逆境こそわが人生

2017/06/20

『逆境こそわが人生』 前書きと目次

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逆境こそわが人生
 ~道なき道を行く、ルートイングループ~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-428-0
初版発行:2016年12月11日
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 はじめに

2016年8月21日午後9時45分(日本時間では8月22日午前9時45分)、ブラジル・リオデジャネイロの空に翻っていたオリンピック旗が、リオデジャネイロ市長のエドゥアルド・パエス氏の手から国際オリンピック委員会会長であるトーマス・バッハ氏の手に、そしてバッハ会長から東京都知事の小池百合子氏へと引き継がれた。このフラッグハンドオーバーセレモニーの瞬間に、2020年東京オリンピックのスタートが正式に切られたと言えるだろう。

振り返れば、東京へのオリンピック招致に成功した2013年ごろから、訪日外国人旅行者数は空前の勢いで増加し始めた。

観光庁によると、2012年に約836万人であった訪日外客数は、2015年には約1974万人まで増加し、3年連続で過去最高を更新している。「爆買い」に象徴されるインバウンド需要(日本国内での消費額)は、2012年は1兆846億円だったが、2015年には3兆4771億円と、これも驚異的な伸びを示している。

一方、国内に目を転じると、いまや人口の4人に1人が高齢者だが、その多くは「アクティブシニア」と呼ばれる行動派が主流で、彼らが牽引する国内旅行が絶好調だ。

観光ビジネスは、いまや日本経済の救世主的な存在であると言っても過言ではない位置づけとなっているのだ。

これに伴い、最も強い追い風を受けているのがホテル業界だ。最近では、いわゆる観光シーズン以外の時期でも満室に近い状態が続いているというから、あらためて驚嘆する。日本中でホテルの建築・増床ラッシュが続いており、その勢いは、地方都市、さらにはその周辺にも及んでいる。

この活気づくホテル業界で最もアグレッシブかつダイナミックな動きを見せ、注目を集めているのが、本書でとりあげる「ルートイングループ」である。

ひと口に「ホテル」と言っても、ラグジュアリーホテル、シティホテル、ビジネスホテル、リゾートホテルなど、いくつかのカテゴリーに分類される。ルートインホテルズを展開するルートイングループは、ビジネスホテルの「ホテルルートイン」を主軸に、シティホテル、リゾートホテルなど、コンセプトの異なるカテゴリーを横断的にカバーする、いわば総合ホテル事業者である。しかも、運営するホテル数は269(2016年10月現在)と、圧倒的な規模を誇る。

異なる運営戦略が求められる多様なカテゴリーのホテルを横断的に展開するには、想像をはるかに超える経営手腕が求められる。それを物語るように、これだけ多岐にわたるカテゴリーのホテルを展開し、それぞれに成功を収めている例は、ほかに見ない。

成長力も驚くほどで、年間20店舗ほどのペースで出店し続けているというから目を見張る。さらに近年は海外進出も果たすなど、その勢いはとどまるところを知らないのだ。

ルートイングループは、2015年に創業40周年の節目を迎えた。いわゆる老舗ホテルを別にすれば、ホテル事業で30年という歴史を誇り、しかもいまだ拡大一途の軌跡を描いているホテルグループは、それほど多くはない。

40年前の1975年に、現在、会長兼CEOを務める永山勝利氏が建設業の永山建設を創設した。これが、現在に続くルートイングループの第一歩である。それから8年後の1985年にホテル業に進出し、長野県上田市に「上田ロイヤルホテル」をオープンした。これが「ルートインホテルズ」の出発点となる。

そこから紆余曲折を経ながらも確実に成長を続け、現在、ホテル市場全体で売り上げ4位、収益ではホテル業界ナンバー1に躍り出ている。

「私自身、ここまで大きくなるとは、思ってもいませんでした」

と、当の永山氏自身、こう言って大笑するが、もちろん、ルートイングループも、この40年間、常に順風満帆で右肩上がりの成長曲線を描いてきたわけではない。40年のあいだには、バブル経済の崩壊があり、リーマンショックもありと、経済の大変動も経験している。ときには厳しい局面に立ったこともあったという。

