“匠”のアウトソーシング

2017/06/21

『“匠”のアウトソーシング』 前書きと目次

Takumiweb


“匠”のアウトソーシング
 ~モノづくりの技術者集団・オーエスピーの挑戦~


-----
著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-418-1
初版発行:2016年1月15日
-----


 はじめに

戦後最長となる95日間の会期延長のすえ、集団的自衛権の行使容認などを柱とした安全保障関連法が2015年9月19日に成立した。憲法違反や説明不足を指摘する声があるなかでの採決だったこともあり、普段なら国会中継に見向きもしない人までもが、今回の超ロングラン国会に注目していた。

おおかたの予想どおり、最終盤の攻防は大荒れとなった。怒号が飛び交い、与野党の議員が激しく揉め、つかみあいの乱闘をする様子が、ニュース番組などで繰り返し流された。言論の府とは名ばかりの国会の惨状に、法案の賛成、反対にかかわらず、多くの国民があきれ果てたのも無理からぬことだろう。

しかし、その3カ月前にも、とある法案の改正をめぐって国会が大荒れになったことを覚えているだろうか。その法案というのが、企業が派遣労働者を受け入れる期間の制限を事実上撤廃するなどの改正案を盛り込んだ「労働者派遣法改正案」である。

安保法案の場合なら、すべての国民の将来に大きく影響する事案だけに、採決をめぐって国会が大荒れになるのは理解しやすいかもしれない。だが、派遣労働者という一部の労働者の待遇に関する法案の改正で、なぜここまで国会で揉めるのか、ピンとこないという方もいるかもしれない。

実は、派遣労働者という存在は、日本の産業界の行くすえを大きく左右するほど重要なものなのだ。いまや、日本におけるすべてのビジネスにおいて、人材確保の手段としてアウトソーシングの活用は、必要不可欠なものとなっている。特に、これまで世界に誇ってきた「日本のモノづくり」という分野においては、派遣労働者という存在なくしては成り立たないところまできている。

つまり、労働者派遣法改正案を「派遣として働いている人以外には関係ない法案」だと思っている人がいるとすれば、それは大きな間違いだということだ。この法案が産業界に与える多大な影響は、日本のすべての国民の生活を左右するかもしれないのだ。国会で激しい意見交換が行われたのも、無理からぬことである。

矢野経済研究所の「人材ビジネス市場に関する調査結果 2015」によると、2014年度の人材派遣業の市場規模は、前年度比105・0%の3兆7701億円にのぼるという。この成長の原因は、派遣に関する規制緩和がたびたび実施されたことによるところが大きい。とりわけ、2003年に製造業の派遣が解禁されたことが強く作用している。

ゼネコンや大手メーカーが、いちから技術者を育成するのは容易なことではない。気が遠くなるような時間とコストがかかるものだ。そのため、日本の製造業の人材育成を支える大きな力として、アウトソーシング産業は著しい成長を遂げてきた。

リーマンショックに端を発した不況のあおりを受け、2009年以降は人材派遣業も市場縮小傾向にあった。しかし、その後の景気回復とともに、人材ビジネス市場はふたたび活気を取り戻した。現在では、通信インフラの整備や医療革新などをはじめとするさまざまな分野で、専門技術者のアウトソーシングが活用されている。今後、さらなる需要増加が見込まれるのは間違いないだろう。

こうしたなか、特色ある人材派遣業として注目を集めているのが、本書で紹介する株式会社オーエスピー(本社:神奈川県横浜市、代表取締役:石垣健一氏)である。

同社の大きな特徴は、設計・開発から製造・生産にいたるまで、製造業メーカーの仕事に特化している点である。主な取引先も、世界に名だたる大手自動車メーカーやデジタル家電メーカーなどが数多く名を連ね、その顧客からの信頼も非常に厚い。それは、同社がアウトソーシング事業、人材紹介業、派遣事業、コンサルティング事業において、あらゆる業務の効率化を推進するスペシャリスト集団であるからだ。

同社の社長・石垣健一氏は、こう語る。

「人材アウトソーシングビジネスは、新たな時代に入りました。いまや、事業の継続や発展には、変化への対応力が必要な時代なのです」

同社は、顧客のあらゆるニーズに応えるべく、その時々の需要に合わせた事業形態を提案し、顧客の業務の効率化を推進するとともに、人事的な不安要素の軽減に役立つ、事業内容や規模に応じた人員の供給を行っている。

そんな同社では、技術職スタッフを全員、正社員として直接雇用し、安心して長く働くことができる環境を整備している。そればかりか、技術だけではなく、人間力、コミュニケーション能力にも磨きをかけられるよう、人材育成に注力し、働く人間たちのスキルアップを図っているのだ。

「将来的には、人材を派遣している企業の仕事を当社で受託・請負することも、視野に入れています」

そう石垣氏が語るように、現在、同社では、社内で請負仕事ができる組織を構築している最中だという。

また、人材サービスだけではなく、顧客が抱えている「コスト削減」や「CSR(企業の社会的責任)」「環境対策」といった幅広い分野における難しい課題においても、それを解決に導く総合的なソリューションを提案するほか、従来のノウハウを生かした要素技術を組み合わせた最適化設計による受託開発も行っている。

