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2021/01/28

『白石幸生のアートビジネスの世界』 前書きと目次

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白石幸生の
アートビジネスの世界

~画廊経営から誕生した NEW ART HOLDINGS~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-468-6
初版発行:2021年1月30日




はじめに

2020年に世界中を襲った新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、われわれの暮らしを一変させてしまった。

日本での感染拡大は、同年4月なかばからおよそ2か月間に及ぶ緊急事態宣言を経て、いったんはいくらか落ち着きを取り戻し始めたかに見えたが、7月から8月にかけて感染拡大の第2波が、11月には第3波が到来し、いまだ予断を許さない状況にある。

この新型コロナウイルス感染症の大規模な流行は、人々の生活のみならず、企業活動にもさまざまな影響を及ぼした。多くの企業では、リモートワークや時差通勤の導入および出張の禁止、アクリル板やビニールシートのオフィス内への設置およびマスク着用の義務化、消毒用アルコールの使用など、多岐にわたる新型コロナウイルス感染症対策を余儀なくされている。

感染防止のために自由な活動を制限されたことによる経済的損失は大きく、新型コロナウイルス感染症に関連する経営破綻は、2020年2月から12月16日までの累計で808件にのぼるという。業種別に見ると、「飲食店」が128件と最多で、次いで「ホテル・旅館」が70件、「建設・工事業」が58件、「アパレル・雑貨小売店」が51件、「食品卸」が42件、「アパレル卸」が28件となっている(株式会社帝国データバンク『「新型コロナウイルス関連倒産」動向調査〈12月16日(水)16時現在判明分〉』)。緊急事態宣言の解除後も、感染を恐れて外食や旅行に二の足を踏む人が多いことや、リモートワークが定着し服飾にお金をかける人が減少したことなどが原因だろう。

一方で、ステイホームの影響を受けて活気づいている業種もある。最も話題になったのは任天堂株式会社だろう。据え置きと携帯の両方の使い方ができるゲーム機「Nintendo Switch」や、ゲームソフトの「あつまれ どうぶつの森」が大ヒットし、2020年4月~6月(2021年3月期第1四半期)の売上高は前年同期比で2倍以上の3581億円、営業利益は5倍以上の1447億円というから驚きだ(任天堂「2021年3月期第1四半期 決算説明資料」)

そのほかにも、スーパーマーケットなど食料品を扱う小売店や、家庭向けの食品関連企業、衛生用品関連企業、あるいはリモートワークの導入により需要が高まった情報・通信関連企業といった業種は、着実に業績を伸ばしている。

ただ、同じ食品でも、ブランド牛や本マグロの大トロなどといった高級食材は、外食控えの影響で行き場を失い、値崩れを起こしているという。やはり、「不要不急」である贅沢品は、このような状況下では買い手が少ないということなのだろうと思うのだが、そんななかで実は、意外なものが売れている。「不要不急」なもののなかでも最も豪華で最も贅沢と言ってもよさそうな、ダイヤモンドである。

「2020年1月のなかばに日本でも新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染者が確認され、それから徐々に感染が広がっていきました。その影響でブライダルジュエリーの売上が落ち込むのではないかと案じていましたが、2月に入ると、われわれが展開する『銀座ダイヤモンドシライシ』『エクセルコ ダイヤモンド』ともに、お客様のご来店数は増加の一途をたどりました。その結果、2月度の売上は、同月度の成果としては創業以来の最高額を達成することができました」

こう語るのは、株式会社NEW ART HOLDINGS(本社:東京都中央区)の代表取締役会長兼社長を務める白石幸生氏である。

新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、いまの日本経済は深刻な不況のなかにいる。しかし、

「若いカップルの絆というものは、不況などで世の中が不安定なときほど、よりいっそう強くなるものなのでしょう」

と、白石氏は言う。その証が、「銀座ダイヤモンドシライシ」「エクセルコ ダイヤモンド」の好調な売上だというわけだ。

白石氏は、1994年に株式会社ダイヤモンドシライシを設立し、東京・銀座に日本初のブライダルジュエリー専門店「銀座ダイヤモンドシライシ」を開設した。会社設立から6年で株式を店頭登録し、ブライダルジュエリーをコア事業としながら、全身美容(エステ)、アート、スポーツなど、事業の多角化を進めてきた。その間に何度かの社名変更や新会社の設立およびグループ化などを経て、2017年に持株会社体制に移行。2018年に持株会社の社名を現在のNEW ART HOLDINGSに変更した。現在では、NEW ARTグループとして国内外に13社(2020年4月現在)の関連会社を有する企業グループへと成長を遂げている。

社名に「ART」とあることからもわかるように、NEW ARTグループの事業はすべて「美(アート)」をキーワードとし、アート的発想が基軸となっていることが特徴だ。というのも、会長兼社長の白石氏はギャラリスト(画廊をもつ美術商)でもあり、1967年に東京に「白石画廊」(現・「ホワイトストーン・ギャラリー」)を創業して以来、半世紀以上にわたって多くの画家を育ててきたからだ。白石氏の名は、いまや現代アート界を牽引する存在として世界に知られている。

「アートには、同じものはひとつとしてなく、革新性、独創性が求められます。人のまねは絶対にせず、オリジナリティをどこまで出せるか、そして常に新しいものを追求していく姿勢が、アートではなによりも重要です。これは経営においても同じことが言えます」

