*製造・メーカー

2020/05/25

『ファインバブルが地球の未来を救う』(前書きと目次)

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ファインバブルが地球の未来を救う
~サイエンスのSDGs宣言~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-463-1
初版発行:2020年5月24日 初版発行




はじめに

本書の主人公である株式会社サイエンス創業者の青山恭明氏に、私が初めて出会ったのは、いまから約30年前の、青山氏がまだ20代のころだった。当時の青山氏は、人なみはずれた勢いと明るさで周囲を巻き込む若者で、これから世の中に打って出ようとする熱気には、一種のオーラのようなものが感じられた。

以後、青山氏と私は、途中に多少のブランクはあっても、なにか大きな節目を迎える際には再会を重ねてきた。

その青山氏が先日、還暦を迎えたと聞き、私は思わず感慨を覚えた。

仕事柄、私はこれまでに数多くの経営者と出会い、交流を重ねてきた。そのなかには、厳しい競争のなかで打ち負かされ、表舞台から去っていった人も少なくはない。まさに悲喜こもごもの経営者人生を目の当たりにしてきたわけだ。

そうしたなかで、まだ青年だった時代に出会い、その将来を楽しみに感じていた青山氏が、大きな挫折を乗り越えて、さらにその先の世界へと向かっていこうとする姿を見られることが、私にはたいへん心強く感じられ、また、非常にうれしくもある。

サイエンスは、われわれの暮らしに欠かせない「水」に特化したビジネスを展開している企業だ。そのビジネスの最大の特徴は、微細気泡を発生させるファインバブル技術を導入していることにある。

ファインバブル技術を使った商品と言われても、すぐにはピンとこないかもしれない。しかし、太い油性ペンで女性の頬に塗られた黒インクがシャワーの水を当てると落ちていくテレビCMと言えば、「ああ」と思い当たる人も少なくないだろう。このCMで使われているシャワーヘッドが、サイエンスの「ウルトラファインミスト ミラブルplus」なのだ。

「ウルトラファインミスト ミラブルplus」(以下、「ミラブルplus」と略す)は、泡の直径が1マイクロメートル未満の超微細な気泡であるウルトラファインバブルをミスト状の水流に含むことで強い洗浄力と高い水分浸透性を発揮する、話題のシャワーヘッドだ。泡の力で隅々まで汚れを落とすという革命的な製品で、テレビのワイドショーや情報番組などでも紹介され、爆発的なヒット商品となった。

また、湯船でお湯に浸かるだけで汚れが落ちる「マイクロバブルトルネード」も、2009年に発売を開始して以来、好調な売れゆきだ。これは、ファインバブル技術を利用した初めての民生品(一般家庭用製品)として一般社団法人ファインバブル産業会の「ファインバブル製品認証登録制度」第1号に選定された製品である。ファインバブル発生装置を既存の戸建やマンションのバスタブにも設置可能なほど小型化した、それまで誰も考えつかなかったこの製品は、いまでは家庭だけにとどまらず、介護施設や有名ホテルなどでも導入するところが増えている。

サイエンスが創業したのは2007年8月のことだ。創業時のメンバーは、創業者の青山氏と、現・サイエンス代表取締役社長の水上康洋氏、それに現・株式会社ライフデザインホーム代表取締役社長の根郷陽一氏の、わずか3人だけだった。

資金も取引先もなにもないなかで旗揚げしたサイエンスの、当時の取り扱い商品は、家中の水をまるごと浄活水化させる「サイエンス・ウォーターシステム」(セントラル型浄活水装置)のみだった。しかし、創業当初からファインバブル技術に着目していた青山氏は、さまざまな難関を乗り越えて、2009年に「マイクロバブルトルネード」を完成させ、それまでは産業用が中心だったファインバブル技術を民生品として活用する市場の開拓を、いっきに推し進めた。

そうした青山氏の活躍に大きな可能性を感じた私は、青山氏とサイエンスの事業を綿密に取材し、2016年に『小さな泡が世界の生活を変える』(IN通信社)という著書を上梓したところ、多くの反響を得ることができた。

しかしそれは、サイエンスにとってはただの序章にすぎなかった。その本のなかでさわりだけ紹介した、家庭のシャワーヘッドに取り付けるウルトラファインバブル発生装置「ナノシャワー」がさらなる進化を遂げ、ファインバブルを含んだ水流をワンタッチでストレートとミストに切り替えて使える画期的なシャワーヘッドに生まれ変わり、「ミラブル」として2018年に売り出されると、いっきにブレイクした。この「ミラブル」のヒットによりサイエンスは、会社の知名度はもちろん、規模も人材も考え方も、すべてが新たな段階へと踏み出すことになったのである。

無限の潜在能力を有するとも言われるファインバブル技術は、農業、水産業、医療、工業など、幅広い応用分野に活用され、世界の産業界に大きなイノベーションを与えようとしている。実は、その技術の開発および進化の最前線を走っているのは日本だ。いまは、日本発のファインバブル技術を世界の標準規格とするために、官民あげて推進している最中だ。

そうしたなかでサイエンスは、民間企業ならではのフットワークの軽さで分野と分野の垣根を軽々と飛び越え、「ファインバブルアプリケーション開発メーカー」として、ボーダーレスな事業展開へと積極的に向かっている。その自在な動きとサイエンスならではのスピード感で、これからの人々の暮らしを大きく変えていくだろう。

さらにサイエンスは、より快適な暮らしを実現させる「新習慣」を提案し、それによって環境改善に貢献していくというミッションを掲げ、その実現に向けて邁進している。2019年10月には、国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の達成に協力する企業として「SDGs宣言」を発表し、環境保全への貢献を会社の指針にすることを内外に打ち出した。ファインバブル技術は、安全な水の確保や、健康と福祉の促進、海洋資源の保護、さらには住みよい街づくりなど、広範な領域に貢献するだろう。

「私はファインバブルに魅せられた男です。ファインバブルで地球の未来を救いたいのです」

と語る青山氏は、孫の顔を見るたびに「負の遺産を残してはいけない」と強く思うという。

私と初めて出会ってからの約30年のあいだに、青山氏はいくつもの試練を乗り越えなければならなかった。仕事での大きな挫折もあったし、父親としての悩みも経験した。だが、困難があるたびに甦り、生きる力を取り戻していく青山氏の歩みには、心を打つものがある。

かつて勢いだけで他を圧倒していた若者は、幾多の試練を乗り越えて、いまは人の痛みを知り、精神的に深く円熟した大人へと成長した。自社で働く社員はもちろんのこと、その社員の家族もまた、みな「自分の家族」と思い、とことんつきあっていこうという青山氏の姿勢は、この時代だからこそ多くの人々に勇気と励ましを与えるのではないか。

本書は、未来に向けたサイエンスの事業活動およびファインバブル技術のさらなる可能性に焦点を当てるとともに、青山恭明氏の人生哲学や経営理念を詳述したものである。ここからは、ファインバブルに関する基礎知識を得たい、人を育てる極意を知りたい、経営者の胸の内を窺いたいなど、読者がもつさまざまな興味や関心に対するヒントを読み取ることができるだろう。

そうしたなかでも、最も心に迫ってくるのは青山氏の「熱い思い」であると思う。その「熱い思い」が読者にとって、生きるうえでのなんらかの指針となれば、著者としては望外の喜びである。

なお、本文中の一部の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。


2020年4月  鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 SDGs達成を担う「小さな泡」

SDGsは未来社会への世界共通の羅針盤
地球環境を救う使命をもったSDGs
サイエンスが打ち出した本気の「SDGs宣言」
自分の孫が50年後も安心して暮らせる社会をつくるため
日本政府のこれまでの取り組みと現状
幅広い分野でSDGsに貢献するファインバブル技術
サイエンスの商品を通して環境に貢献を


第2章 「新習慣」をつくる夢のシャワーヘッドと入浴革命を起こしたバス

微小な泡が生み出す夢の効果が大評判に
優れた使い心地と効能を実現した「ミラブルplus」
臨床研究を90日間実施し、アトピーへの効果を確認
人類初のファインバブルは日本から
マイクロバブルの民生用領域を開拓
ファインバブル技術で入浴革命を実現
三女の「塩素系アトピー」をきっかけに
家中の水すべてをクリーンにする「ウォーターシステム」
日本初の一般向けファインバブル製品「マイクロバブルトルネード」
さらに広がる「マイクロバブルトルネード」の導入先
クリーニング機能を搭載した「ミラバス」
見守り機能のついた「ミラバス・ガーディアン」
待望のキッチン用水栓「ミラブルキッチン」
ECサイトでの販売を禁止した理由
たむらけんじがサイエンスの正規代理店に
自らの会社を譲り、新たにサイエンスの代理店を創業した男


第3章 ファインバブルの可能性と未来

FBIA認証はサイエンスのもつ技術力の高さの証
ファインバブルのもつ効果とメカニズムの解明が進む
ファインバブル規格の国際標準化に向けて
マイクロバブルとウルトラファインバブルの違いとは
ファインバブル実用化の広がり
住宅用ファインバブルシステムをハウスメーカーと共同開発
ファインバブルアプリケーションの開発メーカーとして
ファインバブル技術は地方の中小企業からグローバル展開へ


第4章 感動と喜びを与え続ける

なるべくしてなったサイエンスの急成長
どんな会社も理念からはずれると潰れてしまう
100年計画を覚悟した壮大な理念
サイエンス式採用で理念を実践
人材育成は命がけの仕事
サイエンスで人間的成長を
「素直人」が集まる濃い関係
積極志向の「赤ボタン」を押しながら、上司について東京へ
感動が渦巻く「望年会」
建前だらけの「働き方改革」とは逆を行く
「スピード」こそがサイエンスの強み
経営者とは「決断」をする人間


第5章 感謝の出会いがあってこそ ― 青山恭明の直球人生

人に喜んでもらうことばかりを考えていた僧侶の父親
運命の出会いは高校生のとき
2年間で200万円つくる約束を果たして結婚へ
アメリカ留学で受けたカルチャーショックで「水」に注目
次女を襲った急性白血病に自分の弱さを思い知らされる
震災被災者の言葉で自分が果たすべき役割に気づく
毎晩、寝る前に仏壇に手を合わせ
経営者にとっての伴侶
苦闘のなかで手を差し伸べてくれた最大の恩人
8月7日は「恩人の日」
サイエンスのCMは「実証広告」
生きる力をユーザーに与える
1年がかりのサプライズ、号泣の還暦パーティ


第6章 サイエンスが描くファインバブルと地球の未来

いきなりの万博出展宣言
10歳若返るパビリオンに「ミラバス」「ミラブルplus」が登場
2人のキーパーソンとの出会いが「ほら」を「現実」に近づけた
新製品開発と海外戦略
ライフデザインホームを組み込みホールディングス体制へ
100年計画と後継者問題
サイエンスが社会に存在する意義とは
ファインバブル技術が地球の未来を救う


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2020/02/21

『オーレックの挑戦』 前書きと目次

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オーレックの挑戦
~“モノづくり精神”で切り開く農業機械革命~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-364-1
初版発行:2012年4月17日 初版発行




はじめに

日本の農業はいま、崖っぷちの状況にある。

農業従事者の高齢化や後継者難による休耕地の拡大。さらに、東日本大震災で被災した農地の復興計画はいまだ具体化せず、福島第一原発事故にともなう風評被害も深刻な問題だ。また、平成十九(二〇一一)年度の日本の食料自給率は、カロリーベースで四〇%にまで減少。これは、昭和三十五年度の七九%からほぼ半減した計算になる。ちなみに、世界では「三五%を下回ると国家として壊滅的な状態」という認識が一般的であり、これは有事のときに国家の安全が保てない恐れさえある。

こうした危機意識はここにきてようやく、政界、産業界、学界を中心に浸透し、食料自給率の向上策が議論されるようになった。加えて、農業は緑地造成の保存という環境保全の一面を有していることから、政府も農業・農地の持続的な発展と循環型社会の形成に向けて、農業政策の抜本的な改正に取り組む姿勢を見せ、その一環として市民農園などの普及を支援する方針も打ち出してはいる。

しかし、その一方で、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加に向けての事前協議が進められている。TPPでは加盟国間での輸出入は原則自由化が建前だから、今後、農産物への関税の撤廃、安全基準の緩和などが求められるのは必至で、海外から安い農産物が大量に輸入されるようになれば、国内の農業はこれまで以上に厳しい状況にさらされることになるのは間違いない。

