2020/05/25

『ファインバブルが地球の未来を救う』(前書きと目次)

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ファインバブルが地球の未来を救う
~サイエンスのSDGs宣言~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-463-1
初版発行:2020年5月24日 初版発行




はじめに

本書の主人公である株式会社サイエンス創業者の青山恭明氏に、私が初めて出会ったのは、いまから約30年前の、青山氏がまだ20代のころだった。当時の青山氏は、人なみはずれた勢いと明るさで周囲を巻き込む若者で、これから世の中に打って出ようとする熱気には、一種のオーラのようなものが感じられた。

以後、青山氏と私は、途中に多少のブランクはあっても、なにか大きな節目を迎える際には再会を重ねてきた。

その青山氏が先日、還暦を迎えたと聞き、私は思わず感慨を覚えた。

仕事柄、私はこれまでに数多くの経営者と出会い、交流を重ねてきた。そのなかには、厳しい競争のなかで打ち負かされ、表舞台から去っていった人も少なくはない。まさに悲喜こもごもの経営者人生を目の当たりにしてきたわけだ。

そうしたなかで、まだ青年だった時代に出会い、その将来を楽しみに感じていた青山氏が、大きな挫折を乗り越えて、さらにその先の世界へと向かっていこうとする姿を見られることが、私にはたいへん心強く感じられ、また、非常にうれしくもある。

サイエンスは、われわれの暮らしに欠かせない「水」に特化したビジネスを展開している企業だ。そのビジネスの最大の特徴は、微細気泡を発生させるファインバブル技術を導入していることにある。

ファインバブル技術を使った商品と言われても、すぐにはピンとこないかもしれない。しかし、太い油性ペンで女性の頬に塗られた黒インクがシャワーの水を当てると落ちていくテレビCMと言えば、「ああ」と思い当たる人も少なくないだろう。このCMで使われているシャワーヘッドが、サイエンスの「ウルトラファインミスト ミラブルplus」なのだ。

「ウルトラファインミスト ミラブルplus」(以下、「ミラブルplus」と略す)は、泡の直径が1マイクロメートル未満の超微細な気泡であるウルトラファインバブルをミスト状の水流に含むことで強い洗浄力と高い水分浸透性を発揮する、話題のシャワーヘッドだ。泡の力で隅々まで汚れを落とすという革命的な製品で、テレビのワイドショーや情報番組などでも紹介され、爆発的なヒット商品となった。

また、湯船でお湯に浸かるだけで汚れが落ちる「マイクロバブルトルネード」も、2009年に発売を開始して以来、好調な売れゆきだ。これは、ファインバブル技術を利用した初めての民生品(一般家庭用製品)として一般社団法人ファインバブル産業会の「ファインバブル製品認証登録制度」第1号に選定された製品である。ファインバブル発生装置を既存の戸建やマンションのバスタブにも設置可能なほど小型化した、それまで誰も考えつかなかったこの製品は、いまでは家庭だけにとどまらず、介護施設や有名ホテルなどでも導入するところが増えている。

サイエンスが創業したのは2007年8月のことだ。創業時のメンバーは、創業者の青山氏と、現・サイエンス代表取締役社長の水上康洋氏、それに現・株式会社ライフデザインホーム代表取締役社長の根郷陽一氏の、わずか3人だけだった。

資金も取引先もなにもないなかで旗揚げしたサイエンスの、当時の取り扱い商品は、家中の水をまるごと浄活水化させる「サイエンス・ウォーターシステム」(セントラル型浄活水装置)のみだった。しかし、創業当初からファインバブル技術に着目していた青山氏は、さまざまな難関を乗り越えて、2009年に「マイクロバブルトルネード」を完成させ、それまでは産業用が中心だったファインバブル技術を民生品として活用する市場の開拓を、いっきに推し進めた。

そうした青山氏の活躍に大きな可能性を感じた私は、青山氏とサイエンスの事業を綿密に取材し、2016年に『小さな泡が世界の生活を変える』(IN通信社)という著書を上梓したところ、多くの反響を得ることができた。

しかしそれは、サイエンスにとってはただの序章にすぎなかった。その本のなかでさわりだけ紹介した、家庭のシャワーヘッドに取り付けるウルトラファインバブル発生装置「ナノシャワー」がさらなる進化を遂げ、ファインバブルを含んだ水流をワンタッチでストレートとミストに切り替えて使える画期的なシャワーヘッドに生まれ変わり、「ミラブル」として2018年に売り出されると、いっきにブレイクした。この「ミラブル」のヒットによりサイエンスは、会社の知名度はもちろん、規模も人材も考え方も、すべてが新たな段階へと踏み出すことになったのである。

無限の潜在能力を有するとも言われるファインバブル技術は、農業、水産業、医療、工業など、幅広い応用分野に活用され、世界の産業界に大きなイノベーションを与えようとしている。実は、その技術の開発および進化の最前線を走っているのは日本だ。いまは、日本発のファインバブル技術を世界の標準規格とするために、官民あげて推進している最中だ。

そうしたなかでサイエンスは、民間企業ならではのフットワークの軽さで分野と分野の垣根を軽々と飛び越え、「ファインバブルアプリケーション開発メーカー」として、ボーダーレスな事業展開へと積極的に向かっている。その自在な動きとサイエンスならではのスピード感で、これからの人々の暮らしを大きく変えていくだろう。

さらにサイエンスは、より快適な暮らしを実現させる「新習慣」を提案し、それによって環境改善に貢献していくというミッションを掲げ、その実現に向けて邁進している。2019年10月には、国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の達成に協力する企業として「SDGs宣言」を発表し、環境保全への貢献を会社の指針にすることを内外に打ち出した。ファインバブル技術は、安全な水の確保や、健康と福祉の促進、海洋資源の保護、さらには住みよい街づくりなど、広範な領域に貢献するだろう。

「私はファインバブルに魅せられた男です。ファインバブルで地球の未来を救いたいのです」

と語る青山氏は、孫の顔を見るたびに「負の遺産を残してはいけない」と強く思うという。

私と初めて出会ってからの約30年のあいだに、青山氏はいくつもの試練を乗り越えなければならなかった。仕事での大きな挫折もあったし、父親としての悩みも経験した。だが、困難があるたびに甦り、生きる力を取り戻していく青山氏の歩みには、心を打つものがある。

