経済成長の達成を実現するため、自民党・安倍首相は大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の三つの基本方針、いわゆる「三本の矢」を打ち出した。

これにより、昨年末からは、日本のメーカーを苦しめてきた円高傾向にようやく歯止めがかかり、家電や自動車をはじめ各種産業用製品、日用品業界なども次第に活気づいてきた。

「ものづくり日本」の特徴は、伝統技術と先端技術を巧みに融合させることにある。こうした日本のものづくりの精神と高い技術力、独自の経営戦略によって、創業以来、堅実に成長している企業がある。それが本書で紹介する株式会社エー・アンド・デイ(略称:A&D、本社:東京都豊島区、代表取締役社長:古川陽ひかる氏)である。

同社の設立は昭和五十二(一九七七)年五月。以来、同社は電子計測器の開発、製造、販売を行う計測・計量機器のメーカーとして、一貫して「計る」「測る」「量る」にこだわってきた。

「アナログ技術とデジタル技術の融合をはかり、そのうえで低価格を実現することを経営戦略にしています」と同社社長・古川陽氏はいう。

同社では、アナログとデジタルの変換技術を原点に、計測・制御技術を駆使したツールの提供によって、顧客による新しい価値の創出を支援し、産業の発展と健康な生活に貢献することを使命とすると経営理念に掲げている。

この経営理念にあるように、同社の基幹技術はアナログ・デジタル変換技術である。社名の「A&D」は、まさしくこのアナログ・デジタルに由来しており、「高精度・超高速のアナログ・デジタル変換技術」をコア技術として多種多様な電子計測・計量機器の開発・販売を手がけてきた。

売上高のおよそ一〇%を研究開発費として計上している研究開発型企業である同社では、「“本物”にこだわり、自ら設けた課題に挑み、あきらめずにやり抜くこと」を信条としている。

同社の事業は大きく分けて、①計測・制御・シミュレーションシステム、②電子銃A/D・D/A変換器、③計測機器、④計量機器、⑤医療・健康機器の五つの分野から成り立っている。特に、計量機器のなかで「電子天てん秤びん」では国内市場の六〇%を占めるトップ企業で、デジタル血圧計でも世界第二位と確固たる実績をあげている。

現在、もっとも力を注いでいるのは自動車産業向けの試験・計測システムである。「世界市場での巻き返しをはかる自動車メーカーは、開発スピードを速めるとともに開発コストの削減、さらには環境問題への対応なども迫られています。当社は、自動車メーカーが求める新しいアプローチを製品のかたちで提供しています」と古川氏はその意図を語る。

創業以来、独自技術の研究・開発に邁進してきたA&Dは、取引先はもとより各方面から高い評価を得て、当初一四人の社員ではじめた会社が、いまでは三〇〇〇人を超す規模に成長。売上高もバブル崩壊後に一時低迷したものの、その後は長引く不況にもかかわらず堅実に推移している。「今後も自動車産業をはじめとした各ユーザーと協力しながら、最適なソリューションを追求し、産業界の発展に貢献したい」と古川氏は抱負を述べる。

リーダー不在とされる昨今、古川氏の経営者としての姿勢は、かくあるべき経営者像としてむしろ新鮮に映る。まだまだ日本も捨てたものではない――そう思わせてくれる経営者に出会えたことをうれしく感じる。

本書は、伝統の技術と最先端の技術を独自の思想で融合し、他社の追随を許さない技術の確立によって、日本の、さらには世界の計測・計量市場をリードするA&Dの事業活動を紹介するとともに、創業社長・古川陽氏の経営理念とビジネス哲学に迫るものである。現在、製造業に身を置き、研究・開発に身を置く技術者のみならず、「ものづくり日本」の将来に思いを馳せる多くの一般読者にとっても貴重な指針となるであろう。

なお、本文中の敬称を略させていただいたことをあらかじめお断りしておく。

平成二十五年九月   鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 “ものづくり日本”の復活に向けて

生活はすべて“はかる”にもとづく
ものづくりの基本“はかる”技術
新興国の躍進で停滞する日本経済
技術とマネジメントの両立が必須
欧米をモデルにした戦後の製造業
“技術立国・日本”の光と影
技術力を生かした新分野開拓の道
“ものづくり日本”復活で活路


第2章 多角的に“はかる”を追求する企業

活性化に必須“はかる”技術力
「計る」「測る」「量る」をガイド
時代を超えて成長する伸び代
創業以来“はかる”にこだわる
基幹技術はA/D相互変換の技
職人技とデジタルの融合で低価格を実現
電子天秤市場でシェア六〇%
研究開発型のグローバル企業
電子応用測定器の頂点をめざす


第3章 開発・生産システムの工程を合理化

合理的“ロジック”で組織固め
基盤技術の確立で広がる事業領域
多角化とシナジー効果追求の差
製品企画の原点とは何かを追求
ロケットスタートだった創業期
変換器と電子天秤で基礎を固める
開発・生産システムの合理化
商戦を戦い抜くための力を蓄積
競争ではなく共闘で業界に貢献


第4章 計測システム需要とメディカル分野の伸び代

すべてを関連づけて思索する社風
重要な技術を外に出さずに蓄積
ロードセルへの参入で業容拡大
最初から積極的だった海外進出
国内外の市場の違いと需要喚起
エンジニアリングの眼力と思考
開発の目、営業の目は表裏一体
汎用性でボリュームゾーン変化
伸び代に期待できるメディカルとヘルスケア分野
苦闘、ルビコン川を渡れ?


第5章 創業社長・古川陽の経営理念とビジネス哲学

“犬棒マーケット”論
“運のよさ”の背景にあるもの
逃げない、ぶれない、あきらめない
弱者・強者の戦略の違い明確に
勝負強さ株式上場の“時の運”
“人の和”を尊重しつつ先読み
ロジカルでいて浪花節的な心情
組織はトップ以上にはならない
A&Dがこだわる“本物”とは何か
産業論・技術文化論からの展望


第6章 DSP技術が新しい沃野開拓のツール

技術者の衰退による技術の消滅
トヨタからの打診でDSP事業が本格化
自動車業界向け計測システムDSP
新しい沃野を開拓するDSP
海外企業に飲み込まれない
幹を太らせ枝葉を繁らせる戦略
ホーム・ヘルスケア分野で大手と協業する新戦略
夢は果てしなく――地球と宇宙探査へ
後継者を育成し次代へ継承する――企業風土としての“はっちゃき”精神
近い将来に一〇〇〇億円をめざす?

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『光触媒の新時代』 前書きと目次

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光触媒の新時代
~フジコーの受け継がれるモノづくり精神~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-400-6
初版発行:2014年10月26日




 はじめに

近年、都市の生活環境を脅かす問題が顕在化している。

中国で流行の兆しを見せている鳥インフルエンザは、鳥から人へ、さらに人から人へと感染し、日本での流行も懸念されている。PM2・5に代表される大気中の浮遊粒子(粉塵)も、呼吸器系に沈着し、健康に影響をおよぼす原因になっている。

病院や高齢者施設、学校などにおけるノロウイルスやインフルエンザウイルスの感染も心配の種だ。人が集まる場所であるだけに、集団感染は毎年のように起こる。

一般の住宅も「安全地帯」とはいえない。建材に含まれるホルムアルデヒドなどの化学物質を原因とする「シックハウス症候群」、ダニやカビ、タバコの煙などが原因のぜんそくやアレルギー性疾患もある。

こうした生活環境を脅かす各種ウイルス、細菌、有害化学物質を除去するのに有効な作用をする物質がある。それが「光触媒」だ。

光触媒とは、紫外線や可視光線を浴びることで触媒作用を発揮し、ウイルスや細菌、化学物質、臭いなどを二酸化炭素と水に酸化分解する物質である。この光触媒をタイルや壁などの建材、空気消臭殺菌装置に活用して注目を集めているのは、本書で紹介する株式会社フジコー(本社:福岡県北九州市、代表取締役社長:山本厚生氏)である。

「光触媒は五十年ほど前に日本で開発された画期的な素材であり、技術ですが、すぐれた応用技術がなく、ほとんど活用されていませんでした」

このようにフジコーの代表取締役社長・山本厚生氏はいう。

世間の耳目を集め、「潜在市場一兆円」といわれながらも、実用化するための技術や技法が確立されなかった。これを解決したのがフジコーの高機能ハイブリッド光触媒「MaSSC(マスク)」である。

同社の本業は鉄鋼業である。創業者の山本秀祐氏(故人)が、昭和二十七(一九五二)年、フジコーの前身である富士工業所を創業。当時、鉄鋼業界では絶対に不可能といわれていた鋳型の修理に成功、「鋳型修理の富士工業所」とその名をとどろかせたのである。その後、不屈の精神で、次々と技術を開発していった。

詳しくは本文に譲るが、フジコーの技術開発は、「技術立社」を標榜するだけに“業界初”といわれる技術をいくつも要している。なかでも、溶射を応用することによってフジコー独自の技術「MaSSC」が誕生したのである。

「光触媒を床のタイルや壁面に使えば、建物全体が清浄作用を有することになります。すでに北九州市のモノレール駅構内のトイレのタイルに使用して効果を上げています」

このように山本氏は語る。

権威ある研究機関の試験においても、抗菌・抗ウイルス性能にすぐれていることが実証されているのである。

また、平成二十四年四月に開設した複合型介護施設「都みやこの杜もり」では、居室、共有スペース、風呂、トイレ、厨房などにMaSSC製品を全面に導入している。

それにしても、鉄鋼会社がなぜ介護施設の運営なのか。詳しくは本文に譲るが、光触媒の事業化を契機に、事業内容を「鉄鋼事業」「環境事業(光触媒)」「介護事業」の三本柱としてさらなる飛躍を期しているのである。

