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2020/10/09

『地方発 ローカルベンチャー成功の条件』 前書きと目次

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地方発 ローカルベンチャー成功の条件
~ぶれない信念を糧に株式公開
 成長を続けるメディカル一光グループの軌跡~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-464-8
初版発行:2020年10月14日




はじめに

2020年春、世界の経済や社会は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行(パンデミック)により大きな打撃を受けた。日本においても、その影響の大きさは計り知れず、本書を執筆している現在も、いまだ先行きがまったく見通せない状況だ。

この新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、ビジネスや生活だけでなく、人々の考え方や価値観にも大きな影響を与えた。

これまでの日本は、政治や経済など国の中枢機能のほとんどが東京に集中していることから、人口の東京一極集中が進み、その一方で地方では人口減少による人材不足が深刻化していた。

だが、新型コロナウイルス感染症の大規模な流行を受け、多くの企業がリモートワークを導入した結果、「都心にあるオフィスにまで行かなくても、仕事の多くは自宅でもできる」ということが明らかになってきた。また、人口が多いこともあり感染拡大がなかなか収束しない都会で働くことのリスクを避け、感染者数が少ない地方への転職や移住を検討する若者も増えているという。

新型コロナウイルスの猛威を経験した日本は今後、国家のあり方そのものが「集中」から「分散」へと向かうのではないだろうか。

安倍政権下では、東京への一極集中を是正し、将来にわたって活力ある地域社会を実現するための目玉政策のひとつとして、地方創生の取り組みを進めてきた。その一環として、地方への移住および定着を推進しようと、Uターン、Iターン、Jターンにより地方で起業あるいは就職する人への経済的支援も行っている。だが、政府の思惑どおりにはなかなかいかず、人口の東京一極集中に歯止めがかからない状況がずっと続いていた。

しかし、突如現れた新型コロナウイルス感染症により人々の価値観が変わり、これからは脱・東京集中の流れが加速することも考えられる。

ただ、地方で起業するとなると、生半可な気持ちでは成功はおぼつかない。地方での起業は、都市部での起業に比べると競合が少なく、オフィス賃料や人件費なども低めであるためコストも抑えられるというメリットはある。しかしその一方で、優秀な人材の獲得や情報収集、ネットワークの構築には、都市部よりも苦労することが多いようだ。

日本では、ベンチャー企業の10年生存率は1割にも満たないと言われている。ましてや、地方で起業し、上場企業へと成長した会社となると、ほんの一握りにすぎない。ちなみに、日本にはおよそ3800社余りの上場企業が存在するが、そのうちの約半数が東京都に本社をおいている(「上場企業サーチ」2020年9月2日現在)

そんななか、本書で紹介する株式会社メディカル一光グループ(本社:三重県津市)は、1985年に地方都市の三重県津市にて調剤薬局経営を事業目的として設立され、創業20年目の2004年にJASDAQへの株式上場を果たしている。

メディカル一光グループの歴史は、代表取締役社長である南野利久氏が、出身地である三重県津市で1980年に、医薬品卸を行う近畿商事三重株式会社を起業したことから始まった。南野氏が23歳のときだ。

その後、取引先の小児科医から調剤薬局の出店を要請されたことを機に、医薬分業の黎明期とも言える1985年に株式会社メディカル一光を設立。同年6月に津市内に調剤薬局1号店を開局し、以来、国が推進する医薬分業を背景に事業を拡大してきた。現在は中部・関西地域を中心に、全国に93店舗の調剤薬局を展開している(2020年7月現在)

また、2005年からは、調剤薬局事業に次ぐ第2の柱として、有料老人ホームの運営をはじめとしたヘルスケア事業(介護事業)に乗り出した。調剤薬局市場は成熟期に入り、この先の伸び代は限られているのに対し、超高齢社会となった日本では、2000年に介護保険制度がスタートしたことを機に、介護市場はこれからも伸び続けると考えたからだ。現在は、有料老人ホームやグループホームなどの居住系介護施設28施設のほかに、訪問介護事業所やデイサービス、さらには福祉用具レンタルなど、幅広いサービスを提供している。

2019年9月には商号を株式会社メディカル一光グループに改め、調剤薬局事業を手がける株式会社メディカル一光、ヘルスケア事業を手がける株式会社ハピネライフ一光をはじめとするグループ会社10社(2020年8月現在)を傘下に擁する持株会社体制に移行した。

最初の起業における医薬品卸、そして現在の2本柱である調剤薬局および介護事業に共通するのは、いずれも社会保障制度のもとでの事業という点だ。

「国民が安心して暮らせる制度のもとで事業を展開していけば、安定成長ができるのではないかと思ったのです」

と、南野氏はそれらの分野に着目した理由を語る。

たしかに医療や介護関連の事業は社会で絶対的に必要とされるものであり、景気の動向に大きく左右されることもなく、安定性が望める。しかし新型コロナウイルス感染症の流行により、医療機関や介護施設でも感染を恐れて患者や利用者が激減し、厳しい経営状況に追い込まれるところも出てきている。

調剤薬局も、その影響は免れない。観光業をはじめ、新型コロナウイルスの感染拡大で壊滅的な打撃を受けた業界に比べれば、その影響は比較的少ないとは言えるが、南野氏によると、調剤薬局や介護業界も平均して売上1割減といったところだという。