かつて勢いだけで他を圧倒していた若者は、幾多の試練を乗り越えて、いまは人の痛みを知り、精神的に深く円熟した大人へと成長した。自社で働く社員はもちろんのこと、その社員の家族もまた、みな「自分の家族」と思い、とことんつきあっていこうという青山氏の姿勢は、この時代だからこそ多くの人々に勇気と励ましを与えるのではないか。

本書は、未来に向けたサイエンスの事業活動およびファインバブル技術のさらなる可能性に焦点を当てるとともに、青山恭明氏の人生哲学や経営理念を詳述したものである。ここからは、ファインバブルに関する基礎知識を得たい、人を育てる極意を知りたい、経営者の胸の内を窺いたいなど、読者がもつさまざまな興味や関心に対するヒントを読み取ることができるだろう。

そうしたなかでも、最も心に迫ってくるのは青山氏の「熱い思い」であると思う。その「熱い思い」が読者にとって、生きるうえでのなんらかの指針となれば、著者としては望外の喜びである。

なお、本文中の一部の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。


2020年4月  鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 SDGs達成を担う「小さな泡」

SDGsは未来社会への世界共通の羅針盤
地球環境を救う使命をもったSDGs
サイエンスが打ち出した本気の「SDGs宣言」
自分の孫が50年後も安心して暮らせる社会をつくるため
日本政府のこれまでの取り組みと現状
幅広い分野でSDGsに貢献するファインバブル技術
サイエンスの商品を通して環境に貢献を


第2章 「新習慣」をつくる夢のシャワーヘッドと入浴革命を起こしたバス

微小な泡が生み出す夢の効果が大評判に
優れた使い心地と効能を実現した「ミラブルplus」
臨床研究を90日間実施し、アトピーへの効果を確認
人類初のファインバブルは日本から
マイクロバブルの民生用領域を開拓
ファインバブル技術で入浴革命を実現
三女の「塩素系アトピー」をきっかけに
家中の水すべてをクリーンにする「ウォーターシステム」
日本初の一般向けファインバブル製品「マイクロバブルトルネード」
さらに広がる「マイクロバブルトルネード」の導入先
クリーニング機能を搭載した「ミラバス」
見守り機能のついた「ミラバス・ガーディアン」
待望のキッチン用水栓「ミラブルキッチン」
ECサイトでの販売を禁止した理由
たむらけんじがサイエンスの正規代理店に
自らの会社を譲り、新たにサイエンスの代理店を創業した男


第3章 ファインバブルの可能性と未来

FBIA認証はサイエンスのもつ技術力の高さの証
ファインバブルのもつ効果とメカニズムの解明が進む
ファインバブル規格の国際標準化に向けて
マイクロバブルとウルトラファインバブルの違いとは
ファインバブル実用化の広がり
住宅用ファインバブルシステムをハウスメーカーと共同開発
ファインバブルアプリケーションの開発メーカーとして
ファインバブル技術は地方の中小企業からグローバル展開へ


第4章 感動と喜びを与え続ける

なるべくしてなったサイエンスの急成長
どんな会社も理念からはずれると潰れてしまう
100年計画を覚悟した壮大な理念
サイエンス式採用で理念を実践
人材育成は命がけの仕事
サイエンスで人間的成長を
「素直人」が集まる濃い関係
積極志向の「赤ボタン」を押しながら、上司について東京へ
感動が渦巻く「望年会」
建前だらけの「働き方改革」とは逆を行く
「スピード」こそがサイエンスの強み
経営者とは「決断」をする人間


第5章 感謝の出会いがあってこそ ― 青山恭明の直球人生

人に喜んでもらうことばかりを考えていた僧侶の父親
運命の出会いは高校生のとき
2年間で200万円つくる約束を果たして結婚へ
アメリカ留学で受けたカルチャーショックで「水」に注目
次女を襲った急性白血病に自分の弱さを思い知らされる
震災被災者の言葉で自分が果たすべき役割に気づく
毎晩、寝る前に仏壇に手を合わせ
経営者にとっての伴侶
苦闘のなかで手を差し伸べてくれた最大の恩人
8月7日は「恩人の日」
サイエンスのCMは「実証広告」
生きる力をユーザーに与える
1年がかりのサプライズ、号泣の還暦パーティ


第6章 サイエンスが描くファインバブルと地球の未来

いきなりの万博出展宣言
10歳若返るパビリオンに「ミラバス」「ミラブルplus」が登場
2人のキーパーソンとの出会いが「ほら」を「現実」に近づけた
新製品開発と海外戦略
ライフデザインホームを組み込みホールディングス体制へ
100年計画と後継者問題
サイエンスが社会に存在する意義とは
ファインバブル技術が地球の未来を救う


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2020/03/10

『「梅の花」のおもてなし』 前書きと目次

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「梅の花」のおもてなし
~感動を生む「梅の花」の秘密とは~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-363-4
初版発行:2012年4月11日 初版発行




はじめに

近年、世界中で日本食ブームが巻き起こっている。海外の日本食レストランの数はいまや二万五〇〇〇店以上と推定されており、「寿司」などの高級店だけでなく、居酒屋のような大衆的な店も増え、ブームに拍車をかけている。なかには、日本人以外の手による、正当な日本食とはほど遠い「日本食もどき」の店もあるという。

それほどまでに日本食がもてはやされるようになった背景として、世界的な健康志向の高まりがあげられるだろう。米を中心に魚や大豆など、多彩な食材を用いる日本食は栄養バランスにすぐれ、新鮮な素材の持ち味をそのまま生かした調理法が多く、肉中心の料理に比べカロリーも低い。そうした日本食のヘルシーさに、欧米人をはじめ、これまで脂肪やカロリーをとりすぎていた人たちが注目するようになったのだ。

しかもヘルシーなだけでなく、日本食は料理の種類も豊富で、それぞれにおいしく、器や盛りつけなど、見た目も美しい。昨今、日本のポップカルチャーに端を発し、日本のさまざまな文化が「クールジャパン(かっこいい日本)」として人気を呼んでいるが、食文化もその一つである。料理そのものだけでなく、盛りつけなどを含む和のしつらい、さらにはもてなしの精神や作法なども含めた文化として、国際的に高く評価されているのだ。

しかし、東日本大震災にともなう福島第一原発の事故は、日本の食文化にも少なからず影響をおよぼし、日本食を目あてに訪れる海外からの観光客が減少。日本食への安心・安全・信頼が揺らいでいることも否めない。

