二松學舍大学の挑戦

2017/06/21

『二松學舍大学の挑戦』 前書きと目次

Nishougakushaweb


二松學舍大学の挑戦
 ~時代を超えて受け継がれる建学の精神~


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著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-414-3
初版発行:2015年10月15日
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 はじめに

「山は樹を以て茂り、国は人を以て盛なり」

吉田松陰の言葉である。

この言葉が語るように、経済、文化、歴史……、すべては人の営み、そしてその結果であり、国の隆興を支えるのは、何にもまして「人」なのだ。人づくり・教育とは、国づくりと同義語だと言って過言ではない。私はそう考えている。

この、国家最大の命題とも言える人づくりにおいて、重い責を担ってきたのが〝最高学府〟である大学だ。

世界的にも熱心な教育熱を誇る日本。大学は、その熱い期待に応える教育の仕上げの場である。有用な人材を育成することで、日本の繁栄を実現し、その繁栄を支えてきた役割は極めて大きい。現在、日本の世界における高いプレゼンス(存在感)は、日本の教育、とりわけ大学教育の成果だと認めることに異論はないと思う。

だが、その大学が現在、大きな壁に直面している。言うまでもないが、最大の要因は、少子化の波が押し寄せてきたことだ。

もっとも、ここ十数年は、大学はむしろ増え続けている。少子化の波を上回って高まる大学進学率が、追い風になってきたからだ。だが、その限界が、ついに視野に入ってきた。

とりわけ危機感を強めているのが私立大学、なかでも地方の大学や中小規模の私立大学だ。現在、すでに40%近くの私立大学が赤字に転じ、経営的に存続できるかどうかの分岐点に立っているのである。

しのび寄る危機を察知した大学は、懸命にそれぞれ策を講じようとしているが、その方向性が似通っていて、金太郎飴のように似た大学ばかりが目についたり、何をめざしているのかわからず、ただ混乱ぶりを露呈するばかりの大学も少なくないのが実情だ。厳しい生き残り競争に打ち勝っていくためには、各大学が旗幟を鮮明にして、それぞれ独自の存在感を発揮していかなければならないはずなのだが、それができている大学は多くない。

そうしたなかで、私が現在、強い関心を抱いているのが、本書でとりあげる二松學舍大学である。

二松學舍大学は、一般的に言えば危機にさらされているはずの、中小規模私立大学だ。だが、逆にそれを強みとして、教育の原点をしっかりと踏まえながら、加速度的に変わっていく社会のニーズに対応しているのだ。そして現在、最も求められている、知力にあふれ、自己判断力や行動力を備えた学生を育成して、ユニークな存在感を放っている。

「国漢の二松學舍」という評判を耳にしたことがある人は、少なくないはずだ。二松學舍大学は、創立140年になろうとする長い歴史を通じて、一貫して、日本人の人間力の基盤となってきた道徳観、倫理観を醸成する「漢学」教育と、すべての学問、いや、社会生活の基盤となる「国語力」の強化に軸足を置く教育を、行ってきた。現在は、この「国漢」を主軸とする文学部に加えて、国際政治経済学部も設置。国語力を基盤に、各学科の高い専門性を加えた、個性ある教育を展開している。

キャンパスは東京の一等地・千代田区九段と千葉県柏市にあり、大学院、附属高校2校(九段・柏)と附属中学1校(柏)も併設している。附属高校(九段)は、何度も甲子園に出場する野球の名門校で、「二松學舍、ここにあり」の英気を日本中にアピールしている。

私が二松學舍大学に強く関心を引かれた最大の理由は、真の国際人を育成するために、「国語力をしっかり身につけること」を基盤に置いていることだ。

情報社会だ、国際化の時代だと言っているが、それらすべての基盤になっているのは、確かな母国語力、日本語力であるはずだ。昨今の若者の日本語の乱れ、日本語力の衰えは、目を覆うものがあるが、国語力の衰退は、やがては日本人のポテンシャルの衰退につながってしまう。まず国語力の強化をという二松學舍大学の指針は、まさに教育の王道を行くものだと私は確信している。
     
