ほ:ボランティアの時代

2017/12/12

『ボランティアの時代』 前書きと目次

Volunteerweb


ボランティアの時代
~日本の“パパー・テレサ”石橋勝の描く世界平和への道~

著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-404-4
初版発行:2014年12月28日




 はじめに


私が経済ジャーナリストとして活動をはじめてから、半世紀以上になる。

その間、実に多くの経営者と出会い、その人生行路やフィロソフィなどにふれさせてもらった。

ことに、一代で業界の一角に食い込んだ起業家は、一種の変革者であることを感じる。変革者は、大きな夢を持ち、既成のものと闘いつづける強い信念の持ち主であるというのが私なりの感想だ。

そうした半世紀におよぶ取材経験のなかで、とびきり印象深い人物が本書の主人公の石橋勝氏であった。

石橋氏は、天然系素材の化粧品として知られる「エルセラーン化粧品株式会社」の創業者であり、代表取締役である。市販の化粧品のほとんどが石油系素材だった時代に、一〇〇%天然系素材にこだわった化粧品の開発販売に成功し、業界に新しい流れを創出させた人物である。

それだけでも大きな業績であるのだが、最も注目に値するのはフィロソフィを生み出す信念の核ともいうべき部分である。

石橋氏が会社を立ち上げた理由は、国際ボランティアを行う資金づくりのためという、誰も思いつかないものであった。

「私はボランティアに自分の生涯を捧げようと決めていました。会社で出した利益は世界平和のボランティアのために捧げます」と石橋氏は熱く語る。

読者のなかには、「ああ、そうなのか」と納得する人も少なくないだろう。「エルセラーン化粧品」というと、いまではボランティアに熱心な会社として定評を得ている。

だが、創業してからしばらくの間は、「企業活動を通じて世界の平和に貢献する」という理念に耳を傾ける人は皆無だった。

可能なかぎりを与えようとのボランティア精神と、あくなき利潤の追求に渾身傾ける企業との相反するあり方がどのように融合されるのか。見当もつかないものであったことは想像に難くない。

しかし、不可能と思われたその課題に取り組み、見事に統合を果たした石橋氏は、いまや社会起業家として先駆的なあり方を示す存在になっている。

その波乱にとんだ半生――極貧の少年時代、キリスト教との出会い、マザー・テレサに心酔し、マザーのように生きようと誓った想い――そうしたことを聞きおよぶなか、石橋氏の生きる意義が「世界中の人々が仲よく暮らす世の中をつくることに貢献すること」であることがよく伝わってきた。そして、経営者としての顔は次第に薄くなり、代わって人のためにあろうという求道者的な風貌のほうが、濃く浮かび上がってくるような印象も覚えた。

求道者としての道を選んだ人間が、もともと持っていたパワフルな発想力と行動力を駆使して会社経営という手段に踏み込んだ。そんな雰囲気なのである。

創業以降、「エルセラーン化粧品」は、途上国の子どもたちの里親活動、世界難民救済のためのNGOの設立、国内の障害者のためのドネイション(寄付行為)、緊急災害支援など、幅広い支援に携わってきた。

会社の理念は、①「国際ボランティア活動」、②「Stop the Pollution(公害ストップ)」、③「生涯心を磨く」である。

その理念を現実に落とし込むために、独自のビジネスモデルを構築。一切公害を出さない製品をつくり、自分の利益の一%をボランティア支援のために拠出する「エルセラーン1%クラブ」の創設。

詳しい内容はぜひ本書をひもといてもらいたいが、すべては「最初にボランティアありき」から生まれたものである。そして、彼の理念に共鳴した人々が集まって、ボランティアに人生を注ごうとしている。

その結果、広告活動はあまりしないにもかかわらず、商品のよさと理念の力によって、売り上げは有名企業以上のものを達成している。こうした会社は、前代未聞といってよいだろう。

石橋氏とは何度も言葉を交わしたが、話の内容は世界平和に関することにおよぶのが常であった。

この世はさまざまな矛盾に満ちている。

世界人口の二五%以上が一日一・二五ドル以下の生活を強いられている絶対貧困。

非識字者の三分の二を女性が占め、若いHIV感染者のなかで女性は男性の二倍に達するという女性への不平等。

世界人口の七%の富裕層が二酸化炭素の半分を排出する地球温暖化。

安全な水を手に入れられない世界人口の一一%の人々。

そうした問題を抱えながら、世界は争いを止めることができないままだ。そのなかで、物質豊かな日本は自分だけがよければいいという、内向きで自己中心の考えに凝り固まってしまっている。諸悪の根源は学歴偏重の教育体制にあり、いまのままでは他者のことを考える能力は失われ、平和への道は遠のくばかりであろう。

現在、エルセラーン化粧品が最も力を注いでいるのは、途上国の子どもたちのための学校建設プロジェクトである。五年前から精力的に取り組みはじめ、ネパール、ベトナムなど八カ国にすでに七〇校が開校している。