そんななか、「日本食文化をユネスコ世界無形遺産に」という動きがにわかに高まり、平成二十五(二〇一三)年十一月の登録をめざし、目下、農林水産省を中心に、平成二十四年三月の申請に向けた準備が進められている。世界無形遺産への登録により、日本食の安全性やおいしさを内外にアピールするとともに、古来からの年中行事や人生儀礼とも結びついた伝統ある日本の食文化を、次世代に継承していこうというわけだ。

おいしい料理を味わうと人は誰でも幸せな気分に浸れる。特に日本では、季節の移ろいが感じられる、心地よい空間でそれが味わえれば、なおさらだろう。日常的な外食ではなく、レジャーとして外食にそうした癒しを求める人も少なくないようだ。

日本生産性本部余暇創研の『レジャー白書二〇一一』によると、平成二十二年の日本人の余暇活動として、外食はドライブ、国内観光旅行に次いで第三位。平成二十年までは長い間、外食が首位の座を占めていたが、不況や低価格化のあおりを受けて第三位に後退している。とはいえ、やはり身近なレジャーとして根強い人気があることに変わりない。

とりわけ女性の場合、ふだんは家庭で料理をつくる立場のことが多く、たまには外食でおいしい料理に舌鼓を打ち、お客として心配りが行き届いたもてなしを受け、心豊かな時間をすごしたいと思っている人は多いのではないだろうか。ただ、その場合もおいしいものは食べたいけれど、太りたくはないというのがおおかたの女性の本音だろう。

そんな女性のニーズを先取りし、健康と癒しをキーワードにした湯葉と豆腐の店「梅の花」を、全国六八カ所に展開しているのが、本書で紹介する株式会社梅の花(本社:福岡県久留米市、代表取締役社長:梅野重俊氏)である。

福岡・久留米に「梅の花」一号店がオープンしたのは、女性の社会進出が進み女性の時代といわれた昭和六十一(一九八六)年のことだ。家庭の主婦も遊びや趣味など、自分のために費やす時間やお金を持てる時代になっていた。

そこで「梅の花」では、ターゲットを女性に絞り、「女性がおこづかいで月に一度、ちょっと贅沢ができる店」をコンセプトに、女性にはなじみの薄かった料亭のような雰囲気を提供することにしたのである。

当時、地元でのランチの相場が五〇〇円という時代に、コース料理は二三〇〇円を超える価格設定だったにもかかわらず、連日、あっという間に予約で埋まるほどの盛況ぶりだった。

お客からお客へと「梅の花」の評判は口コミで広がり、その後、九州はもとより、関西、北陸、関東、東北、北海道と、全国進出を果たしている。

自家製の湯葉と豆腐は、大豆や水といった素材から製法までとことんこだわり、妥協を許さないおいしさを追求。そのほかの素材も、最高のものが厳選され、極力無添加の材料を使用している。

また、当初から全国展開を視野に入れていた同社では、昭和六十二年には早くもセントラルキッチンを設置している。店舗ごとの味のブレをなくすため、各店舗には職人は置かず、メインの料理はここで一括して手づくりし、その日の夜に全国の店舗へ出荷される。これにより、店舗の厨房では最終的な仕上げと、盛りつけを行うだけですむというわけだ。そして、熱い料理は熱く、冷たい料理は冷たいうちに、最適なタイミングで提供する。

「『梅の花』では料理がおいしいのはあたり前のこととして、むしろその場ですごす癒しの時間そのものを心ゆくまで味わっていただきたいのです」

こう語るのは、同社代表取締役社長・梅野重俊氏だ。

そのために季節感を大切にした空間の演出、器や盛りつけ、箸、ランチョンマット、明かり、香り、サービスまで、お客に心から満足してもらえるよう、あらゆるところにおもてなしの心配りを徹底させている。

「お客さまに喜ばれることをしてさしあげなさい」

これが従業員に対する梅野氏の口ぐせである。そして、お客の喜びを自分の喜びと感じられるようになることが大切なのだという。そのためにも、「従業員がまず幸せにならなければいけない」と考える梅野氏は、社員だけでなく、パートやアルバイトまで含め、すべての従業員と積極的に交流をはかり、常に感謝の気持ちを伝えることを忘れない。

その根底にあるのが同社の企業理念である「人に感謝、物に感謝」という心のありようだ。実は、梅野氏はこの言葉に出合うまでに数々の失敗を重ね、大きな挫折も味わっている。

同社の創業は、「梅の花」一号店よりさらにさかのぼること十年前。昭和五十一年に梅野氏が二十五歳で夫人の久美恵氏(専務取締役)と福岡・久留米に開業したかに料理専門店「かにしげ」が原点である。一三坪にも満たない小さな店だったが、当時はかに料理の専門店はまだめずらしかったこともあり、店は大いに繁盛し、二年間で二〇〇〇万円を貯めて、二階建ての大型店の出店にこぎつけた。さらに、それと並行して居酒屋やポテト料理専門店、焼肉店などにも手を広げていった。

「もともとじっとしていられない性格なのです(笑)」という梅野氏は、現状にあき足らず、その後もジンギスカン、ふぐ料理、スペアリブの店など、次々と新しい業態の店舗をオープンさせていく。ところが、これらがことごとく失敗、八方ふさがりの状況にまで追い込まれたのである。

若くして成功を手にしたばかりに、梅野氏は「すっかり天狗になっていたのかもしれない」と当時を振り返る。店をつくればお客は来てくれるものと思っていたが、急激に拡大しようとしても人材の確保が追いつかず、せっかく採用しても定着しない。お客も、思っていたようには来てくれない。

「当時は自分のことしか考えず、悪いのはすべて人のせい。こんな身勝手な経営者に従業員がついてくるわけもないし、お客さまが来ないのも当然です。若気の至りというか、そのころはそんな単純なことにも気づかなかったのです」

いったん歯車が狂い出すと、すべてが悪い方向に作用する。自暴自棄になりかけていたとき、転機になったのが訪れた寺の壁に貼られていた「人に感謝、物に感謝」という言葉だったのである。

この言葉を目にした途端、目の前がパッと開け、これこそ自分にいちばん足りなかったものであり、これまでの己の傲慢さに気づかされたのだという。

誰しも失敗のなかから学ぶことはある。数々の失敗を乗り越えてきたからこそ、今日の「梅の花」の成功があるのはいうまでもない。当時、もう後はないという瀬戸際に立たされた梅野氏はすっかり心を入れ替え、「厳しい冬を乗り越えて最初に咲く花が梅」ということと、「梅野に花をもたせてほしい」との決意を込めて店名を「梅の花」と名づけたのである。

