グローバル・リンクのエネルギー革命

2017/10/17

『グローバル・リンクのエネルギー革命』前書きと目次

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グローバル・リンクのエネルギー革命
~日本のモノづくりが世界を救う~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-438-9
初版発行:2017年10月22日




はじめに

「資源小国日本」

これは、わが国が以前から内包し、今後も対応を迫られる重大な課題である。

たとえば、日本の食料自給率(カロリーベース)は40%にも満たない。自給率が低いということは、輸入が途絶えれば国民の食生活が成り立たなくなるおそれがあるということだ。そのため、国産農林水産物の消費拡大をめざそうと、さまざまな取り組みが進められている。

さらに、民生と産業の双方の維持・発展に欠かせないエネルギーの自給率はわずか6%(2014年)と、食料自給率の比ではないほど低い。現代社会において電力は不可欠なものであり、それがなければ文化的な生活を送ることは難しいにもかかわらず、日本はエネルギーの94%を輸入に頼っているのだ。

バブル期のような勢いは見られないものの、日本はいまだに世界第3位の経済大国である。2016年の日本の名目GDPは4兆9386億ドル(IMF「World Economic Outlook」)、また都市別に見たGDPランキングでは東京が世界第1位となっている(Brookings Institution「Global Metro Monitor」)。

こうした経済活動を支えているのは、日々大量に消費されているエネルギーだ。世界最大級のエネルギーグループ企業であるBPの統計によれば、日本は一次エネルギー消費量(商業的に取引される燃料および発電用の再生可能エネルギーの合計)の国別ランキング(2016年)で、中国、アメリカ、インド、ロシアに次ぐ第5位となっている。

また、東日本大震災以降、節電意識が全国的に高まったとはいえ、いまでも日本の国民1人あたりの電力消費量(2014年)は、主要国のなかでカナダ、アメリカ、韓国に次ぐ第4位である(IEA「WORLD ENERGY BALANCES」2016 Edition)。

24時間営業のコンビニエンスストアやファミリーレストラン、早朝から深夜まで営業しているスーパーマーケット、24時間365日稼働し続ける自動販売機などは、日本ではあたりまえのようになっているが、世界を見渡せば、先進国ですら、そこまでの利便性を追求している国はそう多くない。こういった便利さは、大量に消費される電気と引き換えに日本人が手にしているものだ。

にもかかわらず、原子力を除く日本のエネルギー自給率はわずか6%というのは、不安定さを増しつつある世界の政情を考えれば、あまりにもリスキーなのではないだろうか。

同じ島国でも、北海油田をはじめとする豊かな地下資源に恵まれたイギリスとは違い、日本は固有のエネルギーや資源がきわめて乏しい。そのため、石油や天然ガス、石炭といった化石燃料を輸入してエネルギーを賄っているが、そのうち石油と天然ガスは政情が不安定な中東諸国に依存しており、供給体制には常に不安がつきまとっている。

しかも、中国やインドなどをはじめとするアジア諸国の急激な経済発展に伴い、世界全体における資源やエネルギーの需要は右肩上がりに増えている。このままいくと、今後、日本が安定的に化石燃料を確保することは困難になるであろうことは想像に難くない。

それに加えて、これら化石燃料を使用する、火力発電や各種の工場、輸送システムなどは、地球温暖化の原因となるCOなどの温室効果ガスを発生するというデメリットがある。最近では、局地的豪雨の多発や干ばつ、ハリケーンや台風の被害の増加など、地球温暖化の影響とみられる異常気象が地球規模で起きているが、このまま温暖化が進めば、こうした異常気象はますます顕著になるおそれがある。

世界各国の協議によって京都議定書やパリ協定などが締結され、世界的な規模でCOの排出量削減が進められようとはしているが、2017年6月1日にアメリカのトランプ大統領がパリ協定からの離脱を正式に発表したことで、地球の気温上昇を産業革命前と比較して2度未満に抑えるための取り組みを推進することが困難になる可能性も生じてきた。

とはいえ、アメリカの離脱の発表を受けて、中国が即座にパリ協定順守の意向を表明したように、世界の主要国は今後もCO排出量削減のための協力体制を強めていくものと見られている。離脱を決めたアメリカにしても、大気汚染や公害に反対する国民パワーがCO排出量の増加を許さないだろう。