こうした厳しい局面を迎えた日本の農業を農業機械メーカーの立場から支援しているのが、本書で紹介する株式会社オーレック(本社:福岡県八女郡広川町、代表取締役社長:今村健二氏)である。

同社は農業機械メーカーのなかでは「草刈機のトップシェアのメーカー」として知られているが、その製品構成は草刈機だけにとどまらず、管理機、耕運機、除雪機・運搬車にまでおよぶ。

創業は昭和二十三年、「戦後の食糧難を解決するためには、農作業の軽減をはかるべき」との思いから、創業者の今村隆起氏(故人)が徒手空拳、自宅脇の車庫を改造して、同社の前身である「大橋農機製作所」を立ち上げ、農業機械をつくったのがはじまりである。創業時の事業発展の契機になったのは動力モーターを利用した「水揚げポンプ」である。これが田植え前に行われる、用水路から田んぼへの水揚げ作業を画期的に改善した。さらに「養分をたくさん含んだクリーク(用水路)の泥土を、稲刈りを終えた田んぼに引き上げたいのだが」という農家の要望に応じて開発した「泥土揚げ機」が好評を博し、同社の農業機械メーカーとしての基盤を固めることになったのだ。

その後、隆起氏は手持ち式の草刈機しかなかった時代に、「もっと楽に草刈りができる機械はないか」という農家の要望に応え、業界初となるタイヤ装備の自走式草刈機を開発した。文字どおり自走式草刈機の草分けである。

「創業者の今村隆起は『世の中に役立つものを誰よりも先につくる』を信条とし、自走式草刈機を他社にさきがけて開発したのです」

こう語るのは隆起氏の長男であり、現在、オーレックの代表取締役社長を務める今村健二氏である。

さらに健二氏が入社したのを契機に、経営基盤のさらなる強化が進められた。

まず、健二氏の進言により昭和五十五年に埼玉県に営業所を開設した。当初、九州の小さな農業機械メーカーの製品に誰も見向きもしなかったが、粘り強い営業活動の末、商圏を関東に広げた。そして社名を「株式会社オーレック」に改めるとともに、工場の拡張、アメリカ・シアトルでの販売会社設立など経営の強化拡大策が推進され、「小型農業機械メーカーの雄」という地歩を確立していったのである。

本書は、オリジナリティと信頼性の訴求で草刈機市場でトップシェアを誇るオーレックの創業者・今村隆起氏の、日本の農業界に残した業績を振り返りつつ、その意志を受け継ぎ、オーレックの事業を世界規模へと拡充した今村健二氏の独自の経営戦略を紹介するとともに、その根幹にある経営理念や人生哲学を解き明かすものである。

現在、農業機械業界に身を置く人のみならず、日本の農業と食料、さらには環境問題などに関心を寄せる多くの一般読者にとっても貴重な指針となるであろう。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。


平成二十四年二月  鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 日本の「食」と「農」は危機状態!

日本は「農業国」か「工業国」か
食料自給率は先進国中最低の日本
輸入の七割を五つの国・地域に依存する
戦後の工業重視政策で農業は脆弱化
農家に迫る深刻な問題――高齢化・後継者難の波
農業と食料供給体制を見直す潮時
国は農業経営近代化と合理化支援
農業機械市場に見られる新しい波
足元にやるべきことがまだある


第2章 「草刈機」トップメーカーへの道のり

実体は大手メーカーのOEM製造者
用途別に種類がある草刈機
「農具」「農機具」「農業機械」の定義
関東進出で飛躍への契機をつかむ
地を這うように探る現場の情報
徒手空拳、新天地に拠点を構える
止血剤を飲みながら悪戦苦闘する日々
クレームを糧にする
無理に売らなくとも売れる製品
顧客こそがトップセールスマン


第3章 「超顧客志向」で独創的な製品を開発

品格のある農業機械製品とは
連綿と受け継がれる創業の精神
経営の核心を表現する「OREC」
「業界初」をつくることが存在証明
主要な部品の内製化で自立する
開発担当者一人が一製品を担当
バーチャル設計とリアル設計の決定的違い
ハイテク活用と人的な情報交換
マーケットインとプロダトアウト
売上高ではなく貢献高


第4章 小型農業機械分野のさきがけとして
 ――創業者・今村隆起の挑戦人生――

不撓不屈、決してぶれない思考
進取・先攻の気性に富んだ創始者
農作業の軽減化・省力化に注力
極意と日本一のモノづくり志向
先行投資で日本一、先を行く企業
DNAとして伝えられた困難に臨む勇気と決断力
節約しろ、使うときはドンと使え
食品売り場で食文化を諭された話
田舎娘は全国に通用しない
よい家庭環境こそが会社の基盤


第5章 継続のなかに革新を織り込む経営哲学
 ――一を一〇〇にする今村健二の思考法――

研究開発基地のテクノセンター
経営者に不可欠な人材の育成法
じっと十年、我慢の成果
一の力を百人力に変える
人財育成も兼ねたオーレック祭
人との融和で活性化する組織
一人ひとりが考える判断の基準
農業は健康産業であった
健康食品「黒の薩摩青汁」開発経緯
西日本と東日本、そして世界へ


第6章 受け継ぐモノづくり精神で世界へ

世界に飛翔するオーレック魂
難問山積の時代、突破口を探す
海外進出にともなう産業空洞化論に疑問
世界企業になるための四つの道筋
小型農業機械領域を進化・深化させる
伝統とノウハウを生かす新事業
健康食品で探る新機軸の方向性
実現に向け同時進行中の六事業
アジア、オーストラリア、南米の環太平洋州
世界人として世界企業への邁進


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2020/01/24

『「日本リファイン」の挑戦』前書きと目次

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「日本リファイン」の挑戦
~世界に挑む溶剤リサイクルのトップカンパニー~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-367-2
初版発行:2012年6月3日 初版発行




はじめに

近年、世界各地で頻発している異常気象。その多くは、地球温暖化との因果関係が指摘されている。また、地下資源はあと七十年弱しか持たないといわれており、資源の保全と環境負荷の低減は、全世界が共通して掲げる課題なのだ。この二つの課題を同時に解決する有効な方法として考えられるのが、資源のリサイクルである。

これまで日本の化学産業は、資源小国というハンディを克服し、切磋琢磨することで磨かれてきた。この過程で獲得した環境技術の多くは、世界的にみても高水準のものとなっている。今後、日本の企業が世界で存在感を示すためには、環境技術において、さらなる技術の進歩は欠かせないテーマといえる。この点において、重要なカギを握るものの一つに、溶剤のリサイクルがある。

われわれの周辺では、さまざまな場面で溶剤が使われている。それは塗料や印刷インキ、接着剤、医薬品、液晶や半導体の製造工程、ファインケミカル分野、リチウムイオン電池の製造工程など多岐にわたり、現在国内で消費される溶剤の量は年間約二三〇万トンにもおよぶ。問題なのは、これらの溶剤の生産から使用、廃棄までの間に、その質量の数倍~一〇倍もの二酸化炭素が排出されるにもかかわらず、リサイクル率はわずか九・四%にすぎないということだ。

しかしながら、京都議定書における日本の報告書のなかには、次のような事実が紛れ込んでいる。

――使用済み溶剤に関しては、独立した項目として取り上げられておらず、大気に放散したり、燃やして、多量の二酸化炭素が排出されているにもかかわらず、ほとんどカウントされていない。

――EU(欧州連合)では、溶剤の使用による二酸化炭素排出量はカウントされているが、日本の場合、地球温暖化問題からもれている。

この結果、使用済み溶剤は、リサイクルするより、廃棄物として燃焼するほうがよい、というまったく間違った方向性が推奨されている。

「非常に滑稽な話です。これで、環境先進国などと、どうしていえるのでしょうか」と語るのは、溶剤リサイクルのパイオニアとして、国内のみならず、海外からも注目を集めている日本リファイン株式会社(本社:岐阜県安八郡輪之内町)の名誉会長・川瀬泰淳氏と代表取締役社長・川瀬泰人氏である。

「数字を見れば、依然として大量の溶剤が使用されているにもかかわらず、回収もされず、ましてやリサイクルもされず、年間一〇〇万トンが大気中に排出され、リサイクル率はわずか九・四%。いまどきとんでもなく低い数字です。このリサイクル率を少しでも改善し、環境保全・資源循環の一助になろうというのが、われわれの溶剤リサイクルという事業なのです」

溶剤のリサイクルには大きく二つの技術が必要になる。

排気あるいは排水などに混ざった溶剤を分離・回収する技術と、回収した溶剤を精製する技術だ。その両方のオリジナル技術を持つ同社では、これらの技術を顧客ニーズや条件に応じて、設計・装置販売と同社工場内での精製リサイクルとを組み合わせて提案している。

「わが社が販売するガス回収装置を使用した場合、溶剤成分のほぼ全量がロスなく回収されます。さらに、回収された溶剤は、当社の工場において品質のよい再生品として精製され、新品の半額以下で提供できているのです」と、川瀬氏は自社の技術に自信を見せる。

もともと、自動車、家電メーカー向けに塗装機を販売するセールスエンジニアだった川瀬氏は、塗装現場で大量に廃棄されている石油系溶剤を見て、「もったいない」という意識を強く持つようになり、そのリサイクルに着目。その後、廃シンナーの蒸留・精製を目的として「豊田化学工業」の設立に参画する。業務は、トヨタ自動車の生産ラインから排出された廃シンナーのリサイクルが中心で、業績は順調に推移した。しかし、さらに広い分野の資源リサイクルを手がけるために、川瀬氏は独立を決意。昭和四十一(一九六六)年、日本リファインの前身である「大垣蒸溜工業株式会社」を設立した。

当時の日本は、モノを生産することだけが注目される時代だった。そうした環境下、いち早くリサイクルに注目した川瀬氏の先見の明には卓越した才気を感じさせる。一方で、川瀬氏は有機溶剤リサイクルの認知度を上げ、さらなる普及をはかるため、平成六年に日本溶剤リサイクル工業会を発足。現在に至るまで、会長を務めている。

平成十五年から同社の社長に就任している泰人氏は、入社して間もなく、名古屋工業大学応用化学科に研究生として通った。新たな分離プロセスを開発するための技術計算法を学び、同社に当時やっと企業で使用されはじめたパソコンを導入、これを機に同社の技術開発力を強化し、その成長に貢献した。

親子タッグで躍進を続ける日本リファインが、いま力を入れているのが、リチウムイオン電池や液晶といった先端分野だ。特に有望なのは、今後、確実な普及が見込まれる電気自動車に搭載されるリチウムイオン電池の電極製造に欠かせない溶剤「N-メチルピロリドン(NMP)」の回収・再生事業で、すでに同社では岐阜県にある輪之内工場にリチウムイオン電池向けNMP専用のクリーン充設備を導入、積極的な販売を開始した。また、海外展開にも意欲的で、平成十二年には台湾、平成十五年には中国の蘇州に、それぞれ現地法人を設立。今般、蘇州工場の大幅な増設を完成させるとともに、ヨーロッパ、アメリカへの進出も視野に入れている。

日本リファインは、自社のリサイクル業務をリファインと定義づけ、「環境保全と資源循環」という、世界が直面する課題に、すぐれた溶剤リサイクル技術によって貢献してきた。それは日本だけでなく、世界規模でとらえなければならない大きな課題に、どのように道筋をつけていけばいいのかを示唆しているといえるだろう。

本書では、もったいないという思いから創業し、半世紀にわたりリサイクルを環境問題、資源問題のソリューションとしてとらえ活動してきた日本リファインの事業内容を紹介するとともに、川瀬泰淳氏、泰人氏の親子二代に通じる経営理念、ビジネス哲学を検証する。

これは石油関連業界、リサイクル業界のみならず、地球の将来を考えるすべての読者にとって、貴重な指針の書となるであろう。

なお、本文中の敬称は省略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。


平成二十四年三月  鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 環境保全と資源循環が世界共通のテーマ ――破壊と収奪に急制動!!――

宝の山の「都市鉱山」とは何か
日本がリードしていくべき課題だ
全世界が経済成長をめざした時代
人類のおごりが地球環境破壊の要因
世界共通語「MOTTAINAI」の先駆
ポスト成長というステージで
この先は足るを知るべき時代
資源小国・日本が培う環境技術


第2章 溶剤リサイクルの先駆者「日本リファイン」 ――逆境のなかで描いた夢の結実――

溶剤リサイクルとは
「もったいない」から起業した
溶剤リサイクル事業の先駆者
既存の溶剤業界から猛烈な攻撃
リサイクル事業で地球を救済!!
理論を実践に落とし込んだ背景
化学工学界の権威者に学ぶ理論
化学工学的な視点から得た助言
分離・回収と精製技術の両軸足
日本の環境改善技術で世界牽引