国語力重視の原点は、二松學舍大学の創生時にさかのぼる。

二松學舍大学は1877(明治10)年、漢学者の三島中洲によって設立された漢学塾・二松學舍をルーツとする。当時の日本は、欧米をはじめとする先進国の文化が取り入れられ、洋学へ、洋学へとなびく、まさに西洋学が華やかな時代であった。しかし中洲は、西洋文明の進んだ部分を自分たちのものにするには、まず「母国語を正しく理解し、使いこなせること」、さらには「自国の文化をしっかり学び、正しく理解していることが欠かせない」と、国語力と漢学の素養を磨くことの重要性を毅然と説いたのである。

創設時、三島中洲は、二松學舍大学の建学の精神を、

「東洋の精神による人格の陶冶」
「己ヲ修メ人ヲ治メ一世ニ有用ナル人物ヲ養成スル」

と唱えた。この建学の精神のもとに、二松學舍には「絢爛と」と形容したいほどの逸材が集まってきた。明治時代を代表する文豪・夏目漱石、現代書道の父と尊敬を集める書家・比田井天来、憲政の神様と呼ばれた首相・犬養毅、日本の女性運動家の草分け・平塚雷鳥、柔道家・嘉納治五郎……。二松學舍の歴史には、日本の近代史をリードした各界の著名人の名が、綺羅星のごとく並んでいる。

この建学の精神を現代風に言えば、

「日本に根ざした道徳心をもとに、国際化、高度情報化など知識基盤社会が進むなかで、自分で考え、判断し、行動する、各分野で活躍できる人材を育成する」

となるだろう。

「国際競争が激化する時代、競争のベクトルは技術や情報だと考えられがちですが、ベースは知識基盤社会なのです。現在、最も強く求められているのは人間教育。よりよい社会のために、自分は何を知的武器にして、どういう形で貢献していくか。大学は、それを選択し、実際に行動に移せる人材を、育成していかなければならないと思っています」

学校法人二松學舍理事長の水戸英則氏は、力強い口調でこう語る。ひと言で言えば、鋭く感じ、深く思考し、そのうえで自ら判断して、確かに行動できる、人間力の高い人材だ。

「そうした人間を育成する基盤になるのは国語力です。人文科学、社会科学、自然科学など、すべての学問・研究は、多くの書を読み、多様な人と触れ合い、語り合い、さらにはアウトプットすることによって、磨き上げられていくのですね。こうしたプロセスを経て、人間性が陶冶されていくわけです」

二松學舍大学学長の菅原淳子氏も、そう言葉を添える。

二松學舍大学のこの教育方針は、社会にも高い評価を得ており、卒業生の就職状況も好調だという。教員希望者をはじめとして、公務員試験など資格試験のサポートに注力しているほか、一般企業をめざす学生には、インターンシップ体験の奨励や「社長弟子入りプロジェクト」など、学生のモチベーションを高め、企業の理解も深められるキャリアサポートも充実している。

名実ともに国漢の二松學舍の名を引く「東アジア学術総合研究所」を擁していることも、二松學舍大学の存在価値をおおいに高めている。陽明学研究、日本漢文学研究など、ここで行われている活動は、ハンガリー、イギリス、ベトナムなど海外にも広く知られており、「いまや、二松學舍大学の名は、海外でのほうが有名なのかもしれません。日本漢学を学ぶなら二松學舍大学と言われています」(東アジア学術総合研究所所長・髙山節也氏)と言うほどだ。海外留学の推進、海外からの留学生の受け入れにも力を注いでおり、それらの活動をサポートする「国際交流センター」も設置されている。