本書は、溶射を応用して独自に開発した光触媒の事業化によって、鉄鋼市場はもとより、民生市場でも新たな地平を開いたフジコーの事業活動を紹介するとともに、同社社長・山本厚生氏の経営理念と独自のビジネス戦略に迫るものである。

これは環境関連業界や鉄鋼業界に携わる人たちはもとより、病院、介護施設をはじめとする生活環境の浄化・改善に関心を寄せる多くの一般読者にとっても貴重な指針の書となるであろう。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

平成二十六年九月   鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 私たちの生活環境を脅かす数々の要因――増加する高免疫性ウイルスや有害物質――

日々の暮らしのなかで環境を見直す
健康と安全性を脅かすさまざまな要因
有史以来の未知の領域に突入か
脅威が増す新型インフルエンザ
怖い患者・医療従事者の院内感染
“命を衛(まも)る”のが衛生
健康へ悪影響 PM2・5の浮遊微粒子
ウイルスや有害物質の無害化


第2章 環境悪化を是正、浄化する素材・技術「光触媒」

「シックハウス症候群」の顕現
生活空間を清浄化する光触媒
実用化を阻んだ問題
高速フレーム低温溶射とハイブリッド光触媒で画期的なMaSSC誕生
驚異の殺菌性能を表すMaSSC
光触媒新時代の幕を開けろ
民生&産業用空気消臭殺菌装置
効果を一般に広めるために
「ものづくり日本大賞」を二度も受賞した確かな技術力


第3章 受け継がれる“モノづくり精神”

三味線と踊りはうまいけれど……
モノづくり精神を継続するために
日本の宝・隠れた名企業の技術
技術力とビジネスパワーの均衡
技術立社を支える技術開発センター
売り上げの四%を開発費として計上
光触媒の拠点、環境配慮型工場


第4章 常に変革・再構築で挑戦する社風――伝統の鉄鋼事業と人材の介護事業――

鋳型修理という未知に挑む精神
不屈の精神で確立した技術
基幹技術に見る独創性への執着
保全分野への進出により協働体制を構築
“苦渋の選択”から学んだ信念
苦境を脱した新生フジコーの快進撃
鉄鋼事業と環境は不可分の関係
“鉄は熱いうちに打て”の実践
フジコーらしい地域貢献を実現
高齢者の自立をうながし尊厳を重視


第5章 人生意気に感ずべし――受け継がれるフジコーの思いと技術――

“長いものに巻かれない”強い意志
「人は石垣 人は城」の武田節
フジコー精神の土台
受け継がれたDNA
“体験”してもらうのが大前提
誇りが持てる会社にするために
もともとはベンチャーだった
技術を伝承するマイスター制度
実証の裏づけで価値が出る技術
どこまでも可能性を求める姿勢


第6章 “技術立社”のフジコーが描く近未来の展望――クライアントと協働で海外進出――

“百年企業”フジコーへ向けて
企業は止まったら終わりだ
企業のコアの確保と周辺技術で海外展開を
“突発のフジコー”は信頼の証
介護にも使えるロボットスーツ
光触媒の市場を開く
文字にしてデータ化する介護技術
世界一の鉄鋼メーカーをめざす
組織の基本は人づくりに尽きる
遊び心は価値の高い仕事に通ず

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2017/10/12

『「美しさ」が「感動」に変わる瞬間(とき)』前書きと目次

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「美しさ」が「感動」に変わる瞬間(とき)
~知られざる世界企業 タカラベルモントの挑戦~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-381-8
初版発行:2013年1月6日
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はじめに

現在、人の文明は大きな分岐点に立っている。

これまで、私たち人類は長い歴史を通じて、便利であること、あるいは経済的利便性の高いことが人の幸福を実現するものだと思い込み、ひたすら、その進化に挑みつづけてきた。しかし、近年になってようやく、それはどこか間違っていたことに気づいたからだ。端的にいえば、便利さの追求の果てに、人が住む場である地球環境そのものを破壊してきてしまった。そうした大きな矛盾に気づいた人は、本来、めざすべきものに立ち戻ろうとしている。

本来求めるものは「健やかであること」「心地よいこと」「美しいこと」――。それこそが、人を幸せで満たすものだということを痛切なまでに意識するようになっている。今後はますます、人がめざすものは基本的に「健やかであること」「美しくあること」に集約されていくに違いない。

「美と健康」に共通するキーワードは「ヒューマン」だ。したがって、今後、発展が期待される産業は「ヒューマン・インダストリー」の名を冠せられるものとなるだろう。「ヒューマン・インダストリー」を象徴する産業といえば、第一に理容・美容業界(以下・理美容界とする)があげられよう。

髪や肌の手入れやスタイリングは、時代や国、地域、民族、性別を越えて、すべての人にとって欠かせないものであるからだ。髪・顔などから発信するメッセージは、美しさの表現であるとともに、その人の個性であり、人間性そのものといえる。髪や肌は健康状態を映し出す鏡でもあり、その手入れを通じて体内部の健やかさをチェックする役割もある。

ヒューマン・インダストリーとしての理美容の高い価値、重要度を示すように、理美容界は常に上昇カーブを描いて発展してきており、日本国内の市場規模は、エステティック業界を含めて二兆三〇〇〇億円という巨大な規模に達している。

その市場を長年にわたり下支えし、常に際立つイノベーションを実現して業界の発展をリードしてきた企業がある。それが本書で取り上げるタカラベルモント株式会社(本社:大阪府大阪市、代表取締役会長兼社長:吉川秀隆氏)である。

「タカラベルモント」という社名を聞いても、一般的にはあまりなじみがないかもしれないが、誰もが一度は同社の製品にふれたことがあるはずだ。理容サロンや美容サロンでサービスを受ける椅子、あるいはシャンプー台、ヘアカラーやパーマの効果を高める促進器など、理美容サロンにある製品。同社はそれらのトップメーカーであり、社歴は九十年の長きにおよぶ。誰もがその椅子に座ったことがあるどころか、父も母も、祖父母、曾祖父母まで、座ったことがあるかもしれない。

また、理美容技術の提供に欠かせないパーマ液・カラー剤などのヘア化粧品、エステティックで使用するボディ化粧品などの各種化粧品、サロンの空間設計・施工、技術者育成のためのスクール展開など、タカラベルモントの事業内容は理美容からエステティック、ネイルまで網羅的にカバーしている。

さらに理美容椅子の技術を応用し、業容はデンタル・メディカル領域にも拡大している。患者は心地よく治療を受けられ、施術する医師も姿勢や体勢にムリやムダがなく活動しやすい診察台や治療台など、理美容界で培ったノウハウを注いで製作したデンタル・メディカル製品は、それまでの治療を行う側だけの視点でつくられた製品とは一線を画した。施術を受ける側、技術を提供する側、双方にとって心地よく、便宜性も高い製品を提供してきたタカラベルモントは、理美容界の機器メーカーとしてトップを走ってきたリーディングカンパニーである。デンタル・メディカル領域においても、世界における認知と評価は着実に高まってきている。

世界市場への進出も早く、日本のメーカーとしては戦後四番目にアメリカに現地法人を設立、ソニーよりも四年前になるというから、進取の気風は天晴れといいたくなる。次いでヨーロッパ、南米、アジアへとビジネスフィールドを広げていき、一時は理容椅子では圧倒的な世界シェアを誇っていた。近年は中国など新興国の低価格攻勢に多少シェアを落としているが、新興国の経済興隆が進めばクオリティを重視するタカラベルモントの製品が一気に見直されることになるという逆転のシナリオも見えている。

これまでも、タカラベルモントは常に業界の歴史を塗り替えるイノベーションを実現してきた。現在では、どこのサロンでも見かける遠赤外線促進器「ローラーボール」を導入したのも同社である。もっと端的に先駆性を示す例としては、「エステティック」「ヘッドスパ」という言葉を日本で広めたのもタカラベルモントなのである。

「当社の使命は価値提供企業をめざすことだと思っています。一貫して理美容サロンの顧客と医院の患者、そして機器を実際に使う施術者と医師の双方にやさしさを持った機器を開発し、ご提供する。それを通じてお客さまのよき協力者となり、より美しく健康でありたいという人の根源的な願いに貢献していくことに心血を注いでいます」

タカラベルモント代表取締役会長兼社長・吉川秀隆氏が語るように、世界経済の停滞期にも品質重視を基本精神に、次々、新たなイノベーションを進めている。

「来期ごろからそれらがどんどん市場に登場していく予定です」

経済面に限らず、明るい話題が少ないいまの日本に、こうした企業があることはなんとも心強い。

「日本には世界に誇るべきものが数多くあります。たとえば美しい自然、歴史、文化、人と人とのつながり、そして健康で美しいライフスタイル……。こうした日本オリジナルの価値が衣食住ほか多くの分野で改めて見直されています」

吉川氏がいうように、たしかなものづくり技術に日本オリジナルの価値を融合させたモノやサービスを提供・発信していけば、日本の技術やソフトは世界市場でさらに大きな場を得ることができるはずだ。

平成二十三(二〇一一)年、創業九十年を迎えたタカラベルモントはその確信を支柱に、世界の人々が求めてやまない「美と健康」にかかわる市場に、さらに貢献していきたいと決意を固めている。

本書では、創業者・吉川秀信氏にはじまり、二代目社長・吉川秀一氏、三代目の現社長・吉川秀隆氏へと継承されてきたタカラベルモントの、常に世界市場をめざす経営理念、ものづくり哲学を踏まえながら、同社がこれから進んでいこうとする将来ビジョンを描き出していきたいと思っている。

