日本をマネジメントする会社

2019/08/06

『日本をマネジメントする会社』 前書きと目次

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日本をマネジメントする会社
~ビッグデータで社会を支えるJMの建設業イノベーション~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-459-4
初版発行:2019年8月11日 初版発行




はじめに

日本の建設業界はいま、都市部の再開発や2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、好景気に沸いている。ただし、これは都市部の大手建設会社に対してだけ言えることであり、地方の中小工務店の多くは、その恩恵に預かってはいない。それどころか、地方では人口減少に加え、建設工事に携わる技能労働者(職人)の高齢化も相まって、工務店の廃業も相次いでいるという。

また、わが国では、高度経済成長期に集中的に整備された、道路や橋梁、上下水道をはじめとする都市インフラや、ビル、マンションなどの老朽化が進み、その保守、修繕、改築などへの対応が喫緊の課題となっている。だが、建設業は「きつい、汚い、危険」の3K業種と言われ、他の産業に比べて若者離れが顕著であり、現場では、新築、改修工事ともに人手不足が常態化している状況だ。国としても、深刻化する人手不足に対処するために、外国人労働者の受け入れ拡大策を打ち出してはいるが、業界の改革なくしては、根本的な解決にはなりえないだろう。

そもそも、建設業界に人が集まらないのは、談合がらみの不祥事が後を絶たない古い体質や価値観、受発注の過程での不透明な取引、元請のゼネコンを頂点に複数の下請業者からなる重層下請構造など、建設業界のもつ体質そのものに問題があるからではないだろうか。

実際、建設業就業者の減少が顕著になったのは1990年代後半からであり、特に20歳~24歳の若者の入職者が激減している。1990年代といえば、建設業界ではバブル経済崩壊後の民間投資の減少を補うべく、大型の建設投資(公共事業)が増加したころだ。1993年には、自由民主党元副総裁・金丸信の巨額脱税事件の押収資料から公共事業の入札などをめぐって大手ゼネコンが政界に賄賂を渡していたことが発覚し、国会議員、知事、市長などが摘発されるという、ゼネコン汚職事件で世の中は大きく揺れていた。

当時、準大手ゼネコンである前田建設工業株式会社の総合企画部に身をおきながらも、談合がまかり通る業界の慣習に怒りを覚え、建設業界を改革しようと敢然と立ち上がった男がいる。それが本書で紹介する、株式会社JM(ジャパンマネジメント)(本社:東京都千代田区)代表取締役社長の大竹弘孝氏である。

「営業で談合を起こしたのなら、営業部はいらない。大きな仕事が欲しくて政治資金が流れたのなら、小さな仕事をやればいい」と考えた大竹氏は、建設業界が抱える問題点を反面教師として、小口案件である建物の保守とメンテナンスを基軸とした新しいサービス「なおしや又兵衛」を2000年に立ち上げた。

当初は前田建設工業の社内ベンチャーとしてスタートしたが、2007年にJMを設立して独立し、社長に就任。新築工事は行わず、平均単価十数万円の工事を、セブン‐イレブン・ジャパンとの契約を皮切りに、全国に多店舗展開する企業から継続的に受注するというビジネスモデルを確立した。当初から営業部をおかず、顧客とは提携関係を締結するという方針を貫いており、提携先には、セブン&アイ・ホールディングス、ユニクロ(ファーストリテイリング)、出光興産、日産自動車など、錚々たる企業が名を連ねる。

JMの使命は、「建物の医者」として、地域の建物と設備の健康を守ることである。顧客の「困った!」を助けるために、工事の依頼には24時間365日体制で対応し、いまでは、保守対象とする施設数は全国に10万施設、年間に手がける工事数は18万件以上、売上高は301億円(2018年度)にのぼるまでに成長した。

こうした高い実績を支えるのが、「建設業関連では初の試みで、それが他社にはない大きな強みになっています」と言って大竹氏が胸を張る、JM独自のフランチャイズ制度だ。地域の事情をよく知る全国各地の工務店とフランチャイズ(JMでは「サテライト」と呼ぶ)契約を結び、調査、点検、工事はそれらサテライトおよび協力会社に委託し、JMはそのために必要なICTツールやノウハウを提供する。JMと全国59拠点のサテライトは、従来の建設業における元請と下請といった関係ではなく、ともに成長しあう、あくまでも対等な、いわば「JMグループ」とも言える関係である。仕事の主役は「建物の医者」として最前線の現場で施工を担う職人であり、サテライトおよび協力会社が抱えるその数は全国で1万人にのぼる。

また、JMの特徴のひとつに、徹底したICTの活用があげられる。

「労働生産性が最も悪いと揶揄される建設業を変革するには、ICT(ソフト)と職人(リアル)を融合させる必要がある」と考えた大竹氏は、業務効率や情報共有、生産性の向上を図るために、早くからICTツールの開発に力を注いできた。修理依頼を受けてから代金を請求するまでをシステムで一元管理し、顧客に対して情報の「見える化」を進めるとともに、専用アプリケーションを搭載した「JM‐Pad」と呼ばれるタブレット端末を使って作業記録を電子化し、職人の現場作業の効率化につなげた。