経営者の心が変わると、従業員も変わり、モチベーションの高さは見違えるようになり、お客もどんどん増えていった。

「人に感謝、物に感謝」

わずか八文字からなる言葉に救われた梅野氏は、以来、これを常に心の中心に据え、新しいおもてなしのスタイルを創造しつづけてきた。

その際、「お客さまに喜んでいただける」「満足していただける」ためなら、必ずしも和食だけにとらわれない。湯葉と豆腐の店として、日本料理の世界にこれまでにない新しいスタイルを提唱してきた同社では、ほかにはないもの、オンリーワンをめざし、常に進化しつづけているのである。

たとえば、「チャイナ梅の花」として中華料理分野でも「梅の花」ならではの新しいスタイルを提案。業態もレストランに限らず、寿司・おむすび・おこわなどのテイクアウト店「古市庵」をM&Aで取得したほか、通販事業「梅あそび」にも乗り出した。

本書は、湯葉と豆腐の店「梅の花」をはじめとする梅の花の各事業を紹介するとともに、幾多の失敗や挫折を乗り越えて今日の成功をつかんだ創業社長・梅野重俊氏の理念と哲学に迫るものである。これは、外食産業やサービス産業に携わる人にとってはもちろん、一般の読者の方々にとっても、「梅の花」の食へのこだわりやおもてなし、感謝の心から学び取ることは多いはずと考えたいからである。

本書をご一読いただき、一人でも多くの方々が日本の食文化のあり方を改めて考え直すきっかけになれば、これに勝る幸せはない。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。


平成二十四年二月  鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 からだに健康を、心に感動を提供する「梅の花」

からだにやさしい伝統の食材、湯葉と豆腐に着目
おいしい料理を提供するための素材と製法へのこだわり
想像を超えるおいしさと感動を
均一の味を可能にしたセントラルキッチン
清潔で快適な環境の電化厨房&ドライシステム
熱いものは熱く、冷たいものは冷たいうちに
季節を愛でる料亭の雰囲気を演出
究極の感動を与えるのは真心のおもてなし
気づきと感性がお客の満足度につながる
お客が抱く「自分のことをわかってくれる」安心感
クレームも貴重な意見として受け止める
一人でも多く「梅の花」のファンをつくるために


第2章 度重なる挫折から学んだ「人に感謝、物に感謝」 ――創業社長・梅野重俊の歩み――

【その1 「梅の花」開店までの道のり】
 朝食づくりが日課だった少年時代
 将来は自分で商売をはじめたくて商業高校へ進学
 辛酸をなめた下積み時代
 七年間で二〇カ所ほどを渡り歩き修業を重ねる
 二十五歳で念願の独立を果たす
  早く大きな店にしたい!
 本格的かに料理専門店へとステップアップ
 「かにしげ」のチェーン展開をめざし県外へ
 新業態の店づくりに次々と手を染める
 自分に非はなく、悪いのはすべて人のせい
 暗闇の中で見えてきた一条の光
【その2 「梅の花」の全国展開へ】
 女性客の心をつかんだ「梅の花」
 従業員に対し自らの行動をもって範を示す
 オフィスビルのなかに佐賀店をオープン
 「梅の花」成長の原動力となったセントラルキッチン
 新工場建設にともない、出店を加速化
 全国各地に広がりを見せる「梅の花」


第3章 食文化を中心にオンリーワン企業をめざす

「梅の花」の出店は都心型から郊外型へ
地域に密着した店づくり
一年先を見越しながらのメニュー開発
株式店頭登録から東証二部上場へ
「食の安全」への全社的取り組み
中華料理を「梅の花」スタイルで
「花小梅」は外食事業の第二、第三の柱になるか!?
古市庵をM&Aで取得し中食事業を拡大
百貨店依存型から脱却し「古市庵」ブランドを構築
オンリーワンをめざし常に新しい業態を模索


第4章 梅野イズムの真髄は「人」を幸せにすること

従業員の幸せがお客の幸せにつながる
人の成長なくして企業の成長はない
社長は社員一人ひとりの親代わり
「梅の花」で働くことに誇りを持つ
店舗の支配人はそれぞれが経営者
社員のやる気に誠心誠意応える
接客のレベルアップを目的にコンテスト開催
料理の段取りとチームワークを競う調理コンテスト
がんばった人が幸せになれるように
トップダウンをやめて権限の委譲を
梅野イズムの浸透が成長のカギ


第5章 百年企業として咲きつづけるために

男性客をターゲットにしたテレビCMがヒット
酒のつまみや男の懐石膳も登場
中食としての提供を見据えた「餃子屋一番」
アメリカでの失敗を糧にアジア市場に挑戦
古市庵のほうがひと足先に海外進出か!?
焦らずじっくり人を育てていくことを優先する
周りのすべての人の幸せを願って咲きつづける


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2020/02/21

『オーレックの挑戦』 前書きと目次

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オーレックの挑戦
~“モノづくり精神”で切り開く農業機械革命~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-364-1
初版発行:2012年4月17日 初版発行




はじめに

日本の農業はいま、崖っぷちの状況にある。

農業従事者の高齢化や後継者難による休耕地の拡大。さらに、東日本大震災で被災した農地の復興計画はいまだ具体化せず、福島第一原発事故にともなう風評被害も深刻な問題だ。また、平成十九(二〇一一)年度の日本の食料自給率は、カロリーベースで四〇%にまで減少。これは、昭和三十五年度の七九%からほぼ半減した計算になる。ちなみに、世界では「三五%を下回ると国家として壊滅的な状態」という認識が一般的であり、これは有事のときに国家の安全が保てない恐れさえある。

こうした危機意識はここにきてようやく、政界、産業界、学界を中心に浸透し、食料自給率の向上策が議論されるようになった。加えて、農業は緑地造成の保存という環境保全の一面を有していることから、政府も農業・農地の持続的な発展と循環型社会の形成に向けて、農業政策の抜本的な改正に取り組む姿勢を見せ、その一環として市民農園などの普及を支援する方針も打ち出してはいる。