その姿勢、めざす方向性は、理美容界、デンタル・メディカル業界関係者はいうまでもなく、広く日本の今後に関心を持つ多くの読者にも貴重な示唆を与えるものと確信しているからだ。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

平成二十四年十一月     鶴蒔靖夫


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はじめに


序 章 サロンとともに歩みつづけて

理美容関係者一〇〇〇人が一堂に――九十周年感謝の集い
「TWBC2013」の開催を決定


第1章 理美容サロンを支えてきた九十年~Ⅰ ―たゆまぬ技術革新とサロン空間への新提案―

心地よさ+高機能性を満たす椅子
「髪が伸びない人間はいない」
三兆円市場をリード
男性は二カ月に一度、理容サロンを利用
女性の美容サロン利用は年平均五・二回
「一〇〇〇円カット」や「自宅ケア」が増加傾向に
だからタカラベルモントの価値が光る
常に利用者サイドに立った九十年のものづくりの歴史
手洗いを超えた自動洗髪機を開発
美容サロン空間を変えた「ローラーボール」
第三のパーマ「エアウェーブ」などを積極的に提案
理容界に活気を取り戻そう
理容サロンの立場に立った提案がタカラベルモントの伝統
「ニュー・メンズ・プロジェクト」
理容サロンのリメイクも成功!
サロン設計、開業プランニングも積極展開
開業サポートでイメージどおりに出店できた!
顧客・サロン・タカラをつなぐ「SALONPOS LinQ」


第2章 理美容サロンを支えてきた九十年~Ⅱ ―ハード・ソフトの両面から理美容界の技術をサポート―

ヘア化粧品のメーカーとして
オーセンティックビューティで急伸長
主力ブランド「ルベル」
サロンの化粧品「エステシモ」
メンズ向けアイテム「トリエオム」
CE開発グループの存在と貢献
営業マンにも美容師資格の取得を推奨
エステ、ネイルカレッジで技術者を育成
吉川学園「タカラ美容専門学校」を開設


第3章 デンタル・メディカル事業への取り組み

世界規模で成長が期待されるデンタル・メディカル事業
デンタル事業
 海の向こうで芽生えたデンタル椅子製造
 販売もアメリカ市場が牽引
 デンタル事業、成長の軌跡
 デンタル事業の活性化に全力投球
メディカル事業
 身体的にも精神的にも、患者が心地よい診療椅子
 他の診療科の検診台、治療台へと発展
製品力を支える開発本部
 開発力をさらに磨いていく
 人間工学+ヒューマニティがヒットのカギ
グローバル展開を推し進める国際事業
 「世界はひとつ」の企業遺伝子
 世界市場を席捲する
 不退転の決意で国際事業を再強化する


第4章「世界はひとつ」を企業精神に

Ⅰ・創業から太平洋戦争終戦まで 大正十~昭和二十年
 いくつも頂を連ねていくという社名を戴いて
 宝鋳造所創業社長・吉川秀信の誕生
 事業の安定と拡大に奔走
 理容椅子と出合う
 日本各地へ、さらに海外へ
 戦争の嵐のなかを生き抜いて
Ⅱ・戦後~東京オリンピックまで 昭和二十~三十九年
 終戦。そして新たなる出発
 飛躍と拡充の昭和三十年代
 「水道哲学」と理容椅子の普及
 活発な新製品開発
Ⅲ・高度経済成長期・前期 昭和四十~五十八年
 デンタル椅子製造を開始
 世界一の理容椅子メーカー・コーケン社の買収
 化粧品分野への進出・ウエラ社との提携
 タカラベルモントの発足・万博に単独参加
 ブラジルに賭けた夢
 化粧品の自社ブランド「ルベル」誕生
 全社あげての販促キャンペーン「ビバ・フェスタ78」を開催
 創業者・吉川秀信の逝去
Ⅳ・高度経済成長期・後期 昭和五十九~平成元年
 企業体質の変換
 V3計画発進
 理美容機器の革命「ローラーボール」の誕生
 デンタル・メディカル事業の成長
 化粧品事業を大幅に拡大
 吉川秀隆が第三代社長に就任
Ⅴ・平成という新時代 平成二~二十三年
 第三次「V3」計画と二十一世紀プラン
 積極施策の展開で国内外市場を活性化
 阪神・淡路大震災の救援・復興支援に全力を傾注
 創業七十五周年、記念行事開催
 TWBCの開催
 二十一世紀のタカラベルモント始動
 水害では代理椅子の貸し出しも
 化粧品研究開発センター誕生
 顧客満足をさらに追求し、ものづくりをいっそう極めていく
 リーマンショックの余波を受けて
 不撓不屈の精神をバックボーンに
 東日本大震災からの復興、さらに新たな展望を求めて


第5章「第二の創業」という名の全社改革

九十周年を機に「第二の創業」宣言
人材育成
 コンプライアンスと「社訓(創業の精神)」
 タカラベルモントの人材育成、二つのミッション
 がんばった人が報われる人事制度に
 体系的な研修制度を確立
 人材の入り口・採用に全力を傾注
 本気のやる気を引き出す新入社員研修
 新入社員全員に海外研修を実施
「第二の創業」年を起点に中期経営計画を実施
各事業部が緻密な戦略遂行で儲かる経営体質へ


終 章 百周年、そしてさらにその先へ向けて

いつも、そこにをさらに徹底、充実していく
まず、市場づくりに全力を傾注
顧客を創造し、新たな事業領域を切り開いていく
海外市場の取り組みを足元から洗い直す
コスト競争力を磨き、中間層の取り込みを進めていく
市場ごとのきめの細かな製品づくり
大きな期待と使命を持つデンタル・メディカル事業
輝きを放つ未来へ向かって


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2017/06/22

『アビストの挑戦』 前書きと目次

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アビストの挑戦
 ~日本モノづくりを支える設計技術者集団~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-407-5
初版発行:2015年4月21日
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 はじめに

近年、製造業を中心に派遣社員の雇用はすでに定着し、雇用形態は完全に変わったといっていいだろう。アウトソーシングなくして現場は動かなくなっている。

終身雇用・年功序列の日本型経営はもはや消滅し、少子高齢社会となり労働人口がますます低下するなかで、若い人の働き方、働く意識にも大きな変化がみられる。派遣業務を肯定する声も多く、かつてのようなマイナーな姿勢に様変わりがみられる昨今だ。

詳細は本文に譲るが、ひと口に派遣といっても、一般労働者派遣、特定労働者派遣の二通りがある。通常、前者の派遣労働者は、製造業などで不足する人員の補充や製造現場での人手として雇われるケースが一般的だ。仕事としては時期、需要などにより流動性の高い分野である。それに対し後者の特定労働者派遣は技術者中心の派遣であり、専門特化した技術を有する技術者が派遣労働者として、メーカーの要請により常駐型または受託型請負で仕事を任される、いわばアウトソーシングの性質をもったものだ。

本書で紹介する「株式会社アビスト」(本社・東京都中野区、代表取締役社長・進勝博氏)は、特定労働者派遣の会社であり、その特徴は「モノづくりの開発パートナー」として設計・開発に特化した技術者集団という点にある。おそらくいま、日本において設計・開発の専門技術者集団として事業展開するトップクラスだろう。社員の実に九三%が設計技術者という気鋭のプロフェッショナル集団である。なお、設計技術者の九一%が機械系であり、残りが情報系となる。

製造分野のアウトソーシングで、これだけの設計技術者を擁しているのは、類似業者のなかでも例をみないユニークな会社である。

自動車、電気機器、一般機械などのデザイン設計・製品開発に注力。その他、情報システムの設計・開発も手がけるが、自動車関連で七割近い売上構成比を示す。

得意分野はランプ、アウトボディ(外装)、内装など、自動車を特徴づけるデザイン部分の設計。三万部品からなるといわれる自動車製造において、アビストが得意とする3D‐CAD技術は不可欠であり、アビストならではの訴求力がこの企業のユニークさを浮き彫りにする。

平成二十五年十二月には、東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)に上場。さらに二十六年九月、東京証券取引所市場第二部へ市場変更している。そして二十七年三月にはいよいよ東証一部へと、一気に駆け上がった。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだ。

このところ自動車業界は、トヨタの水素自動車、米国ベンチャーの3Dプリントによる自動車製造など話題にこと欠かないが、アビストでは将来を見据え、すでに3D出力事業にも着手、3D‐CAD設計+3D造型の新しい地平を模索している。

ハイテク機器を駆使する設計プロ集団ながら、アビストは経営課題「信頼の和の六輪づくり」(詳細は本文参照)を標榜、アナログともいえる人材教育・育成に力を入れている。

この点について進氏は、次のように話している。

「機械設計は、誰がやっても同じ結果をはじき出します。大事なのはデザイン〝思想〟であり、開発〝思考〟という独創的な創造性にあるのです。また、クライアントとの信頼関係で仕事が成り立つわけですから、あくまで〝人〟が主体なのです」

アビストは平成二十五年三月、新しい分野への挑戦として水素水事業のメーカー「株式会社アビストH&F」(代表取締役社長・進顕氏)を設立し、未来志向の水素水で事業分野の拡張を図っている。この発想・展開のユニークさが、アビストという企業の特徴を現している。

本文の執筆にあたり、水素水研究の権威である日本医科大学教授の太田成男先生にご助言いただいたことを、この場を借りて御礼申し上げる。

なお、本文中は一部敬称を略させていただいたこと、あらかじめお断わりしておく。

  平成二十七年 三月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第一章 日本の製造業を支えるアウトソーシング ―日本の雇用・就業形態が変わった

