**鶴蒔靖夫

2021/01/28

『白石幸生のアートビジネスの世界』 前書きと目次

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白石幸生の
アートビジネスの世界

~画廊経営から誕生した NEW ART HOLDINGS~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-468-6
初版発行:2021年1月30日




はじめに

2020年に世界中を襲った新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、われわれの暮らしを一変させてしまった。

日本での感染拡大は、同年4月なかばからおよそ2か月間に及ぶ緊急事態宣言を経て、いったんはいくらか落ち着きを取り戻し始めたかに見えたが、7月から8月にかけて感染拡大の第2波が、11月には第3波が到来し、いまだ予断を許さない状況にある。

この新型コロナウイルス感染症の大規模な流行は、人々の生活のみならず、企業活動にもさまざまな影響を及ぼした。多くの企業では、リモートワークや時差通勤の導入および出張の禁止、アクリル板やビニールシートのオフィス内への設置およびマスク着用の義務化、消毒用アルコールの使用など、多岐にわたる新型コロナウイルス感染症対策を余儀なくされている。

感染防止のために自由な活動を制限されたことによる経済的損失は大きく、新型コロナウイルス感染症に関連する経営破綻は、2020年2月から12月16日までの累計で808件にのぼるという。業種別に見ると、「飲食店」が128件と最多で、次いで「ホテル・旅館」が70件、「建設・工事業」が58件、「アパレル・雑貨小売店」が51件、「食品卸」が42件、「アパレル卸」が28件となっている(株式会社帝国データバンク『「新型コロナウイルス関連倒産」動向調査〈12月16日(水)16時現在判明分〉』)。緊急事態宣言の解除後も、感染を恐れて外食や旅行に二の足を踏む人が多いことや、リモートワークが定着し服飾にお金をかける人が減少したことなどが原因だろう。

一方で、ステイホームの影響を受けて活気づいている業種もある。最も話題になったのは任天堂株式会社だろう。据え置きと携帯の両方の使い方ができるゲーム機「Nintendo Switch」や、ゲームソフトの「あつまれ どうぶつの森」が大ヒットし、2020年4月~6月(2021年3月期第1四半期)の売上高は前年同期比で2倍以上の3581億円、営業利益は5倍以上の1447億円というから驚きだ(任天堂「2021年3月期第1四半期 決算説明資料」)

そのほかにも、スーパーマーケットなど食料品を扱う小売店や、家庭向けの食品関連企業、衛生用品関連企業、あるいはリモートワークの導入により需要が高まった情報・通信関連企業といった業種は、着実に業績を伸ばしている。

ただ、同じ食品でも、ブランド牛や本マグロの大トロなどといった高級食材は、外食控えの影響で行き場を失い、値崩れを起こしているという。やはり、「不要不急」である贅沢品は、このような状況下では買い手が少ないということなのだろうと思うのだが、そんななかで実は、意外なものが売れている。「不要不急」なもののなかでも最も豪華で最も贅沢と言ってもよさそうな、ダイヤモンドである。

「2020年1月のなかばに日本でも新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染者が確認され、それから徐々に感染が広がっていきました。その影響でブライダルジュエリーの売上が落ち込むのではないかと案じていましたが、2月に入ると、われわれが展開する『銀座ダイヤモンドシライシ』『エクセルコ ダイヤモンド』ともに、お客様のご来店数は増加の一途をたどりました。その結果、2月度の売上は、同月度の成果としては創業以来の最高額を達成することができました」

こう語るのは、株式会社NEW ART HOLDINGS(本社:東京都中央区)の代表取締役会長兼社長を務める白石幸生氏である。

新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、いまの日本経済は深刻な不況のなかにいる。しかし、

「若いカップルの絆というものは、不況などで世の中が不安定なときほど、よりいっそう強くなるものなのでしょう」

と、白石氏は言う。その証が、「銀座ダイヤモンドシライシ」「エクセルコ ダイヤモンド」の好調な売上だというわけだ。

白石氏は、1994年に株式会社ダイヤモンドシライシを設立し、東京・銀座に日本初のブライダルジュエリー専門店「銀座ダイヤモンドシライシ」を開設した。会社設立から6年で株式を店頭登録し、ブライダルジュエリーをコア事業としながら、全身美容(エステ)、アート、スポーツなど、事業の多角化を進めてきた。その間に何度かの社名変更や新会社の設立およびグループ化などを経て、2017年に持株会社体制に移行。2018年に持株会社の社名を現在のNEW ART HOLDINGSに変更した。現在では、NEW ARTグループとして国内外に13社(2020年4月現在)の関連会社を有する企業グループへと成長を遂げている。

社名に「ART」とあることからもわかるように、NEW ARTグループの事業はすべて「美(アート)」をキーワードとし、アート的発想が基軸となっていることが特徴だ。というのも、会長兼社長の白石氏はギャラリスト(画廊をもつ美術商)でもあり、1967年に東京に「白石画廊」(現・「ホワイトストーン・ギャラリー」)を創業して以来、半世紀以上にわたって多くの画家を育ててきたからだ。白石氏の名は、いまや現代アート界を牽引する存在として世界に知られている。

「アートには、同じものはひとつとしてなく、革新性、独創性が求められます。人のまねは絶対にせず、オリジナリティをどこまで出せるか、そして常に新しいものを追求していく姿勢が、アートではなによりも重要です。これは経営においても同じことが言えます」

こう語る白石氏は、その言葉どおり、経営においてもアートの視点で臨み、独創的なビジネスモデルをデザインしてきた。

ジュエリー事業を立ち上げる際も、ブライダルジュエリーに特化し、かつ、ダイヤモンドに集中することで、他社との差別化を図った。ダイヤモンドシライシを設立した翌年には、ダイヤモンドの世界三大市場であるイスラエルに現地法人を設立するとともに、最高品質のダイヤモンドルース(裸石)を厳選して仕入れ、ルースとリングのデザイン枠の組み合わせによるセミオーダーシステムを他社に先駆けて確立した。顧客一人ひとりの要望に応えるという、こうした革新的かつ安定的なビジネスモデルにより、グループ内でブライダルジュエリー事業を担う株式会社ニューアート・シーマは、いまでは業界ナンバーワン企業へと躍進を遂げている。現在は、「銀座ダイヤモンドシライシ」と、ヨーロッパのダイヤモンドの名門であるEXELCOのフラッグシップショップである「エクセルコ ダイヤモンド」の、2つのショップブランドを展開し、全国に88店舗(2020年12月現在)を擁するほか、台湾、香港、上海など海外にも店舗網を広げている。

一方、全身美容事業では、エステティックサロンの先駆けとして1978年に誕生したブランド「ラ・パルレ」の事業を継承するグループ企業を2014年に設立。国内外に28店舗(2020年12月現在)を展開し、エステティシャンの育成強化と並行して、ウェブマーケティングなどIT技術の活用により利益の大幅改善を実現している。

また、アート事業では、絵画の卸売販売を行うほか、新旧作家を問わずに作品の発表や販売をサポートする新しいアートの実験の場として、本社ビル1階に「NEW ART LAB」を開設。戦後の日本を代表する現代美術「具体」の作品や、いまや世界的人気を誇る草間彌生氏の作品など、日本の現代アートを主に取り扱っている。さらに、日本アートの発信基地として2012年にオープンした「軽井沢ニューアートミュージアム」の活動をNEW ART HOLDINGSが支援するなど、一貫して日本の芸術文化の振興に力を注いできた。

白石氏が経営においてもアートの視点を重視するのは、「アートこそが人々を豊かにし、世界に平和と幸せをもたらしてくれる」と確信しているからだ。企業理念にも「みんなの夢の企業グループNEW ARTは、アートの持てるすべての力であなたを美と健康と幸せに導きます」とある。

「新型コロナウイルス感染症の大規模な流行で世界が混迷するいまこそが、アートがもつ底力を遺憾なく発揮できるタイミングでもあるのです」

と語る白石氏は、日本で新型コロナウイルスの感染拡大が本格化しつつあった2020年3月に、新しいものをつくり出す舞台であり、かつ、成長をドライブする組織として、株式会社NEW ARTブランド開発研究所を新たに設立している。

本書は、「美(アート)」をキーワードとした事業展開で着実に業績を伸ばしてきたNEW ARTグループの事業活動を紹介するとともに、グループを率いる白石幸生氏の経営理念と人生哲学に迫るものである。これは、同グループの顧客、株主、取引先などすべてのステークホルダー、さらには多くの企業経営者に、「アート」の力を広く知らしめるうえで貴重な指針の書となるだろう。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

2020年12月  鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 コロナ禍と日本の結婚事情

新型コロナウイルス感染症が直撃したブライダル業界
新型コロナウイルスの感染拡大が変えた結婚への意識
不安な時代だからこそ絆が求められる
我慢の時代だからこそ、せめて指輪は豪華に
ふたりの絆をかたちにするため緊急事態宣言下でも休まず営業


第2章 ブライダルジュエリー業界のトップランナー

ダイヤモンドに特化したビジネスモデルを構築
自社買い付けで高品質なダイヤモンドを提供
セミオーダーシステムを他社に先駆けて確立
成約率70%以上を誇る独自のマンツーマン接客
オリジナルのデザインを追求
ダイヤモンドの名門・EXELCOの旗艦店
「顔」の見えるダイヤモンド ~Diamond Journey~
国内外に広がる2つのブランドの店舗網


第3章 アートを基軸とした事業展開で躍進するNEW ARTグループ

ギャラリストとして画家を育てて半世紀
「アート」を共通キーワードに事業を多角化
「アート的発想」が生む斬新なビジネスモデル
エステティックサロンの先駆け「ラ・パルレ」
新しいアートの実験場「NEW ART LAB」を開設
アートのもつ自由な精神と革新的独創力を経営に活かす
人々を豊かにし、世界を平和にするアートの力


第4章 夢中になれる人を応援する環境づくり

なにかに夢中になっている人は輝いている
「人」が会社の業績を大きく引き上げる
充実した研修で新卒社員を接客のプロに育てる
管理職全体の7割が女性
ナンバーワンブランドを支えるプロフェッショナルたち
やりがいを育てる「ラ・パルレ」のキャリアプラン
女性が誇りと安心をもって働きながら輝ける環境づくり
専門知識やスキル以上に大切なのは「人間力」


第5章 ナンバーワン経営をめざす白石幸生の発想の原点

23歳の若さで画廊を開廊
「具体」に魅せられて現代アートの世界へ
バブル経済の崩壊で縮小を余儀なくされた画廊経営
会社設立から6年で株式を店頭登録
人との出会いによって人生が変わることがある
ギャラリストであり実業家でもある白石幸生の人物像とは


第6章 「アート王国・日本」をめざし、さらなる飛躍へ

日本でもアートファンドの立ち上げをめざす
NEW ARTブランド開発研究所を設立
コロナ禍で落胆するトップアスリートの力になるために
ブランド力のさらなる向上のために海外展開を加速
めざすはナンバーワンブランド創造企業
アートの力で世界平和に貢献する「アート王国・日本」


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2021/01/25

『学校法人電子学園の新たなる挑戦』 前書きと目次

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学校法人電子学園の新たなる挑戦
~実践的な職業教育体系で専門職人材を育成~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-466-2
初版発行:2021年1月30日




はじめに

日本の国際競争力の低下に歯止めがかからない。

スイスのIMD(International Institute for Management Development)が毎年発表している「世界競争力ランキング(World Competitiveness Ranking)」の2020年版によると、日本の順位は主要63か国中34位と前年より4ランク落とし、史上最低となった。このランキングで日本は、バブル経済が弾ける前にはトップにいたことを思うと、今の凋落ぶりは衝撃的ですらある。この間、何があったのだろうか。

評価項目の内訳を見てみると、政府や企業の効率性の低さが低評価の主たる理由のようだ。国際競争力の低下にそれらが影響していることは確かだろう。また、バブル経済崩壊後の長期の経済低迷や、少子化、高齢化といった社会環境の変化を指摘する声もある。こうしたいくつかの要因が重なった結果の競争力低下であることは間違いない。

しかし、もうひとつ、日本の国際競争力を下げている大きな理由がある。競争力のバロメーターとなる「イノベーション力」の低さである。複数の調査が指摘するように、日本ではイノベーションを起こす人材が育っていないのだ。

世界的な情報化の流れや産業のグローバル化に加え、少子高齢化による生産年齢人口の減少も重なり、日本は産業や社会の構造変革を迫られている。それも、従来の延長で何かを改善すれば済むレベルの話ではなく、何も無いところから世の中を劇的に変えていく「ゼロ・トゥ・ワン」の大変革が必要となっている。ハーバード・ビジネススクール教授のクレイトン・クリステンセン氏が提唱する「破壊的イノベーション」を果たさなければ、日本は間違いなく世界から取り残されるだろう。

