信頼への挑戦

2020/02/06

『信頼への挑戦』 前書きと目次

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信頼への挑戦
~千代田セレモニーグループのあくなき情熱~


著者:鶴蒔靖夫
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-87218-365-8
初版発行:2012年4月29日 初版発行




はじめに

「男性七十九・六四歳、女性八十六・三九歳」

これは日本人の平均寿命(平成二十二〈二〇一〇〉年)で、女性は二十六年連続で世界第一位、男性は香港、フランス、スイスに次ぐ第四位である。第二次世界大戦前には、男女とも五十歳を下回っていたことを考えれば、なんと長命になったことか。

たしかに長寿にはなった。しかし、だからといって無限に生きられるわけではない。人間は、寿命が尽きれば死ぬ運命にある。たとえ若くしても、病気、事故、そして犯罪などに巻き込まれて生命を落とす人は少なくない。死は、いつも生の隣にあるのだ。

それを如実に見せつけられたのが、平成二十三年三月十一日に発生した東日本大震災である。地震と津波は、さっきまで生きていた多くの人たちの生命を一瞬にして奪い去った。それは、生の限界と死の必然、すなわち生あるものは必ず死ぬという冷徹な事実を改めて知らしめることになった。

実際、東日本大震災を契機に日本人の死生観、さらには死者を見送る葬式に対する考え方も変化してきた。震災をきっかけに、葬式は単なるセレモニーではなく、故人と残された人たちとの絆を見つめ直す場であり、祈りと鎮魂の場であることを改めて気づかされた人も少なくないはずだ。

本書で取り上げる千代田セレモニーグループ代表・大石和雄氏は、「大災害の発生を契機に日本人がむかしから大事にしている人と人の絆を見直す気運が高まっています」と指摘する。

その根拠として、被災地ではいまも行方の知れない身内を探索し、倒壊した家から先祖の位牌を捜す人たちが大勢いることをあげる。

人と人との絆は、生者と生者だけのものではない。共に生き、人生に歴史を刻みながら故人となった死者とも絆が結ばれているということだ。

平成二十三年八月十八日のNHKの「ニュースウォッチ9」で、大石氏の言葉を裏づけるような映像が放送された。

被災地の一つである宮城県では、身元不明の多くの遺体が、正規の弔いを受けないままに仮埋葬された。その事実に心を動かされた女性写真家・広瀬美紀氏が、震災から間もない四月に現地を訪れて、仮埋葬の様子を撮影しようとしたのだ。

彼女は、昭和二十年三月の東京大空襲で身元不明のままに埋葬された人たちの墓などを撮影し、『わたしはここにいる』という写真集を発刊し、写真展を開いている人物である。だから、東日本大震災で仮埋葬された人々の墓を写真に記録し、その人たちの生きていた証を世間に知らせたかったのだろう。

大石氏は「葬式は人と人の永遠の別れに際して心の区切りをつけ、故人の冥福を祈ると同時に、残された人たちの悲しみを癒す大切な行事です」と葬儀の意義と必要性を説く。すなわち、葬式は、死者と生者の関係に根ざす厳粛な儀式であり、やむにやまれぬ気持ちが葬式をあげる動機になっているということだ。だから、「葬式で大切なのは故人に対する深い愛情なのです」という。

だが大石氏は、従来の葬儀における葬儀業者と宗教者の考え方や振る舞いに問題があったことも認識している。だから、葬儀のあり方が議論されることは必然であり、生者と死者の永遠の別れを演出する葬式にも、時代の要請が反映されるのは当然ととらえている。

「現代日本人の葬式に対する要求は十人十色。多様化、個性化、簡素化が進むのは、時代のしからしむるところです。ですから、葬儀の主催者も葬儀業者も従来の形式、規模、施行方法にこだわる必要はありません。葬家が納得し、満足する葬式をあげるように最大限の努力をすればいいのです」と明言する。

千代田セレモニーは、この大石氏の考え方にもとづき、「葬家が納得し、満足する葬式の施行」を経営理念に掲げている。

同社は、創業時から一貫して、「故人のため、そして故人の身内のための個性豊かな葬儀を実現し、遺族や会葬者に感動をもたらす」ことを追求してきた。それが同社の企業テーマ「心のサービス」である。

また、大石氏が自身の経営施策においてもっとも重視している点は、「安心・安全の互助会システム」の堅持である。それは、近年、世間で話題を呼んだ『葬式は、要らない』(島田裕巳著/幻冬舎刊)という書物で指摘されている葬儀業者や宗教者に対する不信を払拭するものにほかならない。

同社が運営する「互助会」の正式名称は「冠婚葬祭互助会」である。会員が毎月一定額を積み立て、それを葬儀や結婚式の必要が生じたときに利用するという仕組みである。それは、江戸時代から戦後まで続いた「頼母子講」を起源とする「相互の助け合いの精神」を基盤にするもので、特徴は「少ない掛け金で大きな安心が得られる」ことである。

だから、互助会を運営する会社に経営の破綻は許されない。実際、大石氏は「互助会運営企業の破綻は、会員に対する重大な裏切り行為である」と明言している。

その互助会システムで「安心・安全」を確立するために同社は、① 経営基盤の確立、② 人的・物的サービスの向上、③ よいものをより安価に提供する努力、の三項目を経営指針として掲げている。