かつて「地球温暖化は中国がつくりあげた『でっちあげ』にすぎない」と発言したこともあるトランプ大統領が、いかに地球環境保護の流れに逆行しようとしても、世界はすでに化石燃料に依存しすぎることのリスクに気づいている。化石燃料は、使い続ければいつかは必ず底をつく。可採残量に限りがある化石エネルギーに依存して成り立つ文明は、けっして持続可能なものではないのだ。

しかも、安定して大量の電気を供給でき、温室効果ガスを排出しない安心安全なエネルギーとのふれこみで推進されてきた原子力発電は、福島第一原子力発電所の事故により、その安全神話がまやかしであったことを露呈してしまった。

東日本大震災が引き起こした津波によって全交流電源喪失状態に陥った福島第一原子力発電所は、水素爆発を起こして建屋が吹き飛び、大量の放射性物質を大気中に放出した。その結果、国際原子力事象評価尺度(INES)において最悪のレベル7に分類される、史上類を見ないほどの大規模かつ深刻な事故となった。

こうしてみると、地球温暖化を招く火力発電や、ひとたび事故が起きれば放射性物質の拡散などのリスクを抱える原子力発電は、エネルギーを確保する手段として理想的なものであるとは、とても言えないのが現実だ。

そこで期待されるのが、太陽光や風力、水力、地熱、バイオマスといった自然の力を利用する、クリーンで再生可能なエネルギーの活用である。これらは化石燃料に比べて自然環境への負荷が少なく、地球温暖化対策にもつながり、放射能汚染の心配や大規模な人的災害につながるおそれもない。

その再生可能エネルギーの分野で、独自に開発した技術によって着実に業績を伸ばしているのが、本書で紹介するグローバル・リンク株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役:冨樫浩司氏)である。

「ソーラー発電と蓄電で日本の未来に安心を」を社是に掲げるグローバル・リンクの設立は、2011年4月18日。東日本大震災の発生からわずか1カ月後のことである。

震災が起きたとき、大手造船会社の研究開発の職を辞していた冨樫氏は、故郷の宮崎市で、年老いた母親の世話をする日々を送っていた。そこに、かねてからつきあいのあった広告代理店の社長が訪れ、冨樫氏を一喝した。

「いつまでのんびりしているんだ。田舎に引っこんでいる場合じゃない。一刻も早く東京に戻って、おまえが持っている技術を活かして電気が使えるしくみをつくれ! 被災地の人たちを救うんだ」

その社長は、冨樫氏が蓄電システムに関する特許を所有していることを知っていた。それこそが震災で大きな被害を受けた日本社会にとって大きな希望の光になるに違いないと考え、なんと創業資金として3000万円を用立てようとまで申し出てくれたのだ。

「私が開発していた蓄電技術の可能性を、彼は信じてくれていたのです。震災で電気の供給が少なくなっているいまこそ、その技術を使うときだと教えてくれました」
と、冨樫氏は当時を振り返る。

東京に戻った冨樫氏は、グローバル・リンクを起こすとすぐに、自前の特許を駆使して小型太陽光発電と蓄電池を組み合わせた独自のシステム「G‐SOLAR」を開発し、OEMによって製品化した。

日本では、電力供給が不足していた終戦直後や、電気工事技術などが未発達だった1960年代ごろまでは、地域ごとに順番に電力供給を止める輪番停電がしばしば行われていたが、近年では電気工事技術の発達などにより、電気の供給が止まることはほとんど見られなくなっていた。

しかしグローバル・リンクの創業当時は、福島第一原子力発電所の事故の影響で全国各地の原子力発電所が運転停止に追いこまれ、日本の電力事情は逼迫していた。特に東日本では深刻な電力不足に陥り、一時的とはいえ、東京都内でも電力の供給制限、いわゆる計画停電が実施されていた。

また、電力ピーク需要を減少させるために節電対策が推進され、駅のエスカレーターが止まったり、公共機関におけるエアコン使用の抑制が行われるなどして、多くの人々が節電の影響を受けていた時期であった。オフィス自体は照明がついていても、ビルのエントランスや廊下の照明は消され、どこへ行っても薄暗かったことを、ご記憶の方も多いのではないだろうか。

こうした状況のなかで、誰もが新たな発電技術や蓄電システムを求めていたため、グローバル・リンクには創業早々から注文が殺到した。というのも、2011年の時点で太陽光発電と蓄電の両方の技術を擁する企業は、グルーバル・リンクのほかには1社しかない状況だったからだ。

