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2021/09/07

『直感を確信に変えて 太陽光にかけた夢と情熱』 前書きと目次

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直感を確信に変えて
太陽光にかけた夢と情熱
~富士テクニカルコーポレーション社長・小川毅一郎 信念の経営~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-470-9
初版発行:2021年9月10日




はじめに

「2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする」

2020年10月26日、菅義偉首相は内閣発足後初の所信表明でこう宣言した。これは、カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現に向けた環境整備を、国をあげて迅速かつ強力に推進するという表明である。電力分野においては、多量の二酸化炭素を排出する化石燃料による火力発電からクリーンな再生可能エネルギーによる発電へと、転換を図るということにほかならない。

さらに菅首相は、2021年4月にアメリカが主催した「気候変動サミット」に合わせて、温室効果ガスの排出量を2030年度までに2013年度比で46%削減するという新たな目標を発表した。これまで目標として設定していた26%削減から大幅に上積みされたわけで、これを達成するためには再生可能エネルギー比率の拡大など、電源構成の抜本的な見なおしが不可欠となる。そこで経済産業省では、2030年度の新たな電源構成において、総発電量に占める再生可能エネルギーの割合を、現行目標の22%~24%から36%~38%へと引き上げることを検討しているという。

世界のエネルギー市場では、二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーが、すでに新たな電力供給源として比重を増しつつある。再生可能エネルギーには、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどがあるが、日本で当面、主力となるのは、発電設備の設置が比較的容易な太陽光発電だろう。

国は、再生可能エネルギーの普及を促そうと、家庭や事業所などにおける太陽光発電の余剰電力買取制度を2009年11月にスタートした。そして東日本大震災後の2012年7月には、これを再生可能エネルギーの固定価格買取制度(Feed-in Tariff/FIT)へと移行した。

FITは、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスのいずれかで発電した電気を、電力会社が一定期間、固定価格で買い取ることを国が約束したものだ。導入の背景には、東京電力・福島第一原子力発電所の事故を受けて、当時の民主党政権が脱原発をめざし、再生可能エネルギーの普及へと大きく舵を切ったことがあげられる。

当初は、再生可能エネルギーの普及を促進することを目的に、10キロワット以上の産業用太陽光発電システムでの買取価格は1キロワット時あたり40円(税別)と、高額に設定されていた。産業用太陽光発電では高額での買い取りが20年間保証されるため、そこにビジネスチャンスを見いだして、太陽光発電事業に参入する企業が相次いだ。

しかしその後、太陽光発電の普及拡大にともなって、買取価格は年々下落していった。現在では、大型の産業用太陽光発電システムについては買取価格に入札制度が導入されており、上限価格は1キロワット時あたり10.25円(2021年度 第11回)にまで引き下げられている。

加えて2019年からは、FITの前身である余剰電力買取制度の対象として設置された住宅用太陽光発電システムから順次、買取期間が満了を迎え始める。これにより、太陽光発電事業者の経営環境は厳しい状況におかれることは否めず、そのことにより発電事業からの撤退を余儀なくさせられる企業が続出すれば、太陽光発電市場の停滞が懸念される。

そうした状況下において、老舗企業として日本の太陽光発電システムの普及に尽力しているのが、本書で紹介する株式会社富士テクニカルコーポレーション(本社:千葉県匝瑳市)だ。

富士テクニカルコーポレーション 代表取締役の小川毅一郎氏は、1946年に千葉県で生まれ、自然豊かな環境の中で太陽の恵みを存分に受けながら子ども時代をすごした。自然環境への思い入れが人一倍強い小川氏は、社会人となった1970年代に2度のオイルショックを経験したことで、自然のエネルギーである太陽光の恩恵に、あらためて気づかされたという。

そこで、「石油や石炭、天然ガスなどの、枯渇が懸念される化石燃料に依存するのではなく、無限とも言える再生可能な自然エネルギー、とりわけ太陽光こそが、エネルギー問題の光明となりうる。人類の未来を支えるのは、クリーンエネルギーの太陽光にほかならない」という信念のもと、太陽熱温水器の販売会社として京葉ソーラー株式会社を1982年に設立(2001年に富士テクニカルコーポレーションに社名変更)。その後、京セラ株式会社が日本初の住宅用太陽光発電システムを発売し、販売代理店を募集し始めると、いち早く代理店契約を結んで、太陽光発電事業をスタートさせた。

このように、一般住宅に太陽光発電が導入された当初より太陽光発電システムの設置を手がけ始めた富士テクニカルコーポレーションは、以来、太陽光発電事業を経営の中心に据えて事業を拡大・発展させてきた。FITが導入されてからは事業の主軸を、それまでの住宅用から、産業用の中型・大型太陽光発電システムへと徐々に切り替えていった。現在は、分譲用メガソーラー(1メガワット=1000キロワット以上の出力)を含む高圧の太陽光発電システムを中心に、土地の仕入れから設計、施工、販売、O&M(運用管理と保守点検)までをワンストップで手がけている。

「それぞれの業務を専門で行っている会社はたくさんありますが、太陽光発電システムの設置に適した用地を自力で開発し、設計、施工からアフターメンテナンスまでのすべてを一気通貫で行える会社は、それほど多くはないでしょう。こうした一気通貫体制を構築している点が当社の最大の特徴であり、それらを行える人材を有していることが当社の強みです」

と言って、小川氏は胸を張る。

富士テクニカルコーポレーションでは、自社開発した太陽光発電システムを、分譲販売するだけでなく自社でも保有しており、それらを合わせると発電量は120メガワットにのぼる。これは、一般住宅用に換算すると約4万件分に相当し、千葉県内ではトップクラスの実績を誇る。