不況とグローバル化で雇用は変化
労働市場の構造変化と需給の調整 
派遣雇用の現状と改正法案の行方 
必要なのは人手ではなく人材 
雇用の流動化は必要不可欠な要素 
製造業を支えるアウトソーシング 
引く手あまたの技術系派遣労働者 
プロフェッショナルに徹すべき 


第二章 モノづくりの設計技術者集団「アビスト」 ―3D‐CADを駆使するプロ集団の素顔

モノづくりの開発パートナー 
信頼関係を積み重ね信用を得る 
3D‐CADで自動車の設計に携わる 
自動車産業に向く最適なツール 
3Dプリンターで自動車を製造? 
3D技術で変貌した自動車の生産 


第三章 コア領域への特化と人材育成が強み ―プロフェッショナルな設計技術者集団の条件

パートナーとしての協働が重要 
信条と事業の目的を明文化する 
負荷を撥ね返す健康で元気な人 
人の言葉を聞く耳が素直・誠実 
仕事の苦労から学ぶ忍耐・辛抱 
信頼×信頼=信用で強靭な組織 
プラス思考タイプが長続きする 
三年間の忍耐・辛抱が示す意味 
自動車づくりのコア領域に特化 
人材強化が組織のキーポイント 
技術者の成長をバックアップ 


第四章 次の時代を開拓するアビストH&Fの「浸みわたる水素水」

なぜ、いま水素水なのか
おいしくて身体にいい水を求めて 
「浸みわたる水素水」誕生前夜 
水素水についての理解を深める 
正しい水素水を消費者に届ける 
「浸みわたる水素水」の訴求点 
水素水事業について思うところ 
オートメーション化で品質管理 
世界をターゲットにできる商材 


第五章 アビストの経営理念とビジネス哲学「信頼の和の六輪づくり」に迫る

基本となる「経営十ヶ条」精神 
常に「創業の精神」に立ち返る 
自修自得・自律自省の求道 
空手で鍛えた精神と肉体の賜物 
普通なら現役引退の年齢に 
常識にとらわれない柔軟な思考法 
全体適正のためのチームワーク 
時代は変わっても原資は〝人〟 


第六章 日本のモノづくりとアビストの未来

設計をアウトソースする近未来 
グローバルと国内回帰との関係 
常に試行錯誤するのが成長の糧 
責任感が組織の力を高める要素 
コラボレーション的な連携強化 
ますます信頼の和(輪)づくり 


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2017/06/21

『ハートフル エンジニアリング』 前書きと目次

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ハートフル エンジニアリング
 ~北海道から世界を見すえるアベールジャパンの挑戦~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-411-2
初版発行:2015年8月12日
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 はじめに

戦後の日本経済を支え、日本を世界でも有数の経済大国へと押し上げる原動力ともなった、いわゆる日本型経営の代名詞とも言える「終身雇用制」は、バブル経済崩壊後の「失われた20年」と経済のグローバル化の進展により、終わりを告げた。

それに伴い、急速に市場を拡大してきたのが、人材アウトソーシング・ビジネスだ。厚生労働省がまとめている「労働者派遣事業報告書の集計結果」によると、2013年度の人材派遣市場の規模は、約5兆1000億円にのぼる。

こうした時代背景のもと、技術者のアウトソーシング企業として着実に業績を伸ばしているのが、本書で紹介する株式会社アベールジャパン(本社:北海道札幌市、代表取締役:市原敏雄氏)である。

特定分野に専門特化している企業が多い技術者アウトソーシング業界にあって、同社の事業領域の広さは際立っている。同社社長・市原敏雄氏は、その狙いを、

「幅広い分野を総合的に手がけているため、仮にひとつの業界で受注が減っても、他の分野でカバーできることが強みになる」

と語る。

この狙いが正しかったことは、各種ソフトウェア/ハードウェアの設計・開発から、ネットワーク、通信、建築、土木、電気・電子関連の計測、制御、FA(ファクトリー・オートメーション)、メカトロニクス、プラント、宇宙開発と多岐にわたる分野で、同社の高い技術力を持った技術者が重用され、東証一部・二部上場の大手企業を中心に数多くのビッグプロジェクトに参加している、という実績に表れている。

この結果、同社は創業以来、年平均20%増のペースで売上高を伸ばし、2013年度の売上高は32億円にまで拡大。2015年現在では、全国12カ所に拠点を持ち、社員数約600名を数えるまでになっている。

その高い技術力を生み出す原動力となっているのが、待遇面をはじめとする、技術者が働きやすい環境をつくるための各種サポート体制だ。

アベールジャパンの派遣技術者は、すべて同社の社員である。社員という安定した立場のまま、派遣先で「やりたい仕事」ができるのだ。

さらには、各種手当、高い給与水準、全国各地の拠点に備えられた独身寮といった目に見える部分だけでなく、採用から派遣先の決定、アフターフォローまでを1人の営業担当者がきめ細かくサポートしてくれるので、安心して仕事に専念できるという、目に見えない部分の環境も整っている。

また、同社には定年もなく、未経験者やブランクのあった技術者も受け入れているため、20代~60代まで幅広い年代層の人材が活躍の場を得ているという。人材の育成にも力を入れ、採用後には、業務に必要な国家資格を取得するための勉強会や、ヒューマンスキル向上のための教育を徹底させている。こうした職場環境の良さから、社員の定着率も高い。

同社を率いる市原氏も、もともとは東京出身の技術者であった。父親が金属プレス加工の会社を経営していた影響で、少年時代から機械に関心を持ち、高校を卒業後は小型トランスメーカー、水処理プラント関連企業などで技術者としてのキャリアを積んだ。

しかし、その後に入社した総合エンジニアリング会社で「営業をやってほしい」との誘いを受けたことが大きな転機となった。

市原氏の、技術者の立場を理解したうえでの営業活動は着実に成果をあげ、やがて北海道での事業展開を任されるまでになった。

そして2003年、「もともと会社経営にロマンを感じていた」という市原氏は54歳で起業。景気が低迷するなかでの逆風吹き荒れる経営環境だったが、営業マン時代に培った人脈を活かし、事業は順調に発展していった。

創業以来、同社が掲げている経営理念は「誠実・貢献・創造・挑戦」である。社名の「AVAIL(役に立つ)」は、こうした経営理念に基づいて名付けられた。

また、市原氏の第一の経営哲学は「現場主義」ということにある。

「何かあったら、全国を飛びまわり、自分の目で見て確認する。現場を忘れた経営は崩壊する」

と、市原氏は断言する。

2013年に創業10周年を迎えた同社は、さらなる飛躍をめざし、開発センターを拡充。海外展開にも意欲を見せ、ベトナムやタイなどの東南アジアを中心に拠点を設ける計画もある。

市原氏は、

「培った技術を途上国のインフラ整備に活かしたい。今後は、農・医薬バイオ分野にも進出し、裾野を広げたい」

と、抱負を語る。

その一方で、技術者出身の市原氏の夢でもある、自社でのモノづくりにも今後、力を入れていきたいという。

本書は、技術者のアウトソーシング事業で成長を遂げたアベールジャパンの事業活動を紹介するとともに、同社社長・市原敏雄氏の経営理念、ビジネス哲学に迫るものである。

戦後の日本が飛躍的な経済成長を遂げるその裏で、多くの名もなき技術者たちの活躍があったことは間違いないだろう。

いま、日本は、長く続いた景気低迷から、ようやく抜け出しつつある。そして、日本経済が真に復活をするためには、技術者の力が不可欠と言える。

それだけに、本書は、技術職にかかわる人のみならず、日本の産業の将来に思いを巡らせる多くの一般読者にとっても、貴重な指針の書となるだろう。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

  2015年7月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第1章 日本の産業を支える技術者アウトソーシング

アベノミクスで雇用は改善されたのか
グローバル化と不況で変化した雇用事情
雇用の流動化は必要不可欠
5兆円を超える規模となった人材派遣市場
引く手あまたの技術系派遣労働者
懸念される労働者派遣法改正案の影響


第2章 総合エンジニアリング企業・アベールジャパン

技術者による技術者のための会社
多岐にわたる産業に技術者をアウトソーシング
右肩上がりで前年比売上高平均120%成長を達成
創業わずか11年で全国展開を達成
大手ビッグプロジェクトに技術者を派遣
オリジナルのモノづくりへのこだわり


第3章 幅広い技術と知識を融合し社会に貢献 ― アベールジャパンの事業内容

経営理念は「誠実、貢献、創造、挑戦」
派遣先で重責を担う技術者の存在
派遣先と技術者をつなぐ営業の役割
「採用は購買」― トップクラスの技術者確保に力を注ぐ
RFID入退室管理システムに代表される自社開発
異業種の技術融合で創造力を生む


第4章 人が財産―技術者が本領を発揮できる企業

めざすはハートフルな総合エンジニアリング企業
技術者が働きやすい環境をつくる各種サポート体制
ブランク不問、生涯現役も可能
国家資格取得のための勉強会を実施
ヒューマンスキル向上のための教育にも注力
技術者のあるべき姿・ありたい姿を追い求めて
高い社員定着率が物語る信頼


第5章 創業社長・市原敏雄の経営の原点

父の仕事を通して培った技術への関心
技術者としての経験を積んだサラリーマン時代
転機となった営業職への抜擢
54歳、不況のなかでの「遅咲き」起業
第一の経営哲学は「現場主義」
儲かるしくみをつくるのが経営者の仕事


第6章 アベールジャパンが描く未来展望

ますます存在価値を高める技術者のアウトソーシング
常に危機感を持ち、変化の予兆を察知する
海外での事業展開や農業・医薬バイオ分野への進出も視野に
新しい環境で新しい挑戦を続けることが経営の本質
人材力と技術力で社会貢献を果たす
新たな10年に向けて挑み続ける日々