だが、そこからが永山氏の真骨頂だ。経営破綻も覚悟するほどの危機もあったが、その翌年から反撃に転じ、みごとなV字回復を実現してみせたのである。

「本当に転んでしまったら、立ち上がることは難しいでしょう。でも、躓いただけなら、必ず立ち上がることはできますし、ふたたび前進に転じることもできるのです」

あえて説明するまでもないが、経営者にとって「躓き」とは、転ぶ(倒産する)ことは免れたものの、かぎりなく倒産に近い経営の危機に瀕したことを意味している。永山氏の経営者人生には、この「躓き」が何回もあったというのだ。実際、永山氏は、

「毎年のように修羅場を乗り越え、年が明けると、いつも『また、いちからスタートだ』『時は、今だ』と思って、不屈の精神でやってきた」

とも語っている。

何度も、何度でも、立ち上がる。その都度、必ず何かをつかみ、立ち上がるごとに大きく、強くなる。

こうした経験から、永山氏は「七躓八起」という言葉を信条とするようになり、これを企業精神として、グループ全体で共有している。

私と永山氏とのつきあいは、かなり長い。ルートイングループの歩みと永山氏の足跡を『ルートインジャパン 黒ダルマの知恵』(IN通信社刊)にまとめたのが2005年。その、男らしく、肚の据わった経営者ぶりに、すっかり惚れこんでしまい、以来、ルートイングループと永山氏の動きを見つめてきた。

このたび、創立40周年を機に、あらためて永山氏の経営者としての40年間を総括する機会を得たが、ひさしぶりに膝を交えて語りあった永山氏は、12年前とはどこかが大きく変わっていた。12年前の永山氏も、成長発展への意欲がほとばしり出る、ほれぼれとする経営者ぶりだったが、現在の永山氏は、経営者としての旺盛なエネルギーを湛えながら、堂々と、いかにも器の大きさを感じさせる重厚な存在感を漂わせている。

端的に言えば、12年前の永山氏は、ルートイングループやホテル産業の重鎮という位置づけだったが、現在の永山氏は、日本の経済、特にこれからの日本の発展に、なくてはならない存在だというオーラを漂わせるようになっているのである。

その意識の変容は、「ホテルは、なかば公共的事業なのです」と言う永山氏の発言からもうかがえる。

もちろん、以前から、こうした考えは持っていたが、2011年3月11日に突然襲いかかってきた東日本大震災の経験から、「ホテルは半公共的な事業である」という意識を、いっそう強固にしたという。

この未曾有の大惨事では、ルートイングループも被害を免れず、53カ所ものホテルが被災した。だが、活動できる従業員総出で復旧に取り組み、津波により最も被害が大きかった「ホテルルートイン仙台多賀城」でさえ震災の20日後には営業を再開したというから、驚くばかりだ。

同時に、被災して行き場を失い困窮している被災者に、ホテルを一時開放するなど、ルートイングループは、「いち民間企業がここまでするのか」と感心するほどの協力を惜しまなかった。

この経験からホテル事業の公共性をそれまで以上に強く感じるようになった永山氏は、現在では、ホテル進出を地方活性化の起爆剤にしたいと、人口が数万人規模の地方都市でも出店要請があれば快く引き受けるなど、社会的責任を強く意識した事業展開を盛んに行っている。

地方再生目的のホテルは、短期間で見れば、採算をとることはかなり難しい。だが、永山氏は、長期的な視野に立てば活路はあると前向きに考え、地方の再生や再活性化のために、あえて出店を引き受けているという。

現在の永山氏の活動は、社会の活性化や次世代の育成など、より社会性および公共性を帯びたレベルへと質的転換を遂げている。この質的転換は、永山氏自身、「第二創業期」と呼ぶほど革新的なものだ。

ルートイングループが第二創業期に入ってから、ホテル業界では驚異的な上げ潮ムードが続いており、なかには、満室状態を逆手にとって、不当なほど価格をつりあげるホテルもあるそうだ。

だが、永山氏は、こうしたあり方を是としない。ルートイングループは、どんな場合でも通常の価格を設定し、自らに恥じない経営を貫き通しているのである。

本書では、今後の日本経済における柱のひとつとなる観光事業の基盤を支えるホテル事業において躍進を続けるルートイングループの事業活動を紹介するとともに、創業者・永山勝利氏の、経営人としての熟達した人生哲学や、社会貢献にかける熱い信念に迫っていきたいと期している。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

