「再エネ農業」で所得倍増!

2019/01/24

『「再エネ農業」で所得倍増!』 前書きと目次

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「再エネ農業」で所得倍増!
~電気と野菜を同時につくるソーラーファーム(R)


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-450-1
初版発行:2019年1月23日




はじめに


 はじめに

農業のことを語ろうとすると、最近では明るさよりも、困難な現状のほうがどうしても浮かびあがってくる。農業従事者の高齢化や後継者不足が深刻化し、衰退傾向は隠しようもない。食料自給率も38%と低いままである(2017年度、カロリーベース概算値。農林水産省「平成29年度 食料自給率・食料自給力指標について」)

そんななかでも、数年前から若者のあいだに、新たな動きが芽生えつつあることを感じる。先日も、若者の意識の変化を感じさせる内容の新聞記事を見た。果樹農家を営む祖父が高齢のため廃業を決意したときに、大学を卒業した孫が後継者として名乗りをあげたというエピソードである。

その農家は、高齢のため畑仕事が厳しくなってきていた。しかし息子は公務員をしており、後を継ぐ状況にはまったくない。そのため「自分の代で農業は終わり」と決意し、畑の梨の木を伐採しようとチェーンソーを持ち出した。そのときに、就職活動中だった孫が「自分が継ぐ」と申し出たという。

これは7年前の出来事で、いまは90歳を超えた祖父が、30代になった孫の監督役として、元気に孫と一緒に栽培に精を出しており、そんなふたりを公務員の息子(孫の父親)も側面から応援しているそうだ。

小さな記事ではあったが、「農業を守る」といった使命感などではなく、「モノづくりが好きだから」という普通の気持ちで農業に向きあう若者が出てきたことに、私はひさしぶりに爽やかなものを感じた。

未来を開くのは、やはり若者たちである。政府は数年前から矢継ぎ早にこれまでのタブーを破るような農業政策を打ち出しているが、それらも、農業を魅力のあるものにすることで若者の参入を促すことを目的としている。

自立した農業、消費者と直接つながる農業、社会の変革に貢献する農業―、そうした環境が整えられたなら、若者たちも農業に目を向けていくのではないか。そんな「新しい農業を創造するためのプロジェクト」が、官民をあげてさまざまな手法で行われ始めている。

そのなかでも群を抜いた実績を残しているのが、群馬県前橋市に拠点をおいて活動しているファームドゥ・グループである。同グループは、農産物の流通を手がけるファームドゥ株式会社、太陽光発電と農業を組み合わせた新しいビジネスモデルを提案するファームランド株式会社、農業に従事する若手人材の育成を目的とする農地所有適格法人 有限会社ファームクラブで形成されている。

グループ代表の岩井雅之氏は、農家の三男に生まれ、生産者の生の声をくみとりながら徹底した農家視点で独自のしくみを創出した。活動の根底にあるのは、「農家の所得を上げること」「農業を儲かる産業に転換させること」という果敢なベンチャー精神である。

「若者にとって魅力がある農業とは、儲かる農業であるということ。ビジネスとして成り立つこと」

と明快な方向性を打ち出し、「農業には夢があり、おもしろい」とアピールする様子には、いささかの迷いもない。その夢を実現させるために独自のしくみを構築し、農家の収入向上のために力を注ぎ続けてきた。

しくみのひとつは、生産者と消費者を直接結びつける、独自の流通システムである。ファームドゥでは、地元の群馬県を中心に、埼玉県、千葉県などで農産物と特産加工品の直売所「食の駅」を12店舗運営し、東京都内や横浜市をはじめとする都市部では小型の農産物直売所「地産マルシェ」を19店舗展開している(2018年11月現在)。産地で収穫された農産物は、ファームドゥが構築した物流システムにより、収穫後24時間以内にこれらの店舗の店頭に並ぶ。

これらの店舗では、販売される農産物の価格は生産者自身がつけており、どの店舗にどれくらいの農産物を出荷するかも生産者自身が決めている。また、規格外となった農産物も売ることができ、余った野菜は加工して販売することも可能だ。この直売方式により、農家の所得は従来の2倍にもできる。

もうひとつのしくみは、壮大な実験とも言える、太陽光発電事業と農業を合体させた「ソーラーファーム(R)」である。農地に太陽光パネルを設置し、その太陽光パネルの下で農産物を栽培することで、農家は農産物の販売収益に加えて売電による収益も得られ、ここでも所得は2倍となる。

つまり、農業の6次産業化と太陽光発電により、農家や地域の収入を4倍にすることができるのだ。

詳しくは本文に譲るが、この「半農半電」のシステムで特許を取得した岩井氏は、「ソーラーファーム(R)」のビジネスには「エネルギー」「農」「環境」という3つの重要なキーワードが含まれていることの意義を何度も語った。二酸化炭素の削減にも効果があり、地球環境とも密接に関連する「ソーラーファーム(R)」が、農業における画期的なビジネスモデルとして世界に普及することも、けっして遠い夢ではないだろう。この「ソーラーファーム(R)」は現在、国内で42カ所(2018年11月現在)が稼働しているほか、国外にも進出し、モンゴルでも稼働中だ。