第3章 地球環境と資源を守る溶剤リサイクルとは ――溶剤の回収と再利用は時代の要請――

精製リサイクル事業の業容検証
エルファイン/濃縮乾燥装置で資源リサイクルおよび廃棄物の減量化に貢献
ソルスター/不揮発成分を含む使用済み溶剤・排水などの再資源化と減量化に寄与
ソルピコ/低ランニングコストを実現する高度な技術力を駆使した排水処理
エコトラップ/リチウムイオン電池製造工程の排ガスからNMP溶剤を回収
溶剤回収と再利用は時代の要請
溶剤のリサイクルをリードする
事故を教訓に安全な技術を磨く
海外展開の足がかり台湾へ進出
環境保護対策で中国行政が支援


第4章 リサイクルからアップサイクルへの転換 ――パラダイムシフトが起きている――

二十世紀科学を精査・精算するとき
総合的な解決策の提起と実行
ネイチャー・テクノロジーとは
産業革命で決別した自然へ回帰
地下資源文明から地上資源文明
いまリサイクルからリファインへ
環境ビジネスを成立させる手法
動く日本溶剤リサイクル工業会
パラダイムシフトを生かすには
アップサイクルへの階段を上る


第5章 創業者・川瀬泰淳の経営理念とビジネス哲学 ――はじまりはもったいないから――

台湾に生まれ戦後日本で生きる
医学を断念し、工学の道へ進む
溶剤再生ビジネスで独立を画策
豊田化学工業設立に参画
独力で大垣蒸溜工業の立ち上げ
あのころはなんでもやったもんだ
関東へ進出、組織一元化をはかる
次世代への継承
親子二代にわたる器づくり


第6章 日本リファインが切り開く溶剤リサイクルの未来 ――自然観の涵養と海外構想――

日本リファインが求める人材力
いま、求められる人材とは?
できないのできる変換
オンリーワンの強みを持つ
自然界から学ぶ観察力、洞察力
今後を切り開く人の心のあり方
求められ拡大する海外進出構想
屋久杉は寡黙ゆえに語っている
なんのための事業かを模索
意識改革する人が資源だ!!


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2019/11/28

『生きる力を支える医療』 前書きと目次

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生きる力を支える医療
~歯科からはじまる医療革命~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-368-9
初版発行:2012年6月8日 初版発行




はじめに

東日本大震災から一年が経過した。しかし、東北の被災地はいまだ復興の途についたばかりであり、これからが本格的復興に向けて、日本の底力が試されるときである。

今回の震災では命の尊さとともに、「生きる力」について改めて考えさせられた人も多いのでないだろうか。震災直後には一人でも多くの命を救うため、国内各地はもとより、海外からも医療支援チームが続々と被災地入りした。そうした一般の医療チームの陰に隠れ、その活躍ぶりが意外に知られていないのが歯科医療チームの存在である。

災害発生時にまず歯科医師に求められる重要な任務が身元確認作業だ。東日本大震災による死者・行方不明者は約一万九〇〇〇名にのぼるが、日本歯科医師会によると、震災翌月の四月時点で一一〇〇名を超える全国の歯科医師が身元確認派遣に登録。早速、被災地や警察庁の要請を受けて被災各県に派遣され、身元確認作業にあたった。

歯科医療界の震災復興支援活動は、震災直後の身元確認作業から、その後は本来の役割である歯科医療や避難所で生活する人たちの口腔ケアなど、歯科保健活動が重要な仕事となっていった。

そこで、全国各地の歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士の歯科医療チームが現地入りするとともに、歯科医療機器メーカーからは緊急支援物資として歯科器材、薬剤、歯ブラシ、口腔清掃材、義歯洗浄剤などが提供され、歯科医療界と歯科医療産業界が一体となって復興支援活動に取り組んだ。

日本歯科医師会でも会長・大久保満男氏を中心に、いち早く災害対策本部を立ち上げ、被災地を訪れて状況把握に努め、政府に対し、仮設歯科診療所の設置を要望した。というのも、ほとんどの歯科診療所が全壊・流出した地域も多く、そうした地域の歯科医療確保のために、国による設置を求めたのである。

政府も歯科医療の重要性を認識し、その案件は第一次補正予算に盛り込まれ、二一カ所の仮設歯科診療所が設置された。

また、避難所や仮設住宅には介護する人がいなければ自分では外に出られない高齢者も大勢いた。避難所のなかには当初、水道がなかなか復旧せず水不足が続いていた地域も少なくなく、そのために口腔ケアが行き届かないことで誤嚥性肺炎を引き起こす危険性も高い状況にあった。

それに加え、高齢者のなかには、入れ歯をなくしたり、入れ歯が合わなくなって、ものが食べられずに困っている人も多かった。そこで巡回診療用に二〇台以上の車が用意され、歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士たちがチームを組んで避難所や仮設住宅を訪問し、訪問歯科診療を行っている。

一般医療が「命を支える医療」とすれば、歯科医療は「生きる力を支える医療」といわれる。生きることは食べつづけることであり、口や歯は人間が日々生きていくためのエネルギーを取り込んだり、人とコミュケーションをとるために会話をするうえで非常に重要な役割を果たしており、それらを支えるのが歯科医療というわけだ。

被災地ではこれからもまだまだ長い戦いが続くだろうが、被災者の復興に向けた生きる力を支えつづけていくためにも、歯科医療界、歯科医療産業界が果たすべき役割はますます大きくなっていくものと思われる。

もちろん、口や歯の健康にかかわる歯科医療の重要性は被災者に限ったことではない。口腔の健康は生活の質(QOL)の向上に直結するもので、歯科疾患による歯の喪失は、食べる、話すといった機能が損なわれるだけでなく、糖尿病、動脈硬化、肺炎など全身疾患とも関連することがさまざまな研究データから明らかになっている。

平成元(一九八九)年からは、当時の厚生省と日本歯科医師会により、「八十歳になっても二〇本、自分の歯を保とう」という「八〇二〇運動」が提唱され、国民運動として展開されてきた。一生、自分の歯で健康的な食生活が楽しめるよう、子どものころからのデンタルケアの重要性を打ち出したものだ。

実際、高齢になって歯がたくさん残っている人ほど元気で、認知症にもなりにくいというデータもあり、仮に歯がなくなっても、しっかりした義歯が入っていれば、健康悪化の度合いは低くなる。

だが、日本人の場合、一般的には歯が痛いなど、なんらかの異常を感じはじめてから歯科を受診しようとする人が多く、欧米に比べ、予防に対する意識が低いことも否めない。これは、日本の医療保険制度が治療重視のかたちをとってきたことが、大きく影響していると考えられる。

こうした事態を考慮し、政府は平成二十三年八月に「歯科口腔保健の推進に関する法律(歯科口腔保健法)」を制定・施行している。この法律では口腔の健康が国民の健康を維持するうえで極めて大きな要因になっているという事実を示すとともに、口腔の健康は日々の予防活動によって実現することが明記された。

まして日本は世界に冠たる長寿国である。いくつになっても健康で自立した生活を営める健康長寿社会の実現に向けて、歯科医療の果たすべき役割はいちだんと増してくる。

小さいころからの歯磨き習慣の定着などにより、むかしに比べ、むし歯の患者数は激減したが、代わって増えてきたのが歯周疾患患者だ。それにともない、歯科診療の形態は局所的な治療にとどまらず、口腔機能の改善、維持・向上をはかるため、予防を中心とした疾病管理へとシフトしつつある。そうした診療形態の変化に即した新たな歯科医療技術を確立するためには、新規医療機器・材料の開発が不可欠になってくる。

日本の歯科医療技術は、いまや世界的にみても高い水準にあるが、医療技術の高度化は歯科医師の技術だけで実現されるものではなく、歯科医療機器や歯科材料の改良・開発なしには考えられない。事実、これまでも、日本のものづくりの技術から生み出されるすぐれた歯科医療製品の数々が、歯科医療の発展に大きく貢献してきたのである。

とりわけ歯科医療技術と歯科材料工業は唇歯輔車(言葉の意味の詳細は本文にて)の関係にあるといわれるように、わが国の歯科医療技術は歯科材料の発展とともに育まれ、その歴史はおよそ九十年前にまでさかのぼる。

当時、歯科材料は外国からの輸入に依存していたのだが、国産の歯科材料としてセメント材料の独自開発・製品化を成功させたのが、株式会社ジーシー(本社:東京都文京区、代表取締役社長:中尾眞氏)である。

創業は大正十(一九二一)年。一般の人への社名浸透度は低いものの、歯科医療総合メーカーとして長年、わが国の歯科医療産業を牽引してきた同社は、世界の大手メーカーとも肩を並べ、現在では世界一〇〇カ国以上で約六〇〇種類の製品が販売されている。ジーシーの歩みは日本の歯科医療機器産業の歴史と歩を同じくするといっても過言ではない。

同社には創業者の一人で、現社長の祖父にあたる中尾清氏が提唱した「施無畏」の精神、すなわち、相手の立場に立って考え、行動するという教えが社是として脈々と受け継がれ、相手の身になった真のものづくりが実践されている。

歯科医療製品を通じて、世界中の人々に「生きる力を支える医療」を提供するとともに、健康長寿社会の実現に貢献する企業グループでありつづけたいというのが同社の基本的な考えだ。

歯科材料分野では国内ナンバーワンであり、国内シェアの約三割を占めているが、非上場の方針は一貫して揺らぐことはない。企業として利益を確保するのは、あくまでも歯科医療製品の研究・開発を続けていくためであり、歯科医療の発展を使命と考えるからだ。同社では社員をはじめ、歯科医療従事者をなかまと呼んでいる。それは、「会社は投資家が動かすのではなく、なかまが動かすもの」というスタンスで、創業以来、貫いている。

同社代表取締役社長・中尾眞氏は、平成二十三年六月まで六年間にわたり、日本歯科商工協会会長を務めていたが、その間、平成十九年には、臨床分野の日本歯科医師会の会長・大久保満男氏、学術分野の日本歯科医学会の会長・江藤一洋氏らとともに臨学産の三者協議を進め、歯科医療界としては初めての「歯科医療機器産業ビジョン」をまとめ、政府に提言。これは現政権の新成長戦略にも盛り込まれている。

世界最速で超高齢社会へ突き進んでいる日本は、健康長寿社会を実現するためにも、生きる力を支える歯科医療を充実させ、世界にその範を示していく必要がある。

本書では、わが国の歯科医療の現状と課題を検証しつつ、世界的に高齢化が進むなか、多様化・高度化する歯科医療へのニーズに応え、地球市民のQOLの向上をはかるために、歯科医療産業の果たす役割について、ジーシーの活動を例に考察したい。

本書をご一読いただき、健康長寿社会の実現に向けて、一人でも多くの方が生きる力を支える歯科医療の重要性を認識し、最先端の歯科医療技術、ならびに歯科医療機器・材料の開発に理解・関心を示してくだされば、これに勝る喜びはない。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。


平成二十四年四月  鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 生涯にわたり「生きる力」を支える歯科医療

健康寿命延伸のカギを握る口と歯の健康
目標値を上回る「八〇二〇運動」の成果
先進国ほどむし歯は減少傾向に
むし歯は補綴治療から予防の時代へ
世界的な広がりを見せるMIの概念
むし歯に代わって増加してきた歯周病
歯科疾患と全身疾患とのかかわり
欧米諸国に比べて低い歯科受診率
歯科医師は本当に供給過剰か?
歯科医療の新たな可能性を探る
口腔衛生に目を向けはじめた国の施策
生涯を通じた口腔ケアを推進
臨学産の連携で策定された歯科医療機器産業ビジョン


第2章 品質力を誇る日本の歯科医療製品

歯科医療分野でも高評価の日本のものづくり
ユーザーの声を反映した新製品開発
WHOとの共同研究で開発途上国の歯科医療に貢献
MIコンセプトにもとづく研究開発
画期的なボンディング材を開発
ユーザーの利便性を追求した機能包材
歯科医療製品の国際競争力を強化
「絶対品質」をテーマにした生産拠点
世界のものづくりをリードする人づくりにも注力
高品質な製品づくりを支える品質経営