新しい学校でペンを握る子どもたちの表情は、知る喜びに輝いている。教育こそが貧困をなくし、世界を平和に導く最良の手段である。

「真のボランティアとは世界平和構築活動を奉仕の精神で行うこと」といいきる石橋氏は、世界家族の一員として、この先も夢と信念を持って現実の変革に向かいつづける。

民間の一企業が世界平和の貢献にすべてを捧げ、経営としても成功している企業が日本にあることは、驚きであり、じっくりとした検証に値する。

本書は稀け有うな起業家・石橋勝氏の半世紀におよぶボランティア人生の集大成であり、エルセラーン化粧品の実像を紹介するものである。

本書によって、真のボランティアとは何かを改めて考えてもらえると幸甚である。また、心に豊かさを求める人、平和を願う人、自分に何かできないかと思う人……、自分の人生に何かを残したいと願う人にとって、貴重な指針の書となるであろう。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。

平成二十六年十一月   鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 世界を変えたボランティア

二つの大震災が日本人の原体験に
データから見る意識の変化
企業が変わる
すべてが逆転の発想、ボランティアのためにつくられた会社
ボランティアの由来、日本的ボランティア
世界を変える活動は、たった一人の情熱からはじまった
絶望の中で光を与えるのがボランティアの歴史的役割
NPO法人の意義
学校教育とボランティア
「三・一一」海外からの支援が見せたもの
ボランティアは人間だけに与えられた素晴らしい行為


第2章 教育支援で国際貢献を捧げるエルセラーン化粧品

創業以来三十三年間、ボランティアに打ち込む会社
将来は医者か先生と、夢を語る子どもたち
学校建設の構想は五十年前から
基礎は「エルセラーン1%クラブ」
自分の名前が学校に
各国に広がる教育支援プロジェクト
ネットワークに参加する団体
世代を超えて子どもたちを育てていく
心ある民間ボランティアだからこそ、国以上にできることがある
名前のついた学校、最終的には一〇〇〇校を
エデュケーションファースト、平和な未来は学ぶことでつくられる


第3章 石橋勝のボランティア哲学、社会起業家として

エルセラーン化粧品、誕生す
化粧品公害に義憤を覚え
執念の天然系素材の化粧品
女性の口コミの力、ホームパーティ形式
販売してはいけない販売員
「エルセラーン1%クラブ」発足と「エルセラーンボランティア号」の出航
唯一推奨されたエルセラーン化粧品、爆発的な人気
腐敗を遮断する特殊容器の開発
さまざまなところへの地道な支援
NGO設立、十年におよぶ三〇億円の支援
テレビ・ラジオ出演、ボランティアを広める
理念を支えるごまかしのない商品群
石橋の歩みは社会起業家の歩み
日本の社会起業家のパイオニアとして


第4章 唯心を指針に歩むエルセラーン化粧品

イズムの力
普遍的真理は唯物ではなく唯心
どん底の少年時代でも人の温かさは忘れない
暗闇の若き日々に知った唯心の理論
マザー・テレサとの魂の出会い
動機善なりや?
「唯心」の説法
自己中心の広まりと「相手が一番、自分は二番」
教育から世界を変える
「自分だけよければいい」の日本は大変不幸な社会
日本人のボランティア観は本物ではない
いい人だけが残るエルセラーン化粧品の教育の強み
ボランティアを軸にした生き方が導く人間的成長


第5章 エルセラーン化粧品で人生が変わった!――エルセラーンでの活躍で輝く女性たちの声――

家族も親戚もエルセラーン化粧品のファンに ― 西川千夏子(栃木県)
子どもたちの成長が楽しみ
こんな生き方が……、眠れなかった一夜から人生が変わった
家族も親族もみなエルセラーンファンに
マイホーム主義から世界平和への道 ― 城戸啓子(福井県)
夫の死後、初めて前向きになれた
すぐに売り上げトップに
二人の息子たちよりエルセラーン化粧品
唯心の家庭生活の実践
がらっと総入れ替えした人生 ― 清水有美子(兵庫県)
一つのサンプルが人生を変えた――そして石橋社長との出会い
「周りはみんな、師匠」そしてまだ道半ば
見返りのないのがボランティア
めぐり合わせが重なってゼロからのスタート ― 鈴木若花菜(静岡県)
こんな世界があるのかと
店を閉めることとなった不思議な流れ
身が引き締まる思い
エルセラーン化粧品を舞台にして才能を引き出す ― 副社長・糸谷沙恵子
何が一番したいと問われ
社長の通訳として活躍
エルセラーン化粧品の強さは人間教育にあり


第6章 これからも変わらないボランティアへの思い

ミシュランガイドに五年連続掲載された「ホテルエルセラーン大阪」
全館禁煙、化粧品会社がホテルを持った例はほかにない
長年の夢だったホテル
争いの絶えない世界、人間は完全ではない
貧困が存在しない、戦争のない世界
世界の大企業も巻き込んで
第二期黄金時代に向けて、勢いが肝心
十年後のエルセラーン化粧品
人々に気づきを与える

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