しかし、その一方で、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加に向けての事前協議が進められている。TPPでは加盟国間での輸出入は原則自由化が建前だから、今後、農産物への関税の撤廃、安全基準の緩和などが求められるのは必至で、海外から安い農産物が大量に輸入されるようになれば、国内の農業はこれまで以上に厳しい状況にさらされることになるのは間違いない。

こうした厳しい局面を迎えた日本の農業を農業機械メーカーの立場から支援しているのが、本書で紹介する株式会社オーレック(本社:福岡県八女郡広川町、代表取締役社長:今村健二氏)である。

同社は農業機械メーカーのなかでは「草刈機のトップシェアのメーカー」として知られているが、その製品構成は草刈機だけにとどまらず、管理機、耕運機、除雪機・運搬車にまでおよぶ。

創業は昭和二十三年、「戦後の食糧難を解決するためには、農作業の軽減をはかるべき」との思いから、創業者の今村隆起氏(故人)が徒手空拳、自宅脇の車庫を改造して、同社の前身である「大橋農機製作所」を立ち上げ、農業機械をつくったのがはじまりである。創業時の事業発展の契機になったのは動力モーターを利用した「水揚げポンプ」である。これが田植え前に行われる、用水路から田んぼへの水揚げ作業を画期的に改善した。さらに「養分をたくさん含んだクリーク(用水路)の泥土を、稲刈りを終えた田んぼに引き上げたいのだが」という農家の要望に応じて開発した「泥土揚げ機」が好評を博し、同社の農業機械メーカーとしての基盤を固めることになったのだ。

その後、隆起氏は手持ち式の草刈機しかなかった時代に、「もっと楽に草刈りができる機械はないか」という農家の要望に応え、業界初となるタイヤ装備の自走式草刈機を開発した。文字どおり自走式草刈機の草分けである。

「創業者の今村隆起は『世の中に役立つものを誰よりも先につくる』を信条とし、自走式草刈機を他社にさきがけて開発したのです」

こう語るのは隆起氏の長男であり、現在、オーレックの代表取締役社長を務める今村健二氏である。

さらに健二氏が入社したのを契機に、経営基盤のさらなる強化が進められた。

まず、健二氏の進言により昭和五十五年に埼玉県に営業所を開設した。当初、九州の小さな農業機械メーカーの製品に誰も見向きもしなかったが、粘り強い営業活動の末、商圏を関東に広げた。そして社名を「株式会社オーレック」に改めるとともに、工場の拡張、アメリカ・シアトルでの販売会社設立など経営の強化拡大策が推進され、「小型農業機械メーカーの雄」という地歩を確立していったのである。

本書は、オリジナリティと信頼性の訴求で草刈機市場でトップシェアを誇るオーレックの創業者・今村隆起氏の、日本の農業界に残した業績を振り返りつつ、その意志を受け継ぎ、オーレックの事業を世界規模へと拡充した今村健二氏の独自の経営戦略を紹介するとともに、その根幹にある経営理念や人生哲学を解き明かすものである。

現在、農業機械業界に身を置く人のみならず、日本の農業と食料、さらには環境問題などに関心を寄せる多くの一般読者にとっても貴重な指針となるであろう。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。


平成二十四年二月  鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 日本の「食」と「農」は危機状態!

日本は「農業国」か「工業国」か
食料自給率は先進国中最低の日本
輸入の七割を五つの国・地域に依存する
戦後の工業重視政策で農業は脆弱化
農家に迫る深刻な問題――高齢化・後継者難の波
農業と食料供給体制を見直す潮時
国は農業経営近代化と合理化支援
農業機械市場に見られる新しい波
足元にやるべきことがまだある


第2章 「草刈機」トップメーカーへの道のり

実体は大手メーカーのOEM製造者
用途別に種類がある草刈機
「農具」「農機具」「農業機械」の定義
関東進出で飛躍への契機をつかむ
地を這うように探る現場の情報
徒手空拳、新天地に拠点を構える
止血剤を飲みながら悪戦苦闘する日々
クレームを糧にする
無理に売らなくとも売れる製品
顧客こそがトップセールスマン


第3章 「超顧客志向」で独創的な製品を開発

品格のある農業機械製品とは
連綿と受け継がれる創業の精神
経営の核心を表現する「OREC」
「業界初」をつくることが存在証明
主要な部品の内製化で自立する
開発担当者一人が一製品を担当
バーチャル設計とリアル設計の決定的違い
ハイテク活用と人的な情報交換
マーケットインとプロダトアウト
売上高ではなく貢献高


第4章 小型農業機械分野のさきがけとして
 ――創業者・今村隆起の挑戦人生――

不撓不屈、決してぶれない思考
進取・先攻の気性に富んだ創始者
農作業の軽減化・省力化に注力
極意と日本一のモノづくり志向
先行投資で日本一、先を行く企業
DNAとして伝えられた困難に臨む勇気と決断力
節約しろ、使うときはドンと使え
食品売り場で食文化を諭された話
田舎娘は全国に通用しない
よい家庭環境こそが会社の基盤


第5章 継続のなかに革新を織り込む経営哲学
 ――一を一〇〇にする今村健二の思考法――

研究開発基地のテクノセンター
経営者に不可欠な人材の育成法
じっと十年、我慢の成果
一の力を百人力に変える
人財育成も兼ねたオーレック祭
人との融和で活性化する組織
一人ひとりが考える判断の基準
農業は健康産業であった
健康食品「黒の薩摩青汁」開発経緯
西日本と東日本、そして世界へ


第6章 受け継ぐモノづくり精神で世界へ

世界に飛翔するオーレック魂
難問山積の時代、突破口を探す
海外進出にともなう産業空洞化論に疑問
世界企業になるための四つの道筋
小型農業機械領域を進化・深化させる
伝統とノウハウを生かす新事業
健康食品で探る新機軸の方向性
実現に向け同時進行中の六事業
アジア、オーストラリア、南米の環太平洋州
世界人として世界企業への邁進


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2020/02/06

『信頼への挑戦』 前書きと目次

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信頼への挑戦
~千代田セレモニーグループのあくなき情熱~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-365-8
初版発行:2012年4月29日 初版発行




はじめに

「男性七十九・六四歳、女性八十六・三九歳」

これは日本人の平均寿命(平成二十二〈二〇一〇〉年)で、女性は二十六年連続で世界第一位、男性は香港、フランス、スイスに次ぐ第四位である。第二次世界大戦前には、男女とも五十歳を下回っていたことを考えれば、なんと長命になったことか。

