お金のない人は知恵を出せ

2017/12/12

『お金のない人は知恵を出せ』 前書きと目次

Wisdomweb


お金のない人は知恵を出せ
~起業家・新地哲己の電力王への道~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-394-8
初版発行:2014年3月10日




 はじめに


平成二十三(二〇一一)年三月十一日に発生した東日本大震災に続く福島第一原子力発電所の事故以降、私たちのなかで「エネルギー」という言葉の持つ意味や重さが変わってきている。

いま、私たちがエネルギーと発するときは、言外に「これからのエネルギー」というニュアンスが込められている。

石油、天然ガス、原子力によるエネルギー文明が終わりに近づいていることは、専門家に指摘されるまでもなく、一般市民である私たちも気がついていることである。

『平成二十三年版 環境・循環型社会・生物多様性白書』によると、世界の化石燃料の可採年数は、石油が約四十六年、天然ガスは約六十三年、石炭は約百十九年であるという。

国際エネルギー機関(IEA)が報告書のなかで、「二〇〇六年に在来型石油の生産はピークを過ぎ、もう廉価な石油の時代は終わった」と述べたのは二〇一〇年のことだった。

現在の豊かで便利な文明は、あと半世紀もすれば枯渇する資源の上につくられていることを改めて知り、「このままでは……」と思うのは当然のことだろう。

化石燃料はまた、地球環境に深刻な影響を与える要因でもあった。二酸化炭素排出による地球温暖化は、世界が連携して取り組まなければならない課題である。

クリーンなエネルギーとされていた原子力発電も、福島の事故によりその危険性を露呈することとなった。

現在、人類は「第四の革命」のなかに入りつつあるといわれている。

農耕革命、産業革命、IT革命に続き、エネルギー革命が大きなうねりとなって、文明のあり方を変えていこうとしているのである。

二十一世紀はエネルギーの世紀である。エネルギーシフトがどのような理念の下で、どうなされていくのか――身近な暮らしの問題であると同時に、人類の未来に深くかかわる壮大なテーマである。それを一人ひとりが思慮すべき地点にいることはたしかであろう。

こうした状況の下、世界的に注目を集めているのが再生可能エネルギーの活用である。再生可能エネルギーとは、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなど、自然の資源に由来するエネルギー源のことである。

ドイツをはじめとするヨーロッパ諸国では十年以上前から積極的な導入が行われていたが、その間、原子力発電への依存度を高めていた日本では遅々として進んでいなかった。しかし、東日本大震災以降、エネルギーシフトに真剣に取り組み出すことになる。

なかでも太陽光発電は平成二十四年七月にスタートした「再生可能エネルギー固定価格買取制度(全量買取制度)」により、売電市場への参入が急増。メガソーラーの開発計画はブームといわれるほど全国に拡大した。

しかし、大規模太陽光発電事業とは思いのほかむずかしいもので、さまざまな事情により、実際に稼働しているのは認可数の三割程度にすぎず、塩漬けになったままの用地が各地に点在しているのが現状だ。

こうしたなか、メガソーラーのリーディングカンパニーとして破竹の勢いで発電所を開発しつづけているのが、福岡県北九州市に本拠地を置く「芝浦グループ」である。

平成二十四年七月に第一号を完成させて以来、同グループは次々とメガソーラーの建設を続け、平成二十六年一月現在稼働中のメガソーラーは一一カ所。総発電量、安定性ともに日本のトップクラスの実績を誇っている。

その結果、芝浦グループの年間売上高は前年比の七倍規模にまでに急拡大し、再生可能エネルギー事業が市場経済のなかで大きな可能性を持つものであることを証明した。

全国の再生可能エネルギー事業者の関心を集める芝浦グループの陣頭指揮をとっているのが、芝浦グループホールディングス株式会社代表取締役会長兼CEO・新地哲己氏である。九州では「発電王」の異名を持つ経営者だ。

メガソーラー事業を広めるにあたり、新地氏は、メガソーラーの分譲販売、金融商品としての売り出しなど、日本初の販売方法を提示し、いずれも成功を収めている。こうして新地氏は、独占的な世界と受け止められてきた発電事業を、一般の投資家や市民にまで広げる手法を編み出していったのである。

芝浦グループの最大の武器は、グループ内七社の明確な役割分担と緊密な連携により、設計、施工から販売、メンテナンスまで、すべての工程がグループ内で一貫して行われている運営体制にある。

「電力会社との協議をはじめ、太陽光発電に必要な技術のノウハウをトータルで行える企業は、当社以外はほとんどないといってよいでしょう。この体制が質の高さを保証するのです」

このように新地氏は一貫体制のメリットを強調する。

その新地氏の半生は波乱に富んでおり、実に聞き応えのあるものであった。貧しかった少年が必死に知恵を振り絞り、アイデアと実行力で進んでいく姿は、いまの子どもたちにぜひ伝えたい部分である。

二十四歳のときに独立してからは、家電販売店を皮切りに、空調設備会社、不動産業、総合建設業と、時代の流れを読み取りながら事業の転換・拡張を繰り返した。そのたびに新地氏自身も成長を重ね、人を巻き込む力を蓄え、大きな事業に向かうにふさわしい器を有するようになっていった。

もちろん、その過程では手痛い失敗を喫し、一時は死さえも考えたほどであったが、その体験が本当の強さを身につける礎いしずえとなった。新地氏自身、「孤独に耐えきってこそ、真の経営者が育つ」と振り返る。