第3章 歯科医療情報の発信とサービスの提供

歯科医療関係者が集うコミュニケーションの場が誕生
歯科医療従事者と歯科材料製造者は唇歯輔車の関係
歯科医療のグローバル化に向け国際歯科シンポジウムを開催
臨床テクニックが学べる各種セミナーを開催
歯科医療の未来を担う人材育成をサポート
医療のMRに着眼したDR構想
「創る人」「売る人」「使う人」の相互関係
教育サポートでディーラーとの連携を強化
生活者への口腔保健の啓発活動を展開


第4章 日本の歯科材料の進化と歯科医療の発展とともに

歯科材料の国産化時代の幕開け
変革の時代を迎えた昭和初期の歯科医療界
歯科材料の輸入品全盛時代の終焉
戦争という激動の時代を乗り越えて
戦後の混乱から新生日本へ
歯科材料業界の復興に向けて
世界品質に向けての第一歩を踏み出す
歯科医療界の転機となったアメリカ歯科使節団の来日
歯科材料に初のJIS制定
歯科医療の近代化への布石
歯科医療のグローバル化に向けて
世界市場に向けたオリジナル製品の開発
ユーザーの潜在ニーズを掘り起こし予防歯科分野に進出
世界戦略を見据えて社名変更


第5章 健康長寿社会の実現に向けて

二十一世紀は健康の世紀
生涯にわたる「かかりつけ歯科医」のすすめ
高齢化で高まる在宅歯科医療の重要性
在宅用歯科医療機器への開発ニーズ
診断・予防の充実による新時代の歯科医療
インプラント、CAD/CAMへの挑戦が課題
日本の強みである再生医療技術を応用した製品開発
アジアを基盤に日本の歯科医療のさらなる発展を


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2019/07/03

『グローバルニッチトップ企業の真髄』 前書きと目次

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“ものづくり”で世界の頂点を究める!
グローバルニッチトップ企業の真髄
~NITTOKUのオンリーワン戦略~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-458-7
初版発行:2019年7月8日 初版発行




はじめに

日本は第二次世界大戦で、人的、物的、さらには経済的にも深刻なダメージを受けた。

戦後、政府は製造業を中心とした工業に経済政策の力点をおき、官民一体となって、経済の復興と再生に全力で取り組んだ。多くの企業は設備投資を積極的に行い、技術革新を一心に進め、国民も生活を立てなおそうと身を粉にして働いた。

その結果、日本は猛烈な勢いで驚異の復活を遂げた。戦後10年で戦前の経済規模にまで回復し、さらに1970年代の高度経済成長期には年間10%近い経済成長を遂げ、世界第2位の経済大国の地位にまでのしあがった。そのあまりの勢いに恐怖を覚えた欧米諸国からは、やっかみ半分に「日本人は金に飢えたエコノミックアニマルであり、政治のことなど、なにもわかっていない」などという暴言が飛び出すほどだった。

ひるがえって現代を見てみると、かつてはあれほどまでに諸外国を圧倒した日本の製造業の勢いに、陰りが見えるようになっている。低価格競争が激化する世界市場において、中国、韓国、台湾などのメーカーを相手に苦戦を強いられているのだ。東芝、パナソニック、ソニーなど、エレクトロニクス系や電機系を中心とする名だたる企業の業績が、軒並み低迷している。

これらの企業には、ある共通点が見られる。それは、過去の成功体験にとらわれ、そこから脱却することができなかったということだ。

第二次世界大戦後から1980年代を通して確立した「中品質低価格の製品を大量に生産する」というビジネスモデルで、各社は業績を大きく伸ばした。こうして日本では、大企業全盛の時代が花開いた。

しかし1990年代以降、状況は一変した。市場のグローバル化によりビジネス環境が大きく変化するとともに、それまで企業の成長を支えてきた終身雇用や年功序列賃金などの諸制度が崩壊したのだ。その結果、飛ぶ鳥を落とす勢いだった日本の製造業は大きく失速することになったが、それでも多くの大企業は、旧態依然としたビジネスモデルから脱却できないまま、いまにいたっている。

製造業の前に立ちはだかる、この厚い壁に穴を開け、新たな光明を見いだし、日本の製造業を牽引している企業群がある。それが、経済産業省が規定した、グローバルニッチトップ(GNT)企業と呼ばれる企業群である。2013年10月に経済産業省が公募し、応募のあった281社(大半が非上場)のなかから一定の基準に則って、100社を「グローバルニッチトップ企業100選」として選定した。その多くは独自路線の研究開発型メーカーであり、国内拠点を中心とする生産体制で雇用を生み出しながら海外展開を進め、着実に業績を伸ばしている。

それらのGNT企業群のなかでもひときわ鮮烈な光彩を放っているのが、本書で紹介する日特エンジニアリング株式会社(本社:埼玉県さいたま市)だ。なお、日特エンジニアリングは2019年8月にNITTOKU株式会社と社名変更されるため、本書ではこれ以降、NITTOKUと表記する。

NITTOKUの事業内容は、自動巻線機の製造・販売である。自動巻線機とは、各種の電気製品や電子機器、あるいはモーターなどに必ず組み込まれている「コイル」を自動で製造する機械のことだ。NITTOKUは、世界の自動巻線システム市場で36%のシェアを占める、圧倒的なトップ企業なのである。

「日本はもとより世界でも、大手メーカーは、標準化、平準化、プラットホーム化などによる『全体最適』の仕事は得意ですが、『部分最適』の仕事は不得手です。そこに私たちのような、特定の製品に照準を絞ったニッチビジネスが活躍する舞台があるのです」

こう語るのは、NITTOKU株式会社代表取締役社長の近藤進茂氏だ。

電子回路の基本部品であるコイルを必要とする電気・電子機器や情報通信機器などの分野では、技術革新が日々進められ、それにともない、要求されるコイルの性能や形状も常に変化している。また、環境対策のためもあって、急増するモーターの生産も、一貫組み立てラインを必要とする時代になった。そのためNITTOKUも、各メーカーの技術開発や生産体制の進化に応じて、常に新しい製品を開発し続けている。たゆまぬ研究開発を続けていることこそが、NITTOKUの存在価値である。

NITTOKUは1972年に、自動巻線機をつくる町工場として千葉県八千代市で誕生した。その2年後の1974年に本社を埼玉県浦和市(現・さいたま市)に移転。近藤氏はそのころにNITTOKUに入社し、持ち前の営業力で業績を大きく伸ばしていった。その後は営業部長、常務、専務などを経て、1998年に代表取締役に就任した。

NITTOKUの経営理念は、

1.世界的な視野に立ち
2.ユーザーの期待を創造し
3.最高の技術を提供する
4.創造システムで社会に貢献する

である。事業内容は、自動巻線機ならびに自動巻線機システムの開発、製造、販売で、顧客となるのは電気関連製品をつくるあらゆるメーカーだ。顧客の業界別売上割合は、情報通信業界が51.8%、PC/OA業界が2.9%、AV/家電業界が9.9%、自動車業界が25.5%、その他産業機器が9.9%となっている(2018年3月期)

「当社の特徴は、自動巻線機を製造するための要素技術と基本技術を備え、なおかつ、顧客のいかなる要望にも応えるための『擦り合わせ技術』を持っていることです」

と、近藤氏は言う。すなわち、顧客ごとに異なる要望に的確に応え、オーダーメイドに近いかたちで自動巻線機をつくることができるというのだ。それはまさに、標準化やプラットホーム化とは正反対のポジションと言える。

多くの企業が「中品質低価格の製品を大量に生産する」というビジネスモデルから脱却できずに低迷を続けるなか、NITTOKUは高付加価値の製品を提供することで、その存在価値を高めていった。さらに近年は、巻線機の製造・販売だけでなく、オープンイノベーションも活用しながら、ファクトリー・オートメーション(FA)分野へと事業を拡大し、いっそうの発展を遂げようとしている。

本書は、自動巻線機製造の世界トップ企業として、日本はもとより世界の製造業のなかでも独自の存在感を発揮しているNITTOKUの事業活動を紹介するとともに、同社社長・近藤進茂氏の経営理念や人生哲学に迫るものである。

いまや、日常の生活において電気・電子機器、情報通信機器、自動車などの輸送機器は、なくてはならないものになっている。それだけに本書は、そうした機器の製造に携わる人はもちろん、あらゆる分野の「ものづくり」に関わる人、さらには一般の読者にとっても、貴重な指針の書となるだろう。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。


2019年5月  鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 「ものづくり日本」の未来を切り開く

中国や韓国の企業の後塵を拝している日本の製造業
「中品質低価格の大量生産」から「高品質の少量多品種生産」へ
日本の製造業の活路を開くGNT企業
特定分野で強い競争力を有する研究開発型企業たち
地域経済を振興し、人材育成にも貢献
ドメスティックにしてグローバルな経営を実践
日本のものづくりの伝統を活かすNITTOKU


第2章 エレクトロニクス分野の基幹技術「コイル」

電気を使う装置や設備に不可欠な電子部品
技術革新の陰にはコイルあり
「巻く」ことで銅線の働きが大きく変化
コイルの標準形はリレーとトランス
コイルは用途も形状も千差万別
1兆5000億円を超える世界のコイル・トランス市場


第3章 「巻く」技術を追求して世界No.1企業へ
 ―NITTOKUの事業概要―

線を「巻く」機械をつくる町工場からスタート
「3C」の普及を追い風に事業を拡大
「ユーザーの期待を創造する」を経営理念に掲げる
ただ巻線機を売るのではなく、「生産技術の代行」をする
世界シェア36%を獲得するトップ企業に
独自の技術を活かして新たな事業にも挑戦
実績と経験を活かし精密FA分野へ進出


第4章 5つのコア技術と3つのスピリットでオンリーワンを実現

世界に誇るNITTOKUの5つのコア技術
企業の可能性を広げる要素技術の応用
増産、省スペース、省コストを実現する3つのスピリット
競合他社の追随を阻む「擦り合わせ技術」
技術力を支えるマーケット志向
技術とノウハウを駆使して「スマートファクトリーの確立」をめざす
最新鋭の「インテリジェントタグシステム」
カスタマーサービスのコンセプトは「待たせません」


第5章 NITTOKU社長・近藤進茂の経営理念と人生哲学

ハングリー精神を培った少年時代
人生の基盤を築いた大学時代
持ち前のバイタリティでトップセールスになる
NITTOKUに入社後も営業力を発揮
NITTOKUを成長させた営業力の強化
座右の銘は「知行合一」
知識は人からもらえ
必要なのはInformationではなくIntelligence
「よそ者、若者、馬鹿者」がイノベーションを起こす
人は城、人は石垣、人は堀


第6章 NITTOKUが描く未来展望

「屋台経営」の実践で、人も企業も育てる
「営業」と「セールス」の差はオーナーシップの有無にある
「失敗を許せる世界」でなければ次に進めない
どれだけ隣の市場に行けるかで勝負が決まる
持続的成長を実現するための経営戦略と課題
軌道に乗り始めたヨーロッパ拠点
日本文化のDNAを伝承することこそがメーカーの生きる道
「人材」と「土壌」を育て、未来に備える
常に次世代へ向けて進化するNITTOKU


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2019/06/03

『菓子と笑顔を機械でつなぐ 菓子づくりのオンリーワン企業』 前書きと目次

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菓子と笑顔を機械でつなぐ
菓子づくりのオンリーワン企業

~菓子づくりの常識を変えるマスダックのあくなき挑戦~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-456-3
初版発行:2019年6月9日




はじめに

世界における日本の人気はますます熱気を帯びてきている。2018年に3000万人を超えた訪日外国人数は、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて今後さらに上昇していくことは間違いない。

日本での滞在を楽しむ外国人が購入する日本みやげのうち、高い人気を集めているのが日本の菓子だ。「質が高くておいしいし、種類も豊富で、しかも安い」と、日本の菓子は非常に評判がよい。鉄道の主要駅やショッピングセンター、観光地のみやげもの店などには、大きなバッグや段ボール箱いっぱいに菓子を買いこむ外国人旅行者がたくさん訪れ、どの顔にも楽しそうな笑顔がはじけている。そうした表情を見ていると、「菓子は、国境を超えて人を幸せにする」と実感する。

日本の菓子を欲しているのは訪日外国人だけではない。国内での人気も非常に高く、2013年以降、確実な上昇カーブを描いており、2017年の市場規模は3兆3898億円に達している(小売金額推定値。全日本菓子協会「平成29年 菓子生産数量・金額 推定結果」)。最近は世界市場への進出も活発で、「ポッキー」(ヨーロッパでは「MIKADO(ミカド)」と呼ばれている)や「コアラのマーチ」などを筆頭に、海外での売れ行きも上々のようだ。

