“本気”になったら「大原」

2017/06/19

『“本気”になったら「大原」』 前書きと目次

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“本気”になったら「大原」
 ~「資格」から始まるキャリアアップへの道~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-432-7
初版発行:2017年3月7日
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 はじめに

現在、教育に関する議論が盛んに行われている。知識や偏差値に偏重し、生きる力や社会的自立をする力が弱まっているなかで、「教育」が持つ力をもういちど取り戻そうという提言が、あちこちでなされている。

「教育」という営みには本来、子どもや若者を「自立したひとりの人間」に育てあげていくという役割がある。しかし、偏差値が進路を計るものさしとして使われるようになってからは、学力のみに関心が向けられる傾向が強くなってきた。

ひとりの人間が、自立した社会人や職業人となって社会的責任を果たし、他の人々と協力して生きていくためには、確かな学力だけではなく、実社会のなかで生活するための基礎的な力、いわゆる「人間力」を身につけていくことも欠かせない。

人間力とは、「社会を構成し運営するとともに、自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力」と定義される(内閣府「人間力戦略研究会報告書」より)。

この人間力の育成が不十分なために起きている問題が、ニートやひきこもり、フリーターといった、社会に居場所を見つけられない若者の増加である。しかし、その原因を個人的なものととらえてしまうだけでは、なんの解決にもならない。教育、人材育成、雇用など、社会システムの問題としてとらえたうえで対策を打つことが必要なのである。

そのひとつが、国が数年前から力を入れて推進しようとしている、子ども時代からの「キャリア教育・職業教育」の実践である。キャリア教育とは「社会の中で自分の役割を果たしながら、自分らしい生き方を実践していく」ことであり(文部科学省「キャリア教育・職業教育特別部会(第30回) 配付資料」より)、そのために、自立した職業人をめざした教育を持続的に行う道を、国と行政は模索しているのだ。

いまの学校教育は、学力のみが重視されるあまり、社会的自立や職業的自立を育成する方法が定まらない状態が続いている。

たとえば進路指導は、学生が、自分が将来どのような人間になり、どう生きていくことが望ましいかという、長期的展望に立って物事を考えられるように指導する、というのが本来のあり方であるが、現実は、単に学力レベルに応じた安易な進路決定を行うケースが少なくない。そのためか、高校卒業までに職業を意識したことがないと答える大学1年生が3割にのぼっているという。若者たちのこうした「社会的な自立」の希薄さが、ニートやひきこもりなどを生み出す要因になっていることは否めないだろう。

大学教育のあり方も、見なおすべき時にきている。実際、「学校から社会・職業への移行」が円滑に行われるために、学術本位から職業教育重視に転換すべきだという意見が、各方面から発信されている。学力偏重教育の弊害を経験した私たちは、いまこそ教育の力で、社会的役割を果たす自立的な若者を育てていかなければならない。

こうしたなかで今回、学校法人大原学園と縁ができ、その全体像を取材することができたのは、とても意義あることだった。

大原学園といえば、実学系専門教育機関の第一人者として全国各地で教育活動を展開している、専門学校の雄である。グループ関連校も含めて全国の大原学園に通う学生は約2万人、「社会人講座」の受講生は延べ10万人を数える。「資格の大原」「就職の大原」というキャッチコピーは、専門学校に少しでも関心のある人にはなじみがあるだろう。

大原学園が提供している資格講座は、実に多種多様だ。大原学園で学んで資格を取得し、人生のキャリアアップをはかった多くの人材が、全国各地で活躍している。特に税理士の合格者占有率はトップレベルが続き、簿記・会計系では圧倒的な実績を誇っている。

大原学園は、万全の教育体制を整えて、若者たちに門戸を開いているが、そのカリキュラムは、けっしてたやすいものではない。たとえば、高卒生を中心とした「公認会計士・税理士コース」では、学生たちは、入学したとたんに2カ月後に迫る検定試験で日商簿記2級検定に合格することを課せられ、それこそ朝から晩まで簿記漬けの日々を送ることになる。彼らにとっては、おそらく人生で初めての、頭に汗をかく体験だろう。