 2016年11月  鶴蒔靖夫


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はじめに


序章 「時は、今」─創業40年を迎えたルートイン

ルートイングループ40年分の想いと感激
七躓八起の精神
「第二の創業期」を迎えて
「時は、今」─常に起点は「いま」にある


第1章 観光立国構想とホテル産業

観光業は21世紀最大の産業
観光産業で日本より豊かになったアジア諸国
岐路に立つ日本経済
観光立国として成功するかどうかが日本の未来を決める
日本を「訪れてみたい国」へ
功を奏してきた日本への観光誘致
こちらも活況が続く国内観光ブーム
都市部から全国へ広がるホテルラッシュ


第2章 進化系ビジネスホテルとルートイングループ

4つのホテルカテゴリーとビジネスホテル
新たに出現したカテゴリー「進化系ビジネスホテル」
プライベートユースがビジネスユースを上まわるようになってきた
ビジネスホテルに泊まれないビジネスパーソンたち
ホテル市場のナンバー1はどこか
進化系ビジネスホテル売り上げ1位のルートイン
チェーン展開でパワーアップ
独自の路線を進むルートイングループ
「ルートインは朝食がおいしい」という定評
驚異的な出店ペースと収益率を可能にする永山流の強気の契約
ワンランク上の「ホテルルートイングランド」をオープン
和テイストの「ホテルルートイン伊勢」
「ホテルの出前」―求められればどこへでも出店
「ビジネスホテル事業者」から「総合ホテル事業者」へ
都市型観光リゾートホテル「ルートイングランティア」
本格的シティホテル「アークホテル」
感動のリゾートホテル「グランヴィリオホテル」


第3章 ルートイングループ40年の歩み

信州・上田が発祥の地
誰も思いつかなかったロードサイドホテルという発想
ビジネスホテルに大浴場を設置
初の県外進出
おおいに話題になった女性だけのホテル
バブル崩壊を乗り越えて、全国展開を加速
ルートインジャパンと社名を改称
社是の決定
首都・東京への進出
男の決断・不見転で買ったサイパンのホテル
相次ぐ試練に襲われた日々
リーマンショックの影響でルートイングループ史上最悪の事態に
新規開店計画を凍結、なお噴出する問題点
多額の借金と「事業再生ADR」申請
危機意識で社員の結束が強化される
社長交代と2025年「500店構想」
東日本大震災の発生とルートイングループ
震災後20日で営業再開
ホテルは半公共の建物だ
復興支援型ホテルという発想の新展開
第二創業期からさらなる飛躍に向けて


第4章 「ルートイン魂」を育てる研修制度

企業は「人」
豊かな発想力があり、夢を語れる人を積極的に採用
軽井沢研修所の存在意義
3年後には、どこに出しても通じる一人前の社会人に
上級者教育はさらに厳しく
毎日の職場がそのまま研修所に
最終目的は豊かな人間性を培うこと


第5章 永山勝利の経営理念と真田魂

義に厚く、人を大切にする「真田精神」を受け継ぐ
どんなに苦しいときもあきらめない
頭ではなく、体で覚えよ
楽な道よりも、あえて苦しい道を選べ
目標がなくなったときが堕落の始まりだ
築城三年、落城一日
「黒だるま」に目を入れる
企業にとって成功はない
必要とされることが最大の喜び
その一瞬は人生でたった一度
時は、今


第6章 店舗数・経営内容・顧客満足度1位をめざして

海外展開を本格化
ベトナムのダナンを中心に海外に50店舗を出店
人材確保の拠点としても期待
アジア全域にルートインを広げていく
国内市場は出店をさらに加速
多様化でより大きなパイを獲得していく
リゾートホテルの拡大・強化
地方振興のためのホテル出店
街興しホテル第1号は「ルートイングランティア羽生」
CSR活動にも注力し、社会的責任を担う企業に
女性がいきいきと長く働き続けることができる企業へ
店舗数・経営内容日本一、顧客満足度日本一をめざして邁進していく
2055年、創立80周年パーティの席上で


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