だが、肝心のイノベーションを起こす人材が、日本では育っていない。

こうした時代を背景に登場したのが、学校法人 電子学園が2020年に開学した、情報経営イノベーション専門職大学(愛称・iU)である。

1951年に日本ラジオ技術学校(現・日本電子専門学校)を開学した電子学園は、以来、70年にわたって、専門技術を身につけた実践的な職業人材を数多く送り出してきた歴史を持つ。その伝統を踏まえて電子学園が新たに開学したiUは、ICTを中心とする先端テクノロジーを活用することによって旧来型の事業やビジネスを変革し、新しい価値を生み出すことでイノベーションを起こす、高度専門職人材を育成することを目的としている。そのために、学生が在学中に起業に挑戦することも積極的にサポートすると明言している。

つまり、iUは、日本が必要とするイノベーションを創出するための環境を整備し人材を育成するという役割を担っているのだ。

「専門職大学」という新しいカテゴリーの高等教育機関が誕生したのは2019年のことだ。大学制度に新たな教育機関が追加されたのは、短期大学制度が導入(恒久化)された1964年以来のことである。

現在ある11の専門職大学・専門職短期大学(2020年現在)は、保健医療、リハビリテーション、ファッションなどの各専門学校が専門職大学・専門職短期大学に移行したケースが目立つ。そうしたなかで電子学園では、クリエイターやエンジニアなどのスペシャリストを育成する日本電子専門学校とは別に、ICTをはじめとした幅広い知識を有し各産業分野でイノベーションを起こす人材を育成するiUを、新たに設置した。これは、職業教育の改革をめざす電子学園にとっても大きな挑戦だった。

職業教育に特化した大学の開設については、さまざまな意見がある。なかには「職業教育のための大学はいらない」「従来の大学でも職業教育は行っている」などと、専門職大学不要論を唱える声も少なくない。しかし、そうした声に対し、電子学園 理事長の多忠貴氏は、自信を持って次のように答える。

「急速な技術革新や、これにともなう産業構造の変化、グローバル化などによって、社会が求める人材が変わってきました。長年、職業教育に関わってきた私たちだからこそ、その経験をもとに、『この先、こういう高度な専門職人材が絶対に必要になる』という視点に立って人材育成に取り組むことは、私たちの使命であると考えています」

情報化への対応が遅れているとされる今の日本で、これからの社会が求める人材の育成を使命としてiUが設立された意味は、非常に大きいと言える。とはいえ、まだスタートしたばかりであり、教育の質の保証など課題も残るが、iUが今後、いかに独自性を発揮し、その使命を果たしていくのか、その動きに興味が尽きない。

もちろん、既存の大学も、時代を見据えた職業教育を意識し、改革に取り組んではいるが、残念ながらそのスピードは、けっして「速い」とは言えない。そうした点からも、iUが今後の日本の命運を左右するとも言えそうだ。日本のより良い未来のためにも、「ICTを活用してグローバル社会でビジネスにイノベーションを起こす高度な専門職人材を育成する」という同学の目的を実現してくれることを期待している。

本書は、創立以来、70年にわたって時代を先取りした職業教育を展開し、産業界のニーズにいち早く対応して数多くの職業人材を育成してきた電子学園にとっての、いちばん新しい挑戦であるiUに懸ける意欲と具体的な取り組みについて紹介するとともに、日本の職業教育を牽引してきた日本電子専門学校の今日までの歩みを振り返りつつ、理事長である多氏の職業教育理念に迫るものである。

本書を手にされた方が、電子学園への理解を深め、日本電子専門学校による実践的な職業人材の育成と、iUによる高度な専門職人材の育成の、両方が並び立つことの重要性を、より強く感じていただけたら幸いだ。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

2020年12月  鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 次世代の職業人材を育成する専門職大学が始動

新しい職業教育の歴史を拓くという使命感
理論と実践力を兼ね備える教育が必要
高等教育機関が抱える職業教育の構造的な課題
これからは「知識基盤社会」を支える人材の確保が問われる
「職業教育の向上」を求めるさまざまな動き
なぜ「ICT」「ビジネス」「グローバルコミュニケーション」が重要なのか
イノベーションに不可欠となったICTの活用
数ある山を乗り越えて東京都墨田区に土地を確保
3つのポリシーと4つの科目群
学生に専門職大学での「学び」を体験してもらう
高い倍率だった入学試験
歴史が変わる瞬間に立ち会う覚悟


第2章 産業の未来を切り拓くイノベーション人材を育成

教育の真の目的は「平均的人間」を育成することではない
職業教育をどう定義するか
学生に「実践学」の場を提供する
「変化を楽しめ、恐れるな」という哲学
日本ならではの発想で人を幸せにする
現代の職業人に求められるのは「“想像”を“創造”できる力」
大学は「議論する場」
長期のインターンシップでビジネスの経験値を高める
「知識」を「知恵」に切り替える


第3章 起業にチャレンジする「イノベーションプロジェクト」

失敗を奨励する大学でありたい
学生のうちの失敗は「将来への糧」
イノベーションに必要な「デザイン思考」と「共感」
企画を社会的な成果につなげる
初回のプレゼンテーションで投資家の興味をそそるアイデアも
学生の起業を支援するベンチャーキャピタルを設立
めざすは「就職率0%」!? 「就職率300%」!?
ベンチャー企業だからこそ、やれることがある
「想像」を「創造」に転換する楽しさ


第4章 「挑戦する教育」で時代を先取りする電子学園

挑戦への決意を込めたシンボルマークを制定
産業界や企業と一緒に「次の技術」をつくってきた
「建学の精神」に投影された創設者の意思
技術教育の根幹は「学理と実習の併用」「人格の陶冶」にあり
いち早く視聴覚教育を導入
専門技術に加えて「人間力」も高める
コンピュータ教育の先駆けとなる「電子専門部」を開設
AIに関する教育でも先駆けとなる
世界で活躍できるゲーム制作のプロフェッショナルを育成
人と仕事を学びで結ぶ「MUSTな存在」になる
新大学の理念にふさわしい学長を迎え「21世紀の明治維新」を起こす


第5章 電子学園が描く職業教育の未来図

「職業教育の複線化」を実現
職業教育を体系化し、専門職人材の新たな育成モデルをつくる
職業教育における「高大接続改革」を自ら主導する
ハイブリッド型授業を時限措置と考えるのは間違い
いかにオンライン授業の質を守るか
「職業教育の質の向上」は永遠のテーマ
外部から「新しい風」を積極的にとりこむ
専門職大学は「地方創生」の使命を担う
職業教育改革へのあくなき挑戦


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2021/01/12

『再エネ投資で未来をつくる』 前書きと目次

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再エネ投資で未来をつくる
~自立・分散型社会の構築をめざすセンチュリー・エナジーの挑戦~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-467-9
初版発行:2021年1月18日 初版発行




はじめに

2020年、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の大規模な感染拡大が、世界中を震撼させた。そこから生まれた「3密」「ソーシャルディスタンス」「テレワーク」などの言葉が日常的なものとなり、それにともない、私たちの暮らしのありようも変わってきている。

ここで大事なことは、「この災厄は、われわれになにをもたらすのか」を、いちど立ち止まって考えることだろう。「見直すことの大切さ」を世界中の多くの識者が指摘し、この「ピンチ」を「チャンス」に転換させるための方法を探っている。

新たな座標軸を早くに打ち出したのは、地球環境の危機に敏感な人たちだった。SDGs(持続可能な開発目標)の実現をめざす彼らは、人類がこれまで物質の豊かさを追い求め続けてきた結果、地球という土台が危うくなっていると警鐘を鳴らす。

人間の活動がいかに地球を傷めているかを表す「アース・オーバーシュート・デー」という指標がある。世界の人々のその年の自然資源の消費量が、1年間に地球環境が生産できる量を超える(オーバーシュートする)日を示したもので、国際シンクタンクのグローバル・フットプリント・ネットワーク(GFN)が毎年発表している。それによると、1960年代までは人間が消費する自然資源の量と地球の復元力は釣りあっていた。しかし、2020年の「アース・オーバーシュート・デー」は8月22日だったという。つまり、たった9か月弱で人類は、1年分の自然資源を使い果たしたということだ。

私たちはいま、経済的な復興だけでなく、環境、生物多様性、食糧、水といった点において持続的な社会を形成するための、具体的な行動を起こすことを求められている。社会インフラのベースであるエネルギー問題は、その動きの中核にある。これまでの化石燃料を中心とした社会から、再生可能エネルギーを中心に活用する社会へのアップデートをめざしていこうとの声が、世界中のあちこちから発せられているのだ。

今回のコロナ禍を奇貨として、環境、社会、金融、地域づくりなどのすべてを包括した新たな時代をつくっていこうとの取り組みが、エネルギーを中軸に実践されつつある。新たな時代を築く再生可能エネルギー事業にも、多くの企業が正面から取り組んでいる。

そのなかのひとつが、本書で紹介するセンチュリー・エナジー株式会社だ。

日本で再生可能エネルギーの普及が本格的に始まったのは、2011年に発生した東日本大震災に付随する東京電力福島第一原子力発電所の事故がきっかけだった。日本国民がエネルギー問題を身近に、かつ切実に考えるようになったのは、このときからと言ってもよいかもしれない。

センチュリー・エナジーは、もともとは不動産業を営んでいた。しかし、2012年にFIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)がスタートしたことを機に、創業者で現・代表取締役の山中正氏は、まったく未知の分野である再生可能エネルギー事業への参入を決意。原子力発電所の事故の影響で苦しんでいた故郷・茨城県への支援と、いまこそ安全・安心なエネルギー源が必要だとの使命感から、行動を起こした。2013年に自らが所有する土地を提供して小規模な太陽光発電所を建設したことを皮切りに、北は北海道から南は九州・鹿児島県まで破竹の勢いで約170か所の太陽光発電所を設置。売上も100億円が視野に入るほどとなり、業界のリーディングカンパニーとしての地歩を固めていった。

センチュリー・エナジーの活動は、太陽光発電事業だけにとどまらない。山中氏がこれから取り組もうとしているのは、木質バイオマス発電、ソーラーシェアリング、風力発電といった再生可能エネルギー事業の総合体で、すでに複数のプロジェクトが進行中である。

再生可能エネルギーの特質は、エネルギーの分散化と地産地消化に適合することだ。特に木質バイオマスやソーラーシェアリングは、地域の雇用と所得の向上に寄与するものとして期待されている。

地域活性化や地方創生への貢献は、再生可能エネルギー事業を立ち上げた山中氏の最大の目的のひとつだった。さらに言うなら、「社会貢献」こそが、長い経営者人生を歩んできた山中氏にとっての事業のモチベーションである。

「そもそも事業は、世の中のためにやらなければ、儲かるはずがない」

という持論を、山中氏は取材中に何度も発した。

再生可能エネルギー事業は、脱炭素社会をめざし、気候変動リスクを軽減させるという点で、SDGsの実現に貢献するものだ。センチュリー・エナジーは、地域社会、従業員、顧客への配慮を真摯に続けることで、企業としての責任を果たし続けようとしている。そこには、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大規模な流行によってダメージを受けた社会と経済を復興するための事業が、将来の持続可能性を潰すようなものであってはならないという、山中氏の意図が込められている。

新型コロナウイルスの感染拡大は、いまだに収束の気配も見えてこないが、そのなかでも「ピンチをチャンスに」という気運が、徐々にではあるが高まりを見せ始めている。「利潤の追求から生存の追求へ」「分断から共存へ」という本質的な問いかけが続くなかで、社会貢献と地域活性化を掲げて邁進するセンチュリー・エナジーの姿勢には、企業の使命および責任という点で多くの示唆が含まれていると感じる。

本書では、脱炭素社会の実現に向け、太陽光発電を中心とした総合再生可能エネルギー事業に取り組むセンチュリー・エナジーの事業活動を紹介しつつ、新型コロナウイルス感染症の猛威を経験した社会の変容と将来への展望についての検証も行っていく。地球環境の未来を見据えたい人はもとより、再生可能エネルギー発電事業への投資を考える人々にとっても、貴重な指南の書となるだろう。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。


2020年11月  鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 パンデミックからの回復とエネルギー政策

パンデミックによる「ピンチ」を「チャンス」に
環境改善と経済復興の連係を掲げる「グリーンリカバリー」
コロナ禍からの回復力が最もある電源が再生可能エネルギー
日本の太陽光発電の先駆者として
化石燃料時代の終焉は近い
価値観の変革を提唱するSDGs
儲けだけを考える時代は終わった
民間企業の脱炭素社会への動きが国内外で
石炭火力のフェードアウトに見る曖昧さ
脱炭素社会に向けての動きが鈍い日本