ところで、こうした菓子は、誰が、どのようにして、つくっているのだろうか。菓子職人やパティシエの手によるこだわりの和洋菓子は別として、一般に市販されている菓子の多くは工場でつくられているであろうことは想像できる。

最近では工場見学をテーマにしたテレビ番組が人気があり、なかでも食品工場を扱ったものはおおむね評判がよいという。たしかに、ふだんよく食べている食品が、原料の段階からさまざまな工程を経て、最終的におなじみのかたちになって製造ラインから次々と流れ出てくる様子を見るのは、それがテレビ画面であっても、なぜか興奮してしまう。

ひと口に「菓子」と言っても、味はもちろん、食感、かたち、大きさなど、その内容は多種多様だ。当然、材料から完成品にいたるまでの製造工程も、食品製造のなかでも突出して複雑で、かつ、多岐にわたっている。

そのうえ、菓子には、自家消費用のものだけでなく、贈答品としての性格を持つものもある。そうしたものは包装にも個性があり、折り紙細工のようになっていたり、一つひとつが紐で結ばれていたりなど、包み方もさまざまで、見た目も美しく工夫され、包装を開けるのがためらわれるほどのものもある。

このように、中身も包装も精緻で精工な菓子が、いまでは職人の手を借りずとも、機械でつくれるというのだから、人間が積みあげてきた技術には感嘆するしかない。
この、多種多様な菓子をつくる製菓機械の製造を手がけるのが、本書で紹介する、日本を代表する総合和洋菓子製造機械メーカーの株式会社マスダック(本社:埼玉県所沢市)だ。

「デパートの地下で売られている和洋菓子の6割くらいは、当社の機械によってつくられています」

と、代表取締役社長の増田文治氏が語るように、マスダックに対する菓子業界からの信頼は厚く、得意先からは「マスダックに頼めば、できないものはない」と言われているほどだ。実際、その守備範囲は幅広い。どら焼き、まんじゅう、カステラ、カップケーキ、ロールケーキ、シュークリームなどの柔らかいものから、クッキー、サブレ、パイ菓子などの歯ごたえを楽しめるものまで、実にさまざまなタイプの菓子をつくる機械や製造ラインの開発、設計、製造、メンテナンスを、マスダックは一手に引き受けている。いまでは、マスダックなしでは日本の菓子業界は成り立たないと言っても過言ではないほどだ。

つまり、マスダックは、3兆円を超える日本の菓子市場を縁の下で支える存在とも言えるのだ。

マスダックは1957年に、増田氏の父である増田文彦氏が、前身である新日本機械工業株式会社(2007年にマスダックに社名変更)を創立したことからスタートした。文彦氏が友人に頼まれて開発した機械でつくったまんじゅうを実演販売したところ、まんじゅうを頬張った瞬間にみなが笑顔になり、その笑顔を見ているうちに、「お菓子を食べる幸せを、ひとりでも多くの人に味わってもらいたい」という気持ちがふつふつと湧いてきたことが、創立のきっかけだったという。

それまでも、クッキーやビスケットを大量に焼く機械は、輸入品が主ではあったが、日本にもないわけではなかった。だが、製造工程が繊細で複雑なまんじゅうや桜餅の製造は、機械化は不可能だろうと思われていた。しかし、根っからの機械好きで、機械づくりに関しては天才的な閃きと、その閃きを実現する技術を持っていた文彦氏は、「不可能」と思われていた機械の開発に寝食も忘れて取り組んで、前述のまんじゅう製造機をみごとに完成させ、世間をあっと言わせたのだ。

そして文彦氏は新日本機械工業を設立し、今度は自動どら焼機の開発に着手した。手づくり感を残したどら焼きの製造を機械化するまでの奮闘には感動的なものがあるので、ぜひ本編で堪能していただきたい。

この自動どら焼機は、最初の開発から60年が経った現在も、日本はもとより、世界各地で開催される食品製造機械の展示会には欠かせない、マスダックを代表する製品となっている。もちろん、当初の機械に比べると、めざましい進化を遂げており、その実演を見た来場者は、みな驚嘆するという。

マスダック創業者である文彦氏の製菓機械開発の精神は、「はじめに菓子ありき」という言葉に集約されている。開発を進めるにあたっては、「どんなお菓子をつくるか」「どんなおいしさを実現するのか」をなによりも大事にし、菓子の味と品質にとことんこだわって、取り組んできた。

その尽きることなき菓子への思いから、やがてマスダックは、製菓機械をつくるだけでなく、菓子そのものをつくる事業も手がけるようになった。現在では、東京みやげとして大人気の菓子「東京ばな奈『見ぃつけたっ』」をOEMで製造しているほか、マスダックがアイディアを出し、その後、菓子メーカーと協働でさらに完成度を高めて発売した銘菓も数多くある。

現在のマスダックは、製菓機械の製造事業、製菓機械のメンテナンス事業、菓子製造事業が三位一体となった事業構造により安定的な経営基盤を確立した、優良企業との定評を確立している。製菓機械市場は複雑に込み入っているため、単純に市場シェアを割り出すことは難しいが、自動どら焼機については世界シェアの95%をマスダックの機械が占めているというから仰天する。他の製菓機械についても、国内シェアは相当に高いとみて間違いないはずだ。

また、マスダックは世界市場への進出にも積極的で、現在ではヨーロッパをはじめ、中国、東南アジアなど、世界36カ国に販路を広げている。2004年にオランダで設立した現地法人はその後、マスダックインターナショナルへと発展を遂げ、営業活動は言うまでもなく、製菓機械の現地製造拠点として、マスダックのグローバル戦略における貴重な役割を果たしている。

こうした国内外での躍進ぶりが高く評価され、2014年にマスダックは、経済産業省が選定する「グローバルニッチトップ企業100選」に選ばれた。これは、産業構造の変化にともなってニーズが高まっているニッチ分野において高い世界シェアを有する中堅・中小企業を、各ジャンルから横断的に100社選出し、国として強化を図っていこうという、日本の新世界戦略にもとづいたものである。そのグローバルニッチトップ企業に選定されたことを契機に、マスダックではこれまで以上に海外戦略に攻勢をかけようと、決意も新たに奮闘している。

奮闘といえば、現・代表取締役社長の増田文治氏は、製パン機械および製菓機械の事業者で構成される協同組合日本製パン製菓機械工業会の理事長を務めるなど、名実ともに日本の製菓機械業界をリードする存在となっている。たとえば中国市場攻略についても、増田氏はマスダックと他の製菓機械事業者との協調および連携を呼びかけ、日本の製菓機械事業全体の将来を考慮した体制を整えて市場に攻め込むという戦略を構築している。そこには、単にビジネス展開を広げ、業界のさらなる繁栄を願うこと以上に、「世界の人々に安全でおいしいお菓子を食べてもらい、幸せな人生を送ってもらいたい」という増田氏の熱い思いが満ちている。

本書では、日本の菓子製造に革新をもたらし続けるマスダックの60年以上に及ぶ歴史をたどりながら、創業者である増田文彦氏の技術開発力および、文彦氏から受け継いだマスダックを世界企業へと躍進させている増田文治氏の経営手腕を、詳しく紹介したいと思っている。グローバルニッチトップ企業として躍進するマスダックの姿から、読者が日本経済の将来に新たな可能性を確信し、一人ひとりがそれぞれの立場で世界市場における日本の存在感を高めていこうと意欲を奮い起こすきっかけになれば、著者としてこれ以上の喜びはない。

なお、マスダックの創業者であり、1999年に代表取締役社長の座を退いてからは名誉会長としてマスダックおよび日本の製菓機械業界を見守ってきた増田文彦氏は、本書執筆中の2019年3月11日に永眠された。93歳だった。ここに謹んで増田文彦氏のご冥福をお祈りする。

また、本文中の敬称は略させていただくことを、あらかじめお断りしておく。

2019年4月  鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 世界に挑む製パン製菓機械産業

世界を駆けるジャパン・オリジナルの食品機械
今後の伸長が期待される食品機械の輸出
日本の食品機械を世界に発信する
世界的な日本食ブームが食品機械の輸出を牽引する
今後も成長が期待される日本の菓子
菓子は不況にも強い
高いハードルに挑み続ける製パン製菓機械メーカー
「食の安全・安心」に対応したデファクトスタンダード
急がれる先端技術の導入と活用


第2章 製菓機械のエクセレントカンパニー「マスダック」

製菓機械市場を牽引してきたマスダック
「機械製造」と「菓子製造」の2つの事業を展開
小麦粉や卵の季節変動まで考慮して機械化する
機械化の成功で菓子メーカーが大化け
どんな困難も技術力で乗り越えていく
「マスダックに頼めば間違いない」
マスダックは菓子もつくる
いち早く海外市場に進出
海外市場でも機械の品質の高さが高評価
国際的な安心・安全基準をすべてクリア
グローバルニッチトップ企業に認定される
創業社長から国際派社長へのたすきリレー
「経験技術」を中核技術として
社是は「水五訓」


第3章 機械とOEMで菓子市場を支える

最先端技術で「伝統の味」から「新しいおいしさ」まで自在につくる
マスダックの代表的な製菓機械
豊富な知識と経験を持つ、菓子メーカーのベストパートナー
「これぞ東京みやげだ!」という菓子をつくる
世界のファクトリーモデルとなっている「東京ばな奈」工場


第4章 機械づくりの天才・増田文彦の歩み

機械屋、菓子と出合う
自動まんじゅう機の完成
新日本機械工業を設立
マスダックのシンボルである全自動どら焼機を開発
自動サンド機によりサンドパンブームを起こす
ワンウェイで高級菓子をつくる機械を次々と開発
不可能と言われていたシュークリームの専用ラインを実現
菓子の開発・製造事業にも進出
千代紙に包まれた和菓子の機械化に成功
万能製菓機「システムワン」を開発
蒸籠と同様に蒸しあがる蒸し機を開発
「マスダック」ブランドの誕生
増田文彦、勲四等瑞宝章を受章


第5章 改革、そして更なる飛躍へ
― 第2創業期を迎えたマスダック ―

増田文治、社長に就任
アメリカの製パン研究所「AIB」で学ぶ
欧米の菓子市場事情を熟知
茨の道からのスタートだった社長としての第一歩
涙とともに行ったリストラの3年後、奇跡的な復興を遂げる
マスダックヨーロッパを設立して海外事業を積極化
日本の和洋菓子のノウハウを海外に広げていく
マスダックを貫く「おもてなしの精神」
社名をマスダックに変更し、同時に新食品工場を完成
受賞ラッシュが証明するマスダック製菓機のスーパー品質
東日本大震災で菓子の力を実感
創業60周年を迎え、新しいコーポレートスローガンを策定


第6章 グローバル企業への飛翔

機械事業と食品事業、双方の製造拠点を再整備
「マスダック」のもとに各会社を統合
グローバル企業を視野に世界水準の人材構成を実現する
充実した研修制度で有能な人材を育成していく
研修の最大の目的はマスダックの将来像を共有すること
グローバル企業へと、さらに進化を進めていく
2030年のマスダック像


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2018/11/28

『グリーン・パワー』 前書きと目次

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グリーン・パワー
~芝生の力で日本に活力を!~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-448-8
初版発行:2018年12月3日




はじめに

2018年6月14日に開幕したFIFAワールドカップサッカー・ロシア大会で、日本代表は2大会ぶりに決勝トーナメント(ベスト16)に進出した。決勝トーナメントでは1回戦でベルギーに惜しくも敗れはしたものの、FIFAランキングで格上のベルギーを相手に全力でプレーする選手たちに日本中が熱い声援を送ったことは記憶に新しい。

2018年のサッカーに続き、2019年にはアジア圏で初のラグビーのワールドカップが、ラグビー文化圏外の会場である日本で開催される。そして2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催と、スポーツのビッグイベントが続くこともあり、日本ではいま、スポーツ振興の気運が高まっている。こうした世界規模の大会の開催に向け、各スポーツ施設の整備も急ピッチで進められている。

サッカー、ラグビー、それに2020年の東京オリンピックで追加種目となった野球などのグラウンドに欠かせないものといえば、それは芝生だ。よく手入れをされた芝生が青々と茂っているからこそ、選手は転倒時のけがなどを恐れずに激しいプレーができ、それが観客の興奮をいっそう高める。

スポーツ選手ではない一般の人にとって、芝生の上でする、より身近なスポーツといえば、ゴルフかもしれない。かくいう私もそのひとりだ。ゴルフ歴は50年以上に及び、海外のゴルフ場でも何回もプレーをしてきた。

