進化するコインパーキング

2017/06/19

『進化するコインパーキング』 前書きと目次

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進化するコインパーキング
 ~ユーザーファーストで実現する安心・安全・快適な駐車場ネットワーク~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-431-0
初版発行:2017年2月25日
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 はじめに

無人のクルマが公道を走る─。

そんな完全自動運転の世界が現実味を帯びてきた。

近年、世界の自動車メーカーやIT企業などが、自動運転をめぐって熾烈な技術開発競争を繰り広げている。国内の自動車メーカーもこぞって開発を加速させており、政府も、2020年の東京オリンピック・パラリンピックにおける自動走行のクルマによる移動サービスの実現や、高速道路での自動運転の実用化に向けて、取り組みを活発化させている。

自動運転車では、ドライバーはハンドルを握る必要もなく、アクセルやブレーキも踏まなくていい。一般道路での自動運転の実用化には、法整備をはじめ、まだ課題も数多く残されているが、完全自動運転が実現し、人が運転操作を行わなくても安全に目的地へ着けるようになったときには、もはや運転免許は必要なくなり、老若男女、誰もがクルマを利用できるようになるだろう。

昨今、高齢ドライバーによる事故が多発し、75歳以上の高齢者に免許の返納を促す動きがあるが、自動運転車が実用化されれば、免許を返納した高齢者も、便利な移動手段としてクルマを利用できる。

21世紀の産業革命とも言われる自動運転は、利用者に安全や利便性をもたらすだけでなく、社会のあり方や人とクルマの関係そのものを一変させることになるのは間違いない。

ドアツードアの移動が可能なクルマは、本来、いちばん便利な移動手段であるはずだった。しかし都市部では、渋滞に巻きこまれてしまうと時間が読めなくなり、また、駐車する場所も非常に少ないことを考えあわせると、電車などの公共交通機関を利用したほうが確実ということになる。

もし、自動運転システムにより、クルマでの移動を阻害する要因が解決できるとなれば、やはりクルマほど便利なものはないのではないだろうか。

公共交通機関は、近年はエスカレーターやエレベーター、スロープなどの設置が進んでいるが、それでも完全にバリアフリー化されているとは言えず、また、人混みのなかでの移動や乗り換えを余儀なくされることもあり、高齢者や障がい者などにとっては肉体的負担も大きい。そうした点からも、とりわけ日本のような超高齢社会にあっては、自動運転車への期待がますます高まりそうだ。

それに、自動運転車での移動の際は、駐車場は必ずしも目的地の近くである必要はなくなるだろう。

これまでは、クルマを停める場所は一般的に目的地から半径約200メートルの範囲が目安とされていたが、自動運転車なら、自分は目的地で降りて、クルマだけを無人で駐車場に向かわせれば、1キロくらい離れた駐車場でもOKということになる。帰るときには、目的地でクルマを呼び戻せば、駐車場から無人運転で目の前に来るので、そこで乗りこめばいい。

将来的に自動運転車が普及すれば、クルマは純粋に移動手段としてとらえられるようになるだろう。そうなったときには、住宅街の狭い道路でも難なく走れるよう、コンパクト化が進むことも考えられる。

また、クルマを自分で所有せず、必要なときだけカーシェアリングを利用するという人も、これまで以上に増えるのではないだろうか。自動運転車なら、シェアリングステーションまで出かけていかなくても、予約した時間に自宅や自分のいる場所までクルマが自動で運転してきて、利用後も自動運転で戻っていく。

自動運転の実現によりカーシェアリングの市場が拡大すれば、若者のクルマの購入離れにはいちだんと拍車がかかるかもしれない。しかし、便利な移動手段として、高齢者などを中心に、クルマの利用そのものは増えるはずだ。それに伴い、駐車場はますます必要になってくる。

都市部では、現状でも、クルマの数に比べて駐車場の数が絶対的に不足している。ある調査によると、三大都市圏(首都圏・中京圏・関西圏)における目的地での駐車場需要は2300万台近くにのぼるのに対し、供給されている駐車場数は700万台ほどと推定され、3分の1にも満たないのである。

慢性的な駐車場不足を背景に、企業や団体、個人が保有する遊休地を活用したコインパーキングの市場が年々拡大しているのに加え、昨今は、空いている駐車スペースの貸し借りをインターネット上で仲介する、駐車場のシェアリングサービスも登場している。