第2章 未来の環境のためのESG投資と太陽光発電

太陽光発電事業のパイオニア
投資としての魅力もある太陽光発電
センチュリー・エナジーならではの「3つの安心」
再生可能エネルギーの中心となった太陽光発電
まずは自分の土地で太陽光発電を
会社を軌道に乗せた第2号発電所
「安全な場所で安全な発電所を」
土地は「縁もの」、なにかの導きで使わせてもらっている
発電所の一つひとつがわが子のよう
FITを取り巻く状況に変化が
太陽光発電とマイニング事業のコラボレーション
活況を見せる中古市場
太陽光発電もESG投資へと意識が変化


第3章 太陽光発電事業者の社会的責任

太陽光発電の効率はメンテナンスで決まる
メンテナンスの不備は大きな事故につながる
遠隔操作と人の手でメンテナンスをきめ細かく迅速に
「JET PV O&M認証」で信頼度を向上
保守点検・維持管理の義務化
「隣は壊滅、うちは無傷」となった要因
20年間の安心と安全を保証するメンテナンス
パートナーシップ契約を76か所と


第4章 総合再生可能エネルギー事業者として地域を活性化

「新しい時代の新しいエネルギー」の一翼を
地域に貢献しSDGsにも寄与する木質バイオマス発電
森の再生にもつながる木質バイオマス発電
木質バイオマス発電は地域活性化の切り札になる
バイオマスで再生可能エネルギー自給率100%をめざす町
新たな社会形態「地域循環共生圏」
環境と経済の好循環をめざしてビジネスチャンスを創出する
小規模な木質バイオマス発電を優遇
めざすは木質バイオマス発電によるビジネスモデルの創出
木質バイオマス発電への投資は町づくりに貢献する
ソーラーシェアリングで農業と地方を発展させる
栃木県那須塩原に広がる約2000坪のソーラーシェアリング


第5章 創業者・山中正の理念と哲学

厳しい道も落ち着いた佇まいで乗り越える
青雲の志で上京し、社会貢献を胸に起業
新しい住文化をめざし、地球環境にも言及
原子力発電所の事故による風評被害をまともに受けた茨城県
67歳で異業種に足を踏み入れ、ゼロからのスタート
仕事は「たいへん」であってあたりまえ
社員から見た山中の人物像
チャレンジ精神で新天地を切り開け
成長スピードが速ければ人事で先輩社員を追い抜くことも普通


第6章 センチュリー・エナジーが描く再生可能エネルギーの未来図

コロナ禍収束後の世界はどうあるべきか
明確なビジョンを示せていない日本
次なるチャレンジは風力発電
再生可能エネルギーによる電気事業への進出をめざす
中小企業向け「RE100」の発足と社会貢献意識の高まり
自立・分散型のエネルギーシステムの構築で電気を効率的に利用
「スマートグリッド」で再生可能エネルギーを安定供給
再生可能エネルギーへの投資が地球の環境を救う
今日の続きではない明日のために
再生可能エネルギーの本番はこれからだ


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2020/10/09

『地方発 ローカルベンチャー成功の条件』 前書きと目次

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地方発 ローカルベンチャー成功の条件
~ぶれない信念を糧に株式公開
 成長を続けるメディカル一光グループの軌跡~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-464-8
初版発行:2020年10月14日




はじめに

2020年春、世界の経済や社会は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行(パンデミック)により大きな打撃を受けた。日本においても、その影響の大きさは計り知れず、本書を執筆している現在も、いまだ先行きがまったく見通せない状況だ。

この新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、ビジネスや生活だけでなく、人々の考え方や価値観にも大きな影響を与えた。

これまでの日本は、政治や経済など国の中枢機能のほとんどが東京に集中していることから、人口の東京一極集中が進み、その一方で地方では人口減少による人材不足が深刻化していた。

だが、新型コロナウイルス感染症の大規模な流行を受け、多くの企業がリモートワークを導入した結果、「都心にあるオフィスにまで行かなくても、仕事の多くは自宅でもできる」ということが明らかになってきた。また、人口が多いこともあり感染拡大がなかなか収束しない都会で働くことのリスクを避け、感染者数が少ない地方への転職や移住を検討する若者も増えているという。

新型コロナウイルスの猛威を経験した日本は今後、国家のあり方そのものが「集中」から「分散」へと向かうのではないだろうか。

安倍政権下では、東京への一極集中を是正し、将来にわたって活力ある地域社会を実現するための目玉政策のひとつとして、地方創生の取り組みを進めてきた。その一環として、地方への移住および定着を推進しようと、Uターン、Iターン、Jターンにより地方で起業あるいは就職する人への経済的支援も行っている。だが、政府の思惑どおりにはなかなかいかず、人口の東京一極集中に歯止めがかからない状況がずっと続いていた。

しかし、突如現れた新型コロナウイルス感染症により人々の価値観が変わり、これからは脱・東京集中の流れが加速することも考えられる。

ただ、地方で起業するとなると、生半可な気持ちでは成功はおぼつかない。地方での起業は、都市部での起業に比べると競合が少なく、オフィス賃料や人件費なども低めであるためコストも抑えられるというメリットはある。しかしその一方で、優秀な人材の獲得や情報収集、ネットワークの構築には、都市部よりも苦労することが多いようだ。

日本では、ベンチャー企業の10年生存率は1割にも満たないと言われている。ましてや、地方で起業し、上場企業へと成長した会社となると、ほんの一握りにすぎない。ちなみに、日本にはおよそ3800社余りの上場企業が存在するが、そのうちの約半数が東京都に本社をおいている(「上場企業サーチ」2020年9月2日現在)

そんななか、本書で紹介する株式会社メディカル一光グループ(本社:三重県津市)は、1985年に地方都市の三重県津市にて調剤薬局経営を事業目的として設立され、創業20年目の2004年にJASDAQへの株式上場を果たしている。

メディカル一光グループの歴史は、代表取締役社長である南野利久氏が、出身地である三重県津市で1980年に、医薬品卸を行う近畿商事三重株式会社を起業したことから始まった。南野氏が23歳のときだ。

その後、取引先の小児科医から調剤薬局の出店を要請されたことを機に、医薬分業の黎明期とも言える1985年に株式会社メディカル一光を設立。同年6月に津市内に調剤薬局1号店を開局し、以来、国が推進する医薬分業を背景に事業を拡大してきた。現在は中部・関西地域を中心に、全国に93店舗の調剤薬局を展開している(2020年7月現在)

また、2005年からは、調剤薬局事業に次ぐ第2の柱として、有料老人ホームの運営をはじめとしたヘルスケア事業(介護事業)に乗り出した。調剤薬局市場は成熟期に入り、この先の伸び代は限られているのに対し、超高齢社会となった日本では、2000年に介護保険制度がスタートしたことを機に、介護市場はこれからも伸び続けると考えたからだ。現在は、有料老人ホームやグループホームなどの居住系介護施設28施設のほかに、訪問介護事業所やデイサービス、さらには福祉用具レンタルなど、幅広いサービスを提供している。

2019年9月には商号を株式会社メディカル一光グループに改め、調剤薬局事業を手がける株式会社メディカル一光、ヘルスケア事業を手がける株式会社ハピネライフ一光をはじめとするグループ会社10社(2020年8月現在)を傘下に擁する持株会社体制に移行した。

最初の起業における医薬品卸、そして現在の2本柱である調剤薬局および介護事業に共通するのは、いずれも社会保障制度のもとでの事業という点だ。

「国民が安心して暮らせる制度のもとで事業を展開していけば、安定成長ができるのではないかと思ったのです」

と、南野氏はそれらの分野に着目した理由を語る。

たしかに医療や介護関連の事業は社会で絶対的に必要とされるものであり、景気の動向に大きく左右されることもなく、安定性が望める。しかし新型コロナウイルス感染症の流行により、医療機関や介護施設でも感染を恐れて患者や利用者が激減し、厳しい経営状況に追い込まれるところも出てきている。

調剤薬局も、その影響は免れない。観光業をはじめ、新型コロナウイルスの感染拡大で壊滅的な打撃を受けた業界に比べれば、その影響は比較的少ないとは言えるが、南野氏によると、調剤薬局や介護業界も平均して売上1割減といったところだという。

「この範囲なら、経営の工夫次第で十分、まだ生き延びることができると思います。しかし、今後はこれまで以上にいろいろな努力を強いられることになるでしょう」

と、南野氏は業界の実情を分析する。

企業が創業して30年続く割合は1%にも満たないと言われるが、創業から36年目を迎えるメディカル一光グループは着実に業績を伸ばし、いまではグループ全体で320億円(2020年2月期)を売り上げる企業体にまで成長している。その成功の要因は、南野氏のぶれない経営姿勢と強力なリーダーシップにあると言ってよいだろう。

「人の心や気持ちというものは、ぶれやすいものです。ですから経営者は、自分なりのしっかりとした経営哲学をもって事業を行うことが大切になってきます」

こう語る南野氏は、20代のときに出合った陽明学に感化され、そのなかにある「知行合一」「多逢聖因」といった言葉のほか、「寸善尺魔」などの言葉を経営哲学の柱にしている。これらの言葉が意味するところは本編で、南野氏の考え方と日頃の行動とを照らしあわせながら詳述する。

本書は、メディカル一光グループの今日までの歩みを振り返りつつ、同社を率いる南野利久氏というひとりの起業家にスポットを当て、地方の中小企業が株式上場を成し遂げ、地域の信頼を勝ち得るために、どのような考えのもとでどのような経営努力をし、どのようにして人材を育ててきたのかを紹介するとともに、その根底に息づく哲学やリーダー像に迫るものである。

新型コロナウイルス感染症の大規模な流行を経験したあとの日本では、皮肉にも脱・東京が進み、地方創生の取り組みが活発化し、それぞれの地域でベンチャーを育てようという機運が高まるだろう。そうなれば、地方での起業をめざす人も増えると思われる。そうした人が、起業した会社を大きく成長させ、株式上場をめざすには、南野氏が言うように、確固とした信念と経営哲学をもつことが絶対に欠かせない。

地方での起業を検討している人や、地方から株式上場をめざそうとしている経営者にとって、南野氏の経営姿勢から学び取れることは多いはずだ。経営者に求められる役割とはなにかをあらためて考えるうえで、本書がなんらかの指針となれば幸いである。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

2020年9月  鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 起業による雇用創出で地方を元気に

地方における起業を国や地方自治体が支援
地方で起業する最大のメリットは低コスト
地方での起業は人材確保に苦労することも
地方での起業を成功させる業種選び
ベンチャー企業におけるリーダーシップとは
経営者のいちばんの役割は会社を永続させること


第2章 地方ベンチャーから上場企業へ
 ~メディカル一光グループ、成長の軌跡~

ジェネリック医薬品の卸販売で最初の起業
医薬分業の黎明期に津市内に調剤薬局1号店を開局
マンツーマン型の「点分業」が医薬分業の原点
医薬分業の波に乗り、事業を拡大
総合病院前の大型薬局の開発に乗り出す
最高のサービスが地域での信頼につながる
株式上場に向けた準備に着手
金融不安の時期に直接金融で資金を調達
創業から20年目にJASDAQ市場に上場
20年先までの成長性に着目し、ヘルスケア事業に参入
M&Aを推進することで規模の拡大を図る
M&Aにより多様な介護サービスを提供できる体制に
M&Aは理念や哲学を共有できる相手と


第3章 起業家・南野利久の経営理念と哲学

経営者は自らの経営哲学をもつべし
行動の哲学としての「心訓七カ條」と「社員五則」
経営リーダーに求められる力とは
自社で人を育てることの重要性
哲学は言葉で伝えるものではなく行動で見せるもの
厳しい言葉も社員を守るための愛情
中間管理職の役割は組織にとって非常に重要
経営者に求められる「人を引き寄せる力」
人の上に立つ者は、お金にきれいでなければいけない
同じ時間をすごした社員との縁を大切に


第4章 患者満足を追求する調剤薬局事業

医療は「高度な接遇業」
「知識」と「コミュニケーション力」はクルマの両輪
「フラワー薬局」の5つの誓い
調剤過誤を教訓に安全性第一のしくみづくりを実行
患者満足を追求するための社員教育
5年間にわたって行われるフォローアップ研修
キャリアプランに沿って選べる各種研修制度
薬局業務は対物から対人へ
爛熟期へ移行しつつある調剤薬局市場
「患者満足」から一歩進んで「感動の提供」へ