たしかに長寿にはなった。しかし、だからといって無限に生きられるわけではない。人間は、寿命が尽きれば死ぬ運命にある。たとえ若くしても、病気、事故、そして犯罪などに巻き込まれて生命を落とす人は少なくない。死は、いつも生の隣にあるのだ。

それを如実に見せつけられたのが、平成二十三年三月十一日に発生した東日本大震災である。地震と津波は、さっきまで生きていた多くの人たちの生命を一瞬にして奪い去った。それは、生の限界と死の必然、すなわち生あるものは必ず死ぬという冷徹な事実を改めて知らしめることになった。

実際、東日本大震災を契機に日本人の死生観、さらには死者を見送る葬式に対する考え方も変化してきた。震災をきっかけに、葬式は単なるセレモニーではなく、故人と残された人たちとの絆を見つめ直す場であり、祈りと鎮魂の場であることを改めて気づかされた人も少なくないはずだ。

本書で取り上げる千代田セレモニーグループ代表・大石和雄氏は、「大災害の発生を契機に日本人がむかしから大事にしている人と人の絆を見直す気運が高まっています」と指摘する。

その根拠として、被災地ではいまも行方の知れない身内を探索し、倒壊した家から先祖の位牌を捜す人たちが大勢いることをあげる。

人と人との絆は、生者と生者だけのものではない。共に生き、人生に歴史を刻みながら故人となった死者とも絆が結ばれているということだ。

平成二十三年八月十八日のNHKの「ニュースウォッチ9」で、大石氏の言葉を裏づけるような映像が放送された。

被災地の一つである宮城県では、身元不明の多くの遺体が、正規の弔いを受けないままに仮埋葬された。その事実に心を動かされた女性写真家・広瀬美紀氏が、震災から間もない四月に現地を訪れて、仮埋葬の様子を撮影しようとしたのだ。

彼女は、昭和二十年三月の東京大空襲で身元不明のままに埋葬された人たちの墓などを撮影し、『わたしはここにいる』という写真集を発刊し、写真展を開いている人物である。だから、東日本大震災で仮埋葬された人々の墓を写真に記録し、その人たちの生きていた証を世間に知らせたかったのだろう。

大石氏は「葬式は人と人の永遠の別れに際して心の区切りをつけ、故人の冥福を祈ると同時に、残された人たちの悲しみを癒す大切な行事です」と葬儀の意義と必要性を説く。すなわち、葬式は、死者と生者の関係に根ざす厳粛な儀式であり、やむにやまれぬ気持ちが葬式をあげる動機になっているということだ。だから、「葬式で大切なのは故人に対する深い愛情なのです」という。

だが大石氏は、従来の葬儀における葬儀業者と宗教者の考え方や振る舞いに問題があったことも認識している。だから、葬儀のあり方が議論されることは必然であり、生者と死者の永遠の別れを演出する葬式にも、時代の要請が反映されるのは当然ととらえている。

「現代日本人の葬式に対する要求は十人十色。多様化、個性化、簡素化が進むのは、時代のしからしむるところです。ですから、葬儀の主催者も葬儀業者も従来の形式、規模、施行方法にこだわる必要はありません。葬家が納得し、満足する葬式をあげるように最大限の努力をすればいいのです」と明言する。

千代田セレモニーは、この大石氏の考え方にもとづき、「葬家が納得し、満足する葬式の施行」を経営理念に掲げている。

同社は、創業時から一貫して、「故人のため、そして故人の身内のための個性豊かな葬儀を実現し、遺族や会葬者に感動をもたらす」ことを追求してきた。それが同社の企業テーマ「心のサービス」である。

また、大石氏が自身の経営施策においてもっとも重視している点は、「安心・安全の互助会システム」の堅持である。それは、近年、世間で話題を呼んだ『葬式は、要らない』(島田裕巳著/幻冬舎刊)という書物で指摘されている葬儀業者や宗教者に対する不信を払拭するものにほかならない。

同社が運営する「互助会」の正式名称は「冠婚葬祭互助会」である。会員が毎月一定額を積み立て、それを葬儀や結婚式の必要が生じたときに利用するという仕組みである。それは、江戸時代から戦後まで続いた「頼母子講」を起源とする「相互の助け合いの精神」を基盤にするもので、特徴は「少ない掛け金で大きな安心が得られる」ことである。

だから、互助会を運営する会社に経営の破綻は許されない。実際、大石氏は「互助会運営企業の破綻は、会員に対する重大な裏切り行為である」と明言している。

その互助会システムで「安心・安全」を確立するために同社は、① 経営基盤の確立、② 人的・物的サービスの向上、③ よいものをより安価に提供する努力、の三項目を経営指針として掲げている。

三項目の経営指針を掲げた裏には大石氏の経験がある。大石氏が入社したばかりのころの、同社を含めた互助会企業や葬儀業者の仕事は、旧態依然としたものだった。

葬家のなかには、式の施行後に感謝の言葉を述べる人もいたが、少なからぬ人たちが不満の念を抱き、実際に苦情の言葉を口にする人たちもいたのである。葬儀現場で、そうした事態を目のあたりにした大石氏は、「いつかきっと心のサービスを実現する」と心に誓ったのである。

大石氏がめざしたのは、「自分が真っ先に入会したい互助会システム」の構築であった。それを実現するために先にあげた三項目の経営指針を策定するとともに、厚生労働省が認定する葬祭ディレクターをそろえ、葬祭ホールや施設を整備、充実させ、二十四時間三六五日、いつでも電話で受け付ける体制を整えた。

同社は、葬祭ビジネスの強化、拡大に力を注ぐだけではなく、地域密着という社会的な使命を果たすことにも尽力している。

「葬祭業は地元産業」というのが大石氏の持論である。互助会会員は、同社の営業所や葬祭ホールがある地域で暮らす人たちである。いずれも同じ地域、町会に所属する「隣組」なのだ。この近隣に住む者同士の関係を重視し、長い間日本人が失っていた「人と人との絆」の再生をはかり、家族の絆と地域連帯意識の再生を達成するのが千代田セレモニーグループの究極の目的である。

本書は、冠婚葬祭互助会システムの普及により、新しい時代が求める葬祭儀式を施行しながら、人と人との絆の再生に取り組む千代田セレモニーグループの事業活動を紹介するとともに、同グループ代表・大石和雄氏の経営理念、葬祭思想を解説するものである。はからずも、東日本大震災は、年齢や病気の有無にかかわらず、死は誰にとっても身近なものであることを知らしめることとなった。それだけに、これは現在、冠婚葬祭業界に身を置く人だけではなく、自分自身、あるいは家族の葬祭儀式のあり方に思いをめぐらす多くの一般読者にとっても貴重な示唆を与えるものとなるはずだ。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。


平成二十四年二月  鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 いま、お葬式が変だ!