JMの事業は、現在は建物の保守・メンテナンスが大きな割合を占めているが、JMが本来めざそうとしているのは、持続可能な社会に向けた「メンテナンスフリー」の実現である。これまでの工事で蓄積された膨大なデータをもとに建物の「健康状態」を分析することで、よくある建物のトラブルをいち早くみつけだし、メンテナンスフリーにつなげるためのさまざまな提案やアドバイスを顧客企業に対して行っている。

こうした取り組みにより、JMは事業領域を、保守・メンテナンスにとどまらず、建物の計画・設計段階から関わるライフサイクルマネジメントやエネルギーマネジメントへと広げてきた。さらに近年では、コミュニティにおける生活コストの削減という観点から、人口10万人以下の都市を対象に、タウンマネジメントとも言うべき地域活性化支援事業にも乗りだしている。

またJMでは、最先端のICTを使いこなす新しいクラフトマン像をつくりだすことで、職人不足が常態化する建設業界に若者を積極的に取り込もうとしており、技能者や技術者の育成にも力を注いでいる。

本書は、旧態依然とした体質が問題視される建設業界において、前例のない取り組みで新しい建設業のあり方を示し続けているJMの活動を紹介するとともに、同社社長・大竹弘孝氏の経営理念やビジネス哲学、および持続可能な社会の実現に向けた熱い思いに迫るものである。建設業界関係者のみならず、快適な街づくりを願うすべての方々にとって、本書がなんらかの指針となれば幸いだ。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

2019年6月  鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 日本の建設業界を取り巻く現状と課題

ゼネコン談合汚職が横行した1990年代
いまだに談合を根絶できないのはなぜか
都市部と地方で二極化が進む建設業界
オリンピック後の建設市場縮小を見越した動きも
人手不足と高齢化が進む建設業界
人材確保には技能労働者の処遇改善が不可欠
人手不足解決策として外国人労働力に期待
建設業もグローバル化の時代へ
片務的な契約やICT化の遅れが働き方改革のネックに
建設業界独特の重層下請構造
職人自らが下請体質から抜け出す努力を


第2章 建設業界の常識を打ち破るビジネスモデルを創出したJM

「建物の医者」としての保守・メンテナンスに着目
大手コンビニエンスストアチェーンとの提携が起点に
建設業界初のフランチャイズ制を導入
顧客目線に立って職人たちの意識改革を徹底
パートナーが幸せ感を持てるように
ICTを使いこなす新しい職人像を打ち立てる
フランチャイジー各社の経営を全面サポート
BtoBからBtoCへ


第3章 全国に広がる「なおしや又兵衛」のネットワーク

新事業スタート時から全国に拠点を設置
協力会社を組織化し、効率化を図る
フランチャイズ制導入で地域密着型の事業を展開
全店一斉工事を可能にする機動力
フランチャイジーにとっては安定した仕事量が魅力
フランチャイジーのなかにJM専業会社を創設
サテライト社員も参加してのウェブ会議を毎週開催
24時間365日対応のマネジメントセンター
クレーム対応もマネジメントセンターの重要な役割
進捗管理やデータ分析の機能も兼ね備えたマネジメントセンター


第4章 ICTツールの活用と情報戦略によるメリット

ICTは会社の生命線
現場の職人に寄り添うソフトを次々に開発
産廃処理のエビデンスシステムをいち早く導入
3Dモデルの作成で設計プロセスの革新に挑む
スマートフォンで撮った写真から2D・3Dモデルを自動作成
住宅のリフォーム費用を自分で見積もることも
世界に広がるICTソリューションパートナー
システム開発には現場の声を反映
統合データベースを活用してAIの開発も


第5章 創業社長・大竹弘孝の経営理念とビジネス哲学

ゼネコンのなかでも異色の存在
独断で進めた「なおしや又兵衛」サービス
ダム建設現場から着想を得たビジネスモデル
建設業の構図を変えて製造業に近づける
フロントランナーになれ
「困った人を助ける」がすべての活動のベース
行動すれば、結果はあとからついてくる
働きやすい環境づくりを整備
職人の技能を競う「JM職人甲子園」を開催


第6章 サステイナブル社会を見据えるJMの未来展望

BtoCの本格的始動に向けたトライアル
建物のビッグデータをマネジメントに活用
自分の家は自分で守る時代へ
生活コストの削減を図るタウンマネジメント
PFIによる地域活性化支援事業
アジア諸国での拠点網拡大に意欲
次世代を担う職人の育成にも尽力
新生JMとして「持続可能な社会」に貢献する企業へ


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