記録メディアに人生をかけた男

2017/12/25

『記録メディアに人生をかけた男』 前書きと目次

440_kirokumedia


記録メディアに人生をかけた男
~秋葉原で世界に挑む磁気研究所の挑戦~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-440-2
初版発行:2017年12月30日




はじめに

電子メール、写真、映像、音楽、SNSへの書きこみ、それにさまざまなニュースや各種のリストなど、地球上には現在、どれくらいの量の情報(データ)が流通しているのだろうか。

世界最大のコンピュータネットワーク機器開発会社であるシスコシステムズの調査によると、地球上で1年間に流通するデジタルデータの量(トラフィック)は、2011年には3994億3196万GBだったという。それが2020年には、2兆4996億7097万GBに達すると予測されている。2015年から2020年にかけてのデータトラフィックの量は、年平均22%ずつ増加(5年間で約2.7倍)していくと予想され、特に携帯端末によるモバイルデータのトラフィックは年平均53%(5年間で約7.8倍)の成長が予想されている(総務省「平成29年版 情報通信白書」)。

この大量のデータを記録し保管するためのツールが、記録メディアと呼ばれるものである。いまでは行政、企業、個人にとって欠かせぬ必需品となっている記録メディアは、パンチカードから始まり、磁気テープ、磁気ディスク、光ディスク、そしてフラッシュメモリと、コンピュータの進化および情報社会の拡大と歩調を合わせて、めまぐるしい変容を遂げてきた。その技術革新の推移は、より大量のデータを、より速く処理し、より長く安全に保管することを追い求めた人類の、叡智の結晶である。

この記録メディア一筋に、40年近くにわたってビジネスを続けている会社がある。それが東京の秋葉原に本社をおく、記録メディアの専門商社である株式会社磁気研究所だ。

創業者で代表取締役の齋藤邦之氏は、記録メディアに関しては生き字引のような人物だ。それもそのはずで、大学卒業後に就職した専門商社でたまたま記録メディアの仕事に就いたときから、これを一生の仕事にしようと決めて、脇目も振らずに続けてきたのだ。齋藤氏がこの仕事に関わり始めたのは、1970年代なかばの、8インチのフロッピーディスクがようやく日本に上陸する直前の時期のことである。

磁気研究所を設立して起業したのは1979年、齋藤氏が29歳のときだった。爾来38年間、記録メディアとともに奮戦し続け、さまざまな記録メディアの興亡を目のあたりにしてきたその足跡からは、パソコン市場の激動や、社会がIT化していく変遷などを見ることができる。

「記録メディア専門」という、他に類を見ないユニークな会社である磁気研究所の特徴をいくつか、ここで簡単に書き出してみよう。

◎あらゆる記録媒体を安く提供。他店では取り扱わなくなったレガシーメディア(古い規格の記録メディア)も豊富に販売。
◎データの復旧、変換、複製など、データに関するサービスを幅広く提供。
◎海外6カ所に拠点を持ち、国際的なフィールドで事業展開。
◎メーカーとして自社ブランドの販売にも取り組む。

その他の詳しいことについては本文で紹介する。

ところで、記録メディアとは、そもそもなんなのであろうか。私のこの、まったく初歩的な質問に対して齋藤氏は、

「いわば、コンピュータの頭の中がデータでいっぱいになったときに、あふれる分を別の入れ物に移しておくようなものです。このときに移したデータを記録し、保管しておく『入れ物』が、記録メディアという商品です」

と、本質的なことをわかりやすく教えてくれた。

現在、世界中からさまざまな情報が発信されているが、こうして発信された情報は、どこかで受信処理され、かつ記録として保管されることで、初めて「社会的生き物」になると齋藤氏は言う。

「記録メディアがあるからこそ、データは保管され、再現されるのです。ニッチで地味な商品ですが、情報化社会にはなくてはならない役割を果たしています」

と齋藤氏が語る、その地味な商品に、これまでにどれほどの熱意と技術が注ぎこまれて今日のかたちになったのかは、磁気研究所が運営している「MAG-LAB」(マグラボ)という店を一度でも覗けば実感できるだろう。新旧取り混ぜ、ありとあらゆる記録メディアが山積みになった光景からは、「記録すること」への根源的な欲求すら伝わってくる。