公開講座と言えば、「『論語』の学校」の開催も、社会的に大きな意義を持っている。江戸の寺子屋では、小さな子どもたちが「子曰く……」と、大きな声を張り上げて『論語』を読んでいたものだ。音読から暗記へと進み、日本人の精神と道徳の根幹となっていった『論語』。「『論語』の学校」は、その『論語』を読み解く力、論語リテラシーを高めることにより、ともすると見失われそうになっている日本人の精神性を、改めて確立しようとの取り組みに挑んでいる。

こうした取り組みと並んで、二松學舍大学が注目されている理由は、目下、真の大学改革を力強く進めていることだ。

理事長の水戸英則氏は、元日銀マン。財務、経済のプロフェッショナルだ。

現在、日本の大学は、大きな岐路に立っている。少子化により、学生数は今後、急激に減っていく。私立大学は、教育機関であると同時に事業体という顔もあり、どんなに高邁な教育理念を掲げても、経営的に破綻してしまえば、教育の場から消えていかなければならないという宿命を持っている。

2011年、理事長に就任した水戸氏は、140年になろうとする二松學舍の歴史をこの先も永く続けていくために、二松學舍大学の経営改革に乗り出し、「N’ 2020 Plan」と呼ぶ将来計画を策定。「教育機関」から「教育サービスを提供する事業体」への変換という目標を掲げ、マーケットイン発想を基盤とした新たな大学への転身をめざしている。

「N’ 2020 Plan」は、教育現場の改革は言うまでもなく、大学経営の健全化に必要な、強力なガバナンスの確立などを力強く推進している。そうした努力の成果は顕著で、学校法人二松學舍は、格付投資情報センター(R&I)の財務格付で「A-(シングルAマイナス)」という高い評価を得ている。

現在、日本の大学のあり方をめぐり、国政でも盛んな議論が行われている。だが、ターゲットにあげられる大学は、東大・京大・阪大などの有名国立校や、慶應、早稲田、上智など、いわゆる一流大学に終始しがちだ。

しかし、社会はピラミッド構造になっている。最も厚く、重層な部分は、中間層が支えているのだ。二松學舍大学などの私立大学は、社会を支える中間層労働力の源となる人材を輩出するという、国にとっては実質的に最も重要な役割を果たしている。真の大学改革は、中間層大学こそが真摯に取り組まなければならない課題であるはずだ。

「N’ 2020 Plan」は、その意味でも、国の大学改革路線に一石を投じる貴重な指針となっている。

本書では、原点回帰を基盤に、王道を堂々と進みながら、変革にも果敢に挑む二松學舍大学のあり方を、さまざまな角度から詳しく紹介していきたい。

本書が、大学選択を前に、大学で何を学び、それをその後の人生にどうつなげ、どう結実させていくかを悩んでいる受験生や、その保護者たちが、確かな答えを見いだす一助となればと、願ってやまない。

また、本書から、日本の教育の今後のあり方を考える手がかりを、1つでも2つでも読み取っていただければ、著者として、これ以上の冥利はない。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

  2015年9月  鶴蒔靖夫


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はじめに


第1章 変革を迫られる日本の大学

日本の成長戦略の一翼を担う大学教育
驚くほど低い日本の大学の世界評価
喫緊の課題とされる大学の国際競争力強化
分厚い中間層の人材育成を担う中・小規模大学の役割を再評価
危機感迫る、日本の大学を取り巻く環境
大学生バブルで乱立した大学
大学淘汰の時代に突入
いっそう熾烈化する大学間の競争
入試の多様化と学生の質の低下
囁かれる2018年問題
ミッションを問われる私立大学
大学本来の使命に立ち返り、改革を進める二松學舍大学
温故知新の精神を現代に根付かせていく


第2章 真の国際人育成をめざす二松學舍大学の教育

Ⅰ 国漢の二松學舍大学から人間性育成の二松學舍大学へ
 皇居を臨む、大学教育の理想の場に建つ学び舎
 まず、国語力をしっかり体得。日本人としての知識基盤を確立する
 コミュニケーション力に優れた人材を養育する
 国語力強化教育を実施
 漢学の素養で人間力を涵養していく
 英語による授業など、グローバル教育も意欲的に展開
 世界各地区の7校と協定を結び、積極的な国際交流を展開
 二松學舍大学の国際交流、3つの強み
 カスタムメイドの教育を実現する多様な授業内容
 マン・ツー・マンのフォロー体制
 女子力を磨く二松學舍大学
 学びの機会均等を実現する各種奨学金制度を完備