三項目の経営指針を掲げた裏には大石氏の経験がある。大石氏が入社したばかりのころの、同社を含めた互助会企業や葬儀業者の仕事は、旧態依然としたものだった。

葬家のなかには、式の施行後に感謝の言葉を述べる人もいたが、少なからぬ人たちが不満の念を抱き、実際に苦情の言葉を口にする人たちもいたのである。葬儀現場で、そうした事態を目のあたりにした大石氏は、「いつかきっと心のサービスを実現する」と心に誓ったのである。

大石氏がめざしたのは、「自分が真っ先に入会したい互助会システム」の構築であった。それを実現するために先にあげた三項目の経営指針を策定するとともに、厚生労働省が認定する葬祭ディレクターをそろえ、葬祭ホールや施設を整備、充実させ、二十四時間三六五日、いつでも電話で受け付ける体制を整えた。

同社は、葬祭ビジネスの強化、拡大に力を注ぐだけではなく、地域密着という社会的な使命を果たすことにも尽力している。

「葬祭業は地元産業」というのが大石氏の持論である。互助会会員は、同社の営業所や葬祭ホールがある地域で暮らす人たちである。いずれも同じ地域、町会に所属する「隣組」なのだ。この近隣に住む者同士の関係を重視し、長い間日本人が失っていた「人と人との絆」の再生をはかり、家族の絆と地域連帯意識の再生を達成するのが千代田セレモニーグループの究極の目的である。

本書は、冠婚葬祭互助会システムの普及により、新しい時代が求める葬祭儀式を施行しながら、人と人との絆の再生に取り組む千代田セレモニーグループの事業活動を紹介するとともに、同グループ代表・大石和雄氏の経営理念、葬祭思想を解説するものである。はからずも、東日本大震災は、年齢や病気の有無にかかわらず、死は誰にとっても身近なものであることを知らしめることとなった。それだけに、これは現在、冠婚葬祭業界に身を置く人だけではなく、自分自身、あるいは家族の葬祭儀式のあり方に思いをめぐらす多くの一般読者にとっても貴重な示唆を与えるものとなるはずだ。

なお、本文中の敬称は略させていただいたことを、あらかじめお断りしておく。


平成二十四年二月  鶴蒔靖夫




はじめに


第1章 いま、お葬式が変だ!

人生の節目で実施される冠婚葬祭
葬式論議に火をつけた書籍『葬式は、要らない』
葬式の通俗化に対する批判が主旨
葬式の知識と経験がない消費者たち
人と人との絆を中心にして葬式を考える
変貌する葬式のかたちと内容
「感動の葬式」の実現


第2章 千代田セレモニーグループ・大石和雄の情熱の軌跡

葬儀とは……
感動こそ「心の葬儀」の根幹
「いつかはきっと心の葬儀を」と心に誓う
なかなか成果を出しきれない日々
釣り仲間に誘われて冠婚葬祭会社に入社
会員なくして、なんの互助会ぞ
会員不評の改善を
顧客本位の考え方で葬祭部の業務を改革
脱脂綿を敷き詰める新しいかたちの納棺を実施
コンピュータ化で業務の効率化を
隔月集金の体制を取り、集金の効率化をはかる
労働組合対策の責任を担う
さらなる業務改革をめざして
築地本願寺での社葬の挙行
新たなる船出に向かって


第3章 千代田セレモニーの挑戦

「城北冠婚葬祭互助会」として発足
地域密着の活動で加入者を増やす
首都圏最大規模の冠婚葬祭グループ・千代田セレモニー
「心のサービス」で他社との差別化をはかる
「安心・安全」の互助会システム
時代を読みよりよいものを
旗艦店としてグループを牽引するセレス高田馬場
会員救済と業界の信用保持を目的に互助会再建に乗り出す
ゆかりの地・山梨での再建


第4章 互助会のあり方を問う

伝統的な美風「助け合いの精神」である互助会
「互助会加入者役務保証機構」を設立
儀式の施行と設備の新調などに使用される掛け金
葬祭ディレクターが儀式の万端を取り仕切る
昭和二十三年に横須賀市ではじめて誕生した互助会
経営規模が多様な互助会企業と葬儀業者
異業種からの参入相次ぐ葬儀市場
「安全・安心」「迅速・便利」の千代田セレモニー
頼りになる「安心プラン」と「やすらぎコース」
いざというときにあわてないために
緊急時における連絡と対応の仕方
満足と感動を与える


第5章 時代とともに変化する葬式事情

六万年も前から続いている葬儀
世間をにぎわす「葬式不要論」
変わりはじめた日本の葬式事情
すでに変化している葬式の形式
一挙に通夜と告別式を実施する「ワンデーセレモニー」
自分らしく死ぬ準備をした歴史上の人物
死と向き合い乗り越える
変化しつづける葬儀


第6章 いま「心のサービス」の時代を迎えて

個性化、多様化する市場に柔軟に対応
互助会の真価が発揮できる時代が到来
千代田セレモニーがめざす新しいかたちの葬式
後継者の育成が最後の仕事
在宅介護事業という新たなる分野へ
「とにかくやってみろ」


座談会 冠婚葬祭業界の未来のカギを握る「心のサービス」の継承

生き残りのカギは「心のサービス」
ぶれることのない大石の組織のあり方論
信頼を貫き通す力
受け継がれる「心のサービス」


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