人生の節目で実施される冠婚葬祭
葬式論議に火をつけた書籍『葬式は、要らない』
葬式の通俗化に対する批判が主旨
葬式の知識と経験がない消費者たち
人と人との絆を中心にして葬式を考える
変貌する葬式のかたちと内容
「感動の葬式」の実現


第2章 千代田セレモニーグループ・大石和雄の情熱の軌跡

葬儀とは……
感動こそ「心の葬儀」の根幹
「いつかはきっと心の葬儀を」と心に誓う
なかなか成果を出しきれない日々
釣り仲間に誘われて冠婚葬祭会社に入社
会員なくして、なんの互助会ぞ
会員不評の改善を
顧客本位の考え方で葬祭部の業務を改革
脱脂綿を敷き詰める新しいかたちの納棺を実施
コンピュータ化で業務の効率化を
隔月集金の体制を取り、集金の効率化をはかる
労働組合対策の責任を担う
さらなる業務改革をめざして
築地本願寺での社葬の挙行
新たなる船出に向かって


第3章 千代田セレモニーの挑戦

「城北冠婚葬祭互助会」として発足
地域密着の活動で加入者を増やす
首都圏最大規模の冠婚葬祭グループ・千代田セレモニー
「心のサービス」で他社との差別化をはかる
「安心・安全」の互助会システム
時代を読みよりよいものを
旗艦店としてグループを牽引するセレス高田馬場
会員救済と業界の信用保持を目的に互助会再建に乗り出す
ゆかりの地・山梨での再建


第4章 互助会のあり方を問う

伝統的な美風「助け合いの精神」である互助会
「互助会加入者役務保証機構」を設立
儀式の施行と設備の新調などに使用される掛け金
葬祭ディレクターが儀式の万端を取り仕切る
昭和二十三年に横須賀市ではじめて誕生した互助会
経営規模が多様な互助会企業と葬儀業者
異業種からの参入相次ぐ葬儀市場
「安全・安心」「迅速・便利」の千代田セレモニー
頼りになる「安心プラン」と「やすらぎコース」
いざというときにあわてないために
緊急時における連絡と対応の仕方
満足と感動を与える


第5章 時代とともに変化する葬式事情

六万年も前から続いている葬儀
世間をにぎわす「葬式不要論」
変わりはじめた日本の葬式事情
すでに変化している葬式の形式
一挙に通夜と告別式を実施する「ワンデーセレモニー」
自分らしく死ぬ準備をした歴史上の人物
死と向き合い乗り越える
変化しつづける葬儀


第6章 いま「心のサービス」の時代を迎えて

個性化、多様化する市場に柔軟に対応
互助会の真価が発揮できる時代が到来
千代田セレモニーがめざす新しいかたちの葬式
後継者の育成が最後の仕事
在宅介護事業という新たなる分野へ
「とにかくやってみろ」


座談会 冠婚葬祭業界の未来のカギを握る「心のサービス」の継承

生き残りのカギは「心のサービス」
ぶれることのない大石の組織のあり方論
信頼を貫き通す力
受け継がれる「心のサービス」


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2020/01/29

『「タイムズ」が切り開くクルマと社会の新たな未来』 前書きと目次

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「タイムズ」が切り開くクルマと社会の新たな未来
~パーク24グループの飽くなき挑戦~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-462-4
初版発行:2020年1月29日 初版発行




はじめに

クルマをめぐる環境が大きく変わりつつある。

「われわれは、たんに自動車をつくるのではなく、モビリティを提供するのだ」

と、ダイムラーのツェッチェ会長(当時)が株主総会で宣言したのは、2015年のことだ。この宣言は、情報通信技術の進化にともない、自動車メーカーは「自動車の販売台数を増やす」というビジネスモデルから「自動車による移動(モビリティ)を提供する」というビジネスモデルへと自らの事業領域を再考する必要性があると訴えたものとして、世界中の自動車業界に大きなインパクトを与えた。

クルマ社会を取り巻く環境変化を踏まえ、いち早くモビリティソリューション事業へと移行する欧米を急追し、日本でも「MaaS」(マイカー以外のすべての交通手段によるモビリティをシームレスにつなぐ新たな移動の概念)や「CASE」(コネクティッド化、自動運転、シェアリング、電動化)への取り組みが繰り広げられつつある。世界産業の根幹のひとつである自動車産業は、「所有」から「移動サービス」へとパラダイムを変えようとしているのだ。

そうしたなか、快適でストレスのない移動を実現するための先駆的なサービスを次々と提供している企業がある。それが本書で紹介する、パーク24株式会社(本社:東京都品川区)を中心とするパーク24グループだ。「タイムズ」ブランドの駐車場事業を基軸に発展を遂げ、カーシェアリングサービスへの参入をきっかけにモビリティ事業の拡充にも注力するパーク24グループは、他の追随を許さない圧倒的な強さで業界トップを独走している。

カーシェアリングというサービスが多様性のある社会を支える交通手段としてあたりまえのように使われるようになれば、人々のライフスタイルにも変化が生じてくるだろう。グループの中心であるパーク24株式会社およびタイムズ24株式会社の代表取締役社長を務める西川光一氏は、そのときの到来を見据え、

「カーシェアリングを、鉄道、バス、タクシーに次ぐ第4の交通インフラにする」
「鉄道が大動脈なら、カーシェアリングは毛細血管である」

と宣言し、展開している各サービスのシームレス化の実現を着々と図っている。

パーク24グループは、世界でトップクラスの駐車場運営件数を誇ると同時に、カーシェアリングサービスにおいても100万人以上の会員を有する、名実ともに国内ナンバーワンの企業である。基幹となる「タイムズクラブ」の会員数は約800万人で、これは日本における自動車保有台数の約1割に相当する数だ。