第5章 超高齢社会のニーズに応えるヘルスケア事業

1年半の準備期間を経てヘルスケア事業をスタート
毎日を楽しく、1日でも長く生きてもらうために
各施設が実践する「医・食・住・遊」の中身
患者や家族の満足度は入居率に表れる
施設内に入居者からの意見箱を設置
入居者の立場に立って改善を重ねる
コロナ禍で導入したオンライン面会が好評
居住系介護施設では「看取り」までできる体制に


第6章 メディカル一光グループのさらなる成長戦略

新しいビジネスモデルへの挑戦
薬局づくりから街づくりへ
医療人や介護従事者には「利他の心」が求められる
ウィズコロナ時代の調剤薬局経営とは
成長を続けることが地域への恩返し


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2020/07/08

『創造と革新』 前書きと目次

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創造と革新
~技術力と品質で医薬品の未来に挑む~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-359-7
初版発行:2012年2月8日 初版発行




はじめに

日本はいま、国家として、国民の認識をはるかに超える深刻な事態に瀕している。

現在、国家予算は約九〇兆円。それに対し、税収は約四〇兆円、不足分は国債を発行しつづけ、これまでなんとかしのいできた。しかし、国債はいわば借用証書、つまり借金だ。

その借金は平成二十三(二〇一一)年六月末で九二四兆四三六一億円に達し、地方自治体の借金などを合わせると総額一〇四五兆円に上る。一方、個人の金融資産から負債を除いた個人金融純資産は一一一〇兆円。近く、借金の総額がはじめて蓄えを上回ることは避けられない情勢だ。

なかでも、財政を圧迫している要因の一つが医療費だ。日本の国民医療費は、平成二十二年度推計で三六兆六〇〇〇億円。国民医療費は、患者の窓口負担、保険料負担、事業主負担のほかにも国庫負担と地方自治体負担により支えられ、およそ三分の一にあたる一二兆円が税金でまかなわれている。加えて、介護保険財源の赤字、制度の存続さえ危ぶまれる年金財政。日本人の暮らしや健康を支えてきた社会保障制度はいまや破綻寸前であるという認識を持たねばならない。とりわけ、医療費の削減は、国民全員で取り組まなければならない喫緊の課題といえる。

WHO(世界保健機関)によると、日本の医療制度は世界一と評価されるほど素晴らしいもので、まさに日本の健康保険制度は世界に誇るべき制度といえる。

だが、国の経済力が衰えてきたいま、いつまでも理想モデルを追いかけているわけにはいかなくなっている。とはいえ、国民の安心・安全を支える健康保険制度の崩壊は避けたい。そのためには、いまこそ、行政・医療者・患者が三位一体となって、医療費のスリム化に全力で取り組んでいかなければならない。患者とは国民一人ひとりである。

医療費のスリム化促進にはいくつかの方策が考えられるが、もっとも効果が期待できる施策の一つがジェネリック医薬品への変換を加速することだ。

欧米諸国では、いまやクスリといえばジェネリック医薬品があたり前といえるほど普及しているのに対して、日本のジェネリック医薬品使用率はようやく二三%に届いたところだ。ジェネリック医薬品の使用に対する意識には欧米とまだ相当の開きがある。これを欧米並みに引き上げることができれば、医療費の削減は格段に進むはずだ。

現在、日本人の一年間のクスリ代は約八兆円といわれ、このうち、ジェネリック医薬品に変換可能なものをすべてジェネリック医薬品に切り替え、生活習慣病薬を健康保険から除外するなどの方策を講じると、クスリ代は、およそ六兆円程度にまで圧縮できると見込まれており、ざっと二兆円を削減できることになる。

日本のジェネリック医薬品普及の足を引っ張っているのは、一にも二にも、意識の問題だ。クスリを処方する医師の意識、ジェネリック医薬品に積極的な関心を持とうとしない国民の意識、加えて、ジェネリック医薬品普及をはかるべき厚生労働省など行政側の意識、施策、いずれもなまぬるいのだ。それらを一つひとつ検証し、壁になっているものを取り払い、ジェネリック医薬品を積極的に選ぶ医師、患者を拡大していかなくてはならない。

改めて私がそうした思いに強くかられたきっかけは、日新製薬株式会社(本社:山形県天童市、代表取締役:大石俊樹氏)との出会いであった。

以前からジェネリック医薬品に関心を持ち、これまで関連の著作も数冊まとめ、率先してジェネリック医薬品への理解と普及促進を働きかけてきた私だが、日新製薬はその私のイメージをさらに大きく塗り替える企業だった。

これまで私は、ジェネリック医薬品は、先発医薬品の代替薬であるという認識を大きく踏み出ることはなかった。だが、日新製薬の代表取締役・大石俊樹氏はこういうのだ。

「約七〇億人の人類のうち、新薬の処方を受けられるのは先進国を中心とした一三億人程度で、残る五七億人を救うのはジェネリック医薬品なのです」

大石氏は、ジェネリック医薬品は日本の医療費削減の切り札であるだけでなく、二十一世紀の人類の幸福を左右する非常に大きな存在だととらえている。つまり、ジェネリック医薬品の普及は、人口増加が続く地球上の全人類に医療の恩恵を広めることにもつながると考える。

ジェネリック医薬品メーカーのなかには、新薬メーカーに負けることない研究&開発力を持ち、従来の薬剤に新たな機能を付加した、付加価値の高いジェネリック医薬品を製造しているところも少なくない。さらには、製品の品質を保つ技術、包装・供給体制などで新薬メーカー以上の進化を遂げているメーカーも出てきている。

日新製薬はその先頭を行く企業の一つで、たとえば、ポリエチレンボトル入り注射薬の滅菌過程において、世界最先端の技術「パルス光滅菌」を導入するなど、意気軒昂なところを見せている。

大石氏は、「包装、供給体制もまた品質の一つ」と考え、その信念のもと、業界屈指のハイレベルな製造環境の整備や生産技術を実現し、いまでは五〇社以上の製薬メーカーから医薬品製造を委託されるほどである。この実績は、日新製薬の製剤技術がいかに信頼され、評価されているかを物語っている。

医薬品製造のアウトソーシング、そして、その受け皿になる製造受託メーカーの存在はいまや日本の医薬品産業を支える大きな柱の一つになっているが、日新製薬はこの分野では間違いなくトップランナーだ。いまでは、開発段階から大手メーカーとタッグを組んで共同開発している品目も増えてきており、製造受託事業は総売り上げの半分近くに迫る勢いだという。

日新製薬は、先代社長・大石季氏が昭和二十四(一九四九)年に創業した日新薬品株式会社を母体とし、昭和三十二年、同社の製造部門を独立させるかたちで設立された。その後、山形県天童市に本社と工場を移転。現在では、埼玉県川越市にも工場を擁し、医薬品・医薬部外品・健康食品などの製造・販売を行っている。

疲弊しているのは何も国の財政ばかりではない。地域経済の疲弊もまた、日本を悩ませる大きな課題となっている。そうしたなかにあって、日新製薬は山形県にしっかりと根を下ろし、雇用や経済効果など地域経済への貢献にも積極的である。

現在では、東北地方に本社を構える企業のなかではもっとも就職人気が高い企業として知られ、就職支援サイトでのアクセス数は、東北電力を抜いて東北ナンバーワンを誇っている。しかも、その狭き門を通った精鋭に業界平均の二倍近い時間をかけて徹底的な教育を行っているというから、「日新製薬マン」の評価がズバ抜けて高いのも納得がいく。

年間売上高は平成二十二年度実績で一二一億三四〇〇万円。平成二十三年一月には、全国の中小企業のなかでも経済的・社会的にすぐれた成果をあげた企業に贈られる「グッドカンパニー大賞」のグランプリを受賞。十一月には、県内産業の発展に貢献した個人・団体を顕彰する「山形県産業賞」を受賞するなど、ここにきて、日新製薬に対する内外からの評価は高まる一方だ。

それはひとえに、大石氏の卓越した経営手腕と、透徹した人生哲学の賜物といってよい。

本書では、日本の財政の危機的状況、特に健康保険制度の状況と課題を踏まえながら、ジェネリック医薬品への認識を高めるための諸情報、ジェネリック医薬品のクオリティアップに貢献著しい日新製薬の取り組み、さらには同社を率いる大石俊樹氏の経営理念と人生哲学をあますところなくお伝えしたいと思っている。

現状のままでは、行く手に待っているのは日本の経済破綻、そして再び、貧困の底にあえぐ国に落ちていくという悲しい将来だ。

その将来図を塗り替え、この先も日本が、世界トップクラスの、安心・安全に暮らせる国でありつづけることができるかどうか。そのカギを握っているのは、自分自身であることを、国民一人ひとりが強く自覚してほしい。

なかでも、安心・安全に暮らせる国であることを象徴する健康保険制度を守りつづけていくためにも、ジェネリック医薬品の普及促進をはかることは、火急のこととして進めていかなければならない課題であることを強く認識しなければなるまい。

そのためにも、決して大げさではなく、日本を愛する人すべてに本書を一読していただけたらと、切に願っている。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。


平成二十三年十二月  鶴蒔靖夫




はじめに


序章 受賞ラッシュの製薬メーカー

受賞の朝
独創的モノづくりが評価される
二〇〇〇年代中ごろから急成長
「あっては困る会社」から「なくては困る会社」へ


第1章 光を放つジェネリック医薬品メーカー・日新製薬

東北のモノづくり精神を受け継いで
先発医薬品とジェネリック医薬品(後発医薬品)
金額シェアでは医薬品市場の一〇%に届かないジェネリック医薬品
錠剤の一粒、注射薬の一本にも社員の思いが込められている
競合より二〇円も高いアムロジピン
世界ではじめて、医薬品製造工程にパルス光滅菌を採用
パルス光滅菌との出合い
パルス光滅菌の効果も独自に検証
業界屈指のポリエチレンボトル製剤メーカーに
革新的なポリエチレンボトル
高水準の製造環境と生産設備
使命は高品質の追求
慶應義塾大学と共同研究
MRには他メーカーの二倍近い研修を義務づける
医薬品メーカーとしての社会的責任をきっちり果たす


第2章 危機に瀕する日本の健康福祉

未曾有の国難を迎えた日本
「出るを制する」覚悟はあるか
急速に進む少子超高齢化
予想されうる日本人の暮らしの将来像
日本の健康保険制度の歩み
五つに分けられる日本の健康保険
日本の健康保険制度の特徴
世界一と定評がある日本の健康保険制度
ありがたい健康保険制度
健康保険制度を持続可能に
日本でも浮上している健康格差
求められるセルフメディケーション
医療費削減の決め手はジェネリック医薬品
急務とされる医療機関の経営安定


第3章 ジェネリック医薬品が日本を救う

製薬のはじめはジェネリック医薬品からだった
こんなにあるジェネリック医薬品のメリット
ジェネリック医薬品の開発と品質管理
ジェネリック医薬品に対する見当違いの誤解
製造から販売までの安全性も厳しく管理
ジェネリック医薬品は古い! も間違い
次々とジェネリック医薬品市場に入ってくる有力な医薬品
先発医薬品プラスアルファのジェネリック医薬品
ジェネリック医薬品はどのくらい安いか
国もジェネリックファーマの育成に注力


第4章 ジェネリック医薬品の普及拡大のために

ジェネリック医薬品の日本の現状
ジェネリック医薬品を使いやすくする対応とは
国のジェネリック医薬品促進支援策・アクションプログラム
医薬分業とジェネリック医薬品
すべての処方でジェネリック医薬品を優先にする
ジェネリック医薬品お願いカードの普及
長期収載品・エスタブリッシュ医薬品問題が浮上
ジェネリック医薬品メーカーには逆風も


第5章 日新製薬が「なくては困る会社」になるまで

商社マンから地方企業の経営者へ転身
社員が草むしりしている会社
競争力を失い、赤字体質に
常に新しい可能性を探る
やるからには正しいことをしよう
明るく輝く社員の表情
日新製薬の夢に融資してほしい!
次代を担う人材の入社
日新製薬のオリジナル開発元年
開発主導の社内体制
外資や超大手レベルの詳細・厳正なデータの集積
先の利の実践
「先の利」戦略でパワーアップ
先発医薬品と同じではなく、先発医薬品よりもよいものを
大手先発医薬品メーカーが感嘆する製剤技術
ジェネリック医薬品最大手も一目置く日新製薬
受託製造という新しい可能性
ジェネリック医薬品だからこそ、より厳しく
積極的な設備投資で急伸
太くなる委受託製造