よいことも悪いことも、すべての体験をプラスに変えて、さらに飛躍をはかろうという新地氏の熱い心に関しては、本書を読んで汲み取っていただきたい。

太陽光発電と出合ったのは空調工事に携わっていたころだが、それ以前から新地氏は地球環境に憂慮の念を持ち、フロンガスの回収に熱心に取り組んでいた。現在の「地球環境を守ろう」という企業目標は、その意味で会社の精神的原点であり、隅々にまで深く浸透しているものである。

当初は住宅用の太陽光発電を手がけていたが、やがて不動産業をはじめると太陽光発電との合体モデルを模索し、平成十七年には全戸に太陽光発電設備を設置した賃貸マンションを日本で初めて完成させた。詳細は本書に譲るが、工事開始までには電力会社との壮絶な攻防があり、まさに命がけの事業であった。そして、この太陽光発電付マンションで培った技術と資本力が、日本有数のメガソーラー企業を生み出すことになるのである。

現在、新地氏は「発電王」から「電力王」に飛躍することを夢見ているが、そのための準備は着々と進んでいる。実現の暁には、再生可能エネルギーの普及拡大に大きな功績を残すことになるだろう。まさに、日本の「これからのエネルギー」を支え、牽引し、私たちのライフスタイルにも少なからぬ影響を与える存在になると思われる。

本書は、メガソーラーのリーディングカンパニー・芝浦グループの先駆的かつ独自性に富む事業活動を紹介するとともに、日本および世界が直面するエネルギー問題、環境問題の現状を検証し、その可能性と解決策を探っていくものである。

これは再生可能エネルギーにかかわっている事業者だけでなく、地球環境の行方や、原発事故とエネルギー問題に関心を寄せる一般読者にとっても貴重な指針の書となるであろう。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

平成二十六年一月   鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 三・一一が突きつけたエネルギー問題の課題と現状

次世代エネルギーのシンボル――みやま合同発電所誕生
崩れ去った原発の安全神話
「地球環境を守ろう」をスローガンにしつづける芝浦グループ
安全志向へと変化した国民の意識
世界中が凝視する日本の歩み
二酸化炭素削減と再生可能エネルギー
再生可能エネルギーの種類と特徴
エネルギー自給率は四%、再生可能エネルギーの発電量は一・四%という低さ
世界のトップを走っていた日本の太陽光発電
スタートした固定価格買取制度
太陽光発電に集中
太陽光発電の弱点、急がれる蓄電池の開発


第2章 メガソーラーのリーディングカンパニー

無謀といわれた「みやま合同発電所」の建設
国内初分譲投資型の販売方式
国内トップのメガソーラー発電所、二年で一一カ所に広がる
稼働率は認定量の三割というメガソーラーの実態
都道府県別再エネ設備導入状況を眺めてみれば
さまざまなステークホルダーの協力にもとづく事業
技術力を支えるグループの一貫体制
メガソーラーの機能性はメンテナンスで決まる
芝浦グループにしかできない技術
メガソーラーの技術者を育成する「メガソーラー学院」
ファーム構想に込めたもの
日本初、市民ファンド型発電所はすぐに完売
リーディングカンパニーを支える見えない力


第3章 地球環境に貢献する芝浦グループの事業展開

芝浦グループの全体像
それぞれが独自の輝きを放つ七つの会社
全国的に見ても例のない自社一貫体制とは
日本初の全戸個別供給型太陽光発電付マンション「ニューガイア」誕生の驚嘆
「新エネ大賞」金メダルを獲得
初期投資負担なし、徹底した消費者目線でたちまち満室に
ニューガイア事業、続々と
数々の表彰に輝く
データの宝庫
儲かるための仕組みづくり――身内商売と固定収入、営業なし
芝浦グループ新規事業1――缶詰バー「mr.kanso」九州上陸
芝浦グループ新規事業2――美と健康のエステティック業「オーバーシーズ」
「お金というのは貯めてはいけない、どんどん使ってこそ生きるもの」
「自分だけ儲けてはいけない、一緒に儲けるもの」
親父でもありライバルでもある


第4章 八万円からはじまった新地哲己の立志の人生

新地の姓は「新しい土地を切り開く」の意
心に残る母親の教え
貧しさのなか、野球の特待生として高校へ
商売のおもしろさに目覚める第一歩
末恐ろしい営業力
最初の月から二八〇万円の売り上げ
二十四歳で独立・芝浦グループの誕生
遺書までしたため
運命の恩人との再会
孤独に耐えきる
空調設備専門業として
粘り勝ちの助成制度
ニューガイア成功の裏に
シャープアメニティシステム社長への命がけの直訴
空調設備から総合建設業へ
メガソーラーの時代がきた
お金のない人は知恵を出せ
女性の知恵が男を救い、大きくさせる
経営者と社長は次元の違うもの
人を信じ、己を信じる


第5章 日本の電力王をめざして

二〇五〇年、再生可能エネルギー予測
小泉発言と二〇五〇年に向けた日本のシナリオ
電気事業法が成立、六十年ぶりの抜本的改正
発送電分離なるか?
ドイツと日本のインフラの違い
この十年で日本がすべきこと
九州の高いポテンシャルと九州ソーラーファーム
二〇一五年には三〇〇メガワット、一〇〇〇億円売り上げを目標に
「発電王」から「電力王」へ向かって
市民参加のファンド型発電所
十年後は大きな山に

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