富士テクニカルコーポレーションは、FITの施行を機に飛躍的な成長を遂げ、いまでは年商55億6000万円(2020年1月期。グループ売上)、社員数146名(2020年9月現在)を数えるまでになっている。ただ今後、太陽光発電を中心とした再生可能エネルギー市場は、FIT後の社会を見据えた「Non-FIT」をキーワードとするビジネスモデルの構築が求められるなど、新たな時代の幕開けを迎えることになる。

「地球温暖化対策として、2050年までに温室効果ガスの排出量ゼロをめざすというのは世界的な流れとなっています。いまはまさに化石燃料から再生可能エネルギーへと移行する、エネルギー革命とも言うべき、時代の転換点を迎えているのではないでしょうか」

このように語る小川氏は、Non-FITの時代には、これまでのような大きな収益は望めないとしても、蓄積してきたノウハウを駆使して、太陽光発電事業を徹底的にやり抜く考えだ。

小川氏は、地球環境問題を考えるうえで再生可能エネルギーが必要とされる時代が必ず来ると確信したからこそ、FITの導入前から一貫して太陽光発電事業に取り組んできた。やがて再生可能エネルギー主体の世の中になったときにも、その中心となって普及をリードできる企業であり続けたいとの思いがある。今後も需要があるかぎり投資型の中型・大型太陽光発電システムの開発を進める一方で、Non-FITの時代に対応するべく、「電気は、使うより、つくる時代へ」をキャッチフレーズに、自家消費型の太陽光発電システムの普及拡大にも力を注ぐ。

「クリーンエネルギーと自然との共生」を経営理念に掲げる富士テクニカルコーポレーションは、今後も太陽光発電を事業の柱に据えていく姿勢に変わりはないが、加えて、風力やバイオマスなど、太陽光以外の再生可能エネルギービジネスにも意欲を示す。また、事業の多角化を図るため、太陽光発電と農業とを組み合わせたソーラーシェアリングに取り組むなど、新規事業の立ち上げも着々と進めている。

本書は、再生可能エネルギーの普及を促進することで人々の豊かな暮らしの実現に貢献する、富士テクニカルコーポレーションの事業活動を紹介するとともに、創業社長である小川毅一郎氏の経営理念および人生哲学に迫るものである。すでに再生可能エネルギー事業に携わっている方のみならず、地球の未来を考え、これから再生可能エネルギーによる発電事業への参画を検討している方にとっても、本書がなんらかの指針となれば幸いだ。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。


2021年8月  鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 真の再生可能エネルギー時代が到来

再生可能エネルギーがエネルギー自給率を高める鍵に
FITが太陽光発電システムの普及を後押し
市場の停滞が懸念される太陽光発電
温室効果ガス排出量の削減目標をさらに上積み
脱炭素社会を視野に入れた電源構成比率の見なおし
再生可能エネルギー比率向上の切り札として期待される太陽光発電
太陽光発電は将来のベースロード電源になりうるか
あらゆる政策ツールで企業のグリーンイノベーションを後押し
再生可能エネルギー発電は自家消費の時代へ


第2章 「クリーンエネルギーと自然との共生」をめざして

自然の恵みである太陽エネルギーの活用を創業当初から志向
住宅用太陽光発電市場にいち早く進出
経営理念に「クリーンエネルギーと自然との共生」を掲げる
産業用太陽光発電へと事業の軸足を移す
遊休地や耕作放棄地の有効活用に太陽光発電所を
産業用太陽光発電には金融商品としてのメリットも
土地の仕入れから設計、施工、販売、O&Mまでの一貫体制
質の高い設計・施工が顧客の満足度を高める
脱炭素社会の実現に向けて自社でも太陽光発電を導入


第3章 電気をつくり、蓄えて、使う時代へ

FIT期間満了後の2つの選択肢
電気をつくり、蓄えて、使う時代
太陽光発電と蓄電池との連携を推進
HEMSや「エコキュート」との組み合わせでスマートライフを
家庭用では原点に立ち返り、訪問販売の復活を
一般家庭に向けた電力の小売事業にも意欲
企業でも注目され始めた自家消費型太陽光発電
自家消費型なら優遇税制の活用も
蓄電池との併用で非常用電源としてのBCP対策も
環境問題への取り組みが企業価値を高める


第4章 太陽光発電の性能を最大限に発揮するO&M

長期的な安定稼働を支えるO&Mの重要性
太陽光発電で起こりがちなトラブルのあれこれ
「早期発見、早期対応、早期解決」がモットー
メンテナンスのすべてを担う少数精鋭の技術者チーム
万が一に備える、安心の災害・賠償・休業補償
中古市場の拡大で高まるO&Mのニーズ
質の高いメンテナンスを武器に中古物件の売買にも意欲


第5章 創業社長・小川毅一郎の経営理念と人生哲学

失われし自然豊かな原風景に思いを馳せる
高校の機械科に進学し、エンジニアの道へ
技術職よりも営業職に向いていることを自覚
経営者にとって大切な直感力
リフォーム事業は太陽光発電事業に参入するまでの仮の仕事
住宅用太陽光発電からメガソーラーへと方針転換
地元に信頼される企業をめざす
企業人に求められる理想を追求していく
組織固めとして新卒採用に踏みきる
人間学の訓話を新入社員教育に盛り込む
座右の銘は「耕せや真実一路が宝船」


第6章 富士テクニカルコーポレーションが描く未来図

競争激化が予想される再生可能エネルギー市場
農業と発電の両立をめざすソーラーシェアリング
新しいかたちのソーラーシェアリングに挑む
太陽光発電を活用した次世代型農業モデルを模索
太陽光以外の再生可能エネルギー発電事業にも意欲
地域の活性化に貢献するべく新規事業にも着手
半永久的に続くと思われる太陽光発電の需要


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