終章 東北発世界へ――飛躍しつづける日新製薬

一兆円規模になるジェネリック医薬品市場
選ぶのは自立し自力で進む道
一三〇億円を投じて、新工場を設立
粒がそろいはじめたヒト
誇りを持って仕事ができる企業に
最後の決戦がはじまる
「なくては困る会社」へ


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2020/06/26

『独創モータで世界を動かせ』 前書きと目次

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独創モータで世界を動かせ
~不可能を可能にする「シコー」の未来戦略~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-360-3
初版発行:2012年2月20日 初版発行




はじめに

電車のなかで、突然ビクッとしたかと思うと、おもむろにポケットから携帯電話を取り出し、電話やメールの着信を確認する。そんな光景もめずらしくはなくなった。これは、音の代わりに振動で着信を知らせる振動モータの働きによるもので、いまではあたり前の機能となっているが、登場した当初は画期的なものだった。

今日、携帯電話の機能は急速に進化している。電話やメールはいうまでもなく、カメラやテレビはもはや標準機能で、時には音楽やゲームを楽しんだり、クレジットカード代わりの決済機能を備えているものまである。さらに近年は、携帯情報端末(PDA)の機能を併せ持つ、スマートフォンが主流になりつつある。

一方、パソコンも急速に高性能化と小型化が進んだ。かつてはあたり前であったCPU(中央演算処理装置)を冷却するファンモータの音も、いまではほとんど気にならないレベルまで静かになった。

アメリカ・インテル社の創業者の一人であるゴードン・ムーア氏が、自身の経験則から論じた「半導体の集積密度は、十八カ月で倍増する」という「ムーアの法則」そのままに、携帯電話やパソコンの高機能化は、日進月歩どころか秒進分歩で進んだ。しかし、携帯電話やパソコンは、集積回路のみではなく、それに付随する数多くのパーツで成り立っている。つまり、半導体の高機能化がどれほど進もうとも、それらのパーツの小型化が実現できなければ、携帯電話やパソコンの軽量化、小型化は実現できないのである。

逆にいえば、ファンモータや振動モータを小型化する技術力があったからこそ、いまのようにパソコンや携帯電話は小さく、薄くすることができたということだ。

いまでは、携帯電話にあたり前についているオートフォーカスカメラ。これも同様である。小さく薄い部品があってはじめて、持ち運びに便利な小型化が進んだのである。

そして、これら世界各国のメーカーで採用されている超小型の振動モータやファンモータ、オートフォーカスモータを開発したのが、本書で紹介するシコー株式会社(本社:神奈川県大和市、代表取締役社長:白木学氏)である。この会社の製品があったから、いまのパソコンや携帯電話が存在するといっても過言ではないのだ。

シコーの製品は超小型モータである。その用途は、パソコンのファンモータから携帯電話用の振動モータ、小型カメラのオートフォーカスモータ、最近では小型風力発電用モータや電気自動車(EV)用のモータなど多岐にわたる。いずれも、これまでにはない技術を駆使して、小型化・軽量化を実現するための創意工夫が凝らされているのが特徴だ。

同社の最初のヒット製品となったモータは、回転鉄芯のないコアレスコイルを使ったモータで、ソニーのウォークマンに搭載された。通常では、鉄芯のないコイルなど考えられないが、シコーはマグネット磁極を二極から常識破りの四極にしてコアレスを可能にし、鉄芯をなくしたことでモータの超小型化を実現した。

次に、超小型モータを使ってパソコンのCPUを冷却するファンモータを従来の三分の一の薄さにすることに成功した。だが、無名であるがゆえに、国内メーカーには見向きもされなかった。ところが、平成二(一九九〇)年にアメリカ・アップル社、平成六年にはアメリカ・インテル社がシコーのファンモータを採用し、そこからシコーの躍進がはじまったのである。

また、現在ではほぼすべての携帯電話に搭載されている振動モータも、シコーが開発した直径四ミリのリニアモータに着目したのは、アメリカ・モトローラー社であった。以降、世界に名だたる巨大企業が、シコーの製品を名指しで採用している。つまり、一連のシコー製品がなければ、いまのモバイル文化は生まれなかったのである。

ここまで述べれば、シコーがとんでもない技術力を持った会社だというのが理解できるはずだ。

詳しくは本文で紹介するが、シコーの代表取締役社長・白木学氏は、発明家であり、エンジニアだ。本社は、神奈川県大和市下鶴間の工業団地、テクノプラザ大和内にある。

中国・上海に工場を持ち、日本の本社には研究・開発部門のみを置いている。従業員数六八人、売上高(連結ベース)一二〇億円(平成二十三年十二月予定)と飛び抜けて大きな会社ではない。

「町工場」というのはいいすぎだが、規模だけで見れば、まぎれもなく中小企業。だが、シコーは知る人ぞ知る、業界では、“小さな巨人”として世界的なブランドとして広く認知されている。

規模の大小を問わず、中小製造業や町工場であっても独自の技術を深化させれば、世界の競合会社と互角に戦う力を持つことができるのである。

町工場の力なくして日本の大手メーカーは成り立たない――これはよく知られている構図だ。かつてのような右肩上がりの成長を遂げている時代には、この仕組みはうまく機能した。しかし、現在のような先行きの見えない不況下では、そのしわ寄せは真っ先に資金力を持たない町工場へ寄せられる。異常な円高水準に張りついたままの為替レート、途上国の台頭による価格競争の激化など、日本の「モノづくり」を取り巻く環境は、依然として厳しく、これまでどおりのやり方で生き残ることはむずかしい状況にある。他社にはまねのできない、独自の技術を持つシコーであっても、市場を国内に置くかぎり例外ではない。だからこそ、同社は早い段階から、日本の市場よりも世界をマーケットとするビジネスに邁進してきたのである。このあたりの白木の先見性にも注目する必要があるだろう。

「誰もやらない。だからやる」をモットーに、独自技術を深く掘り下げることで、創立以来、今日まで幾多の困難を乗り越えながら業績を伸ばしてきたシコーの足跡は、「製造立国・日本」を支える数多の中小製造業や町工場が進むべき道を示すものとなるはずだ。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。


平成二十三年十二月  鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 「モノづくり日本」の復活に向けて

独創性と企画の相関関係――「誰もやらない。だからやる」の明快さ
白木の「自分流」モノづくり発想とは
技術力が世相を変えた好個の事例
世界が同時進行するコンピュータ万能時代の光と影
新興国の躍進と停滞する日本経済
統計数値が示す国内製造業の低迷
厳しい経営環境にある中小製造業
発想の転換と行動する狭間で


第2章 独創的な超小型モータで世界に挑む

世界で評価される独創的な製品
世界規模で様変わりするライフスタイル
ビッグネームからのプロポーズ
認められた超小型ファンモータ
超ドラマはこうしてはじまった
まねからはじまった戦後の製造業
「正しい」グローバルスタンダード
実を取る海外、名前に頼る日本
あたり前に振動しているが……


第3章 常識破りが生む「世界で唯一」の製品

最高の技術が世界の市場から取り残された理由
過保護は競争力を生み出さない
「世界で唯一」という製品のオンパレード
SF映画の世界が現実化した驚異
人間の動きをモータで実現する
モノをつくる工夫の真髄とは
「物質の小型化は哲学」という思想
世界一に反応する負けじ魂
モノづくりの原点は本気と情熱


第4章 「誰もやらない。だからやる」の発想法

地球に国境はないという思考法
モノづくりの発想を支える観察眼
兼業アルバイトで入学金づくり
今日の基礎をセコー技研で学ぶ
カネに目がくらむと志が曇るのだ
命題「会社は誰のものか?」
財布の中身に関する考察
将来を展望した構想と戦略化
人にはじまり人に終わる
国情の違いで苦労する社員教育


第5章 世界で起きているパラダイムシフト

深耕される国際社会の意味
変化に対応すべき人材の育成法
出船・入船により活況を呈す港
密なコミュニケーションをはかる
状況変化に照応する柔軟な対策
日本語の本が世界で売れるのか!?
世界でいま何が起きているのか
日本の技術力で世界を変える!!
新世紀と世界で起きているパラダイムシフト


第6章 地球人・白木学が描くシコーの未来

自然エネルギーへの転換をめざす
エネルギー収支比に関する考察
微風が吹けば曇天でも発電可能
一家に一台、風力発電+太陽光を
この先、中小水力発電が狙い目
無限に再生する自然エネルギー
都会でもできる再生エネルギー
ホイールインモータとは何か?
超小型モータは新時代の心臓


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2020/06/10

『「シャボン玉石けん」の挑戦』(前書きと目次)

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「シャボン玉石けん」の挑戦
~泡の科学でいま、無添加石けんは新たな領域へ~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-362-7
初版発行:2012年3月20日 初版発行




はじめに

環境問題は地球レベルで取り組まなくてはいけない問題であるが、その大きな特徴としては、科学の先端と日常生活がさまざまな部分で密接にリンクしていることがあげられる。

近年、生活環境にも深いかかわりを持つ化学物質の毒性が注目されるようになってきた。

改めて日常の生活を見渡してみると、自分の身の周りには化学物質を原材料にした製品がたくさんあることに気がつくだろう。プラスチック、合成繊維、医薬品、農薬、洗剤、塗料、ハイテク材料……。豊かで便利といわれている生活とは、これほど化学物質によって支えられていたのかと驚くほどだ。なかには、環境や健康に有害な影響を引き起こす可能性のあるものも少なくない。

環境中に出た化学物質のなかには、すぐに分解されず川や海の底に蓄積したり、食物連鎖を通して生物の体内に濃縮されてしまうものがある。そうした化学物質が人間の体内に取り込まれると、アレルギーやがんの発症、生殖機能の異常など、さまざまな問題を引き起こす可能性があるのである。

このように、化学物質などが環境中に排出され、環境のなかの経路を通して人の健康や生態系に有害な影響をおよぼす可能性を「環境リスク」と呼ぶ。この「環境リスク」を全体として低減させていくためには、行政、事業者、市民、NGOがそれぞれの立場から協力し合って、有害な化学物質の排出抑制に取り組んでいかなければならない。

こうした有害性のある化学物質が、どのような発生源からどれくらい排出されたかといったデータを把握するための制度としてPRTR(Pollutant Release and Transfer Register:化学物質排出移動量届出制度)という仕組みがある。平成四年にブラジルのリオデジャネイロで開催された国連環境開発会議(地球サミット)で大きく取り上げられ、日本でも導入された。平成十一(一九九九)年には法制化もされている。

このなかで、「難分解性」「高蓄積性」とともに「人または高次捕食動物への長期毒性」を有する物質を「第一種指定化学物質」として、四六二種類の化学物質が指定されている。そこに一〇種類の合成界面活性剤が入っており、なかには一般に流通している洗剤やハミガキ粉などにも使われている物質が含まれているというのである。

「私はとても不思議でなりません。環境問題がこれほど取りざたされているのに、いまだに合成洗剤が堂々と製造・販売され、また、多くのみなさんがなんの疑問も持たずにそれを購入・使用されていることです」

こう語るのは、シャボン玉石けん株式会社代表取締役社長・森田隼人氏である。

シャボン玉石けんは、福岡県北九州市に本社を置く、創業百年を超えた老舗企業だ。そして、この四十年間、無添加石けんひと筋に邁進してきた、無添加石けんのパイオニアでもある。その会社経営の基本には、合成洗剤の有害性に警鐘を鳴らし、「洗う」という行為から環境リスクの低減に貢献しようという啓蒙の理念が込められている。

「石けんは地球の生態系に組み込まれた物質で、人類の長い歴史のなかで、その効果も安全も証明済みの洗浄剤です。私たちは、石けんのなかでも天然素材だけを使った無添加石けんにこだわり、生命あるものすべてが安心・安全にすごせる製品をつくりつづけています」

シャボン玉石けんの最大の特徴は、一切の化学物質および添加物を含まない石けん素地のみでつくられた、「真の無添加石けん」を提供しているということである。製造は「ケン化法」というむかしながらの方式で、一週間以上、釜で炊き込みつくられる。できあがった石けんは、肌と環境の両方にやさしく、しっとりとした品質で消費者からの信頼も高い。同社は現在、年間売上高六二億円までに成長した。

実はシャボン玉石けんの前身は、合成洗剤を販売することで大いに発展してきた洗剤の卸売会社であった。それを改め、合成洗剤とはきっぱりと縁を切り、「無添加」という名前をつけた石けん一本で行くことを決めたのは、森田氏の父親である故・森田光德氏である。