「当社の持つ技術が時代のニーズと合致したため、創業からわずか1年たらずで出資してもらった3000万円を返すことができました」

と、冨樫氏は語る。

創業から半年ほど経ったころのことだった。テレビのニュースで、宮城県のある病院の院長が「電気が来ないので治療ができない」と嘆く姿を目のあたりにした冨樫氏は、すぐさま仙台市の病院を訪問し、「G‐SOLAR」を寄贈した。すると、その話題が複数のテレビや新聞にとりあげられ、グローバル・リンクの名が全国に知られることとなった。

この一件こそが、グローバル・リンクにとって大きな転機となった。これを契機に、それまで無名だったグローバル・リンクに、1日100件を超す問い合わせが寄せられるようになったのだ。

以来、グローバル・リンクの業績は右肩上がりに伸びている。現在までに設置した太陽光発電所の数は15府県69プラントにのぼり、その発電規模は原子力発電所1.5基分に相当するという。売上高もグループ全体で67億円を超えるまでに成長した。

本書は、再生可能エネルギーの普及に尽力し、各地のインフラのイノベーションに取り組むグローバル・リンクの事業活動を紹介するとともに、同社社長・冨樫浩司氏の経営理念と人生哲学に迫るものである。これは現在、再生エネルギー関連の事業に携わっている人のみならず、地域環境の未来を考え、日本の将来に関心を寄せる多くの一般読者にとっても、貴重な指針の書となるであろう。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

 2017年9月  鶴蒔靖夫



はじめに


第1章 急変する世界のエネルギー事情と国際的な取り組み

エネルギーに対する世界の考えを一変させた東日本大震災
世界で進む脱原子力発電の動き
深刻さが増す地球温暖化
地球温暖化の歯止めになるか、COP21「パリ協定」
2015年のもうひとつのトピック「SDGs」
地球温暖化防止の流れに逆行するトランプ政権
地球規模で増えつつある再生可能エネルギー導入
FIT制度の改正が再生可能エネルギーに与える影響
合意されたクリーンエネルギーへの投資増強


第2章 いま求められる再生可能エネルギーの活用

持続可能な社会の実現に欠かせない再生可能エネルギー
主な再生可能エネルギーの特徴
温暖化解決の鍵は分野ごとのイノベーション
注目される日本の地熱発電や水素技術
いよいよ政府が本腰を入れ始めた再生可能エネルギーの導入拡大
崩れ去った「オール電化神話」
震災後に必要性が再認識された「無停電マンション」
蓄電技術の向上が電気事情を大きく変える
再生可能エネルギーの導入が進むと電気料金が上がるのか
時代は「売電」から「自家発電」へ


第3章 再生可能エネルギー業界を牽引するグローバル・リンク

東日本大震災を機に起業を決意
技術をもって被災地に寄り添う
創立5年で原子力発電1.5基分の電力供給を実現
廃校を産業用太陽光発電に活用し、税収増で地元に貢献
温泉宿のM&Aで地熱発電分野にスピード進出
地熱発電で過疎地域を活性化
24の特許技術と尽きないアイデアで業界を常にリード
「ベストベンチャー100」に選定


第4章 エネルギー新時代を切り拓く多様な技術と製品群

太陽光発電に代わる次世代の再生エネルギー
世界に立ち遅れている風力発電分野でも活路を見いだす
温泉熱を活用する地熱バイナリー発電
医療・産業廃プラスチックを発電動力に活用
油化プラント技術を応用しジェット燃料を生成
永久磁石を使って恒久的に電気を生み出す夢のシステム
ノンフロン冷媒ガス「G‐POWER」を開発
蓄電技術を応用して生み出された製品群


第5章 「不可能の壁」へのあくなき挑戦 ―冨樫浩司の経営理念と人生哲学―

「世の中にないものをつくりだす」が経営理念
子どものころから好きだったモノづくり
大手自動車メーカーで金型設計の業務につく
日立造船に転籍し蓄電システムに出合う
発電・蓄電技術で社会に大きく貢献
夢のエネルギーをつくるため「不可能の壁」を乗り越えろ


第6章 夢の技術でエネルギーを“つくる”時代へ ―グローバル・リンクが描く未来―

世界進出に向け、まずは香港市場での株式上場をめざす
「夢の技術の開発」をミッションに掲げて
課題は次世代の育成
死ぬまで「モノづくり」はやめられない
挑戦し続ける研究者魂
めざすは「電力会社のいらない未来」


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