「記録メディアとは、化学、メカニック、科学、電子の集合体です。人間の叡智の結晶だと言っていいと思います」

と語る齋藤氏の話は、この小さなツールが日本の経済にどれだけ大きな影響を与え、今日の情報化社会を支えてきたかについて、その一端を知るうえで、おおいに役立つものとなるはずだ。

加えて、「齋藤邦之」という人物が、実に大きなスケールを持った傑物であることも、本書を通して多くの方にお伝えすることができれば幸いである。宮城県・気仙沼の貧しい家に生まれ、親の愛と持ち前の反骨心を土台に這いあがっていく齋藤氏の姿は、「原日本人」のイメージを彷彿とさせる。本文では、「努力必達」という言葉を胸に掲げて無一文から会社を起こし、やがて秋葉原の老舗になるまでのプロセスを十分に記したので、堪能してもらいたい。

「かっこいいことはひとつもない」と自分を語る泥臭い人物が、先端技術のシンボルでもある記録メディアと深い縁を持ったのも、情報化社会の妙味のひとつと言えるかもしれない。現在の目標は、年商100億円の達成と、業界世界一の実績をあげることであると齋藤氏は言う。

本書は、記録メディア流通のリーディングカンパニーである磁気研究所の事業内容を紹介するとともに、創業者である齋藤邦之氏の人生哲学と経営理念に迫るものである。現代社会はコンピュータなくしては成り立たなくなっているだけに、コンピュータ関連の仕事に携わっている人のみならず、現代に生きるすべての人々にとっても、非常に興味深いものとなるはずだ。また、齋藤氏の生き方を通して、ひとりでも多くの読者が、自ら「これ!」と決めた仕事に情熱を注ぐ意味を少しでもつかみ、自分のものとして感じてくださったなら、望外の喜びである。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

2017年11月  鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 パラダイムシフトを起こすコンピュータ社会

計算機からライフラインを握る存在に
補助記憶装置=記録メディアの開発に多くの情熱が注ぎこまれた
世界で唯一の記録メディア専門商社
軍事用計算機から情報機器へ
日本のコンピュータ史
記憶装置の歴史と種類
フラッシュメモリの生みの親は日本人
記録に込められる人間の業と願い
記憶と記録は補完しあうことで時空を超える
記録メディアの最大の課題は寿命


第2章 記録メディアで社会に貢献する専門商社「磁気研究所」

日本最大の記録メディアの専門商社
磁気研究所の事業における3本の柱
グローバルな事業展開
市場に食いこむ自社ブランド「HIDISC」
海外のメーカーから最高のディストリビュータとして高い評価
レガシーメディアの需要
レガシーメディアがふたたび活躍する社会とは
リアル店舗の「MAG-LAB」とネット店舗の「フラッシュストア」
自社運営の物流センターで多様なニーズに対応
記録メディアサービス部門のユニークな活動
メイドインジャパンの象徴である太陽誘電の技術を継承


第3章 日本で初めてフロッピーディスクを売った男

規格外の人間性と経歴を持つ男
豊かな自然に囲まれた幸せな少年時代
貧乏な生活が自分の芯を鍛えてくれた
努力必達―生きる真髄を教えてくれた先生
母親の深い愛情に見送られて東京の大学へ
大学時代はほとんど労働者
記録メディアの部署に配属されたのは、いちばん出来が悪いから
最初からこれを一生の仕事にと
ダブリンで見た驚きのコーティング製造
復活する磁気テープ
師匠を求めて退社