繁華街や観光地などでは、空いている駐車場を探すのもひと苦労で、ドライバーにとってはそれがストレスになり、クルマでの外出を躊躇する一因にもなっていた。そこに着目したのが駐車場のシェアリングサービスだ。月極駐車場やマンション内の空き駐車場、利用のない休日のオフィスビルの駐車場、個人宅の駐車スペースなど、使われていない駐車スペースを一時的に借りられるサービスで、スマートフォンやパソコンで事前予約できるのが大きな特徴だ。

自動運転が普及すれば、こうした空きスペースの活用が、駐車場需要の受け皿になっていくことも十分考えられる。

自動運転技術の開発により自動車業界が歴史的転換期を迎えつつある一方で、コインパーキングをはじめとする駐車場業界においても、一種の革命が起きつつある。

コインパーキングといえば、これまではロック板の設置により車室(駐車スペース)への出入りを管理するのが一般的だった。

しかし、このロック板がくせもので、クルマのホイールやタイヤを傷つけたり、人がつまずいて転倒するといった事故も少なくない。さらには、停電の際には出庫できないといったトラブルも発生していた。また、運転に自信がなかったり、車庫入れが苦手なドライバーにとっては、ロック板の存在自体が、技術的にも心理的にも負担になる。

こうしたロック板に関する種々の問題を解決するのが、ロック板のないロックレス駐車場だ。そして、そのシステムを他社に先駆けて開発し、製造・販売することで着実に業績を伸ばしているのが、本書で紹介する株式会社アイテック(本社:東京都文京区、代表取締役:一ノ瀬啓介氏)なのである。

アイテックの創業は1994年7月。精密機器メーカーの技術者だった一ノ瀬啓介氏が、45歳のときに、たった1人で起業した。そして、新たな事業として選んだのが、駐車場設備機器開発の受託だった。

1997年9月には前身の株式会社イチノセを設立して法人組織となり、2000年に受託先との契約が切れたのを機に、翌2001年7月には商号をアイテックに変更するとともに、自社ブランド製品の開発に乗りだした。

以来、クルマの入出庫、発券、料金の精算などを効率的に行うためのシステムを次々に開発。ロック板の上げ下げや精算機の料金設定などを遠隔操作できるしくみも導入したが、一ノ瀬氏としては「他社と決定的に違うものをつくりたい」と思っていた。

そんな折、運転免許を取得したばかりの娘が発したひと言が、一ノ瀬氏の心をとらえたのである。

「ロック板があるとクルマが入れにくいし、降りるときもヒールをひっかけてしまう」

その言葉にヒントを得て、さっそく「ロック板のない駐車場システム」の開発に取りかかることにした。

およそ5年の歳月をかけて完成させたロックレス駐車場システムは、常識にとらわれない、まったく新しい発想によるものだった。そのしくみは、駐車場内に車両ナンバーを読み取るカメラを内蔵したポールと監視カメラを設置し、車両の出入りを検知するセンサーをアスファルトに埋設する、そしてクルマが駐車場に入ってきたらカメラが車両ナンバーを読み取り、それをインターネット回線を通してアイテックのデータセンターに記録することで不正出庫を防ぐ、というものだ。

ロック板がないと、料金を精算せずに出庫してしまうケースが増えるのではないかと思いがちで、それが多くの駐車場経営者にとっても懸念材料であるのだが、一ノ瀬氏によると、実はそうではないらしい。

「実際のところ、ロック板のない駐車場のほうが、むしろ不正出庫は少ないのです。高速道路でも、スピードを監視するカメラがあることがわかると、誰でも減速しますよね。あれと同じで、人はカメラの前ではあまり不正はしないものです」

実際、ロック板を設置した駐車場の不正出庫率が1%程度であるのに対し、ロックレス駐車場では0・4%と、大幅に低くなるのだという。

ロック板というものは、要は不正出庫を食い止め、きちんと料金を払ってもらうためのものであって、不正を働く人がいないのであれば、本来は不要なものなのかもしれない。これはつまり、善良な利用者に不便を強いていると言えなくもない。

その点、高感度カメラを設置したロックレス駐車場は、本当に不正を働く人にだけ有効に作用し、善良な利用者はストレスを感じることなく快適に利用できる。利用者のことを第一に考えるのなら、これが本来の駐車場サービスのあり方なのかもしれない。

アイテックのロックレス駐車場システムは、2010年2月の発売以来、たちまち評判を呼び、2016年9月末時点で販売累計は1903現場、1万9450車室に達している。

いまでは他社もロックレス方式を手がけるようになったが、コインパーキングの市場全体では、いまなおロック板方式が圧倒的で、ロックレス方式の専有率は全車室の2~3%にすぎず、まだ端緒についたばかりだ。本格的な普及に向けてはこれからが本番だが、