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『“匠”のアウトソーシング』 前書きと目次

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“匠”のアウトソーシング
 ~モノづくりの技術者集団・オーエスピーの挑戦~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-418-1
初版発行:2016年1月15日
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 はじめに

戦後最長となる95日間の会期延長のすえ、集団的自衛権の行使容認などを柱とした安全保障関連法が2015年9月19日に成立した。憲法違反や説明不足を指摘する声があるなかでの採決だったこともあり、普段なら国会中継に見向きもしない人までもが、今回の超ロングラン国会に注目していた。

おおかたの予想どおり、最終盤の攻防は大荒れとなった。怒号が飛び交い、与野党の議員が激しく揉め、つかみあいの乱闘をする様子が、ニュース番組などで繰り返し流された。言論の府とは名ばかりの国会の惨状に、法案の賛成、反対にかかわらず、多くの国民があきれ果てたのも無理からぬことだろう。

しかし、その3カ月前にも、とある法案の改正をめぐって国会が大荒れになったことを覚えているだろうか。その法案というのが、企業が派遣労働者を受け入れる期間の制限を事実上撤廃するなどの改正案を盛り込んだ「労働者派遣法改正案」である。

安保法案の場合なら、すべての国民の将来に大きく影響する事案だけに、採決をめぐって国会が大荒れになるのは理解しやすいかもしれない。だが、派遣労働者という一部の労働者の待遇に関する法案の改正で、なぜここまで国会で揉めるのか、ピンとこないという方もいるかもしれない。

実は、派遣労働者という存在は、日本の産業界の行くすえを大きく左右するほど重要なものなのだ。いまや、日本におけるすべてのビジネスにおいて、人材確保の手段としてアウトソーシングの活用は、必要不可欠なものとなっている。特に、これまで世界に誇ってきた「日本のモノづくり」という分野においては、派遣労働者という存在なくしては成り立たないところまできている。

つまり、労働者派遣法改正案を「派遣として働いている人以外には関係ない法案」だと思っている人がいるとすれば、それは大きな間違いだということだ。この法案が産業界に与える多大な影響は、日本のすべての国民の生活を左右するかもしれないのだ。国会で激しい意見交換が行われたのも、無理からぬことである。

矢野経済研究所の「人材ビジネス市場に関する調査結果 2015」によると、2014年度の人材派遣業の市場規模は、前年度比105・0%の3兆7701億円にのぼるという。この成長の原因は、派遣に関する規制緩和がたびたび実施されたことによるところが大きい。とりわけ、2003年に製造業の派遣が解禁されたことが強く作用している。

ゼネコンや大手メーカーが、いちから技術者を育成するのは容易なことではない。気が遠くなるような時間とコストがかかるものだ。そのため、日本の製造業の人材育成を支える大きな力として、アウトソーシング産業は著しい成長を遂げてきた。

リーマンショックに端を発した不況のあおりを受け、2009年以降は人材派遣業も市場縮小傾向にあった。しかし、その後の景気回復とともに、人材ビジネス市場はふたたび活気を取り戻した。現在では、通信インフラの整備や医療革新などをはじめとするさまざまな分野で、専門技術者のアウトソーシングが活用されている。今後、さらなる需要増加が見込まれるのは間違いないだろう。

こうしたなか、特色ある人材派遣業として注目を集めているのが、本書で紹介する株式会社オーエスピー(本社:神奈川県横浜市、代表取締役:石垣健一氏)である。

同社の大きな特徴は、設計・開発から製造・生産にいたるまで、製造業メーカーの仕事に特化している点である。主な取引先も、世界に名だたる大手自動車メーカーやデジタル家電メーカーなどが数多く名を連ね、その顧客からの信頼も非常に厚い。それは、同社がアウトソーシング事業、人材紹介業、派遣事業、コンサルティング事業において、あらゆる業務の効率化を推進するスペシャリスト集団であるからだ。

同社の社長・石垣健一氏は、こう語る。

「人材アウトソーシングビジネスは、新たな時代に入りました。いまや、事業の継続や発展には、変化への対応力が必要な時代なのです」

同社は、顧客のあらゆるニーズに応えるべく、その時々の需要に合わせた事業形態を提案し、顧客の業務の効率化を推進するとともに、人事的な不安要素の軽減に役立つ、事業内容や規模に応じた人員の供給を行っている。

そんな同社では、技術職スタッフを全員、正社員として直接雇用し、安心して長く働くことができる環境を整備している。そればかりか、技術だけではなく、人間力、コミュニケーション能力にも磨きをかけられるよう、人材育成に注力し、働く人間たちのスキルアップを図っているのだ。

「将来的には、人材を派遣している企業の仕事を当社で受託・請負することも、視野に入れています」

そう石垣氏が語るように、現在、同社では、社内で請負仕事ができる組織を構築している最中だという。

また、人材サービスだけではなく、顧客が抱えている「コスト削減」や「CSR(企業の社会的責任)」「環境対策」といった幅広い分野における難しい課題においても、それを解決に導く総合的なソリューションを提案するほか、従来のノウハウを生かした要素技術を組み合わせた最適化設計による受託開発も行っている。

一方で「環境経営」を実践している同社では、2008年から従業員参加型の社会貢献活動の一環として、プルタブ・アルミ缶回収による車椅子寄贈活動や、産業用バッテリーの再生事業にも取り組んでいる。さらには「会社で取り組むエコな未来」をテーマに、合成界面活性剤をいっさい使用していない多機能洗浄・美容顔料「ナノソイ・コロイド」や「ナノ・イオミス」を原料とした、エコな商品・サービスも提供している。

石垣健一氏が人材派遣業界に入ったのは約30年前のこと。当時、まだあまりスポットを浴びていなかった人材業界に可能性とおもしろさを感じ、人材派遣会社に就職した。その読みは的中し、入社した会社は大きく成長を遂げたが、規模の拡大に伴い、石垣氏は別事業の経営を任命されてしまう。しかし、あくまでも人材ビジネスにこだわりたい石垣氏は、その話を断り、起業することを決意し、2003年にオーエスピーを設立した。

それから12年を経て、いまや同社は、社員数1100名、売上高は60億円規模にまで成長した。だが、石垣氏は、さらなる高みをめざしている。

「この会社を、スタッフ数や売り上げの規模だけを誇る会社にするつもりはありません。きめ細かなサービスと人材の質の高さこそが当社の特色だと、胸を張って言えるような会社にしたいと考えています」

今後は同社の得意分野に関連した新たな事業への進出も計画中で、そのためのM&Aにも注力している。また、アジアでの新しい領域の事業も準備中だという。同社がさらなる飛躍を見せてくれるのは間違いなさそうだ。

本書は、技術者アウトソーシングで着実な成長を遂げているオーエスピーの事業活動を紹介するとともに、同社社長・石垣健一氏の経営理念、ビジネス哲学に迫るものである。アウトソーシングビジネスに関わる人のみならず、日本のモノづくりの将来を思う多くの読者にとっても、貴重な指針の書となれば幸いである。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

 2015年12月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第1章 日本のモノづくりを支えるアウトソーシング

日本における人材サービス業界の歩み
いまや雇用の流動化は必要不可欠
一大市場となった人材サービス産業
引く手あまたの技術系派遣労働者
製造ラインから技術開発まで外部委託
2015年労働者派遣法改正で変わる派遣の現場
改正法案の施行が急がれた理由
労働者派遣法改正で雇用は守られるのか
人材サービス業界の現状と今後の方向性


第2章 技術者アウトソーシングで躍進

製造業・技術職に特化した人材派遣ビジネスを展開
取引先は大手自動車・家電メーカー
量より質を重視した企業方針を徹底
プロエンジニアチーム「匠」の実力
「質のオーエスピー」を支える顧客目線の開発力
設計・開発から製造・生産工程までアウトソーシング
顧客企業から信頼されるパートナーとして


第3章 頼れるビジネスパートナー

顧客企業との揺るぎないパートナーシップを構築
難易度が高い派遣から請負への移行を実現
オーエスピースタッフが活躍する請負現場を訪問
設計・開発などのコアな部分にも関与
  現場で働くスタッフの声① 小笠原 敬(製造スタッフ 33歳 男性 入社10年)
  現場で働くスタッフの声② 相馬 和貴(製造スタッフ 28歳 男性 入社4カ月)
スタッフを守る姿勢が「質の向上」につながっていく


第4章 国際ビジネスや環境経営にも貢献

複合企業をめざし、新規事業にも挑戦
国際ビジネスのための外国語サービス
産業用バッテリーもリサイクルの時代に突入
AEDの普及を図り、救える命を救えるように
健康や自然に配慮した製品の企画・販売事業にも挑戦
プルタブ・アルミ缶回収による車椅子寄贈活動
スポーツ交流を通じて地域活動にも積極的に参加
野球チーム「OSP ALWAYS」を結成
世界を相手に勝負するOSPレーシングチーム


第5章 創業社長・石垣健一の経営理念とビジネス哲学

人材ビジネスに可能性を見いだし、人材派遣の世界へ
仲間や支援者に支えられて独立
「質のオーエスピー」を実現するために人材教育に注力
「技術力と人間力」の両面で人を育てる
正社員だからこそ、長期的視野に立った教育も可能に
誠実さを何よりも大切にする石垣の経営哲学
未曾有の大災害を乗り越えて成長したオーエスピー
短所を責めずに長所を伸ばす石垣のマネジメント手腕