そのうえで言うのだが、日本のゴルフ場ほど芝生が美しく整備されたところはないというのが私の実感だ。芝そのものの品質はもとより、設計、施工、メンテナンスなどにも、日本人ならではの美意識と優れた技術が隅々にまで行き届いていると感じる。

昨今はスポーツシーンでの需要が高まっている芝生だが、元来は豊かさの象徴だという。

芝は、もともとは家畜のための牧草が起源であり、家に芝生があるということは、自分はそれだけ多くの家畜を飼っている、つまり裕福であるということを表した。中世ヨーロッパでは、家畜を飼えるのは貴族や上流階級などの裕福な人たちであり、そこから芝生は「豊かさ」の象徴となっていった。

また、それだけの広さの土地を持っていることも誇示できる。そのため、中世ヨーロッパの貴族や資産家たちは、邸宅の庭に緑鮮やかな芝生を敷き詰め、優雅な暮らしを楽しんだという。

その後、芝生文化は移民とともにヨーロッパからアメリカ大陸へと渡り、庶民の憧れである「芝生付きの家」を持つことが一種のステイタスシンボルにもなった。

日本では、明治維新以降、急速に西洋文明が流入するなかで、庭園や公園に芝生が導入されるようになったが、それが社会に定着するまでにはかなりの時間を要した。日本で芝生が本格的に普及するのは、高度経済成長期以降のことだった。

1970年代になると、全国各地にゴルフ場が続々と開設され、公園や緑地、校庭、各種スポーツグラウンドへの芝生の導入が進んだ。さらに、河川や道路などの法面の保護にも利用されるようになり、芝生の需要が増大し、これにともない、日本国内での芝生の生産も拡大した。

日本における芝生の最大の生産地は茨城県で、その次が鳥取県である。鳥取県における芝の作付面積は日本全体の約15%に及び、出荷額も約21%を占める(農林水産省「平成28年花木等生産状況調査」)。これは、中国山地の最高峰であり、鳥取県のシンボルでもある大山の裾野に広がる火山灰土壌が、芝の栽培に適しているからだ。

その鳥取県の東伯町(現・琴浦町)で1963年に設立された鳥取県中部芝生生産組合を前身とし、いまや芝生ビジネス日本一の企業として異彩を放っているのが、本書で紹介する株式会社チュウブ(本社:東京都中央区、代表取締役会長:大田英二氏、代表取締役社長:小柴雅央氏)である。

芝生の生産は、ほとんどが個人農家で行われる第1次産業だ。しかしチュウブは、芝生の生産から設計、施工、販売、メンテナンス、さらには施設運営まで、芝生に関連する多様なビジネスを一貫体制で展開している。こうした展開をしている企業は、他に類をみない。

「育む」「創る」「輝かす」「営む」をキーワードに、芝生に関するすべてをワンストップで提供する次世代芝生一貫システムを、チュウブでは「ダンケターフ」と呼んでいる。その名の由来を、会長の大田氏は次のように語る。

「当社の社是である『感謝』の意を表すドイツ語の『danke』から命名しました。その『danke』に、英語で芝生を表す『turf』の頭の『tu』をつけると、『danketu(団結)』になるんですね。つまり『ダンケターフ』には、お客様への感謝という意味と、各事業部門の従業員が団結して芝生に関するあらゆるニーズに応えるという意味が込められています」

芝は、日本芝と西洋芝の2種類に大別され、現在、日本における作付面積の約93%は日本芝が占める。チュウブも、生産組合として創業した当初は「野芝」や「高麗芝」「姫高麗芝」などの日本芝を中心に少品種大量生産を行っていたが、株式会社に組織変更し、事業領域を拡大するとともに、顧客の多様な要望に応じるべく、西洋芝も含めた多品種少量生産へと切り替えていった。

「芝生の出荷先も、当初はゴルフ場の張芝工事が8割くらいを占めていましたが、法面保護や公園などの公共事業でも芝生が使われることが多くなり、さらに最近ではスポーツグラウンドや校庭緑化などもあって、芝生の用途はどんどん広がっています。それにつれて、お客様の芝生に対する要望も多様化してきています。

私がチュウブに入社した40年ほど前は、芝生の品種や規格も10種類あるかないかというところでしたが、お客様の要望に可能なかぎり応えようとしてきた結果、現在では、栽培する芝は約30種にまで増え、規格も要望に応じて変えていったので、気がついたら商品としては約250品目と、とんでもない数字になっていました(笑)。ここまで多くの商品を扱えるのは当社だけです」

50年以上にわたって芝生一筋に歩んできただけに、大田氏の言葉には確たる自信がうかがえる。

事業内容も、芝生の生産、販売、施工、メンテナンスにとどまらず、ゴルフ場や公園施設の管理、運営、建設・土木関連事業、さらにはレストランの経営、生花や黒らっきょうの生産と販売など、多岐にわたる。事業拠点もいまでは全国46カ所に及び、年間売上高77億円(連結)、従業員数650名(2017年6月時点)を数える企業にまで成長した。

また、チュウブでは独自の研究機関としてチュウブグリーン研究所を設立し、芝の品種改良、各種資材および工法の研究開発、世界の芝の調査など、新しい技術や品種の導入にも積極的に取り組んでいる。

新品種の導入として特筆すべきは、アメリカのジョージア大学で開発された、世界最高品質との呼び声も高い新品種「ティフグランド」と「ティフスポーツ」の、日本での独占生産権および中国を除く東アジアでの独占販売権を手に入れたことだ。これらは、これまでも各種の競技場でスポーツターフ(運動用地用の芝生)として使われていた「ティフトン」という品種の改良型で、大田氏いわく「あらゆる面で優位性を持つ、究極の芝」とのことだ。これらの芝の特徴については本編で詳述するが、2019年のラグビーワールドカップや、2020年の東京オリンピック・パラリンピックが追い風となって、需要が高まることは間違いなさそうだ。すでにラグビーワールドカップの試合会場のひとつである埼玉県の「熊谷ラグビー場」に、日本で初めて「ティフグランド」が採用されたほか、キャンプ地も含め、いくつもの競技場で新品種による張り替え工事が実施、または予定されているという。

芝生はニッチな市場とはいえ、生産だけでなく施工や管理などの関連ビジネスまで含めると、その市場規模は1000億円とも目されている。近年は特にグラウンドの芝生化が進み、スポーツターフの伸びが著しい。

しかしながら、芝生が日本人の生活に浸透しているとは言い難く、欧米では広く認識されている芝生文化も、日本ではまだ馴染みが薄い。

芝生は、その機能性もさることながら、鮮やかなグリーンは見た目に美しく、心に豊かさや安らぎを与えてくれるものでもあることから、芝生ビジネスの国内トップ企業であるチュウブとしては、さまざまな事業活動を通じて、芝生をひとつの文化として日本人の生活に定着させることに力を尽くしていきたいという。

本書は、グラウンド緑化や都市緑化への関心が高まるなか、芝生関連ビジネスで突出した規模を誇り、地域貢献にも力を注ぐ、チュウブの事業活動を紹介するとともに、同社会長・大田英二氏をはじめとする経営陣の理念やビジネス哲学、そして芝生への熱い思いに迫るものである。

施設や敷地への芝生導入に取り組む各種施設の経営者や運営担当者のみならず、街の緑化や自宅の庭の芝生化に関心を寄せる方々にとって、本書がなんらかの指針となれば幸いである。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。


2018年10月  鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 増大する天然芝の需要と芝生文化の広がり

中世ヨーロッパに端を発する芝生文化
日本では高度経済成長期以降に本格的に普及
ゴルフ場に代わり、スポーツターフの需要が増大
用途に応じて芝の種類を使い分ける
芝生の生育に欠かせない太陽光と排水性
注目が高まる天然芝ならではの効用
鳥取県では行政が芝の生産をバックアップ
「鳥取方式」により校庭の芝生化を促進


第2章 日本一の芝生会社「チュウブ」の実力

鳥取県で産声をあげた芝生ビジネスのパイオニア
社是に掲げる「感謝」と社会貢献への意識
芝生に関するあらゆるニーズにワンストップで対応
少品種大量生産から多品種少量生産へ
芝生産農家とともに築きあげてきた生産体制
出荷作業を代行することで生産者の負担を軽減
ゴルフ場に関連するすべてを事業化
メンテナンスの要となるグリーンキーパー
ゴルフ場運営事業に参入
周辺のゴルフ場とは共存共栄の方針
顧客目線のサービスを続々と投入
ゴルフ場から公園、宿泊施設の運営へと事業領域を拡大


第3章 先進の技術で芝グラウンドをプロデュース

スポーツターフの生産に適した天然砂丘圃場
迅速な施工が特徴のビッグロール工法
チュウブ独自のRe-SOD工法
「ティフトン」の新品種の独占権を取得
徹底した品質管理下で生産される新品種
「究極の芝」と称される「ティフグランド」
耐寒性と回復力に優れる「ティフスポーツ」
最先端の機械を導入したグラウンド改良工事を提案
全天候型スタジアムを想定した天然芝育成実験


第4章 最先端の研究・開発を行うチュウブグリーン研究所

研究・開発の中核を担う部門として研究所を設立
芝草の品種改良に取り組み、オリジナル品種を開発
「ティフトン」の新品種導入に向けた試験栽培
芝生の施肥管理のための葉身窒素測定器を開発
国際大会レベルのターフクオリティ試験
土壌、日照、病害の各調査を実施し、改善策を提案
花卉らっきょうや黒らっきょうの研究・開発も


第5章 顧客第一主義に徹し、地域経済の振興にもひと役買う

脈々と引き継がれてきた団結力とチャレンジ精神
本当の株式会社に生まれ変わるために社内改革を断行
東京支店を縮小中も関東での営業を継続
公園の指定管理を機に業績が好転
公共施設の運営で地域に密着した事業を展開
地域振興のためにも人が集まる施設運営を
顧客満足のために価格以上のサービスを提供
すべてに「感謝無限大」
現状維持は後退と同じ、常に一歩前進を
「ガイナーレ鳥取」の「Shibafull」プロジェクトをサポート


第6章 「緑の力」で日本を元気に

「GREEN ENERGY」をスローガンに
海外展開に向け着々と準備
芝生関連のスポーツビジネスが定着する可能性
暖地型ハイブリッド芝の開発も研究課題のひとつ
新商品、新事業の可能性を求めて研究開発
町おこしとして倉吉市旧市街地に複合施設を建設
社員が団結して芝生文化の普及に邁進


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2018/07/10

『LED革命』前書きと目次

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LED革命
~LEDのリーディングカンパニー「遠藤照明」の挑戦~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-374-0
初版発行:2012年8月17日




 はじめに


文明は明かりとともに歩んできた。

はじめに人は火という道具を手に入れた。火は、人に暖を取らせ、獣から身を守り、食べものに火を通し、そして照明となった。火の使用により、人類は初めて文明を持つ余裕を持てたといえよう。暗闇でただ眠るしかなかった人に、火の明かりは光源として文明を育はぐくむチャンスを与えたのだ。

火の揺らめきはやがて松たい明まつからロウソクへと代わり、ガス灯、白熱電球、蛍光灯、ハロゲン灯など、新たな光源へと進化の幅を広げていった。そしてここにきて、これまでの照明の歴史とはまったく次元を異にする新たな光源を人類は手に入れることになった。それがLEDである。

LEDのメリットは何よりも消費電力が圧倒的に少ないことがあげられる。ざっくりいって、白熱電球照明の八〇%以上の消費電力を節減できる。環境や資源問題が喫緊の課題とされている現在、救世主ともいえる光源だ。

LEDの真価はほかにもある。輝度・演色性など、光のクオリティがこれまでのどの光源よりも高いのだ。さらにはデジタル環境に対応しやすく、自由自在に光をアレンジできることも照明デザインをするうえでははかりしれないメリットである。

LEDの登場により、照明の世界はドラマチックに変容した。いままさしく、照明の革命といえるような大イノベーションが進行しているのである。

そのLEDへのイノベーションの火付け役となり、日本の業務用LED照明市場でトップクラスのシェアを有するのが、本書で取り上げる株式会社遠藤照明(本社:大阪府大阪市、代表取締役:遠藤良三氏)である。

遠藤照明が専業照明メーカーとして、これまで手がけた商業施設の名をあげると、誰もが知っている大手百貨店から大型商業施設、スーパー、飲食店など、枚挙にいとまがない。おそらくほとんどの人がすでに、遠藤照明のLEDがつくり出す光の空間でショッピングやグルメを楽しんだ経験があるのではないだろうか。