一方で「環境経営」を実践している同社では、2008年から従業員参加型の社会貢献活動の一環として、プルタブ・アルミ缶回収による車椅子寄贈活動や、産業用バッテリーの再生事業にも取り組んでいる。さらには「会社で取り組むエコな未来」をテーマに、合成界面活性剤をいっさい使用していない多機能洗浄・美容顔料「ナノソイ・コロイド」や「ナノ・イオミス」を原料とした、エコな商品・サービスも提供している。

石垣健一氏が人材派遣業界に入ったのは約30年前のこと。当時、まだあまりスポットを浴びていなかった人材業界に可能性とおもしろさを感じ、人材派遣会社に就職した。その読みは的中し、入社した会社は大きく成長を遂げたが、規模の拡大に伴い、石垣氏は別事業の経営を任命されてしまう。しかし、あくまでも人材ビジネスにこだわりたい石垣氏は、その話を断り、起業することを決意し、2003年にオーエスピーを設立した。

それから12年を経て、いまや同社は、社員数1100名、売上高は60億円規模にまで成長した。だが、石垣氏は、さらなる高みをめざしている。

「この会社を、スタッフ数や売り上げの規模だけを誇る会社にするつもりはありません。きめ細かなサービスと人材の質の高さこそが当社の特色だと、胸を張って言えるような会社にしたいと考えています」

今後は同社の得意分野に関連した新たな事業への進出も計画中で、そのためのM&Aにも注力している。また、アジアでの新しい領域の事業も準備中だという。同社がさらなる飛躍を見せてくれるのは間違いなさそうだ。

本書は、技術者アウトソーシングで着実な成長を遂げているオーエスピーの事業活動を紹介するとともに、同社社長・石垣健一氏の経営理念、ビジネス哲学に迫るものである。アウトソーシングビジネスに関わる人のみならず、日本のモノづくりの将来を思う多くの読者にとっても、貴重な指針の書となれば幸いである。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

 2015年12月  鶴蒔靖夫


-----


はじめに


第1章 日本のモノづくりを支えるアウトソーシング

日本における人材サービス業界の歩み
いまや雇用の流動化は必要不可欠
一大市場となった人材サービス産業
引く手あまたの技術系派遣労働者
製造ラインから技術開発まで外部委託
2015年労働者派遣法改正で変わる派遣の現場
改正法案の施行が急がれた理由
労働者派遣法改正で雇用は守られるのか
人材サービス業界の現状と今後の方向性


第2章 技術者アウトソーシングで躍進

製造業・技術職に特化した人材派遣ビジネスを展開
取引先は大手自動車・家電メーカー
量より質を重視した企業方針を徹底
プロエンジニアチーム「匠」の実力
「質のオーエスピー」を支える顧客目線の開発力
設計・開発から製造・生産工程までアウトソーシング
顧客企業から信頼されるパートナーとして


第3章 頼れるビジネスパートナー

顧客企業との揺るぎないパートナーシップを構築
難易度が高い派遣から請負への移行を実現
オーエスピースタッフが活躍する請負現場を訪問
設計・開発などのコアな部分にも関与
  現場で働くスタッフの声① 小笠原 敬(製造スタッフ 33歳 男性 入社10年)
  現場で働くスタッフの声② 相馬 和貴(製造スタッフ 28歳 男性 入社4カ月)
スタッフを守る姿勢が「質の向上」につながっていく


第4章 国際ビジネスや環境経営にも貢献

複合企業をめざし、新規事業にも挑戦
国際ビジネスのための外国語サービス
産業用バッテリーもリサイクルの時代に突入
AEDの普及を図り、救える命を救えるように
健康や自然に配慮した製品の企画・販売事業にも挑戦
プルタブ・アルミ缶回収による車椅子寄贈活動
スポーツ交流を通じて地域活動にも積極的に参加
野球チーム「OSP ALWAYS」を結成
世界を相手に勝負するOSPレーシングチーム


第5章 創業社長・石垣健一の経営理念とビジネス哲学

人材ビジネスに可能性を見いだし、人材派遣の世界へ
仲間や支援者に支えられて独立
「質のオーエスピー」を実現するために人材教育に注力
「技術力と人間力」の両面で人を育てる
正社員だからこそ、長期的視野に立った教育も可能に
誠実さを何よりも大切にする石垣の経営哲学
未曾有の大災害を乗り越えて成長したオーエスピー
短所を責めずに長所を伸ばす石垣のマネジメント手腕


第6章 オーエスピーが描く未来図

事業部制を廃止し、新たなステージへ
建設系分野は子会社化して事業を伸ばす
効果をあげるM&Aへの取り組み
高い専門性を持つ会社のM&Aがもたらしたもの
アジアでの新たな事業展開を見すえて
女性社員の比率増で企業力アップを図る
夢と志を持って働ける企業であり続けるために


IN通信社の本 セミオフィシャルサイトへ行く
-----


その他のカテゴリー

カテゴリー

無料ブログはココログ