第6章 オーエスピーが描く未来図

事業部制を廃止し、新たなステージへ
建設系分野は子会社化して事業を伸ばす
効果をあげるM&Aへの取り組み
高い専門性を持つ会社のM&Aがもたらしたもの
アジアでの新たな事業展開を見すえて
女性社員の比率増で企業力アップを図る
夢と志を持って働ける企業であり続けるために


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2017/06/20

『小さな泡が世界の生活を変える』 前書きと目次

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小さな泡が世界の生活(くらし)を変える
 ~日本発の新技術 マイクロバブルトルネード、サイエンスの挑戦~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-420-4
初版発行:2016年4月28日
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はじめに

「ご無沙汰いたしました」
「いやぁ、14年ぶりだ。14年ぶり!」

本書の主役・青山恭明氏との再会は、こう言い交わしながらの感激の握手で始まった。

その数日前のことだ。私は毎朝、各種の新聞・雑誌、各業界の業界紙・誌に目を通すことを日課にしている。そのなかのひとつ『リフォーム産業新聞』に「青山恭明」の名を見いだした。記事によると、青山氏は現在、株式会社サイエンス(本社・大阪市淀川区西中島)の会長になっており、「マイクロバブルトルネード」という画期的な製品を開発し、その普及に目覚ましい実績をあげているという。

「ああ、元気で、いまも水に特化したビジネスをやっているんだなぁ」

突然、自分でも信じられないくらいの喜びが湧き上がってきた。

実は14年前、私は、当時、青山氏が手がけていた水まわり事業をテーマに、1冊の本を上梓したことがある。その本は、かなりの好評を得た。

その後、そのビジネスは、時代を先取りしすぎていたことと、日本の行政の奇妙な縛りのために、方向転換を余儀なくされたが、その青山氏が、現在も水をテーマにしたビジネスで辣腕をふるっているというのだ。

「会いたい。いま、すぐにでも……」

次の瞬間、私の手は電話に伸びていた。

こうして彼との再会が実現し、話を聞くうちに、これはどうしても「本にまとめ、世に強くアピールしなければいけない。そのくらい重要で、エキサイティングなテーマだ」と確信した。青山氏は、これまでの入浴の概念をまったく変えてしまう、画期的な製品を開発していたのである。

*  *  *  *  *

「お風呂に入る」と言えば、みながみな、湯船でお湯に浸かったあと、体をごしごしと洗うことまでを含めてイメージするはずだ。

「体の隅々までよく洗うのよ」

子どものころ、母親にそう声をかけられた記憶は、誰にもきっとあるだろう。そのくらい、「お風呂に入る」とは、「体をこすって洗い、体を清めること」を意味している。

ところが、青山氏が現在、メイン商品として扱っている「マイクロバブルトルネード」は、入浴につきものだった「体を洗う」という作業を、不要にしてしまうというのである。

そう言われても、どういうことなのかと首をひねるかもしれない。だが、「マイクロバブルトルネード」のしくみを知れば、浴室はもはや「体を洗う場」ではなく「リラックスの場」となり、精神的なゆとりや楽しみを味わう場、美を実現するエステの場に進化していることを、理解できるはずだ。

「マイクロバブルトルネード」とは、ひと言で言えば、極めて細かく小さい泡を発生させる装置のことだ。

最近、各方面で大きな話題になっているファインバブル※技術。水の気泡を極限まで細かくすると、気泡は水の表面に上がってこなくなり、水の中に長くとどまって、やがて消えていく。この間に気泡が、優れた吸着作用で目に見えない小さな浮遊物まで吸着し、優れた洗浄効果を発揮する。半導体の製造工程などでファインバブルが使われているのは、この効果に着目してのことだ。ほかにも、魚や野菜などの生育を促進したり、鮮度をこれまでの数倍、いや数十倍に保つなど、さまざまな効果を持つことが、どんどん明らかになってきている。

※気泡の直径が100マイクロメートル以下のものを総じて「ファインバブル」と言う。「ファインバブル」には、気泡の直径が1~100マイクロメートルの「マイクロバブル」と、直径が1マイクロメートル以下の「ウルトラファインバブル」がある。(国際標準化機構「ファインバブル技術に関する専門委員会」による定義。ISO/TC281。2016年3月時点)

青山氏は、この工業用ファインバブル技術にヒントを得て、「この気泡の発生装置を小型化して、人の体を洗うことに使えないだろうか」と発想した。いわば、人間のクリーニングマシーンの開発である。それから開発努力を重ね、ついに自動入浴装置とでも言うべき革命的装置「マイクロバブルトルネード」の開発に成功したのである。

「マイクロバブルトルネード」がつくりだすのは直径が約3マイクロメートル(0・003ミリ)のマイクロバブル。これは毛穴のサイズよりも小さいので、これを発生させた湯に浸かっていると、超微細な泡が毛穴の中にまで入りこみ、毛穴の奥に付着した汚れまで浮き上がらせ、引き出してくれる。つまり、「マイクロバブルトルネード」を設置すれば、「バスタブに浸かっているだけで体がきれいになる」のだ。毛穴の奥に潜む汚れや、余剰な分泌物、老廃物をきれいに取り除くことから、加齢臭などの悩みも解決できるし、美容業界でも近年、「毛穴(ポアーズ)の汚れを取る」ことは大きな関心事になっている。

また、保温性も高まるので、入浴後、いつまでも体がポカポカして冷めないという、温泉のような効果も楽しめる。日本の女性には冷え性が多い。冷え性は万病の元とも言われ、つらい思いをしている人も少なくない。「マイクロバブルトルネード」は、そういう人たちにとっても光明となるだろう。

ちなみに「マイクロバブルトルネード」は、一般社団法人ファインバブル産業会(FBIA)が定めたファインバブル製品の登録制度規格の、認証登録第1号という栄誉にも輝いている。

また、サイエンスでは、同じく超微細な泡を応用した製品「ナノシャワー」も開発している。「ナノシャワー」には、洗浄・温浴効果に加えて、保水性能があることが、第三者機関の実験により科学的に検証されている。

青山氏の水に対する情熱は、これだけでは収まらない。飲料水はもちろん、調理や風呂に使う水など、家庭内で使うすべての水をクリーンで美と健康によい水に変えるセントラル浄活水装置「ウォーターシステム」も扱っている。「ウォーターシステム」を使うと、家中の水が安心・安全なおいしい水に変わる。しかも、ミネラルウォーターに比べて格段のコストダウンも図れるのだ。

サイエンスは「生活に関わる水ビジネス」を展開する企業として2007年8月に創業。青山氏を取締役会長に、水上康洋氏を代表取締役社長に据え、現在は「ウォーターシステム」「マイクロバブルトルネード」「ナノシャワー」の3つの技術を、新たな時代の水技術として提案。いまでは大手ハウスメーカーまでもが標準仕様として積極的に採用するようになっている。さらに、ベイシェラトンなどのホテルや、老人介護施設、エステサロンなどへの導入も、加速度的に増えている。

その結果、サイエンスは急成長を遂げ、創業以来、毎年、増収増益というめざましい成長カーブを描いている。

2015年には、注文住宅事業にも駒を進めている。サイエンスが提唱する住宅は、健康・快適・美容・安心・安全の「5つ」を満たす、その名も「5つ星の家」。もちろん、「ウォーターシステム」「マイクロバブルトルネード」「ナノシャワー」は標準装備だ。

*  *  *  *  *

本書では、青山氏が展開している「マイクロバブルトルネード」を核に、革新的な3つの技術について詳しく紹介するとともに、熱血経営者・青山恭明氏の素顔も紹介したいと思っている。

現在56歳の青山氏は、自ら「水商売一本やりですわ」と大笑する。その言葉どおり、これまで一貫して、生活水に関わる事業を展開してきた。その歩みはけっして平坦なものではなく、ときには窮地に追いこまれたこともあったようだ。

だが、青山氏には不思議な「何か」がついているのだ。青山氏自身は、実家が寺だということから「仏縁」「仏の加護」と言っているが、いわゆる「人徳」と言ったほうがわかりやすいだろう。

青山氏は、とにかく熱い。そのうえ人情家で、どんな場合も人としての誠を尽くす。その人柄は、そのまま強力な求心力となって、いろいろな人が「青山氏のためならば」と一肌脱ぐ。すると青山氏は、それを上回るような誠意を尽くす。その循環で、青山氏の人生は螺旋階段を進むように、一見、上がり下がりしていると見えながら、確実にステップアップしてきているのである。

事実、14年ぶりに再会した青山氏からは、一段も二段も階段を上がった、人としての大きな成長、成熟が感じられた。

たとえば、14年前の青山氏は「起業した以上、1日も早く上場企業になりたい」というのが口癖で、その言動からは「隠しきれない野心」が感じられたものだ。むろん、起業家として、そうした意欲や野心を持つことは、けっして悪いことではない。

ところが今回会ってみると、そうした野心は影を潜め、「本当に人のため、社会のためになる製品を広め、1人でも多くの人の健康、美、幸福のためにお役に立ちたい」という真剣な思いが、ひたひたと伝わってきたのである。それが心底、本音であることは、400人以上の経営者を取材し、執筆してきた私には、よくわかる。

14年前の青山氏にあった、人としての大きさ、力強さに加えて、現在の青山氏には、人間的な深さ、包容力、力強さに勝るしなやかさがある。そして何よりも、まるで太陽のような、とてつもない明るさ、やさしさ、温かさが感じられるのだ。

こういう心境に至った経営者は、理屈では説明しきれないパワーを得る。時代が背中を押し、社会が応援してくれる。

本書では、青山氏の経営理念、人生哲学に加えて、そうした青山氏の人となりにも筆を伸ばしていく。したがって、経営書としてだけでなく、「人生を、どう生きたらいいのか」という、誰もが持つ悩みの解決を示す書としても読んでいただけると自負している。そうした意味から、本書を人生の成長の書として、愛読書の1冊に加えていただければ、著者としてこれ以上の喜びはない。

なお、本文中の一部の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断わりしておく。

 2016年3月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第1章 入浴革命が始まった!