「高付加価値空間」をつくり出すプロ集団という事業テーマを掲げる遠藤照明が手がけた空間は、これまでにない高い付加価値が生まれ、空間全体を彩ることは当然ながら、環境負荷が少なく、さらに電力料金が大きく下がるというのだ。いまや環境を意識する企業活動は、地球市民として当然の責務の一つといえる。さらに景気低迷・消費不況により収益率が低下している商業施設にとって、電力料金の削減は実質的に利益率の向上と同じ意味を持つ。次々と新たに生まれる空間の多くで、遠藤照明のLED照明が採用されるのも当然である。

遠藤照明の創設は昭和四十二(一九六七)年。遠藤良三氏が個人で立ち上げた、会社というより個人の製作所からのスタートで、それがすべての出発点だった。遠藤氏は、安定した大手銀行の正社員という恵まれた場を惜しげもなくかなぐり捨てると、「金がない」「人がない」「ルートがない」のないないづくしをものともせず、たった一人で会社を立ち上げたのだ。

そこから、非住居空間照明におけるトップシェアを占める企業にまで遠藤照明を育て上げてきた遠藤氏の歩みは、まるで小説のように起伏に富んでいる。私が遠藤照明をテーマに筆を起こしたのは、いまドラスティックに進行しているLED照明へのイノベーションを紹介したかったと同時に、遠藤氏の強い独立精神と、信じた道を強きょう靭じんな意志力で突き進んでいく生き方を、ともすれば、軟弱な生き方に傾きがちな最近の多くの人に知ってもらいたいという思いが大きかったからだ。

遠藤氏の豪胆かつ先見性豊かな経営力は、この三年ほどの動きに特に顕著だ。

たった一人で起業し、非住居空間照明に集中するという戦略でしだいに頭角を現すようになった遠藤照明は、平成二年には大阪証券取引所(新二部)に上場を果たす。照明専業メーカーとしては初の株式上場である。その後も順調に発展を遂げ、ピーク時には総売上高一八七億円にまで達していた。

だが、その歩みは決して順風満帆ではない。平成二十年にはリーマンショックが襲いかかり、遠藤照明の業績は一気に二十年前の水準まで落ち込んでしまう。その後、日本経済は円高、少子高齢化の進行などにより、いまだに低調から抜け出せてはいない。

このとき、遠藤氏はすぐさま「今後、経営資源の投下はLED分野に集中する」と大胆な決断を下した。いずれはLEDが照明の主流になると予感されたものの、当時、LEDが国内照明市場に占める割合はわずか三・四%にすぎなかったのだ。

この決断は見事な結果を導いた。平成二十二年三月期は一三一億円だった遠藤照明の売り上げは、翌平成二十三年三月期には一八九億円と急伸。平成二十四年三月期では二六八億円(実績)、平成二十五年三月期では三五三億円(予測)とさらに勢いよく伸びつづけているというから、痛快極まりない。すでにその売り上げの八〇%はLEDによるものだという。

いうまでもなく、LEDについても世界的な厳しい競争が繰り広げられている。もし、遠藤照明の決断がなければ、日本のLED事業は世界のLED化への潮流にも後おくれをとっただろうといわれている。遠藤氏は社団法人日本照明器具工業会の常任理事の要職にもあるが、率先してLED化を促進したことにより、日本の照明器具産業を大きく牽引する功績も果たしたことになろう。

現在、世界の照明市場は一〇兆円規模と巨大なものになろうとしている。しかも、加速度的に急成長も続けている。その主流は間違いなくLEDが占めるはずだ。

「そうした経済環境に的確に対応するために、アジア諸国はもちろん、欧米にもショールームを開設して海外事業を本格化させ、世界のリーディングカンパニーになることをめざしています」

遠藤氏はこう語る。

事実、これまで遠藤照明では、照明市場の世界的拡大を先取りし、二十三年前にタイに工場を設立。その後、中国にも生産拠点を設けている。その結果、圧倒的な価格競争力を持つなど、世界戦略への布陣固めにも抜かりはない。

本書では、LEDによる非住居空間照明を経営の主軸に据えて、照明新時代を牽引していく遠藤照明の活動を紹介するとともに、創業社長・遠藤良三氏の経営理念、行動哲学にも迫りたいと思っている。

このところ、ポテンシャル低下が懸念される日本経済だが、日本にはこんな元気な企業があることをぜひ、知っていただきたい。こうした企業ががんばっている、それが日本の底力だといえないだろうか。

遠藤照明のパワフルな活動を知れば、日本の未来に新たな活路は開けるという確信が湧いてくるはずだ。また、遠藤氏の生き方は、勇気ある決断、迷うことない行動力こそが難局を切り開いていくのだというメッセージを放ち、多くの人に貴重な示唆を与えるものだと信じている。

なお、本文内の敬称を略させていただくことを、あらかじめお断りしておく。


平成二十四年六月   鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 LEDが開く新しい光の時代

照明革命の幕が切って落とされた!
非住居空間照明はLEDがあたり前という時代がはじまった
次世代の照明・LED
誰もが驚いたオールLED照明の提案
売り場を二分しての大実験
売り上げを押し上げるLED照明効果
オフィス空間照明にも理想の光
伝統と先進イメージを融合させる
高付加価値空間創造企業としての遠藤照明
非住居空間×LEDに特化し、オンリーワン企業に
LEDなら大手に勝てる!
照明を知り尽くしている照明のプロ集団


第2章 文明から文化へ――照明の歴史

光が人をつくった
光の正体は電磁波
火からロウソクへ――明かりが果たした役割
歴史を変えた白熱電球
青白く光り、消費電力が少なく、電球の寿命が長い蛍光灯
非住居空間を彩る照明・ハロゲン灯:HIDランプ
本格的なLED時代の幕開け
LED研究の夜明け
光の三原色と青色発光ダイオード
白色発光ダイオードの開発
照明意識の変化とLED使用の急増
東日本大震災でLED普及はさらに加速
環境負荷の圧縮、省エネ照明とLED
非住居空間照明におけるLED化を牽引
クライアントは育ての親
エネルギー消費とデザイン性の高さを併せ持つLED照明


第3章 照明環境創造のプロ集団・遠藤照明

Ⅰ.照明事業
 照明テクノロジーの原点――照明技術研究所
 ビジネスを実際に成立させていく――営業本部
 高付加価値空間を提案する――照明計画研究所
 供給体制を万全に――生産本部
 遠藤照明の品質力の要――品質保証部
Ⅱ.海外事業
 グローバル市場で勝ち抜いていく
 すでに世界攻略の拠点を完成
Ⅲ.環境ソリューション事業
 環境が世界の課題になることを視野にイーシームズを創設
 レンタル事業と省エネ
 省エネ照明の普及浸透に大きく貢献
 イーシームズの環境提案・自動監視制御システムECOライナー
 多彩なサービスメニュー
Ⅳ.インテリア家具事業
 照明とコラボするインテリア製品を開発
 付加価値の高い家具に特化
Ⅴ.人材育成
 高付加価値空間をつくり出すプロフェッショナルたち
 「社員憲章」と「エンドーバリュー」
 信賞必罰制で人材を鍛え直す
 打たれてもいいから出る杭になる、そんな人材を育てていく
 戦略的人事配置で一〇〇〇億円企業の人材育成を


第4章 光とともに歩んできた半世紀

ビジネスとは無縁の家に生まれ育つ
安定よりも自分で勝負! の道がいい
五年で捨てた恵まれた銀行員の座
照明との出合いは“甘いささやき”?
たった一人の独立
護衛艦用照明で鍛えられた技術力
ニクソンショックで、新規領域を探す
店舗照明へと照準を決め、遠藤照明を設立
活路はカタログ制作から
カタログがバインダー形式だったわけ
「一度、使ってもらえれば」という自信
「遠藤ならば」の信頼性
「オリジナルに徹する」を貫く
独自の存在感で価格決定権を手にする
明るさから光の演出の時代へ
一〇〇億円企業に成長
タイに本格的な生産拠点を完成
照明専業メーカーとして初の上場
新技術への積極的な挑戦
バブル経済の崩壊の洗礼を受けて
パチンコ店ブームの火付け役
アパレル、百貨店などの空間照明を牽引
失われた二十年
一〇〇%LEDへの転身
電光石火の攻めを展開


第5章 世界のトップランナーに

進化しつづける「LEDZ」
商業施設から新たなる分野へ
世界がLEDに向けて走り出す
世界規模の倍々ゲームがはじまった
世界のトップランナーへ躍進
競合を恐れとしない、これだけの理由
世界市場で「ENDO」ブランドを確立する
光の未来へ・三年後、一〇〇〇億円企業をめざす


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2018/02/28

『オフィス環境革命』 前書きと目次

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オフィス環境革命
~パーティションでビジネスに進化を~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-376-4
初版発行:2012年9月15日




 はじめに

人は働く環境の善し悪しによって、仕事の能率が大きく左右されてしまうものである。

考えてもみてほしい。資料を置く場所にも困るほど狭いデスクがずらりと並び、間仕切りもない――そんな隣の人と肘がふれ合わんばかりの状況で、細かい数字を扱う経理のような仕事に集中できるだろうか。

あるいは、いやがおうでも同僚たちの雑談や騒音が常に耳に飛び込んでくるような環境で、クリエイティブな発想を生み出すことは果たして可能だろうか。

自分の実力を発揮することもかなわず、さまざまな不満や苦痛に耐えなければならない――そんな劣悪な環境で働くオフィスワーカーは、不幸以外の何者でもない。生産性や労働意欲は著しく低下し、いいアイデアも湧いてはこないどころか、そこで働く人たちは、常に大きなストレスにさらされ、心身ともに摩耗してしまう危険すらあるのだ。

いまやオフィス環境がそこで働く人に大きな影響力をおよぼすことは、周知の事実である。しかし、だからといって、すべての企業が実際にオフィス環境の改善措置を講じ、従業員の働く空間の快適さを追求しているかといえば、決してそうではないのが現実だ。

一〇〇の会社があれば、一〇〇通りのワークスタイルがある。当然、それを支えるオフィスにも、一〇〇通りの顔があってしかるべきである。にもかかわらず、かつての日本企業ではどんな職種であろうとも、そのオフィスの姿に大きな違いは見られなかった。

いわゆる「オープンオフィス」といわれる大部屋スタイルが圧倒的に多く、オフィスレイアウトも向かい合わせに机を並べて、部署ごとに「島」をつくった「対向島型形態」と呼ばれるものがほとんどであった。それぞれの職場に適した空間の快適さや利便性を追求してきた欧米の企業に比べると、日本企業は「オフィスの質」という面で大きく後れを取っていたことは間違いない。

しかし、そんな紋切り型の日本のオフィスのあり方が、近年になって大きく変わってきた。

そのきっかけとなったのは、昭和五十一年以降、通商産業省(当時)主導の下に進められてきた「ニューオフィス化運動」であろう。オフィス環境を整えることによる生産性の改善や従業員モラル(士気)の向上を目標に掲げたこのムーブメントは、次第に日本の企業に浸透していき、オフィス環境における経営者の問題意識をも変えていった。

オフィスは「物を生まない場所」から「生産する場所」へと認識が大きく変わったのだ。

そればかりではない。

いまやオフィスは単なる「労働する場所」ではなく、「企業の顔」「広告塔」としての役割をも担うようになったのである。

たとえば、平成二十二年にソフトバンクは創業三十周年記念イベント「ソフトバンクオープンDAY」というイベントを開催した。本社オフィスにツイッターの一般ユーザー一〇〇〇組二〇〇〇名が招待され、さまざまな催しが盛大に行われた。特に招待客に社員食堂を開放したことが話題を呼び、マスコミにも大きく取り上げられたので、ご記憶の方も多いと思う。

このイベントなどは、まさしく自社のオフィスを広報の一環として有効に活用した一例といえるだろう。

本書で紹介するコマニー株式会社(本社:石川県小松市、代表取締役社長:塚本幹雄氏)は、もともとは事務用キャビネットの会社として昭和三十六年に設立された会社である。

しかし、同社は将来的に求められるであろう新たなオフィスのあり方を見据え、昭和四十五年以降、パーティション事業にシフトしていき、一九八〇年代には業界のトップメーカーへと成長し、さらに昭和六十年には品質管理のノーベル賞ともいわれるデミング賞実施賞中小企業賞を受賞。一九九〇年代には中国進出も果たすなど、日本のパーティション業界を牽引しながら、いまも躍進しつづけている。

