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2021/10/26

『働く人のため改革』 前書きと目次

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働く人のため改革
~日本発! 働き手の立場で構築した独自の仕組みを世界へ~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-471-6
初版発行:2021年11月1日




はじめに

2020年春頃から急速に感染が広がった新型コロナウイルス感染症は、私たちの生活からたくさんの喜びや楽しみを奪っていった。海外旅行や各種イベントに代表されるレジャー活動、あるいは日常的な外食や宴会などを、人目を気にすることなく自由に謳歌していた頃が、いまでは夢のようである。ちっぽけなウイルスのせいでここまで世界が大きく変わってしまうとは、いったい誰が想像できただろうか。

日々の生活様式だけでなく、企業の活動も深刻な影響を受けた。酒類の提供停止や営業時間の短縮などにより多くの飲食店が苦境に追いやられ、百貨店などの大型店舗の休業により多くのアパレルショップの経営が悪化した。不要不急の外出の自粛が求められたことにより、観光業界や航空業界、鉄道業界などでも業績の悪化が目立つ。

そのため、雇用情勢も悪化の一途をたどっている。厚生労働省の調査によると、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により業績が悪化した企業から解雇・雇止めとなった労働者の数は、見込みも含めると、2020年5月から2021年8月20日までの累積で11万3655人にのぼることがわかった(厚生労働省「新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報について(8月20日現在集計分)」)。この数字は全国のハローワークなどで把握できたものだけであるため、仕事を失った人の数は、実際にはさらに多いものと見られる。

とりわけ、パートやアルバイトなどの非正規雇用で働いていた人の状況は厳しい。飲食業を中心にアルバイトの場が激減していることに加え、たとえ解雇されなくてもシフトを大幅に減らされるなどもあり、これまでと同じように稼ぐことが難しくなって厳しい生活を強いられるケースも少なくない。

国は以前から働き方改革を推進してきたが、新型コロナウイルス感染症の大規模な流行を経験したことで、多様な働き方がますます求められるようになってきたと言えそうだ。

こうしたなかで「新しい働き方」として注目されているのが、短期・単発の派遣労働や、スキマ時間などを活用して短時間の単発仕事を行う「ギグワーク」と呼ばれる働き方だ。「ギグワーク」とは、英語で「定期的ではない演奏会」「一時的な」といった意味を持つ「gig」と「労働」「働く」という意味の「work」を組み合わせた造語で、欧米ではすでに定着した働き方である。

そうした状況下において、短期・単発の人材派遣に特化した人材ビジネスで急成長を遂げているのが、本書で紹介する株式会社エントリー(本社:東京都新宿区)だ。設立は2014年とまだ歴史は短いが、わずか6年のあいだに売上高100億円を達成するなど、いま最も勢いのある会社のひとつである。社名の「エントリー」は、「EN+TRY=人と仕事の縁むすび(EN)に挑戦(TRY)し続ける」という基本理念に由来する。

北は北海道から南は沖縄まで全国に33の拠点を擁するエントリーは、ECサイト系物流倉庫での軽作業への派遣を中心に、短期に特化した人材派遣事業を行っている。その要となっているのが、同社が運営する「スマジョブ」というサービスだ。

仕事を求める人は、「スマジョブ」のスマートフォンアプリで24時間365日、いつでも派遣スタッフとして登録ができ、働きたい場所や時間を検索することで自分の都合に合わせて仕事を選べる。面談もスマートフォンの画面を通じてオンラインで行える。こうした手軽さや便利さが、働きたい人たちのあいだで好評を博している。派遣スタッフとして登録をしている人の約7割は留学生を含む若者だが、最近では、働き方改革やテレワークで生まれるスキマ時間を活用し、副業として派遣スタッフの登録をする社会人も増えているという。

一方、企業側にとっても、必要な日の必要な時間帯にのみ人材の派遣を依頼できるという利点がある。

エントリーが行う人材派遣事業の最大の強みは、業界初となる、24時間365日の即日給与振込に対応していることだ。代表取締役の寺本潤氏は、「短期で働く派遣スタッフが求めているのは、空いた時間にすぐに働けて、すぐに報酬を手にできる利便性ではないか」と考え、会社を設立すると真っ先に、そのしくみをつくるために銀行との交渉に取り組んだ。その甲斐あって株式会社セブン銀行との提携が叶い、「エントリー24時間即払いサービス」を実現することができたのだ。

この「エントリー24時間即払いサービス」では仕事の完了後2時間以内に派遣スタッフの持つ金融機関の口座に給与全額が振り込まれるため、派遣スタッフは日曜、祝日、年末年始も関係なく、その日のうちに最寄りのATMで現金を引き出すことができる。給与の振込先として登録できるのは、サービスのスタート当初はセブン銀行のみだったが、現在は対象となる金融機関が32行(2021年8月現在)にまで増えている。

エントリーのもうひとつの強みが、「フィールドディレクター」という独自の職種を設けていることだ。大人数のスタッフが派遣される現場に、彼らのサポート役となる同社社員をフィールドディレクターとして配置することで、派遣スタッフの不安が解消されるだけでなく、派遣先企業にとっても派遣スタッフを管理する負担が軽減される。フィールドディレクターがいることで、派遣スタッフと派遣先企業の双方の満足度を高めることができるのだ。