「すごい」「すご~い!」という声があがる不思議なお風呂
入浴の常識が180度変わる!
小さな泡の驚異の効果
毛穴の奥深いところの汚れまで取れる洗浄効果
なぜ洗わなくても毛穴の奥の汚れが取れるのか
肌を傷める原因になる「こすり洗い」はもう不要
肌荒れ、敏感肌、アトピー肌の方にも喜ばれた
もう「お父さん、臭いから嫌い!」と言わせない
毎日が温泉気分、体の芯から温まる温浴効果
「冷え」と「健康」
心を癒やすゆらぎ効果、やさしい水流効果も満喫できる
九州大学名誉教授との共同研究・ジェット入浴の心身への効果
音や振動にうるさいマンションでも設置可能
第二の入浴革命「ナノシャワー」
科学的に証明された「ナノシャワー」の洗浄力
肌がしっとり潤う保湿性能と温浴作用
シャワーであればこその洗浄力
いま使っているシャワーが、そのまま「ナノシャワー」になる
地球視点で開発された、驚異の節水効果


第2章 夢の入浴装置「マイクロバブルトルネード」が誕生するまで

マイクロバブルのニュースを見ていて、ひらめいた
「必ず夢のお風呂を実現する」という固い決意
「ひらめき」がかたちになるまで
泡の技術者・平江との運命的な出会い
「マイクロバブルトルネード」開発の裏側
夢の入浴の進化版「マイクロバブルトルネード」
他のメーカーが追随できない技術
「どの浴槽にも取り付けられる」が第二のブレイクポイントに
「ナノシャワー」の誕生まで
平江、サイエンスへ入社
「マイクロバブルトルネード」の市場展開
美容院、エステサロン、介護施設……、広がる導入先
全国に支店網を展開。代理店支援・教育のために本社も拡充
売り上げを大きく牽引したテレビCМ
「マイクロバブルトルネード」入浴を満喫―利用者からの喜びの声


第3章 家中の水をすべて浄活水化・水を変える「ウォーターシステム」

水が変わると、生活すべてが変わる
子どもの塩素系アトピーから、生涯を生活水改善に捧げると決意
脱塩素シャワーを開発したが……
水道水に含まれている塩素は、ある意味「必要悪」
残留塩素はこれだけ体に悪い
シャワーでは、より多くの残留塩素に体がさらされる
だったら、家中の水を浄活水化してしまおう
サイエンスの浄活水器「ウォーターシステム」はここが違う
「ウォーターシステム」の水は天然水よりも天然水?
「たからの水」と「LUIC PROJECT」
カートリッジ1本でペットボトル2500万円分の水を浄化
水が変わると、暮らしが変わる


第4章 一騎当千のプロ集団・サイエンスを支える精鋭部隊

創業10年、目を見張る躍進を続けるサイエンス
陣頭指揮をとる青山の熱いキャラクター
タカラレーベン・島田社長への恩義
さらに強まるタカラレーベンとサイエンスの絆
ビジネスに欠かせない最高の女房役
青山のおかげで人間改革ができた
違うと思ったときは、はっきり言うからこそ、長く続いてきた
たくましく育ちつつある若き侍たち
安定+不完全燃焼より、未完成+完全燃焼を選んだ山形
心底から生きがいを感じる生き方を
代理店契約の4カ月後にはサイエンスの社員になっていた
部下をつぶす「クラッシャー」からの卒業
名古屋支店をとりしきる責任者へ
心技体の向上を教えこむ研修合宿
「します、やります、できます」サイエンス
社員の家族もサイエンスの一員
高校時代の初恋を貫く
20歳で身につけた営業の5原則
アメリカ留学で起業精神を学ぶ
白血病で死線をさまよった次女の侑加さん
感謝、感謝の般若心経
新しい生活提案の場「5つ星の生活」
新プロジェクトを担う新スタッフたち
「5つ星祭り」で地元に溶けこむ
創業10年、毎年増収増益の記録を更新中


第5章 ファインバブルの可能性とサイエンスの未来

ファインバブル産業会認証登録制度第1号
厳しい審査基準をクリアした認証登録の意義
マイクロバブルはミラクルバブル
ファインバブルの効果と青山のひらめき
ファインバブルの用途は無限大?
世界の市場規模は12兆円超、日本はそのトップランナー
日本主導で国際標準化を推進
国主導の超ビッグプロジェクトが動きだす可能性も
25年後のサイエンスを描いた『プロジェクトX』
国内外に20社のグループ企業に成長する


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2017/06/19

『東北の小さな大企業』 前書きと目次

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東北の小さな大企業
 ~圧倒的な技術と品質で世界の医薬品業界に挑む~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-434-1
初版発行:2017年6月19日
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 はじめに

内憂外患。この言葉は、近年の日本にぴったりとあてはまる。

資源は乏しく、人口は多い日本。しかし国民は、優れた製造技術でモノづくりに励み、ほどほどの豊かさを甘受してきた。だが、近年、そうした成功モデルは過去のものとなり、世界における日本の存在感は急勾配で下がってきている。

今後の日本は、どのようにして活路を開いていけばいいのか。

そんな思いにとらわれるときに、ふと脳裏に浮かんでくるのが、日新製薬株式会社と、この企業を率いる代表取締役の大石俊樹氏のことだ。

日新製薬は、山形県天童市に本社をおく、ジェネリック医薬品のメーカーである。売上高は約300億円弱(販売会社の日新薬品株式会社との合算)で、現段階では中堅クラスのメーカーと言うべきだろう。

注目すべきは、その成長力と、そのパワーの源となっている、常に前を見つめて進む大石氏の、ぶれのない強固で誠実な精神性である。

実は私は、2012年にも日新製薬に関する著書を上梓している。当時の日新製薬は、売上高は143億円で、従業員数は700人だった。それが現在では、売上高は約300億円と、わずか5年のあいだに約2倍に成長を遂げ、従業員数も約1000人となっている。

同じ「売上高2倍」でも、売上高143億円を300億円にするのには、10億円を20億円にするのとは比べものにならないほどのパワーが必要だ。大石氏はそれを、まるであらかじめ敷かれていたレールを進んでいくように、淡々と、余裕に満ちた構えで実現してしまったのである。

あらためて説明する必要もないだろうが、ジェネリック医薬品とは、特許切れの医薬品の処方をもとに、飲みやすさなどの使用性を高めて製造された後発医薬品を言う。その最大の特徴は、新薬を世に出す場合と比べて、開発コストが圧倒的に低く、医療関係者に説明するための営業コストもかからないため、コストパフォーマンスが抜群によいことだ。そのため、高齢化の進展とともに医療費が拡大するばかりの先進国では、医療コストの引き下げに貢献する大きな力となり、医療費の高騰により高度な先進医療の恩恵にあずかれない人々にとっては、リーズナブルなコストで医療を受けられるという大きな恵みとなっている。

日新製薬は、このジェネリック医薬品のメーカーとして、ある意味で「日本一」と言われているメーカーである。

ここで疑問を持たれた方もいるだろう。たしかに売上高だけを見れば、日本国内にも日新製薬をしのぐ企業が何社もある。それでも日新製薬が「日本一」だと称されるのは、日新製薬がつくる製品のクオリティの高さと、そのクオリティを生み出すバックグラウンド体制ゆえである。特に製造工程では、大手ジェネリック医薬品メーカーがうなるほどの最先端設備を完備している。

これらは、日新製薬を率いる大石氏が、

「ジェネリック医薬品は、絶対になくてはならない薬だ」

との信念のもとに、ジェネリック医薬品のクオリティアップに徹底的にこだわり、全力を注いできた成果にほかならない。

大石氏は、日新製薬がまだ地方の弱小メーカーにすぎなかったころから、製品の品質向上に惜しみなく力を注ぎ、そのための大胆な先行投資を積極的に行ってきた。次々と最新・最高の性能を持つ機械を導入し、新工場を建設していった、その決断力と勇気には、ただ脱帽するのみである。

たとえば、高出力の光を瞬間的に照射することでボトル内を滅菌する非加熱滅菌法「パルス光滅菌」を、世界で初めて医薬品製造で実現したのは日新製薬である。ほかにも、いくつもの「業界初」と言われる取り組みを実施してきた。

その結果、日新製薬には「日本で初めて」「日本一」という形容が枕詞のように冠せられてきた。最近では、それがさらに一段階上がり、「世界で初めて」「世界一」へと変わってきている。

また、日新製薬では、ジェネリック医薬品だけではなく、新薬メーカーの製造受託事業も展開している。前述のような、ジェネリック医薬品メーカーとしての製薬技術レベルの高さや、製品クオリティに対する高い評価により、受託事業も成長の一途をたどっている。受託企業は国内外50社以上を数え、しかも、そのリストには大手医薬品メーカーの名がずらりと並んでいる。

日新製薬は、いまや日本の医薬品製造市場になくてはならない存在となり、日本の医療を力強く支えていると評しても、けっして過大評価ではないだろう。その傑出した存在感は誰もが認めるところであり、これまで、中小企業研究センター主催の「グッドカンパニー大賞グランプリ」、日刊工業新聞社主催の「優秀経営者顕彰 地域社会貢献者賞」、山形県主催の「山形県産業賞」、公益社団法人発明協会主催の「山形県発明協会会長賞」など、さまざまな賞に輝いている。