こう語る白石氏は、その言葉どおり、経営においてもアートの視点で臨み、独創的なビジネスモデルをデザインしてきた。

ジュエリー事業を立ち上げる際も、ブライダルジュエリーに特化し、かつ、ダイヤモンドに集中することで、他社との差別化を図った。ダイヤモンドシライシを設立した翌年には、ダイヤモンドの世界三大市場であるイスラエルに現地法人を設立するとともに、最高品質のダイヤモンドルース(裸石)を厳選して仕入れ、ルースとリングのデザイン枠の組み合わせによるセミオーダーシステムを他社に先駆けて確立した。顧客一人ひとりの要望に応えるという、こうした革新的かつ安定的なビジネスモデルにより、グループ内でブライダルジュエリー事業を担う株式会社ニューアート・シーマは、いまでは業界ナンバーワン企業へと躍進を遂げている。現在は、「銀座ダイヤモンドシライシ」と、ヨーロッパのダイヤモンドの名門であるEXELCOのフラッグシップショップである「エクセルコ ダイヤモンド」の、2つのショップブランドを展開し、全国に88店舗(2020年12月現在)を擁するほか、台湾、香港、上海など海外にも店舗網を広げている。

一方、全身美容事業では、エステティックサロンの先駆けとして1978年に誕生したブランド「ラ・パルレ」の事業を継承するグループ企業を2014年に設立。国内外に28店舗(2020年12月現在)を展開し、エステティシャンの育成強化と並行して、ウェブマーケティングなどIT技術の活用により利益の大幅改善を実現している。

また、アート事業では、絵画の卸売販売を行うほか、新旧作家を問わずに作品の発表や販売をサポートする新しいアートの実験の場として、本社ビル1階に「NEW ART LAB」を開設。戦後の日本を代表する現代美術「具体」の作品や、いまや世界的人気を誇る草間彌生氏の作品など、日本の現代アートを主に取り扱っている。さらに、日本アートの発信基地として2012年にオープンした「軽井沢ニューアートミュージアム」の活動をNEW ART HOLDINGSが支援するなど、一貫して日本の芸術文化の振興に力を注いできた。

白石氏が経営においてもアートの視点を重視するのは、「アートこそが人々を豊かにし、世界に平和と幸せをもたらしてくれる」と確信しているからだ。企業理念にも「みんなの夢の企業グループNEW ARTは、アートの持てるすべての力であなたを美と健康と幸せに導きます」とある。

「新型コロナウイルス感染症の大規模な流行で世界が混迷するいまこそが、アートがもつ底力を遺憾なく発揮できるタイミングでもあるのです」

と語る白石氏は、日本で新型コロナウイルスの感染拡大が本格化しつつあった2020年3月に、新しいものをつくり出す舞台であり、かつ、成長をドライブする組織として、株式会社NEW ARTブランド開発研究所を新たに設立している。

本書は、「美(アート)」をキーワードとした事業展開で着実に業績を伸ばしてきたNEW ARTグループの事業活動を紹介するとともに、グループを率いる白石幸生氏の経営理念と人生哲学に迫るものである。これは、同グループの顧客、株主、取引先などすべてのステークホルダー、さらには多くの企業経営者に、「アート」の力を広く知らしめるうえで貴重な指針の書となるだろう。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

2020年12月  鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 コロナ禍と日本の結婚事情

新型コロナウイルス感染症が直撃したブライダル業界
新型コロナウイルスの感染拡大が変えた結婚への意識
不安な時代だからこそ絆が求められる
我慢の時代だからこそ、せめて指輪は豪華に
ふたりの絆をかたちにするため緊急事態宣言下でも休まず営業


第2章 ブライダルジュエリー業界のトップランナー

ダイヤモンドに特化したビジネスモデルを構築
自社買い付けで高品質なダイヤモンドを提供
セミオーダーシステムを他社に先駆けて確立
成約率70%以上を誇る独自のマンツーマン接客
オリジナルのデザインを追求
ダイヤモンドの名門・EXELCOの旗艦店
「顔」の見えるダイヤモンド ~Diamond Journey~
国内外に広がる2つのブランドの店舗網


第3章 アートを基軸とした事業展開で躍進するNEW ARTグループ

ギャラリストとして画家を育てて半世紀
「アート」を共通キーワードに事業を多角化
「アート的発想」が生む斬新なビジネスモデル
エステティックサロンの先駆け「ラ・パルレ」
新しいアートの実験場「NEW ART LAB」を開設
アートのもつ自由な精神と革新的独創力を経営に活かす
人々を豊かにし、世界を平和にするアートの力


第4章 夢中になれる人を応援する環境づくり

なにかに夢中になっている人は輝いている
「人」が会社の業績を大きく引き上げる
充実した研修で新卒社員を接客のプロに育てる
管理職全体の7割が女性
ナンバーワンブランドを支えるプロフェッショナルたち
やりがいを育てる「ラ・パルレ」のキャリアプラン
女性が誇りと安心をもって働きながら輝ける環境づくり
専門知識やスキル以上に大切なのは「人間力」


第5章 ナンバーワン経営をめざす白石幸生の発想の原点

23歳の若さで画廊を開廊
「具体」に魅せられて現代アートの世界へ
バブル経済の崩壊で縮小を余儀なくされた画廊経営
会社設立から6年で株式を店頭登録
人との出会いによって人生が変わることがある
ギャラリストであり実業家でもある白石幸生の人物像とは


第6章 「アート王国・日本」をめざし、さらなる飛躍へ

日本でもアートファンドの立ち上げをめざす
NEW ARTブランド開発研究所を設立
コロナ禍で落胆するトップアスリートの力になるために
ブランド力のさらなる向上のために海外展開を加速
めざすはナンバーワンブランド創造企業
アートの力で世界平和に貢献する「アート王国・日本」


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