しかし、それこそが大原学園側の狙いである。学習の楽しさと厳しさの両方が凝縮された時間を実感をもって体験することで、ゆるんだ心身を筋肉質に変えていくのだ。そして2カ月後、検定に合格した彼らは、初めての成功体験に歓喜し、同時に「やればできる」という自信を獲得する。これを教育課程の第一段階として、その後も一段ずつ階段を上がるように学生たちを「自覚ある社会人」に育てあげていくのが、大原学園独自の教育ストーリーなのである。

その最終目標は「幸せな就職」だ。これは、「正社員」「マッチング」「仕事力」の3つの条件をみたした就職のことを言う。

それを実現させるのは、大原学園と各企業との緊密な連携体制である。一社一社のニーズを的確に把握し、一人ひとりの学生の適性と企業のニーズをピンポイントで合致させる、大原学園の工夫と判断からは、職人技という言葉も浮かんでくるほどだ。

学生の内定が決まると、個々の職種に合った訓練を徹底して行い、入社後も本人と会社双方へのフォローを続けることで、次年度の就職活動をさらに有利なものに導いていく。こうしたきめ細かなキャリアサポート体制により、大原学園の就職率は、毎年高い数値が続いている。ちなみに2016年度は98・9%だった。

こうした実績を生み出す核となっているのが「人格育成教育」である。

大原学園は、学生生活のひとこまひとこまを、人格を磨く場面ととらえている。担任の教師が学生一人ひとりの特徴をつかみ、言葉遣いや立ち居振る舞い、身だしなみなど、社会人としての常識を、日々の生活のなかできめ細かく指導し、身につけさせる。

コミュニケーション能力や協調性、自己管理能力など、職業人として欠かせない要素は、イベントやクラブ活動を通して育成していく。特に年に1度開催されるスポーツフェスティバルは、組織の一員として活動することの醍醐味と厳しさの両方を学生が体験できるイベントとなっている。大原学園の職業教育の支柱は、学生たちに何度も脱皮を促す、このような人格育成教育にあるのだ。

こうして2年間鍛えられた学生たちは、知識と技能、そして自覚と責任を持った個人として、社会に出ていくのである。

これは、キャリア教育・職業教育の意味する「社会の中で自分の役割を果たしながら、自分らしい生き方を実践していく」ことそのものではないだろうか。

ニートやひきこもりを経験した者が大原学園で学生生活を送り、その後、実社会へ進んだというケースも多いという。こういう話を聞くと、職業教育とは人材教育にほかならないことを、あらためて認識させられる。若者の持つ可能性を刺激して、自らで自らの人生を築いていこうとする人間に育てる、この教育のあり方こそ、いまの社会が必要としているものだろう。

取材で話を聞いた大原学園の教員たちも、みな「ほんの少しのきっかけさえあれば、学生たちは見違えるように変わっていく」と語ってくれた。

大原学園が誕生したのは1957年。今年(2017年)で創立60周年を迎える。創立者の武市春男氏は、資金も後ろ盾も持たないなか、商業教育復興への使命感を燃やして「大原簿記学校」を開校した。その熱意は周囲の人々の心にも火をつけ、古い建物一戸だった大原簿記学校を、全国展開するまでに成長させていった。武市氏の唱えた「感奮興起」は、現在は校訓となって、その精神は脈々と受け継がれている。

現在の理事長の安部辰志氏は4代目である。ひょんなことから大原学園に受講生として入学してから44年。その後、大原学園の講師へ、さらには大原学園を支える主要なメンバーとなって、さまざまなアイデアで大原学園を改革し、いまの「大原学園」というブランドをつくりあげた功労者のひとりである。2007年に理事長に就任してからは、全国展開を推進し、地域活性化の要としての大原学園の存在感を高めていった。不登校児の救済のために通学型通信制高校を開いた際の奮闘ぶりは、教育の力を信じる安部氏の心意気を伝える物語だと言える。