そのきっかけはある出来事を通して、長年悩まされてきた皮膚障害の原因が、当時、自身が使っていた合成洗剤であったと気づいたことによる。合成洗剤の有害性を知った光德氏は、健康に有害なものを売ってはならないとの一心で、昭和四十九年、周囲の猛反対を押し切り石けん製造業へと転身する。しかし、ピーク時の一〇〇分の一にまで落ちる売り上げ、次々と辞めていく社員……。赤字は十七年間にもおよび、その苦闘の歳月は、ある意味、自然の命を守って回復させるという自分の信念を試される日々でもあった。

「化学物質から完全に身を守ることは誰も不可能かもしれない。だが、今日から合成洗剤をやめて、安全な石けんに切り替えることは可能である」といい、まさに「隗より始めよ」と訴えつづけた光德氏の気迫の人生は、経営者としてだけではなく、啓蒙家のそれといえる。

石けん運動が広がりを見せ、環境リスクの低減への取り組みが住民レベルで行われている現在のうねりの背景には、光德氏の捨て身の活動が一つの力となったことは、もっと知られてよい事実であろう。そして今日、シャボン玉石けんの理念である「健康な体ときれいな水を守る」の意義はますます深いものになっている。

そうしたシャボン玉石けんの足跡を伝えるとともに、無添加石けんの可能性がどれほど大きなものかを知らせることも本書の大事な役割である。この数年、シャボン玉石けんは先端科学技術を駆使した新製品の開発を次々と実現させてきた。石けんという大変身近な生活用品を扱いながら、多彩なイノベーションを用いた独特のモノづくりは、ほかに類がないとして各方面から注目を集めている。同社が開発した画期的な製品は以下のとおりだ。

◎従来の一七分の一の水量で鎮火できる石けん系泡消火剤「ミラクルフォーム」
◎世界初の「環境配慮型石けん系林野火災用泡消火剤」
◎ノロウイルスなどにも効果がある無添加石けんハンドソープ「バブルガード」

いずれも産学官、および医工連携という、巨視的なスタンスとチャレンジにより、開発されたものである。結果、泡消火剤は世界的な意味での消火剤革命を起こす可能性を持つといわれ、新型ハンドソープは感染症対策の基礎となる重大な発見につながると目されている。その開発の物語に関してはぜひ本文をひもといてもらいたい。

読み進むうち、こうした大きなプロジェクトも、環境と健康への貢献という石けん一個に込められた信念が勝ち取った成果であることがわかるだろう。真実のもの、本来あるべきものへとひた走ってきた軌跡が、まったく新しい製品を生み出すにいたったのである。

本書は、無添加石けんの普及を推進しつづけるシャボン玉石けんのさまざまな取り組みや理念とともに、開発と啓蒙に人生を懸けた人間ドラマが繰り広げられたものである。そこには、地球環境と人の未来を考えるすべての読者にとって貴重な提言が込められている。本書によって日常の暮らしが地球環境につながっていることに気がつき、いま何をするのが適切なのかを少しでも考えてもらえるきっかけとなれば、望外の喜びである。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。


平成二十四年一月  鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 合成洗剤と石けんの違いとは

社会的影響力が大きい無添加石けん
石けんと洗剤の定義に関して
無添加石けんのパイオニア「シャボン玉石けん」
四十年前、初めて知った「無添加」という言葉
一週間で湿疹がきれいに!
恐ろしさは目に見えない
死線を越えて、合成洗剤とは縁を切る決意を
汚れを落とす働きをつかさどる界面活性剤
地球の生態系に組み込まれた石けんの歴史
戦争が開発普及を進めた合成洗剤
日本における石けんと合成洗剤
危険への目覚め――ABSからLASへ
人体と環境におよぼす作用
蛍光増白剤への注意
いまだ調査が必要とされる合成洗剤の有害性
理解したうえでの選択を


第2章 真の無添加石けんと商品群

真の無添加を提起する
原料から無添加にこだわるシャボン玉石けん
二つの石けん製造法
モノづくりの精神が込められた「ケン化法」
肌にふれて喜ぶものを――顧問・井関巌(釜炊き職人)
観光としても好評を集める工場見学
肌の弱い人でもペットでも安心して使える
一度使えばよさがわかる、定番「シャボン玉浴用」
独自の製法で溶けやすく洗浄力も強い、洗濯粉石けん「スノール」
主婦湿疹も改善「キッチン用石けん」
キューティクルを守り健康な髪に戻す「シャンプー・リンス」
低刺激へのこだわりが生んだシリーズ「ベビーシリーズ」
食の安全と同じレベルの安心を――せっけんハミガキ
JIS規格より厳しい品質管理


第3章 信念と波乱の歩み

売り上げが一〇〇分の一に
『複合汚染』が与えた衝撃
合成洗剤有害説から合成洗剤追放運動へ
気がつけば社員は五人に
柳沢文生の孤独な闘いと迫害
迷走と低迷のなか、新入社員採用に踏み切る
やる気満々の若手社員
最大の危機――命を賭けて
決定的瞬間、まったく新しい粉石けん「スノール」の誕生
メーカーとして、信念と思想を売る
十八年目にしてついに黒字転換!
坂本龍一もシャボン玉石けんの隠れファンだった
三代目社長就任と光德との別れ
すべてがゼロからの開拓だった――専務取締役・髙橋道夫


第4章 広がりつづける石けんの可能性

世界初「環境配慮型石けん系林野火災用泡消火剤」の実験成功
阪神・淡路大震災からはじまった
石けん系の泡ならば
小水量消火が課題に
困難極まりない条件
学の参入、分子構造レベルからの開発
プロジェクトで博士号取得者が二人も誕生
オール国産・消防車両の開発
公害都市から環境モデル都市になった北九州市の環境への高い意識
産学官の連携で総務大臣賞受賞
世界に向けて、森林火災用の消火剤
研究機関「石けんリサーチセンター」設立
基礎研究に没頭できる環境――上江洲一也
驚愕の殺菌効果、手洗いせっけんバブルガード
「感染症対策研究センター」の設立、医学と工学の連携


第5章 シャボン玉石けんの理念と啓蒙活動

商品が伝える理念
百年の歴史を持つベンチャー企業
消費者自身に考えてもらうユニークな広告活動
伝道師としての営業とオペレーター
講演や「友の会」に見る幅広い啓蒙活動
アンテナショップ「サロン・デ・シャボン」
市民の石けん運動との地道な連携も
環境への取り組み、大きな目標から小さな活動まで
石けんは本当に熱帯の生態系を破壊するのか
地元とともに発展
東日本大震災への取り組み
「経済界大賞」優秀経営者賞受賞
ユニークな社訓「好・信・楽」が掲げる深い人生観


第6章 世界にはばたく無添加石けん
     ――人々の健康を守るため――

林野火災用泡消火剤、アメリカ特許申請
韓国、中国、ロシア……加速する海外進出
「無添加」の意味再び
環境に安全なものは、健康にも安全
無添加と健康の関係を知らしめる責任
次の百年に向けて、産学連携、医工連携をフルに活用
世界一の石けんメーカーをめざして、さまざまな分野に


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2020/05/25

『ファインバブルが地球の未来を救う』(前書きと目次)

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ファインバブルが地球の未来を救う
~サイエンスのSDGs宣言~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-463-1
初版発行:2020年5月24日 初版発行




はじめに

本書の主人公である株式会社サイエンス創業者の青山恭明氏に、私が初めて出会ったのは、いまから約30年前の、青山氏がまだ20代のころだった。当時の青山氏は、人なみはずれた勢いと明るさで周囲を巻き込む若者で、これから世の中に打って出ようとする熱気には、一種のオーラのようなものが感じられた。

以後、青山氏と私は、途中に多少のブランクはあっても、なにか大きな節目を迎える際には再会を重ねてきた。

その青山氏が先日、還暦を迎えたと聞き、私は思わず感慨を覚えた。

仕事柄、私はこれまでに数多くの経営者と出会い、交流を重ねてきた。そのなかには、厳しい競争のなかで打ち負かされ、表舞台から去っていった人も少なくはない。まさに悲喜こもごもの経営者人生を目の当たりにしてきたわけだ。

そうしたなかで、まだ青年だった時代に出会い、その将来を楽しみに感じていた青山氏が、大きな挫折を乗り越えて、さらにその先の世界へと向かっていこうとする姿を見られることが、私にはたいへん心強く感じられ、また、非常にうれしくもある。

サイエンスは、われわれの暮らしに欠かせない「水」に特化したビジネスを展開している企業だ。そのビジネスの最大の特徴は、微細気泡を発生させるファインバブル技術を導入していることにある。

ファインバブル技術を使った商品と言われても、すぐにはピンとこないかもしれない。しかし、太い油性ペンで女性の頬に塗られた黒インクがシャワーの水を当てると落ちていくテレビCMと言えば、「ああ」と思い当たる人も少なくないだろう。このCMで使われているシャワーヘッドが、サイエンスの「ウルトラファインミスト ミラブルplus」なのだ。

「ウルトラファインミスト ミラブルplus」(以下、「ミラブルplus」と略す)は、泡の直径が1マイクロメートル未満の超微細な気泡であるウルトラファインバブルをミスト状の水流に含むことで強い洗浄力と高い水分浸透性を発揮する、話題のシャワーヘッドだ。泡の力で隅々まで汚れを落とすという革命的な製品で、テレビのワイドショーや情報番組などでも紹介され、爆発的なヒット商品となった。

また、湯船でお湯に浸かるだけで汚れが落ちる「マイクロバブルトルネード」も、2009年に発売を開始して以来、好調な売れゆきだ。これは、ファインバブル技術を利用した初めての民生品(一般家庭用製品)として一般社団法人ファインバブル産業会の「ファインバブル製品認証登録制度」第1号に選定された製品である。ファインバブル発生装置を既存の戸建やマンションのバスタブにも設置可能なほど小型化した、それまで誰も考えつかなかったこの製品は、いまでは家庭だけにとどまらず、介護施設や有名ホテルなどでも導入するところが増えている。

サイエンスが創業したのは2007年8月のことだ。創業時のメンバーは、創業者の青山氏と、現・サイエンス代表取締役社長の水上康洋氏、それに現・株式会社ライフデザインホーム代表取締役社長の根郷陽一氏の、わずか3人だけだった。

資金も取引先もなにもないなかで旗揚げしたサイエンスの、当時の取り扱い商品は、家中の水をまるごと浄活水化させる「サイエンス・ウォーターシステム」(セントラル型浄活水装置)のみだった。しかし、創業当初からファインバブル技術に着目していた青山氏は、さまざまな難関を乗り越えて、2009年に「マイクロバブルトルネード」を完成させ、それまでは産業用が中心だったファインバブル技術を民生品として活用する市場の開拓を、いっきに推し進めた。

そうした青山氏の活躍に大きな可能性を感じた私は、青山氏とサイエンスの事業を綿密に取材し、2016年に『小さな泡が世界の生活を変える』(IN通信社)という著書を上梓したところ、多くの反響を得ることができた。

しかしそれは、サイエンスにとってはただの序章にすぎなかった。その本のなかでさわりだけ紹介した、家庭のシャワーヘッドに取り付けるウルトラファインバブル発生装置「ナノシャワー」がさらなる進化を遂げ、ファインバブルを含んだ水流をワンタッチでストレートとミストに切り替えて使える画期的なシャワーヘッドに生まれ変わり、「ミラブル」として2018年に売り出されると、いっきにブレイクした。この「ミラブル」のヒットによりサイエンスは、会社の知名度はもちろん、規模も人材も考え方も、すべてが新たな段階へと踏み出すことになったのである。

無限の潜在能力を有するとも言われるファインバブル技術は、農業、水産業、医療、工業など、幅広い応用分野に活用され、世界の産業界に大きなイノベーションを与えようとしている。実は、その技術の開発および進化の最前線を走っているのは日本だ。いまは、日本発のファインバブル技術を世界の標準規格とするために、官民あげて推進している最中だ。

そうしたなかでサイエンスは、民間企業ならではのフットワークの軽さで分野と分野の垣根を軽々と飛び越え、「ファインバブルアプリケーション開発メーカー」として、ボーダーレスな事業展開へと積極的に向かっている。その自在な動きとサイエンスならではのスピード感で、これからの人々の暮らしを大きく変えていくだろう。

さらにサイエンスは、より快適な暮らしを実現させる「新習慣」を提案し、それによって環境改善に貢献していくというミッションを掲げ、その実現に向けて邁進している。2019年10月には、国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の達成に協力する企業として「SDGs宣言」を発表し、環境保全への貢献を会社の指針にすることを内外に打ち出した。ファインバブル技術は、安全な水の確保や、健康と福祉の促進、海洋資源の保護、さらには住みよい街づくりなど、広範な領域に貢献するだろう。