「いい空間には、いいパーティションがある」というブランドポリシーを根幹に、これまでさまざまなパーティションで、日本のオフィス環境を理想的なものに変えてきた。「コマニー」という企業名を知らなくとも、多くの人が気がつかないうちに、同社のパーティションに囲まれて働いているのではないだろうか。

世界と対等に勝負することが求められる現代の日本では、高度な専門知識を持った人々が最大限に力を発揮し、仕事の能率を向上させられるオフィスが必要となる。そのためには、周囲からの過度な干渉を避け、業務に集中できるオフィス形態が望ましい。

その一方で「オフィスでのコミュニケーションが活発な企業では従業員のモラルが高い」といわれていることから、従業員間のコミュニケーションを活性化するための環境づくりも重要だ。

しかし、多くの企業が必要性を認識しながらも、長引く不況や業績の悪化などからオフィス環境の改善に多額の予算を割くことがむずかしいという厳しい現実もある。

そこで注目されるのがパーティションによるオフィス空間のリニューアルである。パーティションを利用したリフォームならば大がかりな工事が無用なため、予算も工期も大幅に短縮でき、なおかつオフィス環境の快適性を大幅に向上させることも可能だからである。

オフィスばかりではない。こうした環境づくりは、あらゆる空間づくりの場面で注目され、工場、病院、介護施設、学校と多岐にわたり、パーティションの活躍の場が広がっている。

コマニーはオフィス空間の快適性を追求するとともに、ユニバーサルデザインや地震対策にも積極的に取り組み、さらには工事の騒音が顧客企業の業務の邪魔にならないよう独自の小音工事を開発するなど、さまざまな側面から商品開発に取り組んできた。また、パーティションを機軸にさまざまな可能性を探り、新たに電子錠の販売に取り組むなど、業務の拡大にも力を入れてきた。

このように、パーティション業界のトップメーカーでありつづけることは、たしかな品質とすぐれた開発力、そして、それを生み出す柔軟な思考を持つ優秀な人材があるからにほかならない。

代表取締役社長・塚本幹雄氏は「企業というものは、従業員あってのもの。社会に貢献できる企業であることはもちろんですが、従業員やその家族にとっても魅力的な会社でありたいと考えています。そのうえでパーティションを極め、将来的に売上高五〇〇億円をめざす。そのためにも、日本国内だけではなく、中国や東南アジアにも力を入れていきたいですね」と語る。

本書はパーティションが持つ空間づくりへの可能性と、業界の展望を検証するとともに、業界のトップメーカーとして、他の追随を許さないコマニーと、創業者・塚本信吉氏から現社長・塚本幹雄氏へと受け継がれてきた人生哲学、時代に合わせて研磨されてきた経営理念の真髄に迫るものである。

モノづくりのみならず、人づくりにも心血を注ぐ同社の姿勢は、企業経営者のみならず、現代に生きるすべてのビジネスマンにとって貴重な指針となるであろう。

また、本書をご一読いただくことで一人でも多くの方にオフィス環境の重要性をより深くご理解いただき、一つでも多くのオフィスが快適に生まれ変わる端緒となれば幸いである。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。


平成二十四年七月   鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 時代とともに変化するオフィス環境の推移

文明開化とともに生まれた日本のオフィス
グレー一色だった日本のオフィス
「モノを生まない場所」から「生産する場所」へ
日本のオフィス事情に一石を投じた「ニューオフィス化運動」
コミュニケーションがモラルを高める?
モチベーションを向上させるオフィス環境
オフィス環境を左右するパーティション
微減する日本のパーティション市場


第2章 パーティションのトップ企業「コマニー」

めざすのは「いい空間」の創造
四十年を超えるオフィス空間づくりの実績
オフィス以外でも活躍するコマニーのパーティション
パーティションの可能性を追求する開発力
営業力を向上させた「お客さま貢献サイクル」
クレームから学ぶ クレームを生かす
コマニーの取り組み


第3章 さまざまなシーンで活躍するコマニーのパーティション

企業文化を育むコマニー仕様のオフィス
厳しい条件下で工場に快適な空間をつくる
最先端技術を守るクリーンルーム
クリーンルームの大型化にも対応
人が集う空間をいかに心地よくするか
ユニバーサルデザインへの取り組み
医療・福祉の現場で生きるコマニーの思いやりの心
分煙対策や携帯電話BOXにも
耐震基準震度六強をクリア


第4章 コマニーを支える人的財産

万人が使いやすいドアはどうやって生まれたか
“白くない”ホワイトボードを生んだ柔軟な発想力
コミュニケーションから生まれるアイデアの卵
本音で語れる関係をつくるために
心を高めるコマニーの人材教育システム
HPCシステムがもたらしたものとは
「モノづくり」を支えるのは「人づくり」
徹底した品質管理教育が従業員の意識を変えた
コマニーの強みとは


第5章 パーティションの軌跡とともに歩む

キャビネットからパーティションへ
参入後十年で達成した間仕切り業界売上高第一位
意識改革を狙って取り組んだTQC
CI導入により、ついに「コマニー」時代へ
大きな転機となったデミング賞受賞
名証二部上場――コマニー新時代の幕開け
独立採算制度のスタート
創業者・塚本信吉の人物像
貫き通した「原理原則」の追求
創立五十周年を機に新たに制定された「経営の理念」


第6章 コマニーはパーティションの可能性をどこまで広げるか

めざすは「超」一流企業
パーティションの可能性を広げる“レンタル事業”
新たな柱「電子錠」
施工技術センターの新設
“ゼロ”からはじまった中国進出
現地人材を心でつなぐ
そして東南アジア進出へ
次の百年を見据えたコマニーの未来戦略


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2017/12/11

『人と技術をつなぐ企業』 前書きと目次

Humantechweb


人と技術をつなぐ企業
~知と情熱で世界に挑むA&D~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-390-0
初版発行:2013年11月28日




 はじめに


「ものづくり日本」

高い技術力、たゆまぬ創意工夫に裏づけられた「メイド・イン・ジャパン」のすぐれた品質は、世界市場で絶大な信頼を得た。だが、近年では台湾や韓国、中国をはじめとした新興国メーカーの台頭により、苦戦を強いられている。その大きな要因となっているのが、長引くデフレと行きすぎた円高である。

こうした状況を打破し、デフレと円高からの脱却、名目GDP三%の経済成長の達成を実現するため、自民党・安倍首相は大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の三つの基本方針、いわゆる「三本の矢」を打ち出した。

これにより、昨年末からは、日本のメーカーを苦しめてきた円高傾向にようやく歯止めがかかり、家電や自動車をはじめ各種産業用製品、日用品業界なども次第に活気づいてきた。

「ものづくり日本」の特徴は、伝統技術と先端技術を巧みに融合させることにある。こうした日本のものづくりの精神と高い技術力、独自の経営戦略によって、創業以来、堅実に成長している企業がある。それが本書で紹介する株式会社エー・アンド・デイ(略称:A&D、本社:東京都豊島区、代表取締役社長:古川陽ひかる氏)である。

同社の設立は昭和五十二(一九七七)年五月。以来、同社は電子計測器の開発、製造、販売を行う計測・計量機器のメーカーとして、一貫して「計る」「測る」「量る」にこだわってきた。

「アナログ技術とデジタル技術の融合をはかり、そのうえで低価格を実現することを経営戦略にしています」と同社社長・古川陽氏はいう。

同社では、アナログとデジタルの変換技術を原点に、計測・制御技術を駆使したツールの提供によって、顧客による新しい価値の創出を支援し、産業の発展と健康な生活に貢献することを使命とすると経営理念に掲げている。

この経営理念にあるように、同社の基幹技術はアナログ・デジタル変換技術である。社名の「A&D」は、まさしくこのアナログ・デジタルに由来しており、「高精度・超高速のアナログ・デジタル変換技術」をコア技術として多種多様な電子計測・計量機器の開発・販売を手がけてきた。

売上高のおよそ一〇%を研究開発費として計上している研究開発型企業である同社では、「“本物”にこだわり、自ら設けた課題に挑み、あきらめずにやり抜くこと」を信条としている。

同社の事業は大きく分けて、①計測・制御・シミュレーションシステム、②電子銃A/D・D/A変換器、③計測機器、④計量機器、⑤医療・健康機器の五つの分野から成り立っている。特に、計量機器のなかで「電子天てん秤びん」では国内市場の六〇%を占めるトップ企業で、デジタル血圧計でも世界第二位と確固たる実績をあげている。

現在、もっとも力を注いでいるのは自動車産業向けの試験・計測システムである。「世界市場での巻き返しをはかる自動車メーカーは、開発スピードを速めるとともに開発コストの削減、さらには環境問題への対応なども迫られています。当社は、自動車メーカーが求める新しいアプローチを製品のかたちで提供しています」と古川氏はその意図を語る。

創業以来、独自技術の研究・開発に邁進してきたA&Dは、取引先はもとより各方面から高い評価を得て、当初一四人の社員ではじめた会社が、いまでは三〇〇〇人を超す規模に成長。売上高もバブル崩壊後に一時低迷したものの、その後は長引く不況にもかかわらず堅実に推移している。「今後も自動車産業をはじめとした各ユーザーと協力しながら、最適なソリューションを追求し、産業界の発展に貢献したい」と古川氏は抱負を述べる。

リーダー不在とされる昨今、古川氏の経営者としての姿勢は、かくあるべき経営者像としてむしろ新鮮に映る。まだまだ日本も捨てたものではない――そう思わせてくれる経営者に出会えたことをうれしく感じる。

本書は、伝統の技術と最先端の技術を独自の思想で融合し、他社の追随を許さない技術の確立によって、日本の、さらには世界の計測・計量市場をリードするA&Dの事業活動を紹介するとともに、創業社長・古川陽氏の経営理念とビジネス哲学に迫るものである。現在、製造業に身を置き、研究・開発に身を置く技術者のみならず、「ものづくり日本」の将来に思いを馳せる多くの一般読者にとっても貴重な指針となるであろう。

なお、本文中の敬称を略させていただいたことをあらかじめお断りしておく。

平成二十五年九月   鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 “ものづくり日本”の復活に向けて

生活はすべて“はかる”にもとづく
ものづくりの基本“はかる”技術
新興国の躍進で停滞する日本経済
技術とマネジメントの両立が必須
欧米をモデルにした戦後の製造業
“技術立国・日本”の光と影
技術力を生かした新分野開拓の道
“ものづくり日本”復活で活路


第2章 多角的に“はかる”を追求する企業

活性化に必須“はかる”技術力
「計る」「測る」「量る」をガイド
時代を超えて成長する伸び代
創業以来“はかる”にこだわる
基幹技術はA/D相互変換の技
職人技とデジタルの融合で低価格を実現
電子天秤市場でシェア六〇%
研究開発型のグローバル企業
電子応用測定器の頂点をめざす


第3章 開発・生産システムの工程を合理化

合理的“ロジック”で組織固め
基盤技術の確立で広がる事業領域
多角化とシナジー効果追求の差
製品企画の原点とは何かを追求
ロケットスタートだった創業期
変換器と電子天秤で基礎を固める
開発・生産システムの合理化
商戦を戦い抜くための力を蓄積
競争ではなく共闘で業界に貢献


第4章 計測システム需要とメディカル分野の伸び代

すべてを関連づけて思索する社風
重要な技術を外に出さずに蓄積
ロードセルへの参入で業容拡大
最初から積極的だった海外進出
国内外の市場の違いと需要喚起
エンジニアリングの眼力と思考
開発の目、営業の目は表裏一体
汎用性でボリュームゾーン変化
伸び代に期待できるメディカルとヘルスケア分野
苦闘、ルビコン川を渡れ?


第5章 創業社長・古川陽の経営理念とビジネス哲学

“犬棒マーケット”論
“運のよさ”の背景にあるもの
逃げない、ぶれない、あきらめない
弱者・強者の戦略の違い明確に
勝負強さ株式上場の“時の運”
“人の和”を尊重しつつ先読み
ロジカルでいて浪花節的な心情
組織はトップ以上にはならない
A&Dがこだわる“本物”とは何か
産業論・技術文化論からの展望


第6章 DSP技術が新しい沃野開拓のツール

技術者の衰退による技術の消滅
トヨタからの打診でDSP事業が本格化
自動車業界向け計測システムDSP
新しい沃野を開拓するDSP
海外企業に飲み込まれない
幹を太らせ枝葉を繁らせる戦略
ホーム・ヘルスケア分野で大手と協業する新戦略
夢は果てしなく――地球と宇宙探査へ
後継者を育成し次代へ継承する――企業風土としての“はっちゃき”精神
近い将来に一〇〇〇億円をめざす?

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