さらに2019年3月からは新サービス「シェアジョブ」の提供を開始し、シェアリングエコノミー(共有経済)によるギグワーク市場にも参入。これは、たとえば通信販売で購入した組み立て式の家具の組み立てや、買い物、犬の散歩、お花見の場所取りなど、なにかのときに少しだけ誰かの手を借りたいという人のニーズと、スキマ時間を活用して短時間だけ働きたいという人のニーズを、マッチングさせるサービスだ。寺本氏は、超高齢化が進む日本では今後、こうしたサービスの需要がますます高まると考えて、業界に先駆けて開発を進めてきた。

エントリーでは、これらのマッチングサービスを、日本国内にとどまらず海外でも展開していく考えだ。すでにベトナムをはじめとする東南アジア諸国への進出が計画されており、将来的にはインドやアフリカなどにも同社がつくったしくみを提供することで、貧富の差が激しい社会に生きる貧しい人たちが労働に対する正当な報酬を得られるようにしていきたいと、寺本氏は語っている。

安定成長を続けているエントリーを支えているのは、熱意あふれる若い社員たちである。平均年齢は28.6歳(2021年8月現在)と、現場で働く派遣スタッフたちとの年齢が近いこともあり、社員と派遣スタッフとのあいだで活発なコミュニケーションが交わされる。そうしたなかから「派遣スタッフである学生やフリーターたちの支援をしたい」という強い気持ちを持つようになる社員が多いことが、会社の成長を後押ししているという。

そんな若い社員たちと社長である寺本氏との距離が近いのも、エントリーという会社が持つ特徴のひとつだろう。「家族主義」を標榜し、「社員は家族」と言いきる寺本氏は、社員一人ひとりを大切に思う気持ちが人一倍強い。だからこそ、同社の企業理念である「人と仕事の縁むすび」を通じて社会貢献することを、すべての社員が誇りに思えるようになってほしいと、寺本氏は願っている。

「社員のみんなには、自分の仕事が世のため人のために貢献していると信じて、一生懸命がんばれるようになってほしいのです。そして、働くからには支店内で一番、社内で一番、世の中で一番をめざしてほしい。向上心こそが人を成長させ、事業を創造するのですから」

と、寺本氏は言う。

本書は、時代のニーズをいち早くつかみ新たなスタイルの人材ビジネスに挑むエントリーの事業活動を紹介するとともに、同社社長・寺本潤氏の経営理念およびビジネス哲学に迫るものである。これは、短期・単発での人手を欲している、あるいは、スキマ時間に自由に働きたいと考える人のみならず、多様な働き方を模索するすべての現代人にとって貴重な指針の書となるだろう。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

2021年9月  鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 コロナ禍で注目される新しい働き方とは

企業の業績悪化で厳しさを増す雇用環境
新型コロナウイルス感染症の感染拡大で大学生のアルバイトの場が激減
少子高齢化の影響で中長期的には労働力不足に陥る懸念も
週休4日制や副業の環境整備で広がる働き方の選択肢
自分の都合に合わせて働ける短期・単発の人材派遣
人材派遣、アルバイト、ギグワークの違い
スマートフォンの普及で劇的に進化した仕事探し


第2章 「人と仕事の“縁”を結ぶ」ビジネスで急成長
―エントリーの事業概要―

会社設立から6年で100億円の売上を達成
登録も面談もウェブ上で24時間365日行える「スマジョブ」
働いたその日のうちに給与が受け取れるしくみを導入
登録スタッフの約7割が留学生を含む若者たち
スタッフと企業の双方にメリットがあるフィールドディレクター
同業他社がフィールドディレクターを導入できない理由
働く人の視点に立ったサービスを追求


第3章 スキマ時間活用のマッチングサービス「シェアジョブ」

国内最大級の短期・単発求人マッチングサービス
求人から採用、給与支払いまですべてがインターネット上で完結
「シェアジョブ」を使うメリットとは
30分単位で空いた時間にすぐ働ける新しいワークスタイル
第一次産業の人手不足にも「シェアジョブ」の活用を


第4章 人材育成の根幹は徹底した「家族主義」にあり

社員の平均年齢28.6歳
若手社員が成長意欲を持ち続けるための施策の数々
社員一人ひとりの成長が会社の成長に直結する
「社員は家族」への熱い思い
新卒採用の最終選考では自ら面接
採用したからには社員の人生に責任を持つ
チームワークを育む合宿研修と社員旅行へのこだわり
新入社員の実家に家庭訪問
スタッフから社員に登用されたメンバーも多数
エントリーの将来を担う若い力に期待すること


第5章 創業社長・寺本潤の経営理念と人生哲学

高校時代に身についた仕事に対する熱意とハングリー精神
社会に出て働く楽しさと挫折を知る
派遣スタッフとして入った人材派遣業界
人材派遣会社で社長に上り詰めるまで
ベンチャースピリッツを捨てられずに独立
魅力ある従業員を育成するために定めたクレド
理念を共有できる多くの仲間の存在が励みに


第6章 格差社会に生きるすべての人のために
―エントリーが描く近未来図―

大きく変わりゆく人材派遣業界
短期人材派遣の領域を拡大、飲食業や小売業も対象に
「シェアジョブ×農業」が描く未来
青森県から委託を受け「シェアジョブ青森」がスタート
シニア人材サービスやヘルプロボット事業への参入も視野に
東南アジアをはじめとする海外展開計画がすでに進行中
常に5年先を見据えた目標設定で社員の士気を鼓舞
将来的には外国人労働者のための職業訓練校の設立も
IPOはなんのためか
人々の労働様式を変える会社へ


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