「一度ロックレス駐車場の快適性を体験していただければ、必ずやファンになっていただけると思います」

と、一ノ瀬氏は自信のほどをのぞかせる。

ロックレス駐車場システムを完成させたあとも、アイテックは利用者にとっての利便性と快適性を追求するべく、技術開発の手を緩めることはない。

各駐車場の対応精算機とデータセンターをインターネット回線でつなぎ、さまざまな情報の収集と管理を行うグローバル・ネットワークシステムを構築。これにより、キャッシュレス決済や利用ポイントごとのサービスの提供が可能になり、精算機に行かなくても車内にいながらにしてスマートフォンで料金精算もできるようになっている。

ロックレス駐車場システムの開発にとどまらず、いち早く駐車場のネットワーク化を進め、データセンターなどのインフラを整備していることがアイテックの強みでもある。今後も、このネットワークを活用し、サービスの差異を出していくことで、さらなる顧客獲得につなげたい考えだ。2017年3月には、コインパーキングで初めての予約システムもリリースされる。

カーシェアリングの普及や自動運転の技術開発など、クルマを取り巻く環境が大きく変わろうとしているが、クルマが人々にとって身近で便利な移動手段であることに変わりはない。

そしてクルマは、動いたからには必ず停める場所が必要であるため、今後もコインパーキングの需要は着実に増えると見込まれる。

本書は、独自の技術でコインパーキングの質の向上に貢献し続けるアイテックの事業活動を紹介するとともに、同社の創業者にして代表取締役である一ノ瀬啓介氏の経営理念と人生哲学に迫るものである。

ご一読いただき、駐車場運営事業者や駐車場の土地オーナーなど、駐車場ビジネスに関わる方々が、利用者に選ばれるコインパーキングのあり方を考えるうえでの一助となれば、これに勝る喜びはない。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

  2017年1月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第1章 コインパーキング市場の現状と課題

全国に広がる24時間制の無人時間貸し駐車場
5兆円とも見込まれるパーキング関連の市場規模
慢性的な不足が続く大都市の駐車場事情
コインパーキングは世界に誇る日本の文化
既存駐車場のコインパーキング化
コインパーキングの主流はロック板方式とゲート方式
コインパーキングにおけるトラブル
施設の第一印象は玄関である駐車場で決まる
利用者に選ばれるのは停めやすい駐車場
ITの活用で駐車場業界にも押し寄せる変革の波


第2章 独自の技術でコインパーキングを革新するアイテック

ロックレス駐車場システムのパイオニアとして
大手駐車場機器メーカーの受託開発からスタート
独自のアイデアと技術で駐車場のIT化を推進
技術力で駐車場利用者をトラブルから救う
開発の基本姿勢はユーザーファースト
ナンバー認証システムによるロックレス駐車場
店舗型駐車場でロックレス駐車場が急増中
QT‐netが提供する多彩なサービス
駐車場事業のA to Z、それ以上を提供


第3章 ネットワークを基盤にしたロックレス駐車場

IT技術を駆使した理想的な駐車場を実現
ロック板に関するトラブルを一気に解消
駐車場運営会社の営業活動にもプラス効果
駐車場納入実績の6割がロックレス
ロックレス駐車場はIT技術の裏付けがあって成り立つ
グローバル・ネットワークシステムを構築
支払い手段の多様化に対応してキャッシュレスを実現
カメラユニットもすべて自社で開発
進化し続けるナンバー認証システム
多様化するQT‐net倶楽部会員向けサービス
業界初のPCIDSS完全準拠の認定取得
駐車場ネットワークで広がる可能性


第4章 創業社長・一ノ瀬啓介の経営理念と人生哲学

機械いじりが好きだった少年時代
大学で電子工学を学び、精工舎に入社
システム部門でネットワークの開発に携わる
「定年のない仕事をしたい」と希望退職に応じる
駐車場設備機器の受託開発から自社ブランドメーカーへ
学究肌で、人を引きつける力の持ち主
自社ブランド第1号を銀行系列の駐車場に納入
納入後のメンテナンスまで責任を持って対応
数値目標ではなく、いかに魅力的な商品をつくるか
人材育成では社員の自発性を尊重
「やればできる」との強い信念が人を動かす
「1%のひらめきと99%の努力」


第5章 アイテックが描く駐車場の未来

コインパーキングの事前予約を実現
ロックレス駐車場の普及でクルマを使った犯罪はなくなる!?
情報の一元化が進み、駐車場の利便性がいちだんと向上
自動運転のクルマが市街地を走る時代に
自動運転で駐車場の利用可能エリアが拡大
一元管理が進む近未来の駐車場


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