「この範囲なら、経営の工夫次第で十分、まだ生き延びることができると思います。しかし、今後はこれまで以上にいろいろな努力を強いられることになるでしょう」

と、南野氏は業界の実情を分析する。

企業が創業して30年続く割合は1%にも満たないと言われるが、創業から36年目を迎えるメディカル一光グループは着実に業績を伸ばし、いまではグループ全体で320億円(2020年2月期)を売り上げる企業体にまで成長している。その成功の要因は、南野氏のぶれない経営姿勢と強力なリーダーシップにあると言ってよいだろう。

「人の心や気持ちというものは、ぶれやすいものです。ですから経営者は、自分なりのしっかりとした経営哲学をもって事業を行うことが大切になってきます」

こう語る南野氏は、20代のときに出合った陽明学に感化され、そのなかにある「知行合一」「多逢聖因」といった言葉のほか、「寸善尺魔」などの言葉を経営哲学の柱にしている。これらの言葉が意味するところは本編で、南野氏の考え方と日頃の行動とを照らしあわせながら詳述する。

本書は、メディカル一光グループの今日までの歩みを振り返りつつ、同社を率いる南野利久氏というひとりの起業家にスポットを当て、地方の中小企業が株式上場を成し遂げ、地域の信頼を勝ち得るために、どのような考えのもとでどのような経営努力をし、どのようにして人材を育ててきたのかを紹介するとともに、その根底に息づく哲学やリーダー像に迫るものである。

新型コロナウイルス感染症の大規模な流行を経験したあとの日本では、皮肉にも脱・東京が進み、地方創生の取り組みが活発化し、それぞれの地域でベンチャーを育てようという機運が高まるだろう。そうなれば、地方での起業をめざす人も増えると思われる。そうした人が、起業した会社を大きく成長させ、株式上場をめざすには、南野氏が言うように、確固とした信念と経営哲学をもつことが絶対に欠かせない。

地方での起業を検討している人や、地方から株式上場をめざそうとしている経営者にとって、南野氏の経営姿勢から学び取れることは多いはずだ。経営者に求められる役割とはなにかをあらためて考えるうえで、本書がなんらかの指針となれば幸いである。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

2020年9月  鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 起業による雇用創出で地方を元気に

地方における起業を国や地方自治体が支援
地方で起業する最大のメリットは低コスト
地方での起業は人材確保に苦労することも
地方での起業を成功させる業種選び
ベンチャー企業におけるリーダーシップとは
経営者のいちばんの役割は会社を永続させること


第2章 地方ベンチャーから上場企業へ
 ~メディカル一光グループ、成長の軌跡~

ジェネリック医薬品の卸販売で最初の起業
医薬分業の黎明期に津市内に調剤薬局1号店を開局
マンツーマン型の「点分業」が医薬分業の原点
医薬分業の波に乗り、事業を拡大
総合病院前の大型薬局の開発に乗り出す
最高のサービスが地域での信頼につながる
株式上場に向けた準備に着手
金融不安の時期に直接金融で資金を調達
創業から20年目にJASDAQ市場に上場
20年先までの成長性に着目し、ヘルスケア事業に参入
M&Aを推進することで規模の拡大を図る
M&Aにより多様な介護サービスを提供できる体制に
M&Aは理念や哲学を共有できる相手と


第3章 起業家・南野利久の経営理念と哲学

経営者は自らの経営哲学をもつべし
行動の哲学としての「心訓七カ條」と「社員五則」
経営リーダーに求められる力とは
自社で人を育てることの重要性
哲学は言葉で伝えるものではなく行動で見せるもの
厳しい言葉も社員を守るための愛情
中間管理職の役割は組織にとって非常に重要
経営者に求められる「人を引き寄せる力」
人の上に立つ者は、お金にきれいでなければいけない
同じ時間をすごした社員との縁を大切に


第4章 患者満足を追求する調剤薬局事業

医療は「高度な接遇業」
「知識」と「コミュニケーション力」はクルマの両輪
「フラワー薬局」の5つの誓い
調剤過誤を教訓に安全性第一のしくみづくりを実行
患者満足を追求するための社員教育
5年間にわたって行われるフォローアップ研修
キャリアプランに沿って選べる各種研修制度
薬局業務は対物から対人へ
爛熟期へ移行しつつある調剤薬局市場
「患者満足」から一歩進んで「感動の提供」へ


第5章 超高齢社会のニーズに応えるヘルスケア事業

1年半の準備期間を経てヘルスケア事業をスタート
毎日を楽しく、1日でも長く生きてもらうために
各施設が実践する「医・食・住・遊」の中身
患者や家族の満足度は入居率に表れる
施設内に入居者からの意見箱を設置
入居者の立場に立って改善を重ねる
コロナ禍で導入したオンライン面会が好評
居住系介護施設では「看取り」までできる体制に


第6章 メディカル一光グループのさらなる成長戦略

新しいビジネスモデルへの挑戦
薬局づくりから街づくりへ
医療人や介護従事者には「利他の心」が求められる
ウィズコロナ時代の調剤薬局経営とは
成長を続けることが地域への恩返し


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