第4章 「努力必達」で走りぬいた創業時

日本の記録メディアの元祖である津積譲二のもとで
仕事の厳しさも社会人としてのたしなみも教えられ
他人の金、他人の机、他人の電話で始めた自分の会社
配達はリヤカー、仕事着は白衣
努力必達で苦難を乗り越え
従業員との喧嘩も辞さず
会社の前の公園が商品の集積場に
3.5インチのフロッピーディスク製作秘話
吹き溜まりから聖地に、常に時代の先端を受け入れるのが秋葉原の魅力


第5章 世界の商人たちと渡りあう

飛びこみで台湾と中国の企業に営業
ドバイ進出を促したアラブ商人への憧れ
パキスタン人から教わった商売の原則
「金じゃない、一緒に仕事をする人間が欲しい」と言ったユダヤ人
イギリスでの取り引きでは3億円が回収不能に
出会った人とは親密になるよう努力する
1000万円単位で買ってくれたペルシャ商人の末裔
ストレートに、ダイレクトに
少年時代の憧れが現実に
旅もひとつの修行なり


第6章 磁気研究所が拓く未来

毎日の戦いのなかから生まれた企業理念
人を育てる、自分自身の問題点を洗い出す
営業という仕事とは
100億円企業になるまでは肩書きなし
いつも危機感を持ち、コツコツとやり続ける
切羽詰まったところで見つけるアイデアは窮余の一策となる
息子から見た齋藤
コンピュータ社会の闇の部分
運を自分でつくる才能
人との出会いも「努力必達」
かけがえのない事業パートナーとの出会い
社会貢献、途上国に学校建設


IN通信社の本 セミオフィシャルサイトへ行く



TSUTAYAで検索

その他のカテゴリー

**たかのゆり | **山野正義 | **松村博史 | **鶴蒔靖夫 | *人材ビジネス・アウトソーシング | *冠婚葬祭・保険 | *医療・医薬・健康 | *建築・建設・不動産 | *情報・通信 | *投資・金融 | *教育・学校・塾 | *流通・サービス | *環境・電力 | *社会 | *福祉・介護・高齢者 | *美容・理容 | *製造・メーカー | 24歳で起業した社長“快進撃の裏側” | WASHハウスの挑戦 | “匠”のアウトソーシング | “本気”になったら「大原」 | “真の医薬分業”へのあくなき挑戦 | 「最優」へのあくなき挑戦 | 「美しさ」が「感動」に変わる瞬間(とき) | いま、ふたたび維新に挑む | お泊りデイサービスは、なぜ必要なのか | お金のない人は知恵を出せ | すべては学生のために | どうする!医療改革 | アビストの挑戦 | エコスタイルの挑戦 | カーシェアリングの時代がやってきた! | クレアスライフの挑戦 | グランヴァンの挑戦 | グローバル・リンクのエネルギー革命 | ハートフル エンジニアリング | ベストケアの挑戦 | ボランティアの時代 | メモリードグループ 100年企業への挑戦 | 不運は神様からのおくりもの | 二松學舍大学の挑戦 | 人と技術をつなぐ企業 | 保育士がたりない! | 信頼が絆を生む不動産投資 | 光触媒の新時代 | 創発経営 | 医学部受験 富士学院の軌跡と奇跡 | 合人社グループの挑戦 | 喜働って、なに? | 国民は150人の命を救えるか! | 地球サイズの人づくり | 夢を叶える予備校 | 大学からの地方創生 | 大学教育再生への挑戦 | 小さな泡が世界の生活を変える | 建設業の未来を支える人づくり | 心で寄り添う“終の住処” | 情報活用で未来を切り開く | 感動のある人生を。 | 感謝な心 | 技術立国 日本の復活 | 日本の医療現場を考察する | 日本の美容を支える力 | 東北の小さな大企業 | 理想の介護を求めて | 目覚めよ、薬剤師たち! | 経営の条件 | 経営道を究める | 自分らしい人生の卒業を望むあなたへ | 薬剤師新時代の到来 | 薬局新時代 薬樹の決断 | 製造業の未来をつくるアウトソーシング | 記録メディアに人生をかけた男 | 逆境こそわが人生 | 進化するコインパーキング

カテゴリー

無料ブログはココログ