「私はファインバブルに魅せられた男です。ファインバブルで地球の未来を救いたいのです」

と語る青山氏は、孫の顔を見るたびに「負の遺産を残してはいけない」と強く思うという。

私と初めて出会ってからの約30年のあいだに、青山氏はいくつもの試練を乗り越えなければならなかった。仕事での大きな挫折もあったし、父親としての悩みも経験した。だが、困難があるたびに甦り、生きる力を取り戻していく青山氏の歩みには、心を打つものがある。

かつて勢いだけで他を圧倒していた若者は、幾多の試練を乗り越えて、いまは人の痛みを知り、精神的に深く円熟した大人へと成長した。自社で働く社員はもちろんのこと、その社員の家族もまた、みな「自分の家族」と思い、とことんつきあっていこうという青山氏の姿勢は、この時代だからこそ多くの人々に勇気と励ましを与えるのではないか。

本書は、未来に向けたサイエンスの事業活動およびファインバブル技術のさらなる可能性に焦点を当てるとともに、青山恭明氏の人生哲学や経営理念を詳述したものである。ここからは、ファインバブルに関する基礎知識を得たい、人を育てる極意を知りたい、経営者の胸の内を窺いたいなど、読者がもつさまざまな興味や関心に対するヒントを読み取ることができるだろう。

そうしたなかでも、最も心に迫ってくるのは青山氏の「熱い思い」であると思う。その「熱い思い」が読者にとって、生きるうえでのなんらかの指針となれば、著者としては望外の喜びである。

なお、本文中の一部の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。


2020年4月  鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 SDGs達成を担う「小さな泡」

SDGsは未来社会への世界共通の羅針盤
地球環境を救う使命をもったSDGs
サイエンスが打ち出した本気の「SDGs宣言」
自分の孫が50年後も安心して暮らせる社会をつくるため
日本政府のこれまでの取り組みと現状
幅広い分野でSDGsに貢献するファインバブル技術
サイエンスの商品を通して環境に貢献を


第2章 「新習慣」をつくる夢のシャワーヘッドと入浴革命を起こしたバス

微小な泡が生み出す夢の効果が大評判に
優れた使い心地と効能を実現した「ミラブルplus」
臨床研究を90日間実施し、アトピーへの効果を確認
人類初のファインバブルは日本から
マイクロバブルの民生用領域を開拓
ファインバブル技術で入浴革命を実現
三女の「塩素系アトピー」をきっかけに
家中の水すべてをクリーンにする「ウォーターシステム」
日本初の一般向けファインバブル製品「マイクロバブルトルネード」
さらに広がる「マイクロバブルトルネード」の導入先
クリーニング機能を搭載した「ミラバス」
見守り機能のついた「ミラバス・ガーディアン」
待望のキッチン用水栓「ミラブルキッチン」
ECサイトでの販売を禁止した理由
たむらけんじがサイエンスの正規代理店に
自らの会社を譲り、新たにサイエンスの代理店を創業した男


第3章 ファインバブルの可能性と未来

FBIA認証はサイエンスのもつ技術力の高さの証
ファインバブルのもつ効果とメカニズムの解明が進む
ファインバブル規格の国際標準化に向けて
マイクロバブルとウルトラファインバブルの違いとは
ファインバブル実用化の広がり
住宅用ファインバブルシステムをハウスメーカーと共同開発
ファインバブルアプリケーションの開発メーカーとして
ファインバブル技術は地方の中小企業からグローバル展開へ


第4章 感動と喜びを与え続ける

なるべくしてなったサイエンスの急成長
どんな会社も理念からはずれると潰れてしまう
100年計画を覚悟した壮大な理念
サイエンス式採用で理念を実践
人材育成は命がけの仕事
サイエンスで人間的成長を
「素直人」が集まる濃い関係
積極志向の「赤ボタン」を押しながら、上司について東京へ
感動が渦巻く「望年会」
建前だらけの「働き方改革」とは逆を行く
「スピード」こそがサイエンスの強み
経営者とは「決断」をする人間


第5章 感謝の出会いがあってこそ ― 青山恭明の直球人生

人に喜んでもらうことばかりを考えていた僧侶の父親
運命の出会いは高校生のとき
2年間で200万円つくる約束を果たして結婚へ
アメリカ留学で受けたカルチャーショックで「水」に注目
次女を襲った急性白血病に自分の弱さを思い知らされる
震災被災者の言葉で自分が果たすべき役割に気づく
毎晩、寝る前に仏壇に手を合わせ
経営者にとっての伴侶
苦闘のなかで手を差し伸べてくれた最大の恩人
8月7日は「恩人の日」
サイエンスのCMは「実証広告」
生きる力をユーザーに与える
1年がかりのサプライズ、号泣の還暦パーティ


第6章 サイエンスが描くファインバブルと地球の未来

いきなりの万博出展宣言
10歳若返るパビリオンに「ミラバス」「ミラブルplus」が登場
2人のキーパーソンとの出会いが「ほら」を「現実」に近づけた
新製品開発と海外戦略
ライフデザインホームを組み込みホールディングス体制へ
100年計画と後継者問題
サイエンスが社会に存在する意義とは
ファインバブル技術が地球の未来を救う


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2020/03/10

『「梅の花」のおもてなし』 前書きと目次

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「梅の花」のおもてなし
~感動を生む「梅の花」の秘密とは~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-363-4
初版発行:2012年4月11日 初版発行




はじめに

近年、世界中で日本食ブームが巻き起こっている。海外の日本食レストランの数はいまや二万五〇〇〇店以上と推定されており、「寿司」などの高級店だけでなく、居酒屋のような大衆的な店も増え、ブームに拍車をかけている。なかには、日本人以外の手による、正当な日本食とはほど遠い「日本食もどき」の店もあるという。

それほどまでに日本食がもてはやされるようになった背景として、世界的な健康志向の高まりがあげられるだろう。米を中心に魚や大豆など、多彩な食材を用いる日本食は栄養バランスにすぐれ、新鮮な素材の持ち味をそのまま生かした調理法が多く、肉中心の料理に比べカロリーも低い。そうした日本食のヘルシーさに、欧米人をはじめ、これまで脂肪やカロリーをとりすぎていた人たちが注目するようになったのだ。

しかもヘルシーなだけでなく、日本食は料理の種類も豊富で、それぞれにおいしく、器や盛りつけなど、見た目も美しい。昨今、日本のポップカルチャーに端を発し、日本のさまざまな文化が「クールジャパン(かっこいい日本)」として人気を呼んでいるが、食文化もその一つである。料理そのものだけでなく、盛りつけなどを含む和のしつらい、さらにはもてなしの精神や作法なども含めた文化として、国際的に高く評価されているのだ。

しかし、東日本大震災にともなう福島第一原発の事故は、日本の食文化にも少なからず影響をおよぼし、日本食を目あてに訪れる海外からの観光客が減少。日本食への安心・安全・信頼が揺らいでいることも否めない。

そんななか、「日本食文化をユネスコ世界無形遺産に」という動きがにわかに高まり、平成二十五(二〇一三)年十一月の登録をめざし、目下、農林水産省を中心に、平成二十四年三月の申請に向けた準備が進められている。世界無形遺産への登録により、日本食の安全性やおいしさを内外にアピールするとともに、古来からの年中行事や人生儀礼とも結びついた伝統ある日本の食文化を、次世代に継承していこうというわけだ。

おいしい料理を味わうと人は誰でも幸せな気分に浸れる。特に日本では、季節の移ろいが感じられる、心地よい空間でそれが味わえれば、なおさらだろう。日常的な外食ではなく、レジャーとして外食にそうした癒しを求める人も少なくないようだ。

日本生産性本部余暇創研の『レジャー白書二〇一一』によると、平成二十二年の日本人の余暇活動として、外食はドライブ、国内観光旅行に次いで第三位。平成二十年までは長い間、外食が首位の座を占めていたが、不況や低価格化のあおりを受けて第三位に後退している。とはいえ、やはり身近なレジャーとして根強い人気があることに変わりない。

とりわけ女性の場合、ふだんは家庭で料理をつくる立場のことが多く、たまには外食でおいしい料理に舌鼓を打ち、お客として心配りが行き届いたもてなしを受け、心豊かな時間をすごしたいと思っている人は多いのではないだろうか。ただ、その場合もおいしいものは食べたいけれど、太りたくはないというのがおおかたの女性の本音だろう。

そんな女性のニーズを先取りし、健康と癒しをキーワードにした湯葉と豆腐の店「梅の花」を、全国六八カ所に展開しているのが、本書で紹介する株式会社梅の花(本社:福岡県久留米市、代表取締役社長:梅野重俊氏)である。

福岡・久留米に「梅の花」一号店がオープンしたのは、女性の社会進出が進み女性の時代といわれた昭和六十一(一九八六)年のことだ。家庭の主婦も遊びや趣味など、自分のために費やす時間やお金を持てる時代になっていた。

そこで「梅の花」では、ターゲットを女性に絞り、「女性がおこづかいで月に一度、ちょっと贅沢ができる店」をコンセプトに、女性にはなじみの薄かった料亭のような雰囲気を提供することにしたのである。

当時、地元でのランチの相場が五〇〇円という時代に、コース料理は二三〇〇円を超える価格設定だったにもかかわらず、連日、あっという間に予約で埋まるほどの盛況ぶりだった。

お客からお客へと「梅の花」の評判は口コミで広がり、その後、九州はもとより、関西、北陸、関東、東北、北海道と、全国進出を果たしている。

自家製の湯葉と豆腐は、大豆や水といった素材から製法までとことんこだわり、妥協を許さないおいしさを追求。そのほかの素材も、最高のものが厳選され、極力無添加の材料を使用している。

また、当初から全国展開を視野に入れていた同社では、昭和六十二年には早くもセントラルキッチンを設置している。店舗ごとの味のブレをなくすため、各店舗には職人は置かず、メインの料理はここで一括して手づくりし、その日の夜に全国の店舗へ出荷される。これにより、店舗の厨房では最終的な仕上げと、盛りつけを行うだけですむというわけだ。そして、熱い料理は熱く、冷たい料理は冷たいうちに、最適なタイミングで提供する。

「『梅の花』では料理がおいしいのはあたり前のこととして、むしろその場ですごす癒しの時間そのものを心ゆくまで味わっていただきたいのです」

こう語るのは、同社代表取締役社長・梅野重俊氏だ。

そのために季節感を大切にした空間の演出、器や盛りつけ、箸、ランチョンマット、明かり、香り、サービスまで、お客に心から満足してもらえるよう、あらゆるところにおもてなしの心配りを徹底させている。

「お客さまに喜ばれることをしてさしあげなさい」

これが従業員に対する梅野氏の口ぐせである。そして、お客の喜びを自分の喜びと感じられるようになることが大切なのだという。そのためにも、「従業員がまず幸せにならなければいけない」と考える梅野氏は、社員だけでなく、パートやアルバイトまで含め、すべての従業員と積極的に交流をはかり、常に感謝の気持ちを伝えることを忘れない。

その根底にあるのが同社の企業理念である「人に感謝、物に感謝」という心のありようだ。実は、梅野氏はこの言葉に出合うまでに数々の失敗を重ね、大きな挫折も味わっている。

同社の創業は、「梅の花」一号店よりさらにさかのぼること十年前。昭和五十一年に梅野氏が二十五歳で夫人の久美恵氏(専務取締役)と福岡・久留米に開業したかに料理専門店「かにしげ」が原点である。一三坪にも満たない小さな店だったが、当時はかに料理の専門店はまだめずらしかったこともあり、店は大いに繁盛し、二年間で二〇〇〇万円を貯めて、二階建ての大型店の出店にこぎつけた。さらに、それと並行して居酒屋やポテト料理専門店、焼肉店などにも手を広げていった。

「もともとじっとしていられない性格なのです(笑)」という梅野氏は、現状にあき足らず、その後もジンギスカン、ふぐ料理、スペアリブの店など、次々と新しい業態の店舗をオープンさせていく。ところが、これらがことごとく失敗、八方ふさがりの状況にまで追い込まれたのである。

若くして成功を手にしたばかりに、梅野氏は「すっかり天狗になっていたのかもしれない」と当時を振り返る。店をつくればお客は来てくれるものと思っていたが、急激に拡大しようとしても人材の確保が追いつかず、せっかく採用しても定着しない。お客も、思っていたようには来てくれない。

「当時は自分のことしか考えず、悪いのはすべて人のせい。こんな身勝手な経営者に従業員がついてくるわけもないし、お客さまが来ないのも当然です。若気の至りというか、そのころはそんな単純なことにも気づかなかったのです」