本書は、教育と人間の熱い物語が展開される一冊である。また、現在変革の渦中にある大学教育に関しても詳しく語った。職業と教育、およびそれを形成する人間の物語に関心のある方に手にとってもらうことを願う次第だ。本書により、職業教育の意義が理解され、ひとりでも多くの若者が未来を築くきっかけとなれば、望外の喜びである。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

  2017年1月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第1章 変わる専門学校の位置と役割

国が示した「教育機関」としての専門学校の重要性
2014年から始まった「職業実践専門課程」
実学の雄・学校法人大原学園
教育施設と位置づけられている非一条校
専門学校とは正式には専修学校専門課程のこと
大学全入時代のなかで
もっと社会的ニーズを見すえた実践的な訓練を
大学は高度職業訓練校に?
幼児期からのキャリア教育が必要に


第2章 最先端の職業教育を展開する独自の教育システム

大原学園の校訓は「感奮興起」
「専門課程」に設置された多彩なコース
「三段階教育法」を経て「幸せな就職」につなげる教育ストーリー
その後の人生も支える、やればできるの「成功体験期」
人間性の育成もめざす「専門学習期・実践期」
専門性学習の総まとめとなる「入社準備期」
最終目標の「幸せな就職」とは
一人ひとりの個性を踏まえた徹底指導
企業からの揺るぎない信頼が続く秘訣とは
大学と専門学校の違い
人気が高い公務員コース
可能性を広げる各種制度
確かなスキルアップを実現する「社会人講座」
資格の持つ意味とは

 《幸せな就職のために─現場、就職部、企業の密な連携/理事 堤敦》


第3章 地方を支える人材を資格と人格の両面で育成

スポーツフェスティバルを通してコミュニケーションの真髄を知る
弱いところを補いあって生きていく
優れた人間性を養うことを目的として行う教育
潜在能力を引き出し、チームワークを身につけるAOCC
世界に通用する人間性を育てるヨーロッパ研修
頭だけでなく行動も言葉も身につけて
ニートやひきこもりの解消に向けて
若者の再生を第三の事業の柱に
国が描くキャリア教育・職業教育とは
さまざまな個性を持った生徒が集まる通信制高等学校
地方の人材育成をめざし、地方都市へ進出
地方に眠る分厚い中間層を掘り起こせ
磨けば光る原石


第4章 大学か大原か─大学の専門学校化

大学における実学を提唱
大学の特徴と大原学園(専門学校)の特徴
G型大学とL型大学
実学の重要性を強く訴える
2019年の開設をめざす「専門職業大学」とは
大学からの講座の依頼
大学と専門学校のクロスオーバー
実務の幅を広く深くさせる、大原大学院大学での学び
「大学より専門学校へ」という現状が語るもの
専門学校と連携する日本語学校も

 《専門学校は社会に出る前の学校として機能する/副理事長 西原申介》


第5章 「感奮興起」─大原学園60年の歩み

専門学校のパイオニア
なんとしても日本に新時代の実学の学校を
10年に及ぶ、どん底の苦闘
経営はどん底だが、教育の中身はますます充実
いつか必ず大原の時代を
念願だった新校舎が完成
熱心な勧誘に負けて大原に
講師陣の充実で「税理士は大原」の名を確かなものに
大原簿記学校の起源と、受け継がれた精神
専修学校専門課程設置の認可を受ける
学校法人大原学園の誕生
3代目理事長の久保富美夫が築いた「授業に厳しい大原」の姿勢
ナンバーワンをめざすなら全国展開を
苦難を超えて大原学園高等学校設立、教育にかける安部の執念


第6章 教育産業の未来に向けて

山形校の開校でひとつの区切りに
ホテル・トラベル分野とアニメ・声優分野の新しい学校も
これからは「大原」の名にこだわらない
オンライン講座の台頭
女性の活躍を応援する画期的オンライン講座
受講生どうしの部活から就職までを完全フォローする大原体制
大原人材強靱化計画
常に時代の半歩先を行く
危機意識が生む変革
大原学園は永遠


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