Ⅱ 企業に、教員に、公務員に。全方位に広がる卒業後の進路
 1年次からキャリア教育を必修に。「仕事と人生」を熟考させる
 学生と採用側企業、双方の期待に応えるキャリアサポート
 ユニークな「社長弟子入りプロジェクト」
 大手企業から堅実な中堅企業まで、多岐にわたる就職実績
 教員をめざすなら二松學舍・教職支援センターの設置
 懇切丁寧な教職サポート
 ほかにも取得可能な資格を積極的に支援
 公務員試験も徹底的にサポート

Ⅲ 東洋文化と国際社会を結ぶ、現在、最も求められる教育内容
 文学部、国際政治経済学部の2学部で実施される人間教育
 二松學舍大学の総合的な価値を高める2学部の強い連携
 自ら発信し、表現する力を培う文学部教育
 国内最大級の規模を誇る10の専攻を持つ国文学科・中国文学科
 国際的視野を養い、国際人としてのスキルを磨く国際政治経済学部教育
 世界を視野に、複合的な視点で政治・経済・法律を学ぶ3専攻
 高度な学問研究を実現できる大学院
 世界の漢文研究の中軸・東アジア学術総合研究所
 「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」に採択される
 附属高等学校、附属柏高等学校、附属柏中学校
 広く一般に向けた「『論語』の学校」
 文学賞受賞など、多彩な輝きを放つOB・OGたち


第3章 脈々と息づく、138年の歴史と伝統

Ⅰ 漢学塾の開塾から大正・昭和の戦前まで
 日本近世・近代史を牽引する人物を輩出してきた二松學舍
 学祖・三島中洲と「二松學舍」
 二松學舍大学に学んだ明治・大正・昭和の偉人たち
 経済的基盤を固める
 中洲没し、山田準が後継者に
 専門学校の設立
 昭和初期~太平洋戦争終戦までの二松學舍

Ⅱ 戦後の復興から二松學舍大学拡充までの歩み
 戦後復興期の二松學舍
 二松學舍の飛躍・発展期を実現した浦野匡彦
 吉田茂元総理大臣、二松學舍舎長に推戴
 大学院の設置

Ⅲ 創立100年までの二松學舍大学の歩み
 福田赳夫元総理大臣、二松學舍維持会長に推戴
 附属高等学校、甲子園出場へ
 時代は平成へ。二松學舍の新たな歴史
 創立130年以降、二松學舍、未来へ始動


第4章 未来への改革「N’2020 Plan」

10年後、20年後を見すえた長期ビジョン「N’ 2020 Plan」
日銀マンから教育者へ
「N’ 2020 Plan」の誕生まで
転機に立つ大学教育と経営
大学危機の認識を促す『今、なぜ「大学改革」か?』
大学は、「教育機関」から「教育サービスを提供する事業者」へ
「N’ 2020 Plan」の構成
「N’ 2020 Plan」の達成に向けた取り組み
さらなる成果拡充のために


第5章 「二松學舍ブランド」の引き上げで理想の大学づくりをめざす

知の宝「古典」を生かし、日本再生に貢献する人材を輩出する
二松學舍「建学の精神」に込められた、真に有用な人材育成への思い
真の「国際人」を育てていく
二松學舍大学ならではのブランド価値を磨いていく
社会的ニーズとのマッチングを図り、実社会が求める人材を輩出する
父母らの期待に応え、「親が選びたくなる大学」へと進化する
学費負担を少しでも軽減したい。二松学舎サービスの真の狙い
二松學舍から世界へ情報発信するアンテナユニバーシティ
視野には新学部の創設も
「温故知新」から「温故創新」へ


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