いったん歯車が狂い出すと、すべてが悪い方向に作用する。自暴自棄になりかけていたとき、転機になったのが訪れた寺の壁に貼られていた「人に感謝、物に感謝」という言葉だったのである。

この言葉を目にした途端、目の前がパッと開け、これこそ自分にいちばん足りなかったものであり、これまでの己の傲慢さに気づかされたのだという。

誰しも失敗のなかから学ぶことはある。数々の失敗を乗り越えてきたからこそ、今日の「梅の花」の成功があるのはいうまでもない。当時、もう後はないという瀬戸際に立たされた梅野氏はすっかり心を入れ替え、「厳しい冬を乗り越えて最初に咲く花が梅」ということと、「梅野に花をもたせてほしい」との決意を込めて店名を「梅の花」と名づけたのである。

経営者の心が変わると、従業員も変わり、モチベーションの高さは見違えるようになり、お客もどんどん増えていった。

「人に感謝、物に感謝」

わずか八文字からなる言葉に救われた梅野氏は、以来、これを常に心の中心に据え、新しいおもてなしのスタイルを創造しつづけてきた。

その際、「お客さまに喜んでいただける」「満足していただける」ためなら、必ずしも和食だけにとらわれない。湯葉と豆腐の店として、日本料理の世界にこれまでにない新しいスタイルを提唱してきた同社では、ほかにはないもの、オンリーワンをめざし、常に進化しつづけているのである。

たとえば、「チャイナ梅の花」として中華料理分野でも「梅の花」ならではの新しいスタイルを提案。業態もレストランに限らず、寿司・おむすび・おこわなどのテイクアウト店「古市庵」をM&Aで取得したほか、通販事業「梅あそび」にも乗り出した。

本書は、湯葉と豆腐の店「梅の花」をはじめとする梅の花の各事業を紹介するとともに、幾多の失敗や挫折を乗り越えて今日の成功をつかんだ創業社長・梅野重俊氏の理念と哲学に迫るものである。これは、外食産業やサービス産業に携わる人にとってはもちろん、一般の読者の方々にとっても、「梅の花」の食へのこだわりやおもてなし、感謝の心から学び取ることは多いはずと考えたいからである。

本書をご一読いただき、一人でも多くの方々が日本の食文化のあり方を改めて考え直すきっかけになれば、これに勝る幸せはない。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。


平成二十四年二月  鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 からだに健康を、心に感動を提供する「梅の花」

からだにやさしい伝統の食材、湯葉と豆腐に着目
おいしい料理を提供するための素材と製法へのこだわり
想像を超えるおいしさと感動を
均一の味を可能にしたセントラルキッチン
清潔で快適な環境の電化厨房&ドライシステム
熱いものは熱く、冷たいものは冷たいうちに
季節を愛でる料亭の雰囲気を演出
究極の感動を与えるのは真心のおもてなし
気づきと感性がお客の満足度につながる
お客が抱く「自分のことをわかってくれる」安心感
クレームも貴重な意見として受け止める
一人でも多く「梅の花」のファンをつくるために


第2章 度重なる挫折から学んだ「人に感謝、物に感謝」 ――創業社長・梅野重俊の歩み――

【その1 「梅の花」開店までの道のり】
 朝食づくりが日課だった少年時代
 将来は自分で商売をはじめたくて商業高校へ進学
 辛酸をなめた下積み時代
 七年間で二〇カ所ほどを渡り歩き修業を重ねる
 二十五歳で念願の独立を果たす
  早く大きな店にしたい!
 本格的かに料理専門店へとステップアップ
 「かにしげ」のチェーン展開をめざし県外へ
 新業態の店づくりに次々と手を染める
 自分に非はなく、悪いのはすべて人のせい
 暗闇の中で見えてきた一条の光
【その2 「梅の花」の全国展開へ】
 女性客の心をつかんだ「梅の花」
 従業員に対し自らの行動をもって範を示す
 オフィスビルのなかに佐賀店をオープン
 「梅の花」成長の原動力となったセントラルキッチン
 新工場建設にともない、出店を加速化
 全国各地に広がりを見せる「梅の花」


第3章 食文化を中心にオンリーワン企業をめざす

「梅の花」の出店は都心型から郊外型へ
地域に密着した店づくり
一年先を見越しながらのメニュー開発
株式店頭登録から東証二部上場へ
「食の安全」への全社的取り組み
中華料理を「梅の花」スタイルで
「花小梅」は外食事業の第二、第三の柱になるか!?
古市庵をM&Aで取得し中食事業を拡大
百貨店依存型から脱却し「古市庵」ブランドを構築
オンリーワンをめざし常に新しい業態を模索


第4章 梅野イズムの真髄は「人」を幸せにすること

従業員の幸せがお客の幸せにつながる
人の成長なくして企業の成長はない
社長は社員一人ひとりの親代わり
「梅の花」で働くことに誇りを持つ
店舗の支配人はそれぞれが経営者
社員のやる気に誠心誠意応える
接客のレベルアップを目的にコンテスト開催
料理の段取りとチームワークを競う調理コンテスト
がんばった人が幸せになれるように
トップダウンをやめて権限の委譲を
梅野イズムの浸透が成長のカギ


第5章 百年企業として咲きつづけるために

男性客をターゲットにしたテレビCMがヒット
酒のつまみや男の懐石膳も登場
中食としての提供を見据えた「餃子屋一番」
アメリカでの失敗を糧にアジア市場に挑戦
古市庵のほうがひと足先に海外進出か!?
焦らずじっくり人を育てていくことを優先する
周りのすべての人の幸せを願って咲きつづける


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2020/02/21

『オーレックの挑戦』 前書きと目次

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オーレックの挑戦
~“モノづくり精神”で切り開く農業機械革命~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-364-1
初版発行:2012年4月17日 初版発行




はじめに

日本の農業はいま、崖っぷちの状況にある。

農業従事者の高齢化や後継者難による休耕地の拡大。さらに、東日本大震災で被災した農地の復興計画はいまだ具体化せず、福島第一原発事故にともなう風評被害も深刻な問題だ。また、平成十九(二〇一一)年度の日本の食料自給率は、カロリーベースで四〇%にまで減少。これは、昭和三十五年度の七九%からほぼ半減した計算になる。ちなみに、世界では「三五%を下回ると国家として壊滅的な状態」という認識が一般的であり、これは有事のときに国家の安全が保てない恐れさえある。

こうした危機意識はここにきてようやく、政界、産業界、学界を中心に浸透し、食料自給率の向上策が議論されるようになった。加えて、農業は緑地造成の保存という環境保全の一面を有していることから、政府も農業・農地の持続的な発展と循環型社会の形成に向けて、農業政策の抜本的な改正に取り組む姿勢を見せ、その一環として市民農園などの普及を支援する方針も打ち出してはいる。

しかし、その一方で、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加に向けての事前協議が進められている。TPPでは加盟国間での輸出入は原則自由化が建前だから、今後、農産物への関税の撤廃、安全基準の緩和などが求められるのは必至で、海外から安い農産物が大量に輸入されるようになれば、国内の農業はこれまで以上に厳しい状況にさらされることになるのは間違いない。

こうした厳しい局面を迎えた日本の農業を農業機械メーカーの立場から支援しているのが、本書で紹介する株式会社オーレック(本社:福岡県八女郡広川町、代表取締役社長:今村健二氏)である。

同社は農業機械メーカーのなかでは「草刈機のトップシェアのメーカー」として知られているが、その製品構成は草刈機だけにとどまらず、管理機、耕運機、除雪機・運搬車にまでおよぶ。

創業は昭和二十三年、「戦後の食糧難を解決するためには、農作業の軽減をはかるべき」との思いから、創業者の今村隆起氏(故人)が徒手空拳、自宅脇の車庫を改造して、同社の前身である「大橋農機製作所」を立ち上げ、農業機械をつくったのがはじまりである。創業時の事業発展の契機になったのは動力モーターを利用した「水揚げポンプ」である。これが田植え前に行われる、用水路から田んぼへの水揚げ作業を画期的に改善した。さらに「養分をたくさん含んだクリーク(用水路)の泥土を、稲刈りを終えた田んぼに引き上げたいのだが」という農家の要望に応じて開発した「泥土揚げ機」が好評を博し、同社の農業機械メーカーとしての基盤を固めることになったのだ。

その後、隆起氏は手持ち式の草刈機しかなかった時代に、「もっと楽に草刈りができる機械はないか」という農家の要望に応え、業界初となるタイヤ装備の自走式草刈機を開発した。文字どおり自走式草刈機の草分けである。

「創業者の今村隆起は『世の中に役立つものを誰よりも先につくる』を信条とし、自走式草刈機を他社にさきがけて開発したのです」

こう語るのは隆起氏の長男であり、現在、オーレックの代表取締役社長を務める今村健二氏である。

さらに健二氏が入社したのを契機に、経営基盤のさらなる強化が進められた。

まず、健二氏の進言により昭和五十五年に埼玉県に営業所を開設した。当初、九州の小さな農業機械メーカーの製品に誰も見向きもしなかったが、粘り強い営業活動の末、商圏を関東に広げた。そして社名を「株式会社オーレック」に改めるとともに、工場の拡張、アメリカ・シアトルでの販売会社設立など経営の強化拡大策が推進され、「小型農業機械メーカーの雄」という地歩を確立していったのである。

本書は、オリジナリティと信頼性の訴求で草刈機市場でトップシェアを誇るオーレックの創業者・今村隆起氏の、日本の農業界に残した業績を振り返りつつ、その意志を受け継ぎ、オーレックの事業を世界規模へと拡充した今村健二氏の独自の経営戦略を紹介するとともに、その根幹にある経営理念や人生哲学を解き明かすものである。

現在、農業機械業界に身を置く人のみならず、日本の農業と食料、さらには環境問題などに関心を寄せる多くの一般読者にとっても貴重な指針となるであろう。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。


平成二十四年二月  鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 日本の「食」と「農」は危機状態!

日本は「農業国」か「工業国」か
食料自給率は先進国中最低の日本
輸入の七割を五つの国・地域に依存する
戦後の工業重視政策で農業は脆弱化
農家に迫る深刻な問題――高齢化・後継者難の波
農業と食料供給体制を見直す潮時
国は農業経営近代化と合理化支援
農業機械市場に見られる新しい波
足元にやるべきことがまだある


第2章 「草刈機」トップメーカーへの道のり

実体は大手メーカーのOEM製造者
用途別に種類がある草刈機
「農具」「農機具」「農業機械」の定義
関東進出で飛躍への契機をつかむ
地を這うように探る現場の情報
徒手空拳、新天地に拠点を構える
止血剤を飲みながら悪戦苦闘する日々
クレームを糧にする
無理に売らなくとも売れる製品
顧客こそがトップセールスマン


第3章 「超顧客志向」で独創的な製品を開発

品格のある農業機械製品とは
連綿と受け継がれる創業の精神
経営の核心を表現する「OREC」
「業界初」をつくることが存在証明
主要な部品の内製化で自立する
開発担当者一人が一製品を担当
バーチャル設計とリアル設計の決定的違い
ハイテク活用と人的な情報交換
マーケットインとプロダトアウト
売上高ではなく貢献高


第4章 小型農業機械分野のさきがけとして
 ――創業者・今村隆起の挑戦人生――

不撓不屈、決してぶれない思考
進取・先攻の気性に富んだ創始者
農作業の軽減化・省力化に注力
極意と日本一のモノづくり志向
先行投資で日本一、先を行く企業
DNAとして伝えられた困難に臨む勇気と決断力
節約しろ、使うときはドンと使え
食品売り場で食文化を諭された話
田舎娘は全国に通用しない
よい家庭環境こそが会社の基盤


第5章 継続のなかに革新を織り込む経営哲学
 ――一を一〇〇にする今村健二の思考法――

研究開発基地のテクノセンター
経営者に不可欠な人材の育成法
じっと十年、我慢の成果
一の力を百人力に変える
人財育成も兼ねたオーレック祭
人との融和で活性化する組織
一人ひとりが考える判断の基準
農業は健康産業であった
健康食品「黒の薩摩青汁」開発経緯
西日本と東日本、そして世界へ


第6章 受け継ぐモノづくり精神で世界へ

世界に飛翔するオーレック魂
難問山積の時代、突破口を探す
海外進出にともなう産業空洞化論に疑問
世界企業になるための四つの道筋
小型農業機械領域を進化・深化させる
伝統とノウハウを生かす新事業
健康食品で探る新機軸の方向性
実現に向け同時進行中の六事業
アジア、オーストラリア、南米の環太平洋州
世界人として世界企業への邁進


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