パーク24の歴史は、1971年に西川氏の父親である故・西川清氏が東京の西五反田で「駐車禁止」の看板の製造販売を行ったことから始まった。

並外れたエネルギーと発想力の持ち主であった西川清氏は、駐車機器の販売で企業としての力をつけたのち、1991年に日本初の「24時間無人時間貸駐車場による駐車場ビジネス」という未開のビジネスモデルを築いた。その後も「駐車場はサービス業」という信念のもとに次々と清氏から発せられた構想は、当時は荒唐無稽とも思われたが、西川光一氏の代になり、カーシェアリングサービスを筆頭に、多くが現実のものとなっている。

「先代(清氏)には、『0』を『1』にする力、『無』から『有』を生み出す力がありました。私の役割は、その『1』を『10』にする、あるいは『10』を『100』にすることだと思っています」

と語る西川氏が、先代社長の西川清氏から受け継ぎ、会社のイズムとして大切にしているのは、「誰もやらないことを先駆けて行う」というチャレンジ精神である。

「常に『次なる挑戦』がないと、企業はパワーを失います。パワーのない普通の会社になってしまっては、おもしろくもなんともありません」

と語る西川氏は、2004年にパーク24の代表取締役社長に就任すると、「『1』を『10』にし、『100』にする」という自らの使命感と、先代から受け継いだチャレンジ精神とを最大限に発揮して、海外進出、モビリティサービスの開拓などを展開し、事業領域を拡大してきた。

すべての事業を自前で行う体制により、迅速な開発スピード、顧客の要望への的確な対応、そして挑戦への気概を社風とするパーク24グループは、いまも進化を続けている。

次なるステージは、「人(会員)」「クルマ」「街(目的地)」「駐車場」の4つのネットワークの拡大とシームレス化の推進だ。

レンタカーとカーシェアリングを融合した新しいモビリティサービス「タイムズカー」の構築や、移動の目的地をネットワーク化するツールとしてのキャッシュレス決済サービス「Times PAY」の普及促進といった、従来のサービスの垣根を超えたサービスの提供は、誰もがいつでもどこにでも快適に移動できる社会の実現に、大きな役割を果たすことになるだろう。

それまで千代田区有楽町にあった本社を、2019年5月に創業の地・品川区西五反田に移転したと同時にCI(コーポレート・アイデンティティ)とBI(ブランド・アイデンティティ)をリニューアルしたパーク24グループが掲げる新たなグループ理念「時代に応える、時代を先取る快適さを実現する。」には、チャレンジ精神と、情熱をもち最後まで成し遂げることへの、強い決意が込められている。

本書では、駐車場を軸としたビジネスのパイオニアであり、業界トップを走り続けるパーク24グループの今日までの歩みを振り返るとともに、より豊かな社会を実現すべく「快適さ」をキーワードに挑戦を続ける同グループのさまざまな取り組みについて紹介する。

モビリティサービスの拡充は、交通渋滞の緩和や温室効果ガスの削減、ひいては持続可能な社会の実現へとつながるものであり、その分野を牽引するパーク24グループの取り組みや考え方は、クルマを利用する、しないにかかわらず、現代社会に生きるすべての人々にとって貴重な指標となるだろう。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。


2019年12月  鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 いま、創業の地から新たなるステージへ

創業の地・西五反田に本社を移転
創業の地で次なるステージへ
新CI、BIに込めたもの
新しいグループロゴが打ち出すモビリティ事業拡大への挑戦
勝利の法則を踏まえ、新たなレースに挑む
「あたりまえ」のなかに隠された不便さにビジネスチャンスがある


第2章 駐車場ビジネスをサービス業にした「タイムズパーキング」

需給バランスの悪さは伸びしろの多さを示す
日本における駐車場の変遷
バブル経済崩壊が追い風となって
足で稼ぎ、地元の人と密着して駐車場をつくる
公共性、社会性の高い「パートナーサービス」
パーク24グループの根幹インフラ「TONIC」
オンラインシステムの衝撃
オンラインシステムが生んだ新たなサービス
最新のテクノロジーと泥臭さを融合
海外駐車場のグループ化で世界ナンバーワンの駐車場事業をめざす
提案から工事、管理まで一貫体制


第3章 時代をリードする「タイムズ」のモビリティ事業

新しいブランドコンセプトが意味するもの
カーシェアリングサービスへの参入
わかりやすい利用方法と料金体系
カーシェアリングのメリットは法人にも
「タイムズカーシェア」はITの塊
安全運転へのしくみづくりで利用者に快適さを
「レール&カーシェア」という新たな移動手段
「タイムズパーキング」のあるところに「タイムズカーシェア」あり
ゲーム感覚で競える「エコドライブ選手権」
第4の交通インフラをめざして
カーシェアリングを地域振興の起爆剤に


第4章 「人」「クルマ」「街」「駐車場」の4つの資源をネットワーク化

4つの資源が掲げる方向性
カーシェアリングとレンタカーのよいところを融合
「目的地」をネットワーク化する
「たのしい街」はネットワーク化の先駆例
「Times PAY」のメリットとは
街に根づく個人事業者に歓迎される「Times PAY」
街全体を「タイムズパーキング」の「パートナーサービス」に


第5章 グループの総合力で時代に先駆ける「快適さ」を追求

「第7回 技術経営・イノベーション賞」において「内閣総理大臣賞」受賞
パーク24グループの編成
自前主義の一気通貫サービス体制
グループの一体感を高める新人事制度
「知的創造の場」としての新オフィス
東京オリンピックで金メダル獲得をめざす「パーク24柔道部」
社会貢献はパーク24グループのDNAのひとつ


第6章 稀代の経営者・西川清の「無から有を生み出す」発想と信念

100kgを超す巨体から発せられる圧倒的なエネルギー
資本金は妻の持参金の100万円
最初の事業は「駐車禁止」の看板づくり
病院に狙いを定めて「パークロック」を拡販
貧乏から、グアムへ家族旅行をする家に
50歳を前に起業家人生の勝負をかけた挑戦
知識がないからこそ、がむしゃらにできた
長男・光一の入社と店頭公開
「無」から「有」を生み出すのが本当の起業家
清の病、光一の社長就任
次なるステップへの躍進の時期


第7章 「100年に1度の大変革」の先駆けとして

カーシェアリングにEVを本格導入
ワンウェイ型カーシェアリングへの挑戦
「ETC2.0」データの活用で交通を円滑化
日本版MaaSトライアルの動きが本格化
「カーシェアリング官民共創実証事業」で地方創生推進モデルに
100年に1度の大変革の時代
パーク24グループは挑戦し続ける


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