1994年の創業からわずか25年たらずでここまでの発展を成し遂げた岩井氏の足跡は、当然、波乱に満ちている。誰もやらないことをやることこそが人生の醍醐味であるとして、わざわざ険しい道を選んで進んできた。「失敗を恐れるな、そこから大事なことを学べばいい」との心意気で、何度も挫折を味わいながらも、そのたびに前より大きくなって再生する岩井氏に、私は事業者としての非凡な才能と実力を感じた。

しかし、私が岩井氏に最も信頼感を覚えたのは、狭い農地で丹精込めて農産物を栽培し続け、農協の規格からもはずれてしまうような山間の中小零細農家に向ける、配慮に満ちた温かな眼差しにである。岩井氏が生み出した「革命的」とすら呼ばれるさまざまなしくみも、そうした中小零細農家を助けたいという思いが、そもそもの発端になっている。農業を営む人への敬意と共感が時代を動かすビジネスモデルをつくりあげ、それが多くの人を巻き込んで、ファームドゥ・グループは着実に成長を続けているのだ。

精緻に組み立てられたしくみの中身や岩井氏のパーソナリティに関しては本文に詳述したので、ぜひ読んでいただきたい。そこからは、官にはできないことに挑む民間企業のあり方など、さまざまなヒントが得られるはずだ。また、農業に関わる人はもちろん、農業をめざす若者、そして多くの一般読者にとっても、本書は貴重な指南の書となるだろう。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。


2018年12月  鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 日本の農業をめぐる課題と対策

農地面積、農従者人口、農家戸数、やせ細る農業
工業化が農業沈滞を招き、高学歴化が後継者をなくす
耕作放棄地がもたらすクライシス
農業を成長産業へと先導するビジネスモデルを創出
6次産業化はブームに終わるのか
次世代技術を駆使する「スマート農業」
企業の参入が農業のあり方を変えた
「攻めの農業」で180度の転換をした政府
兼業で賄う儲からない農業、農協への斬り込みが始まった
次々と国が打ち出す強化策
徹底した現場主義で農業生産者の意識を変えていく


第2章 日本の農業を変えるソーラーファーム事業

太陽光発電と農業を組み合わせた「ソーラーファーム」とは
「夢の農業王国・中里農場」に広がる「ソーラーファーム」
FIT制度から広がった太陽光発電事業
原子力発電所の事故をきっかけに太陽光発電事業に
一時転用許可によってやっと開けた営農型太陽光発電
「ソーラーファーム」でどれだけ収益をあげることができるか
「半農半電」の利益を農家だけでなく地域に広く還流
優良事例として農林水産省も紹介する「ソーラーファーム」
農業の新しいかたちを提示する「ハウス養液型ソーラーファーム」
多様なつながりを育む協同体「中里農場」
一時転用許可延長の背景にあったファームドゥの役割
あらゆる農家に適応する「ソーラーファーム」のしくみ


第3章 海外へ夢を広げるファームドゥ・グループ

モンゴルの大地に広がる「ソーラーファーム」
新鮮な野菜を望んでいたウランバートルの人々
モンゴル農業の厳しさと二酸化炭素ビジネスの存在を知る
二酸化炭素削減が国際的なビジネスを生む
モンゴルでフル活動している「ソーラーファーム」
「北極星勲章」を授章


第4章 生産者と消費者をダイレクトに結ぶファームドゥの流通革命

新鮮な朝どれの野菜が満載
店舗スタッフは生産者と消費者の架け橋
価格を自分で決めるシステムが自立の意識を促す
約4000人の登録生産者は大半が中小零細農家
画期的で緻密な物流システムを構築
農協に依存しない体質に
農協は農業のために投資すべき
よいものをつくれば報われるファームドゥの産直販売システム


第5章 常に農家とともに歩んだ岩井雅之の人生哲学

農に根ざしたビジネスモデルを次々と開発
「遠いところ」に憧れた農家の三男坊
海底油田掘削の映像を見て海洋学部へ
農業資材専門店との出合いが人生を決めた
無収入の身になり行商へ
開店したとたんに問屋とメーカーの抵抗にあう
農家のデパートに千客万来
やむにやまれぬ事情で始めたファームクラブ
頼まれるままに始まった農産物の直売
農業資材専門店の危機
大企業の農業参入は失敗の連続だった
「食の駅」オープンで売上前年比220%を達成
第1号店から完成形だった「食の駅」
6次産業の強化でトータルな農業支援ビジネスを
電力事業に参入するも、いきなり挫折を味わう


第6章 日本から世界へ発信する「新しい農業のカタチ」

夢に向かって新しいこと
オランダで生産性の高さと国家的なしくみの巧みさを学ぶ
モンゴルに続き、中国とベトナムへの進出計画
期待の新事業、養魚事業
儲かる農業は新たな広がりを見せていく
「新世代太陽光発電」を開発中
パートナーとして夢と役割をシェアし共存共栄をめざす
若者に夢を
夢に挑戦、多彩なアイデアを生み出す活力
100年先、200年先の農業のために
人生哲学を込めた語録


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