「日本一」「世界一」に通じるこの戦略は、企業経営の成功は「先の利」にあるという大石氏の信条から生まれたものだ。

「常に視点を〝先〟に向ける」

大石氏は、これが大事だと言うのである。将来から現在を見れば、進むべき将来に向けて、いまたりないものは何か、何をたせば発展するかが見えてくる。それを他に先んじて導入していけば、「先の利」をおのずと手にすることができる。これが、将来の発展を確かなものにする、ほとんど唯一の道だというわけだ。

日本人にたりないのは、まさにこの精神なのではないだろうか。日本の産業は、ほとんどの分野で世界の第一線レベルにあるのだが、そこから先に出ようとしない。それどころか、後追いを繰り返し、その結果、最先端からおいていかれてしまうことがしばしばある。これが、かつては世界で1、2を争った日本経済の国際競争力を、世界で26位(国際経営開発研究所(IMD)「世界競争力ランキング2016」)にまで引き下げてしまった最大の要因なのではないだろうか。

また、日本が直面している数多くある課題のなかでも、最も深刻なのは、日本人の幸福度の低さではないか、と私は考えている。国連による「世界幸福度ランキング」によれば、日本人が感じている幸福度は世界51位(「世界幸福度報告書2017」)。さすがに考えこまざるをえない状況だ。

そんななかで大石氏は、「働く人の幸福度アップ」にも力を注いでいる。「自分の仕事に誇りを持てること」「人として充実感を持って生きていくこと」「家族や友人などとともに毎日を楽しむ時間を持てること」など、いわゆるワーク・ライフ・バランスの整備に、大石氏は以前から力を注いできた。

雇用に際しての男女平等は言うまでもなく、最近では企業内保育所の設置なども積極的に進め、女性が安心して出産し、育児中も無理なく働き続けられるしくみをつくるなど、次世代型の雇用環境づくりを着々と進めている。

現在、日新製薬の従業員の男女比率は、男性約51%、女性約49%と、ほぼ同等の割合だという。これは、医薬品メーカーとしては希有な数字だ。これまでは、営業職、開発職ともに、どうしても男性偏重にならざるをえないと考えられてきた業界であるからだ。

しかし日新製薬では、実力があれば男女を問わずに責任のあるポストを与えるという姿勢であり、課長相当以上の女性社員も18%超いるという。

こうした取り組みが評価され、2016年には「山形県ワーク・ライフ・バランス優良企業知事表彰」を受賞している。
また、こうした評価はリクルートにも反映され、いまや日新製薬には、東北では人気ナンバーワン企業として、就職希望者が殺到するそうだ。

となれば、必然的に有能な人材を確保できることになり、企業のパワーはさらに高まっていく。

最近では、仕事に追われ、仕事だけに埋没する人生では、人として満足できないという認識が高まってきているが、日新製薬では以前から、仕事だけでなく、個人としての日々が充実し、楽しいものでなければならないと考えてきた。そうした日々が仕事にも張りややる気をもたらし、結果として企業をより輝くものにしていくという好循環を形成していくのである。

地方創生も、現在の日本が抱える重要な課題だ。日新製薬は、奨学制度などを通じて地方の興隆にも大きく貢献しており、山形県子育て推進部から「山形いきいき子育て応援企業」の「優秀(ダイヤモンド)企業」の認定も受けている。

いまや日新製薬は、日本の医薬品市場においてのみではなく、山形県の地方創生の要となる企業としても、かけがえのない存在になっていると言ってよい。

その日新製薬を率いる大石氏にとって、今年(2017年)は、70歳の喜寿を迎える節目の年にあたる。

いまから四十数年前に、当時は従業員32名という小さな製薬会社を経営していた大石家に婿入りしたことを機に、それまで縁のなかった製薬業界に足を踏み入れ、いまでは山形県下でも指折り数えられる超優良企業に日新製薬を育てあげた。その軌跡を振り返るときに大石氏の胸に去来するのは、どんな思いだろうか。

本書では、主にこの5年間の日新製薬の発展の足跡をたどりながら、日新製薬を今日まで引っ張ってきた大石俊樹氏の企業理念や人生哲学に迫り、経営者・大石俊樹と人間・大石俊樹の実像を描き出したいと思っている。冒頭に記したように、それは、混迷のなかにある現在の日本が、より光ある将来へと歩を進めていくうえでの、確かな道標となると思うからだ。

同時に本書は、人として「真に充実し、幸福度の高い人生を生きる」ためには何を大事にすべきかをも指し示す、人生の指針となる書でもあると自負している。

なお、本文中の敬称は略させていただくことを、あらかじめお断りしておく。

 2017年5月  鶴蒔靖夫


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 はじめに


第1章 「先の利」経営の象徴・日新製薬荒谷工場

圧倒的なスケールと先端的な装備
最先端システムを誕生させるまで
最高のクオリティの固形剤を生み出す最高の設備
完全ペーパーレス化を実現
指示待ち人間がいなくなった
連日、システム見学希望者の来訪が絶えない工場
むだなくスムーズ、安全性や効率も抜群の生産ライン
固形剤、特にステロイド剤では国内トップ
「先の利」戦略で日新製薬を倍速で成長させてきた
ステップ・バイ・ステップで企業を成長させていく


第2章 ジェネリック医薬品に吹く追い風

人類の明日の宝・ジェネリック医薬品
欧米ではジェネリック医薬品を使うのはあたりまえ
ジェネリック医薬品使用促進の動き
目標値達成のためのロードマップ
ジェネリック医薬品メーカーの正念場
パテントクリフで医薬品市場のマップが変わる
ジェネリック医薬品メーカーが躍進する時代へ
世界のジェネリック医薬品市場動向
出遅れた日本のジェネリック医薬品メーカー
最後に勝つのは、正しいことをやってきたメーカーだ
医薬品受託製造というもうひとつの市場
委託企業には世界の超大手の名が並ぶ


第3章 「日本一」「世界一」がずらりと並ぶ企業

「大手だから安心」とは言えない時代 ❖ 78
世界で初めて医薬品製造に「パルス光滅菌技術」を採用 ❖ 80
夢で啓示を得たパルス光滅菌の採用 ❖ 82
日新製薬が独自に証明したパルス光滅菌の滅菌効果 ❖ 85
パルス光滅菌研究では世界をリード ❖ 87
クオリティ日本一のポリエチレンボトル注射剤 ❖ 92
想像以上の困難が待っていたポリエチレンボトル製造 ❖ 94
ついにクオリティ世界一の
ポリエチレンボトル入り注射剤の製造に成功 ❖ 97
気体の透過に対応するブリスター包装機を導入 ❖ 100
世界一のフルコンテインメントシステム ❖ 103
品質管理体制でも日本一のクオリティを実現 ❖ 106
社員の20%が品質管理に関する仕事に従事 ❖ 108
競合も太鼓判を押した
ジェネリック医薬品業界トップのソフトとハード ❖ 110
慶応義塾大学先端生命科学研究所との連携 ❖ 112
日新製薬の医薬品は、他より高くても売れる ❖ 114
どこにも負けない競争力 ❖ 117


第4章 大石俊樹の足跡Ⅰ

大石が「真の山形県人」になった日
東京都足立区で始まった俊樹の人生
優秀な頭脳と抜群の運動神経、文武両道の才能に恵まれて
ものごとの本質をつかみ、行間を読み取る能力
悪ガキだが、言うことは常に正論
教会の牧師を論破
学生運動が吹き荒れるなかでの大学生活
選んだ就職先は電気部品の商社
入社早々、長年の経理の「不明」を徹底追及
半導体営業でもめざましい結果を出す
「知恵の営業」で市場開拓
大組織のサラリーマンか、小企業の経営者か
経営者の道を選択。そして「廣川」から「大石」へ


第5章 大石俊樹の足跡Ⅱ

結婚後、すぐに日新製薬に入社
日新製薬の創設
あまりにも大きかったイメージギャップ
気息奄々状態から再生の道へ
潰れる会社を継ぐのも悪くはない
改善に取り組み、わずか1年で赤字を解消
錠剤製造へ進出
大手メーカーのデータの不備を看破
正しいことだけをやっていこう
わずか3年で日新製薬を再生
受託事業と自社製品の2つの車輪が回りだした
大石俊樹、代表取締役社長に就任
日本最先端のレベルの製薬を実現
突然、右腕をもぎ取られる
自社開発のオリジナル路線を進んでいくことを選択
化学者のプライドを貫いてくれ
俺を乗り越えて進んでいってほしい
社会に「なくてはならない会社」になる
「人」にも惜しまず積極投資
鶏が先か、卵が先か
多頭数戦略で市場を切り拓いていく
「生産拠点」と「人」それぞれの拡大路線を突き進む
川越工場の誕生とリスク分散
継続的に投資し、進化し続けていく


第6章 明日の日本を担う企業へ進化

東北で就職人気ナンバーワンの企業
増えてきた地元志向
全国に主要産業の本拠地が広がる欧米型発展をめざす
地方創生へ政府も本腰を入れ始めた
雇用拡大で地方創生に最大の貢献
結婚できる給与水準
徹底的な教育で、従業員の質をさらに高める
従業員一人ひとりが充実した人生を送ってほしい
女性のキャリア形成ができない国・日本
日新製薬の「女性が働きやすい会社指標」
地域ナンバーワン企業を証明する数々の受賞歴
スケールアップする地元への貢献
企業存続のために、次世代へ襷をつなぐ
より高いところから経営を俯瞰し日本経済と日本社会を引っ張っていく
日本のジェネリック医薬品を世界にアピールする


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